説明

認識障害処置用のコリンエステラーゼ阻害剤を含む組成物

本明細書において、コリンエステラーゼ阻害剤および以下の式:


の化合物を含む薬学的組成物が開示される。本組成物は、認識障害の処置に効果的であり、本組成物を使用して当該障害を処置する方法もまた開示される。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
相互参照
本出願は、2009年7月17日出願の米国仮特許出願第61/226,425号の利益を主張し、この全開示は、このように具体的に参照することにより本明細書に組み入れられる。
【0002】
本明細書において、コリンエステラーゼ阻害剤、および以下の式I:
【化1】

(式中、Xは、CHまたはCH−CHであり、
Aは、アリールであるか、またはN、S、およびOからなる群から選択される0個、1個、2個、もしくは3個のヘテロ原子を有するヘテロアリールであり、
Aは、それぞれ0個から8個の炭素原子、0個から3個の酸素原子、0個から3個のハロゲン原子、0個から2個の窒素原子、0個から2個の硫黄原子、および0個から24個の水素原子からなる群から独立して選択される0個、1個、2個、または3個の置換基を有する)で表される化合物を含む、薬学的組成物が開示される。
【0003】
組成物は、認識障害の処置に効果的であり、組成物を使用してそのような障害を処置する方法もまた開示される。コリンエステラーゼ阻害剤は、吐き気、下痢、不眠、筋痙攣、発汗および震え等の多くの望ましくない副作用を有する。
【0004】
本発明者らは、コリンエステラーゼ阻害剤とともに式Iの化合物を投与することにより、極めて低用量(ある実施形態においては、通常の用量の10分の1またはさらに低用量)のコリンエステラーゼ阻害剤を使用して、認識障害を処置することができ、それによってより少ない副作用で効果的な処置を提供することができることを発見した。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】図1は、フィゾスチグミン単独および化合物Xと組み合わせたフィゾスチグミンとを比較した、自由行動ラットにおいて記録された海馬fEPSP振幅に対する化合物Xの効果を示す図である。群内比較を使用した各処置の統計結果は、星印で示されている(正確な値は表1を参照されたい)。処置間の比較は、対応のないt検定を伴い、その結果は、各接続線の隣に示されている(群間の対応のないt検定を使用)。BL=ビヒクル注射前のベースライン。
【図2】図2は、フィゾスチグミン単独および化合物Xと組み合わせたフィゾスチグミンとを比較した、自由行動ラットにおいて記録された皮質fEPSP振幅に対する化合物Xの効果を示す図である。群内比較を使用した3つの処置のそれぞれの統計結果は、星印で示されている(正確な値は表2を参照されたい)。処置間の比較は、対応のないt検定を伴い、その結果は、各接続線の隣に示されている(群間の対応のないt検定を使用)。
【図3】図3は、ガランタミン単独および化合物Xと組み合わせたガランタミンとを比較した、自由行動ラットにおいて記録された皮質fEPSP振幅に対する化合物Xの効果を示す図である。群内比較を使用した3つの処置のそれぞれの統計結果は、星印で示されている(正確な値は表3を参照されたい)。処置間の比較は、対応のないt検定を伴い、その結果は、各接続線の隣に示されている(群間の対応のないt検定を使用)。
【発明を実施するための形態】
【0006】
コリンエステラーゼ阻害剤
「コリンエステラーゼ阻害剤」という用語は、本明細書において使用される場合、神経伝達物質アセチルコリンの酵素分解を阻害し、それによりアセチルコリンの作用期間およびシナプス間隙におけるそのレベルを増加させる化合物を意味する。アセチルコリンの分解には、主として、アセチルコリンエステラーゼおよびブチリルコリンエステラーゼの2つの酵素が役割を担っている。「コリンエステラーゼ阻害剤」は、それらの酵素の一方または両方の作用を他の様式で低減する化合物を含む。
【0007】
本発明の組成物および方法は、コリンエステラーゼ阻害剤が薬学的に効果的であることを企図する。「薬学的に効果的」とは、本明細書において使用される場合、コリンエステラーゼ阻害剤がヒトにおいて治療上有用であることを意味する。したがって、この用語は、殺虫剤として使用されるコリンエステラーゼ阻害剤、例えばアルジカルブ(2−メチル−2−(メチルチオ)プロピオンアルデヒドO−メチルカルバモイルオキシム)、カルボフラン(2,3−ジヒドロ−2,2−ジメチル−7−ベンゾフラニルメチルカルバメート)、およびカルバリル(1−ナフチルメチルカルバメート)、ならびに、ヒトに対して非常に毒性であるため化学兵器として使用されるコリンエステラーゼ阻害剤、例えばサリン(2−(フルオロ−メチルホスホリル)オキシプロパン)、VX(S−[2−(ジイソプロピルアミノ)エチル]−O−エチルメチルホスホノチオエート)、およびソマン(3−(フルオロ−メチル−ホスホリル)オキシ−2,2−ジメチル−ブタン)を除く。殺虫剤および化学兵器であるコリンエステラーゼ阻害剤のほとんどは、準可逆的または不可逆的であり、薬学的に有効であるコリンエステラーゼ阻害剤のほとんどは、可逆的である。
【0008】
薬学的に効果的なコリンエステラーゼ阻害剤は、当技術分野において周知である。例えば、参照することによりその内容が本明細書に組み入れられる米国特許出願公開第2008/0070901号は、コリンエステラーゼ阻害剤が7−メトキシタクリン、アルバメリン、アンベノニウム、アンセクリン、アレコリン、セビメリン、シチコリン、デマカリウム、ドネペジル、エドロホニウム、エプタスチグミン、ファスシクリン、ヘプチル−フィゾスチグミン、フペルジンAおよびその類似体、イコペジル、イピダクリン、リノピリジン、メトリホネート、ミラメリン、ネオスチグミン、ノメオスチグミン、ノルピリドスチグミン、タクリン、フィゾスチグミン、リバスチグミン、スブコメリン、スロナクリン、タクリン類似体、タクリン、タルサクリジン、ベルナクリン、キサノメリン、ジフロシロン、およびその他様々な物質を含むことを開示している。本発明の組成物および方法において、これらの化合物のいずれかを使用することができる。
【0009】
ヒトにおいて、認知症を処置するために、少なくとも3つの薬学的に有効なコリンエステラーゼ阻害剤が使用されている。これらは、ドネペジル、ガランタミン、およびリバスチグミンを含む。
【0010】
ドネペジルは、アセチルコリンエステラーゼの可逆的阻害剤である。ドネペジルは、以下の構造:
【化2】

を有する。ドネペジルの塩酸塩は、米国においてAricept(登録商標)の商品名で販売されている。ドネペジルは、アルツハイマー型の認知症の処置用に指定されている。1日1回、5mgまたは10mgの成人用量で投与される。有害事象の可能性のため、10mg用量は、患者が4週間から6週間5mg/日の用量を与えられるまでは投与されない。プラセボの割合の2倍で10mg/日で与えられる患者の少なくとも5%に生じるものとして定義される、最も一般的な有害事象は、吐き気、下痢、不眠、嘔吐、筋痙攣、疲労および拒食症を含む。
【0011】
ガランタミンは、アセチルコリンエステラーゼの可逆的阻害剤である。ガランタミンは、以下の構造:
【化3】

を有する。ガランタミンの臭化水素酸塩は、米国内でRazadyne(登録商標)の商品名で販売されている。ガランタミンは、アルツハイマー型の軽度から中程度の認知症の処置用に指定されている。1日2回の投薬で、16〜24mg/日の成人用量で投与される。開始用量は1日2回4mg(8mg/日)であり、4週間後に1日2回8mg(16mg/日)に増加され、次いでさらに4週間後に1日2回12mg(24mg/日)に増加される。プラセボの割合の少なくとも2倍で少なくとも5%の頻度で生じるものとして定義される、最も頻度の高い有害事象は、吐き気、嘔吐、下痢、拒食症および体重減少を含む。
【0012】
リバスチグミンは、以下の構造:
【化4】

を有する可逆的コリンエステラーゼ阻害剤である。酒石酸リバスチグミンは、米国においてExelon(登録商標)の商品名で販売されている。リバスチグミンは、アルツハイマー型の軽度から中程度の認知症の処置、およびパーキンソン病に関連した軽度から中程度の認知症の処置用に指定されている。リバスチグミンは、1日2回の投薬で、6〜12mg/日の成人用量で投与される(3mgから6mg BIDの1日用量)。開始用量は1日2回1.5mgであり、耐性が十分である場合、最低2週間の処置後に、1日2回3mgに増加される。さらに2週間の処置後、用量はさらに1日2回4.5mgに増加され、2週間後、有害事象が生じてより低用量が必要とならない限り、1日2回6mgに増加される。プラセボの割合の少なくとも2倍で少なくとも5%の頻度で生じるものとして定義される、最も頻度の高い有害事象は、吐き気、嘔吐、拒食症、消化不良および無気力を含む。
【0013】
ヒトにおける病態を処置するために広く使用されている他の薬学的に効果的なコリンエステラーゼ阻害剤は、フィゾスチグミン、ピリドスチグミン、およびネオスチグミンを含む。
【0014】
式Iの化合物
本発明の組成物および方法は、コリンエステラーゼ阻害に加え、式I:
【化5】

(式中、Xは、CHまたはCH−CHであり、
Aは、アリールであるか、またはN、S、およびOからなる群から選択される0個、1個、2個、もしくは3個のヘテロ原子を有するヘテロアリールであり、
Aは、それぞれ0個から8個の炭素原子、0個から3個の酸素原子、0個から3個のハロゲン原子、0個から2個の窒素原子、0個から2個の硫黄原子、および0個から24個の水素原子を有する0個、1個、2個、または3個の置換基を有する)の化合物を含む。
【0015】
「アリール」は、本明細書において使用される場合、少なくとも1個の芳香環を含有する任意の環または環系を意味する。
【0016】
「ヘテロアリール」は、本明細書において使用される場合、環内の原子のうちの0個、1個、2個、または3個が、N、S、またはOである芳香環を意味し、これには、例えばピリジニル、チエニル、およびフリルが含まれる。
【0017】
置換基は、同じまたは異なっていてもよい。本明細書に定義される制約を有する置換基の例には、以下が含まれる:
以下を含むが、これらに限定されないヒドロカルビル、つまり炭素および水素のみからなる部分、
a.以下を含むがこれらに限定されないアルキル、つまり二重結合または三重結合を有さないヒドロカルビル、
i) 直鎖アルキル、例えばメチル、エチル、n−プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル等、
ii) 分岐アルキル、例えばiso−プロピル、t−ブチルおよび他の分岐ブチル異性体、分岐ペンチル異性体等、
iii) 別のシクロアルキルまたはフェニル置換基に任意選択で融合していてもよいシクロアルキル、例えばシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル等;
iv) 直鎖、分岐鎖および/またはシクロアルキルの組み合わせ;
b.アルケニル、例えば、直鎖、分岐鎖またはシクロアルケニルを含む1個以上の二重結合を有するヒドロカルビル;
c.アルキニル、例えば、直鎖または分岐鎖(アルキニル)を含む1個以上の三重結合を有するヒドロカルビル;
d.アルキル、アルケニル、および/またはアルキニルの組み合わせ;
アルキル−CN、例えば−CH−CN、−(CH)−CN;−(CH)−CN等;
ヒドロキシアルキル、すなわちアルキル−OH、例えばヒドロキシメチル、ヒドロキシエチル等;
−O−アルキル、アルキル−O−アルキル等を含むエーテル置換基;
ヒドロキシアルキルエーテル、例えば−COOH、
−S−アルキル、アルキル−S−アルキル等を含むチオアルキルおよびチオエーテル置換基;
−NH、−NH−アルキル、−N−アルキルアルキル(すなわち、アルキルおよびアルキルは、同じまたは異なり、両方ともNに結合している)、アルキル−NH、アルキル−NH−アルキル、アルキル−N−アルキルアルキル等を含むアミン置換基;
アミノアルキル、すなわちアルキル−アミン、例えばアミノメチル(−CH−アミン)、アミノエチル等;
−CO−アルキル、−CO−フェニル等を含むエステル置換基;
アルデヒド;ケトン、例えばアシル(すなわち、
【化6】

)等を含む他のカルボニル置換基;特にアセチル、プロピオニル、およびベンゾイル置換基が企図される;
フェニルおよび置換フェニル;フェニルおよび置換フェニルは、それ自体、別のフェニルまたはシクロアルキル置換基と任意選択で融合していてもよい;
フルオロカーボンおよびヒドロフルオロカーボン、例えば−CF3、−CHCF等;
−CN;ならびに
−F、−Cl、−Br、または−I。
【0018】
定義される制約に従い、上記置換基の組み合わせもまた可能である。
【0019】
置換基は、本明細書に開示される任意の目的に有用となるように十分好適でなければならない。
【0020】
置換基が、例えばカルボン酸またはアミンの塩である場合、前記塩の対イオン、すなわち分子の残りの部分と共有結合により結合しないイオンは、置換基内の重原子の数を目的として考慮されない。したがって、例えば、塩−CONaは、3個の重原子からなる安定な置換基であり、すなわちナトリウムは考慮されない。別の例において、塩−NH(Me)Clは、3個の重原子からなる安定な置換基であり、すなわち塩素は考慮されない。
【0021】
一実施形態において、Aはピリジニルであり、すなわち、以下に示されるような構造の化合物が企図される。これらの構造中、R1、R2、およびR3は、本明細書において定義されるような置換基である。
【化7】

【0022】
別の実施形態において、Aはチエニルであり、すなわち、以下に示されるような構造の化合物が企図される。これらの構造中、R1およびR2は、本明細書において定義されるような置換基である。
【化8】

【0023】
別の実施形態において、Aはフリルであり、すなわち、以下に示されるような構造の化合物が企図される。これらの構造中、R1、R2、およびR3は、本明細書において定義されるような置換基である。
【化9】

一実施形態において、各置換基は、独立して、1個から8個の炭素原子を有するアルキルである。
【0024】
別の実施形態において、Aは、非置換であるか、またはイソプロピル置換基を有する。
【0025】
別の実施形態において、Bの各置換基は、−F、−Cl、−CH、または−CFである。
【0026】
別の実施形態において、Aは、0個、1個、2個、または3個の置換基を有するピリジル、チエニル、フリル、ピロリル、ピロリジニル、イミダゾリル、オキサゾリル、チアゾリル、ピラゾリル、ピリミジニル、キノリニルまたはピラジニルである。
【0027】
別段の指定がない限り、化合物への言及は、示された構造または化学名の化学物質の薬学的に許容される塩、互変異性体、代替の固体形態、および非共有結合複合体を含む。
【0028】
薬学的に許容される塩は、動物またはヒトへの投与に好適な親化合物の任意の塩である。塩は、1つ以上の対応する対イオンと結合した、化合物の1つ以上のイオン形態、例えば共役酸または塩基を含む。塩は、1つ以上の脱プロトン化酸性基(例えばカルボン酸)、1つ以上の脱プロトン化塩基性基(例えばアミン)、またはその両方(例えば両性イオン)から形成するか、またはそれらを組み込むことができる。
【0029】
酸性官能基の薬学的に許容される塩は、有機または無機塩基から得ることができる。塩は、一価または多価イオンを含み得る。特に興味深いのは、無機イオン、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウムおよびマグネシウムである。有機塩は、アミン、特にモノ、ジおよびトリアルキルアミンまたはエタノールアミン等のアンモニウム塩により作製され得る。塩はまた、カフェイン、トロメタミンおよび同様の分子で形成されてもよい。塩酸またはいくつかの他の薬学的に許容される酸は、アミンまたはピリジン環等の塩基性基を含む化合物と塩を形成し得る。
【0030】
互変異性体は、互いに迅速に平衡化する異性体である。それらは多くの場合、プロトン、水素原子、または水素化物イオンの移動を含むが、必須ではない。例えば、本明細書における構造は、以下に示す互変異型を含むが、これらに限定されない。
【化10】

【0031】
明示的に立体化学が示されていない限り、構造は、純粋または任意の可能な混合の両方の、全ての可能な立体異性体を含む。
【0032】
代替の固体形態は、本明細書に記載の手順の実践から得ることができる形態とは異なる固体形態である。例えば、代替の固体形態は、多形体、異なる種類の非晶質固体形態、ガラス等であってもよい。
【0033】
非共有結合複合体は、本化合物と、本化合物と追加的化学種との間の共有結合相互作用に関与しない1つ以上の追加的化学種との間で形成され得る複合体である。非共有結合複合体は、本化合物と追加的化学種との間の特定の比を有しても有さなくてもよい。その例には、溶媒和物、水和物、電荷移動錯体等が含まれ得る。
【0034】
式Iの化合物を生成するための方法は、例えば、参照により本明細書にその開示が組み入れられる、米国特許出願公開第2009/0036436号に記載されている。
【0035】
本発明の方法において有用な組成物は、賦形剤をさらに含んでもよい。そのような賦形剤は、活性化合物とともに通常混合される、または活性化合物の希釈または封入に許容される担体または希釈剤であってもよい。希釈剤である場合、担体は、活性化合物の賦形剤またはビヒクルとして機能する固体、半固体または液体材料であってもよい。製剤はまた、湿潤剤、乳化剤、防腐剤、甘味剤、および/または香味剤を含んでもよい。
【0036】
認識障害
「認識障害」という用語は、本明細書において使用される場合、思考、学習、または記憶に関連した精神活動における欠陥を特徴とする任意の病態を意味する。そのような障害の例には、失認症、健忘症、失語症、失行症、幻覚症状、認知症および学習障害が含まれる。
【0037】
いくつかの場合において、認識障害の原因は、未知であるか、または不確定であり得る。他の場合において、認識障害は、ニューロンまたはニューロン間の信号伝達に関与する他の構造への損傷またはその欠損を特徴とする他の病態と関連し得る(すなわち、それらの病態により引き起こされ得るか、またはそれらの存在下で生じ得る)。したがって、認識障害は、アルツハイマー病、大脳皮質基底核変性症、クロイツフェルト−ヤコブ病、前頭側頭葉変性症、ハンチントン病、多発性硬化症、正常圧水頭症、有機的慢性脳症候群、パーキンソン病、ピック病、進行性核上麻痺、または老年性認知症(アルツハイマー型)等の神経変性疾患と関連する可能性があり;認識障害は、慢性硬膜下血腫、脳震盪、脳内終結により引き起こされる外傷等の脳への外傷、あるいは、感染(例えば、脳炎、髄膜炎、敗血症)または薬物中毒もしくは乱用により引き起こされる外傷等の脳への他の外傷と関連する可能性があり;また、ダウン症候群および脆弱性X症候群と関連する可能性がある。
【0038】
認識障害はまた、不安障害、解離性障害、気分障害、統合失調症、ならびに身体表現性および虚偽性精神障害等の精神障害を含む、中枢神経系の正常機能を妨げる他の病態と関連する可能性があり;認識障害はまた、慢性疼痛等の末梢神経系の病態に関連する可能性がある。
【0039】
ここに記載された化合物は、その原因が既知であるか否かに関係なく、失認症、健忘症、失語症、失行症、幻覚症状、認知症、学習障害および他の認識障害を処置するために使用され得る。
【0040】
本明細書の方法により処置され得る認知症状の例には、AIDSによる認知症、ビンスワンガー病、レビー小体認知症、前頭側頭認知症、多発脳梗塞性認知症、ピック病、意味認知症、老年性認知症、および血管性認知症が含まれる。
【0041】
本発明の方法により処置され得る学習障害の例には、アスペルガー症候群、注意力欠如障害、注意欠陥多動性障害、自閉症、小児期崩壊性障害およびレット症候群が含まれる。
【0042】
本発明の方法により処置され得る失語症の例には、進行性非能弁的失語症が含まれる。
【0043】
ここに記載される化合物はまた、軽度の、または日常生活を大きく妨げることのない精神活動における欠陥を有する患者の処置にも使用され得る。軽度の認識機能障害は、そのような病態の一例であり、軽度の認識機能障害を有する患者は、認知症の症状(例えば、言語または記憶における困難)を示すが、これらの症状が重症であると、認知症の診断が適切でない可能性がある。ここに記載される化合物は、軽度の認識機能障害、および他の同様のより重症でない形態の認識障害の処置に使用され得る。
【0044】
薬学的組成物
本発明の薬学的組成物は、1つ以上の薬学的に効果的なコリンエステラーゼ阻害剤、および1つ以上の式Iの化合物を含む。
【0045】
用量
本発明の薬学的組成物は、別個に投与された場合にコリンエステラーゼ阻害剤の適応症となる認識障害を処置するのに通常効果的である用量のコリンエステラーゼ阻害剤、及び、別個に投与された場合に認識障害を処置するのに通常効果的である用量の式Iの化合物が患者に与えられるように製剤化され得る。しかしながら、本発明の薬学的組成物はまた、各化合物の用量が、化合物が単独で投与された場合には無効または効果が低い用量となり得るように製剤化され得る。これにより、単独で投与されるより高用量のコリンエステラーゼ阻害剤および式Iの化合物と同じ程度に効果的であるが、より副作用をもたらしにくい本発明の製剤を、患者に投与することができる。しかしながら、これは、本発明の製剤が、単独で投与された場合に効果が低い用量のみで、コリンエステラーゼ阻害剤および式Iの化合物を含むことを意味せず、そのような化合物の通常の用量を含む組成物を投与された患者は、化合物のみを投与された場合に患者が経験する改善よりも大きな改善を経験する可能性が高い。
【0046】
投与の正確な用量および頻度は、患者の病態の重症度および性質、投与様式、使用される特定の化合物の効能および薬力学、ならびに処方する医師の判断に依存する。用量の決定は、十分当業者の能力の範囲内である日常的作業である。前項で議論した痙攣処置用の鎮痛抗痙攣薬の用量は、さらに指針として使用することができる。
【0047】
化合物が単独で投与された場合には無効または効果が低い用量の、コリンエステラーゼ阻害剤および式Iの化合物を投与することが望ましくなり得る。そのような用量の決定は、日常的作業である。そのような用量の典型例を以下に記載する。
【表1】

【0048】
単独で投与された場合に効果的である用量のコリンエステラーゼ阻害剤を投与することが望ましい場合は、一般に上述の用量を超える用量で使用することができる。
【0049】
賦形剤および投薬形態
本発明の薬学的組成物を投与するために、コリンエステラーゼ阻害剤および式Iの化合物は、当技術分野において周知の薬学的に許容される賦形剤と混合され得ることが、当業者に容易に理解される。
【0050】
全身投与される薬学的組成物は、経口または非経口投与または吸入に好適な、粉末、丸薬、錠剤等、または溶液、乳液、懸濁液、エアロゾル、シロップもしくはエリキシル剤として調製され得る。
【0051】
固体投薬形態または薬剤の場合、非毒性固体担体は、医薬品グレードのマンニトール、乳糖、デンプン、ステアリン酸マグネシウム、サッカリンナトリウム、ポリアルキレングリコール、滑石粉、セルロース、グルコース、ショ糖および炭酸マグネシウムを含む。固体投薬形態は、コーティングされていなくてもよく、または、胃腸管における分解および吸収を遅延させ、それにより長期間にわたる持続作用を提供するために、既知の技術によりコーティングされていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリル等の時間遅延材料が使用され得る。また、固体投薬形態は、制御放出用の浸透性治療錠剤を形成するために、米国特許第4,256,108号、第4,166,452号、および第4,265,874号に記載の技術によりコーティングされてもよい。薬学的に投与可能な液体投薬形態は、例えば、現在有用な化合物の1つ以上と、任意選択的な、例えば溶液または懸濁液を形成するための水、生理食塩水、デキストロース水溶液、グリセロール、エタノール等の担体中の薬学的アジュタントの溶液または懸濁液とを含むことができる。所望により、投与される薬学的組成物はまた、湿潤または乳化剤、pH緩衝剤等の少量の非毒性補助物質を含有してもよい。そのような補助剤の典型例は、酢酸ナトリウム、モノラウリン酸ソルビタン、トリエタノールアミン、酢酸ナトリウム、オレイン酸トリエタノールアミン等である。そのような投薬形態を調製する実際の方法は、当業者に知られているか、または当業者に明らかであり、例えば、Remington's Pharmaceutical Sciences, Mack Publishing Company, Easton, Pa., 16th Edition, 1980を参照されたい。いずれにしても、投与される製剤の組成物は、所望の治療効果を提供するのに効果的な量の、現在有用な化合物の1つ以上をいくらか含有する。
【0052】
非経口投与は、一般に、皮下、筋肉内または静脈内の注射を特徴とする。注射剤は、溶液もしくは懸濁液、注射前の懸濁液もしくは液体に好適な固体形態、または乳濁液として、従来の形態で調製され得る。好適な賦形剤は、例えば、水、生理食塩水、デキストロース、グリセロール、エタノール等である。さらに、所望により、投与される注射可能な薬学的組成物はまた、湿潤または乳化剤、pH緩衝剤等の少量の非毒性補助物質を含有してもよい。
【0053】
処置方法
本発明の組成物および方法は、認識障害の処置に有用である。「処置」とは、本明細書において使用される場合、医学的に処理することを意味する。処置は、例えば、認識障害の発症を予防し、またその重症度を軽減するために、本発明の化合物を投与することを含む。
【0054】
認識障害を有する患者に、コリンエステラーゼ阻害剤および式Iの化合物を含む薬学的組成物を投与することができる。しかしながら、これらの化合物を別個に投与することもでき、一方の直後に他方を投与するか、または一方の投与から短い間隔以内に他方を投与するか(例えば、5〜15分、もしくは15〜30分、もしくは30分〜1時間)、または一方の投与からより長い間隔以内に他方を投与する(例えば、1〜2時間、2〜4時間、4〜6時間、6〜12時間、もしくは12〜24時間)ことができる。また、1つの化合物を別の化合物より高頻度で投与することができ、例えば、コリンエステラーゼ阻害剤を1日1回以上、式Iの化合物を1日2回以上(またはその逆も同様)投与することができる。
【0055】
実施例
本発明は、以下の実施例によりさらに例示される。
【実施例】
【0056】
実施例1
自由行動ラットの海馬および皮質における基底興奮性シナプス伝達
海馬および嗅覚皮質に深さ刺激および記録電極が埋め込まれた自由行動雄Sprague−Dawleyラットにおいて実験を行い、(1)行動遂行および情報のエンコーディングと正の関連を示す指標である基底興奮性シナプス伝達に対する式1の化合物((2R,3S)−2−アミノ−3−ヒドロキシ−3−(ピリジン−4−イル)−1−(ピロリジン−1−イル)プロパン−1−オン)(「化合物X」)の効果を特性決定し;(2)化合物Xが、共にアルツハイマー病患者における認識亢進効果を有する、コリンエステラーゼ阻害剤ファミリーに含まれるフィゾスチグミンおよびガランタミンと同時適用される場合の、シナプス伝達に対する可能な相互作用を決定した。
【0057】
化合物X単独は、海馬興奮性シナプス伝達を高め、同様に嗅覚皮質における伝達の向上に効果的であった。フィゾスチグミンおよびガランタミンは、試験した用量では、海馬および皮質におけるシナプス伝達に対する効果に限界があった。フィゾスチグミンおよび
ガランタミンは、化合物Xと同時適用されると、海馬および皮質両方に対して、化合物X単独により得られた増加よりはるかに大きい程度まで、シナプス伝達を促進した。構造的および機能的に非常に異なる2つのクラスの化合物の間のこの相乗作用は、アルツハイマー病に対し既に認められているコリン作動性化合物により、化合物Xの認識亢進効果が増幅され得ることを示唆している。
【0058】
方法
海馬および嗅覚皮質内に深さ電極が永久的に埋め込まれた自由行動動物において、電気刺激により誘起されたフィールド興奮性シナプス後応答(fEPSP)を記録した。実験1では、1つの用量レベル(6mg/kg ip)における化合物Xの、海馬および皮質fEPSPに対する効果を、ビヒクル対照データと比較した。実験2では、フィゾスチグミン(0.1mg/kg ip)またはガランタミン(1mg/kg ip)と組み合わせた化合物X(6mg/kg ip)の、海馬および皮質fEPSPに対する効果を、ビヒクル対照データと比較した。
【0059】
対象
手術時3ヶ月齢の雄Sprague Dawleyラットを使用した。動物は、12:12明暗サイクルで、自由に食物および水を摂取できる状態で個々に飼育した。
【0060】
長期的な海馬および皮質電気生理学の準備
長期的に電極を埋め込まれた動物の準備は、基本的に、以前に出版されている文献(U. Staubli and J. Scafidi, J. J. Neurosci. 17: 4820-4828(1997))に記載されている通りの手順に従った。海馬からの記録においては、刺激電極を内嗅皮質内の有孔質路に設置し、記録電極を海馬歯状回門に設置した。嗅覚皮質からの記録においては、刺激電極を嗅索に設置し、記録電極を梨状皮質のI層に設置した。
【0061】
自由行動ラットからの記録
手術から10日間の回復期間後、動物を記録用ケージに順化させるとともに、ヘッドステージへの記録リードの取り付けにも順化させた。記録セッションは、電流強度(25〜100μA)および単相刺激パルスのパルス幅(100〜250μsec)を調節し、典型的には4〜8mVの範囲内である、集合スパイクのない応答の最大振幅の50〜60%であるフィールド興奮性シナプス後電位(fEPSP)を生成することにより開始した。記録信号は増幅され、1Hzから5kHzのバンドパスでフィルタリングされ、誘起された応答をデジタル化、測定および保存する専用ソフトウェア(NacGather)を実行しているPCに入力された。fEPSPが20秒毎に誘起されるベースライン記録セッションを、1日20〜45分間、少なくとも3日間行い、適正かつ安定な誘起単シナプスfEPSPを示し維持する動物のみを、さらなる試験に選択した。
【0062】
薬物試験
海馬動物(海馬内に電極が埋め込まれた対象)を3つの群、すなわち化合物X単独、化合物Xおよびフィゾスチグミン、フィゾスチグミン単独のうちの1つに無作為に割り当てた。皮質動物(嗅覚皮質内に電極が埋め込まれた対象)を5つの群、すなわち化合物X単独、化合物Xおよびフィゾスチグミン、フィゾスチグミン単独、化合物Xおよびガランタミン、ガランタミン単独のうちの1つに無作為に割り当てた。各試験において、安定性を確立するために少なくとも15分間ベースライン応答を記録し、続いてビヒクル溶液(ddw)の注射およびさらに20分間の記録を行い、注射手順またはビヒクルがベースライン応答に影響しないことを検証した。+5%を超えるベースライン変化が観察された場合、その日は実験を中止した。他の全ての動物には、ビヒクルの20分後に試験化合物を注射し、fEPSP記録を少なくとも2時間継続したが、2時間の時点で薬物効果が依然として存在する場合は4時間継続した。動物が繰り返し使用される場合は、各試験セッション後少なくとも3日のウォッシュアウト期間を設けた。応答は、実験全体を通して、20秒毎に1回サンプリングした。
【0063】
試験化合物
化合物Xは、粉末として、冷凍庫内で約−20℃で凍結状態を維持した。直前に粉末を再蒸留水(ddw)に溶解して12mg/mlの原液を作製し、次いで6mg/kg、最終体積1ml/kgでの注射用に50%希釈した。
【0064】
フィゾスチグミン(エゼリンヘミ硫酸塩)をSigma Aldrich社から購入し、ddwに溶解して1mg/ml原液を作製した。注射用に、原液を10倍希釈し、0.1mg/kg、最終体積1ml/kgで投与した。ガランタミン(ガランタミン臭化水素酸塩)をSigma Aldrich社から購入し、ddwに溶解して2mg/ml原液を作製した。注射用に、原液を50%希釈し、1mg/kg、最終体積1ml/kgで投与した。
【0065】
化合物Xおよびフィゾスチグミンを組み合わせた処置用に、化合物Xの12mg/ml原液およびフィゾスチグミンの1mg/ml原液を、それぞれ50%および10%希釈し、最終体積1ml/kgで注射した。化合物Xおよびガランタミンを組み合わせた処置用に、化合物Xの12mg/ml原液およびガランタミンの2mg/ml原液を、それぞれ50%希釈し、最終体積1ml/kgで注射した。
全ての化合物は、腹腔内(ip)投与した。
【0066】
計算
全ての電気生理学的データは、NacGather 2.0.7.2 Neurodata Acquisition Systemsにより収集およびデジタル化し、次いでNacShowを使用して分析し、GraphPad Prismを使用してグラフ化した。全ての結果は、ビヒクル注射に先立つ15分間のベースライン期間にわたるfEPSP増幅値に対して表され、平均±SEMとして示されている。興奮性シナプス伝達に対する薬物効果(fEPSP増幅)については、15分間薬物前ビヒクル期間全体の平均データと、最も大きな増加を示すことが特定された15分間薬物後期間にわたる平均データとの間の対応のある両側t検定を使用して、各化合物に対して別個に統計比較を行った。組み合わせた処置(化合物Xおよびフィゾスチグミンまたは化合物Xおよびガランタミン)と化合物X単独またはコリンエステラーゼ阻害剤単独の促進効果の間の統計比較は、15分間にわたり平均化された薬物後ピーク値の間の対応のない片側t検定を使用して行った。有意値は、p<0.05(により示される)、p<0.01(**により示される)およびp<0.001(***により示される)に設定した。
【0067】
結果
表1は、フィゾスチグミン、化合物X、およびフィゾスチグミンと組み合わせた化合物Xの、自由行動ラットの海馬興奮性シナプス伝達に対する効果を示す。薬物効果は、薬物投与直前のビヒクル注射後に生じる変化と比較した、薬物存在下でのfEPSPの振幅における変化を測定することにより評価した。化合物X単独、およびフィゾスチグミンと同時適用された化合物Xは両方とも、基底伝達において有意な改質をもたらさなかったフィゾスチグミンとは対照的に、海馬fEPSPを有意に向上させた。さらに、化合物Xおよびフィゾスチグミンの同時適用により生成された促進は、化合物X単独またはフィゾスチグミン単独で観察された促進よりも有意に大きかった(図1を参照)。
【表2】

【0068】
表1は、6mg/kg ipの化合物X単独(n=5)および0.1mg/kg ipのフィゾスチグミンとの組み合せ(n=3)が、自由行動Sprague−Dawleyラットの海馬における基底興奮性シナプス伝達に対し有意な促進活性を有していたことを示している。フィゾスチグミン単独(n=3)は不活性であり、基底シナプス伝達の有意な向上は示さなかった。個々のt検定(両側、対応あり)の比較値が示される。
【0069】
表2は、フィゾスチグミン、化合物X、およびフィゾスチグミンと組み合わせた化合物Xの、嗅覚皮質における興奮性シナプス伝達に対する効果を示す。薬物効果は、薬物投与直前のビヒクル注射後に生じる変化と比較した、薬物存在下でのfEPSPの振幅における変化を測定することにより評価した。化合物X単独、およびフィゾスチグミンと同時適用された化合物Xは両方とも、海馬fEPSPを有意に向上させた。フィゾスチグミンもまた、基底伝達の有意な増加をもたらしたが、この効果は、化合物X単独またはフィゾスチグミンと同時適用された化合物Xにおいて観察された効果よりも有意に小さかった(図2を参照)。さらに、化合物Xおよびフィゾスチグミンの同時適用により生成された促進は、化合物X単独で観察された促進よりも有意に大きかった(図2を参照)。
【表3】

【0070】
表2は、6mg/kg ipの化合物X単独(n=11)および0.1mg/kg ipのフィゾスチグミンとの組み合せ(n=7)が、自由行動Sprague−Dawleyラットの嗅覚皮質における基底興奮性シナプス伝達に対し有意な促進活性を有していたことを示している。フィゾスチグミン単独(n=5)もまた、基底シナプス伝達の有意な向上をもたらした。個々のt検定(両側、対応あり)の比較値が示される。フィゾスチグミン単独により生成された促進は、化合物X単独または化合物Xおよびフィゾスチグミンの組み合せの両方で得られた促進よりも有意に小さかった。
【0071】
表3は、ガランタミン、化合物X、およびガランタミンと組み合わせた化合物Xの、嗅覚皮質における興奮性シナプス伝達に対する効果を示す。薬物効果は、薬物投与前のビヒクル注射後に生じる変化と比較した、薬物存在下でのfEPSPの振幅における変化を測定することにより評価した。化合物X単独、およびガランタミンと同時適用された化合物Xは両方とも、基底伝達において有意な改質をもたらさなかったガランタミンとは対照的に、海馬fEPSPを有意に向上させた。化合物Xおよびガランタミンの同時適用により生成された促進は、化合物X単独で観察された促進よりも有意に大きかったが、有意レベルには達していなかった(p=0.07)(図3を参照)。
【表4】

【0072】
表3は、6mg/kg ipの化合物X単独(n=11)および1mg/kg ipのガランタミンとの組み合せ(n=3)が、自由行動Sprague−Dawleyラットの嗅覚皮質における基底興奮性シナプス伝達に対し有意な促進活性を有していたことを示している。1mg/kgのガランタミン単独(n=3)は不活性であり、基底シナプス伝達の有意な向上は示さなかった。個々のt検定(両側、対応あり)の比較値が示される。
【0073】
これらの実験は、齧歯類における記憶を向上させる用量の化合物Xが、行動遂行および学習と正の関連を示す指標である基底海馬および皮質興奮性シナプス伝達における有意な向上をもたらしたことを示している。自由行動ラットにおける化合物Xのこの応答は、海馬および嗅覚皮質へのフィゾスチグミンまたはガランタミンの閾値下の用量の同時投与により、同程度に有意に高められた。同じ用量のフィゾスチグミン単独およびガランタミン単独は、基底伝達に影響しなかった。これらの結果は、化合物Xが、フィゾスチグミンおよびガランタミンを増幅する、またはそれらとの相乗作用を示し得ることを実証している。
【0074】
実施例2
本発明の組成物を、以下の表にさらに例示する。
【表5】

【0075】
【表6】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬学的に効果的なコリンエステラーゼ阻害剤、および式I:
【化1】

(式中、Xは、CHまたはCH−CHであり、
Aは、アリールであるか、またはN、S、およびOからなる群から選択される0個、1個、2個、もしくは3個のヘテロ原子を有するヘテロアリールであり、
Aは、それぞれ0個から8個の炭素原子、0個から3個の酸素原子、0個から3個のハロゲン原子、0個から2個の窒素原子、0個から2個の硫黄原子、および0個から24個の水素原子を有する0個、1個、2個、または3個の置換基を有する)
の化合物を含む、薬学的組成物。
【請求項2】
Aは、ピリジニル、チエニル、フリル、キノリニル、メチルフェニル、およびビフェニルからなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項3】
Aは、非置換である、請求項2に記載の薬学的組成物。
【請求項4】
前記式Iの化合物は、
【化2】

【化3】

ならびにその鏡像異性体および薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項1に記載の薬学的組成物。
【請求項5】
前記コリンエステラーゼ阻害剤は、ドネペジル、ガランタミン、およびリバスチグミンからなる群から選択される、請求項1〜4のいずれかに記載の薬学的組成物。
【請求項6】
認識障害を処置する方法であって、そのような処置を必要とするヒトに、薬学的に効果的なコリンエステラーゼ阻害剤、および式I:
【化4】

(式中、Xは、CHまたはCH−CHであり、
Aは、アリールであるか、またはN、S、およびOからなる群から選択される0個、1個、2個、もしくは3個のヘテロ原子を有するヘテロアリールであり、
Aは、それぞれ0個から8個の炭素原子、0個から3個の酸素原子、0個から3個のハロゲン原子、0個から2個の窒素原子、0個から2個の硫黄原子、および0個から24個の水素原子を有する0個、1個、2個、または3個の置換基を有する)
の化合物を含む、薬学的組成物を投与することを含む、方法。
【請求項7】
Aは、ピリジニル、チエニル、フリル、キノリニル、メチルフェニル、およびビフェニルからなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
Aは、非置換である、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記式Iの化合物は、
【化5】

【化6】

ならびにその鏡像異性体および薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項10】
前記コリンエステラーゼ阻害剤は、ドネペジル、ガランタミン、およびリバスチグミンからなる群から選択される、請求項6〜9のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
前記認識障害は、失認症、健忘症、失語症、失行症、幻覚症状、認知症および学習障害からなる群から選択される、請求項6〜10のいずれかに記載の方法。
【請求項12】
認識障害を処置する方法であって、そのような処置を必要とする患者に、薬学的に効果的なコリンエステラーゼ阻害剤を含む第1の組成物と、式I:
【化7】

(式中、Xは、CHまたはCH−CHであり、
Aは、アリールであるか、またはN、S、およびOからなる群から選択される0個、1個、2個、もしくは3個のヘテロ原子を有するヘテロアリールであり、
Aは、それぞれ0個から8個の炭素原子、0個から3個の酸素原子、0個から3個のハロゲン原子、0個から2個の窒素原子、0個から2個の硫黄原子、および0個から24個の水素原子を有する0個、1個、2個、または3個の置換基を有する)
の化合物を含む第2の組成物とを投与することを含む、方法。
【請求項13】
Aは、ピリジニル、チエニル、フリル、キノリニル、メチルフェニル、およびビフェニルからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
Aは、非置換である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記式Iの化合物は、
【化8】

【化9】

ならびにその鏡像異性体および薬学的に許容される塩からなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
前記コリンエステラーゼ阻害剤は、ドネペジル、ガランタミン、およびリバスチグミンからなる群から選択される、請求項12〜15のいずれかに記載の方法。
【請求項17】
前記認識障害は、失認症、健忘症、失語症、失行症、幻覚症状、認知症および学習障害からなる群から選択される、請求項12〜16のいずれかに記載の方法。
【請求項18】
認知症を処置する方法であって、そのような処置を必要とする患者に、
a)ドネペジル、ガランタミン、およびリバスチグミンからなる群から選択される、薬学的に効果的なコリンエステラーゼ阻害剤と、
b)
【化10】

【化11】

【化12】

およびその薬学的に許容される塩からなる群から選択される化合物とを含む薬学的組成物を投与することを含む、方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−533566(P2012−533566A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520814(P2012−520814)
【出願日】平成22年7月16日(2010.7.16)
【国際出願番号】PCT/US2010/042308
【国際公開番号】WO2011/009061
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】