説明

誘導ラマン散乱顕微鏡

【課題】生細胞にダメージを与えることを低減でき、指紋領域での生細胞のイメージングを行うことができる誘導ラマン散乱顕微鏡を提供する。
【解決手段】本発明の誘導ラマン散乱顕微鏡1は、第1パルス光ω1を発生する第1レーザ光源2と、第1パルス光ω1よりも周波数の低い第2パルス光ω2を発生する第2レーザ光源3と、第2パルス光ω2の光路に設けられ、入射光を0.5MHz以上の周波数で強度変調させる変調器4と、第1パルス光ω1と第2パルス光ω2とを重ね合わせるミラー(合波器)8とを備え、ミラー8からの第1パルス光ω1と第2パルス光ω2とは同期されており、さらに、ミラー8により重ね合わされたパルス光から、複数の光束を生成するマイクロレンズアレイ12と、複数の光束を試料に照射するための対物レンズ13と、変調器4によって変調された第2パルス光ω2を減衰させるフィルタ14と、フィルタ14を透過した光の強度を検出する2次元検出器15とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導ラマン散乱を利用して生細胞等の試料を高速にイメージングする誘導ラマン散乱顕微鏡に関するものである。
【背景技術】
【0002】
分子生物学においては、生体内の分子、例えばDNAやアミノ酸、タンパク質、細胞小器官等の活動を、生きたまま観察したいという需要が多い。従来の蛍光観察や多光子励起蛍光観察を用いて生体内の分子を観察することはある程度可能であるが、観察目標とする分子を蛍光色素で標識する必要がある。
【0003】
しかしながら、生体を蛍光色素で染色することは、蛍光色素に毒性が存在することや、蛍光色素によって生体反応が妨げられる等、少なからず生体に影響を及ぼすと考えられるため、好ましい方法とはいい難い。
【0004】
近年、生体内の分子の3次元分布を無染色で観察する目的で、コヒーレントアンチストークスラマン散乱(CARS)を用いた顕微鏡(CARS顕微鏡)が種々提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0005】
CARS顕微鏡は、波長の異なる2つの光波を試料の同一部分に同時に入射させ、この2つの光波の周波数差が上記試料を構成する物質の分子振動数に一致することによって発せられるCARS光を検出することにより上記試料の状態を3次元的に観測するものである。このようなCARS顕微鏡を用いれば、試料に対する染色の必要がなくなるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−276667号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記CARS顕微鏡では、非共鳴バックグラウンドと呼ばれる背景光がスペクトル上に重畳することが知られている。この非共鳴バックグラウンドは、単に重畳するだけでなくスペクトルの歪みも与える。そのため、様々な分子振動が数多く現れ、分子の同定能力の高い指紋領域と呼ばれる領域での生細胞のイメージングは、上記非共鳴バックグラウンドの影響とスペクトルの歪により非常に困難となっている。
【0008】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたものであり、本発明の目的は、生細胞にダメージを与えることを低減でき、高波数領域(1800〜3500cm−1)だけでなく、いわゆる指紋領域(500〜1800cm−1)での生細胞のイメージングをも行うことができる誘導ラマン散乱顕微鏡を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る誘導ラマン散乱顕微鏡は、第1パルス光を発生する第1レーザ光源と、
前記第1パルス光よりも周波数の低い第2パルス光を発生する第2レーザ光源と、
前記第1パルス光の光路又は前記第2パルス光の光路に設けられ、入射光を0.5MHz以上の周波数で強度変調させる変調器と、
前記第1パルス光と前記第2パルス光とを重ね合わせる合波器と、を備え、
前記合波器からの前記第1パルス光と前記第2パルス光とは同期されており、
さらに、前記合波器により重ね合わされたパルス光から、複数の光束を生成する光学部品と、
前記複数の光束を試料に照射するための対物レンズと、
前記変調器によって変調された前記第1パルス光又は前記変調器によって変調された前記第2パルス光を減衰させるフィルタと、
前記フィルタを透過した光の強度を検出する2次元検出器と、を備え、
前記2次元検出器は、複数の撮像ピクセル及び当該撮像ピクセル毎に設けられた第1キャパシタ及び第2キャパシタを有しており、
前記フィルタを透過した光により発生する光電荷を前記第1キャパシタに溜める第1期間と前記光電荷を前記第2キャパシタに溜める第2期間との和が、前記変調器の1周期以内となるように同期されていることを要旨とする。
【0010】
本発明において、前記変調器は、隣り合う複数のパルス群をオンにする区間と、他の隣り合う複数のパルス群をオフにする区間とを有することが好ましい。
【0011】
本発明において、前記変調器は、1のパルスをオンにする区間と、当該パルスの次のパルスをオフにする区間と有してもよい。
【0012】
本発明において、前記変調器が電気光学効果を有する電気光学変調素子又は音響光学効果を有する音響光学変調素子からなることが好ましい。
【0013】
本発明において、前記光学部品は、複数のマイクロレンズ及び当該複数のマイクロレンズを回転させる回転手段で構成されることが好ましい。
【0014】
本発明において、前記光学部品は、前記回転手段の代わりに、前記合波器により重ね合わされたパルス光をX軸に沿って走査させる第1走査ミラーと、当該パルス光をY軸に沿って走査させる第2走査ミラーとを備えてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る誘導ラマン散乱顕微鏡によれば、複数の光束を生成する光学部品の採用により、試料(特に生細胞)にダメージを与えることが低減される。そして、誘導ラマン散乱効果の利用により、CARS顕微鏡のような非共鳴バックグラウンドの影響とスペクトルの歪が生じることなく、指紋領域(500〜1800cm−1)での生細胞のイメージングを行うことができる。
【0016】
また、2次元検出器の検出処理を変調器に同期させることによって、誘導ラマン散乱によって第1パルス光に生じる僅かな強度変調をリアルタイム(例えば33ms/1画像)で検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明に係る誘導ラマン散乱顕微鏡の全体構成を示す説明図である。
【図2】誘導ラマン散乱顕微鏡の検出システムの構成を示す説明図である。
【図3】(a)は第1パルス光ω1の時間情報と変調後の第2パルス光ω2の時間情報を示す図であり、(b)は第2パルス光ω2の変調に起因して変調された第1パルス光ω1の時間情報を示す図である。
【図4】図2の2次元検出器のピクセル(受光素子)毎の構成を示す簡単な断面図である。
【図5】入射光を多焦点化するための光学部品の他の例を示す図である。
【図6】変調を行うための他の例を示す図である。
【図7】多焦点化するための他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面に示した実施の形態に基づいて本発明を詳細に説明する。
【0019】
1.誘導ラマン散乱顕微鏡の全体構成
図1は本発明に係る誘導ラマン散乱顕微鏡1の全体構成を示す説明図である。
【0020】
図1に示すように、本発明に係る誘導ラマン散乱顕微鏡1は、ピコ秒レーザ光源である第1レーザ光源2及び第2レーザ光源3、変調器4、パルス発生器5、バランス相互相関器6、ミラー7,8,9,10、並びに検出システム11を主として備えている。変調器4は、電気光学効果を有する電気光学変調素子又は音響光学効果を有する音響光学変調素子により構成することができる。
【0021】
検出システム11は、マイクロレンズアレイ12、対物レンズ13、フィルタ14、及び2次元検出器15を主として備えている。なお、検出システム11の詳細については後述する。
【0022】
第1レーザ光源2は、第1パルス光ω1を発生する。第2レーザ光源3は、第1パルス光ω1よりも周波数の低い第2パルス光ω2を発生する。第1パルス光ω1は短波長(例えば710nm)であり、第2パルス光ω2は長波長(例えば920nm)である。
【0023】
第1レーザ光源2により発生された第1パルス光ω1は、ミラー7を介して合波器としてのミラー(ダイクロイックミラー)8に照射される。
【0024】
また、第2レーザ光源3により発生された第2パルス光ω2は変調器4により0.5MHz以上2GHz以下の周波数、好ましくは、0.5MHz以上40MHz以下でその強度が変調されるようになっている。これは次の理由による。パルス光の強度は通常1%程度揺らいでいる。この強度揺らぎは0.5MHz以下の周波数で主に生じることから、後述の誘導ラマン散乱に起因して第1パルス光ω1に現れる10−4以下の非常に僅かな変調度を検出するために、0.5MHz以上の周波数で変調するのである。
【0025】
変調器4は、パルス発生器5により発生されたパルスを、後述の方法でオン又はオフすることで第2パルス光ω2の変調を行う。変調器4は第2パルス光ω2の光路に設けられていればよく、その配設は第2レーザ光源3の内外を問わない。なお以下において、変調器4による変調後の第2パルス光ω2を単に第2パルス光ω2と呼ぶことがある。
【0026】
変調後の第2パルス光ω2はミラー8に照射される。ミラー8では、第1パルス光ω1と第2パルス光ω2とが空間的に重ね合わされて合波されるようになっている。
【0027】
第1パルス光ω1と第2パルス光ω2との合波の一部は、ミラー10を介してバランス相互相関器6に入射される。
【0028】
バランス相互相関器6は第1パルス光ω1と第2パルス光ω2とを時間的に高精度に同期させるものである。すなわち、バランス相互相関器6は、第1パルス光ω1と第2パルス光ω2とをそれぞれ高速応答が可能な光検出器により検出し、位相検出器により2つのパルス光間の時間をピコ秒の分解能で検出する。また、バランス相互相関器6は光学的に2つのパルス光間の時間をフェムト秒の分解能で検出する。これら2種類の時間信号を第2レーザ光源3のレーザ共振器に設けられたピエゾ素子3aにフィードバックして、第1パルス光ω1と第2パルス光ω2とを時間的に高精度に同期させるようになっている。なお、バランス相互相関器6により2つのレーザ光間のジッター(時間揺らぎ)を例えば8フェムト秒まで抑えることができる。(これに関しては、特許出願している。国際出願番号WO2007/132540, 発明者: 橋本守、南川丈夫、谷本尚生、小林実、藤田克昌、河田聡、荒木勉、“パルスレーザ光のタイミング調整装置、調整方法及び光学顕微鏡”,出願人:国立大学法人大阪大学、優先日2006年5月15日)。
【0029】
このような構成により、第1パルス光ω1と第2パルス光ω2とが時間的及び空間的に重ね合わされて、検出システム11の光学部品としてのマイクロレンズアレイ12に照射される。以下、検出システム11について説明する。
【0030】
2.検出システムの構成
図2は検出システム11の構成を示す説明図である。
【0031】
図2に示すように、ドーナツ型のマイクロレンズアレイ12には、凸状または凹状の複数のマイクロレンズ12aが形成されている。
【0032】
このような複数のマイクロレンズ12aで構成されるマイクロレンズアレイ12に第1パルス光ω1と第2パルス光ω2を照射することにより、これらの各光を複数の光束に分割することができる。つまり、マイクロレンズアレイ12を採用することによって、試料上での多焦点化の実現が可能となる。これにより、試料Sが生細胞等である場合に、単焦点で光を照射するよりも該生細胞に対して与えるダメージを低減することができる。なお、各マイクロレンズ12aを凹状に形成すれば、色収差による影響をより低減できる。
【0033】
マイクロレンズアレイ12には、当該マイクロレンズアレイ12を周方向に回転させる回転手段12bが設けられている。この回転手段12bは、例えばマイクロレンズアレイ12の中央に接続された回転軸と該回転軸を回転させるモータ等とにより構成することができる。回転手段12bによりマイクロレンズアレイ12を回転させることで、試料Sの全体を走査できこの試料Sの画像を取得することができる。
【0034】
ここで、第1パルス光ω1と第2パルス光ω2の時間情報について図面を参照しつつ説明する。
【0035】
図3(a)は第1パルス光ω1の時間情報と変調後の第2パルス光ω2の時間情報を示す図であり、図3(b)は第2パルス光ω2の変調に起因して変調された第1パルス光ω1の時間情報を示す図である。
【0036】
図3(a)に示すように、第1パルス光ω1は所定間隔で発せられた複数のパルスで構成される。
【0037】
上記の変調器4により変調された後の第2パルス光ω2は、例えば図3(a)に示すように、隣り合う複数のパルス群をオンにする区間と、他の隣り合う複数のパルス群をオフにする区間とを有するものとなる。なお、変調された後の第2パルス光ω2のその他の例として、この第2パルス光ω2が1のパルスをオンにする区間と、当該パルスの次のパルスをオフにする区間とを有するものも挙げられる。
【0038】
上記のように時間的及び空間的に重ね合わされた第1パルス光ω1と変調後の第2パルス光ω2とがマイクロレンズアレイ12及び対物レンズ13を介して試料Sに同時に照射され、これら2つのパルス光の周波数の差がラマン活性な分子振動の周波数と一致すると、誘導ラマン散乱効果によって第1パルス光ω1の強度は減衰し、第2パルス光ω2の強度は増強される。その結果、図3(b)に示すように、第1パルス光ω1の強度も変調されることとなる。
【0039】
なお、第1パルス光ω1と第2パルス光ω2の時間幅は、500フェムト秒〜500ピコ秒であることが好ましい。上記時間幅が500フェムト秒よりも短くなると、波長幅が広がってしまい、得られるラマン散乱スペクトルの波数(波長)分解能が悪くなり個々の分子振動を検出し難くなり、500ピコ秒よりも長くなると、ピークパワーが小さくなってしまい、誘導ラマン散乱の効率が低下するためである。
【0040】
図2に戻って、試料Sを透過した第1パルス光ω1及び第2パルス光ω2のうち、第2パルス光ω2がフィルタ14によって減衰される。
【0041】
誘導ラマン散乱により第1パルス光ω1に現れる変調度は、10−4〜10−5程度の非常に僅かなものである。そこで本発明では、フィルタ14を透過した第1パルス光ω1の強度変化を検出することが可能な下記の2次元検出器15を採用する。
【0042】
3.2次元検出器の構成
図4は図2の2次元検出器15のピクセル(受光素子)毎の構成を示す簡単な断面図である。
【0043】
図4に示すように、2次元検出器15は複数の撮像ピクセルpx及び当該撮像ピクセルpx毎に設けられた第1キャパシタ15a及び第2キャパシタ15bを有している。
【0044】
2次元検出器15は、0.5MHz以上の周波数で図1の変調器4と同期して上記のフィルタ14を透過した第1パルス光ω1の強度を検出する。すなわち、フィルタ14を透過した第1パルス光ω1により発生する光電荷を第1キャパシタ15aに溜める第1期間と光電荷を第2キャパシタ15bに溜める第2期間との和が、変調器4の1周期以内となるように同期されている。これにより、0.5MHz以上の周波数で変調されて発生する光電荷を、1素子当たり2つのキャパシタ15a,15bに振り分ける電荷変調を行うことができる。
【0045】
このように、本発明に係る誘導ラマン散乱顕微鏡1においては、マイクロレンズアレイ12の採用により生細胞にダメージを与えることが低減される。そして、誘導ラマン散乱効果の利用により、CARS顕微鏡のような非共鳴バックグラウンドの影響とスペクトルの歪が生じることなく、指紋領域(500〜1800cm−1)での生細胞のイメージングを行うことができる。
【0046】
また、2次元検出器15の検出処理を変調器4に同期させることにより、誘導ラマン散乱によって第1パルス光ω1に生じる僅かな強度変調をリアルタイム(33ms/1画像)で検出することができる。
【0047】
4.他の実施形態
図5は入射光を多焦点化するための光学部品の他の例を示す図である。
【0048】
マイクロレンズアレイ12で多焦点化された複数のスポットは、当該マイクロレンズアレイ12を回転させることで走査しているが、これに限定されるものではない。
【0049】
図5に示すように、回転手段12b(図2)を設ける代わりに、つまりマイクロレンズアレイ12を回転させる代わりに、例えば2つのガルバノミラーからなる第1,第2走査ミラー20a,20bを設けて、ミラー8により重ね合わされたパルス光を振ることによって走査させてもよい。この場合、上述のマイクロレンズアレイ12の代わりに、図5に示すように、複数のマイクロレンズ22aを有する矩形状のレンズ22を採用することができる。なお、第1,第2走査ミラー20a,20bと上記のレンズ22との間にレンズ21が設けられる。
【0050】
また上記では、第2パルス光ω2を変調器4により変調させて、第1パルス光ω1の強度を2次元検出器15で検出することとしたが、これに限定されるものではなく、第1パルス光ω1を変調器4により変調させて、第2パルス光ω2の強度を2次元検出器15で検出してもよい。この場合、第1パルス光ω1の光路に変調器4が設けられる。
【0051】
また、フィルタ14と2次元検出器15との間に1又は複数のリレーレンズを設けてもよい。
【0052】
さらに、上記の誘導ラマン散乱を利用した検出システム11を内視鏡等の他の機器に応用することもできる。
【0053】
また、変調をかける代わりに、発振周期が2倍異なるパルス光を用いてもよい。例えば、80MHzで発振するレーザ光源と、160MHzで発振するレーザ光源とを同期させれば、80MHzで変調したことと同様な効果を奏する。
【0054】
なお、160MHzで発振するレーザー光源を用いずとも、図6に示すように、ハーフミラー30,34とミラー31,32とを組み合わせて、80MHzで発振するレーザ光源から160MHzで繰り返すパルス光源を作り出すことができる。なお、同図の33は光強度調整装置である。
【0055】
また、マイクロレンズアレイ12を用いるだけでなく、図7に示すように、複数のハーフミラーと複数のミラーとを組み合わせて複数のビームを形成することも可能である。なお図7ではx軸方向のみを表しており、y軸方向にも同様な光学系を用いることで、8×8の64のビームを形成することが可能である。この場合には、上記のような2つのガルバノミラーによって走査することが好ましい。
【0056】
また、上記のように2台の別のレーザ光源2,3を採用する形態とする場合に限らず、1台のレーザ光源を元に、OPO(Optical Parametric Oscillation)等によって波長変換した光を用いても良い。この場合、元にした光と波長変換した光、あるいは波長変換した2つの光を、光学遅延等によって時間的に重ね合わせて用いる。
【0057】
さらに、上記実施形態では、試料Sを透過してきた光を検出するようにしているが、このような透過光に限定されるものではなく、後方に散乱してきた光を検出してもよい。
【0058】
以上が本発明を実施するための形態であるが、本発明はもとより上記実施形態によって制限を受けるものではなく、本発明の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【符号の説明】
【0059】
1 誘導ラマン散乱顕微鏡
2 第1レーザ光源
3 第2レーザ光源
4 変調器
5 パルス発生器
6 バランス相互相関器
8 ミラー(合波器)
11 検出システム
12 マイクロレンズアレイ
12a マイクロレンズ
12b 回転手段
13 対物レンズ
14 フィルタ
15 2次元検出器
15a 第1キャパシタ
15b 第2キャパシタ
20a 第1走査ミラー
20b 第2走査ミラー
px ピクセル
ω1 第1パルス光
ω2 第2パルス光

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1パルス光を発生する第1レーザ光源と、
前記第1パルス光よりも周波数の低い第2パルス光を発生する第2レーザ光源と、
前記第1パルス光の光路又は前記第2パルス光の光路に設けられ、入射光を0.5MHz以上の周波数で強度変調させる変調器と、
前記第1パルス光と前記第2パルス光とを重ね合わせる合波器と、を備え、
前記合波器からの前記第1パルス光と前記第2パルス光とは同期されており、
さらに、前記合波器により重ね合わされたパルス光から、複数の光束を生成する光学部品と、
前記複数の光束を試料に照射するための対物レンズと、
前記変調器によって変調された前記第1パルス光又は前記変調器によって変調された前記第2パルス光を減衰させるフィルタと、
前記フィルタを透過した光の強度を検出する2次元検出器と、を備え、
前記2次元検出器は、複数の撮像ピクセル及び当該撮像ピクセル毎に設けられた第1キャパシタ及び第2キャパシタを有しており、
前記フィルタを透過した光により発生する光電荷を前記第1キャパシタに溜める第1期間と前記光電荷を前記第2キャパシタに溜める第2期間との和が、前記変調器の1周期以内となるように同期されていることを特徴とする誘導ラマン散乱顕微鏡。
【請求項2】
前記変調器は、隣り合う複数のパルス群をオンにする区間と、他の隣り合う複数のパルス群をオフにする区間とを有する請求項1に記載の誘導ラマン散乱顕微鏡。
【請求項3】
前記変調器は、1のパルスをオンにする区間と、当該パルスの次のパルスをオフにする区間とを有する請求項1に記載の誘導ラマン散乱顕微鏡。
【請求項4】
前記変調器が電気光学効果を有する電気光学変調素子又は音響光学効果を有する音響光学変調素子からなる請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導ラマン散乱顕微鏡。
【請求項5】
前記光学部品は、複数のマイクロレンズ及び当該複数のマイクロレンズを回転させる回転手段で構成される請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘導ラマン散乱顕微鏡。
【請求項6】
前記光学部品は、前記回転手段の代わりに、前記合波器により重ね合わされたパルス光をX軸に沿って走査させる第1走査ミラーと、当該パルス光をY軸に沿って走査させる第2走査ミラーとを備える請求項5に記載の誘導ラマン散乱顕微鏡。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図1】
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【図2】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−113689(P2013−113689A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−259619(P2011−259619)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(504176911)国立大学法人大阪大学 (1,536)
【Fターム(参考)】