説明

誘導性間葉系幹細胞およびその作製方法

【課題】ヒトの胚またはES細胞を利用することなく、間葉系幹細胞と同様の自己複製能および分化能を有する細胞を提供すること。
【解決手段】特定の塩基配列を有する遺伝子の少なくとも1つを細胞に導入する工程を包含する方法によって、誘導性間葉系幹細胞を作製する方法、並びに作製するためのキット。前記遺伝子の発現を検出することによって、誘導性間葉系幹細胞を検出する方法、並びに検出するためのキット、検出するためのマイクロアレイ、並びに、間葉系幹細胞の分化能を制御する因子をスクリーニングする方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト細胞から誘導した誘導性間葉系幹細胞、およびその作製方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
間葉系幹細胞(以下、適宜「MSC」と称する。)は、哺乳類の骨髄等の組織中に存在する体性幹細胞の一つであり、脂肪細胞、軟骨細胞、骨細胞に分化する多分化能、及び自己増殖能を有する幹細胞として知られている。MSCは、その分化多能性の故に、多くの組織についての再生医療のための移植材料として注目されている。すなわち、MSCを用いて、従来の治療方法では再生しなかった、疾病や障害により失った組織を再生し、機能を回復させる「細胞移植による再生医療」である。具体的には、例えば、下肢虚血(ビュルガー病)患者に対する骨髄間葉系幹細胞の移植、歯周病患部への骨髄間葉系幹細胞の移植、変形性関節症患者に対する骨髄間葉系幹細胞の移植、脳梗塞、心筋梗塞への間葉系幹細胞の移植等の治療が開始または計画されている。
【0003】
このように、MSCを再生医療に利用するためには、まず、幹細胞を生体組織から採取し、それを未分化のままで増殖させ、さらに増殖させた未分化幹細胞を所望の細胞へ分化誘導し、再生治療用の組織を調製することが必要となる。
【0004】
本発明者らはこれまでに、MSCの採取に際して、採取母体に安全で、且つ採取が容易な分離採取を行うために、口腔組織からMSCを分離採取する方法を報告している(特許文献1参照)。また、基底膜細胞外基質の存在下において、または線維芽細胞増殖因子(FGF)等の含有培地でMSCを培養することによって、MSCを著しく速く増殖させ、かつ、その分化能を維持できることを見出して、従来の培養方法と比較して顕著に多くのMSCを得る培養方法を報告している(特許文献2参照)。
【0005】
さらに、本発明者らは間葉系幹細胞を用いた再生医療を実用化するために、培養した細胞から間葉系幹細胞を識別し、当該間葉系幹細胞を分離する方法を開発した。より具体的には、本発明者らは、形態的に類似しているためにその識別が困難な間葉系幹細胞と線維芽細胞とを、間葉系幹細胞検出用遺伝子マーカーおよび/または間葉系幹細胞検出用タンパク質マーカーを用いて効果的に識別し、分離する方法を開発した(特許文献3参照)。また本発明者らは、分子マーカーを用いて、未分化の間葉系幹細胞と、線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、および脂肪細胞等の他の結合組織系の細胞とを精度よく識別し、未分化の間葉系幹細胞を分離する方法を開発した(特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2003−52365号公報(公開日:平成15年2月25日)
【特許文献2】特開2003−52360号公報(公開日:平成15年2月25日)
【特許文献3】特開2008−092919号公報(公開日:平成20年4月24日)
【特許文献4】国際公開WO2006/106823(国際公開日:2006(平成18)年10月12日)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
骨髄、脂肪または滑膜に由来するネイティブなMSCは、多くの国民(約3000万人)が罹患する不治の疾患(骨軟骨疾患、心筋梗塞、脳梗塞、歯周病など)に対して新しい治療法を提供し得る。MSCを骨、軟骨または脂肪へ分化させることは比較的容易であるが、心筋、肝臓、神経などへの分化効率は低い。また、自家のMSCは個体差が大きく、MSCの数は加齢とともに著しく減少する。このように、培養が困難であるMSCから再生医療に必要な数の細胞を調製する際にネイティブなMSCを出発材料とすることには限界がある。さらに、肝炎、心臓疾患などに罹患した重症患者からの骨髄または脂肪組織の分離は困難である。
【0008】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、ヒトの胚またはES細胞を利用することなく、間葉系幹細胞と同様の自己複製能および分化能を有する細胞を作製する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
近年、体細胞の核を初期化して胚性幹細胞(ES細胞)様の誘導多能性幹細胞(iPS細胞)を取得する技術が開発された。iPS細胞は、ヒト受精卵を用いないので倫理的な問題がなく、臨床応用が大いに期待されている。なお、iPS細胞の作製に必要とされる因子は、ES細胞に特異的に発現する遺伝子を指標にスクリーニングされた。また、このような遺伝子は、ESTデータベースを利用したコンピューター解析およびノザンブロット解析に基づいて見出されている。
【0010】
これまでに、DNAマイクロアレイ分析を用いて、MSCと線維芽細胞または分化細胞との間で遺伝子発現プロファイルが比較されている。しかし、これまでになされた報告は具体的な結論を導いておらず、MSCを人為的に調製する技術を示唆すらしていない。
【0011】
本発明者らは、独自の観点に基づいて、DNAマイクロアレイおよびリアルタイムPCR分析を用いて、ヒトMSCに特徴的な遺伝子を多数同定し、中でも、9つの遺伝子がMSCの自己複製能および分化能の維持に重要であることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、誘導性間葉系幹細胞を作製する方法を提供する。本発明にかかる作製方法は、表2に記載の遺伝子の少なくとも1つを細胞に導入する工程を包含することを特徴としており、間葉系幹細胞選択的な無血清培地を用いて培養する工程をさらに包含することが好ましい。
【0013】
後述する実施例に示すように、表2に記載の遺伝子は、MSCにおいてその発現が亢進しており、表2に記載の遺伝子に対するsiRNAを用いることによってMSCの自己複製能や分化能が抑制される。すなわち、表2に記載の遺伝子を細胞に導入することによって、誘導性間葉系幹細胞を作製することができる。なお、表2に記載の遺伝子は、表2に記載のアクセッション番号を参照することによって、当業者は本発明に必要な遺伝子配列を入手し得る。なお、表2にはヒト遺伝子のみを示しているが、対応する動物遺伝子を使用してもよい。
【0014】
また、本発明は、誘導性間葉系幹細胞を作製するためのキットを提供する。本発明にかかるキットは、(a)表2に記載のアクセッション番号のいずれか1つに示される塩基配列またはその相補配列を有するポリヌクレオチド;(b)上記(a)のフラグメントであるポリヌクレオチド;および(c)上記(a)または(b)のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、からなる群より選択されるポリヌクレオチドの1つ以上を備えていることを特徴としている。
【0015】
本発明は、誘導性間葉系幹細胞を作製するさらなる方法を提供する。本発明にかかる作製方法は、細胞を脱分化条件下にて長期間培養する工程、および培養後の細胞を、間葉系幹細胞選択的な無血清培地を用いて人工マトリックス上でさらに培養する工程を包含することを特徴としている。
【0016】
上述した誘導性間葉系幹細胞を作製する方法は、誘導性間葉系幹細胞の誘導に好適な因子を培地に添加する工程をさらに包含することが好ましい。上記因子は、表5に記載の因子であっても、後述するスクリーニング方法によって得られた、細胞を間葉系幹細胞様の細胞に誘導する因子であってもよい。
【0017】
本発明は、誘導性間葉系幹細胞を検出する方法を提供する。本発明にかかる方法は、目的の細胞において、表2に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現を検出する工程を包含することを特徴としている。
【0018】
表2に記載の遺伝子は、MSCにおいて発現が亢進している転写因子の遺伝子である。よって、上記遺伝子は、誘導性間葉系幹細胞の検出マーカーとして利用可能である。また、上記遺伝子またはそのフラグメントは、誘導性間葉系幹細胞を検出するためのプローブやマイクロアレイに利用可能である。
【0019】
すなわち、本発明は、誘導性間葉系幹細胞を検出するためのキットを提供する。本発明にかかるキットは、下記(a)〜(c)からなる群より選択されるポリヌクレオチドの1つ以上を備えていることを特徴としている:(a)表2に記載のアクセッション番号のいずれか1つに示される塩基配列またはその相補配列を有するポリヌクレオチド;(b)上記(a)のフラグメントであるポリヌクレオチド;および、(c)上記(a)または(b)のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
【0020】
また、本発明は、誘導性間葉系幹細胞を検出するためのマイクロアレイを提供する。本発明にかかるマイクロアレイは、下記(a)〜(c)からなる群より選択されるポリヌクレオチドの1つ以上が固定化されていることを特徴としている:(a)表2に記載のアクセッション番号のいずれか1つに示される塩基配列またはその相補配列を有するポリヌクレオチド;(b)上記(a)のフラグメントであるポリヌクレオチド;および、(c)上記(a)または(b)のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
【0021】
本発明は、誘導性間葉系幹細胞を検出するためのさらなるキットを提供する。本発明にかかるキットは、表2に記載の遺伝子にコードされるポリペプチドと特異的に結合する抗体を備えていることを特徴としている。
【0022】
上述したように、表2に記載の遺伝子は、MSCにおいてその発現が亢進している。よって、上記遺伝子にコードされるタンパク質(ポリペプチド)に対する抗体は、誘導性間葉系幹細胞を首尾よく検出し得る。
【0023】
本発明は、細胞を誘導性間葉系幹細胞に誘導する因子をスクリーニングする方法を提供する。本発明にかかるスクリーニング方法は、候補物質の存在下にて培養した細胞において、表2に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現を検出する工程を包含することを特徴としている。
【0024】
上述したように、表2に記載の遺伝子は、MSCにおいてその発現が亢進している。よって、上記遺伝子は、候補物質の存在下にて培養した細胞が誘導性間葉系幹細胞に誘導されたか否かを知る指標となり得る。
【0025】
本発明は、間葉系幹細胞の自己複製能を制御する因子をスクリーニングする方法を提供する。本発明にかかるスクリーニング方法は、候補物質の存在下にて培養した目的の細胞において、表2に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現を検出する工程を包含することを特徴としている。
【0026】
後述する実施例に示すように、表2に記載の遺伝子に対するsiRNAを用いることによって間葉系幹細胞の自己複製能を抑制することができる。よって、正常な間葉系幹細胞様の細胞を用いれば、間葉系幹細胞の自己複製能を抑制する因子をスクリーニングし得、また、自己複製能を抑制させた間葉系幹細胞を用いれば、抑制された自己複製能を補完し得る因子(すなわち、自己複製能を活性化する因子)をスクリーニングし得る。
【0027】
本発明は、間葉系幹細胞の分化能を制御する因子をスクリーニングする方法を提供する。本発明にかかるスクリーニング方法は、候補物質の存在下にて培養した目的の細胞において、表2に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現を検出する工程を包含することを特徴としている。
【0028】
後述する実施例にて示すように、表2に記載の遺伝子に対するsiRNAを用いることによって間葉系幹細胞の分化能を抑制することができる。よって、正常な間葉系幹細胞様の細胞を用いれば、間葉系幹細胞の分化能を抑制する因子をスクリーニングし得、また、分化能を抑制させた間葉系幹細胞を用いれば、抑制された分化能を補完し得る因子(すなわち、分化能を活性化する因子)をスクリーニングし得る。
【発明の効果】
【0029】
本発明を用いれば、ヒトの胚またはES細胞を利用することなく、間葉系幹細胞と同様の自己複製能および分化能を有する細胞(誘導性間葉系幹細胞)を簡便に作製することができる。また、本発明を用いれば、誘導性間葉系幹細胞を検出することができる。さらに、本発明を用いれば、細胞を誘導性間葉系幹細胞に誘導する因子、間葉系幹細胞の自己複製能を制御する因子、および間葉系幹細胞の分化能を制御する因子をスクリーニングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】MSCに特徴的な遺伝子についての、DNAマイクロアレイ分析およびリアルタイムRT−PCR分析の結果の比較を示す図である。
【図2】骨分化誘導培地(OP)、軟骨分化誘導培地(CP)、脂肪分化誘導培地(AP)、または分化因子を含まない培地(M)中での培養24時間後の、MSCに特徴的な遺伝子の発現低下を示す図である。図中、MはMSC、OPは骨前駆細胞、CPは軟骨前駆細胞、APは脂肪前駆細胞、Oは骨芽細胞、Cは軟骨細胞、Aは脂肪細胞を示す。
【図3】骨髄MSC、滑膜線維芽細胞および皮膚線維芽細胞の増殖に対するGATA6 siRNAの影響を調べた結果を示す図である。
【図4】骨髄MSCの骨分化中におけるアルカリホスファターゼ活性の上昇に対するMSCに特徴的な転写因子のsiRNAの影響を調べた結果を示す図である。
【図5】骨髄MSCの脂肪分化中におけるGPDH活性の上昇に対するMSCに特徴的な転写因子のsiRNAが与える影響を調べた結果を示す図である。
【図6】抗GATA6抗体および抗LIF抗体を用いた、成熟マウスの上腕骨内MSCに対する免疫組織化学の結果を示す図である。
【図7】非接着性の骨髄細胞内には、存在するMSCに特徴的な遺伝子転写物が欠損していることを調べた結果を示す図である。
【図8】MSCに特徴的な分子に対する抗体の種々の組合せを用いた、成熟マウスの上腕骨の骨髄内MSC様細胞の二重染色の結果を示す図である。
【図9】上腕骨の軟骨膜に存在するMSCに特徴的な分子の発現を示す図である。
【図10】上腕骨の骨膜に存在するMSCに特徴的な分子の発現を示す図である。
【図11】ヨード酢酸の投与による関節症の発症およびMSCのSTEMNESSに関わる遺伝子の誘導を示す図である。
【図12】ヒト歯肉に由来する線維芽細胞から作製された誘導性間葉系幹細胞を示す図である。
【図13】ヒト歯髄に由来する線維芽細胞から作製された誘導性間葉系幹細胞を示す図である。
【図14】ヒト歯髄に由来する線維芽細胞から誘導した誘導性間葉系幹細胞の骨分化能を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
幹細胞は、自己複製能(self-renewal)および多分化能(multi-potency)という2つの際立った特徴(STEMNESS)を有している。近年、胚性幹細胞(ES細胞)のSTEMNESSを制御する、あるいはSTEMNESS状態へのリプログラミングを誘導する転写因子が同定されて、これに基づいてiPS細胞が作製された。本発明者らは、間葉系幹細胞(MSC)のSTEMNESSを制御する因子を同定し、本発明を完成するに至った。
【0032】
本発明者らによって同定された、MSCのSTEMNESSを制御する因子は、表2に示される9種類の転写因子である。これらの転写因子は、MSCにおいて選択的に発現しており、これらの転写因子に対するsiRNAは、MSCの自己複製能および多分化能を低下させた。また、MSC独自の遺伝子発現パターンを維持するためにも、これら9種類の転写因子が必須であることを見出した。
【0033】
なお、本明細書中で使用される場合、用語「ポリペプチド」は、「ペプチド」または「タンパク質」と交換可能に使用される。本発明にかかるポリペプチドはまた、天然供給源より単離されても、組換え生成されても、化学合成されてもよい。また、本明細書中で使用される場合、用語「ポリヌクレオチド」は、「遺伝子」、「核酸」または「核酸分子」と交換可能に使用され、ヌクレオチドの重合体が意図される。また、「遺伝子」には、DNAのみならず、RNA(例えばmRNA)をも含む意味である。本明細書中で使用される場合、用語「塩基配列」は、「遺伝子配列」、「核酸配列」または「ヌクレオチド配列」と交換可能に使用され、デオキシリボヌクレオチド(A、G、CおよびTと省略される)の配列として示される。
【0034】
〔1.誘導性間葉系幹細胞およびその作製方法〕
本発明は、誘導性間葉系幹細胞を作製する方法を提供する。本発明にかかる作製方法は、上述した9種類の転写因子の遺伝子を細胞に導入する工程を包含する方法である。上記転写因子に関する情報は、表2に示されており、表2に記載のアクセッション番号を参照することによって、当業者は本発明に必要な遺伝子配列を入手し得る。導入される遺伝子は、表2に記載のいずれか1つであってもよいが、3つ以上であることが好ましく、5つ以下であることがより好ましい。
【0035】
本明細書中にて使用される場合、用語「誘導性間葉系幹細胞」は、間葉系幹細胞のSTEMNESS状態へのリプログラミングを誘導する因子を用いて、細胞から誘導された細胞が意図され、Induced progenitor of mesenchyme (iPM)細胞ともいう。本発明者らによって見出された、間葉系幹細胞のSTEMNESSを制御する因子は、間葉系幹細胞のSTEMNESS状態へのリプログラミングを誘導する因子でもあり得る。
【0036】
間葉系幹細胞への誘導に用いられる細胞としては、特に限定されず、ES細胞および体性幹細胞を含む、あらゆる細胞が利用可能である。例えば、線維芽細胞、細網細胞、脂肪細胞、マクロファージ(組織球または大食細胞)、肥満細胞、形質細胞、リンパ球、上皮細胞、軟骨細胞、骨芽細胞、骨細胞が、本発明に利用可能な細胞として挙げられ、特に、線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞および脂肪細胞が好ましい。また、生体から調製された初代培養細胞でも、樹立された細胞株であってもよく、神経細胞、肝細胞等の組織由来の細胞であってもよい。
【0037】
iPM細胞は、以下の点でネイティブなMSCよりも有利である:(1)増殖能および分化能が非常に高い;(2)種々の疾患(心筋梗塞、脳梗塞、肝炎、肺繊維症など)に適用可能である;(3)重症患者であっても口腔粘膜細胞などから調製可能である;(4)患者の細胞を用いるので、間葉系の罹患組織を試験管内で再構築することが容易である。
【0038】
iPS細胞と同様に、iPM細胞は、以下の点でES細胞よりも有利である:(1)自家細胞から作製し得るので免疫拒絶反応が回避可能である;(2)ヒト胚を利用しないので倫理的問題を有していない。
【0039】
また、iPM細胞は、以下の点でiPS細胞よりも有利である:(1)癌化しにくい(リプログラミングによる初期化過程は癌化過程と一部共通するメカニズムを使用する。また、初期化は不完全になりやすい。);(2)細胞作製の効率が高い;(3)薬剤法での誘導が可能である;(4)分化効率が高く、最終目的細胞の調製が容易かつ単純である。
【0040】
さらに、本発明者らによって得られた知見に基づけば、iPM細胞の作製は、iPS細胞の作製と比較して以下の点で有利である:(1)癌遺伝子を必須としない;(2)目的遺伝子の転写を直接促進する;(3)染色体構造改変が最少である;(4)誘導に要する期間が短い;(5)誘導効率が高い;(6)細胞集団が不均質になりにくい。
【0041】
例えば、上記転写因子の遺伝子を線維芽細胞に導入する(例えばTet-on Gene Expression System; Clontechを用いる)。複数の遺伝子を導入する際には、別々に導入してもよいが、当該分野で公知の手法(例えばGateway(登録商標)マルチサイトシステム(Invitrogen))を用いて同時に導入することが好ましい。遺伝子導入された細胞は、例えば薬剤耐性マーカーを用いて導入を確認する。導入後の培養は、iPMの増殖を選択的に促進する条件下で行われることが好ましい。これにより、線維芽細胞の増殖が抑制される。なお、間葉系幹細胞選択的な無血清培地(例えばSTK2; Two-Cells)を用いることが好ましいが、これに限定されない。また、人工マトリックス上で培養することが好ましいが、これに限定されない。培養後の細胞コロニーを回収し、MSCマーカーが誘導されていること、および線維芽細胞のマーカーが抑制されていることを、確認する。用いるMSCマーカーとしては、上記転写因子が好ましいが、これらに限定されず、例えば、特許文献3に記載の遺伝子であってもよい。このように取得されたiPM細胞は自己複製能および分化能を獲得しているが、分化用の各種誘導培地を用いて目的の細胞に分化することを確認することが好ましい。また、遺伝子ではなく目的タンパク質を細胞に導入する方法を用いてもよい。
【0042】
本発明にかかる作製方法は、誘導性間葉系幹細胞の誘導に好適な因子を培地に添加する工程をさらに包含することが好ましい。上記因子は、培養培地に添加される種々の増殖因子等(例えば表5に記載の因子)であっても、後述するスクリーニング方法によって得られる因子(細胞を間葉系幹細胞様の細胞に誘導する因子)であってもよい。
【0043】
また、本発明は、上記作製方法に利用可能なキットを提供する。本発明にかかるキットは、(a)表2に記載のアクセッション番号のいずれか1つに示される塩基配列またはその相補配列を有するポリヌクレオチド;(b)上記(a)のフラグメントであるポリヌクレオチド;および、(c)上記(a)または(b)のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、からなる群より選択されるポリヌクレオチドの1つ以上を備えていることを特徴としている。このように特定されたポリヌクレオチドを備えているキットを、当該分野における周知の遺伝子導入技術と組み合わせて用いることにより、当業者は、上記ポリヌクレオチドを標的細胞の遺伝子に導入して誘導性間葉系幹細胞を作製することができる。
【0044】
本発明はまた、誘導性間葉系幹細胞を作製するさらなる方法を提供する。本発明にかかる作製方法は、細胞を脱分化条件下にて長期間培養する工程、および培養後の細胞を、間葉系幹細胞選択的な無血清培地を用いて人工マトリックス上でさらに培養する工程を包含する方法である。本明細書中にて使用される場合、「脱分化条件」は、培養系にて分化細胞を脱分化させるための条件であり、具体的には、分化の維持に必要な細胞外マトリックス、増殖因子、サイトカインなどを、培地および培養皿から除去した条件下にて細胞を培養することが意図される。なお、除去されるべき細胞外マトリックス、増殖因子、サイトカインなどは、用いられる細胞の系統ごとによってその組合せが異なる。したがって、成分が未知である血清を使用しないことが望ましく、無血清培地に生存因子および増殖因子を添加し、かつ分化維持に関わる因子を除くべきである。脱分化した細胞を幹細胞へと積極的に変化させるには、MSCのSTEMNESSを促進する因子(増殖因子、サイトカイン、細胞外マトリックスなど)を、上記の無血清培地に添加する。細胞を脱分化条件下にて培養する期間は細胞や薬剤によって異なり、1週間〜3週間が好ましいが、1週間以内であってもよい。
【0045】
脱分化条件下にて長期間培養された細胞(例えば、体細胞)はMSC様細胞に誘導される。このような細胞を間葉系幹細胞の増殖を選択的に促進する条件下で培養することによって、誘導性間葉系幹細胞を首尾よく作製し得る。間葉系幹細胞の増殖を選択的に促進する条件については上述したとおりであり、体細胞(例えば線維芽細胞)の増殖を抑制するために、間葉系幹細胞選択的な無血清培地を用い、人工マトリックス上で培養することが好ましい。
【0046】
本発明にかかる作製方法もまた、誘導性間葉系幹細胞の誘導に好適な因子を培地に添加する工程をさらに包含することが好ましい。上記因子は、培養培地に添加される種々の増殖因子等(例えば表5に記載の因子)であっても、後述するスクリーニング方法によって得られる因子(細胞を間葉系幹細胞様の細胞に誘導する因子)であってもよい。
【0047】
後述する実施例にて示すように、本発明者らは誘導性間葉系幹細胞を作製した。この作製された細胞が確かに誘導性間葉系幹細胞であることを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。
【0048】
誘導性間葉系幹細胞を用いれば、疾患解析系(疾患モデル)を開発することができる。例えば、遺伝性疾患の患者の線維芽細胞から作製した誘導性間葉系幹細胞を、試験管内で分化を誘導することによって、疾患発症メカニズムの解析および治療薬のスクリーニングに利用することができる。間葉系幹細胞に関するこれまでの知見に基づけば、骨軟骨筋肉系疾患、心臓病、腎臓疾患、血管病、肝臓・肺繊維症、神経系疾患などの疾患を対象とし得る。
【0049】
〔2.誘導性間葉系幹細胞の検出〕
本発明は、誘導性間葉系幹細胞を検出する方法を提供する。本発明にかかる検出方法は、上述した9種類の転写因子の遺伝子の少なくとも1つの発現を検出する工程を包含する方法である。上述したように、上記転写因子に関する情報は、表2に示されており、表2に記載のアクセッション番号を参照することによって、当業者は本発明に必要な遺伝子配列を入手し得る。導入される遺伝子は、表2に記載のいずれか1つであってもよいが、3つ以上であることが好ましく、全てであることが最も好ましい。上記遺伝子は、誘導性間葉系幹細胞の検出マーカーとして利用可能である。また、上記遺伝子またはそのフラグメントは、誘導性間葉系幹細胞を検出するためのプローブやマイクロアレイに利用可能である。
【0050】
本発明にかかる誘導性間葉系幹細胞の検出方法(以下、「本発明の検出方法」という)は、表2に記載の遺伝子の少なくとも1つを検出マーカーとして用い、被検細胞において、当該検出マーカーの発現を検出する工程を含む方法といえる。本発明の検出方法は、上記の工程が含まれていればよく、その他の工程、条件、使用材料、使用機器等の具体的な構成については特に限定されない。
【0051】
本発明の検出方法において使用する「被検細胞」は、本発明の検出方法が適用され得る細胞であれば特に限定されない。例えば、誘導性間葉系幹細胞が含まれている、または誘導性間葉系幹細胞が含まれている可能性がある、体細胞由来の細胞集団が挙げられる。
【0052】
表2に記載の遺伝子は、MSCにおいて選択的に発現が亢進されている遺伝子である。すなわち、当該遺伝子は、体細胞(例えば、線維芽細胞(FB)、骨芽細胞(OS)、軟骨細胞(CH)および脂肪細胞(AD))におけるその発現量が相対的に低く、かつMSCにおけるその発現量が相対的に高い遺伝子であるといえる。
【0053】
したがって、誘導性間葉系幹細胞を作製すべく誘導処理を行った体細胞由来の細胞集団において、表2に記載された遺伝子の発現を検出し、誘導処理の前後でその発現量が増加したことが検出されれば、当該被検細胞は誘導性間葉系幹細胞を含む細胞であるということが判断できる。よって、表2に記載された遺伝子の発現量の変動を確認するのみでは、被検細胞が誘導性間葉系幹細胞であるか否かを識別することはできないが、少なくとも被検細胞が誘導性間葉系幹細胞を含んでいることを判断することができる。つまり、表2に記載された遺伝子は誘導性間葉系幹細胞を検出するための検出マーカーとして利用され得るということである。
【0054】
すなわち、表2に記載された遺伝子は、FB、OS、CH、ADなどの細胞以外にMSCが含まれている細胞集団であっても、誘導処理によって誘導性間葉系幹細胞が誘導されたか否かを識別する際に用いられ得る。
【0055】
本発明の検出方法においては、表2に記載されている遺伝子のうち1つ以上を検出することにより本発明の目的を達成し得るが、2つ以上の遺伝子を適宜組み合わせて検出することが好ましい。2つ以上の遺伝子を検出することによって、検出精度を向上させることができる。
【0056】
なお、上記転写因子を有する細胞の局在については、従来公知の免疫組織化学の手法、例えばデュアル免疫蛍光ラベリング等の蛍光抗体法や酵素抗体法を用いて確認することができる。
【0057】
上述したように、表2に記載された遺伝子は、誘導性間葉系幹細胞の検出マーカーとして利用可能である。上記検出マーカーの遺伝子の発現を検出する際には、遺伝子の発現の検出に用いられる従来公知の方法を好適に用いることができる。例えば、上記検出マーカーの遺伝子の発現を検出するために、ノーザンブロッティング法を用いることができる。また、上記検出マーカーの遺伝子の発現を検出するために、表2に記載された遺伝子の全長またはその断片(フラグメント)とストリンジェントな条件下でハイブリダイズし、上記遺伝子全長またはその一部を検出し得る塩基配列を有する検出用プローブを用いることができる。
【0058】
上記検出用プローブを用いる誘導性間葉系幹細胞における遺伝子の発現検出は、公知の方法を用いて適宜実施することができる。例えば、本発明における検出マーカーの遺伝子の公知の塩基配列から、DNAプローブとして適当な長さのDNAプローブを作製し、蛍光標識等の標識を適宜付与しておき、これを被検細胞とハイブリダイズさせることにより、誘導性間葉系幹細胞の検出を行い得る。また上記検出用プローブとしては、本発明における検出マーカーの遺伝子のアンチセンス鎖の全長配列または部分配列からなる検出用のプローブも採用し得る。
【0059】
すなわち、本発明は、上記検出方法に利用可能なキットを提供する。本発明にかかる検出用キットは、(a)表2に記載のアクセッション番号のいずれか1つに示される塩基配列またはその相補配列を有するポリヌクレオチド;(b)上記(a)のフラグメントであるポリヌクレオチド;および、(c)上記(a)または(b)のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、からなる群より選択されるポリヌクレオチドの1つ以上を備えていることを特徴としている。
【0060】
上記検出用プローブの作製に際して、検出マーカーの遺伝子とストリンジェントな条件下でハイブリダイズする条件としては、例えば、42℃でのハイブリダイゼーション、および1×SSC(0.15M NaCl、0.015M クエン酸ナトリウム)、0.1%のSDS(Sodium dodecyl sulfate)を含む緩衝液による42℃での洗浄処理を挙げることができ、より好適には、65℃でのハイブリダイゼーション、および0.1×SSC、0.1%のSDSを含む緩衝液による65℃での洗浄処理を挙げることができる。
【0061】
なお、ハイブリダイゼーションのストリンジェンシーに影響を与える要素としては、上記温度条件以外に種々の要素があり、当業者であれば種々の要素を組み合わせて、上記例示したハイブリダイゼーションのストリンジェンシーと同等のストリンジェンシーを実現することが可能である。
【0062】
また、被検細胞における検出マーカーの遺伝子の発現を検出するに際しては、被検細胞の遺伝子を増幅するために、定量的または半定量的PCRを用いることができる。上記定量的または半定量的PCRとしては、例えば、RT−PCR(逆転写PCR)を用いることができる。上記定量的または半定量的PCRを行うに際しては、本発明における検出マーカーの遺伝子を増幅するためのセンスプライマーおよびアンチセンスプライマーからなる1対のプライマーセットを用いる。
【0063】
また、本発明の検出方法は、インベーダ(Invader(登録商標))法を利用して簡便に行うこともできる。例えば、上述の検出マーカーの遺伝子に特異的にハイブリダイズする塩基配列と酵素切断部位とを有するシグナルプローブを設計し、被検細胞から抽出したトータルRNA(cDNAでも構わない)、インベーダオリゴ(Invader(登録商標) Oligo)、クリベース酵素(Cleavase(登録商標) Enzyme)、およびフレットプローブ(FRET Probe)とともに所定の温度、所定の時間(例えば、63℃、2時間等)反応させることにより行うことができる。なお、具体的な実験手法や条件については、下記参考文献を参照して適宜行うことができる(参考文献:(i) T. J. Griffin et al., Proc Natl Acad Sci U S A 96, 6301-6 (1999) 、(ii) M. W. Kaiser et al., J Biol Chem 274, 21387-94 (1999) 、(iii) V. Lyamichev et al., Nat Biotechnol 17, 292-6 (1999) 、(iv) R. W. Kwiatkowski et al., Mol Diagn 4, 353-64 (1999) 、(v) J. G. Hall et al., Proc Natl Acad Sci U S A 97, 8272-7 (2000) 、(vi) M. Nagano et al., J Lipid Res 43, 1011-8 (2002) 等参照)。
【0064】
上記のように、インベーダ法を利用すれば、遺伝子増幅の必要がない場合もあり、迅速かつ低コストで行うことができる。なお、市販のインベーダ法キットを利用すれば、より一層簡便に本発明を実施できる。
【0065】
また、in situハイブリダイゼーションを用いて、本発明の検出方法を行うこともできる。例えば、上述の検出マーカーまたはその部分配列を標識したものを検出用プローブとして用い、スライドグラス上の被検細胞の標本に直接分子雑種を形成させて、その部分を検出することにより簡易に行うことができる。具体的には、スライドグラス上に被検細胞の薄切片(パラフィン切片、凍結切片など)を調製し、これに標識した検出用プローブをハイブリダイズさせ、ノーザンハイブリダイゼーション法と同じように、検出用プローブを洗い落とし、写真用エマルジョンを塗布し、露光する。現像後、銀粒子の分布から、ハイブリダイズした場所を特定する。より具体的な実験手法や条件については、下記参考文献を用いて適宜行うことができる(参考文献:(i)「in situハイブリダイゼーション法」、(1995年7月)、古庄敏行、井村裕夫監修、金原出版(株)発行、932頁〜937頁、(ii)「in situハイブリダイゼーションによる遺伝子発現の解析」、「遺伝子工学実験」、(1991年5月)、野村慎太郎著、(社)日本アイソトープ協会発行、221頁〜232頁等参照)。
【0066】
in situハイブリダイゼーション法には、ラジオアイソトープ(主として35S)標識したDNAを検出用プローブとして、その座位をオートラジオグラフィーで検出する方法と、標識された検出用プローブの蛍光シグナルを蛍光顕微鏡下で検出する方法があるが、いずれの方法を用いてもよい。
【0067】
他方、上記検出用キット以外によっても、本発明の検出方法を実行し得る。例えば、誘導性間葉系幹細胞の検出用マイクロアレイを用いて検出マーカーの遺伝子の発現を検出することができる。
【0068】
すなわち、本発明は、上記検出方法に利用可能なマイクロアレイを提供する。本発明にかかる検出用マイクロアレイは、(a)表2に記載のアクセッション番号のいずれか1つに示される塩基配列またはその相補配列を有するポリヌクレオチド;(b)上記(a)のフラグメントであるポリヌクレオチド;および、(c)上記(a)または(b)のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド、からなる群より選択されるポリヌクレオチドの1つ以上が固定化されていることを特徴としている。
【0069】
上記検出マーカーの遺伝子の部分塩基配列からなるポリヌクレオチドのサイズは、当該ポリヌクレオチドも用いてマイクロアレイを構成した場合に、目的とする検出マーカーの遺伝子が検出し得るサイズであれば特に限定されない。
【0070】
上記マイクロアレイとしては、例えば、米国Affymetrix社のDNAマイクロアレイやスタンフォード(Stanford)型のDNAマイクロアレイ等、その他半導体製造で用いられる微細加工技術を用いてシリカ基板上に直接オリゴヌクレオチドを化学合成するDNAマイクロアレイを含む従来公知のあらゆるタイプのマイクロアレイを好適に用いることができ、その具体的な大きさ、形状、システム等については特に限定されない。上記検出用マイクロアレイは、本発明の検出方法の実施に利用されるものであり、本発明が意図する範囲に含まれる。
【0071】
上述した検出用マイクロアレイは、少なくとも一つの遺伝子を検出することができるように構成されていれば、本発明の目的を達成し得るが、多数の検出マーカーの遺伝子群の発現を網羅的かつ体系的に解析できるとの理由により、2つ以上の遺伝子、より好ましくはできるだけ多数の遺伝子を検出し得るように構成されていることが好ましい。誘導性間葉系幹細胞であるか否かを非常に簡便かつ精度よく識別できるようになるからである。
【0072】
また、誘導性間葉系幹細胞の検出用マイクロアレイには、表2に記載された誘導性間葉系幹細胞のマーカーのみならず、その他の分子マーカーが固定化されていてもよい。例えば、特許文献3に開示されているMSC検出用遺伝子分子マーカー、「Ishii,M., Koike,C., Igarashi,A., Yamanaka,K., Pan,H., Higashi,Y., Kawaguchi,H., Sugiyama,M., Kamata,N., Iwata,T., Matsubara,T., Nakamura,K., Kurihara, H., Tsuji,K., and Kato,Y. Molecular Markers Distinguish Bone Marrow Mesenchymal Stem Cells from Fibroblasts. Biochem Biophys Res Commun.332(1),297-303,2005.」に開示されている分子マーカー、等が挙げられる。
【0073】
上述したように、表2に記載された遺伝子は、誘導性間葉系幹細胞の検出マーカーとして利用可能である。このことは、当該遺伝子がコードするタンパク質の発現を指標にして検出マーカーの遺伝子の発現を検出し得ることを、本明細書を読んだ当業者は容易に理解する。すなわち、表2に記載された遺伝子にコードされるポリペプチドもまた、本発明における検出マーカーであり得る。この場合、目的のタンパク質を、例えば組換えによって生成し、このタンパク質と特異的に結合する抗体を作製し、当該抗体を用いて、後述する公知の方法に従って当該タンパク質の発現量を検出すればよい。
【0074】
すなわち、本発明は、上記検出方法に利用可能なさらなるキットを提供する。本発明にかかる検出用キットは、表2に記載の遺伝子にコードされるポリペプチドと特異的に結合する抗体を備えていることを特徴としている。なお、上記抗体は、上記ポリペプチドによって惹起される抗体ともいえる。
【0075】
上述したように、表2に記載の遺伝子は、MSCにおいてその発現が亢進している。よって、上記遺伝子にコードされるポリペプチドに対する抗体は、誘導性間葉系幹細胞を首尾よく検出し得る。
【0076】
上記抗体は、ポリクローナル抗体であってもよいし、モノクローナル抗体であってもよい。上記抗体の作製は、例えば、表2に記載された遺伝子がコードするポリペプチドの全長またはその部分断片を抗原として、従来公知の常法により作製することができる。上記ポリペプチドの部分断片は、免疫原性を有するものであればよい。
【0077】
例えば、モノクローナル抗体を生産する方法としては、特に限定されず、例えば、抗原でマウスを免疫した後、そのマウス脾臓リンパ球とマウス由来のミエローマ細胞とを融合させてなる抗体産生ハイブリドーマにより、モノクローナル抗体を得ればよい。ハイブリドーマの生産方法は、従来公知の方法、例えば、ハイブリドーマ法(Kohler, G. and Milstein, C., Nature 256, 495-497(1975))、トリオーマ法、ヒトB−細胞ハイブリドーマ法(Kozbor, Immunology Today 4, 72(1983))、およびEBV−ハイブリドーマ法(Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy, Alan R Liss, Inc., 77-96(1985))等を利用することが可能であり、特に限定されない。
【0078】
また、上記抗原としては、ポリペプチドであれば特に限定されないが、抗原決定基とする物質をキャリアタンパク質に結合してなる抗原タンパク質が用いられてもよい。具体的には、上記抗原がハプテンであれば、抗体の産生等を誘導する能力をもたないため、抗体を産生することができないが、抗原を異種由来のタンパク質などの生体高分子からなる担体と共有結合させて抗原タンパク質を得て、これで免疫すれば、抗体産生を誘導することができる。上記担体としては、特に限定されず、オボアルブミン、γグロブリン、ヘモシアニン等、この分野で従来公知の各種タンパク質を好適に用いることができる。また、モノクローナル抗体は遺伝子組換え技術等によっても生産できる。
【0079】
また、ポリクローナル抗体を生産する方法としては、実験動物に抗原を接種・感作させ、その体液から抗体成分を精製して取得する方法を挙げることができる。なお、免疫させる動物としては、マウス、ラット、ウサギ、サル、ウマ等の従来公知の実験動物を用いることができ、特に限定されない。また、抗原を接種し感作させる場合、その間隔や量についても常法にしたがって適宜行うことができる。
【0080】
さらに、本発明の抗体を用いて、被検細胞における検出マーカーのタンパク質の発現を検出するには、公知の抗体を用いた免疫学的測定法を用いて実施することができる。上記免疫学的測定法としては、例えばRIA法、ELISA法、蛍光抗体法等の公知の免疫学的測定法を挙げることができる。また、上述した以外にも、例えば、ウェスタンブロッティング法、酵素免疫測定法、抗体による凝集や沈降や溶血反応を観察する方法、組織免疫染色や細胞免疫染色などの形態学的検出法も必要に応じて利用することができる。
【0081】
〔3.細胞を誘導性間葉系幹細胞に誘導する因子のスクリーニング〕
本発明は、細胞を誘導性間葉系幹細胞に誘導する因子をスクリーニングする方法を提供する。上述したように、表2に記載の遺伝子は、本発明者らによって見出されたMSCのSTEMNESSを制御する因子であり、MSCにおいて選択的に発現が亢進されている遺伝子である。よって、候補物質の存在下にて培養した細胞における表2に記載の遺伝子の発現量が、候補物質の非存在下と比較して増加した場合、またはMSCにおける発現量に匹敵する場合、その候補因子は、細胞を誘導性間葉系幹細胞に誘導する因子であり得る。
【0082】
すなわち、本発明にかかるスクリーニング方法は、候補物質の存在下にて培養した細胞において、表2に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現を検出する工程を包含することを特徴としている。一実施形態において、本発明にかかるスクリーニング方法は、上記細胞にて検出した遺伝子の、候補物質の非存在下にて培養した細胞における発現を検出する工程をさらに包含することが好ましい。別の実施形態において、本発明にかかるスクリーニング方法は、上記細胞にて検出した遺伝子の、MSCにおける発現を検出する工程をさらに包含することが好ましい。なお、各遺伝子のMSCにおける発現はデータとして予め蓄積されていてもよい。上述したように、表2に記載の遺伝子は、MSCにおいてその発現が亢進している。よって、上記遺伝子は、候補物質の存在下にて培養した細胞が誘導性間葉系幹細胞に誘導されたか否かを知る指標となり得る。
【0083】
本方法に適用される候補物質は、核酸、ペプチド、タンパク質、有機化合物、無機化合物のいずれであってもよい。核酸を候補物質として存在させる場合には、用いる細胞に導入し、導入前後における、表2に記載の遺伝子の発現量の変動を確認すればよい。また、導入後の細胞とMSCとの間で表2に記載の遺伝子の発現量を比較すればよい。ペプチドや化合物を候補物質として存在させる場合には、候補因子を培地に添加し、添加の前後における、表2に記載の遺伝子の発現量の変動を確認すればよい。また、添加後の細胞とMSCとの間で表2に記載の遺伝子の発現量を比較すればよい。
【0084】
なお、遺伝子の検出には、上述した検出方法、検出用キット、検出用マイクロアレイを用いればよい。また、遺伝子の発現量を調べるには、当該分野における種々の公知の手法を用いればよく、例えば、後述する実施例に示すようなリアルタイム逆転写PCRが好適に利用される。
【0085】
〔4.間葉系幹細胞の自己複製能を制御する因子のスクリーニング〕
本発明は、間葉系幹細胞の自己複製能を制御する因子をスクリーニングする方法を提供する。本発明にかかるスクリーニング方法は、候補物質の存在下にて培養した目的の細胞において、表2に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現を検出する工程を包含することを特徴としている。
【0086】
正常なMSCまたはMSC様の細胞を用いれば、MSCの自己複製能を活性化または抑制する因子をスクリーニングし得る。また、後述する実施例に示すように、MSCにおいて表2に記載の遺伝子をノックダウンすることによってMSCの自己複製能を抑制することができる。よって、自己複製能を抑制させたMSCを用いれば、抑制された自己複製能を補完し得る因子(すなわち、自己複製能を活性化する因子)をスクリーニングし得る。遺伝子のノックダウンには、siRNA(short interference RNA, small interfering RNA)が好適に用いられるが、これに限定されず、当該分野における種々の公知の手法が採用され得る。
【0087】
siRNAは、目的の遺伝子の発現をRNAiの原理によって抑制することができるものであれば、その塩基配列は特に限定されない。本明細書において「siRNA」とは、stRNA(small temporal RNA)、およびshRNA(short hairpin RNA)をも含む意味である。またsiRNAの塩基配列の設計は発現抑制を所望する遺伝子の塩基配列情報をもとにして、公知の方法によって行われ得る。現在、siRNAを設計する際に用いられるソフトウェアが市販されており、効率の観点から当該ソフトウェアを用いて設計することが好ましい。市販のソフトウェアとしては、例えばRNAi社製(http://www.rnai.co.jp/)のsiDirectTM等が挙げられる。
【0088】
上記のようにして設計されたsiRNAの合成は、公知の自動ヌクレオチド合成器によって行われ得る。なお現在、siRNAの設計から合成までを、企業に委託することが可能である。委託先としては、Ambion社、Invitrogen社、QIAGEN社、Dharmacon社等が挙げられる。
【0089】
後述する実施例において使用したsiRNAの塩基配列は以下の通りである。ETV5に対するsiRNAのセンス鎖の塩基配列を配列番号1に示し、アンチセンス鎖の塩基配列を配列番号2に示した。HMGA2に対するsiRNAのセンス鎖の塩基配列を配列番号3に示し、アンチセンス鎖の塩基配列を配列番号4に示した。KLF12に対するsiRNAのセンス鎖の塩基配列を配列番号5に示し、アンチセンス鎖の塩基配列を配列番号6に示した。SIM2に対するsiRNAのセンス鎖の塩基配列を配列番号7に示し、アンチセンス鎖の塩基配列を配列番号8に示した。SOX11に対するsiRNAのセンス鎖の塩基配列を配列番号9に示し、アンチセンス鎖の塩基配列を配列番号10に示した。ETV1に対するsiRNAのセンス鎖の塩基配列を配列番号11に示し、アンチセンス鎖の塩基配列を配列番号12に示した。FOXP1に対するsiRNAのセンス鎖の塩基配列を配列番号13に示し、アンチセンス鎖の塩基配列を配列番号14に示した。PRDM16に対するsiRNAのセンス鎖の塩基配列を配列番号15に示し、アンチセンス鎖の塩基配列を配列番号16に示した。GATA6に対するsiRNAのセンス鎖の塩基配列を配列番号17に示し、アンチセンス鎖の塩基配列を配列番号18に示した。
【0090】
本方法に適用される候補物質は、核酸、ペプチド、タンパク質、有機化合物、無機化合物のいずれであってもよい。核酸を候補物質として存在させる場合には、用いる細胞に導入し、導入前後における、表2に記載の遺伝子の発現量の変動を確認すればよい。また、導入後の細胞と無処置の正常MSCとの間で表2に記載の遺伝子の発現量を比較すればよい。ペプチドや化合物を候補物質として存在させる場合には、候補因子を培地に添加し、添加の前後における、表2に記載の遺伝子の発現量の変動を確認すればよい。また、添加後の細胞と無処置の正常MSCとの間で表2に記載の遺伝子の発現量を比較すればよい。
【0091】
なお、遺伝子の検出には、上述した検出方法、検出用キット、検出用マイクロアレイを用いればよい。また、遺伝子の発現量を調べるには、当該分野における種々の公知の手法を用いればよく、例えば、後述する実施例に示すようなリアルタイム逆転写PCRが好適に利用される。
【0092】
〔5.間葉系幹細胞の分化能を制御する因子のスクリーニング〕
本発明は、間葉系幹細胞の分化能を制御する因子をスクリーニングする方法を提供する。本発明にかかるスクリーニング方法は、候補物質の存在下にて培養した目的の細胞において、表2に記載の遺伝子の少なくとも1つの発現を検出する工程を包含することを特徴としている。
【0093】
正常なMSCまたはMSC様の細胞を用いれば、MSCの分化能を活性化または抑制する因子をスクリーニングし得る。また、後述する実施例に示すように、MSCにおいて表2に記載の遺伝子をノックダウンすることによってMSCの分化能を抑制することができる。よって、分化能を抑制させたMSCを用いれば、抑制された分化能を補完し得る因子(すなわち、分化能を活性化する因子)をスクリーニングし得る。上述したように、遺伝子のノックダウンには、siRNAが好適に用いられるが、これに限定されず、当該分野における種々の公知の手法が採用され得る。
【0094】
本方法に適用される候補物質もまた、核酸、ペプチド、タンパク質、有機化合物、無機化合物のいずれであってもよい。核酸を候補物質として存在させる場合には、用いる細胞に導入し、導入前後における、表2に記載の遺伝子の発現量の変動を確認すればよい。また、導入後の細胞と無処置の正常MSCとの間で表2に記載の遺伝子の発現量を比較すればよい。ペプチドや化合物を候補物質として存在させる場合には、候補因子を培地に添加し、添加の前後における、表2に記載の遺伝子の発現量の変動を確認すればよい。また、添加後の細胞と無処置の正常MSCとの間で表2に記載の遺伝子の発現量を比較すればよい。
【0095】
なお、遺伝子の検出には、上述した検出方法、検出用キット、検出用マイクロアレイを用いればよい。また、遺伝子の発現量を調べるには、当該分野における種々の公知の手法を用いればよく、例えば、後述する実施例に示すようなリアルタイム逆転写PCRが好適に利用される。
【0096】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0097】
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【実施例】
【0098】
本発明について、以下の実施例に基づいてより具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0099】
〔1:手順〕
〔1−1:細胞培養〕
ヒト腸骨由来のMSCを、BioWhittaker Inc(Walkersville, MD)から購入した。あるいは、広島大学での倫理的委員会によって認可されたプロトコールに従って腸骨稜から調製した。ヒトの皮膚の線維芽細胞を、クラボウ(Osaka, Japan)から購入し、ヒトの歯肉の線維芽細胞を、公知の手順に従って単離した。ヒトの変形性関節炎の滑膜線維芽細胞を、Cell Applications Inc(SanDiego, California)から購入した。MSC培養液の調製および骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞への分化を、公知の手順に従った。間葉系幹細胞を増幅させるためにFGF−2を1ng/mLで使用した。遺伝子発現上でのFGFの直接的な作用を避けるため、FGFをRNA分離の72時間前に間葉系幹細胞および線維芽細胞の培養液から除去した。
【0100】
〔1−2:DNAマイクロアレイ分析〕
全RNAを、3株の間葉系幹細胞(6〜9継代)、3株の線維芽細胞(7〜14継代)、28日間分化誘導培養液で培養した3株の間葉系幹細胞、変形性関節炎の滑膜に由来する3株のMSCの、コンフルエントの培養物から、RNeasy Miniキット(Qiagen, Chatsworth, CA)を使用して単離した。DNAマイクロアレイ分析を、38500遺伝子、47000転写物変異体、54000プローブ(Affymetrix Inc.)を含むヒトゲノムU133 plus 2.0チップを用いたクラボウ遺伝子チップ分析サービスによって行った。生データ(マイクロアレイスイートversion 5.0, SF = 1; Affymetrix Inc.)を、GeneSpring(Silicon Genetics,Rodwood City ,LA)を使用してglobal median normalization法に従って標準化した。標準化は、フラッグ値によって制限され、中央値はpresentまたはmarginalの範囲以上の遺伝子を使って算出された。2倍以上の増減で基準化された強度での遺伝子のふるい分けを、分化前後の発現プロファイル遺伝子リストを作成するために使用した。生データをGEO(GSE9451)に登録した。
【0101】
〔1−3:リアルタイム逆転写PCR〕
リアルタイム逆転写PCR分析を、ABI prism 7900HT Sequence Detection System装置、およびソフトウェア(Applied Biosystems Inc、Foster City ,CA)を使用して行った。プライマーおよびプローブを、Applied Biosystems Incから購入した。データを、18S rRNAに対して標準化した。
【0102】
〔1−4:間葉系幹細胞に特徴的な多数の遺伝子の発現に対する、間葉系幹細胞に特徴的な転写因子のsiRNAの効果〕
ETV1、ETV5、FOXP1、GATA6、HMGA2、KLF12、PRDM16、SIM2、およびSOX11についてのsiRNAオリゴヌクレオチドを、それぞれのヌクレオチド配列を標的として設計し、RNAi Co., Ltd.(Tokyo, Japan)にて合成した。siRNAオリゴヌクレオチドを、Lipofectamin 2000(Invitrogen)を使用して10%ウシ胎仔血清存在下で12ウエルプレート(直径22mm)中にて培養した間葉系幹細胞に、製造者の手順に従って形質移入した。形質移入後に、48時間(n=2)および72時間(n=2)のノックダウンの効果を、リアルタイム逆転写PCRによって調査した。
【0103】
〔1−5:細胞増殖、アルカリホスファターゼ、GPDH、アリザリンレッド染色、オイルレッドO染色〕
間葉系幹細胞、滑膜線維芽細胞、または皮膚線維芽細胞を、24ウエルの組織培養プレート上で培養し、40%コンフルエントの段階で、各siRNA、またはコントロールsiRNAを、Lipofectamin 2000を使用して形質移入した。形質転換細胞を、10%ウシ胎仔血清含有DMEM培地へ移し、2〜6日間インキュベートした。細胞数を、WST-8試薬(生化学工業,Tokyo, Japan)を使用して計数した。分化の際の潜在的なノックダウンの効果を検証するために、48ウエルの多穴組織培養プレートにて培養した細胞に対して、80%コンフルエントの段階で、各siRNA又はコントロールsiRNAをLipofectamin 2000を使用して形質移入した。形質移入の2日後に、培地を、骨形成および脂肪生成の誘導培地に交換した。アルカリホスファターゼ活性およびGPDH活性を測定した。
【0104】
〔1−6:免疫組織化学的検査〕
C57/BL/6Jマウス(生後0.5〜56日齢)および胎齢15.5日の妊娠したマウスを用いた。動物を、ペントバルビタールを使用して麻酔し、4%パラホルムアルデヒドを経心的に灌流した後に、複数の臓器および組織を採取した。肢標本を、10%EDTAを用いて4℃で脱灰した。標本をパラフィン包埋し、回転ミクロトーム(HM355,MICROM,ドイツ)を用いて連続切片(厚さ4μm)を作製した。免疫組織化学に用いた抗体は以下の通りである:ポリクローナルヤギ抗ヒトFLG(1:100, sc-25896, Santa Cruz Biotech. USA),モノクローナルマウス抗ヒトIGFBP3(1:500, I4527, Sigma),モノクローナルマウス抗ヒトVEGF(1:1000, 05443, Upstate Inc., USA),ポリクローナルウサギ抗ヒトGATA6(1:500, sc-9055, Santa Cruz Biotech),ポリクローナルウサギ抗マウスTRPC4(1:2000, ACC018, Alomone Labs Ltd., イスラエル),ポリクローナルウサギ抗ヒトTGM2(1:10, AB15536, Abcam Ltd., USA),ポリクローナルウサギ抗ヒトHTR7(1:300, AB5661, Chemicon Int. Inc., USA),ポリクローナルウサギ抗ヒトADD3(1:500, sc-25733, Santa Cruz Biotech),モノクローナルマウス抗マウスMET(1:500, sc-8057, Santa Cruz Biotech),ポリクローナルヤギ抗ヒトLIF(1:500, sc-1336, Santa Cruz Biotech)。抗原修復を、10mM HCl混和0,1%ペプシン37℃10分処理−VEGF、GATA6,TRPC4,HTR7,IGFBP3,FLG,あるいは10mMクエン酸緩衝液(pH6,0)を用いた90℃で10分間のマイクロ波処理(H2800, Energy BeaMSCiences, Inc., USA)−TGM2,MET,ADD3,LIFのいずれかで行った。免疫反応性を、Alexa Flour567(568nm,赤)およびAlexa Flour647(647nm,緑).を併用して可視化した。細胞核を、DAPI(青,S24535, Molecular Probe, USA)を用いて染色した。共焦点の蛍光像を記録した後に、同じ検体をHE染色し、対応した二重免疫陽性細胞の局在を、対応した免疫蛍光およびHE染色された細胞像の重なりによって検証した。二重染色された細胞の発生頻度は3,4画像内にて二重免疫陽性細胞および単陽性細胞を計数して推定した。全ての陽性細胞中における二重免疫陽性細胞の発生頻度を、3段階(高(>70%),中(30−70%),低(<30%))に分類した。同一研究において、免疫反応性を、ABC法(ABC Elite kit, Vector, USA)によって発色する3,3′-diaminobenzidine(DAB; SK-4100, Funakoshi, Japan)を用いて可視化した。
【0105】
〔2:結果〕
〔2−1:MSCに特徴的な遺伝子の同定〕
DNAマイクロアレイ分析のために、線維芽細胞が混入していないMSC株を用いた。全ての調べられた、単一細胞に由来するコロニーの遺伝子発現プロファイルは、親のMSC集団のプロファイルに類似した。このことは、発生上の不均一性がなかったことを示している。さらに、適切な分化誘導培地にて分化させた骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞を用いた。これらの細胞のほとんどが21〜28日間以内に分化した。54675個のDNAマイクロアレイプローブ(Affymetrix Inc.)を用いて、MSC(M)、骨芽細胞(O)、軟骨細胞(C)、脂肪細胞(A)、および線維芽細胞(F)における遺伝子発現レベルを比較した。クラスター分析は、3つのMSC株の遺伝子発現プロファイルが、他の株の一つのプロファイルと互いに似ているが、他の全ての細胞のプロファイルと異なっていることを示した。このことは、MSC株の中に、調製物ごとのいくらかの小さな変動を示唆している。これらの条件下で、148の遺伝子の発現レベルは、分化した細胞および線維芽細胞よりもMSCにおいて2倍以上高かった(表1)。
【0106】
【表1】

【0107】
表1には、線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞と比較してMSCにおいて選択的に発現される遺伝子群(発現量が2倍以上のもの)を示している(n=3)。表中に示したMSCに特徴的な遺伝子のいくつかが、変形性関節炎の滑膜線維芽細胞において、線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞の1.5倍以上高い発現レベルを示した(該当する遺伝子を太字で示した。)。また、ケラチン関連遺伝子に下線を付した。
【0108】
リアルタイムRT−PCRを用いて、調べた71個全ての遺伝子の発現が、様々な分化細胞(O,C,Aのいずれか)および線維芽細胞(F)と比べてMSC(M)では選択的に増強されていることを決定した(図1)。
【0109】
MSCに特徴的な遺伝子のDNAマイクロアレイ分析を、それぞれの細胞種(線維芽細胞(F)、MSC(M)、骨芽細胞(O)、軟骨細胞(C)、脂肪細胞(A))について3株ずつ用いて行った。リアルタイムRT−PCRを、MSC(M)、骨芽細胞(O)、軟骨細胞(C)、脂肪細胞(A)についてはそれぞれ6株、線維芽細胞(F)については4株を使用して行った。リアルタイムRT−PCRによって、148個のMSCに特徴的な遺伝子のうち、71の異なる発現をする遺伝子が確認された。リアルタイムRT−PCRで決定されたプロファイルを元にしたMSCに特徴的な遺伝子の中に含まれているVEGF、およびMSC/軟骨形成マーカーである白血病抑制因子(LIF)についても、併せて示した。値を、3〜6ウエルの平均値±標準誤差を示している(一部2ウエルにて評価した。)。
【0110】
図1に示すように、DNAマイクロアレイおよびリアルタイムRT−PCR分析は、これらの遺伝子における類似した発現パターンを示し、再現性があることを示した。また、DNAマイクロアレイおよびリアルタイムRT−PCRによって、ポジティブコントロールとしてのLIFがMSCおよび軟骨細胞の両方に高発現していることを示した(図1)。
【0111】
MSCに特徴的な遺伝子が多分化能に関与しているのであれば、それらの遺伝子は他のMSC様の細胞にも発現している可能性がある。調べた結果、MSCに特徴的な遺伝子の約50%(表1における太字)が、実際に皮膚線維芽細胞、骨芽細胞、軟骨細胞、脂肪細胞においてよりも変形性関節炎の滑膜線維芽細胞において1.5倍以上高発現していることがわかった。このことは、おそらく変形性関節炎の滑膜線維芽細胞が皮膚線維芽細胞と異なって多分化能を有しているからと考えられる。さらに、変形性関節炎の滑膜線維芽細胞が骨分化や脂肪分化能を有していることを確認した(データは示さず)。HGF(肝細胞増殖因子)およびMETは、8個のケラチン関連遺伝子(表1における下線)およびケラチン結合タンパク質をコードするFLGとともに、骨髄MSCにて高発現が示されたが、変形性関節炎の滑膜線維芽細胞では高発現されていなかった。このことは、HGF−MET自己分泌ループおよび高ケラチン細胞骨格が骨髄MSCの特徴であることを示している。
【0112】
MSCに特徴的な遺伝子のいくつかが実際に未分化状態に関連しているのであれば、それらの遺伝子の発現は分化の開始直後に抑制されると考えられる。しかし、実際には、これらの遺伝子(転写因子を含む)の93%が、骨分化、軟骨分化、脂肪分化の分化誘導培地による培養後24時間以内に、骨前駆細胞(OP)、軟骨前駆細胞(CP)、脂肪前駆細胞(AP)において発現が低下した(図2AおよびB)。同じ24時間の間に、骨芽細胞に特徴的な遺伝子(アルカリファオスファターゼおよびPTHレセプター)、軟骨細胞に特徴的な遺伝子(アグリカンおよびタイプ2コラーゲン)、脂肪細胞に特徴的な遺伝子(PPARγおよびC/EBPα)のいずれも、その発現が上昇していなかった(図2C)。これらのことは、MSCに特徴的な分子のほとんどが前駆細胞において発現しないことを示している。
【0113】
なお、図2において、Aは、3つのMSC株を用いたリアルタイムRT−PCRによって決定されたmRNA発現レベルを示し、Bは、骨分化誘導培地、軟骨分化誘導培地、脂肪分化誘導培地を用いた培養24時間後の、71個のMSCに特徴的な遺伝子の発現低下を示す。調べられた71個の遺伝子のうち、24時間培養後に有意に発現低下した遺伝子の割合を分類した。図2において、Cは、骨分化誘導培地(OP)、軟骨分化誘導培地(CP)、脂肪分化誘導培地(AP)、分化因子なし培地(M)を用いて、MSCを24時間または28日間培養し、組織特異的な遺伝子発現を確認した。3つの株を用いたリアルタイムRT−PCRによってmRNAレベルを決定した。値は3ウエルの平均値±標準誤差である。
【0114】
〔2−2:MSCに特徴的な転写因子のノックダウンの影響〕
興味深いことに、MSCに特徴的な遺伝子は9つの転写因子(ETV1、ETV5、FOXP1、GATA6、HMGA2、KLF12、PRDM16、SIM2、SOX11)を含むことがわかった。表1に示すように、SOX11を除くほとんどの遺伝子が滑膜線維芽細胞において高発現していた。表2に、9つの転写因子に関する情報を示す。
【0115】
【表2】

【0116】
これらの転写因子が担っているであろう役割を調べるために、これらの遺伝子を標的として設計したsiRNAオリゴヌクレオチドを用いた。siRNAオリゴヌクレオチドの添加によって、48〜72時間(siRNAにより標的のmRNAレベルが50〜80%に減少した時間)以内に、MSCに特徴的な遺伝子のほとんど(71個中53個;75%)のmRNAレベルを有意に発現低下させた(表3)。
【0117】
【表3】

【0118】
MSCに特徴的な遺伝子のmRNAレベルをリアルタイムRT−PCRによって評価した。表中の括弧の値は、コントロールを1としたときのmRNAレベルを示している。有意な発現低下を示している遺伝子を示す(*p<0.05,**p<0.01,***p<0.005,†p<0.0005)。
【0119】
各siRNAは、MSCに特徴的な遺伝子の異なるセットを発現低下させた。このことは、これらの発現低下がsiRNAの一般的な毒性の影響ではないことを示唆している。また、これらのことは、9つの転写因子がMSCの分子的な特徴に必須であることを示唆している。
【0120】
転写因子の機能的な役割を評価するために、MSCの増殖におけるsiRNAの影響を調べた。また、これらの実験において変形性関節炎の関節から単離された滑膜線維芽細胞、骨髄MSC、および皮膚線維芽細胞を用いた。ネガティブコントロールsiRNAを形質移入したこれらの細胞は、分化後少なくとも6日間まで増殖し続けた。GATA6のsiRNAは、皮膚線維芽細胞の増殖に影響しなかったが、骨髄MSCの数を減少させ、滑膜線維芽細胞の増殖を停止させた(図3)。細胞数はWST−8試薬を用いてOD490とOD630との比による評価法を用いて算出した。値は3つの培養での平均値±標準誤差を示す。ステューデントT検定を用いてネガティブコントロールsiRNAと比較している(*p<0.05,**p<0.01,***p<0.005)。
【0121】
表4は、MSC(4種類)、滑膜線維芽細胞(4種類)、皮膚線維芽細胞(3種類)の増殖に対する、9つの転写因子のノックダウンの影響を示している。示した値は、siRNAを形質移入した後に培養した細胞数増加の、コントロールsiRNAを形質移入した後に培養した細胞増加に対する割合(6日目)を示している。
【0122】
【表4】

【0123】
96ウエルプレートにて培養し40%コンフルエントの段階でsiRNAを移入し、10%ウシ胎児血清とともに6日間培養した。WST−8試薬を用いて0日目から6日目の間の細胞数増加を計測した。値は、コントロールsiRNAを形質移入された細胞と比べたときの、細胞数の増加のパーセンテージを示している(3培養系の平均値±標準誤差で示す。)。
【0124】
ETV5およびSOX11のノックダウンは、MSCおよび滑膜線維芽細胞の両方の増殖を停止させた。そして、ETV1、FOXP1、GATA6、HMGA2、PRDM16、SIM2のノックダウンは、これらの細胞の増殖を中程度、あるいは顕著に抑制した。しかし、siRNAヌクレオチドは皮膚線維芽細胞の増殖にほとんど影響しなかった。このことから、増殖の抑制はsiRNAが正常に機能していることを示唆する。ノックダウンの影響は、細胞または株の種類に依存して変動するが、細胞株は細胞種ほどノックダウンに影響しなかった。ノックダウンが骨髄MSCよりも滑膜線維芽細胞の増殖に顕著な抑制を誘発したのかは不明であるが、滑膜線維芽細胞は生体内で変形性関節炎の関節において活動的な増殖を示した。
【0125】
また、MSCの骨分化能および脂肪分化能に対するノックダウンの効果を調べた。siRNAオリゴヌクレオチドを、分化誘導培地で培養する二日前に加えた。アルカリファオスファターゼ活性は、骨分化誘導培地での培養8日後に上昇し始めた。MSCにおけるSIM2およびSOX11のノックダウンは、酵素活性の上昇を中程度抑制したが、HMGA2およびPRDM16のノックダウンは、酵素活性に対してほとんど影響せず、他のsiRNAヌクレオチドでは抑制効果が認められなかった。さらなる実験において、SIM2、SOX11、FOXP1のノックダウンにともなって基質石灰化を遅らせた(アリザリンレッド染色で確認)が、いずれのsiRNAヌクレオチドも石灰化の最大レベルを低下させることはなかった(示さず)。
【0126】
また、骨分化に対するsiRNAの影響を調べた。ここでは、骨細胞のマーカーであるALPase活性を用いて評価した(図4)。48ウエルの組織培養用プレートにて80%コンフルエントに達した際に、siRNAまたはコントロールsiRNAを細胞に形質移入し、10%ウシ胎児血清存在下で24時間静置し、その後10%ウシ胎児血清添加DMEMにより2日間培養した。さらに、これらの細胞を、10%ウシ胎児血清添加DMEM(点線)、または骨分化誘導培地(実線)に移し、示す日数にわたって培養した。値は3つの培養で平均値±標準誤差を示す。ステューデントT検定を用いてネガティブコントロールsiRNAと比較している(*p<0.05,**p<0.01,***p<0.005)。いくつかの転写因子について、siRNAを前処置することによってALPase活性の誘導を抑制することがわかった。具体的には、ALPase活性は分化誘導後4日目に上昇し始め、8日目以降にはHMGA2、PRDM16、SIM2、SOX11のsiRNAがALPaseの誘導を抑制した。
【0127】
さらに、脂肪分化に対するsiRNAの影響を調べた。ここでは、脂肪細胞のマーカーであるGPDH活性を用いて評価した(図5)。48ウエルの組織培養用プレートにて80%コンフルエントに達した際に、siRNAまたはコントロールsiRNAを細胞に形質移入し、10%ウシ胎児血清存在下で24時間静置し、その後10%ウシ胎児血清添加DMEMにより2日間培養した。さらに、これらの細胞を、10%ウシ胎児血清添加DMEM(点線)、または脂肪分化誘導培地(実線)に移し、示す日数にわたって培養した。値は3つの培養で平均値±標準誤差を示す。ステューデントT検定を用いてネガティブコントロールsiRNAと比較している(*p<0.05,**p<0.01,***p<0.005)。いくつかの転写因子について、siRNAを前処置することによってGPDH活性の誘導を抑制することがわかった。具体的には、GPDH活性は分化誘導後8日目に上昇し始め、12日目にはETV1、FOXP1、PRDM16、SOX11のsiRNAがGPDHの誘導を抑制した。
【0128】
なお、各種細胞へのsiRNAオリゴの導入効率はほぼ等しいことを確認している。よって、比較した細胞間での遺伝子発現の抑制効率も同等であるといえる。
【0129】
〔2−3:MSCの免疫組織化学〕
同定したMSCマーカー(転写因子ではないものも含む。)について、MSCに特徴的な分子に対する市販の抗体のうち、どの分化細胞よりもMSCにおいてそのmRNAレベルが高発現しているGATA6、ADD3、FLG、HTR7、IGFBP3,MET、TGM2、TRPC4、VEGFに対する抗体を選択した(図1)。また、MSCおよび軟骨細胞において、骨芽細胞、脂肪細胞、線維芽細胞においてよりも高いレベルで発現されていたLIFの抗体を選択した(図1)。MSC集団に対する一連の二重免疫蛍光染色を行った。そして、共焦点蛍光顕微鏡によって、単一のまたは二重の、免疫陽性の存在を示す証拠を見出した(図6)。
【0130】
生後56日齢の上腕骨の骨髄および骨を、抗GATA6(B、D、E)、抗LIF抗体(C、D、E)あるいは非特異的な血清(F)とインキュベーションした後、蛍光二次抗体を用いて染色した。GATA6はいくつかの骨髄細胞の細胞質に存在した。骨髄内にはGATA6免疫陽性の細胞が比較的多く存在した。そして、骨表面のGATA6免疫陽性細胞は骨芽細胞様の形状を有している。また、GATA6免疫陽性細胞はまた骨膜にも散らばっていた(示さず)。LIFはいくつかの骨髄細胞の細胞質に存在した。そして、LIF免疫陽性細胞は骨膜外に散らばっていた(示さず)。共焦点蛍光顕微鏡と光学顕微鏡にて得られた画像が互いに重ね合わせると、比較的多くの、GATA6およびLIFの二重免疫陽性細胞が、骨髄内および骨内膜付近に存在し、そしてわずかに骨表面に存在した。二重免疫陽性細胞の割合は高かった(70%以上)。しかし、骨膜内には二重免疫陽性細胞が認められなかった(示さず)。
【0131】
このように、GATA6陽性細胞(図6B)、LIF陽性細胞(図6C)は、成熟したマウス上腕骨の骨髄内部、および骨内膜付近に存在した。そして、それらのほとんどが二重に陽性の細胞であった(図6DおよびE)。非特異的血清および二次抗体単独は特異的な染色は示さなかった。よって、二重染色細胞は多分化能のない造血細胞や線維芽細胞ではないと考えられる。なぜなら、GATA6およびLIFのmRNAレベルは骨髄細胞全画分、非接着性骨髄細胞、皮膚線維芽細胞のすべてのうちで非常に低いか、あるいは検出不可能であるからである(図7)。
【0132】
RNAを、ドナーの骨髄液から直接回収した(Whole BMC)。さらに、他のドナーからの骨髄細胞を播種し、培養液内の非接着性細胞からRNAを回収した。次いで、ドナーの骨髄細胞を24時間または96時間培養し、接着細胞からRNAを抽出した。さらに、細胞がコンフルエントに達した際にも、MSCの接着細胞層からRNAを採取した。コントロールに皮膚線維芽細胞を用いて、MSCに特徴的な遺伝子のmRNAレベルを、リアルタイムRT−PCRによって決定した。これらのMSCにおけるmRNAレベルは、他のMSC株と類似した値であった。値は、二つの培養物における値の平均を示している。
【0133】
図7はまた、FLG、TGM2、HTR7が、MSCにおいて発現しているが他の細胞では発現しなかったこと、MET、TRPC4、IGFBPが、線維芽細胞よりもMSCにおいて高いレベルで発現していたが、非接着性の骨髄細胞では発現していなかったこと、ADD3およびVEGFが、MSCよりも非接着性の骨髄細胞および線維芽細胞において低レベルで発現していたことを示している。これらのMSCに特徴的な分子の抗体はまた、生体内である程度の骨髄細胞とも反応した。図8は、種々の抗体を用いてマウス骨髄内の二重免疫陽性細胞の同定を示している。抗体産生に用いられた動物種(ウサギ、ヤギ、マウス)とペプシンおよびマイクロ波処置とによって抗原修復した後の免疫反応性の保存を考慮して、二重免疫染色を試験する抗体の組合せを決定した。
【0134】
56日齢のマウス骨髄内のMSC様細胞を種々の抗体で二重染色し、そして共焦点蛍光顕微鏡を使って評価した。比較的多くのTRPC4陽性/FLG陽性二重染色細胞が骨髄内と骨内膜付近に存在していた(図8A)。また、比較的多くのLIF陽性/ADD3陽性二重染色細胞が骨髄内に存在し、いくつかのLIF陽性/ADD3陽性二重染色細胞が骨内膜付近に存在したが、骨膜には存在しなかった(図8B)。多くのGATA6陽性/FLG陽性二重染色細胞が骨髄内に存在し、そしていくつかのGATA6陽性/FLG陽性二重染色細胞が骨内膜付近に存在していたが、骨膜には存在しなかった(図8C)。比較的多くのTMG2陽性/LIF陽性二重染色細胞が骨髄内に存在し、そしていくつかのTMG2陽性/LIF陽性二重染色細胞が骨内膜付近に存在していた(図8D)。いくつかのTRPC4陽性/IGFBP3陽性二重染色細胞が骨髄内に存在していたが、骨膜には存在しなかった(図8E)。いくつかのTGM2陽性/MET陽性二重染色細胞が骨髄内と骨内膜付近に存在したが、MET陽性は骨膜には存在しなかった(図8F)。比較的多くのLIF陽性/MET陽性二重染色細胞が骨髄内に検出された。そしていくつかのLIF陽性/MET陽性二重染色細胞が骨内膜付近に存在したが、骨膜には存在しなかった(図8G)。ひとつのADD3陽性/MET陽性二重染色細胞が骨内膜付近に存在したが、ADD3陽性/MET陽性は骨膜には存在しなかった(図8H)。わずかな数のTRPC4陽性/VEGF陽性二重染色細胞が骨髄内と骨内膜付近に存在したが、骨膜には存在しなかった(図8I)。GATA6陽性/VEGF陽性細胞は骨内膜付近に存在したが、骨内膜表面には存在しなかったが、GATA6陽性/VEGF陰性は骨表面に存在した。GATA6陽性あるいはVEGF陽性細胞の毛細血管への結合は観察されなかった(図8J)。ひとつのGATA6陽性/IGFBP3陽性細胞が骨内膜付近に存在した(図8K)。GATA6陽性/MET陽性細胞の数は骨髄内で少なく、また骨内膜付近には存在したが、骨表面にはなく、骨膜にもなかった(図8L)。FLG陽性/VEGF陽性細胞の数は少なく、骨内膜付近に少数存在したが、骨表面や骨膜には存在しなかった(図8M)。骨髄内のFLG陽性/IGFBP3陽性細胞の数は少なく、骨表面や骨膜には検出されなかった(図8N)。ネガティブコントロールとしての二次抗体単独あるいはコントロールIgGによっては染色されなかった(図8O)。
【0135】
このように、二重免疫陽性細胞の発現率は、TRC4/FLG(A)において高く、LIF/ADD3(B)、GATA6/FLG(C)、TGM2/LIF(D)において中程度、その他の組合せでは低かった。さまざまな組合せの中で、GATA6/FLGおよびTGM2/LIFが、GATA6/LIF(図6)とともに、MSC様細胞の同定に役立つことが判明した。これらは、非接着性の骨髄細胞や皮膚線維芽細胞では発現していない(図7)。線維芽細胞は通常骨髄内に存在ないのでTRPC4/FLGもまた役立つ可能性がある。MET、IGFBP3、VEGFの抗体による、単一または二重の免疫陽性細胞の染色率が低いことは、抗体の質、検体の処理、あるいはこれらのマーカーのmRNAレベルが常にタンパク質レベルに翻訳して変化する訳ではないことに起因するかもしれない。にもかかわらず、抗体の組合せの全てが、二重免疫陽性細胞の存在を明らかにした。このことは、骨髄細胞各部が生体内で同時にいくつかのMSCマーカータンパクを合成することを示している。
【0136】
また、GATA6、LIF、FLGおよびTGM2は非接着性の骨髄細胞、造血細胞、線維芽細胞で発現していなかったので、これらの分子を同時に発現する接着性の骨髄細胞はMSCといえる。なお、LIFはMSC単独のマーカーではないものの、抗LIF抗体が軟骨組織以外の骨髄においてMSCの免疫組織化学を調べる際に有用であるといえる。
【0137】
軟骨膜、骨膜もまた、培養によってかあるいは移植後に、軟骨細胞、骨芽細胞に分化するMSC様細胞を含んでいるので、上腕骨の軟骨膜にあるMSCに特徴的な分子の発現を調べた。MSCに特徴的な分子のいくつか(GATA6(図9C,D)、LIF(図9A,B)、ADD3(図9A,B)、FLG(図9C,D)、HTR7(示さず)に対する抗体は、軟骨膜内で細胞集団に反応した。一方で、図9に示す組織内に二重免疫陽性細胞は検出されなかった。同様の結果が骨膜においても得られた(図10)。さらに、軟骨細胞(図9A,C)も骨細胞(示さず)も、GATA6、FLG、ADD3、VEGF(示さず)の抗体に反応しないが、一方で抗LIF抗体は軟骨細胞(図9A)に反応し、骨細胞(示さず)に反応しないことを確認した。従って、DNAマイクロアレイデータは少なくとも部分的には生体内状態に関連しているようである。
【0138】
〔2−4:誘導性間葉系幹細胞の誘導に好適な因子〕
表2に示す遺伝子の発現量が、増殖因子等によって影響を受けるかどうかを調べた。
【0139】
実験には、FGF、EGF、HGF、PDGF、TGF−β、インスリン、デキサメタゾン(Dex)、脂肪酸、ビタミンC(VC)、ウシ胎児血清を用いた。具体的には、3株のヒト骨髄由来細胞(MSC−R14−P6、MSC−R17−P5、MSC−R60−P5)を用いた。培養ディッシュには、ファルコン6well−plateを用いた。10cmディッシュにて10%FBS+FGFを含む培地を用いて培養した各細胞を回収し、細胞数を計数した。これらの細胞を2×10/well(すなわち、2×10/cm)にて6ウエルプレートに播種した。10%FBSを含む培地、および10%FBS+FGFを含む培地をコントロールとし、これら以外の全てについてA+B1+C+EGF+VC+PAを含む無血清培地を用いて細胞を培養し、24時間後(細胞がほぼサブコンフルエントになった後)に、コントロール以外の培地を、以下を含む培地に交換した。
(1)A+B1+C+EGF+VC+PA
(2)A+B1+C+EGF+VC+PA−FGF
(3)A+B1+C+EGF+VC+PA−TGF
(4)A+B1+C+EGF+VC+PA−HGF
(5)A+B1+C+EGF+VC+PA−PDGF
(6)A+B1+C+EGF+VC+PA−EGF
(7)A+B1+C+EGF+VC+PA−インスリン
(8)A+B1+C+EGF+VC+PA−VC
(9)A+B1+C+EGF+VC+PA−B1
(10)A+B1+C+EGF+VC+PA−Dex
このような培地中にて細胞をさらに3日間で培養し、トリアゾールを用いて回収した細胞からRNAを抽出した。なお、添加した因子の濃度は以下の通りである:PA:10μg/ml、FGF:3ng/ml、TGF:10ng/ml、5ng/ml、PDGF:10ng/ml、EGF:20ng/ml、Dexamethasone(Dex):10−8M、インスリン:10μg/ml、Chemically defined lipid concentrate(CD):原液を100〜200倍希釈、VC:50μg/ml。
【0140】
結果を表5に示す。MSCに特徴的な転写因子の発現量を異なる組合せにて促進または抑制する因子が見出された。すなわち、表5の増殖因子は、それぞれ異なる組合せの、MSCのSTEMNESSに関わる遺伝子(転写因子を含む。)を誘導し得た。このように、これらの因子は、誘導性間葉系幹細胞の誘導に好適な因子といえる。
【0141】
【表5】

【0142】
〔2−5:関節症の発症およびMSCのSTEMNESSに関わる遺伝子の誘導〕
6週齢のSD系ラットの大腿骨膝関節腔に、モノヨード酢酸(0.03,0.06または1.5mg/joint)を投与した2週間後に、同関節の軟骨からRNAを抽出した。そして、MSCのSTEMNESSに関わる転写因子(表2に記載の遺伝子についての対応ラット遺伝子)の発現レベルを検討した。その結果、関節炎を発症したラットの軟骨では、分化マーカーであるアグリカンおよびII型コラーゲンの発現が低下している一方で、MSCのSTEMNESSに関わる転写因子の数種類がその発現レベルを亢進していた(図11)。つまり、炎症によって軟骨細胞が脱分化するとともに、少なくとも一部の脱分化細胞がMSC様細胞へ変化したと推察される。したがって、各種の組織(軟骨を含む。)に各種の薬物を注射して、MSCのSTEMNESSに関わる転写因子の発現を促進すれば、誘導性間葉系幹細胞を生体内で誘導することができる。また、表5の増殖因子を疾患部位へ投与することにより、生体内にて誘導性間葉系幹細胞の数を増加させることができると考えられる。そして、これらの実験モデルは、幹細胞を誘導する薬物をスクリーニングする際に有用である。
【0143】
〔2−6:種々の組織に由来する線維芽細胞からの誘導性間葉系幹細胞の作製〕
ヒト歯肉由来の線維芽細胞を分離した。次いで、これらの細胞を、MSCのSTEMNESSを促進する因子(表5)を添加した無血清培地STK2(DSファーマバイオメデイカル社製)を用いて7日間培養した。その後、骨分化誘導培地を用いて15〜20日間培養した(図12)。高レベルのアルカリホスファターゼ活性および石灰化(アリザリン赤染色)が誘導された(それぞれ図12AおよびB)。なお、通常の培養法を用いて同じ細胞を培養した場合は、アルカリホスファターゼ活性および石灰化レベルが低かった(結果は示さず)。
【0144】
同様の実験を、分離培養したヒト歯髄由来の線維芽細胞を用いて行った。具体的には、ヒト歯髄由来の線維芽細胞を分離し、次いで、これらの細胞を、MSCのSTEMNESSを促進する因子(表5)を添加した無血清培地STK2(DSファーマバイオメデイカル社製)を用いて7日間培養した。その後、骨分化誘導培地を用いて2〜3週間培養した。結果を図13に示す。ヒト歯肉由来の線維芽細胞の場合と同様に、ヒト歯髄由来の線維芽細胞においても、高レベルのアルカリホスファターゼ活性および石灰化(アリザリン赤染色)が誘導された(それぞれ図13AおよびB)。
【0145】
このように、MSCのSTEMNESSを促進する因子を添加した無血清培地を用いることにより、種々の組織に由来する線維芽細胞から誘導性間葉系幹細胞を作製することができた。これらの誘導性間葉系幹細胞は再生医療に有用である。また、上述した無血清培地に別の薬剤をさらに追加すれば、骨分化能がより高い誘導性間葉系幹細胞を作製し得るので、本系は薬剤スクリーニング系として非常に有用である。
【0146】
〔2−7:歯髄由来の線維芽細胞から誘導した誘導性間葉系幹細胞の骨分化能〕
ヒト歯髄由来の線維芽細胞を5×10個/cmの密度にて培養皿に播種して、コンフルエントになるまで培養した。培養条件は、MSCのSTEMNESSを促進する因子(表5)を添加した無血清培地STK2を用いて5日間培養(A)、または通常の増殖培地(抗生物質および10%FBSを含むDMEM)を用いて13日間培養(B)である。その後、培地を骨分化誘導培地に交換して骨分化誘導を開始した。Aは14日間、Bは20日間骨分化誘導培地を用いて培養した後に、アリザリン赤染色によって骨分化能を評価した。骨分化の方法をTutsumiらの方法に従って行った(Retention of multilineage differentiation potential of mesenchymal cells during proliferation in response to FGF. Tsutsumi S, Shimazu A, Miyazaki K, Pan H, Koike C, Yoshida E, Takagishi K, Kato Y. Biochem Biophys Res Commun. 2001 Oct 26;288(2):413-9.)。
【0147】
このように、MSCのSTEMNESSを促進する因子を添加した無血清培地を用いることにより、誘導性間葉系幹細胞を作製し得た。また、上記無血清培地に別の薬剤をさらに追加すれば、分化能がより高い誘導性間葉系幹細胞を作製し得るので。本系は薬剤スクリーニング系として有用である。
【0148】
以上のように、骨髄MSCの特徴となる分子の発現が、これらの細胞において選択的に発現している転写因子によって決定されることを見出した。そして、これらの転写因子のいくつかは、明らかにMSCのSTEMNESSの調節に関与していた。特に、ETV1、ETV5、FOXP1、GATA6、HMGA2、SIM2、SOX11のノックダウンはMSCの自己複製能を抑制した。また、FOXP1、SOX11、ETV1、SIM2、PRDM16のノックダウンは骨分化や脂肪分化のポテンシャルを低下させた。さらに、滑膜線維芽細胞が生体内に存在するMSC様細胞であることを同定した。そして、骨髄内のMSC様細胞の局在は幹細胞が骨の発生、成長に生理学的に関与することを示し、成熟した骨髄はMSCの供給源であることが示された。これらの知見は、再生医療における成人骨髄MSCの使用を大いに促進し得る。
【産業上の利用可能性】
【0149】
本発明は、ヒトの胚またはES細胞を利用することなく、間葉系幹細胞と同様の自己複製能および分化能を有する細胞を提供し得るので、医薬分野、特に再生医療に関連する分野に大いに貢献し得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表2に記載のアクセッション番号に示される塩基配列を有する遺伝子の少なくとも1つを細胞に導入する工程を包含する、誘導性間葉系幹細胞の作製方法。
【請求項2】
間葉系幹細胞選択的な無血清培地を用いて培養する工程をさらに包含する、請求項1に記載の作製方法。
【請求項3】
細胞を脱分化条件下にて長期間培養する工程、および培養後の細胞を、間葉系幹細胞選択的な無血清培地を用いて人工マトリックス上でさらに培養する工程を包含する、誘導性間葉系幹細胞の作製方法。
【請求項4】
誘導性間葉系幹細胞の誘導に好適な因子を培地に添加する工程をさらに包含する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の作製方法。
【請求項5】
下記(a)〜(c)からなる群より選択されるポリヌクレオチドの1つ以上を備えている、誘導性間葉系幹細胞を作製するためのキット:
(a)表2に記載のアクセッション番号のいずれか1つに示される塩基配列またはその相補配列を有するポリヌクレオチド;
(b)上記(a)のフラグメントであるポリヌクレオチド;および
(c)上記(a)または(b)のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
【請求項6】
目的の細胞において、表2に記載のアクセッション番号に示される塩基配列を有する遺伝子の少なくとも1つの発現を検出する工程を包含する、誘導性間葉系幹細胞を検出する方法。
【請求項7】
下記(a)〜(c)からなる群より選択されるポリヌクレオチドの1つ以上を備えている、誘導性間葉系幹細胞を検出するためのキット:
(a)表2に記載のアクセッション番号のいずれか1つに示される塩基配列またはその相補配列を有するポリヌクレオチド;
(b)上記(a)のフラグメントであるポリヌクレオチド;および
(c)上記(a)または(b)のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
【請求項8】
下記(a)〜(c)からなる群より選択されるポリヌクレオチドの1つ以上が固定化されている、誘導性間葉系幹細胞を検出するためのマイクロアレイ:
(a)表2に記載のアクセッション番号のいずれか1つに示される塩基配列またはその相補配列を有するポリヌクレオチド;
(b)上記(a)のフラグメントであるポリヌクレオチド;および
(c)上記(a)または(b)のポリヌクレオチドとストリンジェントな条件下でハイブリダイズするポリヌクレオチド。
【請求項9】
表2に記載のアクセッション番号のいずれか1つに示される塩基配列を有するポリヌクレオチドにコードされるポリペプチドと特異的に結合する抗体を備えている、誘導性間葉系幹細胞を検出するためのキット。
【請求項10】
候補物質の存在下にて培養した細胞において、表2に記載のアクセッション番号に示される塩基配列を有する遺伝子の少なくとも1つの発現を検出する工程を包含する、細胞を誘導性間葉系幹細胞に誘導する因子をスクリーニングする方法。
【請求項11】
候補物質の非存在下にて培養した細胞における上記遺伝子の発現を検出する工程をさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
間葉系幹細胞における上記遺伝子の発現を検出する工程をさらに包含する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
候補物質の存在下にて培養した目的の細胞において、表2に記載のアクセッション番号に示される塩基配列を有する遺伝子の少なくとも1つの発現を検出する工程を包含する、間葉系幹細胞の自己複製能を制御する因子をスクリーニングする方法。
【請求項14】
上記細胞が、自己複製能を抑制された間葉系幹細胞である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
候補物質の非存在下にて培養した、自己複製能を抑制された間葉系幹細胞における上記遺伝子の発現を検出する工程をさらに包含する、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
間葉系幹細胞における上記遺伝子の発現を検出する工程をさらに包含する、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
候補物質の存在下にて培養した目的の細胞において、表2に記載のアクセッション番号に示される塩基配列を有する遺伝子の少なくとも1つの発現を検出する工程を包含する、間葉系幹細胞の分化能を制御する因子をスクリーニングする方法。
【請求項18】
上記細胞が、分化能を抑制された間葉系幹細胞である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
候補物質の非存在下にて培養した、分化能を抑制された間葉系幹細胞における上記遺伝子の発現を検出する工程をさらに包含する、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
間葉系幹細胞における上記遺伝子の発現を検出する工程をさらに包含する、請求項18に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図11】
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【図6】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−143158(P2012−143158A)
【公開日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−115378(P2009−115378)
【出願日】平成21年5月12日(2009.5.12)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り ・「Genes to Cells 第14巻 第3号」 発行日 2009年3月 発行所 日本分子生物学会 ・「日本再生医療学会雑誌「再生医療」 第8巻 増刊号」 発行日 2009年2月5日 発行所 日本再生医療学会 ・「バイオデンティスト育成プログラム」プログラムおよび要旨 発行日 2009年1月 発行所 広島大学大学院医歯薬学総合研究科 ・「先端歯学国際教育研究ネットワーク日・米シンポジウム プログラム&抄録集」 発行日 2009年2月12日 発行所 新潟大学大学院医歯学総合研究科
【出願人】(504136568)国立大学法人広島大学 (924)
【出願人】(503328193)株式会社ツーセル (24)
【Fターム(参考)】