説明

誘導加熱式炊飯器

【課題】蓋内部にある温度ヒューズにヒータ電流を流さない構成にした時に、温度ヒューズ断線時に交流電源からヒータおよび誘導加熱コイルへの電力供給を確実に停止する。
【解決手段】交流電源とインバータ回路32とヒータ66への電流経路を導通、遮断するリレー61と、ヒータの温度に相当する値を検知し、所定値を越えると遮断する温度ヒューズ60と、交流電源から温度ヒューズを経由して電力供給され、直流電源に変換する第一の直流電源回路と、第一の直流電源回路より電源電圧を供給され、第一の直流電源回路59の出力電圧より低い電圧にする第二の直流電源回路64とを有し、第一の直流電源回路は半導体スイッチング素子のゲート端子のスレッショルド電圧の約2倍以上の電圧を出力するように構成し、制御部は第二の直流電源回路より電源電圧を供給され、駆動回路とリレーとトライアック駆動回路は第一の直流電源回路より電力供給されるようにしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般家庭で使用する誘導加熱とヒータ加熱を利用した炊飯器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の誘導加熱とヒータ加熱を利用した調理器には,調理物や水等を収容する鍋と、この鍋を誘導加熱する誘導コイルと、この誘導コイルに交流電流を印加するインバータ回路と、前記鍋を加熱するヒータと、前記鍋の中の調理物や水等を加熱調理する時は前記インバータ回路を駆動させ、かつ調理した後、保温する時は前記ヒータへ通電する制御手段とで構成した調理器があった(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記構成によれば、炊飯等の調理をする時は誘導コイルにより鍋を誘導加熱するため、電気ヒータのように1000Wまでという具合に、制限されるということはなく、ワット数を増やすことができ、これにより、強い火力で炊飯等の調理ができるため、おいしい御飯が炊けるようになる。さらに、保温時にはヒータへ通電して保温動作を行なわせるため、誘導加熱することによる雑音の発生もなくすることができるようになる。このように従来の構成によれば、簡単な構成にして、かつ強い火力で調理を行なうことができ、またヒータで保温を行なうため、雑音が出ることもない等、使い勝手のよい調理器を提供することができるものである。
【0004】
この従来例では特に図示していないが、特に、電気ヒータで鍋を加熱する場合、電気ヒータ制御素子が制御不能となり連続通電し、電気ヒータが過温度になると、過温度時に電気ヒータを断線するための温度ヒューズが動作し、電気ヒータの通電を防止し停止する。
【0005】
しかし、このような構成では、温度ヒューズが断線し、電気ヒータの通電が停止しても誘導コイルとインバータ回路は動作する。その結果、お客様は炊飯器が故障したと判断できず、保温性能が劣化したと感じるだけとなり、修理を依頼するのが遅れることになる。
【0006】
この従来例では、保温用ヒータを電気ヒータにし、誘導加熱と併用する構成であるが、例えば、鍋底を誘導コイルで加熱し、鍋側面と蓋内面を電気ヒータで加熱する構成にすることもある(例えば、特許文献2参照)。
【0007】
この場合でも、鍋側面や蓋内部の電気ヒータが過熱し、温度ヒューズが断線すると、蓋内面が加熱されず、蓋内面の露つきが多くなったと感じることになるが、何が原因かわからず、炊飯器の修理が遅れることになる。
【0008】
以上のように、誘導コイルと電気ヒータを両方利用した炊飯器では、電気ヒータの過温度で電気ヒータを遮断しても、誘導コイルのみが動作し、使用者が炊飯性能や保温性能が低下した原因が炊飯器の故障であると判断できないという課題があった。
【0009】
また、電気ヒータの過熱時に遮断する温度ヒューズを交流電源経路に入れる方法もあるが、この場合、誘導加熱時に10Aを超える大電流が流れるので、温度ヒューズの電流定格を大きくし、温度ヒューズそのもの自体も大きくなるため、蓋の狭い隙間に入れることができない。温度ヒューズに大電流を流す場合は、誘導加熱時に温度ヒューズが自己発熱し、電気ヒータが過熱していないにも関わらず断線する可能性もある。
【0010】
そもそも10A以上の大電流を流す経路を、蓋内部に引き回すため、蓋の安全性を高く
する必要が発生する。その結果、蓋の大型化、炊飯器本体の大型化という課題が発生した。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平1−265479号公報
【特許文献2】特開平7−327815号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、前記従来の構成では、電気ヒータの過熱時に電気ヒータへの電流径路を温度ヒューズで遮断しても、誘導加熱コイルが動作するため、炊飯器が動作することになり、電気ヒータの断線による炊飯性能や保温性能の低下の原因を使用者が判断できないという課題を有するものであった。
【0013】
また、10A以上の大電流を流す経路を、蓋内部に引き回すため、蓋の安全性を高くする必要が発生する。その結果、蓋の大型化、炊飯器本体の大型化という課題を有するものであった。
【0014】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、前記ヒータの過熱時に温度ヒューズが断線したときには、リレーで交流電源からヒータおよび誘導加熱コイルへの電力供給を遮断して安全性を確保するとともに、炊飯または保温動作を停止して、使用者が炊飯器の故障を判断できる誘導加熱式炊飯器を提供するものである。
【0015】
また、温度ヒューズをリレーを駆動するための電源の電流径路に設けることにより、温度ヒューズに流れる電流を小さくし、蓋の大型化を防ぐ誘導加熱式炊飯器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
前記従来の課題を解決するために、本発明の誘導加熱式炊飯器は、鍋を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルに並列接続または直列接続したコンデンサと、前記加熱コイルに接続し、前記加熱コイルを導通、遮断する半導体スイッチング素子を有するインバータ回路と,交流電源を整流し前記インバータ回路に電力供給する整流回路と、前記半導体スイッチング素子の入力端子をオンオフする駆動回路と、前記駆動回路を介して前記半導体スイッチング素子をオンオフ制御する制御部と、水を入れる水容器と前記水容器を加熱し水蒸気を発生させる水蒸気発生部と、前記水蒸気発生部から発生した水蒸気を加熱するヒータと、前記ヒータをオンオフするトライアックと、前記トライアックにオンオフ信号を送るトライアック駆動回路と、前記交流電源と前記インバータ回路と前記ヒータへの電流経路を導通、遮断するリレーと、前記電気ヒータの温度に相当する値を検知し、所定値を越えると遮断する温度ヒューズと、前記交流電源から前記温度ヒューズを経由して電力供給され、直流電源に変換する第一の直流電源回路と、前記第一の直流電源回路より電源電圧を供給され、前記第一の直流電源回路の出力電圧より低い電圧にする第二の直流電源回路とを有し、前記第一の直流電源回路は前記半導体スイッチング素子のゲート端子のスレッショルド電圧の約2倍以上の電圧を出力するように構成され、前記制御部は前記第二の直流電源回路より電源電圧を供給され、前記駆動回路と前記リレーと前記トライアック駆動回路は前記第一の直流電源回路より電力供給されるものである。
【0017】
これによって、温度ヒューズが断線したときに、交流電源から第一の直流電源回路への電流径路が遮断され、第一の直流電源回路が停止し、リレーへの供給電源がなくなり、リレーが交流電源からの電流径路を遮断することにより、ヒータおよび誘導加熱コイルへの
電力供給を停止するので、ヒータだけが停止して炊飯性能や保温性能がおかしくなることがなく、使用者が炊飯器の故障をすぐに判断でき、確実に修理を依頼することができる。
【0018】
特に、水蒸気を加熱するヒータのため、ヒータ機能が停止すると、ヒータ内部が結露し、ヒータ内部に水がたまり、過熱蒸気の噴出孔から水が落ちて、ご飯がベチャベチャになる恐れがあるが、交流電源からの電力供給を停止し、炊飯できなくするので、ご飯がベチャベチャになる前に修理することができる。
【0019】
また、第一の直流電源回路が停止することにより、第二の直流電源回路への電力供給がなくなり、制御部が停止するので、使用者は炊飯器が動作しないことがすぐにわかり、修理を依頼することができる。
【0020】
また、温度ヒューズに大電流が流れないため、温度ヒューズのリード線を細くすることができ蓋の大型化を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明の炊飯器は、鍋を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルに並列接続または直列接続したコンデンサと、前記加熱コイルに接続し、前記加熱コイルを導通、遮断する半導体スイッチング素子を有するインバータ回路と,交流電源を整流し前記インバータ回路に電力供給する整流回路と、前記半導体スイッチング素子の入力端子をオンオフする駆動回路と、前記駆動回路を介して前記半導体スイッチング素子をオンオフ制御する制御部と、水を入れる水容器と前記水容器を加熱し水蒸気を発生させる水蒸気発生部と、前記水蒸気発生部から発生した水蒸気を加熱するヒータと、前記ヒータをオンオフするトライアックと、前記トライアックにオンオフ信号を送るトライアック駆動回路と、前記交流電源と前記インバータ回路と前記ヒータへの電流経路を導通、遮断するリレーと、前記電気ヒータの温度に相当する値を検知し、所定値を越えると遮断する温度ヒューズと、前記交流電源から前記温度ヒューズを経由して電力供給され、直流電源に変換する第一の直流電源回路と、前記第一の直流電源回路より電源電圧を供給され、前記第一の直流電源回路の出力電圧より低い電圧にする第二の直流電源回路を有し、前記第一の直流電源回路は前記半導体スイッチング素子のゲート端子のスレッショルド電圧の約2倍以上の電圧を出力するように構成され、前記制御部は前記第二の直流電源回路より電源電圧を供給され、前記駆動回路と前記リレーと前記トライアック駆動回路は前記第一の直流電源回路より電力供給されることにより、ヒータが過熱したときに温度ヒューズが断線すると、温度ヒューズが交流電源から第一の直流電源回路への電流経路を遮断するため、第一の直流電源回路からリレーへの電力供給がなくなり、リレーが遮断するので、ヒータと誘導加熱コイルの電流径路をリレーで遮断して安全性を確保するとともに、炊飯器の動作が停止するので、使用者が炊飯器の故障をすぐに判断し、修理を依頼することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の実施の形態1における誘導加熱式炊飯器の断面図
【図2】本発明の実施の形態1における図1の誘導加熱式炊飯器の蓋の一部を切り欠いた状態を模式的に示す上面図
【図3】本発明の実施の形態1における誘導加熱式炊飯器の駆動回路の主要ブロック図
【発明を実施するための形態】
【0023】
第1の発明は、鍋を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルに並列接続または直列接続したコンデンサと、前記加熱コイルに接続し、前記加熱コイルを導通、遮断する半導体スイッチング素子を有するインバータ回路と,交流電源を整流し前記インバータ回路に電力供給する整流回路と、前記半導体スイッチング素子の入力端子をオンオフする駆動回
路と、前記駆動回路を介して前記半導体スイッチング素子をオンオフ制御する制御部と、水を入れる水容器と前記水容器を加熱し水蒸気を発生させる水蒸気発生部と、前記水蒸気発生部から発生した水蒸気を加熱するヒータと、前記ヒータをオンオフするトライアックと、前記トライアックにオンオフ信号を送るトライアック駆動回路と、前記交流電源と前記インバータ回路と前記ヒータへの電流経路を導通、遮断するリレーと、前記電気ヒータの温度に相当する値を検知し、所定値を越えると遮断する温度ヒューズと、前記交流電源から前記温度ヒューズを経由して電力供給され、直流電源に変換する第一の直流電源回路と、前記第一の直流電源回路より電源電圧を供給され、前記第一の直流電源回路の出力電圧より低い電圧にする第二の直流電源回路とを有し、前記第一の直流電源回路は前記半導体スイッチング素子のゲート端子のスレッショルド電圧の約2倍以上の電圧を出力するように構成され、前記制御部は前記第二の直流電源回路より電源電圧を供給され、前記駆動回路と前記リレーと前記トライアック駆動回路は前記第一の直流電源回路より電力供給されるものである。
【0024】
これによって、ヒータが過熱したときに温度ヒューズが断線すると、温度ヒューズが交流電源から第一の直流電源回路への電流経路を遮断するため、第一の直流電源回路からリレーへの電力供給がなくなり、リレーが遮断するので、ヒータと誘導加熱コイルの電流径路をリレーで遮断して安全性を確保するとともに、炊飯器の動作が停止するので、使用者が炊飯器の故障をすぐに判断し、修理を依頼することができる。
【0025】
特に、水蒸気を過熱するヒータのため、ヒータ機能が停止すると、ヒータ内部が結露し、ヒータ内部に水がたまり、過熱蒸気の噴出孔から水が落ちて、ご飯がベチャベチャになる恐れがあるが、交流電源からの電力供給を停止し、炊飯できなくするので、ご飯がベチャベチャになる前に修理することができる。
【0026】
また、第一の直流電源回路が停止することにより、第二の直流電源回路への電力供給がなくなり、制御部が停止するので、使用者は炊飯器が動作しないことがすぐにわかり、修理を依頼することができる。
【0027】
また、温度ヒューズに大電流が流れないため、温度ヒューズのリード線を細くすることができ蓋の大型化を防ぐことができる。
【0028】
第2の発明は、特に、第1の発明のトライアック駆動回路は、入力側と出力側が電気的に絶縁された光半導体素子を有することにより、インバータ回路を構成する半導体スイッチング素子の駆動電源とトライアック駆動回路の電源を共用することができ、電源回路の小型化ができる。
【0029】
従って、電源回路を小型化する分、実装する基板を小型化することができ、炊飯器を小型化することができる。
【0030】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の誘導加熱式炊飯器において、交流電源から整流回路を介しインバータ回路へ供給される電流に相当する値を検知する電流検知回路を有し、前記電流検知回路はトライアックとヒータからなる直列回路より後段に配置することにより、ヒータに流れる電流が電流検知回路を流れないので、インバータ回路に流れる電流のみを検知することができる。
【0031】
第4の発明は、特に、第1から第3のいずれか1つの発明の誘導加熱式炊飯器が、制御部は炊飯シーケンスと保温シーケンスを記憶したマイクロコンピュータを有し、前記マイクロコンピュータは炊飯シーケンスと保温シーケンスに応じて所定の電流設定値を有し、この電流設定値と電流検知回路の出力値を比較して、電流検知回路の出力値が電流設定値
になるようにオン時間を設定するとともに、前記電流設定値が所定値よりも大きい場合は、ヒータの駆動を禁止することにより、一般家庭にあるブレーカの許容電流を超えることがなくなり、ブレーカの許容電流を超えてブレーカが落ちることにより、炊飯器が停止することがなくなる。従って、確実に炊飯シーケンスや保温シーケンスを実行することができる。
【0032】
第5の発明は、特に、第1から3のいずれか1つの発明の制御部は炊飯シーケンスまたは保温シーケンスを動作させていない待機状態では、リレーを遮断するとともに、第一の直流電源回路に電力供給することにより、インバータ回路への電力供給を停止するので、待機状態における消費電力を抑えることができる。
【0033】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0034】
(実施の形態1)
図1は、本発明の実施形態にかかる誘導加熱式炊飯器の模式断面図である。図2は、本発明の実施の形態1における図1の誘導加熱式炊飯器の蓋の一部を切り欠いた状態を模式的に示す上面図である。
【0035】
図1又は図2を用いて、本発明の実施形態にかかる過熱蒸気発生装置を備える炊飯器の全体構成について説明する。図1は、本発明の実施の形態1にかかる過熱蒸気発生装置を備える炊飯器の模式断面図である。図2は、図1の炊飯器の蓋の一部を切り欠いた状態を模式的に示す上面図である。
【0036】
図1に示すように、本実施形態にかかる炊飯器は、内部に鍋収納部1aが形成された略有底筒状の炊飯器本体1と、鍋収納部1aに収納され、米と水が入れられる鍋2とを備えている。炊飯器本体1の上部には、炊飯器本体1の上部開口部を開閉可能な中空構造の蓋3が取り付けられている。
【0037】
蓋3の内側(鍋2の開口部を覆う側)には、鍋2の上部開口部を密閉可能な略円盤状の内蓋(加熱板ともいう)4が着脱可能に取り付けられている。
【0038】
炊飯器本体1の鍋収納部1aは、上枠1bとコイルベース1cとで構成されている。上枠1bは、収納された鍋2の側壁に対して所定の隙間が空くように配置される筒状部分1baと、筒状部分1baの上部から外方に突出し炊飯器本体1の上部開口部の内周部に嵌合するフランジ部1bbとを備えている。
【0039】
また、フランジ部1bbには、水容器5を収納する水容器収納部1bcが形成されている。水容器5は、蒸気を生成するための水を入れる有底筒状の容器である。水容器収納部1bcの外周面には、水容器5を加熱(誘導加熱)する水容器加熱部である水容器加熱コイル6が取り付けられている。なお、水容器加熱コイル6に代えて、ヒータにより水容器5を加熱するように構成されてもよい。
【0040】
水容器加熱コイル6が水容器5を加熱することにより、水容器5内の水が沸騰して、約100℃の蒸気が生成される。また、水容器収納部1bcの側部には開口が設けられている。当該開口部分には、水容器5の温度を測定するための水容器温度センサ7が、水容器収納部1bcに収納された水容器5の側部に当接可能に配置されている。
【0041】
コイルベース1cは、鍋2の下部の形状に対応して有底筒状に形成され、その上部が上枠1bの筒状部分1baの下端部に取り付けられている。コイルベース1cの外周面には
、鍋2を加熱(誘導加熱)する鍋加熱装置の一例である鍋底加熱ユニット8が取り付けられている。
【0042】
鍋底加熱ユニット8は、底内加熱コイル8aと底外加熱コイル8bとで構成され、本請求項の鍋を誘導加熱する加熱コイルに相当している。底内加熱コイル8aは、コイルベース1cを介して鍋2の底部の中央部周囲に対向するように配置されている。底外加熱コイル8bは、コイルベース1cを介して鍋2の底部のコーナー部に対向するように配置されている。
【0043】
コイルベース1cの底部の中央部分には開口が設けられている。当該開口部分には、鍋2の温度を測定するための鍋温度検知部の一例である鍋温度センサ9が、鍋収納部1aに収納された鍋2の底部に当接可能に配置されている。鍋2の温度は鍋2内の被炊飯物の温度と略同じであるので、鍋温度センサ9が鍋2の温度を検知することで、鍋2内の被炊飯物の温度を知ることができる。
【0044】
蓋3は、蓋3の外郭を構成する上外郭部材3aと下外郭部材3bとを備えている。蓋3は、ヒンジ軸3Aを備えている。ヒンジ軸3Aは、蓋3の開閉軸であり、炊飯器本体1の上枠1bに両端部を回動自在に固定されている。
【0045】
蓋3には、その中央部付近を蓋3の厚み方向に貫通するように貫通穴3cが設けられ、当該貫通穴3cに蒸気筒10が着脱可能に取り付けられている。蒸気筒10の上壁及び底壁には、鍋2内の余分な蒸気を炊飯器の外部に排出できるように、蒸気逃がし孔10a,10bが設けられている。
【0046】
蓋3の内蓋4側の貫通穴3cの周囲には、環状のパッキン11が取り付けられている。パッキン11は、内蓋4が蓋3に取り付けられたときに、内蓋4に設けられた蒸気逃がし孔4aの周囲に密着するように設けられている。
【0047】
蓋3には、内蓋4の温度を検知する内蓋温度検知部の一例である内蓋温度センサ12が取り付けられている。蓋3の底壁となる下外郭部材3bの内面(蓋内側)には、内蓋4を誘導加熱する内蓋加熱装置の一例である内蓋加熱コイル13が取り付けられている。
【0048】
内蓋4は、誘導加熱が可能なステンレスなどの磁性体金属で構成されている。内蓋4の外周部の鍋2側の面には、環状のパッキン14が取り付けられている。パッキン14は、蓋3が閉状態にあるときに鍋2のフランジ部に密着するように設けられている。
【0049】
蓋3の内部には、鍋2内に100℃を超える過熱蒸気を投入するための過熱蒸気発生装置15が設けられている。過熱蒸気発生装置15の内部には、通電すると発熱するヒータが内蔵されている。
【0050】
過熱蒸気発生装置15は、水容器5で発生した約100℃の蒸気を加熱して過熱蒸気を生成可能に構成されている。過熱蒸気発生装置15には、蒸気供給管16と過熱蒸気投入管17とが接続されている。また、過熱蒸気発生装置15には、過熱蒸気発生装置15で生成された過熱蒸気の温度を検知する過熱蒸気温度検知部の一例である過熱蒸気温度センサ18が当接している。
【0051】
蒸気供給管16は、蓋3が閉状態にあるときに水容器5内と連通し、水容器5内で発生した蒸気を過熱蒸気発生装置15へ導くように設けられている。蒸気供給管16の水容器5側の端部には、環状のパッキン19が取り付けられている。パッキン19は、蓋3が閉状態にあるときに水容器5のフランジ部に密着するように設けられている。
【0052】
過熱蒸気投入管17は、蓋3が閉状態にあるときに内蓋4に設けられた過熱蒸気投入孔4bを通じて鍋2内と連通し、過熱蒸気発生装置15で生成された過熱蒸気を鍋2内へ投入するように設けられている。
【0053】
過熱蒸気投入管17の鍋2側の端部には、環状のパッキン20が取り付けられている。パッキン20は、蓋3が閉状態にあるときに内蓋4の過熱蒸気供給孔4bの周囲に密着するように設けられている。
【0054】
蓋3には、図2に示すように、炊飯コース、炊飯時間などの各種情報を表示する液晶ディスプレイなどの表示部21と、白米コースや玄米コース、白米(柔らかめ)コースなどの複数の炊飯コースの中から特定の炊飯コースを選択可能な炊飯コース選択部の一例である操作部22とが設けられている。操作部22は、炊飯コースの選択の他、炊飯の開始、取り消し、予約などの実行を指示できるように、炊飯開始ボタンなどの複数のボタンで構成されている。使用者は、表示部21の表示内容を参照しつつ、操作部22にて特定の炊飯コースを選択し、炊飯開始を指示することができる。
【0055】
蓋3の内部には表示部21、操作部22を実装する第一の回路基板が実装されており、その基板上に炊飯器の制御部を構成するマイクロコンピュータを実装している。マイクロコンピュータについては図3で説明するが、米を炊飯するための炊飯シーケンスやご飯を保温する保温シーケンスなどを複数記憶する記憶部を備えている。
【0056】
ここで、「炊飯シーケンス」とは、予熱、昇温、沸騰維持、蒸らしの主として4つの工程からなり、各工程を順に行うにあたって、各工程において通電時間、加熱温度、加熱時間、加熱出力等が予め決められている炊飯の手順をいう。各炊飯シーケンスは、複数の炊飯コースのいずれかにそれぞれ対応している。マイクロコンピュータは、操作部22にて選択された炊飯コース及び各温度センサ7,9,及び12の検知温度に基づいて、各部及び各装置の駆動を制御し、炊飯シーケンスを実行する。また、マイクロコンピュータは、操作部22にて選択された炊飯コース及び過熱蒸気温度センサ18の検知温度に基づいて、過熱蒸気を過熱蒸気発生装置15に生成させる。
【0057】
第二の回路基板23は、図3で説明するが、底内加熱コイル8aと底外加熱コイル8bに電力供給するためのインバータ回路と、水容器加熱コイル6に電力供給するための第二のインバータ回路と、過熱蒸気発生装置15に内蔵されたヒータをオンオフするトライアックなどが実装されている。
【0058】
第一の回路基板と第二の回路基板23は、特に図示しないが、リード線で電気的に接続しており、マイクロコンピュータからの制御信号により、インバータ回路、第二のインバータ回路、ヒータを制御し、炊飯シーケンスや保温シーケンスを実行するものである。
【0059】
図3は、本発明の第1の実施の形態における炊飯器の主要部ブロック図である。
図3において、鍋2は、特に図示していないが、磁性金属や非磁性金属を複数用いた積層体で構成されている。
【0060】
加熱コイル31は、図1の底内加熱コイル8aと底外加熱コイル8bで構成されている。
底内加熱コイル8aと底外加熱コイル8bは電気的に直列接続している。
【0061】
インバータ回路32は、コンデンサ33と、加熱コイルを導通、遮断する半導体スイッチング素子である第一の半導体スイッチング素子34と、ダイオード35で構成されてい
る。
【0062】
コンデンサ33は、図3に示すように加熱コイル31に並列接続している。本実施例では高周波電流が流れても損失の少ないポリプロピレンコンデンサを使用している。
第一の半導体スイッチング素子34は、本実施の形態ではIGBTなどの半導体素子で構成されている。IGBTは耐圧が高く、高周波のスイッチングが可能で、ゲート端子に電圧を印加することで大電流を流すことができるので、パワートランジスタに比べ省電力で大電流を流すことができるという利点がある。
【0063】
ダイオード35は、第一の半導体スイッチング素子34の電流方向とは逆方向に電流が流れるように並列接続されている。第二のインバータ回路36はコンデンサ37と第二の半導体スイッチング素子38とダイオード39で構成され、水容器加熱コイル6に高周波電流を供給する。
【0064】
一般的にこのようなインバータ回路の構成は、加熱コイルとコンデンサで並列共振回路を構成しているため、1石電圧共振形インバータといわれている。
【0065】
炊飯器に電力を供給する交流電源40の電源周波数は,東日本地域では50Hz,西日本地域では60Hzとなっている。
【0066】
整流回路41は、ダイオードブリッジ42、コイル43、コンデンサ44で構成されている。ここで、コンデンサ44の容量は数μFと小さく、加熱コイル31に電流を流すと、交流電源40を全波整流した時の電圧波形と同じとなる。
【0067】
半導体スイッチング素子の入力端子をオンオフする駆動回路である第一の駆動回路45は、NPNトランジスタとPNPトランジスタと第一の半導体スイッチング素子34を構成するIGBTのゲート端子の寄生容量に充電する電流を制限するための電流制限抵抗とゲート端子の寄生容量をすばやく引き抜くための放電抵抗などを有するプッシュプル回路で構成されている。
【0068】
第二の駆動回路55は、NPNトランジスタとPNPトランジスタと第二の半導体スイッチング素子38を構成するIGBTのゲート端子の寄生容量に充電する電流を制限するための電流制限抵抗とゲート端子の寄生容量をすばやく引き抜くための放電抵抗などを有するプッシュプル回路で構成されている。
【0069】
電流検知回路46は、交流電源40から整流回路41への電流経路に接続されている。特に図示しないが、カレントトランスと、このカレントトランスが出力する交流電流を整流平滑する整流平滑回路で構成されており、入力電流値をアナログ電圧値に変換する。この入力電流値に相当するアナログ電圧を、制御部47を構成するマイクロコンピュータ48のAD変換ポートに出力する。
【0070】
制御部47は、マイクロコンピュータ48、第一の同期信号発生回路49、第二の同期信号発生回路50などにより構成されている。
【0071】
マイクロコンピュータ48は、多数のカウンタ機能やタイマー機能やメモリ機能を利用して、オン時間設定部51、パルス発生部52、電流設定部53、シーケンス設定部54などを構成している。
【0072】
オン時間設定部51は最小オン時間Ton1と最大オン時間Ton4の範囲内でオン時間を設定する。なお、本実施の形態では、第一のインバータ回路32起動時と第二のイン
バータ回路36の起動時には、半導体スイッチング素子のオン時間の初期値としてTon1からスタートし徐々にオン時間を長くしていく。
【0073】
パルス発生部52は第一の同期信号発生回路49の同期信号を検知すると設定されたオン時間のハイパルスを第一の駆動回路45に出力する。第二の同期信号発生回路50の同期信号を検地すると設定されたハイパルスを第二の駆動回路55に出力する。
【0074】
マイクロコンピュータ48は8MHz発振子と32.728kHz発振子で動作する。従って、マイクロコンピュータ48で構成されるパルス発生部52のハイパルス幅の最小設定単位は、8MHz発振子で設定される最小周期である0.125μs単位で制御される。つまり、オン時間設定部51が出力データ(8bit)を1digit変更すると、パルス発生部52のハイパルス幅が0.125μs変化するようになっている。
【0075】
電流設定部53は、マイクロコンピュータ48のメモリを利用して、シーケンス設定部54が設定する炊飯シーケンスごとに複数の電流設定値が記憶されている。
【0076】
本実施の形態の炊飯器では、第一の電流設定値56(本実施の形態ではIin1とする)、第一の電流設定値56より低い値の第二の電流設定値57(本実施の形態ではIin2とする)、第二の電流設定値57より低い値の第三の電流設定値58(本実施の形態ではIin3とする)が記憶されている。
【0077】
シーケンス設定部54は、使用者が操作部22で設定した操作に従って、炊飯シーケンスや保温シーケンスを設定する。また、炊飯シーケンスも保温シーケンスも動作していない時は待機状態を設定する。
【0078】
第一の同期信号発生回路49は、コンパレータや抵抗分圧回路などで構成され、(C2)端子を所定の比率で抵抗分圧した電圧と、(CE)端子を所定の比率で抵抗分圧した電圧をコンパレータによって比較し、(C2)端子の分圧電圧の方が高いときにハイ信号をマイクロコンピュータ48に出力し、(C2)端子の分圧電圧の方が低いときにロー信号をマイクロコンピュータ48に出力する。
【0079】
第二の同期信号発生回路50は、コンパレータや抵抗分圧回路などで構成され、(C2)端子を所定の比率で抵抗分圧した電圧と、(CE2)端子を所定の比率で抵抗分圧した電圧をコンパレータによって比較し、(C2)端子の分圧電圧の方が高いときにハイ信号をマイクロコンピュータ48に出力し、(C2)端子の分圧電圧の方が低いときにロー信号をマイクロコンピュータ48に出力する。
【0080】
マイクロコンピュータ48のパルス発生部52は上記でも説明したように、第一の同期信号発生回路49と第二の同期信号発生回路50の信号それぞれに対応して、第一の同期信号発生回路49からの同期信号を受けたときは第一の駆動回路にハイパルスを出力し、第二の同期信号発生回路50から同期信号を受けたときは第二の駆動回路にハイパルスを出力している。
【0081】
第一の直流電源回路59は、特に図示しないが、スイッチング電源で構成され、交流電源40の一方の極(u)から温度ヒューズ60を経由して、半波整流された電圧を、約20Vの直流電圧を出力するように直流電源に変換している。
【0082】
なお、本実施の形態では、第一の半導体スイッチング素子34と第二の半導体スイッチング素子38を構成するIGBTのゲート端子の遮断電圧(スレッショルド電圧)のバラつき保証値は6Vである。
【0083】
つまり、ゲート端子に6V以上の電圧をオンすればIGBTのエミッタ−コレクタ間がオンする。約20Vにしているのは、この遮断電圧のバラついても、この遮断電圧を超える電圧を第一の駆動回路45と第二の駆動回路55を介して供給できるからである。
【0084】
つまりIGBTを駆動する際には、IGBTに電圧供給する第一の駆動回路45と第二の駆動回路55の電源である第一の直流電源回路59の出力電圧は、ゲート端子の遮断電圧より大きくすることが重要である。
【0085】
ここで、上記で簡単に説明した第一の駆動回路45および第二の駆動回路55の動作について、第一の駆動回路45を用いてもう少し詳しく説明する。第一の駆動回路45は、マイクロコンピュータ48が構成するパルス発生部52の出力がハイの間、第一の直流電源回路59の電源電圧を利用して、第一の半導体スイッチング素子34を構成するIGBTのゲート端子に電圧を印加し、IGBTのコレクタ−エミッタ間をオンし、パルス発生部52がロー出力している間はIGBTのゲート端子の電圧を0Vにして、IGBTのコレクタ−エミッタをオフにする。なお、これは一例でプッシュプル回路を構成する部品はMOSFETなどで構成しても構わない。
【0086】
また、第一の直流電源回路59は、リレー61のコイルに電力供給している。リレー61はコイルに電流が流れることで、電磁力を発生させて、接点をオンオフする構成のもので、交流電源40からの電流径路に配置されており、交流電源40からヒータ66とインバータ回路32への電流径路を遮断したり、導通したりする。リレー61は電流検知回路46より電気的に交流電源40に近い側に接続されている。
【0087】
リレー駆動回路62は抵抗内臓のトランジスタで構成され、マイクロコンピュータ48からの信号を受けて、オンオフする。トランジスタがオンすると、リレー61のコイルを通電し、リレー61の接点をオンする。本実施の形態では、リレー61の駆動電源を第一の直流電源回路59より供給することで、電源回路の数を少なくし、コンパクトな基板にしている。
【0088】
冷却ファン63は、DCブラシレスモータの回転子にファンを取り付けたファンモータで構成されている。冷却ファン63は、第一の直流電源回路59から電源を供給されている。本実施の形態では、特に図示していないが、ファン駆動回路としてトランジスタをマイクロコンピュータ48でオンオフ制御することで、冷却ファン63を駆動したり停止したりすることができる
第二の直流電源回路64は、特に図示していないがNPNトランジスタと定電圧ダイオードと抵抗とコンデンサからなるエミッタフォロア回路で定電圧回路を構成し、第一の直流電源回路59の出力電圧約20Vを約5Vに降圧している。第二の直流電源回路64は、マイクロコンピュータ48や零電圧同期信号出力回路65などの電源となっている。
【0089】
なお、この第二の直流電源回路64の構成は一例であり、例えば出力電圧のバラつきを抑えた定電圧回路を実現するために専用の電源ICを使用しても良い。
【0090】
ヒータ66は、棒状の形状をしており、特に図示していないが、羽根を有する金属管の中に配設されている。羽根は水蒸気にヒータ66からの熱を熱伝導しやすいようにするためのものである。金属管の先端は閉じており、金属管とヒータは絶縁材によって電気的に絶縁されている。温度ヒューズ60は、この金属管の近傍に配置されており、ヒータ66が過加熱され、金属管が異常過熱されたとき断線するようになっている。
【0091】
トライアック67はヒータ66に直列接続しており、トライアック駆動回路68の出力
信号に応じて、オンオフする。トライアックなので、交流電源40の電圧がゼロ付近ではトライアック駆動回路68からのオン信号がないときはオンしない。
【0092】
トライアック駆動回路68は、発光部を発光ダイオードにし、受光部をトライアックとしたソリッドステートリレーという光結合素子を用いたスイッチを使用している。光結合素子を用いることで、ヒータ66とトライアック67からなる直列回路と、マイクロコンピュータ48を電気的に絶縁できるので、ヒータ66やトライアック67が故障したときに、その電流や電圧が印加され、マイクロコンピュータ48が破壊されることがない。
【0093】
零電圧同期信号出力回路65は、特に図示していないが、交流電源40の(u)極が抵抗を介してトランジスタのベース端子に接続している。このトランジスタのコレクタ端子は交流電源40からスイッチング電源を介して生成される第二の直流電源回路64と、抵抗を介して接続しており、(u)極の電位がもう一方の極より高いときにローを、低いときにハイをマイクロコンピュータ48に出力する。マイクロコンピュータ48はこの出力信号に同期して、所定時間後に電流検知回路46の出力電圧を入力し、電流設定部53が設定した電流設定値と比較して、オン時間設定部51でオン時間の設定を行う。
【0094】
設定されたオン時間は次の同期信号のときに更新される。またマイクロコンピュータ48は零電圧同期信号出力回路65の出力信号に同期して、現在時刻の表示や、炊飯制御に関する処理などを開始する。
【0095】
操作部22は、複数のモーメンタリスイッチで構成されている。各スイッチが使用者により押されると、マイクロコンピュータ48はスイッチが押されたことを検知し、各スイッチに応じて、所定の炊飯動作や保温動作をおこなう。
【0096】
表示部21は、LCDと、赤、緑、橙などの複数のLEDで構成されている。マイクロコンピュータ48は、炊飯中や保温中などの炊飯器の状態に応じて、LCDの表示内容や点灯するLEDを設定している。LCDの表示内容としては、現在時刻の表示や、炊飯終了までの時間の表示、保温経過時間の表示などがある。
【0097】
水容器5は水容器加熱部を構成する水容器加熱コイル6で誘導加熱することにより水容器5の金属部に渦電流が流れ水容器5を加熱し、内部の水を加熱し、沸騰させ水蒸気を発生させる。
【0098】
なお、本実施の形態では、水容器加熱部を水容器加熱コイル6で構成し、水容器5を誘導加熱する構成にしたが、水容器加熱コイル6の変わりにヒータを用いて水容器5を加熱しても構わないものである。
【0099】
以上のように、本実施の形態の誘導加熱式炊飯器は、水容器加熱コイル6で水容器5を誘導加熱し、水容器5に入った水を加熱して蒸気を発生させる。その蒸気をヒータ66で加熱し、過熱蒸気を生成する。
【0100】
例えば、蒸気がないにも関わらずヒータ66を加熱し続けると、ヒータ66の温度が徐々に上昇する。上昇温度が一定の温度以上になると、温度ヒューズ60が溶断し、交流電源40から第一の直流電源回路59への供給電流径路を遮断し、第一の直流電源回路59への電力供給が停止する。第一の直流電源回路59が停止すると、第一の半導体スイッチング素子34を駆動する第一の駆動回路45と、リレー61を駆動するリレー駆動回路62と、ヒータ66をオンオフするトライアック67を駆動するトライアック駆動回路68と、マイクロコンピュータ48の電源である第二の直流電源回路64の電力供給が全て停止する。
【0101】
特に、リレー駆動回路62の電力供給が停止するので、リレー61が遮断し、交流電源40からヒータ66や加熱コイル31や水容器加熱コイル6への電力供給を全て停止することができ、加熱コイル31や水容器加熱コイル6のみ動作するような現象が発生しない。
【0102】
従って、ヒータ66の温度が所定以上になったときでも安全に炊飯器が動作停止するものである。マイクロコンピュータ48への電力供給も停止するので、表示部21の表示内容も消えるもしくは変化し、操作部22も受け付けなくなる。従って、使用者が炊飯器の故障を容易に判断し、炊飯器の修理を依頼することができるものである。
【0103】
また、本実施の形態の誘導加熱式炊飯器では、第一の半導体スイッチング素子34と第二の半導体スイッチング素子38を同時オンしないようにしている。つまり、加熱コイル31と水容器加熱コイル6に同時に電流を供給しないようにしている。以上のようにすることで、加熱コイル31への供給電力と水容器加熱コイル6への供給電力を電流検知回路46で検知できる。
【0104】
例えば、加熱コイル31と水容器加熱コイル6への電力供給を同時にする場合は、それぞれの加熱コイルに供給されている電力を把握するために、電流検知回路を各加熱コイルに設ける必要が生じる。加熱コイル31と水容器加熱コイル6の動作周波数に差があると干渉音が発生する場合もある。
【0105】
つまり、加熱コイル31と水容器加熱コイル6を同時に電力供給しないことにより、鍋2や水容器5への加熱制御を精度良くするとともに、加熱コイル間の干渉音も発生させることがない。
【0106】
また、トライアック駆動回路68の構成を、発光部を発光ダイオードにし、受光部をトライアックとしたソリッドステートリレーという光結合素子を用いたスイッチにしている。光結合素子を用いることで、ヒータ66とトライアック67からなる直列回路と、マイクロコンピュータ48を電気的に絶縁できるので、ヒータ66やトライアック67が故障したときに、その電流や電圧が印加され、マイクロコンピュータ48が破壊されることがない。マイクロコンピュータ48の破壊を防止できるので、表示部21を通じて異常を報知することができる。
【0107】
また、電流検知回路は半導体スイッチング素子と整流回路間に電流検知抵抗を接続し、その電流検知抵抗の出力電圧をマイクロコンピュータに読み込むようにしてもかまわないものである。この場合も、ヒータに流れる電流が混在することなく加熱コイルに供給される電流を検知することが可能となる。
【0108】
また、本実施の形態の炊飯器ではマイクロコンピュータ48が炊飯シーケンスも保温シーケンスも動作させていないような、使用者の操作を待っている待機状態のときはリレー61を遮断している。
【0109】
リレー61を遮断することにより、交流電源40を通じて入ってくる外来ノイズがきても、トライアック67が誤点呼することがなく、ヒータ66を加熱することがない安全な炊飯器を提供できる。
【産業上の利用可能性】
【0110】
以上のように、本発明にかかる炊飯器は、交流電源からヒータやインバータ回路などの負荷につながる電流径路にリレーを設け、リレーの駆動電源の供給径路に温度ヒューズを
設け、ヒータの温度が上昇し温度ヒューズが断線したときに、リレーの駆動電源への電力供給を停止しリレーを遮断することで安全に停止することができるので、家庭用の炊飯器やヒータを利用した調理機器に有効である。
【符号の説明】
【0111】
2 鍋
5 水容器
6 水容器加熱コイル
31 加熱コイル
32 インバータ回路
33、37、44 コンデンサ
34 第一の半導体スイッチング素子
36 第二のインバータ回路
40 交流電源
41 整流回路
45 第一の駆動回路
46 電流検知回路
47 制御部
59 第一の直流電源回路
60 温度ヒューズ
61 リレー
64 第二の直流電源回路
66 ヒータ
67 トライアック
68 トライアック駆動回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鍋を誘導加熱する加熱コイルと、前記加熱コイルに並列接続または直列接続したコンデンサと、前記加熱コイルに接続し、前記加熱コイルを導通、遮断する半導体スイッチング素子を有するインバータ回路と、交流電源を整流し前記インバータ回路に電力供給する整流回路と、前記半導体スイッチング素子の入力端子をオンオフする駆動回路と、前記駆動回路を介して前記半導体スイッチング素子をオンオフ制御する制御部と、水を入れる水容器と前記水容器を加熱する水容器加熱部と、加熱された水容器から発生した水蒸気を加熱するヒータと、前記ヒータをオンオフするトライアックと、前記トライアックにオンオフ信号を送るトライアック駆動回路と、前記交流電源と前記インバータ回路と前記ヒータへの電流経路を導通、遮断するリレーと、前記ヒータの温度に相当する値を検知し、所定値を越えると遮断する温度ヒューズと、前記交流電源から前記温度ヒューズを経由して電力供給され、直流電源に変換する第一の直流電源回路と、前記第一の直流電源回路より電源電圧を供給され、前記第一の直流電源回路の出力電圧より低い電圧にする第二の直流電源回路とを有し、前記第一の直流電源回路は前記半導体スイッチング素子のゲート端子のスレッショルド電圧の約2倍以上の電圧を出力するように構成され、前記制御部は前記第二の直流電源回路より電源電圧を供給され、前記駆動回路と前記リレーと前記トライアック駆動回路は前記第一の直流電源回路より電力供給される誘導加熱式炊飯器。
【請求項2】
トライアック駆動回路は、入力側と出力側が電気的に絶縁された光半導体素子を有する請求項1に記載の誘導加熱式炊飯器。
【請求項3】
交流電源から整流回路を介しインバータ回路へ供給される電流に相当する値を検知する電流検知回路を有し、前記電流検知回路はトライアックとヒータからなる直列回路より後段に配置された請求項1または2に記載の誘導加熱式炊飯器。
【請求項4】
制御部は炊飯シーケンスと保温シーケンスを記憶したマイクロコンピュータを有し、前記マイクロコンピュータは炊飯シーケンスと保温シーケンスに応じて所定の電流設定値を有し、この電流設定値と電流検知回路の出力値を比較して、電流検知回路の出力値が電流設定値になるようにオン時間を設定するとともに、前記電流設定値が所定値よりも大きい場合は、ヒータの駆動を禁止する請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導加熱式炊飯器。
【請求項5】
制御部は炊飯シーケンスまたは保温シーケンスを動作させていない待機状態では、リレーを遮断するとともに第一の直流電源回路に電力供給する請求項1〜4のいずれか1項に記載の誘導加熱式炊飯器。

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2013−203(P2013−203A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131944(P2011−131944)
【出願日】平成23年6月14日(2011.6.14)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】