説明

認識能力育成機器

【課題】 直感的な認識能力を育成するための能力育成機器を提供する。
【解決手段】 機器本体2に設けられた被験者9の頭部を収容する頭部収容部3と、頭部収容部3に収容された被験者9の前頭部至近に位置させる複数種類の試験片と、前記複数種類の試験片が取り付けられる試験片ホルダー7と、前記複数種類の試験片の何れかが被験者9の前頭部至近に位置するように、試験片ホルダー7を介して位置決めする位置決め機構8とを備え、被験者9が、前頭部至近に位置した試験片を目隠し状態で推測するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直感的な認識能力を育成する認識能力育成機器に関する。
【背景技術】
【0002】
人の視覚、聴覚、味覚、触覚、嗅覚といった感覚(五感)に加え、所謂第六感などと呼ばれる直感的な認識能力の存在が以前より経験的に知られている。この認識能力は、直感的に何かを感じとる感覚として位置付けられるが、その科学的根拠は必ずしも明らかになっていない。近年、例えば幼児教育などにおいて、この種の認識能力を育成する、更にはこれを教育などに利用する試みが注目されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、この種の認識能力の因果関係を科学的に立証するのは容易ではなく、この能力を開発する具体的手段が待望されているにもかかわらず、実現できていないのが実情であった。
【0004】
本発明は係る実情に鑑みて、直感的な認識能力を育成する認識能力育成機器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の認識能力育成機器は、機器本体に設けられた被験者の頭部を収容する頭部収容部と、前記頭部収容部に収容された前記被験者の前頭部至近に位置させる複数種類の試験片と、前記複数種類の試験片が取り付けられる試験片ホルダーと、前記複数種類の試験片の何れかが前記被験者の前頭部至近に位置するように、前記試験片ホルダーを介して位置決めする位置決め機構とを備え、前記被験者が、前記前頭部至近に位置した試験片を目隠し状態で推測するようにしたことを特徴とする。
また、前記複数種類の試験片には、金属、鉱石、ゴム、プラスチック及び木材の何れかで形成された試験片が少なくとも一つ含まれることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、目隠し状態の被験者が、頭部至近位置に位置した試験片を直感的に推測して認識を行うように構成されている。そのため、直感的な認識能力を育成する機器として用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(第1の実施の形態)
以下、図面を参照して、本発明の第1の実施の形態に係る認識能力育成機器(以下、能力育成機器と略す)を説明する。
図1は、能力育成機器1の外観を示す斜視図である。能力育成機器1の筐体を構成する機器本体2には、凹状のスペースで形成された頭部収容部3が設けられる。この頭部収容部3の凹状のスペースに被験者の頭部を収容することができる(図2)。また、機器本体2の筐体外面には、例えば回転方向位置決め用の操作部4や高さ位置決め用の操作部5などの操作部が複数配されている。これらの操作部4,5は被験者自身で操作可能である。
【0008】
図2は、能力育成機器1の側面断面図である。図2において、頭部収容部3内の上部には、試験片6a、6b及び6cが取り付けられた試験片ホルダー7が配される。試験片ホルダー7は、機器本体2内部に設置される位置決め機構8によって、回転方向及び上下方向の位置決めが可能に構成されている。
【0009】
ここで、前述の回転方向位置決め用の操作部4及び高さ位置決め用の操作部5の詳細について説明する。なお、図2において、被験者9は目隠し状態で、頭部収容部3に頭部を収容しているものとする。
【0010】
前述の位置決め機構8は、機器本体2内部に設置され、回転方向位置決め用の操作部4及び高さ位置決め用の操作部5の操作に応じて、動作するように構成されている。
【0011】
操作部4を操作することで、その操作に応じて、位置決め機構8は試験片ホルダー7を回動させる。図3に示すように試験片ホルダー7は、円盤形状を有し、試験片6a、6b及び6cの3つの試験片が取り付けられているため、試験片ホルダー7の中心を軸として回動させることで、試験片6a〜6cの何れかが必ず被験者9の前頭部に位置するように調整することができる。なお、操作部4は、目隠し状態の被験者9が操作中に何れの試験片6a〜6cが被験者9の前頭部に位置したことを認識できるようになっている。この場合、例えば該試験片が前頭部に位置したときに、操作部4から音が発せられるようにしたり、操作部4に重みを付けたりして感覚的に認識できるようにしたりする。
【0012】
なお、本実施の形態において、試験片6aは金であり、試験片6bはゴムであり、試験片6cは水晶である。典型的には属性(材質など)が異なるものの組合せを含んでいるのが好ましい。
【0013】
また、操作部5を操作することで、その操作に応じて、位置決め機構8は試験片ホルダー7を上下方向に移動させる。試験片ホルダー7を上下方向に移動させることで、操作部4によって位置調整された試験片6a〜6cの何れかを、被験者9の前頭部至近(L1、図9参照)に位置決めしたり、被験者9の前頭部に接触するように(L2、図9参照)に位置決めしたりすることができる。操作部5においても上記同様に、目隠し状態の被験者9が前頭部至近(L1)に位置した場合に認識できるようになっている。この場合、例えば該試験片が前頭部至近(L1)に位置したときに、操作部5から音が発せられるようにしたり、操作部5に重みを付けたりして感覚的に認識できるようにしたりする。
【0014】
なお、操作部4及び5は目隠し状態の被験者9が、何れかの操作部かを識別できるように触り心地をそれぞれ変えたり、形状を変えたりすることが好ましい。また、位置決め機構8は、複数のギヤ等を用いて機械的な機構をもって動作するように構成してもよいし、モータなどを用いて電気的な機構をもって動作するように構成してもよい。
【0015】
以上のように構成した能力育成機器1において、目隠し状態の被験者9がその頭部を頭部収容部3に収容し、操作部4及び操作部5を操作して、試験片6a〜6cの何れかを被験者9の前頭部至近に位置決めする。被験者9は、前頭部至近の試験片が何れかの試験片であるかを直感的に推測する。また、何れかの試験片を被験者9の前頭部に接触するように位置決めした場合には、被験者9は、前頭部に接触した試験片が何れかの試験片であるかを触覚で推測する。
【0016】
上記のように能力育成機器1を用いて、試験片を前頭部至近に位置決めした際は、被験者9は、目隠し状態であるため、試験片を直感的に推測する。
本発明者等は、この推測試験の回数が多ければ多いほど正解率が高くなることを確認した。図8に事前に知らされた3つの試験片のうち何れかの試験片が前頭部至近にあるかを問う推測試験の結果を示す。図8に示される推測試験の結果は、被験者が12回連続して行った推測試験(推測回数:50回/1回の試験)の正答(○)及び誤答(×)と一回の試験毎の正解数及び正解率を示している。図示の結果から明らかなように回数を重ねるにつれ正解率が高くなっていることがわかる。
従って、本発明の能力育成機器1を用いて推測を複数回繰り返し行えば、直感的な認識能力を育成することができる。
【0017】
または、上記の場合に、推測結果の正解率から特定の評価値などを規定して、被験者の推測した試験片の推測結果から被験者の直感的な認識能力を評価するための機器として、能力育成機器1を使用することもできる。
また、被験者の推測結果から直感的な認識能力を評価するための実験結果を得るための実験機器として、能力育成機器1を使用することもできる。
【0018】
また、能力育成機器1において、試験片を前頭部に接触するように位置決めした場合は、被験者は、目隠し状態で、試験片を触覚で推測する。そのため、触覚を育成することができる。
【0019】
また、能力育成機器1は、直感的な認識能力を推測し合って競い合う玩具としても使用することができる。直感的な認識能力、所謂第六感などを競い合う目的とした玩具などにおいて、本実施の形態のような、金、ゴム及び水晶などの材質に注目して具体的な構成としたものはない。水晶、金などは使用者に神秘的なイメージを覚えさせ、第六感という不可思議な能力を想起させる趣向性の高いものとして、使用者は新鮮な感覚で玩具に興じることができる。
【0020】
また、本実施の形態の能力育成機器1は、図4に示すように被験者9が座った状態でも使用することができる。その場合は、機器本体2を図1の状態から、頭部収容部3が開口するように90度回転させて、図示のように、頭部収容部3に目隠し状態の被験者9は頭部を収容する。この場合、脚10を用意して、高さを調整するようにしてもよい。
【0021】
(第2の実施の形態)
以下、図面を参照して、本発明の第2の実施の形態に係る能力育成機器を説明する。
図5に示す能力育成機器11の構成において、第1の実施の形態に係る能力育成機器1と共通する部分については、同符号にて示し、説明を省略する。
【0022】
機器本体2には、その筐体表面に接続端子が設けられ、接続端子にケーブルを介しリモコン12が接続される。リモコン12には、複数の操作スイッチが配されており、所定の操作スイッチを操作することで、第1の実施の形態と同様に、位置決め機構8を動作させて、試験片6a〜6cの位置及び高さを調整できる。本実施の形態では、機器本体2内部において、マイコンを有しており、リモコン12の操作に応じた位置決め機構5の動作などを制御する。
【0023】
また、リモコン12には、被験者9が推測した試験片が何であるかを被験者に確認させることのできる操作スイッチを有している。本実施の形態では、機器本体2の筐体表面にスピーカ13が設けられ、前述の、試験片が何であるかを被験者に確認させるリモコン12の操作スイッチを押下することで、スピーカ13から正解音又は不正解音が発せられるように構成される。この場合、機器本体2内部のマイコンは、試験片が何れであるかを認識可能なように構成される。図6は、リモコン12を用いた場合の能力育成機器11の使用状態を示している。
【0024】
また、本実施の形態では、頭部収容部3において、被験者9の頭部を保持するための頭部保持機構14が設けられる(図7)。この場合には、頭部保持機構14を操作するための手動の操作部を設けて、その操作部を操作することで、頭部保持機構14が動作するようにしたり、リモコン12の操作スイッチを操作して頭部保持機構14が動作するようにしたりなどする。なお、図7に示す状態は、第1の実施の形態で示す図4と同様に座った状態での使用状態を示しており、被験者9を背面から見た図である。
【0025】
以上のように構成した能力育成機器11において、目隠し状態の被験者9がその頭部を頭部収容部3に収容し、頭部保持機構14によって安定した状態で頭部を保持して、リモコン12を操作することで、試験片6a〜6cの何れかを被験者9の前頭部至近に位置決めする。被験者9は、前頭部至近の試験片が何れかの試験片であるかを直感的に推測する。また、何れかの試験片を被験者9の前頭部に接触するように位置決めした場合には、被験者9は、前頭部に接触した試験片が何れかの試験片であるかを触覚で推測する。また、リモコン12の操作スイッチを押下することで、推測した試験片が、正解か否かを知ることができるため、使用性が高い。
【0026】
上記のように能力育成機器11を用いて、試験片を前頭部至近に位置決めした際は、被験者9は、目隠し状態であるため、試験片を直感的に推測する。
従って、推測を複数回繰り返し行えば、直感的な認識能力を育成するための機器として用いることができる。
【0027】
なお、本実施の形態において用いた試験片6a〜6cは、金、ゴム及び水晶としたが、これに限定されるものでない。金以外の金属に属するものでもよいし、黒水晶、アメジスト等の鉱石でもよい。また、プラスチック、木材等で形成させてもよい。また、取付ける試験片の数も限定されるものではなく、前頭部至近(L1)で位置決めした場合には、少なくとも1つ以上とすればよい。なお、能力育成機器1又は11において、試験片を1つ取り付けた場合には、前頭部至近に試験片があるか否かを推測するように用いることができる。
【0028】
また、本実施の形態において、被験者9を目隠し状態とするために、図2又は図6のように被験者9は目隠しをしているが、これに限定するものではなく、例えば試験片を外観上同一とし、見分けが不可能なようにしたり、頭部収容部3において、試験片が視認できないように板などを設け、その板に試験片のみが挿通できる穴を設けたりなどの態様で目隠し状態を形成してもよい。
【0029】
なお、本発明の能力育成機器は、本実施の形態の構成に限定されず、本発明の範囲において適宜変更可能である。例えば操作部4,5などの部材の設置位置や形状などは本実施の形態に限定されるものではない。また、機器本体2の筐体の形状ももちろん本実施の形態に限定されるものではない。
【0030】
また、本実施の形態の試験片ホルダー7は、円盤形状としたが、例えば板状のホルダーを用いて、その板状のホルダーに試験片を並んで取り付けるようにしてもよい。その場合は、位置決め機構8もその機構を変更して、板状のホルダーを幅方向及び高さ方向に移動、調整可能な機構とすればよい。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る能力育成機器を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る能力育成機器の使用状態を説明するための図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る能力育成機器の要部を示す図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る能力育成機器の使用状態を説明するための図である。
【図5】本発明の第2の実施の形態に係る能力育成機器を示す図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る能力育成機器の使用状態を説明するための図である。
【図7】本発明の第2の実施の形態に係る能力育成機器の要部を説明するための図である。
【図8】試験片の推測試験結果を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態に係る能力育成機器の試験片の位置を説明するための図である。
【符号の説明】
【0032】
1 能力育成機器
2 機器本体
3 頭部収容部
4 操作部
5 操作部
6a 試験片(金)
6b 試験片(ゴム)
6c 試験片(水晶)
7 試験片ホルダー
8 位置決め機構
9 被験者
10 脚
11 能力育成機器
12 リモコン
13 スピーカ
14 頭部保持機構

【特許請求の範囲】
【請求項1】
機器本体に設けられた被験者の頭部を収容する頭部収容部と、
前記頭部収容部に収容された前記被験者の前頭部至近に位置決めされる複数種類の試験片と、
前記複数種類の試験片が取り付けられる試験片ホルダーと、
前記複数種類の試験片の何れかが前記被験者の前頭部至近に位置するように、前記試験片ホルダーを介して位置決めする位置決め機構とを備え、
前記被験者が、前記前頭部至近に位置した試験片を目隠し状態で推測するようにしたことを特徴とする認識能力育成機器。
【請求項2】
前記複数種類の試験片には、金属、鉱石、ゴム、プラスチック及び木材の何れかで形成された試験片が少なくとも一つ含まれることを特徴とする請求項1に記載の認識能力育成機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−328254(P2007−328254A)
【公開日】平成19年12月20日(2007.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−160940(P2006−160940)
【出願日】平成18年6月9日(2006.6.9)
【出願人】(506199123)