説明

誘導加熱調理器

【課題】発光手段からの入光による赤外線センサの検知レベルに応じて温度補正の大小を切り替えることで、精度よく温度検知を行なうこと。
【解決手段】調理容器1と、トッププレート2と、誘導磁界を発生させる加熱コイル3と、トッププレート2を介して調理容器1から放射された赤外線を検出する赤外線センサ4と、赤外線センサ4の受光したエネルギより調理容器1の温度を温度情報に換算する温度検知手段5と、温度検知手段5での温度情報により加熱コイルの高周波電流を制御して調理容器1の加熱電力量を制御する加熱制御手段6と、赤外線センサ4の検知部に光が届くようにした発光手段7とを備え、発光手段7の点灯時と消灯時の赤外線センサ4の検知レベル差に応じて、温度検知手段5で得られる温度情報を補正する温度補正手段8を配し、温度補正手段8からの温度補正情報を加熱制御手段6へ入力させること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、赤外線センサで温度検知を行う誘導加熱調理器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の誘導加熱調理器は、図6に示すように調理物を加熱する調理容器1と、調理容器1を載置するトッププレート2と、調理容器1を加熱するために誘導磁界を発生させる加熱コイル3と、トッププレート2を介して調理容器1から放射された赤外線を検出する赤外線センサ4と、赤外線センサ4の受光したエネルギより調理容器1の温度を温度情報に換算する温度検知手段5と、温度検知手段5での温度情報により加熱コイル3の高周波電流を制御して調理容器1の加熱電力量を制御する加熱制御手段6と、赤外線センサ4の検知部に光が届くように発光手段7を備えた構成となっており、発光手段7の点灯時に赤外線センサ4が相応の出力をするか否かで、赤外線センサ4の故障を検知し、故障している場合は、加熱動作を停止もしくは抑制するようにしたものがある(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−213894号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前記従来の構成では、発光手段が赤外線センサの故障のみを検知するもので、赤外線センサの温度検知精度向上には寄与していないという課題を有している。
【0005】
本発明は、前記従来の課題を解決するもので、検知温度補正手段を有し、発光手段からの入光による赤外線センサの検知レベルによって、温度補正の大小を切り替えることで、精度よく温度検知を行うことができる使い勝手のよい誘導加熱調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記従来の課題を解決するために、本発明の誘導加熱調理器は、調理物を加熱する調理容器と、前記調理容器を載置するトッププレートと、前記調理容器を加熱するために誘導磁界を発生させる加熱コイルと、前記トッププレートを介して調理容器から放射された赤外線を検出する赤外線センサと、前記赤外線センサの受光したエネルギより前記調理容器の温度を温度情報に換算する温度検知手段と、前記温度検知手段での温度情報により前記加熱コイルの高周波電流を制御して前記調理容器の加熱電力量を制御する加熱制御手段と、前記赤外線センサの検知部に光が届くようにした発光手段とを備え、前記発光手段の点灯時と消灯時の赤外線センサの検知レベル差に応じて、温度検知手段で得られる温度情報を補正する温度補正手段を配し、前記温度補正手段からの温度補正情報を前記加熱制御手段へ入力させる構成としたものである。
【0007】
これによって、温度補正手段では、赤外線センサの発光手段の点灯時消灯時の検知レベル差に応じて、調理容器からの温度検知時の検知レベルを補正することで、赤外線センサの素子の出力特性にバラツキがあったとしても、それを是正でき、精度のよい温度検知を実現できるものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明の誘導加熱調理器は、検知温度補正手段を有し、発光手段からの入光による赤外線センサの検知レベルによって、温度補正の大小を切り替えることで、精度よく温度検知を行うことができる使い勝手のよい誘導加熱調理器を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施の形態1、2における誘導加熱調理器の全体構成図
【図2】(a)本発明の実施の形態1における誘導加熱調理器の赤外線センサの受感特性を示すグラフ(b)本発明の実施の形態1における誘導加熱調理器の温度検知手段におけるセンサ出力対検知温度特性を示すグラフ
【図3】(a)本発明の実施の形態2における誘導加熱調理器の赤外線センサの受感特性を示すグラフ(b)本発明の実施の形態2における誘導加熱調理器の温度検知手段におけるセンサ出力対検知温度特性を示すグラフ
【図4】本発明の実施の形態1,2における両面配置された赤外線センサと発光手段実装基板の構成図
【図5】(a)調理容器側からの入光時の赤外線センサの受感特性を示すグラフ(b)発光手段側から入光時の赤外線センサの受感特性を示すグラフ
【図6】従来の誘導加熱調理器の全体構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
第1の発明は、調理物を加熱する調理容器と、前記調理容器を載置するトッププレートと、前記調理容器を加熱するために誘導磁界を発生させる加熱コイルと、前記トッププレートを介して調理容器から放射された赤外線を検出する赤外線センサと、前記赤外線センサの受光したエネルギより前記調理容器の温度を温度情報に換算する温度検知手段と、前記温度検知手段での温度情報により前記加熱コイルの高周波電流を制御して前記調理容器の加熱電力量を制御する加熱制御手段と、前記赤外線センサの検知部に光が届くようにした発光手段とを備え、前記発光手段の点灯時と消灯時の赤外線センサの検知レベル差に応じて、温度検知手段で得られる温度情報を補正する温度補正手段を配し、前記温度補正手段からの温度補正情報を前記加熱制御手段へ入力するものであり、温度補正手段では、赤外線センサの発光手段の点灯時消灯時の検知レベル差に応じて、調理容器からの温度検知時の検知レベルを補正することで、赤外線センサの素子の出力特性にバラツキがあったとしても、それを是正でき、精度のよい温度検知を実現することができる。
【0011】
第2の発明は、特に、第1の発明の温度補正手段は、前記発光手段の点灯時と消灯時の赤外線センサの検知レベル差が第1所定値以上であるか否かで、温度補正量を切り替えるものであり、特性の異なる赤外線センサを識別し、且つ其々の赤外線センサに最適な温度補正を加えることで、幅広い特性の赤外線センサにおいても精度のよい温度検知を実現することができる。また、赤外線センサを自動識別することで、赤外線センサ以外の構成は共用化でき安価な構成となる。また更に、1つの加熱コイルに対して、特性の異なる複数の赤外線センサを使用する場合、自動識別情報により赤外線センサ搭載間違いを未然に検出することができ高信頼性の誘導加熱調理器を提供できる。
【0012】
第3の発明は、特に、第1または第2の発明の温度補正手段は、前記発光手段の点灯時と消灯時の赤外線センサの検知レベル差が第2所定値以下であるとき、赤外線センサが故障していると判定し、前記加熱制御手段より加熱動作を停止もしくは抑制したものであり、1つの発光手段で温度補正と故障検知もしくは赤外線センサの識別と故障検知の複数の機能を具備させることで安価な構成となる。
【0013】
第4の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の赤外線センサと前記発光手段は同一のプリント配線板の同一面に実装され、前記発光手段は前記トッププレート越しに視認できる位置に配置したものであり、発光手段に赤外線センサの位置を使用者に知らしめ
る、表示装置としての役割も付加することで、使用者は特に比較的小さな調理容器をトッププレートに載置するとき、センサ位置に調理容器を合わせやすくなり、使い勝手が向上する。
【0014】
第5の発明は、特に、第1〜3のいずれか1つの発明の赤外線センサと発光手段は、同一の両面プリント配線板に実装され、赤外線センサの実装面と発光手段の実装面が表裏の異なる面となるように配置したものであり、調理容器からの温度赤外線入光の方向と、発光手段からの入光の方向を、プリント配線板を挟んで逆方向にすることで、温度赤外線入光の方向に、外乱光をカットする目的で光学フィルタを搭載させた場合においても、赤外線センサの温度補正の精度や、赤外線センサの識別の精度を保持することができる。
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。
【0016】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態における誘導加熱調理器の全体構成図である。
【0017】
図1において、トッププレート2に調理容器1が載置されており、加熱コイル3からの誘導磁界により調理容器は加熱される。赤外線センサ4は調理容器1からの熱赤外線を検知するものであり、トッププレートの可視部越しに熱赤外線が入光されている。
【0018】
発光手段7は赤外線センサ4に入光可能なように同一プリント配線板上に配置され、温度検知手段5は赤外線センサ4の出力を温度情報に変換するものである。
【0019】
温度補正手段8は発光手段に駆動命令を出力するとともに、赤外線センサ4の出力を入力し温度検知手段5の温度情報を補正するようにしたものであり、加熱制御手段6は温度検知手段5と温度補正手段8からの入力に基づいて加熱コイル3による加熱動作を制御するものである。
【0020】
以上のように構成された誘導加熱調理器について、図2(a)(b)を参照し詳細動作を説明する。
【0021】
図2(a)は、本発明の実施の形態1における誘導加熱調理器の赤外線センサの受感特性を示すグラフであり、Zaが赤外線センサのMIN特性、Zbが赤外線センサ標準特性、Zcが赤外線センサのMAX特性を示している。図2(b)は本発明の実施の形態1における誘導加熱調理器の温度検知手段におけるセンサ出力対検知温度特性を示すグラフせある。
【0022】
調理容器1が加熱コイル3の誘導加熱により温度上昇すると、調理容器1より熱赤外線がYb140、Yb200、Yb240に示す特性でトッププレート2の可視部を介して放出される。
【0023】
ここで、Yb140、Yb200、Yb240は、それぞれ調理容器が140℃、200℃、240℃となっているときの熱赤外線放射特性としている。
【0024】
赤外線センサ4は、センサ特性Za,Zb、Zcと熱赤外線分光特性Yb140、Yb200、Yb240の交わった部分の積分面積相当の受感電流として出力することができ、本実施の形態では、赤外線センサ4がMIN特性の時、140℃、200℃、240℃の検知電流は、それぞれI140a2、I200a2、I240a2、標準特性の時、140℃、200℃、240℃の検知電流は、それぞれI140b2、I200b2、I2
40b2、MAX特性の時、140℃、200℃、240℃の検知電流は、それぞれI140c2、I200c2、I240c2としている。I140a2、I200a2、I240a2、I140b2、I200b2、I240b2、I140c2、I200c2、I240c2は温度検知手段5に出力される。
【0025】
また一方で、赤外線センサ4は発光手段7が点灯したときも、発光手段7の分光特性Xaとセンサ特性Za,Zb、Zc交わった部分の積分面積相当の受感電流として出力することができ、赤外線センサ4がMIN特性の時Ia1、赤外線センサ4が標準特性の時Ib1、赤外線センサ4がMAX特性の時Ic1としている。Ia1、Ib1、Ic1はそれぞれ温度補正手段8に出力される。
【0026】
温度検知手段5に入力された受感電流は、図2(b)の(グラフ2)の実線で示している赤外線センサデータテーブルで温度情報に変換され、赤外線センサ4が標準特性の時、I140b2が140℃、I200b2が200℃、I240b2が240℃に換算される。
【0027】
次に、赤外線センサ4がMIN特性の時は、I140a2の換算温度に所定補正温度1(Δθ1)、I200a2の換算温度に所定補正温度3(Δθ3)、I240a2の換算温度に所定補正温度5(Δθ5)をそれぞれ加えた値を検知温度とし、赤外線センサ4がMAX特性の時は、I140c2の換算温度に所定補正温度2(Δθ2)、I200c2の換算温度に所定補正温度4(Δθ4)、I240c2の換算温度に所定補正温度6(Δθ6)を差し引いた値を検知温度としている。
【0028】
赤外線センサ4の特性が、標準かMINかMAXは、発光手段7の点灯時と消灯時の検出電流差によって温度補正手段8で判断し、検出電流がIa1であれば赤外線センサの特性MINと判断し、I140a2、I200a2、I240a2のそれぞれの換算温度に、それぞれΔθ1、Δθ3、Δθ5を加え、検出電流がIc1であれば赤外線センサ特性MAXと判断し、I140c2、I200c2、I240c2のそれぞれの換算温度から、それぞれΔθ2、Δθ4、Δθ6を差し引き、検出電流がIb1であれば赤外線センサ特性標準と判断し、I140b2、I200b2、I240b2をそのまま温度換算している。
【0029】
ここで、Δθ1、Δθ2、Δθ3、Δθ4、Δθ5、Δθ6は、あらかじめ設定された所定温度であり、発光手段による検知電流と、各調理物温度による検知電流の関係により決定されている。また、赤外線センサデータテーブルは加熱制御手段で保持されている固定値である。
【0030】
以上のように、温度補正手段8で発光手段7の点灯時の検知電流を、あらかじめ検出し、実際の温度検知の値を補正していることが本実施の形態の最大の特徴であり、赤外線センサの特性がバラツイたとしても、それを是正し精度のよい温度検知を実現することができる。
【0031】
尚、本実施の形態では、赤外線センサの特性がMIN、標準、MAXの3種類として説明しているが、発光手段7による検知電流が例えばIa1とIb1の間の値のとき、Δθ1、Δθ3、Δθ5をIa1とIb1の比率見合い分除して温度補正したとすれば、更に精度のよい温度検知が実現できる。
【0032】
また尚、本実施の形態では、赤外線センサの特性がMIN、標準、MAXの3種類として説明しているが、発光手段7による検知電流が例えばIb1とIa1の間の値のとき、Δθ2、Δθ4、Δθ6をIa1とIb1の比率見合い分除して温度補正したとすれば、
更に精度のよい温度検知が実現できる。
【0033】
また尚、本実施の形態では、発光手段を特筆していないが、赤外線センサの分光特性と交わる分光特性であれば、赤LED、赤外線LED、タングステンランプ等であったとしても同等の効果が得られる。
【0034】
また、本実施の形態において、発光手段7が点灯時の検出電流Ia1,Ib1,Ic1が所定値以下であったとき、赤外線センサ4が故障していると判断し加熱制御手段6は加熱動作を停止させる。
【0035】
以上の作用により、精度のよい温度検知が実現できることに加え、赤外線センサによる温度検知がないまま加熱継続し機器に大きな損傷を与えることのない安全性に優れた誘導加熱調理器となる。
【0036】
また、本実施の形態において、赤外線センサ4と発光手段7を、同一のプリント配線板の同一面に隣接して実装しており、発光手段7を可視光発光素子とすれば、赤外線センサの位置を使用者に知らしめる、表示装置としての役割も付加することができ、使用者は特に比較的小さな調理容器をトッププレートに載置するとき、センサ位置に調理容器を合わせやすくなり、使い勝手が向上する。
【0037】
また、本実施の形態では、赤外線センサ4と発光手段7を、同一のプリント配線板の同一面に隣接して実装しているとして説明したが、図4に示す本発明の第1の実施の形態における両面配置された赤外線センサと発光手段実装基板の構成図のように、赤外線センサの実装面と前記発光手段の実装面を同一プリント配線板の表裏の異なる面となるように配置し、調理容器からの熱赤外線入光方向と、発光手段からの入光方向を異ならせることで、図示しているように外乱光カット光学フィルタを搭載させても、本実施の形態で説明したものと同等の温度精度を実現することができるようにしたものである。
【0038】
図5(a)は、調理容器側からの入光時の赤外線センサの受感特性を示すグラフ(b)は、発光手段側からの入光時の赤外線センサ受感特性を示すグラフである。両グラフを見比べると、調理容器側からの入光受感特性は、光学フィルタカット周波数(λc)以下での受感がなくなっている。
【0039】
図4の構成においては、図5(a)の特性を利用してトッププレート越しに入光する、例えば太陽光、照明器具からの光などの影響を排除し、図5(b)の特性を利用して、発光手段点灯時の検知電流で温度補正を実施することができる。
【0040】
(実施の形態2)
図1は、本発明の第2の実施の形態における誘導加熱調理器の全体構成図である。構成図は、第1の実施の形態と同一であり、温度補正手段8の作用のみ異なるため図1の説明は省略し、以下図3(a)、(b)を参照して、以下説明する。
【0041】
図3(a)は、本発明の第2の実施の形態における誘導加熱調理器の赤外線センサの受感特性を示すグラフであり、異なる2種類の赤外線センサの受感特性の1例である。Dbが赤外線センサAの特性、Ebが赤外線センサBの特性を示している。図3(b)は本発明の第2の実施の形態における誘導加熱調理器の温度検知手段におけるセンサ出力対検知温度特性を示すグラフである。
【0042】
調理容器1が加熱コイル3の誘導加熱により温度上昇すると、調理容器1より熱赤外線がYb140、Yb200、Yb240に示す特性でトッププレート2の可視部を介して
放出される。ここで、Yb140、Yb200、Yb240は、それぞれ調理容器が140℃、200℃、240℃となっているときの熱赤外線放射特性としている。
【0043】
赤外線センサ4は、センサ特性Za,Zb、Zcと熱赤外線分光特性Yb140、Yb200、Yb240の交わった部分の積分面積相当の受感電流として出力することができ、本実施の形態では、赤外線センサAが搭載されている時、140℃、200℃、240℃の検知電流は、それぞれI140d2、I200d2、I240d2、赤外線センサBが搭載されている時、140℃、200℃、240℃の検知電流は、それぞれI140e2、I200e2、I240e2としている。I140d2、I200d2、I240d2、I140e2、I200e2、I240e2は温度検知手段5に出力される。
【0044】
また一方で、赤外線センサ4は発光手段7が点灯したときも、発光手段7の分光特性Xaとセンサ特性DbとEbの交わった部分の積分面積相当の受感電流として出力することができ、赤外線センサAが搭載されている時Id1、赤外線センサBが搭載されている時Ie1、としている。Id1、Ie1はそれぞれ温度補正手段8に出力される。
【0045】
温度検知手段5に入力された受感電流は、図3(b)の(グラフ4)で示している特性で温度情報に変換され、赤外線センサAが搭載されている時は、I140d2が140℃、I200d2が200℃、I240d2が240℃に換算(グラフ4)の点線表示、赤外線センサBが搭載されている時は、I140e2が140℃、I200e2が200℃、I240e2が240℃に換算(グラフ4)の実線表示がされる。
【0046】
赤外線センサAと赤外線センサBのいずれが搭載されているかは、発光手段7の点灯時と消灯時の検出電流差によって温度補正手段8で判断し、検出電流が第1所定値電流(Iシータ)より小さければ赤外線センサB、Iθ1より大きければ赤外線センサAとし、(グラフ4)に示すそれぞれの検知特性データテーブルにしたがって温度換算される。
【0047】
ここで、赤外線センサA、Bのデータテーブルはそれぞれ、加熱制御手段で保持されている固定値である。
【0048】
以上のように、温度補正手段8で発光手段7の点灯時の検知電流が所定値以上か否かを検知することで、特性の異なる赤外線センサを識別でき、其々の赤外線センサに最適な温度補正を加えることで、幅広い特性の赤外線センサにおいても精度のよい温度検知を実現することができる。
【0049】
また、赤外線センサを自動識別することで、赤外線センサ以外の構成は共用化でき安価な構成となる。また更に、1つの加熱コイルに対して、特性の異なる複数の赤外線センサを使用する場合、自動識別情報により赤外線センサ搭載間違いを未然に検出することができ高信頼性の誘導加熱調理器を提供できる。
【0050】
また尚、本実施の形態では、発光手段を特筆していないが、赤外線センサの分光特性と交わる分光特性であれば、赤LED、赤外線LED、タングステンランプ等であったとしても同等の効果が得られる。
【0051】
また、本実施の形態において、発光手段7が点灯時の検出電流Id1,Ie1が第1所定値電流(Iθ1)より小さい第2所定値電流(Iθ2)以下であったとき、赤外線センサが故障していると判断し加熱制御手段6は加熱動作を停止させる。
【0052】
以上の作用により、赤外線センサの識別による精度のよい温度検知が実現できることに加え、赤外線センサによる温度検知がないまま加熱継続し機器に大きな損傷を与えること
のない安全性に優れた誘導加熱調理器となる。
【0053】
また、本実施の形態において、赤外線センサ4と発光手段7を、同一のプリント配線板の同一面に隣接して実装しており、発光手段7を可視光発光素子とすれば、赤外線センサの位置を使用者に知らしめる、表示装置としての役割も付加することができ、使用者は特に比較的小さな調理容器をトッププレートに載置するとき、センサ位置に調理容器を合わせやすくなり、使い勝手が向上する。
【0054】
また、本実施の形態では、赤外線センサ4と発光手段7を、同一のプリント配線板の同一面に隣接して実装しているとして説明したが、図4にあるように、赤外線センサの実装面と前記発光手段の実装面を同一プリント配線板の表裏の異なる面となるように配置し、調理容器からの熱赤外線入光方向と、発光手段からの入光方向を異ならせることで、図示しているように外乱光カット光学フィルタを搭載させても、本実施の形態で説明したものと同等の赤外線センサ識別による温度精度向上を実現することができるようにしたものである。
【0055】
図5(a)は、調理容器側からの入光時の赤外線センサ受感特性で、図5(b)は、発光手段側からの入光時の赤外線センサ受感特性である。両グラフを見比べると、調理容器側からの入光受感特性は、光学フィルタカット周波数(λc)以下での受感がなくなっている。
【0056】
図4の構成においては、図5(a)の特性を利用してトッププレート越しに入光する、例えば太陽光、照明器具からの光などの影響を排除し、図5(b)の特性を利用して、発光手段点灯時の検知電流で赤外線センサの識別を実施することができる。
【産業上の利用可能性】
【0057】
以上のように、本発明にかかる誘導加熱調理器は、発光手段からの入光による赤外線センサの出力レベルを予め検出して、実際の温度検知レベルを是正することで、精度のよい温度検知動作が実現でき、ガス調理器、電熱調理器などの用途に有効である。
【符号の説明】
【0058】
1 調理容器
2 トッププレート
3 加熱コイル
4 赤外線センサ
5 温度検知手段
6 加熱制御手段
7 発光手段
8 温度補正手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理物を加熱する調理容器と、前記調理容器を載置するトッププレートと、前記調理容器を加熱するために誘導磁界を発生させる加熱コイルと、前記トッププレートを介して調理容器から放射された赤外線を検出する赤外線センサと、前記赤外線センサの受光したエネルギより前記調理容器の温度を温度情報に換算する温度検知手段と、前記温度検知手段での温度情報により前記加熱コイルの高周波電流を制御して前記調理容器の加熱電力量を制御する加熱制御手段と、前記赤外線センサの検知部に光が届くようにした発光手段とを備え、前記発光手段の点灯時と消灯時の赤外線センサの検知レベル差に応じて、温度検知手段で得られる温度情報を補正する温度補正手段を配し、前記温度補正手段からの温度補正情報を前記加熱制御手段へ入力する誘導加熱調理器。
【請求項2】
前記温度補正手段は、前記発光手段の点灯時と消灯時の赤外線センサの検知レベル差が第1所定値以上であるか否かで、温度補正量を切り替える請求項1に記載の誘導加熱調理器。
【請求項3】
前記温度補正手段は、前記発光手段の点灯時と消灯時の赤外線センサの検知レベル差が第2所定値以下であるとき、赤外線センサが故障していると判定し、前記加熱制御手段より加熱動作を停止もしくは抑制した請求項1又は2に記載の誘導加熱調理器。
【請求項4】
前記赤外線センサと前記発光手段は同一のプリント配線板の同一面に実装され、前記発光手段は前記トッププレート越しに視認できる位置に配置した請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。
【請求項5】
前記赤外線センサと前記発光手段は、同一の両面プリント配線板に実装され、前記赤外線センサの実装面と前記発光手段の実装面が表裏の異なる面となるように配置した請求項1〜3のいずれか1項に記載の誘導加熱調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−248500(P2012−248500A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−121353(P2011−121353)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】