説明

誘導加熱装置

【課題】コスト高を招来することなく段階加熱や保温を行うことができるトランスバース型の誘導加熱装置を提供する。
【解決手段】薄板状被加熱物を誘導加熱するトランスバース型構造の誘導加熱装置において、薄板状被加熱物の幅方向と直交する搬送方向に沿って少なくとも1回以上交差して、当該幅方向で延長されるとともに当該幅方向の長さより長い長軸を備えた略楕円形状の第1の空間を形成する第1の加熱コイルと、搬送方向に沿って第1加熱コイルと同数だけ交差して、当該幅方向で延長されるとともに当該幅方向の長さより長い長軸を備えた略楕円形状の第2空間を形成し、第1加熱コイルとの間に薄板状被加熱物が搬送可能な間隔を開け、第1空間と第2空間とが互いに対向するように配置された第2加熱コイルと、第1加熱コイルと第2加熱コイルとの間に配設され、薄板状被加熱物の両端部の近傍に配設される断面コ字形状のフェライトコアとを有するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱装置に関し、さらに詳細には、非磁性材および磁性材よりなる薄板状の被加熱物(以下、「薄板状の被加熱物」を、単に「薄板状被加熱物」と適宜に称することとする。)を加熱する際に用いて好適な誘導加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、磁性材の薄板状被加熱物を誘導加熱する際には、加熱コイルとして、所謂、トンネル型コイルを備えた誘導加熱装置を用いて加熱することが行われている。
【0003】
しかしながら、非磁性材の薄板状被加熱物を誘導加熱する際に、こうしたトンネル型コイルを備えた誘導加熱装置を用いて加熱しようとすると、薄板状被加熱物の表面および裏面のそれぞれにおいて生じた誘導電流が、互いに相殺し合い加熱することができないものであった。
【0004】
このため、非磁性材の薄板状被加熱物を誘導加熱する際には、当該薄板状被加熱物の上方側、下方側の少なくともどちらか一方に加熱コイルを配置した構造(トランスバース型構造)を備えた誘導加熱装置が用いられてきた。
【0005】
トランスバース型構造を備えた誘導加熱装置(本明細書においては、「トランスバース型構造を備えた誘導加熱装置」を、単に「トランスバース型誘導加熱装置」と適宜に称することとする。)においては、薄板状被加熱物の上下に配置された加熱コイルが作る磁束が当該薄板状被加熱物を貫通することにより、当該薄板状被加熱物が加熱されることになる。
【0006】
ここで、上記したトランスバース型誘導加熱装置の一例として、所定の形状に形成された加熱コイルの上方側または下方側において薄板状被加熱物を搬送することにより、当該薄板状被加熱物を加熱する手法が知られている。
【0007】
以下、図1および図2を参照しながら、トランスバース型誘導加熱装置について詳細に説明することとする。
【0008】
図1(a)には、トランスバース型誘導加熱装置の一例を示す概略構成説明図が示されており、また、図1(b)には、図1(a)のA矢視図が示されており、また、図1(c)には、図1(a)のI−I線による断面図が示されており、図2には、図1(a)に示す誘導加熱装置により加熱された薄板状被加熱物の幅方向の温度分布を示すグラフが示されている。
【0009】
この図1に示すトランスバース型誘導加熱装置100は、磁性部材たる断面E字形状のフェライトコア102と、フェライトコア102の中央の凸部を囲むように配設されるとともに、電源104より高周波電流を給電される第1加熱コイル106とを有して構成されている。
【0010】
また、誘導加熱コイル100は、フェライトコア102の凹凸面が薄板状被加熱物と対向するようにして、薄板状被加熱物200の下方側に配設される。
【0011】
以上の構成において、誘導加熱装置100の第1加熱コイル106に電源104より高周波電流が給電されると、第1加熱コイル106により生成された磁束が、誘導加熱装置100の上方側を搬送される薄板状被加熱物200を貫通することとなり、これにより薄板状被加熱物200の表面に渦電流が誘導されて薄板状被加熱物200が加熱されることになる。
【0012】
ここで、図2には、こうした誘導加熱装置100において加熱される薄板状被加熱物200の幅方向における温度分布が示されている。
【0013】
図2に示されるように、誘導加熱装置100においては、薄板状被加熱物200が非磁性体である場合には、薄板状被加熱物200の幅方向の両端部で温度が上昇するとともに、当該両端部の内側部分において温度が下降している(実線部分を参照する。)。また、薄板状被加熱物200が磁性体である場合には、薄板状被加熱物200の幅方向の両端部の内側部分において温度が下降することはないが、当該両端部において温度が上昇している(破線部分を参照する。)。
【0014】
薄板状被加熱物200においては、構成素材が磁性体、非磁性体のどちらであっても、磁束が薄板状被加熱物200を通過することにより渦電流が発生し、その結果、マクロ的には、誘導電流として薄板状被加熱物200の周辺に集中した状態で電流は分布することで、薄板状被加熱物200の幅方向の両端部の温度が上昇することになる。
【0015】
ところが、誘導電流が端部に集中すると、その集中した電流により発生した誘電磁界が第1加熱コイル106の磁束を打ち消すことになり、端部の内側部分において温度が下降することとなる。
【0016】
こうした温度上昇現象は、薄板状被加熱物200の両端部において10mm以内において発生し、温度下降現象は、両端部から50mm内側当たりに発生することが確認されている。
【0017】
このため、誘導加熱装置100においては、薄板状被加熱物200を幅方向で均等に加熱することができないという問題点が指摘されていた。
【0018】
そこで、こうした問題点を解決するための手法として、特許文献1または特許文献2に開示された技術が知られている。
【0019】
まず、特許文献1に開示された技術について、図3および図4を参照しながら詳細に説明することとする。
【0020】
図3(a)には、特許文献1に開示された誘導加熱装置の概略構成説明図が示されており、また、図3(b)には、図3(a)のB矢視図が示されており、また、図3(c)には、図3(a)のII−IIによる断面図が示されており、また、図4には、図3(a)に示す誘導加熱装置により加熱された薄板状被加熱物の幅方向の温度分布を示すグラフが示されている。
【0021】
この図3に示す誘導加熱装置150は、電源154に接続された第1加熱コイル156が配設されたフェライトコア152と薄板状被加熱物200との間に、第1加熱コイル156により生成され、薄板状被加熱物200のを貫通しない磁束たる漏洩磁束を利用して、新たに磁束を生成する第2加熱コイル160を配設するようにしたものである。
【0022】
なお、以下の説明においては、「加熱コイル156により生成された磁束」を「一次磁束」と称することとし、「一次磁束の漏洩磁束を利用して加熱コイル160により生成された磁束」を「二次磁束」と称することとする。
【0023】
この第2加熱コイル160は、加熱コイル156による一次磁束と同方向の二次磁束を生成させるため、導線を途中で一度交差させて形成されている。
【0024】
電源154により第1加熱コイル156に実線矢印方向の電流が流れて、一次磁束が発生するが、薄板状被加熱物200の外側の加熱コイル156(つまり、加熱コイル156のうち、上方側に薄板状被加熱物200が通過しない部分のことである。)と重なる加熱コイル160においては、この一次磁束により誘導器電圧が発生し、加熱コイル160に破線矢印で示される一次磁束とは逆方向の電流が流れることとなる。
【0025】
この電流は、加熱コイル110が途中で一度交差した形状であるため、薄板状被加熱物200の下方側に位置する部分においては、加熱コイル156において流れる電流と同方向の電流が流れることとなり、このため、薄板状被加熱物200の下方側に位置する部分の加熱コイル160においては、加熱コイル156から発生される一次磁束を補強するようにして二次磁束が生成されることとなる。
【0026】
これにより、温度が下降していた薄板状被加熱物200の両端部の内側において、磁束が補強されることにより温度が上昇して、当該内側における温度下降現象が解消され平坦な温度特性となる(図4を参照する。)。
【0027】
次に、特許文献2に開示された技術について、図5乃至図7を参照しながら詳細に説明することとする。
【0028】
図5(a)には、特許文献2に開示された誘導加熱装置の概略構成説明図が示されており、また、図5(b)には、図5(a)のIII−III線による断面図が示されており、また、図6には、図5(a)における薄板状被加熱物の幅方向における一方の端部の近傍の領域を示す要部拡大説明図が示されており、また、図7には、図5(a)に示す誘導加熱装置により加熱された薄板状被加熱物の幅方向の温度分布を示すグラフが示されている。
【0029】
この図5に示す誘導加熱装置300は、上記した加熱コイルが配設された2つのフェライトコアを凹凸面が対向するようにして所定の間隔を設けて配設し、当該2つのフェライトコアにより形成された空間内に薄板状被加熱物を搬送するようにし、搬送される薄板状被加熱物の両端の近傍において磁性体を設けるようにしたものである。
【0030】
即ち、特許文献2に開示された誘導加熱装置300は、薄板状被加熱物200を通過させる所定の間隙gを開けて対向して配置された一対の磁性部材たる断面E字形状の第1フェライトコア302および第2フェライトコア304と、電源(図示せず。)により発生された高周波電流を導通する線路たるフィーダー(図示せず。)を介して当該高周波発振器から高周波電流を給電される第1誘導コイル306と第2誘導コイル308と、第1フェライトコア302と第2フェライトコア304との間に形成された間隙g内において、薄板状被加熱物200の両方の端部の近傍に配設された磁性体310a、310bとを有して構成されている(図5(a)(b)を参照する。)。
【0031】
なお、所定の間隙gは、薄板状被加熱物200の厚さtや薄板状被加熱物200の上下の位置変動あるいは加熱効率により決定される。
【0032】
また、第1フェライトコア302と第2フェライトコア304とは、E字形状を構成する凹凸面を互いに対向させて配置された複数の磁性材302a、304aをそれぞれ隙間なく連接して構成されており、第1誘導コイル306は第1フェライトコア302を構成する磁性材302aの凹所302b内に配設され、第2誘導コイル308は第2フェライトコア304を構成する磁性材304aの凹所304b内に配置されている。
【0033】
また、磁性体310a、310bは、誘導加熱装置300においては、第1フェライトコア302と第2フェライトコア304との間にそれぞれ所定の間隙g、gを形成するように配置されている。
【0034】
なお、この所定の間隙g、gは、薄板状被加熱物200の材質などを考慮して温度分布均一性により決定される。
【0035】
以上の構成において、誘導加熱装置300によれば、図6に示すように、薄板状被加熱物200の両端部の外側近傍に配設された磁性体310a、310bの存在により、第1誘導コイル306を備えた第1フェライトコア302と第2誘導コイル308を備えた第2フェライトコア304との間に形成された間隙gに生起される磁束が、磁性体310a、310bを集中的に通過するようになる。
【0036】
このため、薄板状被加熱物200の両端部に貫通する磁束が減少し、当該両端部に集中して流れる誘導渦電流を減少することができる。
【0037】
これにより、薄板状被加熱物200の両端部における集中加熱を抑制することができるようになる。
【0038】
つまり、薄板状被加熱物200の両端部に対する磁性体310a、310bの配置場所を変化させることで、当該両端部を貫通する磁束が増減するため、磁性体310a、310bの配置場所を適宜に選択することにより、図7に示すように、薄板状被加熱物200の両端部における加熱温度を制御することができるものである。
【0039】
具体的には、磁性材310a、310bを薄板状被加熱物200の端部へそれぞれ近づけていくと、各端部の加熱温度が徐々に下がっていき、薄板状被加熱物200の温度分布は、磁性材310a、310bを設けていない誘導加熱装置による特性を示すパターンAからパターンBへと移行し、均一加熱となるパターンCが得られる。
【0040】
このパターンCが得られた磁性材310a、310bの位置より、磁性材310a、310bをさらに各端部へそれぞれ近づけると、パターンDのように各端部の温度は、薄板状被加熱物200の他の領域の温度よりも低下することになる。
【0041】
このようにして、特許文献1および特許文献2に開示された技術においては、薄板状被加熱物200を幅方向において均一に加熱するようにしていた。
【0042】
しかしながら、こうしたトランスバース型誘導加熱装置においては、加熱スペースが狭く、局所的な加熱となることから薄板状被加熱物を段階加熱するのに適さない場合が多くあった。
【0043】
例えば、リチウム電池用などの10μm程度の箔の上に、100μm程度の電子触媒がコートされたものを乾燥させる場合などには、当該箔を誘導加熱により急速に加熱しても熱容量が小さいため全体を加熱するには不適当であった。
【0044】
このため、トランスバース型誘導加熱装置を薄板状被加熱物の搬送路状に複数設けて、当該複数の誘導加熱装置を用いて段階的な昇温パターンにより加熱を行うようにしていたが、複数の誘導加熱装置を配置するスペースが必要になることや、複数の誘導加熱装置を用いるためにコスト高を招来することが問題点として指摘されていた。
【0045】
さらに、こうした構成のため、トランスバース型誘導加熱装置においては、搬送方向において薄板状被加熱物20を保温するための長さを確保することができないため、薄板状被加熱物を保温することができないことも問題点として指摘されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特開2007−122924号公報
【特許文献2】特開2006−294396号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0047】
本発明は、上記したような従来の技術の有する種々の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、コスト高を招来することなく段階加熱や保温を行うことができるトランスバース型の誘導加熱装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0048】
上記目的を達成するために、本発明は、薄板状被加熱物を高周波電流により誘導加熱するトランスバース型構造の誘導加熱装置において、薄板状被加熱物の幅方向と直交する搬送方向に沿って少なくとも1回以上交差して、上記薄板状被加熱物の幅方向で延長されるとともに上記薄板状被加熱物の幅方向の長さより長い長軸を備えた略楕円形状の第1の空間を形成する第1の加熱コイルと、上記薄板状被加熱物の幅方向と直交する搬送方向に沿って上記第1の加熱コイルと同数だけ交差して、上記薄板状被加熱物の幅方向で延長されるとともに上記薄板状被加熱物の幅方向の長さより長い長軸を備えた略楕円形状の第2の空間を形成し、上記第1の加熱コイルとの間に上記薄板状被加熱物が搬送可能な所定の間隔を開けて、上記第1の空間と上記第2の空間とが互いに対向するように配置された第2の加熱コイルと、上記第1の加熱コイルと上記第2の加熱コイルとの間に配設されるとともに、上記第1の加熱コイルと上記第2の加熱コイルとの間を搬送される上記薄板状被加熱物の一方の端部の近傍に配設される断面コ字形状の第1のフェライトコアと、上記第1の加熱コイルと上記第2の加熱コイルとの間に配設されるとともに、上記第1の加熱コイルと上記第2の加熱コイルとの間を搬送される上記薄板状被加熱物の他方の端部の近傍に配設される断面コ字形状の第2のフェライトコアとを有するようにしたものである。
【0049】
また、本発明は、上記した発明において、さらに、上記第1の加熱コイルと上記薄板状被加熱物との間に配設されるとともに、上記薄板状被加熱物の両端部の近傍において上記搬送方向に延設される略矩形形状の第1の補正コイルと、上記第2の加熱コイルと上記薄板状被加熱物との間に配設されるとともに、上記薄板状被加熱物の両端部の近傍において上記搬送方向に延設される略矩形形状の第2の補正コイルとを有するようにしたものである。
【0050】
また、本発明は、上記した発明において、さらに、上記第1の加熱コイルの外側に配設されるとともに、上記薄板状被加熱物の両端部の近傍において上記搬送方向に延設される略矩形形状の第1の補正コイルと、上記第2の加熱コイルの外側に配設されるとともに、上記薄板状被加熱物の両端部の近傍において上記搬送方向に延設される略矩形形状の第2の補正コイルとを有するようにしたものである。
【0051】
また、本発明は、上記した発明において、上記薄板状被加熱物を搬入する搬入口と上記薄板状被加熱物を搬出する搬出口との近傍に位置する上記第1の補正コイルと上記第1の加熱コイルとを、互いに近づけて配設するとともに、該搬入口と該搬出口との近傍に位置する上記第1の補正コイルと上記第1の加熱コイルとに流れる電流が互いに逆方向に流れるように設計するようにしたものである。
【0052】
また、本発明は、上記した発明において、上記第1の加熱コイルと上記第1の補正コイルとは、それぞれ別電源に接続され、上記第2の加熱コイルと前記第2の補正コイルとは、それぞれ別電源に接続されるようにしたものである。
【0053】
また、本発明は、上記した発明において、さらに、上記フェライトコアと上記第1の補正コイルと上記第2の補正コイルとを上記薄板状被加熱物の幅方向で移動可能に固定し、上記フェライトコア同士の該幅方向の間隔、上記第1の補正コイルの該幅方向の間隔および上記第2の補正コイルの該幅方向の間隔を同時に制御することが可能な移動部材とを有するようにしたものである。
【0054】
また、本発明は、上記した発明において、上記第1の加熱コイルを共振コンデンサを介して上記搬送方向に複数接続するとともに、上記第2の加熱コイルを共振コンデンサを介して上記搬送方向に上記第1の加熱コイルと同数だけ接続するようにしたものである。
【発明の効果】
【0055】
本発明は、以上説明したように構成されているので、トランスバース型の誘導加熱装置であって、コスト高を招来することなく段階加熱や保温を行うことができるという優れた効果を奏するものである。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1(a)は、従来の技術のトランスバース型誘導加熱装置を示す概略構成説明図であり、また、図1(b)は、図1(a)のA矢視図であり、また、図1(c)は、図1(a)のI−I線断面図である。
【図2】図2は、図1(a)に示す誘導加熱装置により加熱された薄板状被加熱物の幅方向の温度分布を示すグラフである。
【図3】図3(a)は、特許文献1に開示された誘導加熱装置を示す概略構成説明図が示されており、また、図3(b)は、図3(a)のB矢視図であり、また、図3(c)は、図3(a)のII−II線断面図である。
【図4】図4は、図3(a)に示す誘導加熱装置により加熱された薄板状被加熱物の幅方向の温度分布を示すグラフである。
【図5】図5(a)は、特許文献2に開示された誘導加熱装置を示す概略構成説明図であり、また、図5(b)には、図5(a)のIII−III線断面図である。
【図6】図6は、図5(a)における薄板状被加熱物の幅方向における一方の端部の近傍の領域を示す要部拡大説明図である。
【図7】図7は、図5(a)に示す誘導加熱装置により加熱された薄板状被加熱物の幅方向の温度分布を示すグラフである。
【図8】図8は、本発明の第1の実施の形態による誘導加熱装置を示す概略構成斜視説明図である。
【図9】図9(a)は、加熱コイルを示す概略構成説明図であり、また、図9(b)は、図8のC矢視図であり、また、図9(c)には、図8のIV−IV線断面図である。
【図10】図10は、図8に示す誘導加熱装置の各領域における磁界の向きを示す説明図である。
【図11】図11(a)は、本発明の第2の実施の形態による誘導加熱装置を示す概略構成説明図であり、また、図11(b)には、図11(a)のD矢視図であり、また、図11(c)は、加熱コイルおよび補正コイルを示す概略構成説明図が示されている。
【図12】図12は、補正コイルを用いたときの薄板状被加熱物の幅方向の温度分布および補正コイルを用いていないときの薄板状被加熱物の幅方向の温度分布を示すグラフである。
【図13】図13(a)は、本発明の第3の実施の形態による誘導加熱装置の概略構成説明図であり、また、図13(b)は、加熱コイルおよび補正コイルを示す概略構成説明図である。
【図14】図14(a)は、本発明の第4の実施の形態による誘導加熱装置を示す概略構成説明図であり、また、図14(b)は、図14(a)のE矢視図であり、また、図14(c)は、加熱コイルおよび補正コイルを示す概略構成説明図である。
【図15】図15は、本発明による誘導加熱装置の変形例を示す説明図である。
【図16】図16は、本発明による誘導加熱装置の変形例を示す説明図である。
【図17】図17は、本発明による誘導加熱装置の変形例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0057】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明による誘導加熱装置の実施の形態の一例を詳細に説明するものとする。
【0058】
なお、以下の説明においては、図1乃至図7を参照しながら説明した従来の誘導加熱装置と同一または相当する構成については、上記において用いた符号と同一の符号を用いて示すことにより、その詳細な構成ならびに作用効果の説明は適宜に省略することとする。
【0059】
まず、図8乃至図9を参照しながら、本発明による誘導加熱装置の第1の実施の形態について説明する。
【0060】
図8には、本発明の第1の実施の形態による誘導加熱装置の概略構成斜視説明図が示されており、また、図9(a)には、加熱コイルの概略構成説明図が示されており、また、図9(b)には、図8のC矢視図が示されており、また、図9(c)には、図8のIV−IV線による断面図が示されている。
【0061】
この図8に示す誘導加熱装置10は、一方の端部12aがフィーダー14に接続され、フィーダー14を介して高周波電流を給電する電源18の一方の端子18aに接続されるとともに、他方の端部12bがフィーダー16に接続され、フィーダー16を介して電源18の他方の端子18bに接続された一連の加熱コイル12と、一方の端部22aがフィーダー24に接続され、フィーダー24を介して高周波電流を給電する電源28の一方の端子28aに接続されるとともに、他方の端部22bがフィーダー26に接続され、フィーダー26を介して電源28の他方の端子28bに接続された一連の加熱コイル22と、搬送される薄板状被加熱物200の端部200a、200bの近傍にそれぞれ配設される断面コ字形状のフェライトコア20、30とを有して構成されている。
【0062】
より詳細には、加熱コイル12と加熱コイル22とは、所定の間隙Gを設けて配設されており、この所定の間隙Gは、間隙G中を搬送される薄板状被加熱物200の厚さTや薄板状被加熱物200の一変動あるいは加熱効率により決定される。
【0063】
また、加熱コイル12および加熱コイル22はそれぞれ、同じ形状に成形され、薄板状被加熱物200の表面に生起されるために、少なくとも1回以上交差するように配設されている。
【0064】
具体的には、誘導加熱装置10における加熱コイル12は、図2(a)に示すように、8回交差していて、8箇所の交差部12cが形成されている。この際、上方側に位置する加熱コイルと下方側に位置する加熱コイルとが互いに接することがないようにして、交差部12cを作成する。
【0065】
また、加熱コイル22も加熱コイル12と同様にして、図2(a)に示すように、8回交差していて、8箇所の交差部22cが形成されており、この際、上方側に位置する加熱コイルと下方側に位置する加熱コイルとが互いに接することがないようにして、交差部22cを作成する。
【0066】
なお、加熱コイル12は、交差部12cが形成されることにより、加熱コイル12で形成された略楕円形状の空間12dが形成されることとなり、略楕円形状の空間12dは、長軸の長さL4が薄板状被加熱物200の幅W1より大きくなるように寸法設計されている。
【0067】
また、加熱コイル22は、交差部22cが形成されることにより、加熱コイル22で形成された略楕円形状の空間22dが形成されることとなり、略楕円形状の空間22dは、長軸の長さL4が薄板状被加熱物200の幅W1より大きくなるように寸法設計されている。
【0068】
そして、加熱コイル12および加熱コイル22はそれぞれ、空間12dと空間22dとが互いに対向するようにして配設される。
【0069】
さらに、この加熱コイル12および加熱コイル22は、電源18および電源28とそれぞれ、給電される高周波電流の向きが同じになるように接続されており、同じ寸法により形成されている。
【0070】
従って、加熱コイル12および加熱コイル22の交差箇所を増やすことにより、Y軸方向、つまり、薄板状被加熱物200の搬送方向に加熱コイル12および加熱コイル22を延長して配設することができるものである。
【0071】
また、フェライトコア20は、凹凸面を薄板状被加熱物200に対向するようにして配設され、凹部20aに薄板状被加熱物200の端部200aが位置するようにして配設される。同様にフェライトコア30は、凹凸面を薄板状被加熱物200に対向するようにして配設され、凹部30aに薄板状被加熱物200の端部200bが位置するようにして配設される。
【0072】
また、フィーダー16およびフィーダー26においては、それぞれ共振コンデンサ32および34が配設されている。
【0073】
以上の構成において、この誘導加熱装置10の加熱コイル12および加熱コイル22にそれぞれフィーダーを介して電源18および電源28から高周波電流が給電されると、加熱コイル12および加熱コイル22が生起する磁束が所定の間隙Gで搬送される薄板状被加熱物200を貫通することとなり、これにより薄板状被加熱物200に渦電流が誘導されて薄板状被加熱物200が加熱されることとなる。
【0074】
このとき、薄板状被加熱物200の上方側に位置する加熱コイル12が形成した空間12dと薄板状被加熱物200の下方側に位置する加熱コイル22が形成した空間とによって形成された領域A、領域B、領域C、領域D、領域E、領域F、領域G、領域H、領域Iの9つの領域において、それぞれ磁束が生起されることとなり(図10を参照する。)、この9つの領域において生起された磁束が薄板状被加熱物200を貫通して、その表面に渦電流を誘導することとなる。
【0075】
また、薄板状被加熱物200の端部200a、200bの近傍に配設されたフェライトコア20およびフェライトコア30の存在により、加熱コイル12および加熱コイル22により間隙Gに生起される磁束が、フェライトコア20およびフェライトコア30に集中的に通過するようになり、端部200a、200bの領域を通過する磁束が減少し、端部200a、200bに集中して流れる渦電流を減少することができる。
【0076】
このように、誘導加熱装置10は、加熱コイル12と加熱コイル22とにより、薄板状被加熱物200の搬送方向に沿って複数の領域を形成し、当該領域において磁束が発生して薄板状被加熱物200を加熱するようにした。
【0077】
さらに、誘導加熱装置10は、薄板状被加熱物200の端部200a、200bの近傍にフェライトコア20およびフェライトコア30を配設するようにした。
【0078】
これにより、誘導加熱装置10においては、薄板状被加熱物200の搬送方向に長いトランスバース型誘導加熱装置を実現することができ、フェライトコア20、30により、薄板状被加熱物200の端部200a、200bの温度上昇現象、つまり、集中加熱を抑制しながら、段階加熱を行うことが可能となる。
【0079】
また、誘導加熱装置10においては、薄板状被加熱物200の搬送方向に長い構成であるため、搬送方向において薄板状被加熱物20を保温するための長さを確保することができ、薄板状被加熱物200の保温が可能となる。
【0080】
次に、図11を参照しながら、本発明による誘導加熱装置の第2の実施の形態について説明する。
【0081】
図11(a)には、本発明の第2の実施の形態による誘導加熱装置の概略構成説明図が示されており、また、図11(b)には、図11(a)のD矢視図が示されており、また、図11(c)には、加熱コイルおよび補正コイルの概略構成説明図が示されている。
【0082】
この図11に示す誘導加熱装置40は、薄板状被加熱物200と加熱コイル12との間に補正コイル42が設けられるとともに、薄板状被加熱物200と加熱コイル22との間に補正コイル44が設けられており、こうした点において、上記した誘導加熱装置10とは異なっている。
【0083】
より詳細には、補正コイル42は、一方の端部42aがフィーダー14に接続され、フィーダー14を介して電源18の一方の端部18aに接続されるとともに、他方の端部42bが加熱コイル12の一方の端部12aに接続されている(図11(c)を参照する。)。
【0084】
この補正コイル42は略矩形形状であって、加熱コイル12の搬送方向における長さL1と略一致する長さL2を有して構成されており、搬送方向と直交する幅方向の長さL3は、薄板状被加熱物200の幅W1より短く設定されている。
【0085】
さらに、長さL3は、フェライトコア20とフェライトコア30との間隔g1より短く設定されている。
【0086】
また、補正コイル44は、一方の端部44aがフィーダー24に接続され、フィーダー24を介して電源28の一方の端部18aに接続されるとともに、他方の端部44bが加熱コイル22の一方の端部22aに接続されている。
【0087】
この補正コイル44は略矩形形状であって、補正コイル42と同様にして構成されており、加熱コイル22の搬送方向における長さL1と略一致する長さL2を有して構成されており、搬送方向と直交する幅方向の長さL3は、薄板状被加熱物200の幅W1より短く設定されている。
【0088】
さらに、長さL3は、フェライトコア20とフェライトコア30との間隔g1より短く設定されている。
【0089】
なお、この補正コイル42、44の長さL3は、薄板状被加熱物200において、端部200a、200bの内側において温度が下降していた部分を考慮して設定されるものである。
【0090】
以上の構成において、この誘導加熱装置40の補正コイル42および加熱コイル12と、補正コイル44と加熱コイル22とに、それぞれフィーダーを介して電源18および電源28から高周波電流が給電されると、加熱コイル12および加熱コイル22が生起する磁束が所定の間隙G内で搬送される薄板状被加熱物200を貫通することとなり、これにより薄板状被加熱物200に渦電流が誘導されて薄板状被加熱物200が加熱されることとなる。
【0091】
このとき、誘導加熱装置10と同様にフェライトコア20、30により、薄板状被加熱物200の端部200a、200bに集中して流れる渦電流を減少することができるとともに、補正コイル42、44により薄板状被加熱物200の端部200a、200bの内側に生じる低温部において、磁束が補強されることとなり、当該低温部における温度下降現象が解消された温度特性となる(図12を参照する)。
【0092】
このように、誘導加熱装置40は、誘導加熱装置10の構成に加えて、薄板状被加熱物200と加熱コイル12との間に補正コイル42を設けるとともに、薄板状被加熱物200と加熱コイル22との間に補正コイル44を設けるようにした。
【0093】
これにより、誘導加熱装置40においては、薄板状被加熱物200の搬送方向に長いトランスバース型誘導加熱装置を実現することができ、フェライトコア20、30により、薄板状被加熱物200の端部200a、200bの温度上昇現象、つまり、集中加熱を抑制しながら、段階加熱を行うことが可能となる。
【0094】
また、誘導加熱装置40においては、薄板状被加熱物200の搬送方向に長い構成であるため、搬送方向において薄板状被加熱物20を保温するための長さを確保することができ、薄板状被加熱物200の保温が可能となる。
【0095】
さらに、誘導加熱装置40においては、薄板状被加熱物200の端部200a、200bの内側における温度下降現象が解消され、薄板状被加熱物200の幅方向において平坦な温度特性となる。
【0096】
次に、図13を参照しながら、本発明による誘導加熱装置の第3の実施の形態について説明する。
【0097】
図13(a)には、本発明の第3の実施の形態による誘導加熱装置の概略構成説明図が示されており、また、図13(b)には、加熱コイルおよび補正コイルの概略構成説明図が示されている。
【0098】
この図13に示す誘導加熱装置50は、薄板状被加熱物200が搬入される搬入口および薄板状被加熱物200が搬出される搬出口において、補正コイル42と加熱コイル12とが接することがない程度に近づけて配設するとともに、当該搬入口および当該搬出口において、補正コイル42に流れる電流と、加熱コイル12に流れる電流とが互いに逆方向に流れるようにして加熱コイル12を形成し、薄板状被加熱物200が搬入される搬入口および薄板状被加熱物200が搬出される搬出口において、補正コイル44と加熱コイル22とが接することがない程度に近づけて配設するとともに、当該搬入口および当該搬出口において、補正コイル44に流れる電流と、加熱コイル22に流れる電流とが互いに逆方向に流れるようにして加熱コイル22を形成する点において、上記した誘導加熱装置40とは異なっている。

【0099】
以上の構成において、この誘導加熱装置50の補正コイル42および加熱コイル12と、補正コイル44および加熱コイル22とに、電源18および電源28から高周波電流が給電されると、加熱コイル12および加熱コイル22が生起する磁束が所定の間隙G内で搬送される薄板状被加熱物200を貫通することとなり、これにより薄板状被加熱物200に渦電流が誘導されて薄板状被加熱物200が加熱されることとなる。
【0100】
このとき、誘導加熱装置10と同様にして、フェライトコア20、30により、薄板状被加熱物200の端部200a、200bに集中して流れる渦電流を減少することができるとともに、誘導加熱装置40と同様にして、補正コイル42、44により薄板状被加熱物200の端部200a、200bの内側に生じる低温部において、磁束が補強されることとなり、当該低温部における温度下降現象が解消された温度特性となる。
【0101】
さらに、搬入口および搬出口において、薄板状被加熱物200の表面において生じる渦電流を相殺することにより、必要のない加熱をすることがなくなる。
【0102】
このように、誘導加熱装置50においては、搬入口および搬出口において、薄板状被加熱物200の幅方向に延設される補正コイル42と加熱コイル12とを近づけて配設し、補正コイル42に流れる電流と加熱コイル12に流れる電流とが互いに逆方向となるように加熱コイル12を形成するとともに、薄板状被加熱物200の幅方向に延設される補正コイル44および加熱コイル22を近づけて配設し、補正コイル44に流れる電流と加熱コイル22に流れる電流とが互いに逆方向となるように加熱コイル22を形成することにより、搬入口および搬出口において薄板状被加熱物200の表面に生じる渦電流を相殺することができ、必要のない加熱を行わずに済む。
【0103】
次に、図14を参照しながら、本発明による誘導加熱装置の第4の実施の形態について説明する。
【0104】
図14(a)には、本発明の第4の実施の形態による誘導加熱装置の概略構成説明図が示されており、また、図14(b)には、図14(a)のE矢視図が示されており、また、図14(b)には、加熱コイルおよび補正コイルの概略構成説明図である。
【0105】
この図14示す誘導加熱装置60は、加熱コイル12と補正コイル42とが互いに異なる電源に接続されており、また、加熱コイル22と補正コイル44とが互いに異なる電源接続されており、こうした点において、上記した誘導加熱装置40と異なっている。
【0106】
より詳細には、加熱コイル12は、一方の端部12aがフィーダー14に接続され、フィーダー14を介して電源18の一方の端子18aに接続されるとともに、他方の端部12bがフィーダー16に接続され、フィーダー16を介して電源18の他方の端子18bに接続されている。
【0107】
また、加熱コイル22は、一方の端部22aがフィーダー24に接続され、フィーダー24を介して電源28の一方の端子28aに接続されるとともに、他方の端部22bがフィーダー26に接続され、フィーダー26を介して電源28の他方の端子28bに接続されている。
【0108】
さらに、補正コイル42は、一方の端部42aがフィーダー64に接続され、フィーダー64を介して高周波電流を給電する電源68の一方の端子68aに接続されるとともに、他方の端部42bがフィーダー66に接続され、フィーダー66を介して電源68の他方の端子68bに接続されている。
【0109】
また、補正コイル44は、一方の端部44aがフィーダー74に接続され、フィーダー74を介して高周波電流を給電する電源78の一方の端子78aに接続されるとともに、他方の端部44bがフィーダー76に接続され、フィーダー76を介して電源78の他方の端子78bに接続されている。
【0110】
なお、フィーダー66およびフィーダー76においては、それぞれ共振コンデンサ82および84が配設されている。
【0111】
以上の構成において、この誘導加熱装置60の加熱コイル12および加熱コイル22にそれぞれフィーダーを介して電源18および電源28から高周波電流が給電されるとともに、補正コイル42および補正コイル44にそれぞれフィーダーを介して電源68および電源78から高周波電源が供給されると、加熱コイル12および加熱コイル22が生起する磁束が所定の間隙Gで搬送される薄板状被加熱物200を貫通することとなり、これにより薄板状被加熱物200に渦電流が誘導されて薄板状被加熱物200が加熱されることとなる。
【0112】
このとき、誘導加熱装置40と同様に、フェライトコア20、30により、薄板状被加熱物200の端部200a、200bに集中して流れる渦電流を減少することができるとともに、補正コイル42、44により薄板状被加熱物200の端部200a、200bの内側に生じる低温部において、磁束が補強されることとなり、当該低温部における温度下降現象が解消された温度特性となる。
【0113】
このように、誘導加熱装置60においては、加熱コイル12と補正コイル42とを別電源に接続するとともに、加熱コイル22と補正コイル44とを別電源に接続するようにしたことにより、薄板状被加熱物200の端部200a、200bの内側に生じる低温部の補正を、独立した電源で制御することができるようになる。
【0114】
なお、上記した実施の形態は、以下の(1)乃至(5)に示すように変形することができるものである。
【0115】
(1)上記した実施の形態においては、第2の実施の形態において説明した誘導加熱装置40および第4の実施の形態において説明した誘導加熱装置60において、薄板状被加熱物200と加熱コイル12との間に補正コイル42を設けるとともに、薄板状被加熱物200と加熱コイル22との間に補正コイル44を設けるようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、補正コイル42を加熱コイル12の外側に設けるとともに、補正コイル44を加熱コイル22の外側に設けるようにしてもよい(図15を参照する。)。
【0116】
(2)上記した実施の形態においては、加熱コイル12および加熱コイル22の交差箇所を増やすことにより、Y軸方向、つまり、薄板状被加熱物200の搬送方向に加熱コイル12および加熱コイル22を延長するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、図16に示すように、少なくとも1回以上交差するようにした加熱コイル12および加熱コイル22を共振コンデンサにより、直列に複数接続するようにして誘導加熱装置全体の長さを搬送方向に長く設計するようにしてもよい(図16(a)を参照する。)。
【0117】
これにより、装置の全長が長くなったとしても、コイル電圧を上げることなく構成することができるようになる(図16(b)を参照する。)。
【0118】
なお、このときの電源はいずれか1つの加熱コイル12および加熱コイル22に接続していればよい。
【0119】
また、このように多数の加熱コイルを簡単な構成で直列に接続することにより、高周波抵抗を大きくすることができ、従来の技術におけるトランスバース型の誘導加熱装置に比べ、加熱コイルに流す高周波電流を小さくすることが可能となる。
【0120】
これにより、加熱コイルを、比較的高価である水冷銅パイプを用いることなく、比較的安価な空冷リッツ線を用いて構成することができるようになる。
【0121】
(3)上記した実施の形態においては、フェライトコア20とフェライトコア30との間隔および補正コイル42と補正コイル44との間隔を別々に制御するようにしたが、これに限られるものではないことは勿論であり、図17に示すように、フェライトコア20と補正コイル42、44とを固定部材92により固定し、フェライトコア30と補正コイル42、44とを固定部材94により固定し、当該固定部材92、94を薄板状被加熱物200の幅方向で移動させることにより、フェライトコア20および補正コイル42、44と、フェライトコア30と補正コイル42、44とを一体的に調整できるようにしてもよい。
【0122】
この際、補正コイル42、44は、補正コイル42、44の薄板状被加熱物200の幅方向に延設される部分が伸縮可能に構成されるとともに、一方の端部42a、44aおよび他方の端部42b、44bが、各端部において接続された加熱コイルまたはフィーダーと接続した状態で薄板状被加熱物200の幅方向に移動可能に構成されるものである。
【0123】
(4)上記した実施の形態においては、第3の実施の形態において説明した誘導加熱装置50において、1つの電源により、薄板状被加熱物200の搬入口および搬出口近傍に位置する加熱コイル12と補正コイル42とを近づけて配設するとともに、当該搬入口および当該搬出口に位置する加熱コイル12と補正コイル42とに流れる電流が逆方向になるように設計するとともに、当該搬入口および当該搬出口近傍に位置する加熱コイル22と補正コイル44とを近づけて配設するとともに、当該搬入口および当該搬出口に位置する加熱コイル22と補正コイル44とに流れる電流が逆方向になるように設計したがこれに限られるものではないことは勿論である。
【0124】
即ち、第4の実施の形態において説明した誘導加熱装置60のように、加熱コイル12と補正コイル42とを別電源により制御するとともに、加熱コイル22と補正コイル44とを別電源により制御するようにしてもよく、これにより、簡単に電流の方向を制御することができる。
【0125】
(5)上記した実施の形態ならびに上記した(1)乃至(4)に示す変形例は、適宜に組み合わせるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0126】
本発明は、板状の被加熱物、特に、薄板状の被加熱物を加熱する際に用いて好適なものである。
【符号の説明】
【0127】
10、40、50、60、100、150、300 誘導加熱装置
12、22、106、156、160、306、308 加熱コイル
14、16、24、26、64、66、74、76 フィーダー
18、28、68、78、104、154 電源
20、30、102、152、302、304 フェライトコア
42、44 補正コイル
92、94 固定部材
200 薄板状被加熱物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状被加熱物を高周波電流により誘導加熱するトランスバース型構造の誘導加熱装置において、
薄板状被加熱物の幅方向と直交する搬送方向に沿って少なくとも1回以上交差して、前記薄板状被加熱物の幅方向で延長されるとともに前記薄板状被加熱物の幅方向の長さより長い長軸を備えた略楕円形状の第1の空間を形成する第1の加熱コイルと、
前記薄板状被加熱物の幅方向と直交する搬送方向に沿って前記第1の加熱コイルと同数だけ交差して、前記薄板状被加熱物の幅方向で延長されるとともに前記薄板状被加熱物の幅方向の長さより長い長軸を備えた略楕円形状の第2の空間を形成し、前記第1の加熱コイルとの間に前記薄板状被加熱物が搬送可能な所定の間隔を開けて、前記第1の空間と前記第2の空間とが互いに対向するように配置された第2の加熱コイルと、
前記第1の加熱コイルと前記第2の加熱コイルとの間に配設されるとともに、前記第1の加熱コイルと前記第2の加熱コイルとの間を搬送される前記薄板状被加熱物の一方の端部の近傍に配設される断面コ字形状の第1のフェライトコアと、
前記第1の加熱コイルと前記第2の加熱コイルとの間に配設されるとともに、前記第1の加熱コイルと前記第2の加熱コイルとの間を搬送される前記薄板状被加熱物の他方の端部の近傍に配設される断面コ字形状の第2のフェライトコアと
を有することを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の誘導加熱装置において、さらに、
前記第1の加熱コイルと前記薄板状被加熱物との間に配設されるとともに、前記薄板状被加熱物の両端部の近傍において前記搬送方向に延設される略矩形形状の第1の補正コイルと、
前記第2の加熱コイルと前記薄板状被加熱物との間に配設されるとともに、前記薄板状被加熱物の両端部の近傍において前記搬送方向に延設される略矩形形状の第2の補正コイルと
を有することを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項3】
請求項1に記載の誘導加熱装置において、さらに、
前記第1の加熱コイルの外側に配設されるとともに、前記薄板状被加熱物の両端部の近傍において前記搬送方向に延設される略矩形形状の第1の補正コイルと、
前記第2の加熱コイルの外側に配設されるとともに、前記薄板状被加熱物の両端部の近傍において前記搬送方向に延設される略矩形形状の第2の補正コイルと
を有することを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項4】
請求項2または3のいずれか1項に記載の誘導加熱装置において、
前記薄板状被加熱物を搬入する搬入口と前記薄板状被加熱物を搬出する搬出口との近傍に位置する前記第1の補正コイルと前記第1の加熱コイルとを、互いに近づけて配設するとともに、該搬入口と該搬出口との近傍に位置する前記第1の補正コイルと前記第1の加熱コイルとに流れる電流が互いに逆方向に流れるように設計する
ことを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項5】
請求項2、3または4のいずれか1項に記載の誘導加熱装置において、
前記第1の加熱コイルと前記第1の補正コイルとは、それぞれ別電源に接続され、
前記第2の加熱コイルと前記第2の補正コイルとは、それぞれ別電源に接続される
ことを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項6】
請求項2、3、4または5のいずれか1項に記載の誘導加熱装置において、さらに、
前記フェライトコアと前記第1の補正コイルと前記第2の補正コイルとを前記薄板状被加熱物の幅方向で移動可能に固定し、前記フェライトコア同士の該幅方向の間隔、前記第1の補正コイルの該幅方向の間隔および前記第2の補正コイルの該幅方向の間隔を同時に制御することが可能な移動部材と
を有することを特徴とする誘導加熱装置。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5または6のいずれか1項に記載の誘導加熱装置において、
前記第1の加熱コイルを共振コンデンサを介して前記搬送方向に複数接続するとともに、前記第2の加熱コイルを共振コンデンサを介して前記搬送方向に前記第1の加熱コイルと同数だけ接続する
ことを特徴とする誘導加熱装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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