説明

誘導加熱調理器

【課題】ヒータ取り外し時の安全性を高めることのできる加熱庫を備えた誘導加熱調理器を得る。
【解決手段】箱状の加熱庫と、高周波電流を供給されて高周波磁束を発生するコイル6と、加熱庫内部に着脱可能に配置され、コイル6から生じる磁束によって誘導電流を発生して発熱する上ヒータ10a、下ヒータ10bと、ヒータ取り外しボタン18bにより上ヒータ10a、下ヒータ10bの取り外しが指示されたとき、温度センサ16によって検知された上ヒータ10a、下ヒータ10bの温度が所定温度を超えていれば、上ヒータ10a、下ヒータ10bの取り外しを防止するようロック棒20a、20bを上ヒータ10a、下ヒータ10bに係合させ、上ヒータ10a、下ヒータ10bの温度が所定温度以下であれば、上ヒータ10a、下ヒータ10bの取り外しを可能とするようロック棒20a、20bを移動させる制御部17とを備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導加熱調理器に関し、特に、加熱庫において誘導電流式ヒータを加熱源として用いた誘導加熱調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、組み込み式の誘導加熱調理器を備えたシステムキッチンが普及している。このような組み込み式の加熱調理器として、上面に鍋やフライパンを加熱する加熱部を備えるとともに、筐体内にグリル等の加熱庫を備えたものが知られている。
【0003】
加熱調理器は、加熱後には高温となっていることから、使用者に注意を促すための技術が提案されている。このような加熱調理器として、「プレート上に被加熱物を載置するようにしたものであって、プレートの温度を検出する温度センサと、プレートに設けられ該プレートが高温であることを表示するための表示部と、温度センサの検出温度に応じて前記表示部の表示の態様を切換える表示制御手段とを具備する」ものが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−52354号公報(第2〜4頁)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載された従来の誘導加熱調理器では、プレートが高温であることを注意喚起するが、プレートの高温注意喚起にとどまっており、加熱庫については考慮されていない。
【0006】
グリル等の加熱庫では魚や肉などを焼くことが多く、油の飛び跳ねが多いことから、加熱庫に対する清掃の要請が高い。しかし、加熱庫内やヒータを清掃するためヒータを取り外す際に、高温の加熱庫やヒータに触れることがないように、安全性をより高めるための機構を得ることが望まれていた。
【0007】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、ヒータ取り外し時の安全性を高めることのできる加熱庫を備えた誘導加熱調理器を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る誘導加熱調理器は、箱状の加熱庫と、高周波電流を供給されて高周波磁束を発生するコイルと、前記加熱庫内部に着脱可能に配置され、前記コイルから生じる磁束によって誘導電流を発生して発熱するヒータと、前記ヒータの温度を検知する温度検知手段と、前記ヒータの取り外しを指示するための操作部と、前記ヒータが前記加熱庫から取り外されることを防止する取り外し防止手段と、前記操作部により前記ヒータの取り外しが指示されたとき、前記前記ヒータの温度が所定温度以下であれば、前記取り外し防止手段の取り外し防止機能を解除して前記ヒータを取り外し可能にする制御手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、操作部によりヒータの取り外しが指示されたとき、温度検知手段によって検知されたヒータの温度が所定温度を超えていれば、ヒータの取り外しが防止されるので、ヒータ取り外し時の安全性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】実施の形態1に係る加熱庫の断面模式図である。
【図2】実施の形態1に係る加熱庫のヒータを説明する図である。
【図3】実施の形態1に係る加熱庫の主要部の断面模式図である。
【図4】実施の形態1に係るヒータ取り外しロック機構を説明する主要部の斜視図である。
【図5】実施の形態1に取り外しロック機構の動作を説明するフローチャートである。
【図6】実施の形態2に係る加熱庫の主要部の断面模式図である。
【図7】実施の形態2に係る加熱庫の正面模式図である。
【図8】実施の形態2に係るロック棒の移動に関する構造を説明する図である。
【図9】実施の形態3に係る加熱庫の主要部の断面模式図である。
【図10】実施の形態3に係るヒータカバーの開閉機構を説明する主要部の斜視図である。
【図11】実施の形態3に係るヒータカバーの開閉動作を説明するフローチャートである。
【図12】実施の形態3に係るヒータカバーの変形例を説明する図であり、調理庫の主要部の断面模式図である。
【図13】実施の形態3に係るヒータカバーの変形例を説明する主要部の斜視図である。
【図14】実施の形態4に係る加熱庫の主要部の断面模式図である。
【図15】実施の形態4に係る加熱庫の正面模式図である。
【図16】実施の形態4に係るヒータカバーの開閉構造を説明する図である。
【図17】実施の形態5に係る加熱庫の主要部の断面模式図である。
【図18】実施の形態5に係るヒータの移動機構を説明する主要部の斜視図である。
【図19】実施の形態5に係るヒータ移動動作を説明するフローチャートである。
【図20】実施の形態6に係る加熱庫の主要部の断面模式図である。
【図21】実施の形態6に係るヒータ移動機構を説明する主要部の斜視図である。
【図22】実施の形態7に係る加熱庫の主要部の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
実施の形態1.
本実施の形態1の加熱庫は、天板上に載置された鍋等を誘導加熱コイルにより加熱するいわゆるIHクッキングヒータや、オーブンレンジ、オーブントースターなどの加熱調理器に設けられ、グリル調理等を行うためのものである。
図1は、実施の形態1に係る加熱庫の断面模式図である。図2は、実施の形態1に係る加熱庫のヒータを説明する図である。なお、図1、図2を含め、図面に示す各構成の大きさや位置関係は、実際のものとは異なる場合がある。また、説明のため、図1の紙面左側に相当する方向を「前」、紙面右側に相当する方向を「後」、紙面上側に相当する方向を「上」、紙面下側に相当する方向を「下」と称する場合がある。
【0012】
図1に示すように、加熱庫1は、上壁2aと、下壁2b(底面)と、垂直方向に延びる後壁5と、同じく垂直方向に延びる左右両側の側壁3(図1では片方の側壁3のみ図示)とを備える。加熱庫1の前面には、開閉可能であって調理中の内部を観察できるように一部がガラスで構成された前扉4が設けられている。加熱庫1の内部には、ループ状の導電体からなる着脱可能な上ヒータ10a、下ヒータ10bと、加熱庫1の後壁5に配設されたコイル6と、コイル6に隣接して配置された磁性材料からなるフェライトコアなどの磁性体7とを有する。また、加熱庫1の下壁2bの上には、加熱対象である食材Xから出る脂等を受けるための受皿13と、食材Xを載置するための焼網14とを備える。また、加熱調理器の上部には操作部18と報知部19が設けられており、内部には加熱調理器の全体の動作を制御する制御部17と、上ヒータ10a、下ヒータ10bの温度を検知するための温度センサ16とが設けられている。
【0013】
コイル6は、例えば直径が0.3mmの銅線を樹脂などで被覆したものを19本撚り線にしたいわゆるリッツ線を、後壁5にほぼ平行な平面上にほぼ長方形状(各角部が湾曲した長方形状またはほぼ楕円形状も含む)に、例えば複数回(25回)巻回して形成されたものである。コイル6は、高周波電流を供給する電源回路(図示せず)に接続されている。高周波電流がコイル6に供給されることにより、これらの複数のリッツ線は、同一方向の電流(磁束)を形成する。
【0014】
磁性体7は、電流が同一方向に流れるように配置された複数のリッツ線を、断面C字状(図1参照)に包囲するように配置されている。実施の形態1では、2つの磁性体7が、上ヒータ10a及び下ヒータ10bに対して配置されている。磁性体7は、例えば、一般的なIHクッキングヒータの加熱コイルの周囲に通常用いられるフェライトコアと同等の磁性材料を用いて形成することができる。磁性体7の断面形状をC字状にすることで、上ヒータ10a及び下ヒータ10bの給電部の温度上昇が小さくなるように構成している。
【0015】
磁性体7の断面C字状の内側方向には、断熱部材8が設けられている。断熱部材8は、例えば、ガラスウールやセラミックウールなどの断熱材とセラミックスとの二層構造とすることができる。コイル6は、上ヒータ10a及び下ヒータ10bと対向する部分において、磁性体7と断熱部材8によって挟まれた構造を有する。断熱部材8により、コイル6及び磁性体7は、加熱庫1内部の高温の空気から断熱される。なお、断熱部材8は、上記の構成例のほか、セラミックスのみで構成され、断熱材の代わりとして空気層や空気流をセラミックスとコイルの間に設けたものであってもよい。
【0016】
このように構成されたコイル6、磁性体7、断熱部材8は、加熱庫1の後壁5の一部となるように配置される。なお、加熱庫1の残りの壁面(上壁2a、下壁2bを含む)は、鉄やステンレス等の金属、あるいはセラミックスまたはガラスなどの絶縁材料など、耐熱性材料を用いて構成される。このような構成により、加熱庫1は、耐熱性材料からなる上壁2a、下壁2b、前扉4、後壁5、両側の側壁3によって閉じられる筐体を構成する。なお、加熱庫1の上壁2a、下壁2b等の内面には、防汚効果及び遠赤外線効果を目的とした各種コーティングを施しておくことが望ましい。
【0017】
上ヒータ10aと下ヒータ10bは、コイル6から生じる高周波磁束と鎖交する電気的に閉じられた閉ループ(閉回路)を構成したものであり、電流が流れることにより発生するジュール熱により発熱させるようにしたものである。上ヒータ10aと下ヒータ10bは同一の構成である。上ヒータ10a、下ヒータ10bは、給電部11と、加熱部12とを備える。上ヒータ10a、下ヒータ10bは、給電部11と加熱部12とが連なって閉ループ(閉回路)を構成している。また、上ヒータ10a、下ヒータ10bは、ループ状の部材を、加熱庫1の奥行き方向及び幅方向に複数回折り曲げられている。このように奥行き方向及び幅方向に複数回折り曲げることで、加熱庫1内における温度分布を調整することができる。なお、上ヒータ10a、下ヒータ10bの折り曲げ回数や形状は、図示のものに限らない。
【0018】
給電部11は、加熱部12に対して相対的に電気抵抗が低い部分である。なお、ここでいう電気抵抗の高低は、給電部11と加熱部12の単位長さあたりの電気抵抗の相対的な高低である。
例えば、給電部11と加熱部12とを同一金属で作製する場合は、給電部11を中身の詰まった棒(中実棒)で作製し、加熱部12をパイプ(中空棒)で作製して、両者を溶接などの方法で接続することができる。また、両者を異種の金属で作製する場合は、給電部11を銅等の電気抵抗の低い金属で作製し、加熱部12をステンレス等の電気抵抗のより高い金属で作製することができる。
また、給電部11と加熱部12は、互いに異なる構造及び材質で作製してもよい。例えば、給電部11を外径6mmの銅あるいは銅合金からなる中実棒で作製し、加熱部12を外径6mm、半径方向の厚み0.3〜1mmのステンレスパイプ(中空棒)で作製し、これらを溶接あるいはロウ付けにより接続してもよい。
【0019】
上ヒータ10a、下ヒータ10bは、断熱部材8の水平方向に延びる凹状の給電部支持溝9内に嵌合されて支持される。また、加熱庫1の両側の側壁3には、奥行き方向にわたって上ヒータ10a、下ヒータ10bを挿入可能なヒータ支持溝15が設けられており(図2参照)、このヒータ支持溝15に上ヒータ10aと下ヒータ10bの側部が載置されて支持される。上ヒータ10a、下ヒータ10bは、給電部支持溝9、ヒータ支持溝15に対して取り外し可能に嵌合されている。使用者が前扉4を開き、上ヒータ10a、下ヒータ10bを手前側に引くことで、上ヒータ10a、下ヒータ10bを加熱庫1内に対して着脱可能である。このように上ヒータ10a、下ヒータ10bは加熱庫1内から取り外し可能であるので、取り外すことで両ヒータや加熱庫1内の清掃をより容易に行うことができる。
【0020】
温度センサ16は、上ヒータ10a、下ヒータ10bの温度を検知するためのものである。温度センサ16は、信号線により制御部17と接続されており、検知した情報を制御部17に出力する。温度センサ16は、例えば、金属製の保護管の内部に温度可変抵抗を配したサーミスタを用いることができる。この場合、温度センサ16を加熱庫1の壁面等に取り付け、サーミスタの表面が上ヒータ10a、下ヒータ10bの表面に接触することができるように、バネによりサーミスタを上ヒータ10a、下ヒータ10b側に付勢するよう構成する。また、加熱庫1内の空気温度を検知可能にした温度センサ16を設け、検知した空気温度に基づいて上ヒータ10a、下ヒータ10bの温度を推測するようにしてもよい。このような構成のほか、上ヒータ10a、下ヒータ10bの温度を検知可能な任意の構成を採用することができる。
【0021】
操作部18は、使用者からの操作を受け付ける入力手段を備えており、使用者の操作に応じた信号を信号線で接続された制御部17に対して出力する。操作部18としては、例えばタッチパネルや押しボタン等を用いることができる。本実施の形態1の操作部18は、使用者が加熱指示や火力を入力するための操作部として加熱指示ボタン18aを備え、また、上ヒータ10a、下ヒータ10bの取り外しを指示するための操作部としてヒータ取り外しボタン18bを備える。
【0022】
報知部19は、信号線で接続された制御部17に制御されて、加熱調理器の動作状態や使用者に対して情報を報知する。報知部19としては、例えば液晶画面やランプ等の視覚的な報知を行うものや、ブザー音や音声等を発するスピーカのような聴覚的な報知を行うものを設けることができる。
【0023】
なお、本実施の形態1では、加熱調理器の上面側に操作部18と報知部19とを備える例を示すが、操作部18と報知部19の配置はこれに限らず、操作部18と報知部19を加熱調理器の前面側に配置してもよいし、操作部18と報知部19とを前面側と上面側とに分けて配置してもよい。例えば、実施の形態1に係る加熱庫1をいわゆるIHクッキングヒータに適用する場合、加熱指示ボタン18aをIHクッキングヒータの天面に設け、ヒータ取り外しボタン18bと報知部19を前面に設けることができる。また、例えば、加熱指示ボタン18a、取り外しボタン18b、及び報知部19を加熱調理器の前面側に配置する場合、これらを加熱庫1の左右に分けて配置してもよいし、これらを加熱庫1の左右いずれかにまとめて配置してもよい。ここで例示したものに限らず、操作部18と報知部19は任意の配置とすることができる。
【0024】
制御部17は、例えばマイクロコンピュータやCPUやDSP等で構成されており、操作部18の加熱指示ボタン18aからの信号を受けて、上ヒータ10aと下ヒータ10bによる加熱動作を制御する。また、制御部17は、加熱調理器の動作に関する情報を報知部19により出力させる。また、制御部17は、ヒータ取り外しボタン18bからの入力を受けて、上ヒータ10a、下ヒータ10bの取り外しに関する動作制御を行う。
【0025】
次に、上ヒータ10aと下ヒータ10bによる加熱動作について説明する。
制御部17は、操作部18の加熱指示ボタン18aから加熱開始の指示を受けると、図示しない電源回路を駆動する。
コイル6に図示しない電源回路から20〜100kHzの高周波電流が供給されると、コイル6にコイル電流が流れ、コイル6の周囲に高周波磁束が発生する。コイル6から生じた高周波磁束は、磁気抵抗が小さい磁性体7を通って、上ヒータ10aと下ヒータ10bに鎖交する。このとき、電気的に閉じた(閉ループを構成する)上ヒータ10a、下ヒータ10bに、鎖交した高周波磁束による誘導電流が発生し、誘導電流によるジュール熱が上ヒータ10a、下ヒータ10bに発生する。上ヒータ10a、下ヒータ10bの加熱部12の電気抵抗が高いため、この加熱部12においてより大きなジュール熱が発生する。そして、上ヒータ10a、下ヒータ10bからの輻射熱と、上ヒータ10a、下ヒータ10bにより加熱された高温空気により、加熱庫1内の食材Xを加熱することができる。
【0026】
本実施の形態1に係る加熱庫1の上ヒータ10a、下ヒータ10bは、上記のような誘導電流を利用した加熱を行うので、例えば従来のシーズヒータやラジエントヒータ等の電気ヒータのように加熱庫1に対する電気的な配線が不要である。したがって、容易に加熱庫1から上ヒータ10a、下ヒータ10bを着脱可能であり、加熱庫1内や上ヒータ10a、下ヒータ10b自身の清掃が行いやすい。
【0027】
以上、加熱庫1の全体的な構成を説明した。ここまで説明した構成は、基本的には、後述する実施の形態2以降においても共通である。
次に、本実施の形態1の上ヒータ10a、下ヒータ10bの取り外しロック機構について説明する。取り外しロック機構は、本発明のヒータの取り外し防止手段に相当し、上ヒータ10a、下ヒータ10bが引き抜かれようとしたときでもこれを阻止する機構である。
【0028】
図3は、実施の形態1に係る加熱庫の主要部の断面模式図、図4は、実施の形態1に係るヒータ取り外しロック機構を説明する主要部の斜視図である。
図3、図4に示すように加熱庫1内には、上ヒータ10a、下ヒータ10bの取り外しロック機構として、円柱状のロック棒20a、ロック棒20bと、ロック棒移動用モータ21とを備える。
【0029】
ロック棒20a、20bは、本発明の係合部に相当し、例えば熱量容量が比較的小さく放熱性がよい金属で構成された棒状の部材である。ロック棒20a、20bは、ループ状に形成された上ヒータ10a、下ヒータ10bのループ内部に、上下方向に挿入されている。ロック棒20a、20bは、上ヒータ10a、下ヒータ10bのうち、引き出し方向と交差する方向に延びる部位の手前側に配置される。本実施の形態1では、ロック棒20a、20bは、加熱庫1に取り付けられた上ヒータ10a、下ヒータ10bの最奥部に位置するとともに、上ヒータ10a、下ヒータ10bの引き出し方向と直交する部位である給電部11の手前側に位置している。
【0030】
また、ロック棒20a、20bは、上下方向に移動可能に取り付けられている。上ヒータ10aに対応して設けられたロック棒20aの移動範囲は、上ヒータ10aを側方から見たときに、ロック棒20aの下端が上ヒータ10aの下面よりも下側に位置する状態を最下位、ロック棒20aの下端が上ヒータ10aの上面よりも上側に位置する状態を最上位とする。また、下ヒータ10bに対応して設けられたロック棒20bの移動範囲は、下ヒータ10bを側方から見たときに、ロック棒20bの上端が下ヒータ10bの上面よりも上側に位置する状態を最上位、ロック棒20bの上端が下ヒータ10bの下面よりも下側に位置する状態を最下位とする。図3、図4では、最下位に位置するロック棒20aと最上位に位置するロック棒20bとを実線で示し、最上位に位置するロック棒20aと最下位に位置するロック棒20bとを破線で示している。
【0031】
ロック棒移動用モータ21は、信号線により制御部17に接続されており、制御部17に制御されて、ロック棒20a、20bを上下方向に移動させる。ロック棒移動用モータ21は、本発明の係合部移動手段に相当する。
【0032】
次に、上ヒータ10a、下ヒータ10bの取り外しに関する動作を説明する。
まず、上ヒータ10a、下ヒータ10bによる加熱中を含め、通常時には、ロック棒20aは最下位にあるとともにロック棒20bは最上位にあり、両者はそれぞれ上ヒータ10a、下ヒータ10bに係合している。ロック棒20aが最下位、ロック棒20bが最上位にあるとき、上ヒータ10a、下ヒータ10bが手前側に引き抜かれようとしても、ロック棒20a、20bが給電部11に引っかかるために上ヒータ10a、下ヒータ10bの取り外しが阻止される。
【0033】
次に、上ヒータ10a、下ヒータ10bを取り外す場合の動作を説明する。
図5は、実施の形態1に係る取り外しロック機構の動作を説明するフローチャートである。
図5に示すように、ヒータ取り外しボタン18bが押下されてヒータ取り外しボタン18bから制御部17にヒータの取り外しの信号が伝えられると(S101;Yes)、制御部17は、上ヒータ10a、下ヒータ10bが加熱中であるかどうか判断する(S102)。上ヒータ10a、下ヒータ10bが加熱中であれば(S102;Yes)、報知部19を制御して表示や音声等によりヒータ取り外しのロック解除が不可能であることを報知する(S105)。なお、このステップS105におけるヒータ取り外しのロック解除が不可能であることの報知に加えて、あるいはこれに代えて、上ヒータ10a、下ヒータ10bが加熱中である旨の注意喚起を報知するようにしてもよい。
【0034】
上ヒータ10a、下ヒータ10bが加熱中でなければ(S102;No)、制御部17は、温度センサ16からの信号に基づいて上ヒータ10a、下ヒータ10bの温度がより安全性を高めるための所定温度(例えば37℃〜40℃)以下であるか否か判断する(S103)。上ヒータ10a、下ヒータ10bが所定温度以下であれば(S103;Yes)、制御部17は、ロック棒移動用モータ21を駆動してロック棒20aを最上位、ロック棒20bを最下位に移動させることにより、ヒータ取り外しロックを解除する(S104)。このようにすると、使用者は、上ヒータ10a、下ヒータ10bを手前側に引き出すことで上ヒータ10a、下ヒータ10bを加熱庫1から取り外すことができる。なお、ステップS104では、ヒータ取り外しロックが解除されたことや、加熱庫1内が所定温度以下となったことを使用者に報知するようにしてもよい。
また、上ヒータ10a、下ヒータ10bが所定温度以下でなければ(S103;No)、ヒータ取り外しのロック解除が不可能であることを報知する(S105)。なお、このステップS105におけるヒータ取り外しのロック解除が不可能であることの報知に加えて、あるいはこれに代えて、上ヒータ10a、下ヒータ10bが高温である旨の注意喚起を報知するようにしてもよい。
【0035】
なお、ヒータ取り外しロックの設定、すなわち、ロック棒20aを最下位に移動させるとともにロック棒20bを最上位に移動させる動作は、上ヒータ10a、下ヒータ10bが加熱庫1内に取り付けられた後の任意のタイミングで行うことができる。さらに、ロック棒20aが最下位、ロック棒20bが最上位にある場合にのみ、上ヒータ10a、下ヒータ10bによる加熱を可能としてもよい。
なお、上ヒータ10a、下ヒータ10bが加熱庫1内に取り付けられた状態であるか否かは、例えば、ヒータ支持溝15に重量センサを内蔵してこの検知結果に基づいて判断してもよい。また、コイル6に所定の入力電圧を与えたときに、負荷(上ヒータ10a、下ヒータ10b)が存在するか否かによりコイル6に流れる電流値が異なることを利用し、上ヒータ10a、下ヒータ10bの設置の有無を判断してもよい。
【0036】
このように、本実施の形態1によれば、上ヒータ10a、下ヒータ10bの温度がより安全性を高めるための所定温度に低下するまでは加熱庫1から取り外せない構成としたので、上ヒータ10a、下ヒータ10bの取り外し時の安全性を向上させることができる。
【0037】
なお、本実施の形態1では、上ヒータ10a、下ヒータ10bのループ内に挿入されて上ヒータ10a、下ヒータ10bの引き抜きを防ぐ取り外しロック機構として、円柱のロック棒20a、20bを例に示したが、例えば角柱や板状部材等を用いてもよい。
また、本実施の形態1では、加熱庫1内の上下に上ヒータ10a、下ヒータ10bを設けた例を示したが、加熱庫内に上ヒータあるいは下ヒータのいずれか一方のみを設ける構成であってもよい。
また、ロック棒20a、20bを上下方向に動かす例を示したが、回動させて上ヒータ10a、下ヒータ10bとの係合と係合解除を行うようにしてもよい。
【0038】
実施の形態2.
実施の形態1では、ロック棒移動用モータ21によりロック棒20a、20bを上下移動させる構成であった。本実施の形態2では、ロック棒20a、20bを上下移動させるための他の構成例を説明する。なお、本実施の形態2では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一または対応する構成には同一の符号を付す。
【0039】
図6は、実施の形態2に係る加熱庫の主要部の断面模式図である。図7は、実施の形態2に係る加熱庫の正面模式図であり、図7(a)はヒータ取り外しレバー23が押し上げられている状態、図7(b)はヒータ取り外しレバー23が押し下げられている状態を示している。なお、説明の都合上、図7では前扉4を図示していない。
図6、図7に示すように、加熱庫1の前面側の開口部の横には、ヒータ取り外しレバー23が設けられている。ヒータ取り外しレバー23は、前扉4の内側に設けられており、前扉4を開くことでヒータ取り外しレバー23が露出する。なお、本実施の形態2では、前扉4の内側にヒータ取り外しレバー23を設ける例を説明するが、ヒータ取り外しレバー23の配置はこれに限らない。例えば、加熱庫1の前面開口部の横であって前扉4の外側(前扉4に覆われない位置)に設けることもできる。また、使用者が誤って操作しにくいよう前面以外にヒータ取り外しレバー23を配置することもできるほか、任意の位置にヒータ取り外しレバー23を配置できる。
【0040】
ヒータ取り外しレバー23は、使用者が押し下げあるいは押し上げることにより上下方向に移動可能である。図7(a)に示すようにヒータ取り外しレバー23が押し上げられた状態では、ロック棒20aは最下位に位置するとともにロック棒20bが最上位に位置し、図7(b)に示すようにヒータ取り外しレバー23が押し下げられた状態では、ロック棒20aは最上位に位置するとともにロック棒20bが最下位に位置する。このように、ヒータ取り外しレバー23の移動に連動して、ロック棒20a、20bが上下に移動する。なお、本実施の形態2では、実施の形態1におけるロック棒移動用モータは備えていない。
【0041】
次に、ヒータ取り外しレバー23の操作でロック棒20a、20bを移動させる構造の一例を説明する。図8は、実施の形態2に係るロック棒20a、20bの移動に関する構造を説明する図である。
図8に示すように、ロック棒20a、20bは、加熱庫1の奥側にほぼ水平に配置された板状の支持板29aに対して、ほぼ水平に奥側に向かって延びる連結部29cを介して連結されている。支持板29aは上下移動が可能であり、この支持板29aの上下移動に伴ってロック棒20a、20bも上下移動する。
【0042】
支持板29aの側面からは側方に向かって支持棒29bが延びている。ロック棒20aに連なる支持棒29bは、上ガイドレール28aに形成された傾斜溝28a1に摺動可能に挿入されており、ロック棒20bに連なる支持棒29bは、下ガイドレール28bに形成された傾斜溝28b1に摺動可能に挿入されている。傾斜溝28a1、28b1は、手前側から奥側に向かって高くなるよう傾斜している。上ガイドレール28a、下ガイドレール28bの前端部は、奥行き方向に向かって延びる棒状の上アーム27a、下アーム27bにそれぞれ連結されている。上アーム27a、下アーム27bは、その前端部においてアーム連結板26に接続されている。
【0043】
アーム連結板26は、その後ろ側上下において上アーム27a、下アーム27bが連結され、前方においてヒータ取り外しレバー23と連結された、略T字状の板状部材である。アーム連結板26は、上アーム27aと下アーム27bとを接続するとともに、これらにヒータ取り外しレバー23を接続する機能を有する。また、アーム連結板26には棒状のレバーロック24を挿入可能な係止穴26aが形成されている。また、アーム連結板26の、上アーム27a、下アーム27bとの連結部のほぼ中間点に、回動軸26bが設けられている。この回動軸26bは、加熱庫1側に設けられた回動穴(図示せず)に回転可能に嵌合される。ヒータ取り外しレバー23の押し上げ/押し下げ操作に伴い、回動軸26bを軸としてアーム連結板26が所定角度だけ回転する仕組みである。
【0044】
レバーロック24は、左右方向に移動可能に加熱庫1に取り付けられており、移動することで、アーム連結板26の係止穴26aに挿入/抜去される。アーム連結板26の係止穴26aにレバーロック24が挿入された状態では、ヒータ取り外しレバー23を押し下げることができない。また、制御部17に信号線で接続されたレバーロック用モータ25が設けられており、このレバーロック用モータ25によりレバーロック24は左右方向に移動する。
【0045】
レバーロック24が係止穴26aから抜けた状態で(図8の矢印T1)、ヒータ取り外しレバー23が押し下げられると(図8の矢印T2)、回動軸26bを軸としてアーム連結板26が所定角度だけ回転する。これに伴い、上アーム27aが手前側に移動するとともに(図8の矢印T3)、下アーム27bが後側に移動する(図8の矢印T4)。この上アーム27aの移動により上ガイドレール28aが手前側に移動し、上ガイドレール28aの傾斜溝28a1に案内されて支持棒29bが上方に移動する(図8の矢印T5)。このような支持棒29bの移動により、支持棒29bに支持板29aを介して連結されたロック棒20aも上側に移動する(図8の矢印T7)。また、下アーム27bの移動により下ガイドレール28bが奥側に移動し、下ガイドレール28bの傾斜溝28b1に案内されて支持棒29bが下方に移動する(図8の矢印T6)。このような支持棒29bの移動により、支持棒29bに支持板29aを介して連結されたロック棒20bも下側に移動する(図8の矢印T8)。このように、下方向への操作を受け付ける操作部材であるヒータ取り外しレバー23に対する操作力が、アーム連結板26、上アーム27a(下アーム27b)、上ガイドレール28a(下ガイドレール28b)、支持棒29b、連結部29cからなる伝達部材により、上下方向の移動力としてロック棒20a(ロック棒20b)に伝達される。
【0046】
次に、上ヒータ10a、下ヒータ10bの取り外しに関する動作を説明する。
まず、上ヒータ10a、下ヒータ10bによる加熱中を含め、通常時には、ロック棒20aは最下位にあるとともにロック棒20bは最上位にあり、上ヒータ10a、下ヒータ10bが手前側に引き抜かれようとしても、ロック棒20a、20bが給電部11に引っかかって上ヒータ10a、下ヒータ10bが外れない状態である。また、レバーロック24がアーム連結板26の係止穴26aに挿入されていて、ヒータ取り外しレバー23を押し下げることができない状態となっている。すなわち、ヒータ取り外しレバー23を押し下げることができない状態であるために、上ヒータ10a、下ヒータ10bが手前側に引き抜かれようとしても、ロック棒20a、20bが給電部11に引っかかって上ヒータ10a、下ヒータ10bの取り外しが阻止される。
【0047】
次に、上ヒータ10a、下ヒータ10bを取り外す場合の動作を説明する。ここでは、実施の形態1で図5に示したフローチャートを用いて、実施の形態2に係る取り外しロック機構の動作を説明する。
図5において、ステップS101〜S103、及びステップS105の動作については実施の形態1と同様である。
【0048】
本実施の形態2において実施の形態1と異なるのは、ステップS104における動作である。すなわち、上ヒータ10a、下ヒータ10bが所定温度以下であれば(S103;Yes)、制御部17は、レバーロック用モータ25を駆動して、レバーロック24をアーム連結板26の係止穴26aから引き抜かれた状態に移動させる(S104)。このとき、制御部17は報知部19を制御して、ヒータ取り外しレバー23が操作可能になったこと、加熱庫1内の温度がより安全性を高めるための所定温度になっていること、のいずれか又は両方を報知することができる。そして、使用者が、ヒータ取り外しレバー23を押し下げることで、ロック棒20aが最上位に移動するとともに、ロック棒20bが最下位に移動する。さらに、使用者は、上ヒータ10a、下ヒータ10bを手前側に引き出すことで上ヒータ10a、下ヒータ10bを加熱庫1から取り外すことができる。
【0049】
なお、ヒータ取り外しロックの設定、すなわち、レバーロック24の係止穴26aへの挿入動作は、上ヒータ10a、下ヒータ10bが加熱庫1内に取り付けられた後の任意のタイミングで行うことができる。
【0050】
このように、本実施の形態2のようにロック棒20a、20bをヒータ取り外しレバー23の操作により機械的に上下動させる構成としても、実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0051】
実施の形態3.
実施の形態1、2では、ヒータの取り外しロック機構を設け、上ヒータ10a、下ヒータ10bが所定温度以下になるまで取り外せないよう構成することで、ヒータ取り外し時の安全性を高めた。本実施の形態3では、上ヒータ10a、下ヒータ10bの手前側をヒータカバーで覆い、上ヒータ10a、下ヒータ10bが所定温度以下になるまで取り外せないよう構成する例を示す。なお、本実施の形態3では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一または対応する構成には同一の符号を付す。
【0052】
図9は、実施の形態3に係る加熱庫の主要部の断面模式図、図10は、実施の形態3に係るヒータカバーの開閉機構を説明する主要部の斜視図である。ヒータカバーの開閉機構は、本発明のヒータの取り外し防止手段に相当し、上ヒータ10a、下ヒータ10bに使用者が触れられないよう覆う機構である。
図9、図10に示すように、上ヒータ10a、下ヒータ10bの前扉4側には、平板状のヒータカバー30a、ヒータカバー30bと、カバー移動用モータ31とが設けられている。
【0053】
ヒータカバー30a、30bは、加熱庫1内において上ヒータ10a、下ヒータ10bの手前側を覆う。ヒータカバー30a、30bは、例えば金属メッシュ構造や格子状のような、熱容量が比較的小さく放熱性が良い構成とする。これにより、ヒータカバー30の温度の低下が促進され、より早く安全な温度に低下するので、より効果の高いヒータカバー30を提供することができる。この場合、ヒータカバー30a、30bのメッシュ構造や格子状の隙間は、使用者の指等が通過できない程度の細かい隙間とするとよい。また、ヒータカバー30a、30bを、メッシュ構造等が無い板状の部材で構成することもできる。このようにすると、構造が単純であるのでヒータカバー30a、30bを安価に製造でき、生産性が高い。
【0054】
ヒータカバー30a、30bは、上下方向に移動可能に設けられている。上ヒータ10aに対応して上側に設けられたヒータカバー30aの移動範囲は、上ヒータ10aを側方から見たときに、ヒータカバー30aの下端が上ヒータ10aの下面と同じかそれ以下の高さとなる状態を最下位、ヒータカバー30の下端が上ヒータ10aの上面よりも上側に位置する状態を最上位とする。また、下ヒータ10bに対応して下側に設けられたヒータカバー30bの移動範囲は、下ヒータ10bを側方から見たときに、ヒータカバー30bの上端が下ヒータ10bの上面と同じかそれ以上の高さとなる状態を最上位、ヒータカバー30bの上端が下ヒータ10bの下面よりも下側に位置する状態を最下位とする。したがって、ヒータカバー30aが最下位に位置し、ヒータカバー30bが最上位に位置するとき、上ヒータ10a、下ヒータ10bの手前側はヒータカバー30a、30bに覆われる。また、ヒータカバー30aが最上位に位置し、ヒータカバー30bが最下位に位置するとき、上ヒータ10a、下ヒータ10bは露出する。
【0055】
カバー移動用モータ31は、信号線により制御部17に接続されており、制御部17に制御されて、上下方向に移動可能に取り付けられたヒータカバー30を上下方向に移動させる。
【0056】
次に、ヒータカバー30a、30bの開閉動作を説明する。
まず、上ヒータ10a、下ヒータ10bによる加熱中を含め、通常時には、ヒータカバー30aは最下位にあるとともにヒータカバー30bは最上位にあり、上ヒータ10a、下ヒータ10bの手前側はヒータカバー30a、30bに覆われた状態である。したがって、上ヒータ10a、下ヒータ10bが高温のときに、使用者の手や指が誤って上ヒータ10a、下ヒータ10bに接触するのが防止される。
【0057】
次に、上ヒータ10a、下ヒータ10bを取り外す場合の動作を説明する。
図11は、実施の形態3に係るヒータカバーの開閉動作を説明するフローチャートである。
図11に示すように、ヒータ取り外しボタン18bが押下されてヒータ取り外しボタン18bから制御部17にヒータの取り外しの信号が伝えられると(S201;Yes)、制御部17は、上ヒータ10a、下ヒータ10bが加熱中であるかどうか判断する(S202)。上ヒータ10a、下ヒータ10bが加熱中であれば(S202;Yes)、報知部19を制御して表示や音声等によりヒータカバー30a、30bの開放が不可能であることを報知する(S205)。なお、このステップS205におけるヒータカバー30a、30bの開放が不可能であることの報知に加えて、あるいはこれに代えて、上ヒータ10a、下ヒータ10bが加熱中である旨の注意喚起を報知するようにしてもよい。
【0058】
上ヒータ10a、下ヒータ10bが加熱中でなければ(S202;No)、制御部17は、温度センサ16からの信号に基づいて上ヒータ10a、下ヒータ10bの温度がより安全性を高めるための所定温度(例えば37℃〜40℃)以下であるか否か判断する(S203)。上ヒータ10a、下ヒータ10bが所定温度以下であれば(S203;Yes)、制御部17は、カバー移動用モータ31を駆動してヒータカバー30aを最上位、ヒータカバー30bを最下位に移動させる(S204)。このようにすると、上ヒータ10a、下ヒータ10bが露出し、使用者は上ヒータ10a、下ヒータ10bを手前側に引き出して加熱庫1から取り外すことができる。なお、ステップS204では、ヒータカバー30a、30bが開放されたことや、加熱庫1内が所定温度以下となったことを使用者に報知するようにしてもよい。
また、上ヒータ10a、下ヒータ10bが所定温度以下でなければ(S203;No)、ヒータカバー30a、30bの開放が不可能であることを報知する(S205)。なお、このステップS105におけるヒータカバー30a、30bの開放が不可能であることの報知に加えて、あるいはこれに代えて、上ヒータ10a、下ヒータ10bが高温である旨の注意喚起を報知するようにしてもよい。
【0059】
なお、ヒータカバー30a、30bを閉じる動作は、上ヒータ10a、下ヒータ10bが加熱庫1内に取り付けられた後の任意のタイミングで行うことができる。さらに、ヒータカバー30a、30bが閉じられている状態の場合にのみ、上ヒータ10a、下ヒータ10bによる加熱を可能としてもよい。
【0060】
このように、本実施の形態3によれば、上ヒータ10a、下ヒータ10bの手前側をヒータカバー30a、30bで覆い、上ヒータ10a、下ヒータ10bの温度がより安全性を高めるための所定温度に低下するまでは加熱庫1から取り外せない構成としたので、上ヒータ10a、下ヒータ10bの取り外し時の安全性を向上させることができる。
【0061】
次に、ヒータカバーの他の構成例を説明する。
図12は、実施の形態3に係るヒータカバーの変形例を説明する図であり、調理庫の主要部の断面模式図である。図13は、実施の形態3に係るヒータカバーの変形例を説明する主要部の斜視図である。
図12、図13で示すヒータカバー32a、ヒータカバー32bは、長手方向に設けられた回動軸により回動して、上ヒータ10a、下ヒータ10bを覆い、あるいは露出させる構成である。ヒータカバー32a、32bの動作については、図11で説明したものと同様である。このように構成しても、前述と同様の効果を得ることができる。
【0062】
実施の形態4.
実施の形態3では、カバー移動用モータ31によりヒータカバー30a、30bを上下移動させる構成であった。本実施の形態4では、ヒータカバー30a、30bを移動させるための他の構成例を説明する。なお、本実施の形態4では、実施の形態3との相違点を中心に説明し、実施の形態3と同一または対応する構成には同一の符号を付す。
【0063】
図14は、実施の形態4に係る加熱庫の主要部の断面模式図である。図15は、実施の形態4に係る加熱庫の正面模式図であり、図15(a)はヒータ取り外しレバー33が押し上げられている状態、図15(b)はヒータ取り外しレバー33が押し下げられている状態を示している。なお、説明の都合上、図15では前扉4を図示していない。
図14、図15に示すように、加熱庫1の前面側の開口部の横には、ヒータ取り外しレバー33が設けられている。ヒータ取り外しレバー33は、前扉4の内側に設けられており、前扉4を開くことでヒータ取り外しレバー33が露出する。なお、本実施の形態4では、前扉4の内側にヒータ取り外しレバー33を設ける例を説明するが、ヒータ取り外しレバー33の配置はこれに限らない。例えば、加熱庫1の前面開口部の横であって前扉4の外側(前扉4に覆われない位置)に設けることもできる。また、使用者が誤って操作しにくいよう前面以外にヒータ取り外しレバー33を配置することもできるほか、任意の位置にヒータ取り外しレバー33を配置できる。
【0064】
ヒータ取り外しレバー33は、使用者が押し下げあるいは押し上げることにより、上下方向に移動可能である。このヒータ取り外しレバー33の移動に連動して、ヒータカバー30a、30bが上下に移動する。なお、本実施の形態4では、実施の形態3におけるカバー移動用モータは備えていない。
【0065】
次に、ヒータ取り外しレバー33の操作でヒータカバー30a、30bを開閉させる構造の一例を説明する。図16は、実施の形態4に係るヒータカバーの開閉構造を説明する図である。
図16に示すヒータカバー30a、30bの移動構造の基本的な仕組みは、実施の形態2の図8で示したものと同じである。図16では、図8と同一の構成については同一の符号を付している。
【0066】
図16に示すように、ヒータカバー30a、30bは、それぞれ、連結部29dを介して支持板29aと接続されている。連結部29dは、加熱庫1の奥側に配置された支持板29aと、加熱庫1の手前側に配置されたヒータカバー30a、30bとを接続するため、加熱庫1の上壁2a内(下壁2b内)の奥行き方向にわたっている。そのほかの構成及び動作は前述の図8と同様であり、レバーロック24が係止穴26aから抜けた状態でヒータ取り外しレバー33が押し下げられると、ヒータカバー30a、30bが開く。このように、下方向への操作を受け付ける操作部材であるヒータ取り外しレバー33に対する操作力が、アーム連結板26、上アーム27a(下アーム27b)、上ガイドレール28a(下ガイドレール28b)、支持棒29b、連結部29dからなる伝達部材により、上下方向の移動力としてヒータカバー30a(ヒータカバー30b)に伝達される。
【0067】
次に、ヒータカバー30a、30bの開放動作を説明する。
まず、上ヒータ10a、下ヒータ10bによる加熱中を含め、通常時には、ヒータカバー30aは最下位にあるとともにヒータカバー30bは最上位にあり、上ヒータ10a、下ヒータ10bの手前側はヒータカバー30a、30bに覆われた状態である。また、レバーロック24がアーム連結板26の係止穴26aに挿入されていて、ヒータ取り外しレバー23を押し下げることができない状態であるために、ヒータカバー30a、30bの開放が阻止されている。したがって、上ヒータ10a、下ヒータ10bが高温のときに、使用者の手や指が誤って上ヒータ10a、下ヒータ10bに接触するのが防止される。
【0068】
次に、上ヒータ10a、下ヒータ10bを取り外す場合の動作を説明する。ここでは、実施の形態3で図11に示したフローチャートを用いて、実施の形態4に係るヒータカバー開放動作を説明する。
図11において、ステップS201〜S203、及びステップS205の動作については、実施の形態3と同様である。
本実施の形態4において実施の形態3と異なるのは、ステップS204における動作である。すなわち、上ヒータ10a、下ヒータ10bが所定温度以下であれば(S203;Yes)、制御部17は、レバーロック用モータ25を駆動して、レバーロック24をアーム連結板26の係止穴26aから引き抜かれた状態に移動させる(S204)。このとき、制御部17は報知部19を制御して、ヒータ取り外しレバー33が操作可能になったこと、加熱庫1内の温度がより安全性を高めるための所定温度になっていること、のいずれか又は両方を報知することができる。そして、使用者が、ヒータ取り外しレバー33を押し下げることで、ヒータカバー30aが最上位に移動するとともに、ヒータカバー30bが最下位に移動する。このようにすると、上ヒータ10a、下ヒータ10bが露出し、使用者は上ヒータ10a、下ヒータ10bを手前側に引き出して加熱庫1から取り外すことができる。
【0069】
なお、ヒータ取り外しロックの設定、すなわち、レバーロック24の係止穴26aへの挿入動作は、上ヒータ10a、下ヒータ10bが加熱庫1内に取り付けられた後の任意のタイミングで行うことができる。
【0070】
このように、本実施の形態4のようにヒータカバー30a、30bをヒータ取り外しレバー23の操作により機械的に上下動させる構成としても、実施の形態3と同様の効果を得ることができる。
【0071】
実施の形態5.
実施の形態1〜4では、上ヒータ10a、下ヒータ10bが所定温度以下になるまで取り外せないよう構成することで、ヒータ取り外し時の安全性を高めた。本実施の形態5では、上ヒータ10a、下ヒータ10bを手前側に移動させ、使用者による上ヒータ10a、下ヒータ10bの取り出しやすさを向上させるヒータ移動機構を備えた例を示す。なお、本実施の形態3では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一または対応する構成には同一の符号を付す。
【0072】
図17は、実施の形態5に係る加熱庫の主要部の断面模式図、図18は、実施の形態5に係るヒータの移動機構を説明する主要部の斜視図である。ヒータ移動機構は、本発明のヒータの取り外し防止手段に相当し、上ヒータ10a、下ヒータ10bが所定温度以下である場合には両ヒータを取り出し方向に移動させるが、所定温度を超えている場合には両ヒータを移動させないようにする機構である。
図17、図18に示すように、上ヒータ10aと下ヒータ10bの近傍には、押出部40と、押出部移動用モータ41とが設けられている。また、前扉4の開閉状態を検知する扉検知手段42を備える。
【0073】
押出部40は、加熱庫1内において給電部支持溝9とヒータ支持溝15に載置された上ヒータ10a、下ヒータ10bを、加熱庫1の手前側に押し出す機能を有する。本実施の形態5の押出部40は、上ヒータ10a、下ヒータ10bの引き出し方向(加熱庫1の奥行き方向)に対して直交する向きで設けられた回転軸40aと、回転軸40aから径方向外側に向かって突出するように取り付けられた押出バー40bとを備える。押出バー40bは、ループ状に形成された上ヒータ10a、下ヒータ10bの、引き出し方向と交差する方向に延びる部分の奥側に挿入されて上ヒータ10a、下ヒータ10bに係止している。本実施の形態5では、幅方向に複数回折り曲げられた上ヒータ10a、下ヒータ10bの一部分である水平部10a1、10b1(図18参照)の奥側に、押出バー40bが挿入される例を示しているが、給電部11の奥側等に押出バー40bを挿入してもよい。
【0074】
押出部移動用モータ41は、信号線により制御部17に接続されており、制御部17に制御されて、回転軸40aを回転させる。
【0075】
通常の状態、すなわち、上ヒータ10a、下ヒータ10bが給電部支持溝9、ヒータ支持溝15に載置された状態においては、押出バー40bは、図17、図18に実線で示すように、上ヒータ10a、下ヒータ10bのループ状内部に挿入された状態である。
【0076】
上ヒータ10a、下ヒータ10bが取り外される際には、押出部移動用モータ41の駆動により回転軸40aが回転すると(図17、図18の矢印Y1参照)、これに伴って押出バー40bも回転する。これにより、押出バー40bは、上ヒータ10a、下ヒータ10bの係止している部分を押し、上ヒータ10a、下ヒータ10bを移動させる(図17、図18の矢印Y2参照)。押出バー40bは、ほぼ水平に向くまで回転し、この過程において上ヒータ10a、下ヒータ10bとの係合状態が解除される。回転後の押出バー40bを、図17、図18に破線で示す。上ヒータ10a、下ヒータ10bが移動すると、給電部11は給電部支持溝9から抜け出るが、上ヒータ10a、下ヒータ10bの側部はヒータ支持溝15に載置されているので、上ヒータ10a、下ヒータ10bが落下することはない。また、上ヒータ10a、下ヒータ10bの移動距離D1は、加熱庫1の前面開口部から上ヒータ10a、下ヒータ10bの一部が飛び出す距離であればよい。好ましくは、移動距離D1は、上ヒータ10a、下ヒータ10bの飛び出した部分を使用者が手でつかむことのできる長さであり、このようにすることで使用者は上ヒータ10a、下ヒータ10bを容易に取り出すことができる。回転軸40aの回転方向は、上ヒータ10a、下ヒータ10bを前扉4側に送り出す方向であり、上ヒータ10aに対応して設けられた回転軸40aは時計回り、下ヒータ10bに対応して設けられた回転軸40aは反時計回りに回転する。
【0077】
上ヒータ10a、下ヒータ10bが取り外された後は、押出バー40bは、図17、図18において矢印Y1で示す方向とは反対方向に回転し、ほぼ水平状態となる。このときの押出バー40bを、図17、図18に破線で示す。この状態において、上ヒータ10a、下ヒータ10bを加熱庫1内に挿入して給電部支持溝9、ヒータ支持溝15に載置する。押出バー40bは、ほぼ水平状態になっているので、押出バー40bが上ヒータ10a、下ヒータ10bの取り付けの妨げとなることはない。
【0078】
上ヒータ10a、下ヒータ10bが取り付けられた後は、押出バー40bは、図17、図18において矢印Y1で示す方向に回転し、図17、図18において実線で示す状態となる。
【0079】
扉検知手段42は、前扉4が開かれていて所定距離D2だけ引き出されているか否かを検知するためのものであり、例えばリミットスイッチ等で構成される。ここで、所定距離D2とは、押出バー40bの回転により上ヒータ10a、下ヒータ10bが移動する移動距離D1と同じかこれよりも大きい距離である。扉検知手段42は、信号線により制御部17と接続されており、検知した情報を制御部17に出力する。
【0080】
次に、上ヒータ10a、下ヒータ10bの移動に関する動作を説明する。
まず、上ヒータ10a、下ヒータ10bによる加熱中を含め、通常時には、押出バー40bが上ヒータ10a、下ヒータ10bに係止された状態である。したがって、上ヒータ10a、下ヒータ10bを手前側に引き抜かれようとしても、押出バー40bが水平部10a1、10b1に引っかかって上ヒータ10a、下ヒータ10bの取り外しが阻止される。このように、押出バー40bは、上ヒータ10a、下ヒータ10bの取り外しロックの機能も有する。
【0081】
次に、上ヒータ10a、下ヒータ10bを取り外す場合の動作を説明する。
図19は、実施の形態5に係るヒータ移動動作を説明するフローチャートである。
図19に示すように、ヒータ取り外しボタン18bが押下されてヒータ取り外しボタン18bから制御部17にヒータの取り外しの信号が伝えられると(S301;Yes)、制御部17は、上ヒータ10a、下ヒータ10bが加熱中であるかどうか判断する(S302)。上ヒータ10a、下ヒータ10bが加熱中であれば(S302;Yes)、報知部19を制御して表示や音声等によりヒータの取り外しが不可能であることを報知する(S306)。なお、このステップS306におけるヒータ取り外しが不可能であることの報知に加えて、あるいはこれに代えて、上ヒータ10a、下ヒータ10bが加熱中である旨の注意喚起を報知するようにしてもよい。
【0082】
上ヒータ10a、下ヒータ10bが加熱中でなければ(S302;No)、制御部17は、温度センサ16からの信号に基づいて上ヒータ10a、下ヒータ10bの温度がより安全性を高めるための所定温度(例えば37℃〜40℃)以下であるか否か判断する(S303)。上ヒータ10a、下ヒータ10bが所定温度以下であれば(S303;Yes)、制御部17は、扉検知手段42からの信号に基づいて、前扉4が所定距離D2を超えて引き出されているか否か判断する(S304)。
【0083】
前扉4が所定距離D2を超えて引き出されていれば(S304;Yes)、制御部17は、押出部移動用モータ41を駆動して、回転軸40aを回転させることにより押出バー40bを回転させる。これにより、押出バー40bに押されて上ヒータ10a、下ヒータ10bが移動し、加熱庫1の前面開口部から上ヒータ10a、下ヒータ10bが所定長さだけ飛び出した状態となる(S305)。使用者は、上ヒータ10a、下ヒータ10bの飛び出した部分をつかんで手前側に引き出すことで、上ヒータ10a、下ヒータ10bを加熱庫1から取り外すことができる。ステップS305における回転後の押出バー40bは、図17、図18に示すようにほぼ水平の状態となっており、押出バー40bが上ヒータ10a、下ヒータ10bの引き出しを阻害することもない。なお、ステップS305において、上ヒータ10a、下ヒータ10bを移動させる前には移動開始の旨を報知してもよいし、上ヒータ10a、下ヒータ10bの移動が終了した後には移動終了の旨を報知してもよい。
【0084】
前扉4が所定距離D2を超えて引き出されていなければ(S304;No)、制御部17は、報知部19を制御して表示や音声等により前扉4を所定距離D2以上引き出すよう報知し(S307)、ステップS304へ戻る。
また、上ヒータ10a、下ヒータ10bが所定温度以下でなければ(S303;No)、ヒータ取り外しが不可能であることを報知する(S306)。なお、このステップS306におけるヒータ取り外しが不可能であることの報知に加えて、あるいはこれに代えて、上ヒータ10a、下ヒータ10bが高温である旨の注意喚起を報知するようにしてもよい。
【0085】
なお、上ヒータ10a、下ヒータ10bが加熱庫1から取り外された後は、制御部17は、押出バー40bを図17、図18に破線で示す状態まで回転させる。また、上ヒータ10a、下ヒータ10bが加熱庫1に取り付けられた後は、制御部17は、押出バー40bを図17、図18に実線で示す状態まで回転させる。
【0086】
このように、本実施の形態5によれば、上ヒータ10a、下ヒータ10bの温度がより安全性を高めるための所定温度に低下するまでは加熱庫1から取り外せない構成としたので、上ヒータ10a、下ヒータ10bの取り外し時の安全性を向上させることができる。
【0087】
また、上ヒータ10a、下ヒータ10bの温度がより安全性を高めるための所定温度に低下していれば、上ヒータ10a、下ヒータ10bを加熱庫1の手前側に移動させて、加熱庫1の前面開口部から突出させるようにした。このため、使用者は、上ヒータ10a、下ヒータ10bをつかみやすくなり、上ヒータ10a、下ヒータ10bの取り外し時の使い勝手を向上させることができる。加熱庫1内は、前面開口部を除く5面が閉塞された空間であるので、外部からの視認性が良好でない場合も多い。また、例えば調理台に設置されるいわゆるIHクッキングヒータに加熱庫1を採用した場合、加熱庫1は使用者の腰の高さくらいに位置するため、加熱庫1内をのぞき込みにくい。また、加熱庫1内は、食材からの飛び散った油等が付着しており、加熱庫1内に使用者が手を突っ込むと手が汚れてしまう。このような事項は、加熱庫1からのヒータの取り外しにくさにつながってしまう。しかし、本実施の形態5によれば、使用者は、上ヒータ10a、下ヒータ10bを取り外すために加熱庫1内に手を入れる必要がないので、着脱がしやすく、また、手の汚れも低減できる。
【0088】
なお、本実施の形態5では、押出部40の一例として、上ヒータ10a、下ヒータ10bのループ状の内部に挿入されてヒータを送り出す押出バー40bを示したが、上ヒータ10a、下ヒータ10bを移動させる構成はこれに限定されない。例えば、上ヒータ10a、下ヒータ10bとの摩擦の大きい素材で構成された円筒状部材を押出部として設け、この円筒状部材を回転させることで、上ヒータ10a、下ヒータ10bと円筒状部材との摩擦力によりヒータを送り出すようにして移動させることもできる。
また、本実施の形態5のヒータ移動機構は、実施の形態1〜実施の形態4と組み合わせて用いることができる。
【0089】
実施の形態6.
実施の形態5では、押出部移動用モータ41と押出部40により、上ヒータ10a、下ヒータ10bを引き出し方向に移動させる構成であった。本実施の形態6では、上ヒータ10a、下ヒータ10bを移動させるための他の構成例を説明する。なお、本実施の形態6では、実施の形態5との相違点を中心に説明し、実施の形態5と同一または対応する構成には同一の符号を付す。
【0090】
図20は、実施の形態6に係る加熱庫の主要部の断面模式図、図21は、実施の形態6に係るヒータ移動機構を説明する主要部の斜視図である。
図20、図21に示すように、上ヒータ10a、下ヒータ10bの給電部11の背面側には、直方体の押出部43が設けられている。押出部43は、上ヒータ10a、下ヒータ10bの給電部11の背面側に当接し、これを押して、上ヒータ10aと下ヒータ10bを手前側に移動させる。図20(a)に示すように上ヒータ10a、下ヒータ10bが給電部支持溝9内に設置された状態において、押出部43は給電部支持溝9内に位置している。
【0091】
また、加熱庫1の前面側の開口部の横には、ヒータ取り外しレバー47が設けられている。ヒータ取り外しレバー47は、使用者が押し下げあるいは押し上げることにより、上下方向に移動可能である。ヒータ取り外しレバー47は、前扉4の内側に設けられており、前扉4を開くことでヒータ取り外しレバー47が露出する。なお、本実施の形態4では、前扉4の内側にヒータ取り外しレバー47を設ける例を説明するが、ヒータ取り外しレバー47の配置はこれに限らない。例えば、加熱庫1の前面開口部の横であって前扉4の外側(前扉4に覆われない位置)に設けることもできる。また、使用者が誤って操作しにくいよう前面以外にヒータ取り外しレバー47を配置することもできるほか、任意の位置にヒータ取り外しレバー47を配置できる。
【0092】
押出部43には、側方に向かって延びる支持棒44が接続されている。上ヒータ10aに対応する押出部43に連なる支持棒44からは、手前側に向かって上アーム45aが延び、下ヒータ10bに対応する押出部43に連なる支持棒44からは、手前側に向かって下アーム45bが延びている。上アーム45a、下アーム45bの手前側の先端部は、アーム連結板46に接続されている。
【0093】
アーム連結板46は、その後側上部において上アーム45a、下アーム45bが連結され、前方においてヒータ取り外しレバー47と連結された、略V字状の板状部材である。アーム連結板46は、上アーム45aと下アーム45bとを接続するとともに、これらにヒータ取り外しレバー47を接続する機能を有する。また、アーム連結板46の略V字状の腕部分に相当する平板部分には、棒状のレバーロック48を挿入可能な係止穴46aが形成されている。また、アーム連結板46の、略V字状の谷部分に相当する平板部分には、回動軸46bが設けられている。この回動軸46bは、加熱庫1側に設けられた回動穴(図示せず)に回転可能に嵌合される。
【0094】
レバーロック48は、左右方向に移動可能に構成されており、移動することで、アーム連結板46の係止穴46aに挿入/抜去される。制御部17に信号線で接続されたレバーロック用モータ49が設けられており、このレバーロック用モータ49によりレバーロック48は左右方向に移動する。
【0095】
レバーロック48が係止穴46aから抜けた状態で(図21の矢印U1)、ヒータ取り外しレバー47が押し下げられると(図21の矢印U2)、回動軸46bを軸としてアーム連結板46が所定角度だけ回転する。これに伴い、アーム連結板46の上アーム45a、下アーム45bが連結された部分が手前側に引き寄せられ、上アーム45a、下アーム45bが手前側に移動する。このような上アーム45a、下アーム45bの移動により、押出部43が手前側に引き寄せられて、押出部43が上ヒータ10a、下ヒータ10bを押し出して移動させる(図21の矢印U3)。このように、下方向への操作を受け付ける操作部材であるヒータ取り外しレバー47に対する操作力が、アーム連結板46、上アーム45a(下アーム45b)、支持棒44からなる伝達部材により、加熱庫1の手前側方向への移動力として押出部43に伝達される。
【0096】
なお、本実施の形態6では、実施の形態5における押出部移動用モータ41と押出部40は備えていない。
【0097】
次に、上ヒータ10a、下ヒータ10bの取り外しに関する動作を説明する。
まず、上ヒータ10a、下ヒータ10bによる加熱中を含め、通常時には、レバーロック48がアーム連結板46の係止穴46aに挿入されていて、ヒータ取り外しレバー47を押し下げることができない状態となっている。
【0098】
次に、上ヒータ10a、下ヒータ10bを取り外す場合の動作を説明する。ここでは、実施の形態5で図19に示したフローチャートを用いて、実施の形態6に係るヒータ移動機構の動作を説明する。
図19において、ステップS301〜S304、ステップS306、及びステップS307の動作については、実施の形態5と同様である。
【0099】
本実施の形態6において実施の形態5と異なるのは、ステップS305における動作である。すなわち、前扉4が所定距離D2を超えて引き出されていれば(S305;Yes)、制御部17は、レバーロック用モータ49を駆動して、レバーロック48をアーム連結板46の係止穴46aから引き抜かれた状態に移動させる(S305)。ここで、本実施の形態6における所定距離D2とは、最上位にあるヒータ取り外しレバー47を最下位まで押し下げられたときに、上ヒータ10a、下ヒータ10bが移動する距離と同じか、これを超える距離である。このとき、制御部17は報知部19を制御して、ヒータ取り外しレバー47が操作可能になったこと、加熱庫1内の温度がより安全性を高めるための所定温度になっていること、のいずれか又は両方を報知することができる。そして、使用者が、ヒータ取り外しレバー47を押し下げることで、押出部43が手前側に引き寄せられ、加熱庫1の前面開口部から上ヒータ10a、下ヒータ10bが所定長さだけ飛び出した状態となる。使用者は、さらに、上ヒータ10a、下ヒータ10bの飛び出した部分をつかんで手前側に引き出すことで、上ヒータ10a、下ヒータ10bを加熱庫1から取り外すことができる。
【0100】
ヒータ取り外しレバー47を押し上げると、押出部43は後退して図20(a)に示す状態となる。
なお、ヒータ取り外しロックの設定、すなわち、レバーロック24の係止穴26aへの挿入動作は、上ヒータ10a、下ヒータ10bが加熱庫1内に取り付けられた後の任意のタイミングで行うことができる。
【0101】
本実施の形態6のように、ヒータ取り外しレバー47の操作により上ヒータ10a、下ヒータ10bを手前側に移動させる構成としても、実施の形態5と同様の効果を得ることができる。
【0102】
また、本実施の形態6のヒータ移動機構は、実施の形態1〜実施の形態4と組み合わせて用いることができる。
【0103】
実施の形態7.
前述の実施の形態1〜6では、加熱庫1の後壁5にコイル6を配設し、このコイル6に対応して設けられた給電部支持溝9と、加熱庫1の側壁3の奥行き方向に沿って設けられたヒータ支持溝15とにより、上ヒータ10a、下ヒータ10bとを支持する構成とした。本実施の形態7では、コイル6の配置と、上ヒータ10a、下ヒータ10bの支持構造の他の構成例を説明する。なお、本実施の形態7では、実施の形態1との相違点を中心に説明し、実施の形態1と同一または対応する構成には同一の符号を付す。
【0104】
図22は、実施の形態7に係る加熱庫の主要部の斜視図である。図22に示す加熱庫1の左右両側の側壁3には、それぞれ、コイル6a、コイル6bが配設されている。そして、コイル6a、6bに対応する位置に、実施の形態1における磁性体7、断熱部材8と同様の機能を有する磁性体7a(図22には図示せず)、磁性体7bと、断熱部材8a、断熱部材8bとを備える。本実施の形態7において実施の形態1と異なるのは、断熱部材8a、8bが側壁3の奥行き方向に沿って設けられており、また、断熱部材8a、8bには側壁3の奥行き方向に沿って給電部支持溝9a、給電部支持溝9bが設けられている点である。上ヒータ10aと下ヒータ10bの側部は、この給電部支持溝9a、9bの凹状部に挿入されて支持される。本実施の形態7では、実施の形態1における給電部支持溝9とヒータ支持溝15の機能を、給電部支持溝9a、9bが兼ねている。
【0105】
また、上ヒータ10aと下ヒータ10bは、給電部支持溝9a、9bに載置されたときにコイル6a、6bに対応する位置に、それぞれ、給電部11を備えている。なお、図22では説明のため、給電部11を破線で示している。
【0106】
このような構成としても、上ヒータ10a、下ヒータ10bを加熱庫1の前面開口部を介して加熱庫1から取り外すことができる。
また、実施の形態7で示すコイル6の配置と、上ヒータ10a、下ヒータ10bの支持構造は、実施の形態1、2で示したヒータ取り外しロック機構、実施の形態3、4で示したヒータカバーの開閉機構、及び実施の形態5、6で示したヒータ移動機構と組み合わせることができ、同様の効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0107】
1 加熱庫、2a 上壁、2b 下壁、3 側壁、4 前扉、5 後壁、6 コイル、6a、6b コイル、7 磁性体、7a、7b 磁性体、8 断熱部材、8a、8b 断熱部材、9 給電部支持溝、9a、9b 給電部支持溝、10a 上ヒータ、10a1 水平部、10b 下ヒータ、10b1 水平部、11 給電部、12 加熱部、13 受皿、14 焼網、15 ヒータ支持溝、16 温度センサ、17 制御部、18 操作部、18a 加熱指示ボタン、18b ヒータ取り外しボタン、19 報知部、20a ロック棒、20b ロック棒、21 ロック棒移動用モータ、23 レバー、24 レバーロック、25 レバーロック用モータ、26 アーム連結板、26a 係止穴、26b 回動軸、27a 上アーム、27b 下アーム、28a 上ガイドレール、28a1 傾斜溝、28b 下ガイドレール、28b1 傾斜溝、29a 支持板、29b 支持棒、29c 連結部、29d 連結部、30 ヒータカバー、30a ヒータカバー、30b ヒータカバー、31 カバー移動用モータ、32a ヒータカバー、32b ヒータカバー、33 ヒータ取り外しレバー、40 押出部、40a 回転軸、40b 押出バー、41 押出部移動用モータ、42 扉検知手段、43 押出部、44 支持棒、45a 上アーム、45b 下アーム、46 アーム連結板、46a 係止穴、46b 回動軸、47 ヒータ取り外しレバー、48 レバーロック、49 レバーロック用モータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状の加熱庫と、
高周波電流を供給されて高周波磁束を発生するコイルと、
前記加熱庫内部に着脱可能に配置され、前記コイルから生じる磁束によって誘導電流を発生して発熱するヒータと、
前記ヒータの温度を検知する温度検知手段と、
前記ヒータの取り外しを指示するための操作部と、
前記ヒータが前記加熱庫から取り外されることを防止する取り外し防止手段と、
前記操作部により前記ヒータの取り外しが指示されたとき、前記ヒータの温度が所定温度以下であれば、前記取り外し防止手段の取り外し防止機能を解除して前記ヒータを取り外し可能にする制御手段とを備えた
ことを特徴とする誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記取り外し防止手段は、
前記ヒータの一部と係合する係合部と、
前記ヒータの取り外しを防止する際には前記係合部が前記ヒータの一部に係合するように前記係合部を移動させる係合部移動手段を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記ヒータは、前記加熱庫からの取り出し方向に対して交差する方向に延びる交差部を有しており、
前記係合部は、前記ヒータの取り出し方向に対して前記交差部の手前側に配置されて、前記交差部と係合する
ことを特徴とする請求項2記載の誘導加熱調理器。
【請求項4】
前記係合部は、長軸方向が上下方向となるように配置され、上下移動が可能な棒状部材であり、
前記係合部移動手段は、前記制御部手段に制御されて前記棒状部材を上下方向に移動させるモータを備えた
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記係合部は、長軸方向が上下方向となるように配置され、上下移動が可能な棒状部材であり、
前記係合部移動手段は、
所定方向への操作を受け付ける操作部材と、
前記操作部材に対する操作力を、前記棒状部材の移動力として伝達する伝達部材とを備えた
ことを特徴とする請求項2または請求項3に記載の誘導加熱調理器。
【請求項6】
前記取り外し防止手段は、
前記ヒータの手前側を覆うヒータカバーと、
前記ヒータの取り外しを防止する際には前記ヒータカバーが前記ヒータの手前側を覆うよう前記カバーを移動させるヒータカバー移動手段を備えた
ことを特徴とする請求項1記載の誘導加熱調理器。
【請求項7】
前記ヒータカバー移動手段は、前記制御部手段に制御されて前記ヒータカバーを移動させるモータを備えた
ことを特徴とする請求項6記載の誘導加熱調理器。
【請求項8】
前記ヒータカバー移動手段は、
所定方向への操作を受け付ける操作部材と、
前記操作部材に対する操作力を、前記ヒータカバーの移動力として伝達する伝達部材とを備えた
ことを特徴とする請求項6記載の誘導加熱調理器。
【請求項9】
前記取り出し防止手段は、
前記ヒータの取り外しを可能とする際には、前記ヒータを取り出し方向に移動させるヒータ移動手段を備えた
ことを特徴とする請求項1〜請求項8のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項10】
前記ヒータ移動手段は、
前記ヒータに係合し、回転することにより前記ヒータを取り出し方向に送り出す回転手段を備えた
ことを特徴とする請求項9記載の誘導加熱調理器。
【請求項11】
前記ヒータ移動手段は、
前記制御部手段に制御されて前記回転手段を回転させるモータを備えた
ことを特徴とする請求項10記載の誘導加熱調理器。
【請求項12】
前記ヒータ移動手段は、
所定方向への操作を受け付ける操作部材と、
前記操作部材に対する操作力を、前記ヒータの移動力として伝達する伝達部材とを備えた
ことを特徴とする請求項9記載の誘導加熱調理器。
【請求項13】
前記コイルは、前記加熱庫の背面側に配置されており、
前記ヒータは、前記コイルから生じる磁束と鎖交するように配設される給電部を備え、
前記加熱庫に対する前記ヒータの取り出し方向に沿って設けられ、前記ヒータを支持するヒータ支持溝と、
前記加熱庫において前記コイルに対応する位置に設けられ、前記ヒータの前記給電部を支持する給電部支持溝とを備えた
ことを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項14】
前記コイルは、前記加熱庫の左右両方の側壁に配置されており、
前記ヒータは、前記コイルから生じる磁束と鎖交するようにそれぞれ配設される複数の給電部を備え、
前記加熱庫に対する前記ヒータの取り出し方向に沿い、かつ、前記加熱庫において前記コイルに対応する位置に設けられて、前記ヒータの前記給電部を支持する給電部支持溝を備えた
ことを特徴とする請求項1〜請求項12のいずれか一項に記載の誘導加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図5】
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【図11】
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【図19】
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【図22】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2012−178277(P2012−178277A)
【公開日】平成24年9月13日(2012.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−40737(P2011−40737)
【出願日】平成23年2月25日(2011.2.25)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【出願人】(000176866)三菱電機ホーム機器株式会社 (1,201)
【Fターム(参考)】