説明

誘導性負荷駆動装置

【課題】高速スイッチングに起因するラジオノイズの低減を図ることの可能な誘導性負荷駆動装置を提供する。
【解決手段】電源と誘導性負荷の一端との間に介挿された第1のスイッチング素子と、前記誘導性負荷の他端とアースとの間に介挿された第2のスイッチング素子と、前記第1及び第2のスイッチング素子の両方がオフの時に前記誘導性負荷の他端から出力される逆起電流を前記電源に回生させる逆起電流回生回路と、を備えた誘導性負荷駆動装置において、前記誘導性負荷の両端或いは片端に接続されたノイズ吸収回路を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘導性負荷駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、誘導性負荷の一端と外部供給電源との間に介挿された第1のスイッチング素子と、誘導性負荷の他端とアースとの間に介挿された第2のスイッチング素子と、第1のスイッチング素子がオフ及び第2のスイッチング素子がオンの時に誘導性負荷に生じる逆起電流をアースに還流させる還流回路と、第1及び第2のスイッチング素子の両方がオフの時に誘導性負荷に生じる逆起電流を外部供給電源に還元(回生)させる逆起電流還元回路とを備えた誘導性負荷駆動装置が開示されている。
【0003】
このような構成の誘導性負荷駆動装置では、第2のスイッチング素子をオン状態に維持しながら第1のスイッチング素子のオン/オフ期間の比率(デューティ比)を制御することにより、負荷電流の立上がり特性を制御することができる。また、第1のスイッチング素子をオフ状態に維持しながら第2のスイッチング素子のデューティ比を制御することにより、負荷電流の立下がり特性を制御しながら誘導性負荷に生じる逆起電流を外部供給電源に回生させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−85046号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来技術では、第1及び第2のスイッチング素子を高速でオンオフ制御することに起因してラジオノイズが発生する虞があり、他の電子装置の動作に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、高速スイッチングに起因するラジオノイズの低減を図ることの可能な誘導性負荷駆動装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明では、誘導性負荷駆動装置に係る第1の解決手段として、電源と誘導性負荷の一端との間に介挿された第1のスイッチング素子と、前記誘導性負荷の他端とアースとの間に介挿された第2のスイッチング素子と、前記第1及び第2のスイッチング素子の両方がオフの時に前記誘導性負荷の他端から出力される逆起電流を前記電源に回生させる逆起電流回生回路と、を備えた誘導性負荷駆動装置において、前記誘導性負荷の両端或いは片端に接続されたノイズ吸収回路を備える、という手段を採用する。
【0008】
また、本発明では、誘導性負荷駆動装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、前記ノイズ吸収回路は、前記誘導性負荷の両端或いは片端とアースとの間に接続されたコンデンサである、という手段を採用する。
【0009】
また、本発明では、誘導性負荷駆動装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、前記逆起電流回生回路は、アノード端子が前記誘導性負荷の他端に接続され、カソード端子が前記電源に接続されたダイオードと、前記ダイオードに並列接続されたコンデンサとを備える、という手段を採用する。
【0010】
また、本発明では、誘導性負荷駆動装置に係る第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれかの解決手段において、前記第1のスイッチング素子がオフ及び前記第2のスイッチング素子がオンの時に前記誘導性負荷の他端から出力される逆起電流を、前記アースを介して前記誘導性負荷の一端へ還流させる還流回路を備える、という手段を採用する。
【0011】
また、本発明では、誘導性負荷駆動装置に係る第5の解決手段として、上記第4の解決手段において、前記還流回路は、前記誘導性負荷の一端と前記アースとの間に介挿され、前記第1のスイッチング素子に対してオンオフ状態が反転するように制御される第3のスイッチング素子を備える、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、誘導性負荷の両端或いは片端に接続されたノイズ吸収回路を備えるので、第1及び第2のスイッチング素子の高速スイッチングに起因して発生するラジオノイズの低減を図ることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本実施形態に係る誘導性負荷駆動装置1の概略構成図である。
【図2】誘導性負荷駆動装置1の動作を表すタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1は、本実施形態に係る誘導性負荷駆動装置1の概略構成図である。この図1に示すように、誘導性負荷駆動装置1は、制御装置2による制御の下、ソレノイドコイル或いはモータコイル等の誘導性負荷3に駆動電流を供給するものであり、誘導性負荷3の一端に接続された第1の負荷接続端子11と、誘導性負荷3の他端に接続された第2の負荷接続端子12と、制御装置2に接続された第1の信号入力端子13、第2の信号入力端子14及び第3の信号入力端子15と、第1のスイッチング素子16と、第2のスイッチング素子17と、還流回路18と、逆起電流回生回路19と、第1のコンデンサ20と、第2のコンデンサ21とを備えている。
【0015】
第1のスイッチング素子16は、例えば30Vの電源電圧を出力する電源PLと第1の負荷接続端子11(つまり誘導性負荷3の一端)との間に介挿されたn型MOS−FETであり、ドレイン端子が電源PLに接続され、ソース端子が第1の負荷接続端子11に接続され、ゲート端子が第1の信号入力端子13に接続されている。この第1のスイッチング素子16は、制御装置2から第1の信号入力端子13を介してゲート端子に入力されるPWM信号(パルス幅変調された信号)S1に応じてオン/オフ状態が切替わる。
【0016】
第2のスイッチング素子17は、第2の負荷接続端子12(つまり誘導性負荷3の他端)とアースとの間に介挿されたn型MOS−FETであり、ドレイン端子が第2の負荷接続端子12に接続され、ソース端子がアースに接続され、ゲート端子が第2の信号入力端子14に接続されている。この第2のスイッチング素子17は、制御装置2から第2の信号入力端子14を介してゲート端子に入力されるPWM信号S2に応じてオン/オフ状態が切替わる。
【0017】
還流回路18は、第1のスイッチング素子16がオフ及び第2のスイッチング素子17がオンの時に誘導性負荷3の他端から出力される逆起電流を、アースを介して誘導性負荷3の一端へ還流させるものであり、第1の負荷接続端子11(誘導性負荷3の一端)とアースとの間に介挿され、第1のスイッチング素子16に対してオン/オフ状態が反転するように制御される第3のスイッチング素子18aを備えている。
【0018】
この第3のスイッチング素子18aは、ドレイン端子が第1の負荷接続端子11に接続され、ソース端子がアースに接続され、ゲート端子が第3の信号入力端子15に接続されたn型MOS−FETである。この第3のスイッチング素子18aは、制御装置2から第3の信号入力端子15を介してゲート端子に入力されるPWM信号S3(PWM信号S1に対してレベルが反転する信号)に応じてオン/オフ状態が切替わる。
【0019】
逆起電流回生回路19は、第1及び第2のスイッチング素子16、17の両方がオフの時に誘導性負荷3の他端から出力される逆起電流を電源PLに回生させるものであり、アノード端子が第2の負荷接続端子12に接続され、カソード端子が電源PLに接続された回生ダイオード19aと、この回生ダイオード19aに並列接続された第3のコンデンサ19bとを備えている。
【0020】
第1のコンデンサ20は、第1の負荷接続端子11(誘導性負荷3の一端)とアースとの間に接続されている。第2のコンデンサ21は、第2の負荷接続端子12(誘導性負荷3の他端)とアースとの間に接続されている。これら第1のコンデンサ20及び第2のコンデンサ21は、本発明におけるノイズ吸収回路として機能する。
【0021】
次に、上記のように構成された本実施形態に係る誘導負荷駆動装置1の動作について図2を参照しながら詳細に説明する。
図2は、第1のスイッチング素子16、第2のスイッチング素子17、第3のスイッチング素子18aのオン/オフ状態と、誘導性負荷3に流れる駆動電流との時間的な対応関係を示すタイミングチャートである。
【0022】
この図2に示すように、時刻t1に制御装置2から誘導負荷駆動装置1へPWM信号S1〜S3の出力が開始される。ここで、時刻t1から時刻t2までの期間において、第2のスイッチング素子17がオン状態に維持されながら、第1のスイッチング素子16及び第3のスイッチング素子18aが、所定のデューティ比でオン/オフ制御される。なお、第3のスイッチング素子18aのオン/オフ状態は、第1のスイッチング素子16に対して反転していることに注意されたい。
【0023】
このような時刻t1から時刻t2までの期間(第2のスイッチング素子17は常時オン)において、第1のスイッチング素子16がオン及び第3のスイッチング素子18aがオフの時、誘導性負荷3の一端は第1のスイッチング素子16を介して電源PLに接続され、誘導性負荷3の他端は第2のスイッチング素子17を介してアースに接続される。この時、誘導性負荷3に電源電圧(約30V)が印加されるため、駆動電流は一定の傾きで増加する。なお、この時の駆動電流は、電源PL→第1のスイッチング素子16→誘導性負荷3→第2のスイッチング素子17→アース、というルートで流れる。
【0024】
一方、時刻t1から時刻t2までの期間において、第1のスイッチング素子16がオフ及び第3のスイッチング素子18aがオンの時、誘導性負荷3の一端は第3のスイッチング素子18aを介してアースに接続される(誘導性負荷3の他端は第2のスイッチング素子17を介してアースに接続されたまま)。この時、誘導性負荷3に電源電圧が印加されないので、誘導性負荷3に逆起電圧が発生し、誘導性負荷3の他端から逆起電流が出力される。
【0025】
この逆起電流は、第2のスイッチング素子17を介してアースに流入し、さらに第3のスイッチング素子18aを介して誘導性負荷3の一端に還流する。つまり、駆動電流は、誘導性負荷3→第2のスイッチング素子17→アース→第3のスイッチング素子18a→誘導性負荷3、というルートで流れる。これにより、第1のスイッチング素子16がオフとなっても、誘導性負荷3の駆動電流は一定に保持される(厳密には減少するが無視できる)。
【0026】
このように、時刻t1から時刻t2までの期間において、第2のスイッチング素子17をオン状態に維持しながら、第1のスイッチング素子16及び第3のスイッチング素子18aをPWM制御することにより、駆動電流の立上がり特性を制御することができる。
【0027】
続いて、時刻t2から時刻t3までの期間において、第1のスイッチング素子16がオフ状態(第3のスイッチング素子18aはオン状態)に維持されながら、第2のスイッチング素子17が所定のデューティ比でオン/オフ制御される。
【0028】
このような時刻t2から時刻t3までの期間(第1のスイッチング素子16は常時オフ、第3のスイッチング素子18aは常時オン)において、第2のスイッチング素子17がオフの時、誘導性負荷3の一端は第3のスイッチング素子18aを介してアースに接続され、誘導性負荷3の他端は逆起電流回生回路19を介して電源PLに接続される。この時、誘導性負荷3に電源電圧が印加されないので、誘導性負荷3に逆起電圧が発生する。
【0029】
この逆起電圧が電源電圧より大きくなると、回生ダイオード19aを介して誘導性負荷3の他端から電源PLに逆起電流が回生される。つまり、駆動電流は、アース→第3のスイッチング素子18a→誘導性負荷3→回生ダイオード19a→電源PL、というルートで流れる。これにより、誘導性負荷3の駆動電流は一定の傾きで減少する。
【0030】
一方、時刻t2から時刻t3までの期間において、第2のスイッチング素子17がオンの時、誘導性負荷3の他端は第2のスイッチング素子17を介してアースに接続される(誘導性負荷3の一端は第3のスイッチング素子18aを介してアースに接続されたまま)。この時、誘導性負荷3に電源電圧が印加されないため、誘導性負荷3に逆起電圧が発生し、誘導性負荷3の他端から逆起電流が第2のスイッチング素子17を介してアースに流入し、さらに第3のスイッチング素子18aを介して誘導性負荷3の一端に還流する。これにより、駆動電流は一定に保持される(厳密には減少するが無視できる)。
【0031】
このように、時刻t2から時刻t3までの期間において、第1のスイッチング素子16をオフ状態及び第3のスイッチング素子18aをオン状態に維持しながら、第2のスイッチング素子17をPWM制御することにより、駆動電流の立下がり特性を制御することができる。
【0032】
以上が誘導負荷駆動装置1の動作であるが、上記のように第1のスイッチング素子16、第2のスイッチング素子17及び第3のスイッチング素子18aを高速でオン/オフ制御することに起因してラジオノイズが発生する虞がある。しかしながら、本実施形態では、誘導性負荷3の両端に第1のコンデンサ20及び第2のコンデンサ21を設けたことにより、駆動電流に含まれるノイズ成分(高周波成分)を第1のコンデンサ20及び第2のコンデンサ21を介してアースに逃がすことができる。
【0033】
つまり、本実施形態によれば、第1のスイッチング素子16、第2のスイッチング素子17及び第3のスイッチング素子18aの高速スイッチングに起因して発生するラジオノイズの低減を図ることが可能となる。
また、逆起電流回生回路19において、回生ダイオード19aに第3のコンデンサ19bを並列接続することにより、スイッチング時の電圧リンギングを緩和できると共に周波数特性を向上でき、さらに、逆起電流の速度調整によりノイズ発生を緩和できるという効果を得られる。なお、第3のコンデンサ19bの容量を大きく設定すると、回生ダイオード19aの逆回復時間が長くなり、逆にノイズが大きくなるため注意が必要である。
【0034】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されず、以下のような変形例が挙げられる。
(1)上記実施形態では、誘導性負荷3の両端にノイズ吸収回路としての第1のコンデンサ20及び第2のコンデンサ21を設けた場合を例示したが、誘導性負荷3の片端(一端或いは他端)にコンデンサを設ける構成としても良い。また、ノイズ吸収回路はコンデンサのみに限らず、例えば抵抗とコンデンサの直列回路によってノイズ吸収回路を構成しても良い。さらに、第3のコンデンサ19bは必ずしも設ける必要はない。
【0035】
(2)上記実施形態では、第3のスイッチング素子18aを備える還流回路18を例示したが、第1のスイッチング素子16がオフ及び第2のスイッチング素子17がオンの時に誘導性負荷3の他端から出力される逆起電流を、アースを介して誘導性負荷3の一端へ還流させることができれば、還流回路18の構成はこれに限定されない。例えば、特開2008−85046号公報に記載されているような還流回路を用いても良い。
【0036】
(3)上記実施形態では、回生ダイオード19aを備える逆起電流回生回路19を例示したが、第1及び第2のスイッチング素子16、17の両方がオフの時に誘導性負荷3の他端から出力される逆起電流を電源PLに回生させることができれば、逆起電流回生回路19の構成はこれに限定されない。例えば、特開2008−85046号公報に記載されているような逆起電流還元回路(逆起電流回生回路と同義)を用いても良い。
【符号の説明】
【0037】
1・誘導性負荷駆動装置、2・制御装置、3・誘導性負荷、16・第1のスイッチング素子、17・第2のスイッチング素子、18・還流回路、18a・第3のスイッチング素子、19・逆起電流回生回路、19a・回生ダイオード、19b・第3のコンデンサ、20・第1のコンデンサ、21・第2のコンデンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電源と誘導性負荷の一端との間に介挿された第1のスイッチング素子と、
前記誘導性負荷の他端とアースとの間に介挿された第2のスイッチング素子と、
前記第1及び第2のスイッチング素子の両方がオフの時に前記誘導性負荷の他端から出力される逆起電流を前記電源に回生させる逆起電流回生回路と、
を備えた誘導性負荷駆動装置において、
前記誘導性負荷の両端或いは片端に接続されたノイズ吸収回路を備えることを特徴とする誘導性負荷駆動装置。
【請求項2】
前記ノイズ吸収回路は、前記誘導性負荷の両端或いは片端とアースとの間に接続されたコンデンサであることを特徴とする請求項1に記載の誘導性負荷駆動装置。
【請求項3】
前記逆起電流回生回路は、
アノード端子が前記誘導性負荷の他端に接続され、カソード端子が前記電源に接続されたダイオードと、
前記ダイオードに並列接続されたコンデンサと、
を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の誘導性負荷駆動装置。
【請求項4】
前記第1のスイッチング素子がオフ及び前記第2のスイッチング素子がオンの時に前記誘導性負荷の他端から出力される逆起電流を、前記アースを介して前記誘導性負荷の一端へ還流させる還流回路を備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の誘導性負荷駆動装置。
【請求項5】
前記還流回路は、前記誘導性負荷の一端と前記アースとの間に介挿され、前記第1のスイッチング素子に対してオンオフ状態が反転するように制御される第3のスイッチング素子を備えることを特徴とする請求項4に記載の誘導性負荷駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−89674(P2013−89674A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−226823(P2011−226823)
【出願日】平成23年10月14日(2011.10.14)
【出願人】(000141901)株式会社ケーヒン (1,140)
【Fターム(参考)】