誘導型の無線インタフェースによって給電される受信機
【課題】誘導型の無線インタフェースによって給電される受信機において、遠隔からの電力供給に対する距離の拡大、または遠隔からの電力供給に対する距離を所定とした場合に放射磁界の振幅を限定する。
【解決手段】誘導結合を有する共振アンテナを備える受信機3に関し、受信機3は、誘導アンテナ回路A3と、誘導アンテナ回路によって給電され、アンテナ回路に並列に接続されたキャパシタC3および抵抗R3としてモデル化できる回路とを備えている。誘導アンテナ回路は、少なくとも2つの導電ループL1、L2を備え、この少なくとも2つの導電ループL1、L2は、電気的に並列に接続され、平行な表面の上に配置され、実質的にゼロの相互インダクタンスを有する。
【解決手段】誘導結合を有する共振アンテナを備える受信機3に関し、受信機3は、誘導アンテナ回路A3と、誘導アンテナ回路によって給電され、アンテナ回路に並列に接続されたキャパシタC3および抵抗R3としてモデル化できる回路とを備えている。誘導アンテナ回路は、少なくとも2つの導電ループL1、L2を備え、この少なくとも2つの導電ループL1、L2は、電気的に並列に接続され、平行な表面の上に配置され、実質的にゼロの相互インダクタンスを有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線エネルギー伝送(典型的に、非接触インタフェースによるエネルギー伝送)に関し、特に、誘導RFID型の受信機の給電に関する。
【背景技術】
【0002】
無線伝送に対する応用の数は、ますます増加している。特に、誘導RFID型の通信システムが開発されてから、現在大きな盛り上がりを見せている。このようなシステムは、基地局(または読み取り機)、および自律型物体を備えている。この自律型物体は、識別番号を備え、遠隔で給電される受信機として動作する。この受信機は、一般に、製品に貼り付けられる場合にはタグと呼ばれ、また人の識別の目的が意図される場合には、非接触カードと呼ばれている。
【0003】
さらに、誘導RFID型の遠隔電力供給システム(例えば、皮下埋め込みまたは電子装置の再充電型電池に対する)が開発されている。
【0004】
上記のようなシステムでは、リンクは、読み取り機と1つ以上の受信機との間の無線周波数磁界によって確立される。この磁界は準静的である。読み取り機結合ユニットと受信機結合ユニットとは、導電回路であり、これは、ループ、巻線またはコイルを含み、これらはアンテナ回路を形成している。電子素子は、アンテナ回路に関連しており、それらの機能は、周波数同調、ダンピング、またはインピーダンス整合を実行することである。通常は、アンテナ回路と電子素子とを一緒にして、アンテナと呼んでいる。読み取り機のアンテナは、発振器に接続された直列または並列のRLC共振回路と見なすことができる。受信機のアンテナは、RLC並列共振回路と見なすことができる。
【0005】
図1は、読み取り機1(このアンテナは直列RLC回路であると考えている)および誘導型のRFID受信機2の通常の電気的回路図の例である。
【0006】
読み取り機側では、アンテナ回路Aeは、抵抗ReとキャパシタCeとに直列に接続された等価インダクタンスLeで表されている。アンテナ回路Aeは、読み取り機の電子回路Peeに接続されている。読み取り機の出力インピーダンスは、抵抗Rceでモデル化されており、アンテナ回路Aeおよび電源Geに直列に接続されている。読み取り機側を並列RLCでモデル化することもまた可能である。
【0007】
受信機側では、アンテナ回路Arは、等価インダクタンスLrで表されている。アンテナ回路Arは、電子回路Perに接続されている。電子回路は、キャパシタCrを含んでいる。抵抗Rrは、この電子回路の電力消費をモデル化しており、等価インダクタンスLrに並列に接続されている。この並列モデルは、大多数の受信機に対応している。この構成は、電流と電圧が使用されていること、および/または簡単であるという理由から、広く使用されている。
【0008】
誘導結合は、読み取り機と受信機との間におけるエネルギーの転送を相互インダクタンスによって誘起する。受信機が読み取り機の十分近傍に置かれたときには、読み取り機のアンテナは、受信機のアンテナと結合する。従って、交流の電圧または起電力が受信機の中に誘起される。この電圧は整流されて、通常、受信機の機能を給電するのに使用される。
【0009】
受信機から読み取り機へのデータの送信を可能にするために、受信機は、アンテナ回路の端子に現れるインピーダンスを変調する。このインピーダンスの変化は誘導結合を通して読み取り機によって検出される。誘導型のRFIDシステムの設計に対する勧告は、特に標準規格ISO15693、ISO18000−3、およびISO14443の中で規定されている。これらの標準規格は、送信周波数を周波数13.56MHzに固定している。ISO18000−2規格は、135kHzよりも低い周波数レベルでの送信周波数を固定している。実際に使用する場合には、読み取り機と受信機との間の通信距離は、比較的小さく、これらの周波数は、典型的には、約10cmから1mの間にある。
【0010】
通常のアンテナ回路は、支持体に設置された1つ以上のループを持つ導電トラックを備えている。このトラックは、一般的に、支持体の極力周辺近くに形成することにより、そのトラックをよぎる電磁力線を、最適化または最大にしている。トラックのループの数は、一般的に固定されていて、次に示す2つの制約条件を解決できるようにしている。これらの制約条件は、十分な量のエネルギーを回復できるようにすることと、データ通信に対する十分な通過帯域を得られるようにすることとである。実際には、ループの数を多くすれば、データ通信に対する通過帯域はそれだけ広くなる。またループの数を少なくすれば、電力伝送はそれだけ多くなる。従って、アンテナ回路の設計には折り合いが必要であり、その場合、受信機は、そのエネルギーの回復に対しては最適化されてはいない。
【0011】
特許文献1は、特に、電気的に並列に接続されて、平行した表面に配置された2つの導電ループを備えているアンテナ回路に関して記述している。これらの導電ループは、同一の幾何形状で重ね合わされていて、それらの相互インダクタンスは最大になっている。
【0012】
特許文献2は、非接触カードの形状をしたトランスポンダを記述している。記述されているアンテナ回路の中の1つは、2つの導電ループを備えており、それらは、電気的に並列に接続されているが、同心円状に巻かれている。これらの導電ループは、2つのループの長さを調和させるために、2つの平行した表面の上に分散されている。
【0013】
誘導型のRFIDシステムは、読み取り機と受信機との間の負荷の影響に関わる問題に敏感である。実際に、読み取り機が形成している共振器は、受信機の共振器と結合を起こす。この結合によって送信側にどのくらいかの量の不整合を引き起こす。実際の動作では、受信機が存在することにより、読み取り機の共振回路の上にはインピーダンスが生成される。このインピーダンスは、相互インダクタンスであり、次の式で示される。
【数1】
ここで、kはこれら2つのアンテナに対する結合係数であり、LeおよびLrは、それぞれ、読み取り機および受信機のアンテナ回路のインダクタンスである。この相互インダクタンスは、読み取り機の共振周波数のシフトを引き起こす。使用する共振器のQ値が大きくなると、この影響は大きくなる。
【0014】
実際の動作では、臨界結合位置と呼ばれる位置があり、これは、読み取り機の出力インピーダンスと、結合によって読み取り機のアンテナに戻って行く、受信機インピーダンスとの間のインピーダンス整合によって、読み取り機と受信機との間のエネルギーの転送が最適に行われる距離に対応している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、臨界結合距離は、多くの数の応用に対する要求条件に関しては、極めて短い距離である。また、その他の応用(皮下埋め込みに対する給電等)では、小さい振幅の磁界によって遠隔からの給電が達成できることが望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、これらの欠点の1つ以上を解決することを目的としている。従って、本発明は、誘導結合を有する共振アンテナを備えた受信機に関するものであり、次に示す要素を備えている。
−誘導アンテナ回路と、
−誘導アンテナ回路によって給電される回路。この回路は、アンテナ回路に並列に接続されたキャパシタおよび抵抗でモデル化することができる。
【0017】
誘導アンテナ回路は、少なくとも2つの導電ループを備え、これらの導電ループは、電気的に並列に接続され、平行な表面の上に配置され、それらの相互インダクタンスは、実質的にゼロである。
【0018】
1つの実施形態においては、2つの導電ループは、実質的に等しい値のインダクタンスを有する。
【0019】
更なる実施形態においては、2つの導電ループは、同一の支持体の平行な表面上に配置されている。
【0020】
別の実施形態においては、支持体は、電子回路が設けられる基板であり、この電子回路は、誘導アンテナ回路によって給電される。
【0021】
さらに別の実施形態においては、電子回路は、電気負荷と整流器回路とを備えている。電気負荷は給電を受けるためのものであり、整流器回路は、誘導アンテナ回路の端子に接続されて、整流した電圧を前記電気負荷の端子に印加する。
【0022】
1つの実施形態においては、前記平行な表面は平面である。
【0023】
更なる実施形態においては、誘導アンテナ回路、キャパシタおよび抵抗を含むアセンブリの共振周波数は、実質的に13.56MHzに等しい。
【0024】
別の実施形態においては、2つの導電ループは、磁界に対する最大感度は同一の方向にある。
【0025】
更に別の実施形態においては、前記並行な表面の間の距離は、1mmよりも短い。
【0026】
1つの実施形態においては、前記2つの導電ループは、第1の平行な表面の上に配置された第1のループであり、誘導アンテナ回路はまた、少なくとも2つの第2の導電ループを備えている。この2つの第2の導電ループは、電気的に並列に接続され、実質的にゼロの相互インダクタンスを有し、第2の平行な表面の上に配置されている。この第2の平行な表面は、第1の表面に平行ではない。
【0027】
更なる実施形態においては、誘導アンテナ回路は30より大きなQ値を有する。
【0028】
別の実施形態においては、前記2つのループのそれぞれの断面積は、0.16m2よりも小さい。
【0029】
更に別の実施形態においては、前記2つのループは、インターリーブしたパタンで重なり合って延在している。
【0030】
1つの実施形態においては、前記ループは、それぞれ同様の形状の導電回路を形成し、前記導電回路は、前記平行な表面の上で互いにシフトして配置されている。
【0031】
更なる実施形態においては、前記2つの導電ループは、第1および第2の端子を通して並列に接続され、従って、2つの導電ループは、第1および第2の端子の間に、同一の起電力を誘起する。
【0032】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、以下に示す記述から明らかになると思う。しかしこれらは全て、限定的なものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】米国特許第2010/0283698号明細書
【特許文献2】欧州特許第0541323号明細書
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】誘導型の読み取り機およびRFID受信機の等価回路を示す図である。
【図2】本発明における典型的な誘導型の受信機の等価回路を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における受信機の断面図である。
【図4】図3に示す受信機のアンテナ回路のループを上から見た図である。
【図5】図3に示す受信機のアンテナ回路のループを上から見た図である。
【図6】図3に示す受信機を上から見た図である。
【図7】本発明の第2の実施形態における受信機の断面図である。
【図8】図7に示す受信機のアンテナ回路のループを上から見た図である。
【図9】図7に示す受信機のアンテナ回路のループを上から見た図である。
【図10】図7に示す受信機を上から見た図である。
【図11】別の実施形態におけるアンテナ回路のループの重ね合わせを上から見た図である。
【図12】本発明における典型的な受信機構成の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、誘導型の無線インタフェースによって給電される受信機を提案している。本発明は、受信機の誘導アンテナ回路の構成を提案している。これにより、遠隔からの電力供給に対する距離の拡大、または遠隔からの電力供給に対する距離を所定とした場合に放射磁界の振幅を限定することが可能になる。以下の記述で、受信機のアンテナ回路に対する寸法パラメータの最適設計のために発明者が確立した理論的手法の説明を行う。
【0036】
図1の例を参照すると、インダクタンスLrは、直列に接続された同心円状の導電ループの形で実現することができる。これらの導電ループは、受信機の支持体の周囲を取り囲んでいる。読み取り機から送信される信号搬送波の角周波数をωとすると、次式が得られる。
Vr=Rr*e/(Rr*(1−Lr*Cr*ω2)+j*Lr*ω)
【0037】
起電力eは、次式で表すことができる。
e=−j*ω0*S*μ0*H
【0038】
ここで、Sは、インダクタンスLrの導電ループのセットが取り囲む断面積であり、Hは、読み取り機の信号によって生成されたアンテナ回路のところでの磁界の振幅である。
【0039】
最初に、アンテナ回路のQ値は、回路PerのQ値よりも遙かに大きいと仮定する。すると、受信機のQ値は次式で表される。
Q=Rr/(Lr*ω0)
ここで、
共振周波数では、ω=ω0、およびLr*Cr*ω02=1であり、
従って、Ve=−j*Qe=−Q*S*ω0*μ0*H
【0040】
アンテナ回路における有能電力は、次式のように示すことができる。
PR=Vr2/Rr=Vr2/(Q*Lr*ω0)
【0041】
従って、
Pr=Vr*(μ0*S*H/Lr)
を得る。
【0042】
上式の第2項は、実際は、アンテナIRの中の電流を表す。
【0043】
従って、比S/Lrは、磁界Hが一定であるときには、回復される電力Prの最大値を得るために最も重要である。nをループの数とすると、Sはnに比例し、Lrはn2に比例する。従って、有能電力Prは、ループの数に反比例する。最大電力Prが回復されるのは単一のループによる場合である。
【0044】
本発明は、この比S/Lrを最適にするアンテナ回路構成を提案するものである。
【0045】
図2は、誘導結合を有する共振アンテナを備えた典型的な受信機3の電気的等価回路を示す。図1に示す例のように、受信機3は、誘導アンテナ回路A3と、キャパシタC3および抵抗回路R3によってモデル化された回路とを備えている。これらキャパシタC3および抵抗回路R3は、誘導アンテナ回路A3に並列に接続されている。誘導アンテナ回路A3、キャパシタC3、および抵抗回路R3は、共振回路を形成し、この共振回路の共振周波数は、読み取り機によって送信される信号搬送波の周波数に近い。この共振周波数は、例えば、標準規格ISO15693、ISO18000−3、またはISO14443に従って、13.56MHzに等しくすることができる。
【0046】
誘導アンテナ回路A3は、導電ループL1およびL2を備えている。これらの導電ループは、電気的に並列に接続されている。導電ループL1およびL2は平行な表面上に配置され、その間の相互インダクタンスは実質的にゼロである。5%より小さな結合係数の導電ループは、それらの相互インダクタンスは実質的にゼロであると考えられる。この場合の結合係数は1%よりも小さければ有利である。
【0047】
平行な表面は、数学的には、任意の点において互いの距離が等しい表面であると表現することができる。従って、アンテナループが配置される表面は、3次元表面(例えば、円筒状、または球状の部分)であってもよい。議論を簡単にするために、以下に示す実施形態は、平面状の表面を備え、その上に導電ループが配置されているとする。導電ループL1およびL2は、平行平面の上に配置されているので、これらのループは、磁界に対する最大感度は同一の方向にある。
【0048】
同一のインダクタンス値Lを有するループL1およびL2に対しては、これらのループL1およびL2の間の相互インダクタンスがゼロである場合には、アンテナ回路A3の等価インダクタンスは、L/2に等しい。さらに、アンテナ回路A3は、ループL1およびL2に囲まれた2つの表面を備えており、読み取り機の磁界に感応する。
【0049】
従って、本発明による解決策によれば、1つの最適な比S/Lを求めることができ、この比S/Lによって、遠隔給電の距離を増加させることができる。または、所定の距離に対して遠隔給電を達成するのに必要な磁界を低減させることができる。これは、小さなサイズのアンテナに対しても可能である。これにより、より長い距離において最適なエネルギーの回復を行うことが可能になる。
【0050】
本発明は、アンテナ回路のQ値が30よりも大きな回路、またはアンテナ回路のQ値がアンテナに接続された回路PerのQ値と比べて、少なくとも5倍より大きな(少なくとも10倍より大きいことが望ましい)回路に適用すると有利である。高いQ値を有するアンテナ回路は、受信機の遠隔給電を可能にする距離間隔を増加させることができる。アンテナ回路は、給電されるべき負荷と共振回路のキャパシタとに並列に接続された誘導回路部分であると考えることができる。
【0051】
誘導アンテナ回路A3の小さな値のインダクタンスを有効に利用するためには、導電ループL1およびL2が等しい値のインダクタンスを有していると有利である。また、同一の断面積であると有利である。導電ループL1のインダクタンス値と導電ループL2のインダクタンス値との間の差は、例えば、10%以下、または、実に5%以下であるべきである。
【0052】
この例では、導電ループL1およびL2は、同一の支持体の平行な面の上に配置されている。支持体は基板であってよく、その上に、電子回路P3、または、電子チップまたは個別部品としての電子素子が配置され、これらは、R3でモデル化される抵抗とC3でモデル化される容量とで表される。電子回路P3は、給電されるべき電気負荷(例えば、電子素子のアセンブリ)、さらには整流器回路を含むことができる。整流器回路は、アンテナ回路A3によって回復された交流電圧を整流し、その整流した電圧を、電気負荷の端子に印加することができる。
【0053】
図3は、本発明における受信機3の第1の実施形態の断面図を示す。受信機3は、支持体30(例えば、クレジットカード様式の)を備えている。ループL1は、支持体30の上面31に設置され、ループL2は支持体30の下面32に設置されている。ループL1およびL2は、適切な接続構成によって並列に接続され、さらに電子回路P3に接続されている。
【0054】
図4および図5は、ループL1およびL2のそれぞれのパタンを上から見た図である。図6は、支持体30の上のループL1およびL2を重ね合わせてそれを上から見た図である。ループL1およびL2のパタンは、重ね合わされたクレネレーションとインターリーブしているクレネレーションとを含んでいる。このような構成によって、所与の寸法の支持体30に対して、各ループの磁界センシングエリアを最適にすることができる。
【0055】
この例では、電流が同方向に流れる部分と電流が逆方向に流れる部分とを、それ自体は当業者には公知の方法で、互いに反対側に設置することにより、ループL1とループL2との間の相互インダクタンスをゼロにすることができる。
【0056】
クレネレーションの寸法を小さく制限し、従って、各ループL1およびL2のインダクタンスを小さい値に制限し、それと共にループが占有するエリアを小さくするためには、使用する支持体30を比較的薄くして、例えば、厚さを1mmより薄くすると有利である。厚さに関しては、600μmよりも薄くすることが望ましく、また、400μmより薄くすれば更に望ましく、また200μmよりも薄く、さらに100μmより薄くすれば更に望ましい。厚さを薄くすることは、互いに反対側にあるクレネレーション状の部分の結合を増す上で有利であり、従って、クレネレーションの寸法を小さくすることができる。
【0057】
図7は、本発明における受信機3の第2の実施形態の断面を示す。受信機3は、支持体30(例えば、クレジットカード様式の)を備えている。ループL1は、支持体30の上面31に設置され、ループL2は支持体30の下面32に設置されている。ループL1およびL2は適切な接続構成(それぞれのパッドPL11、PL12、およびPL21、PL22を含む)によって電気的に並列に接続され、さらに電子回路P3に接続されている。
【0058】
図8および図9は、ループL1およびL2のそれぞれのパタンを上から見た図である。図8および図9はまた、ループL1およびL2を同時に流れる電流の方向を示している。ループL1およびL2は、それらの起電力が同じ方向になるように接続されている。この目的のために、パッドPL11はパッドPL22に接続されて、チップP3に対する同一の電力供給端子を形成している。パッドPL12は、パッドPL21に接続されて、電子回路P3に対する別の電力供給端子を形成している。図10は、支持体30の上にループL1およびL2を重ね合わせて、それを上から見た図を示す。図示のように、ループL1およびL2の同一の平面への投影は支持体30の周辺の近くで出会っており、これにより、支持体の面が最適に使用されている。
【0059】
ループL1およびL2は、実質的に同じ幾何形状(この例では正方形)であり、表面31および32の上で互いにシフトして配置されている。これについては、図10からよく理解することができる。
【0060】
この実施形態では、各ループは、各ループが設置されている面の断面積と比較して、大幅に小さい断面積を有している。しかしながら、各ループの導体の長さは比較的に短く、それにより比較的に低いインダクタンス値を得ることができる。そのため、受信機が最適な電力回復を行うことができる比S/Lを得ることができる。確かに、各ループL1またはL2は、従来技術における単一のループ(本発明におけるループのSおよびLは、従来技術における値の約半分の値である)に近い比S/Lを有している。並列にしたループL1およびL2の比S/Lは、各ループL1およびL2の比S/Lの合計であり、この比は、従来技術における単一のループの場合の比と比較して大幅に大きい値である。
【0061】
理論的な算出は、次に示す例で実行することができる。
−面積42cm2の従来技術における単一のループでは、インダクタンスは260nHとすることができる。この場合には、比S/Lは162cm2/μHに上る。
−面積22.5cm2のループL1またはL2では、インダクタンスは170nHになると考えられる。この場合には、このループの比S/Lは132cm2/μHに上る。並列にしたループL1およびL2では、比S/Lは264cm2/μHとなる。
【0062】
従って、この例における理論的な比S/Lの利得は、これらのループL1およびL2を使用すれば60%になる。
【0063】
シミュレーションおよび測定により、支持体30の周辺に沿った単一のループと第2の実施形態のとの比較を行った。その結果、上記のパラメータを使用した場合には、エネルギー回復における40%の利得を得ることができた。
【0064】
本発明は、小さな寸法の受信機(例えば、断面積が0.16m2より小さなループ、またはさらに54cm2より小さなループ)に対して特に適していることが分かる。ループの断面積とは、このループが囲んでいる面積のことを意味している。
【0065】
議論を単純にするために、本発明を、並列に接続された2つのループだけを備えている実施形態に基いて記述してきたが、本発明は、平行な表面の上に多くの数のループを備え、それらの相互インダクタンスが実質的にゼロであるような受信機に対しても適用することができることは言うまでもない。このような例を図11に示す。図11では、ループL1からループL4までのループは、並列に接続されて、重ね合わされている。このような変形態様にすると、重なり合いを増すことができて、インダクタンス値は小さくて済むという利点があると考えられる。ループL1からループL4までのループは、多層基板の内部に含めることができる。
【0066】
図12は、本発明における典型的な受信機構成の電気的回路図を示す。この例では、ループL1およびループL2は、それぞれ、集積回路Ci1およびCi2に接続されている(無論のことながら、ループL1およびループL2は、個別素子に接続されていてもよい)。集積回路Ci1およびCi2は、それぞれ、キャパシタC1およびC2と整流器D1およびD2とを備えている。整流器回路D1およびD2は、共通端子B1およびB2に接続されている。端子B1およびB2は、整流された信号によって給電されるべき負荷(この負荷は、例えば、受信機の全ての電子機能を含む)を接続することを意図している。
【0067】
従って、ループL1およびループL2はまた、整流器回路等の電子回路の後段に、並列にして配置することもできる。この場合、本発明によって得られる利得は変わらない。
【0068】
上記した受信機は、第1の平行表面の上に第1のループを備えている構成であるが、本発明は、第1の表面に対して平行ではない第2の表面の上にある第2のループを含み、その平行でない他の軸方向に関して高い感度を有する受信機の対しても、適用することができる。この場合には、第2のループは、第1のループと同様の構成を有する。すなわち、この同様の構成とは、電気的に並列に接続されているという点と、相互インダクタンスが実質的にゼロであるという点である。
【符号の説明】
【0069】
1 読み取り機
2 RFID受信機
3 受信機
30 支持体
31 支持体の上面
32 支持体の下面
【技術分野】
【0001】
本発明は、無線エネルギー伝送(典型的に、非接触インタフェースによるエネルギー伝送)に関し、特に、誘導RFID型の受信機の給電に関する。
【背景技術】
【0002】
無線伝送に対する応用の数は、ますます増加している。特に、誘導RFID型の通信システムが開発されてから、現在大きな盛り上がりを見せている。このようなシステムは、基地局(または読み取り機)、および自律型物体を備えている。この自律型物体は、識別番号を備え、遠隔で給電される受信機として動作する。この受信機は、一般に、製品に貼り付けられる場合にはタグと呼ばれ、また人の識別の目的が意図される場合には、非接触カードと呼ばれている。
【0003】
さらに、誘導RFID型の遠隔電力供給システム(例えば、皮下埋め込みまたは電子装置の再充電型電池に対する)が開発されている。
【0004】
上記のようなシステムでは、リンクは、読み取り機と1つ以上の受信機との間の無線周波数磁界によって確立される。この磁界は準静的である。読み取り機結合ユニットと受信機結合ユニットとは、導電回路であり、これは、ループ、巻線またはコイルを含み、これらはアンテナ回路を形成している。電子素子は、アンテナ回路に関連しており、それらの機能は、周波数同調、ダンピング、またはインピーダンス整合を実行することである。通常は、アンテナ回路と電子素子とを一緒にして、アンテナと呼んでいる。読み取り機のアンテナは、発振器に接続された直列または並列のRLC共振回路と見なすことができる。受信機のアンテナは、RLC並列共振回路と見なすことができる。
【0005】
図1は、読み取り機1(このアンテナは直列RLC回路であると考えている)および誘導型のRFID受信機2の通常の電気的回路図の例である。
【0006】
読み取り機側では、アンテナ回路Aeは、抵抗ReとキャパシタCeとに直列に接続された等価インダクタンスLeで表されている。アンテナ回路Aeは、読み取り機の電子回路Peeに接続されている。読み取り機の出力インピーダンスは、抵抗Rceでモデル化されており、アンテナ回路Aeおよび電源Geに直列に接続されている。読み取り機側を並列RLCでモデル化することもまた可能である。
【0007】
受信機側では、アンテナ回路Arは、等価インダクタンスLrで表されている。アンテナ回路Arは、電子回路Perに接続されている。電子回路は、キャパシタCrを含んでいる。抵抗Rrは、この電子回路の電力消費をモデル化しており、等価インダクタンスLrに並列に接続されている。この並列モデルは、大多数の受信機に対応している。この構成は、電流と電圧が使用されていること、および/または簡単であるという理由から、広く使用されている。
【0008】
誘導結合は、読み取り機と受信機との間におけるエネルギーの転送を相互インダクタンスによって誘起する。受信機が読み取り機の十分近傍に置かれたときには、読み取り機のアンテナは、受信機のアンテナと結合する。従って、交流の電圧または起電力が受信機の中に誘起される。この電圧は整流されて、通常、受信機の機能を給電するのに使用される。
【0009】
受信機から読み取り機へのデータの送信を可能にするために、受信機は、アンテナ回路の端子に現れるインピーダンスを変調する。このインピーダンスの変化は誘導結合を通して読み取り機によって検出される。誘導型のRFIDシステムの設計に対する勧告は、特に標準規格ISO15693、ISO18000−3、およびISO14443の中で規定されている。これらの標準規格は、送信周波数を周波数13.56MHzに固定している。ISO18000−2規格は、135kHzよりも低い周波数レベルでの送信周波数を固定している。実際に使用する場合には、読み取り機と受信機との間の通信距離は、比較的小さく、これらの周波数は、典型的には、約10cmから1mの間にある。
【0010】
通常のアンテナ回路は、支持体に設置された1つ以上のループを持つ導電トラックを備えている。このトラックは、一般的に、支持体の極力周辺近くに形成することにより、そのトラックをよぎる電磁力線を、最適化または最大にしている。トラックのループの数は、一般的に固定されていて、次に示す2つの制約条件を解決できるようにしている。これらの制約条件は、十分な量のエネルギーを回復できるようにすることと、データ通信に対する十分な通過帯域を得られるようにすることとである。実際には、ループの数を多くすれば、データ通信に対する通過帯域はそれだけ広くなる。またループの数を少なくすれば、電力伝送はそれだけ多くなる。従って、アンテナ回路の設計には折り合いが必要であり、その場合、受信機は、そのエネルギーの回復に対しては最適化されてはいない。
【0011】
特許文献1は、特に、電気的に並列に接続されて、平行した表面に配置された2つの導電ループを備えているアンテナ回路に関して記述している。これらの導電ループは、同一の幾何形状で重ね合わされていて、それらの相互インダクタンスは最大になっている。
【0012】
特許文献2は、非接触カードの形状をしたトランスポンダを記述している。記述されているアンテナ回路の中の1つは、2つの導電ループを備えており、それらは、電気的に並列に接続されているが、同心円状に巻かれている。これらの導電ループは、2つのループの長さを調和させるために、2つの平行した表面の上に分散されている。
【0013】
誘導型のRFIDシステムは、読み取り機と受信機との間の負荷の影響に関わる問題に敏感である。実際に、読み取り機が形成している共振器は、受信機の共振器と結合を起こす。この結合によって送信側にどのくらいかの量の不整合を引き起こす。実際の動作では、受信機が存在することにより、読み取り機の共振回路の上にはインピーダンスが生成される。このインピーダンスは、相互インダクタンスであり、次の式で示される。
【数1】
ここで、kはこれら2つのアンテナに対する結合係数であり、LeおよびLrは、それぞれ、読み取り機および受信機のアンテナ回路のインダクタンスである。この相互インダクタンスは、読み取り機の共振周波数のシフトを引き起こす。使用する共振器のQ値が大きくなると、この影響は大きくなる。
【0014】
実際の動作では、臨界結合位置と呼ばれる位置があり、これは、読み取り機の出力インピーダンスと、結合によって読み取り機のアンテナに戻って行く、受信機インピーダンスとの間のインピーダンス整合によって、読み取り機と受信機との間のエネルギーの転送が最適に行われる距離に対応している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかしながら、臨界結合距離は、多くの数の応用に対する要求条件に関しては、極めて短い距離である。また、その他の応用(皮下埋め込みに対する給電等)では、小さい振幅の磁界によって遠隔からの給電が達成できることが望ましいと考えられる。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明は、これらの欠点の1つ以上を解決することを目的としている。従って、本発明は、誘導結合を有する共振アンテナを備えた受信機に関するものであり、次に示す要素を備えている。
−誘導アンテナ回路と、
−誘導アンテナ回路によって給電される回路。この回路は、アンテナ回路に並列に接続されたキャパシタおよび抵抗でモデル化することができる。
【0017】
誘導アンテナ回路は、少なくとも2つの導電ループを備え、これらの導電ループは、電気的に並列に接続され、平行な表面の上に配置され、それらの相互インダクタンスは、実質的にゼロである。
【0018】
1つの実施形態においては、2つの導電ループは、実質的に等しい値のインダクタンスを有する。
【0019】
更なる実施形態においては、2つの導電ループは、同一の支持体の平行な表面上に配置されている。
【0020】
別の実施形態においては、支持体は、電子回路が設けられる基板であり、この電子回路は、誘導アンテナ回路によって給電される。
【0021】
さらに別の実施形態においては、電子回路は、電気負荷と整流器回路とを備えている。電気負荷は給電を受けるためのものであり、整流器回路は、誘導アンテナ回路の端子に接続されて、整流した電圧を前記電気負荷の端子に印加する。
【0022】
1つの実施形態においては、前記平行な表面は平面である。
【0023】
更なる実施形態においては、誘導アンテナ回路、キャパシタおよび抵抗を含むアセンブリの共振周波数は、実質的に13.56MHzに等しい。
【0024】
別の実施形態においては、2つの導電ループは、磁界に対する最大感度は同一の方向にある。
【0025】
更に別の実施形態においては、前記並行な表面の間の距離は、1mmよりも短い。
【0026】
1つの実施形態においては、前記2つの導電ループは、第1の平行な表面の上に配置された第1のループであり、誘導アンテナ回路はまた、少なくとも2つの第2の導電ループを備えている。この2つの第2の導電ループは、電気的に並列に接続され、実質的にゼロの相互インダクタンスを有し、第2の平行な表面の上に配置されている。この第2の平行な表面は、第1の表面に平行ではない。
【0027】
更なる実施形態においては、誘導アンテナ回路は30より大きなQ値を有する。
【0028】
別の実施形態においては、前記2つのループのそれぞれの断面積は、0.16m2よりも小さい。
【0029】
更に別の実施形態においては、前記2つのループは、インターリーブしたパタンで重なり合って延在している。
【0030】
1つの実施形態においては、前記ループは、それぞれ同様の形状の導電回路を形成し、前記導電回路は、前記平行な表面の上で互いにシフトして配置されている。
【0031】
更なる実施形態においては、前記2つの導電ループは、第1および第2の端子を通して並列に接続され、従って、2つの導電ループは、第1および第2の端子の間に、同一の起電力を誘起する。
【0032】
本発明の他の特徴および利点は、添付の図面を参照して、以下に示す記述から明らかになると思う。しかしこれらは全て、限定的なものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0033】
【特許文献1】米国特許第2010/0283698号明細書
【特許文献2】欧州特許第0541323号明細書
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】誘導型の読み取り機およびRFID受信機の等価回路を示す図である。
【図2】本発明における典型的な誘導型の受信機の等価回路を示す図である。
【図3】本発明の第1の実施形態における受信機の断面図である。
【図4】図3に示す受信機のアンテナ回路のループを上から見た図である。
【図5】図3に示す受信機のアンテナ回路のループを上から見た図である。
【図6】図3に示す受信機を上から見た図である。
【図7】本発明の第2の実施形態における受信機の断面図である。
【図8】図7に示す受信機のアンテナ回路のループを上から見た図である。
【図9】図7に示す受信機のアンテナ回路のループを上から見た図である。
【図10】図7に示す受信機を上から見た図である。
【図11】別の実施形態におけるアンテナ回路のループの重ね合わせを上から見た図である。
【図12】本発明における典型的な受信機構成の回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0035】
本発明は、誘導型の無線インタフェースによって給電される受信機を提案している。本発明は、受信機の誘導アンテナ回路の構成を提案している。これにより、遠隔からの電力供給に対する距離の拡大、または遠隔からの電力供給に対する距離を所定とした場合に放射磁界の振幅を限定することが可能になる。以下の記述で、受信機のアンテナ回路に対する寸法パラメータの最適設計のために発明者が確立した理論的手法の説明を行う。
【0036】
図1の例を参照すると、インダクタンスLrは、直列に接続された同心円状の導電ループの形で実現することができる。これらの導電ループは、受信機の支持体の周囲を取り囲んでいる。読み取り機から送信される信号搬送波の角周波数をωとすると、次式が得られる。
Vr=Rr*e/(Rr*(1−Lr*Cr*ω2)+j*Lr*ω)
【0037】
起電力eは、次式で表すことができる。
e=−j*ω0*S*μ0*H
【0038】
ここで、Sは、インダクタンスLrの導電ループのセットが取り囲む断面積であり、Hは、読み取り機の信号によって生成されたアンテナ回路のところでの磁界の振幅である。
【0039】
最初に、アンテナ回路のQ値は、回路PerのQ値よりも遙かに大きいと仮定する。すると、受信機のQ値は次式で表される。
Q=Rr/(Lr*ω0)
ここで、
共振周波数では、ω=ω0、およびLr*Cr*ω02=1であり、
従って、Ve=−j*Qe=−Q*S*ω0*μ0*H
【0040】
アンテナ回路における有能電力は、次式のように示すことができる。
PR=Vr2/Rr=Vr2/(Q*Lr*ω0)
【0041】
従って、
Pr=Vr*(μ0*S*H/Lr)
を得る。
【0042】
上式の第2項は、実際は、アンテナIRの中の電流を表す。
【0043】
従って、比S/Lrは、磁界Hが一定であるときには、回復される電力Prの最大値を得るために最も重要である。nをループの数とすると、Sはnに比例し、Lrはn2に比例する。従って、有能電力Prは、ループの数に反比例する。最大電力Prが回復されるのは単一のループによる場合である。
【0044】
本発明は、この比S/Lrを最適にするアンテナ回路構成を提案するものである。
【0045】
図2は、誘導結合を有する共振アンテナを備えた典型的な受信機3の電気的等価回路を示す。図1に示す例のように、受信機3は、誘導アンテナ回路A3と、キャパシタC3および抵抗回路R3によってモデル化された回路とを備えている。これらキャパシタC3および抵抗回路R3は、誘導アンテナ回路A3に並列に接続されている。誘導アンテナ回路A3、キャパシタC3、および抵抗回路R3は、共振回路を形成し、この共振回路の共振周波数は、読み取り機によって送信される信号搬送波の周波数に近い。この共振周波数は、例えば、標準規格ISO15693、ISO18000−3、またはISO14443に従って、13.56MHzに等しくすることができる。
【0046】
誘導アンテナ回路A3は、導電ループL1およびL2を備えている。これらの導電ループは、電気的に並列に接続されている。導電ループL1およびL2は平行な表面上に配置され、その間の相互インダクタンスは実質的にゼロである。5%より小さな結合係数の導電ループは、それらの相互インダクタンスは実質的にゼロであると考えられる。この場合の結合係数は1%よりも小さければ有利である。
【0047】
平行な表面は、数学的には、任意の点において互いの距離が等しい表面であると表現することができる。従って、アンテナループが配置される表面は、3次元表面(例えば、円筒状、または球状の部分)であってもよい。議論を簡単にするために、以下に示す実施形態は、平面状の表面を備え、その上に導電ループが配置されているとする。導電ループL1およびL2は、平行平面の上に配置されているので、これらのループは、磁界に対する最大感度は同一の方向にある。
【0048】
同一のインダクタンス値Lを有するループL1およびL2に対しては、これらのループL1およびL2の間の相互インダクタンスがゼロである場合には、アンテナ回路A3の等価インダクタンスは、L/2に等しい。さらに、アンテナ回路A3は、ループL1およびL2に囲まれた2つの表面を備えており、読み取り機の磁界に感応する。
【0049】
従って、本発明による解決策によれば、1つの最適な比S/Lを求めることができ、この比S/Lによって、遠隔給電の距離を増加させることができる。または、所定の距離に対して遠隔給電を達成するのに必要な磁界を低減させることができる。これは、小さなサイズのアンテナに対しても可能である。これにより、より長い距離において最適なエネルギーの回復を行うことが可能になる。
【0050】
本発明は、アンテナ回路のQ値が30よりも大きな回路、またはアンテナ回路のQ値がアンテナに接続された回路PerのQ値と比べて、少なくとも5倍より大きな(少なくとも10倍より大きいことが望ましい)回路に適用すると有利である。高いQ値を有するアンテナ回路は、受信機の遠隔給電を可能にする距離間隔を増加させることができる。アンテナ回路は、給電されるべき負荷と共振回路のキャパシタとに並列に接続された誘導回路部分であると考えることができる。
【0051】
誘導アンテナ回路A3の小さな値のインダクタンスを有効に利用するためには、導電ループL1およびL2が等しい値のインダクタンスを有していると有利である。また、同一の断面積であると有利である。導電ループL1のインダクタンス値と導電ループL2のインダクタンス値との間の差は、例えば、10%以下、または、実に5%以下であるべきである。
【0052】
この例では、導電ループL1およびL2は、同一の支持体の平行な面の上に配置されている。支持体は基板であってよく、その上に、電子回路P3、または、電子チップまたは個別部品としての電子素子が配置され、これらは、R3でモデル化される抵抗とC3でモデル化される容量とで表される。電子回路P3は、給電されるべき電気負荷(例えば、電子素子のアセンブリ)、さらには整流器回路を含むことができる。整流器回路は、アンテナ回路A3によって回復された交流電圧を整流し、その整流した電圧を、電気負荷の端子に印加することができる。
【0053】
図3は、本発明における受信機3の第1の実施形態の断面図を示す。受信機3は、支持体30(例えば、クレジットカード様式の)を備えている。ループL1は、支持体30の上面31に設置され、ループL2は支持体30の下面32に設置されている。ループL1およびL2は、適切な接続構成によって並列に接続され、さらに電子回路P3に接続されている。
【0054】
図4および図5は、ループL1およびL2のそれぞれのパタンを上から見た図である。図6は、支持体30の上のループL1およびL2を重ね合わせてそれを上から見た図である。ループL1およびL2のパタンは、重ね合わされたクレネレーションとインターリーブしているクレネレーションとを含んでいる。このような構成によって、所与の寸法の支持体30に対して、各ループの磁界センシングエリアを最適にすることができる。
【0055】
この例では、電流が同方向に流れる部分と電流が逆方向に流れる部分とを、それ自体は当業者には公知の方法で、互いに反対側に設置することにより、ループL1とループL2との間の相互インダクタンスをゼロにすることができる。
【0056】
クレネレーションの寸法を小さく制限し、従って、各ループL1およびL2のインダクタンスを小さい値に制限し、それと共にループが占有するエリアを小さくするためには、使用する支持体30を比較的薄くして、例えば、厚さを1mmより薄くすると有利である。厚さに関しては、600μmよりも薄くすることが望ましく、また、400μmより薄くすれば更に望ましく、また200μmよりも薄く、さらに100μmより薄くすれば更に望ましい。厚さを薄くすることは、互いに反対側にあるクレネレーション状の部分の結合を増す上で有利であり、従って、クレネレーションの寸法を小さくすることができる。
【0057】
図7は、本発明における受信機3の第2の実施形態の断面を示す。受信機3は、支持体30(例えば、クレジットカード様式の)を備えている。ループL1は、支持体30の上面31に設置され、ループL2は支持体30の下面32に設置されている。ループL1およびL2は適切な接続構成(それぞれのパッドPL11、PL12、およびPL21、PL22を含む)によって電気的に並列に接続され、さらに電子回路P3に接続されている。
【0058】
図8および図9は、ループL1およびL2のそれぞれのパタンを上から見た図である。図8および図9はまた、ループL1およびL2を同時に流れる電流の方向を示している。ループL1およびL2は、それらの起電力が同じ方向になるように接続されている。この目的のために、パッドPL11はパッドPL22に接続されて、チップP3に対する同一の電力供給端子を形成している。パッドPL12は、パッドPL21に接続されて、電子回路P3に対する別の電力供給端子を形成している。図10は、支持体30の上にループL1およびL2を重ね合わせて、それを上から見た図を示す。図示のように、ループL1およびL2の同一の平面への投影は支持体30の周辺の近くで出会っており、これにより、支持体の面が最適に使用されている。
【0059】
ループL1およびL2は、実質的に同じ幾何形状(この例では正方形)であり、表面31および32の上で互いにシフトして配置されている。これについては、図10からよく理解することができる。
【0060】
この実施形態では、各ループは、各ループが設置されている面の断面積と比較して、大幅に小さい断面積を有している。しかしながら、各ループの導体の長さは比較的に短く、それにより比較的に低いインダクタンス値を得ることができる。そのため、受信機が最適な電力回復を行うことができる比S/Lを得ることができる。確かに、各ループL1またはL2は、従来技術における単一のループ(本発明におけるループのSおよびLは、従来技術における値の約半分の値である)に近い比S/Lを有している。並列にしたループL1およびL2の比S/Lは、各ループL1およびL2の比S/Lの合計であり、この比は、従来技術における単一のループの場合の比と比較して大幅に大きい値である。
【0061】
理論的な算出は、次に示す例で実行することができる。
−面積42cm2の従来技術における単一のループでは、インダクタンスは260nHとすることができる。この場合には、比S/Lは162cm2/μHに上る。
−面積22.5cm2のループL1またはL2では、インダクタンスは170nHになると考えられる。この場合には、このループの比S/Lは132cm2/μHに上る。並列にしたループL1およびL2では、比S/Lは264cm2/μHとなる。
【0062】
従って、この例における理論的な比S/Lの利得は、これらのループL1およびL2を使用すれば60%になる。
【0063】
シミュレーションおよび測定により、支持体30の周辺に沿った単一のループと第2の実施形態のとの比較を行った。その結果、上記のパラメータを使用した場合には、エネルギー回復における40%の利得を得ることができた。
【0064】
本発明は、小さな寸法の受信機(例えば、断面積が0.16m2より小さなループ、またはさらに54cm2より小さなループ)に対して特に適していることが分かる。ループの断面積とは、このループが囲んでいる面積のことを意味している。
【0065】
議論を単純にするために、本発明を、並列に接続された2つのループだけを備えている実施形態に基いて記述してきたが、本発明は、平行な表面の上に多くの数のループを備え、それらの相互インダクタンスが実質的にゼロであるような受信機に対しても適用することができることは言うまでもない。このような例を図11に示す。図11では、ループL1からループL4までのループは、並列に接続されて、重ね合わされている。このような変形態様にすると、重なり合いを増すことができて、インダクタンス値は小さくて済むという利点があると考えられる。ループL1からループL4までのループは、多層基板の内部に含めることができる。
【0066】
図12は、本発明における典型的な受信機構成の電気的回路図を示す。この例では、ループL1およびループL2は、それぞれ、集積回路Ci1およびCi2に接続されている(無論のことながら、ループL1およびループL2は、個別素子に接続されていてもよい)。集積回路Ci1およびCi2は、それぞれ、キャパシタC1およびC2と整流器D1およびD2とを備えている。整流器回路D1およびD2は、共通端子B1およびB2に接続されている。端子B1およびB2は、整流された信号によって給電されるべき負荷(この負荷は、例えば、受信機の全ての電子機能を含む)を接続することを意図している。
【0067】
従って、ループL1およびループL2はまた、整流器回路等の電子回路の後段に、並列にして配置することもできる。この場合、本発明によって得られる利得は変わらない。
【0068】
上記した受信機は、第1の平行表面の上に第1のループを備えている構成であるが、本発明は、第1の表面に対して平行ではない第2の表面の上にある第2のループを含み、その平行でない他の軸方向に関して高い感度を有する受信機の対しても、適用することができる。この場合には、第2のループは、第1のループと同様の構成を有する。すなわち、この同様の構成とは、電気的に並列に接続されているという点と、相互インダクタンスが実質的にゼロであるという点である。
【符号の説明】
【0069】
1 読み取り機
2 RFID受信機
3 受信機
30 支持体
31 支持体の上面
32 支持体の下面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
誘導結合を有する共振アンテナを備えている受信機(3)であって
−誘導アンテナ回路(A3)と、
−前記誘導アンテナ回路によって給電され、前記アンテナ回路に並列に接続されたキャパシタ(C3)および抵抗(R3)でモデル化できる回路とを備え、
前記誘導アンテナ回路は、電気的に並列に接続され、平行な表面の上に配置されて、実質的にゼロの相互インダクタンスを有する、少なくとも2つの導電ループ(L1、L2)を備えていることを特徴とする受信機。
【請求項2】
前記2つの導電ループ(L1、L2)は、実質的に等しい値のインダクタンスを有することを特徴とする、請求項1に記載の受信機。
【請求項3】
前記2つの導電ループ(L1、L2)は、同一の支持体(30)の平行な表面(31、32)の上に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の受信機。
【請求項4】
前記支持体は、前記誘導アンテナ回路によって給電される電子回路(P3)が設置される基板であることを特徴とする、請求項3に記載の受信機。
【請求項5】
前記電子回路(Ci1)は、給電されるべき電気負荷と、前記誘導アンテナ回路の端子に接続され、整流した電圧を前記電気負荷の端子に印加する整流器回路(D1)とを備えることを特徴とする、請求項4に記載の受信機。
【請求項6】
前記平行な表面(31、32)は、平面であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項7】
前記誘導アンテナ回路、前記キャパシタ、および前記抵抗を含んだアセンブリの共振周波数は、実質的に13.56MHzに等しいことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項8】
前記2つの導電ループ(L1、L2)は、磁界に対する最大感度を同一の方向に有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項9】
前記平行な表面(31、32)の間の距離は、1mmよりも短いことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項10】
前記2つの導電ループは、第1の平行な表面の上に配置された第1のループであり、前記誘導アンテナ回路は、電気的に並列に接続されて実質的にゼロの相互インダクタンスを有する、第2の平行な表面の上に配置された、少なくとも2つの第2の導電ループを備え、前記第2の平行な表面は、前記第1の表面に対して平行でないことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項11】
前記誘導アンテナ回路(A3)は、30より大きい値のQ値を有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項12】
前記2つのループのそれぞれの断面積は、0.16m2よりも小さいことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項13】
前記2つのループ(L1、L2)は、インターリーブしたパタンで重なり合って延在していることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項14】
前記ループは、それぞれ、同様の形状の導電回路を形成し、前記導電回路は、前記平行な表面の上で、互いにシフトして配置されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項15】
前記2つの導電ループは、第1および第2の端子を通して並列に接続され、これにより前記2つの導電ループは前記第1および第2の端子の間に同一の起電力を誘起することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項1】
誘導結合を有する共振アンテナを備えている受信機(3)であって
−誘導アンテナ回路(A3)と、
−前記誘導アンテナ回路によって給電され、前記アンテナ回路に並列に接続されたキャパシタ(C3)および抵抗(R3)でモデル化できる回路とを備え、
前記誘導アンテナ回路は、電気的に並列に接続され、平行な表面の上に配置されて、実質的にゼロの相互インダクタンスを有する、少なくとも2つの導電ループ(L1、L2)を備えていることを特徴とする受信機。
【請求項2】
前記2つの導電ループ(L1、L2)は、実質的に等しい値のインダクタンスを有することを特徴とする、請求項1に記載の受信機。
【請求項3】
前記2つの導電ループ(L1、L2)は、同一の支持体(30)の平行な表面(31、32)の上に配置されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の受信機。
【請求項4】
前記支持体は、前記誘導アンテナ回路によって給電される電子回路(P3)が設置される基板であることを特徴とする、請求項3に記載の受信機。
【請求項5】
前記電子回路(Ci1)は、給電されるべき電気負荷と、前記誘導アンテナ回路の端子に接続され、整流した電圧を前記電気負荷の端子に印加する整流器回路(D1)とを備えることを特徴とする、請求項4に記載の受信機。
【請求項6】
前記平行な表面(31、32)は、平面であることを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項7】
前記誘導アンテナ回路、前記キャパシタ、および前記抵抗を含んだアセンブリの共振周波数は、実質的に13.56MHzに等しいことを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項8】
前記2つの導電ループ(L1、L2)は、磁界に対する最大感度を同一の方向に有することを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項9】
前記平行な表面(31、32)の間の距離は、1mmよりも短いことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項10】
前記2つの導電ループは、第1の平行な表面の上に配置された第1のループであり、前記誘導アンテナ回路は、電気的に並列に接続されて実質的にゼロの相互インダクタンスを有する、第2の平行な表面の上に配置された、少なくとも2つの第2の導電ループを備え、前記第2の平行な表面は、前記第1の表面に対して平行でないことを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項11】
前記誘導アンテナ回路(A3)は、30より大きい値のQ値を有することを特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項12】
前記2つのループのそれぞれの断面積は、0.16m2よりも小さいことを特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項13】
前記2つのループ(L1、L2)は、インターリーブしたパタンで重なり合って延在していることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項14】
前記ループは、それぞれ、同様の形状の導電回路を形成し、前記導電回路は、前記平行な表面の上で、互いにシフトして配置されていることを特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の受信機。
【請求項15】
前記2つの導電ループは、第1および第2の端子を通して並列に接続され、これにより前記2つの導電ループは前記第1および第2の端子の間に同一の起電力を誘起することを特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の受信機。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−231663(P2012−231663A)
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−93453(P2012−93453)
【出願日】平成24年4月17日(2012.4.17)
【出願人】(510132347)コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ (51)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−93453(P2012−93453)
【出願日】平成24年4月17日(2012.4.17)
【出願人】(510132347)コミサリア ア レネルジ アトミク エ オウ エネルジ アルタナティヴ (51)
【Fターム(参考)】
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