説明

誘導機能付杖

【課題】 杖の利用者或いは利用者の動作を援助する同伴者に、目的地までの歩行情報を提供する歩行誘導機能を備えた誘導機能付杖を提供する。
【解決手段】 利用者或いは同伴者が、杖1の保持部2にある方向選択釦3a、3b、3cで選択した方向の宇宙衛星の地図情報Gが地図情報記録回路6に記録され、マイク8による音声信号は追加情報や援助情報として地図情報記録回路6に記録され、これらの記録情報は随時モニタ10で画像情報として、イヤホーン9で音声情報として取得でき、車輪4によりモニタ10に歩行距離が表示され、安全で効率的に短時間で目的地まで歩行可能になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は利用者に目的地までの歩行情報を提供する歩行誘導機能を備えた誘導機能付杖に関する。
【背景技術】
【0002】
杖は、足腰に不安を感じる利用者が手に握って使用し、自らの足腰への負担を杖に分散保持させることにより利用者が歩行を安全に行うために使用される。
一方、杖の使用の有無を問わず、歩行により目的地に行こうとする場合、歩行者は一般に短時間で効率的に目的地に到達することを望むものである。
毎日のように利用する通勤路であれば別であるが、時々利用する道を久し振りに通った場合などは、目的地への途上で目標としていた施設の建物が移転していたり、曲がり角の目印だった店舗がなくなっていると、以前利用していた道が分からなくなることがある。また、道自体が歩道橋になっていたり地下道になっていることもある。
このような場合、歩行者は昔からの古店舗、交番、郵便局などを探して目的地までの道を教えてもらうことが必要な場合もあり、短時間で目的地に到達できなくなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は前述したような杖の使用の現状と、歩行で目的地まで行こうとする歩行者が、歩行途中の目標としていた施設の移転、目的地へ行く道の曲がり角の目標だった店舗の変更、或いは目的地へ向かう道自体の歩道橋や地下道への変更によって受けねばならぬ負担を軽減する誘導機能を備えた誘導機能付杖を提供するものである。
【0004】
本発明に係る誘導機能付杖は、宇宙衛星から提供される地図情報を利用する構成となっているが、杖の利用者の現在位置からの方向を選択する方向選択手段により選択された方向の地図情報が、宇宙衛星から取り込まれ地図情報記録手段に記録される。そして、地図情報提供手段によって地図情報記録手段から読み出される地図情報が、画像情報或いは音声情報として利用者に提供される。
【0005】
一方、本発明に係る誘導機能付杖には、利用者の歩行距離を表示する歩行距離表示手段が設けられており、利用者は自己の歩行距離を確認することにより、地図情報提供手段から提供される地図情報を歩行距離と対比して具体的に把握することができ、目的地までの歩行を効率的に実行することもできる。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る誘導機能付杖の利用者は、目的地への途中にある現在位置で方向選択手段を選択操作して、宇宙衛星から目的地を含む方向の地図情報を取り込み地図情報記録手段に記録する。利用者が方向選択手段で右方向を選択すると、地図情報記録手段には利用者の現在位置から右方向にある目的地を含む地図情報が地図記録手段に記録される。
そして利用者はすぐ先に右折可能で行き止まりでない道を見付け、その道を右折し歩行距離表示手段で歩行距離を確認しながら徒歩で直進する。
【0007】
地図情報提供手段により提供される画像情報上で、歩行距離表示手段の現在の表示値を確認し現在の位置で左折し交通信号のある交差点を渡る必要があると判断した利用者は、以前来た時の記憶を頼りに左折路を探して左折する。ところが、自動車専用道路の拡張工事が行われたために以前あった歩道が無くなっていることもある。
【0008】
この場合利用者はあたりを見回して、自動車専用道路に沿って70m前方に歩道橋があるのを認め、人がやっとすれ違える自動車専用道路沿いの側路を通って歩道橋まで歩き、歩道橋を利用して自動車専用道路を横断して以前利用していた歩道に出る。
そして目的地まで歩く際の目標としていた施設の建物を探すが、その建物はすでに他の場所に移転していて、跡地には商店や住宅が入り組んで建てられ、以前利用した道が全く分からなくなっていることがある。
【0009】
このような時に利用者は、昔からある古店舗、交番、郵便局などを探して目的地までの道を教えてもらい目的地まで歩くことが必要になる。
【0010】
そこで本発明に係る誘導機能付杖の利用者は、以前の記憶を頼りに左折路を探し左折して自動車専用道路が拡張されていることを知った際に、今後の利用のために追加情報入力手段により「自動車専用道路の拡張工事で歩道橋の利用が必要」という追加情報を地図情報記録手段に記録する。
【0011】
さらに、歩道橋を渡って自動車専用道路を横断し、例えば交番で聞いて知った目的地までの道順の要点を、追加情報入力手段により追加情報として地図情報記録手段に記録する。
【0012】
また本発明では、杖の利用者の動作を援助する同伴者も追加情報入力手段を利用して、地図情報記録手段に追加情報を記録することができるので、実施例の項で具体的に説明するように、同伴者の利用者に対する援助或いは介護の形態に応じて、それぞれ独自の内容で援助或いは介護が深められる。
【0013】
このようにして本発明によると、宇宙衛星からの地図情報を取り込んで利用者に目的地までの歩行情報が提供されるが、利用者は現在位置から方向選択手段で選択した方向の地図情報を地図情報記録手段に記録し、地図情報提供手段によって画像情報或いは音声情報として選択した方向の地図情報を取得することが可能になる。
また利用者は、目的地まで歩行する際に必要な情報を、歩行途上で地図情報記録手段に記録し、地図情報提供手段によって方向選択手段で方向を選択した地図情報とともに、地図情報提供手段によって画像情報或いは音声情報として取得することが可能になる。
【0014】
さらに本発明では、杖の利用者の動作を援助する同伴者によって追加情報入力手段から、利用者の援助に必要な情報を追加情報として地図情報記録手段に記録することができる。このために、利用者は方向選択手段で選択した方向の地図情報、自ら記録した追加情報と共に同伴者が記録した追加情報をも、地図情報提供手段によって画像情報或いは音声情報として取得することが可能になる。
このようにして、本発明によると利用者は方向が選択された地図情報と歩行途上で得た追加情報を地図情報記録手段に記録することができ、利用者の動作を援助する同伴者は援助に必要な追加情報を地図情報記録手段に記録することができる。そして、利用者は地図情報記録手段に記録された全ての情報を情報提供手段により、画像情報或いは音声情報として取得することが可能となり、目的地までの歩行を安全且つ効率的に実行することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】 本発明の一実施例の全体構成を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
基本的にはGlobal Positioning System(GPS)に基づいて開発され、現在ではカーナビなどにも利用されている宇宙衛星から地図情報を取り込む方式が本発明には使用されている。このようにして宇宙衛星から取り込む地図情報に基づいて、目的地までの徒歩に必要な誘導情報を画像情報或いは音声情報として利用者に提供する本発明に係る誘導機能付杖の一実施例を図1を参照して以下に説明する。
【実施例】
【0017】
本実施例では図1に示すように、利用者が握る杖1上部の保持部2には、利用者が指で押し易い位置に方向選択釦3a、3b、3cが設けられている。杖Sの直立部には地図情報を選択する地図情報選択回路5、地図情報が記録される地図情報記録回路6及び地図情報の提供動作を行う地図情報提供回路7が設けられ、方向選択釦3a、3b、3cの出力端子が地図情報選択回路5の入力端子に接続されている。
そして、地図情報選択回路5の出力端子には、マルチユーザ対応、ネットワーク対応、ユーザインタフェース機能を有するオペレーションシステムであるUNIXを利用した地図情報記録回路6の入力端子が接続され、地図情報記録回路6の出力端子には地図情報提供回路7の入力端子が接続されている。地図情報選択回路5の外部インターフェイスにはUSBメモリが直接差し込まれ、データを保存し持ち運び可能な構成になっている。
【0018】
一方で、利用者が手軽に携帯可能なマイク8、イヤホーン9及びモニタ10が設けられ、マイク8の出力端子が地図情報記録回路6の入力端子に接続されている。また、地図情報提供回路7の出力端子には、イヤホーン9の入力端子とモニタ10の入力端子が接続されている。
そして、杖Sの接地位置には利用者が歩行する路面を転動する車輪4が取り付けてあり、この車輪4は転動数に基づいて利用者の歩行距離信号をモニタ10に入力するように構成されている。
【0019】
以上に説明した構成の本発明に係る誘導機能付杖1を、足腰に多少の衰えを感じてはいるが、杖を使い自力で歩行が可能で視覚も聴覚もほぼ健常な利用者が使用して、久し振りに来る目的地まで同伴者なしで歩行する場合について先ず説明する。
この場合、目的地の近くまで来た利用者は、現在位置(以下A地点という)の右方向に目的地があると推測し、その確認のために方向釦2bを押すと選択信号d1が地図情報選択回路5に入力され、地図情報選択回路5から出力される記録信号m1によって、地図情報記録回路6にはA地点の右方向の地図情報が記録される。
地図情報記録回路6に記録された地図情報は、地図情報提供回路7によってモニタ10に表示されるので、利用者は表示された地図情報により自らの記憶が正しいことを確認し、A地点から右折し車輪4からの歩行距離信号Dによりモニタ10に表示される歩行距離を確認しながら、以前利用した交通信号のある交差点を探して50mほど歩行する。しかしそこにあった交差点は、自動車専用道路の拡張工事によりなくなっており、あたりを見回した利用者の目に入ったのは、さらに70mほど先の歩道橋であった。
【0020】
この場合、本実施例に係る誘導機能付杖1の利用者は、マイク8を使って「A地点を右折後120mほど直進した位置の歩道橋を渡る」と追加情報を地図情報記録回路6に記録する。そして70mほどさらに歩いて歩道橋位置に達し、歩道橋を渡って自動車専用道路を渡ることが可能になる。
【0021】
自動車専用道路を渡った利用者は、目的地への途上で目標にしていた施設の建物がすでに移転し、跡地には商店や住宅が入り組んで建てられ、以前利用した道が全く分からなくなっていることに気付く。この場合利用者は昔からある古店舗、交番、郵便局などを探し、目的地までの道のりを教えてもらうが、同様にマイク8を使って道のりの要点を追加情報として地図情報記録回路6に追加情報として記録しておく。
【0022】
このように、目的地までの歩行に必要な最新の追加情報をその都度地図情報記録回路6に記録しておくと、本実施例に係る杖1の利用者は常に目的地までの最新の歩行情報を画像情報或いは音声情報として取得して、安全且つ効率的に短時間で目的地に到達することが可能になる。
【0023】
次に、本実施例に係る杖1の利用者とその動作を援助する同伴者が、目的地まで連れだって歩行する場合について説明する。この同伴者は杖1の利用者の知人で最近目的地まで徒歩で行ったことがあり、A地点で歩道橋と反対の左方向に歩道橋よりも使い易い地下道がることに気付き、利用者に地下道の利用を勧める。
そして同伴者はマイク8を使用して地図情報記録回路6に、「A地点から左折し60m先の地下道を使用する」との援助情報を追加情報として記録する。
【0024】
同伴者が勧めた地下道は、緩い傾斜の下り道と平坦な道と緩い傾斜の上り道とが連続した幅が3mほどの道で、中央が高さ30cmほどの金網で区分され、左側が自転車専用路右側が歩行者専用路に指定されている。
そこで同伴者はマイク8を使用して地図情報記録回路6に「右側が歩行者専用路、左側の自転車転用路に出入りする自転車に注意すること」との援助情報を追加情報として記録する。
【0025】
このように杖1の利用者の同伴者が、利用者の動作の援助になる最新の援助情報をその都度マイク8を使用して、地図情報記録回路6に追加情報として記録しておくと、本実施例に係る杖1の利用者は、宇宙衛星から取り込まれた地図情報、自ら書く込んだ追加情報及び同伴者が援助情報として書き込んだ追加情報を最新の歩行情報として、地図情報記録回路6から画像情報或いは音声情報として取得し、安全且つ効率的に短時間で目的地まで歩行することが可能になる。
【0026】
本発明は以上に説明した実施例に限定されるものではなく、杖1の利用者が視覚や聴覚に障害を抱えているが、杖1を使用して自力で目的地まで歩行する場合、視覚や聴覚に障害を抱えている杖1の利用者が、自力で車椅子を操作して目的地まで移動する場合、視覚や聴覚に障害を抱えている杖1の利用者が、同伴者の援助を受けて目的地まで車椅子を使って移動する場合の何れにも適用可能である。
【0027】
以上に説明したように、本発明に係る誘導機能付杖によると、目的地まで移動しようとする杖の利用者或いは利用者の動作を援助する同伴者は、移動過程で宇宙衛星からの最新の地図情報、移動過程で取得した最新の追加情報或いは追加援助情報を地図情報記録回路に記録することが可能である。そして、杖の利用者あるいはその同伴者は、地図情報記録回路から最新の地図情報、最新の追加情報及び最新の追加援助情報を、画像情報或いは音声情報として取得することが可能である。
従って本発明によると、利用者或いは利用者の動作を援助する同伴者は、安全に且つ効率的に短時間で目的地まで移動することすることが可能になる。
【符号の説明】
【0028】
1 杖
2 保持部
3a、3b、3c 方向選択釦
4 車輪
5 地図情報選択回路
6 地図情報記録回路
7 地図情報提供回路
8 マイク
9 イヤホーン
10 モニタ
G 地図情報
D 歩行距離信号

【特許請求の範囲】
【請求項1】
宇宙衛星から提供される地図情報に基づき、利用者に目的地までの歩行情報を提供する歩行誘導機能を備えた誘導機能付杖であり、
前記利用者の現在位置からの方向を選択する方向選択手段と、
該方向選択手段が選択した方向の前記地図情報を記録する地図情報記録手段と、
該地図情報記録手段に追加情報を入力する追加情報入力手段と、
前記情報記録手段から、前記地図情報及び前記追加情報を読出し、画像情報或いは音声情報として前記利用者に提供する地図情報提供手段と、
前記利用者の歩行距離を表示する歩行距離表示手段と
を有することを特徴とする誘導機能付杖。
【請求項2】
請求項1記載の誘導機能付杖の利用者の動作を援助する同伴者によって、前記追加情報入力手段から援助情報が入力されると、
前記地図情報提供手段は、前記援助情報を含み前記地図情報記録手段に記録されている全ての情報を前記利用者に提供することを特徴とする誘導機能付杖。

【図1】
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【公開番号】特開2012−242373(P2012−242373A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125779(P2011−125779)
【出願日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.UNIX
【出願人】(391064027)
【Fターム(参考)】