説明

誘導結合プラズマのプラズマ分布および性能を改善する装置

【課題】高密度で均一なプラズマが生成される誘導結合プラズマ装置を提供する。
【解決手段】プロセス・チャンバに電気エネルギを結合して該プロセス・チャンバ内でプロセス・ガスからプラズマを発生させるための要素10であって、要素10は、長さ方向に沿って順次配置された多数のコイル・ターン32を有する単一のコイルで構成される導電性要素10であり、コイル・ターンの少なくとも一つ34aは、プラズマ処理システムの誘電体ウインドウにほぼ平行な第1平面36に配向され、コイル・ターン32の少なくとも一つ34bは、第1平面36と角度をなす第2平面38に配向されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般にプラズマを使用した半導体加工に関し、詳細には、誘導結合によって発生かつ維持されるプラズマ内の分布およびプロセス性能の改善に関する。
【背景技術】
【0002】
ガス・プラズマ発生は、プラズマ・エッチング、プラズマ化学気相堆積(PECVD)、およびプラズマ・スパッタ堆積の用途を含めた様々な集積回路(IC)製造プロセスで広く使用されている。一般にプラズマは、低圧プロセス・ガスをチャンバに導入し、次いで電気エネルギーをチャンバに導いてそこに電界を生成することによって、プロセス・チャンバ内で発生される。電界はチャンバ内で電子流を生成し、個々の電子−ガス分子衝突を介して運動エネルギーを伝達することによって、個々のガス原子およびガス分子をイオン化する。電子は電界内で加速されて、効率的にイオン化を起こす。イオン化されたガスおよび自由電子の粒子は、集合的にガス・プラズマまたは放電と称されるものを形成する。プラズマは、10-6から完全にイオン化されたプラズマまで様々なイオン化レベルで存在することができる(粒子の全数に対するイオン化粒子の割合に基づく)。
【0003】
プラズマ粒子は、概ね正に荷電され、一般にチャンバ内の基板の表面をエッチングするためや、このような基板上に材料の層を堆積するために使用される。エッチング・プロセス内では基板が負にバイアスされ、そのため正のプラズマ粒子が基板表面に引き付けられて表面に衝撃を与え、このようにして表面粒子を除去したり、基板をエッチングしたりすることができる。スパッタ堆積プロセスでは、ターゲットをチャンバ内で基板に対向させて配置することができる。次いでターゲットがバイアスされ、そのためプラズマ粒子がターゲットに衝撃を与え、ターゲット粒子をそこから移動または「スパッタ」する。次いでスパッタされたターゲット粒子が基板上に堆積して、その露出した表面上に材料の層を形成する。プラズマCVDプロセスでは、電気的に中性で活性なラジカルが露出表面に堆積層を形成する。
【0004】
一般に、プロセス・チャンバ内でプラズマを発生させるには様々な異なる方法がある。たとえば、一対の対向する電極を、エネルギーがプラズマに容量結合するようにチャンバ内で配向することもある。超高周波のマイクロ波領域を使用するマイクロ波共鳴チャンバもまた使用されることがある。一方、電子サイクロトロン共鳴(ECR)装置は、制御された磁界をマイクロ波エネルギーと共に使用してプロセス・ガス内に円形の電子流を発生させ、プラズマを生成かつ維持する。誘導結合プロセスもまた普及しており、特に高密度プラズマを発生できることから望ましい。誘導結合プラズマ(ICP)は、一般にプロセス・チャンバに関連付けて配置された形状コイルまたはアンテナを使用して、エネルギーをプロセス・チャンバに誘導結合し、このようにしてそこでプラズマを生成かつ維持する。
【0005】
たとえば、誘導結合プラズマ(ICP)システムのある特定の設計では、誘導コイルまたはアンテナをチャンバの上部部分に近接して配置し、チャンバ内でプラズマを生成する。さらに具体的には、アンテナをプロセス・チャンバの上部にある誘電体プレートまたはウィンドウの片面に配置し、アンテナからの電気エネルギーは、誘電体ウィンドウを介してプラズマに結合される。このような設計の1つが、本願と共通に所有される特許文献1(米国特許第5,556,521号)に示されている。
【0006】
代替ICP加工システムでは、螺旋形または筒形コイルがプロセス・チャンバの側壁部分の外側を取り巻き、チャンバの上部を介するのではなく、チャンバ側壁を介してエネルギーをプラズマに誘導結合する。このようなシステムでは、チャンバ側壁のうち一部が、誘導結合されたエネルギーが通り抜けられる誘電体材料で製作される。ウィンドウまたはチャンバ側壁に適した誘電体材料の1つは石英である。特定のICPの細部、すなわちプラズマの均一性、RFマッチング、およびアンテナまたは他の誘導性要素の性能特性などを対象とする様々な発行済み特許によって明らかなように、様々なICPシステムが周知であり、当技術分野で使用されている。
【0007】
ICPシステムの平面形状は、プラズマ密度と均一性とを決定し、ついには基板の面積にわたって加工均一性を決定する上で重要な要素である。今日のプロセスにとっては、大きな基板サイズに対応できるように、著しい大面積にわたって均一な高密度プラズマを発生することが望ましい。たとえば、今日の超高集積回路(ULSI)の製造は、約200mmの直径を有する大型基板にわたって高密度で均一なプラズマを必要とする。
【0008】
さらに具体的には、ICPシステムでは、プロセス・チャンバ内の電子を加熱または励起することによってプラズマが励起される。プラズマ電子を加熱する誘導電流は、誘導アンテナまたはコイル内のRF電流によって誘電体ウィンドウまたは側壁の内側に近接して発生する振動磁界から得られる。これらの磁界の空間分布は、アンテナまたはコイル導体の各部または各セグメントによって発生する個々の磁界の合計の関数である。したがって、誘導アンテナまたはコイルの平面形状がプラズマの空間分布を、特にプロセス・チャンバ内のプラズマ・イオン密度の空間分布および均一性を有意に決定する。一例として、米国特許第5,669,975(特許文献2)に開示されているものなどの「S字」形を有するアンテナは、アンテナの中心領域内に著しいイオン密度を確立する。より高いRF電力レベルでは、アンテナの外側部分もまたプラズマのイオン化に有意に貢献する。このようなアンテナを使用するICPシステムの重要な利点はアンテナに送達される電力に対するシステムの直線性であり、またプロセス・チャンバの半径でもある一方で、また現行のICPシステムとそこに使用されているアンテナの設計は十分なプラズマ発生をもたらした一方で、このようなシステムはなおも一定の欠点を有する。
【0009】
たとえば、既存のICPシステムとアンテナ構成の範囲内では、アンテナまたはコイルの寸法を著しく増大しないで大型の基板を扱うための大型サイズにプロセス・チャンバをスケールすることは困難である。大きな設置面積を有するICPアンテナは、加工システムに高額な改造を加えることによって収容しなければならない。さらに、大型のアンテナとそれに伴うプラズマは、より大きくチャンバ内のプロセス・パラメータに左右される。たとえば、エッチングまたは堆積プロセスなどのプラズマ・プロセスは、スパッタ・システム内の基板からターゲットまでの距離、スパッタ・システム内のターゲット材料、プロセス・チャンバ内の圧力、およびチャンバの高さおよび幅の構成などのプロセス・パラメータに対してより敏感になる。
【0010】
さらに、平坦型螺旋アンテナを使用する現行のICPシステムは、プラズマの分布がチャンバの中心軸に揃わない非対称を呈した。このようなプラズマの非対称は、プラズマの均一性と、堆積またはエッチング・プロセスの均一性とを劣化させ、それによってシステム全体の効率に影響を与える。他に、平坦型アンテナは、あるプロセスとそれに対応するパラメータ・セットで環状またはドーナツ形プラズマを呈すことがある一方、他のプロセスとその他のパラメータでは中心にピークのあるプラズマを生成することがある。それゆえ、プラズマの形状と均一性は、このようなICPシステム内では一貫せず、プロセスに依存することになる。したがって、IC製造プロセス全体が、あるプラズマ・プロセスと他のプラズマ・プロセスとで一貫しなくなる。
【0011】
S字形アンテナまたはコイルを使用する平坦型アンテナ・システムのもう1つの欠点は、コイルの外側部分がコイルの中心領域によって生成されるプラズマに端縁で影響し、このようにしてプラズマ内に方位角依存性を与え、基板上でエッチングまたは堆積された被膜内に、それに対応する方位角依存性を与えることである。つまり、コイルによって画定されるある平面軸沿いでは、プラズマがコイルの他の平面軸沿いと異なる均一性および密度を有することになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第5556521号明細書
【特許文献2】米国特許第5669975号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
それゆえ、本発明の一目的は、従来技術の欠点を克服し、高密度で均一なプラズマが生成されるプラズマ加工システム、特にICPシステムを提供することである。
【0014】
本発明の他の目的は、現行のプラズマ加工システムよりもプロセス・チャンバのサイズおよび形状への依存性が少ない均一なプラズマを提供することである。
【0015】
本発明の他の目的は、プロセス・チャンバ内で対称なプラズマを提供することである。
【0016】
本発明の他の目的は、誘導コイルまたはアンテナのコンパクトで安価な設計を維持しながら、200mmウェーハを扱うのに十分な面積などの大面積にわたって均一な高密度プラズマを提供することである。
【0017】
本発明の他の目的は、一貫したプラズマ発生を提供し、それによって圧力および/またはチャンバの平面形状もしくはサイズなどのプロセス・パラメータへの依存性がより少ない、エッチング・プロセスおよび堆積プロセスなどの一貫したプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本発明の上記の目的は、プラズマを発生かつ維持するための特有な形状をした誘導要素を使用する、プラズマによる基板加工用の加工システムによって対処される。本発明の原理に従って構成された誘導要素を使用する本明細書記載のシステムは、その誘導要素を収容するためにチャンバのサイズを著しく増大する必要なく、チャンバ内の著しい大面積にわたって均一な高密度プラズマを生成する。従来技術のプラズマ加工システムでは、プラズマに導入されるエネルギーの増大によって、誘導要素のサイズならびにそれに対応するプロセス・チャンバのサイズの著しい増大を要したのに対し、本発明はコンパクトな、したがって比較的安価な加工システムを維持しながら高密度で均一なプラズマを提供する。
【0019】
具体的には、この加工システムは、そのプロセス空間を画定するプロセス・チャンバを具備し、プロセス空間内で基板を支持するための基板支持を含む。ガス入口はプロセス空間にプロセス・ガスを導入し、システムのプラズマ源は、プロセス・ガスからプラズマを生成するように動作可能である。プラズマ源は、概ね平坦な表面を有する誘電体ウィンドウであって、プラズマが生成されるべきプロセス空間に近接したプロセス・チャンバとインターフェースする誘電体ウィンドウを具備する。誘導要素は、チャンバの外側かつ誘電体ウィンドウに近接して配置され、誘電体ウィンドウを介してプロセス空間に電気エネルギーを誘導結合して、プロセス空間内でプラズマを生成かつ維持するように動作可能である。
【0020】
本発明は、本発明の目標を達成するために、誘導要素の様々な異なる設計を企図している。本発明の一実施形態では、コイルの長手方向に沿って誘電体ウィンドウの片面から連続して配設された複数のコイル・ターンを有するコイルを具備する。コイル・ターンの少なくとも1つは1次平面内で配向され、他のコイル・ターンは、1次平面から角度をなす2次平面内で配向される。具体的には、複数のコイル・ターンが1次平面内で配向され、複数のコイル・ターンもまた1次平面から角度をなす平面内で配向される。1次平面は、誘電体ウィンドウの平坦面に概ね平行に配向される。このような方法で、1次平面内のコイル・ターンは、誘電体ウィンドウに接して水平に横たわる。1次平面から角度をなすコイル・ターンは、誘電体ウィンドウに対してある角度で配設される。一実施形態では、1次平面に対して角度をなすコイル・ターンは、概ね1次平面に直交して配向される。その他の実施形態では、コイル・ターンが1次平面から90度未満の角度をなす。好ましくは、複数組のコイル・ターンが1次平面内で配向されるのに対し、1次平面から角度をなすコイル・ターンは、これらの組のコイル・ターンの間に配置される。このような方法で、均一なプラズマが生成される。誘導要素の一部のコイル・ターンを誘電体ウィンドウに接して平面な一平面内に維持することによって、プラズマの安定性が維持される。平坦な誘電体ウィンドウから角度をなすコイル・ターンを使用すると、概ね同寸法の概ね平坦なコイルを使用して達成されるであろうよりも、誘電体ウィンドウに沿ってはるかに多くのコイル・ターンが得られる。つまり、本発明の要素は、プロセス・チャンバのサイズを著しく増大することを要さないコンパクト設計を使用して高密度で均一なプラズマを生成する。1次平面内に配向されたコイル・ターンは共面および同心であり、内部コイル端部および外部コイル端部を画定する。本発明の代替実施形態では、平坦な誘電体ウィンドウに対して角度をなすコイル・ターンは、誘導要素の構成を変え、したがってプラズマへの効果を変えるため、内部コイル端部または外部コイル端部で1次平面内のコイル・ターンに結合される。
【0021】
本発明の他の態様に従えば、この加工システムは、本発明の誘導要素と共に使用されるチャンバ側壁部分の周囲を取り巻く螺旋形コイルなどの2次誘導要素を具備することができる。このような方法で、電気エネルギーは、チャンバの端部からと、チャンバの側壁からの両方でプラズマに誘導導入される。好ましくは、1次誘導要素と2次誘導要素を独立してバイアスするため、誘導要素のそれぞれが独立した電気エネルギー源に結合される。また、誘導要素のそれぞれとプラズマとの間にファラデー・シールドを配置し、プラズマへの電気エネルギーの誘導結合を高め、容量結合を減少させることが好ましい。
【0022】
複数で独立にバイアスされた誘導要素を使用する本発明は、エッチング・プロセスおよび堆積プロセスを含む様々な異なるプロセスで使用できる。本発明は、イオン化物理気相堆積(iPVD)で特に有利であることが発見されている。そのために、ターゲット材料を誘電体ウィンドウに近接して配置し、その誘電体ウィンドウに近接した本発明の誘導要素によって発生するプラズマによってスパッタされるようにすることもある。
【0023】
本発明の他の態様に従えば、チャンバの端壁にある誘電体ウィンドウと共に使用される誘導要素が複数のコイル・ターンを有するコイルを具備する。しかし、コイル・ターンが平坦な誘電体ウィンドウに平行な平面内、および平坦な誘電体ウィンドウから角度をなす他の平面内にあるのではなく、代替誘導要素が、概ね水平な平面内に間隔をおいて配向されて垂直に積み上げたコイル・ターンを形成する様々なコイル・ターンの部分を有する。垂直に積み上げたコイル・ターンは、誘電体ウィンドウに概ね平行に配向される。ここでも、積み上げたコイル・ターンを使用することによって、要素の水平設置面積全体を増大することなく、したがって誘導要素の収容に必要なプロセス・チャンバのサイズを増大することなく、はるかに多数のコイル・ターンを誘導要素内で使用することができる。
【0024】
本発明の他の態様に従えば、誘導要素がコイルの形態をなさず、非コイル形式で配列され、誘導要素の中心の周囲に円形で配置された複数回反復された導体セグメントを具備する。一実施形態では、誘導要素の反復された導体セグメントが誘導要素の中心から外側へ放射状に伸びるように配設される。他の実施形態では、反復されたセグメント自体が個々のコイルを形成する。コイルは誘導要素の中心の周囲に円形で配列され、単なるより大型のコイル要素の連続した個々のターンではない。複数回反復された導体セグメントを具備する誘導要素は、単一平面内の反復されたセグメントとして形成することもできるが、反復された導体セグメントの層を具備することもできる。たとえば、誘導要素の反復された導体セグメントが第1層を形成することができ、第2層は、第1層内のセグメントと概ね同一の広がりを有する同様な反復された導体セグメントによって形成することができる。反復された導体セグメントはまた、チャンバの端壁部分と側壁部分との両方からエネルギーをチャンバに結合するために使用されることもある。そのために、反復された導体セグメントは、チャンバ端壁沿いに配向された水平方向セグメントと、側壁沿いに配向された垂直方向セグメントとを含む。
【0025】
本発明の他の態様に従えば、加工システムは、チャンバの側壁部分と端壁部分との両方から同時にエネルギーをプロセス空間に結合するように動作可能な誘導要素を使用することができる。そのために、プロセス・チャンバは誘電体材料で形成された側壁部分と端壁部分とを有する。従来のプロセス・チャンバでは、誘電体ウィンドウなどの端壁部分が平坦な導体要素と共に使用されることがある。あるいは従来のプロセス・チャンバは、システムにエネルギーを誘導結合するために螺旋形コイルが側壁の周囲を取り巻き、誘電体材料で形成された側壁を使用することがある。本発明の原理に従えば、プロセス・チャンバが誘電体材料で形成された側壁部分と端壁部分とを含む。誘導要素は、チャンバの側壁部分と端壁部分とを介してエネルギーをプロセス空間に同時に結合するために、チャンバ側壁部分沿いに配向されたセグメントと、またチャンバ端壁沿いに配向されたセグメントとを具備する。そのために、誘導要素は、複数のコイル・ターンを有するコイルを具備する。コイル・ターンのセグメントはチャンバ端壁部分沿いに配向され、その他のコイル・ターンのセグメントはチャンバ端壁部分沿い配向される。コイルは、側壁沿いに配向されるコイル・ターンのセグメントの部分が互いに角度をなすように構成することができる。たとえば、コイル・ターンの側壁部分が、コイル・ターンのその他の側壁部分に概ね直交するように配向されることがある。あるいは側壁部分が、直交配向に伴う直角ではなく、様々な異なる角度で配設されることがある。コイルは一般に、1組のターンが概ねチャンバの片面沿いに配置され、他の組のターンが概ねチャンバの他面沿いに配置されたコイル・ターンの組を有する。
【0026】
本発明の誘導要素を使用する本発明の加工システムは、コンパクトな設計で高密度で均一なプラズマを提供する。本発明の1次誘導要素は、イオン化物理気相堆積などのプラズマ・プロセスをさらに向上させるため、2次誘導要素と共に使用することができる。本発明を使用して、誘導要素を収容するために必要なチャンバのサイズの高額な増大を要せずに、はるかに大量の電気エネルギーを維持されたプラズマに誘導することができる。本発明のこれらの利点およびその他の利点は、下記の詳細な説明で述べる。
【0027】
本発明の好ましい実施例は、以下に添付図面を参照して例を挙げて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1A】本発明のプラズマ加工システム内で使用される誘導要素の斜視図である。
【図1B】図1Aの誘導要素の正面図である。
【図1C】本発明の原理に従った誘導要素の代替実施形態の斜視図である。
【図1D】本発明の原理に従ったプラズマ加工システムを一部分解した側面概略図である。
【図1E】ファラデー・シールドを有して使用される図1の誘導要素の斜視図である。
【図1F】誘導要素の斜視図である。
【図2A】本発明の原理に従った誘導要素の代替実施形態の斜視図である。
【図2B】中央領域内の導体の数を減らした図2Aの誘導要素の斜視図である。
【図3A】本発明の原理に従った誘導要素の代替実施形態の斜視図である。
【図3B】図3Aの誘導要素の正面図である。
【図4】本発明の原理に従った誘導要素の代替実施形態の斜視図である。
【図5A】本発明の原理に従った誘導要素の代替実施形態の斜視図である。
【図5B】本発明の原理に従った誘導要素の代替実施形態の斜視図である。
【図6A】本発明の原理に従った平坦な誘導要素の代替実施形態の上面図である。
【図6B】本発明の原理に従った概ね平坦な誘導要素の代替実施形態の斜視図である。
【図6C】本発明の原理に従った概ね平坦な誘導要素の代替実施形態の斜視図である。
【図6D】本発明の原理に従った概ね平坦な誘導要素の代替実施形態の斜視図である。
【図7A】電気エネルギーをプロセス・チャンバにその側部および端部から結合するために使用される本発明の誘導要素の実施形態の側面図である。
【図7B】電気エネルギーをプロセス・チャンバにその側部および端部から結合するために使用される本発明の代替誘導要素の実施形態の側面図である。
【図7C】電気エネルギーをプロセス・チャンバにその側部および端部から結合するために使用される本発明の代替誘導要素の実施形態の側面図である。
【図7D】電気エネルギーをプロセス・チャンバにその側部および端部から結合するために使用される本発明の代替誘導要素の実施形態の概略斜視図である。
【図8A】本発明の原理に従ったスパッタ堆積加工システムを一部分解した側面概略図である。
【図8B】本発明の原理に従ったスパッタ堆積加工システムを一部分解した側面概略図である。
【図8C】本発明の原理に従ったスパッタ堆積加工システムを一部分解した側面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。
【0030】
図1Aは、図1Dに示すようなプラズマ加工システムに使用するための、本発明の原理に従った誘導要素の実施形態の斜視図である。誘導要素10は、電気エネルギーをプロセス・チャンバに誘導結合して、プラズマを点火して維持し、基板を加工するために使用される。プラズマ加工は、IC製造で広く使用される。たとえば、本発明のシステムは、スパッタ・エッチングおよび堆積プロセス、プラズマCVD(PECVD)プロセス、イオン化PVD(iPVD)プロセス、および反応性イオンエッチング・プロセス(RIE)に使用されることがある。
【0031】
図1Dは、そのプロセス空間14を画定するプロセス・チャンバ13を有する加工システム12を示す。加工システム12は、本明細書に記載する様々な誘導要素と共に使用するのに適している。空間14内の基板支持17は、加工される基板18を支持するように構成されている。基板支持17は、より大きなベース16を伴うことができる。ガス入口20は、プロセス・ガスをプロセス空間14に導入してプラズマを形成するために、アルゴン・ガス供給源などのプロセス・ガス供給源22に結合される。基板バイアス電源19は、プラズマ加工の当技術分野で周知のように、基板支持17および基板18をバイアスする。この加工システムは、石英またはアルミナなどの誘電材料で形成され、電気エネルギーを要素10からプロセス空間14に誘導結合するために使用されるウィンドウまたは上部部分24aをさらに含む。
【0032】
そのために、図1Aに図示する要素10などの誘導要素が、誘電体ウィンドウ24aの上部に配置される。この加工システムは、プロセス空間14を囲む側壁24bおよび24cをさらに含む。側壁24cのうち一部は石英などの誘電材料で形成されることができるが、もう一方の部分24bは金属で形成される。側壁24cのうち一部は、下記で詳しく論じるように、電気エネルギーを誘導要素から空間14に誘導結合するために使用されることができる。誘導要素は本明細書で開示されているいくつかの誘導要素のいずれでもよく、要素10は図1Dに例示のために使用しているにすぎない。誘導要素10は、周知のICP原理に従い、誘導要素10をバイアスしてプロセス空間14内に変化するRF磁界を生成し、そこにプラズマ28を形成するためのRF電源26bなどの電気エネルギー源に、マッチング・ユニット26aを介して結合されている。マッチング・ユニットは、RF電源26bおよび誘導要素10のインピーダンスを適合させ、様々な条件下で要素10およびプラズマに最大供給電力を提供するための、通常の当業者に周知の電気回路である。次いでプラズマ28は、プラズマ加工の通常の当業者に周知の原理に従って、プラズマ・エッチングまたはスパッタ堆積などによって基板18を加工するために使用される。
【0033】
誘導要素10内のRF電流によって生成された誘導磁界は、誘電体ウィンドウ24aを介して空間14に結合される。誘電体ウィンドウ24aは概ね平坦であり、誘導要素10が接して配向される平坦な表面30を有することになる。当然ながら平坦でないウィンドウが使用されることもあり、当技術分野で周知の誘電体ウィンドウに従って、ウィンドウが起伏のある表面またはその他の形状の表面を有することができる。誘導要素10の構成と、そのプロセス・チャンバ12および誘電体ウィンドウ24aに対する位置は、本発明の原理に従い、プラズマの形状、密度、均一性に影響を及ぼすことになる。本発明は、そのような誘導要素によってプロセス・チャンバ内に生成されるプラズマを変えるような特有の設計を誘導要素に使用することによって、従来技術のプラズマ加工システムの様々な短所に対処する。
【0034】
プロセス空間14への誘導結合を高めるため、ファラデー・シールドが使用されることがある。図では、上部ファラデー・シールド15が図1Dの誘電体ウィンドウ24aに近接して配置され、チャンバ13の内側と基板18とに向かうように面してウィンドウの側面に近接して配置されている。下部ファラデー・シールド21は、チャンバ内に配置され、誘電体側壁24cの片面沿いに配向されることがある。図では、ファラデー・シールド15と21はどちらもチャンバ13の内側上に配置されているが、チャンバの外側上に配置することもできる。ファラデー・シールドは、要素10などのいかなる誘導要素と、プラズマが発生するプロセス空間14との間にも配置される。下部ファラデー・シールド21は、側壁24c周囲の要素などの2次誘導要素を使用する際に特に有利なことがある(図8Aから8B参照)。ファラデー・シールドは当技術分野で周知であり、要素10から誘電体ウィンドウをはさんでプロセス空間に至るエネルギーの誘導結合の改善を効果的にもたらす。ファラデー・シールドはまた、誘導要素とプラズマとの間の望ましくない容量結合を減少させる。
【0035】
一般にファラデー・シールドは、図1Dのシールド15、21に図示するように、シールド内に形成された複数の溝穴を含むことになる。シールド15では、図1Eに図示するように、スロット23がシールドの1端から次へ伸びるように配列されている。図1Eに示すように、シールド15は金属製のプレートの形態をなし、そこに形成された複数の概ね水平および平行な溝穴23を有する。シールド21は、そこに概ね垂直な溝穴25を有し、側壁24cの内側を取り巻く円筒形の形態をなす。しかし、シールド15内の溝穴23などの溝穴は、誘導要素の形状に応じて他の配向で構成されることもある。たとえば、図6A、6D、または7Dに示し、下記で詳しく論じるように、溝穴が他の誘導要素内の導体の形状に従うことがある。
【0036】
図1Aに戻るが、アンテナと称されることもある誘導要素10は、複数のコイル・ターン32を有するコイルの形態をなす。「誘導要素」および「アンテナ」という用語は、本明細書では相互交換的に使用する。誘導要素またはコイルは、当技術分野で周知の原理により、電気導体で形成される。引き伸ばされた金属線または金属管などの導体は、本発明の原理に従って構成かつ形作られ、電流が要素を通過する際にエネルギーをプロセス・チャンバに誘導結合する要素を形成する。
【0037】
図1Aを参照するが、コイル10は、コイルの長手方向沿いに連続して配設される複数の連続コイル・ターン34aおよび34bを具備する。本発明の原理に従って誘電体ウィンドウと共に使用される場合は、図1Dに示すように、コイル・ターンが誘電体ウィンドウ24aの1端からウィンドウのもう1端へ、または一方の側面から他方の側面へ連続して配設される。つまり、本発明の少なくとも1つの実施形態のコイル・ターンは、誘電体ウィンドウを横切ってターンが交互に配列される。コイル・ターン34aなどの要素10のコイル・ターンの少なくとも1つは、図1Aに破線36によって、また図1Dに類似の参照数字によって示すように、概ね水平な平面によって画定される1次方向または平面に配向される。その他のコイル・ターン34bは、参照数字38(図1A)の概ね垂直な平面によって示すように、2次方向または2次平面に配向される。本発明の原理に従って、コイル・ターン34aは、コイル・ターン34bが配向される平面38などの2次平面から角度をなす平面36などの1次平面に配向される。一実施形態では、平面36およびコイル・ターン34aが平面38およびコイル・ターン34bに対して概ね直交する。
【0038】
図1Dに示すシステム12などの加工システムでは、1次水平面36が誘電体ウィンドウの平坦な上面30に概ね平行に配向されるように、誘導要素10が誘電体ウィンドウ24aの片面に接して配置される。つまり、コイル・ターン34aおよび要素10のその他の同様に配向されるコイル・ターンは、誘電体ウィンドウ24aの平坦な表面30に概ね平行な平面内で配向される。このような配向では、コイル・ターン34bおよびコイル・ターン34bと同様に配向されるコイル・ターンは、図1Dおよび1Eに示すように、垂直面38内に配向され、かつ同様に配向されるが平面38から横方向に間隔をおいたその他の垂直面内に配向される。このようにしてコイル・ターン34bは、誘電体ウィンドウの平坦な表面30に概ね直交して配向される。図1Aの実施形態では、ターン34aのような複数のコイル・ターンが概ね水平に配向され、かつ互いに概ね共面および同心である。コイル・ターン34bは水平面36より上で角度をなし、図1Aの実施形態では、概ね垂直に配向されている。コイル・ターン34bは共面でなく、間隔をおいた垂直面内にある。間隔をおいた垂直面38は、図1Aおよび1Dに示すように互いに概ね平行である。
【0039】
コイル・ターン34bは概ね垂直に配向されているが、これらのターンはまた、平面36内またはそれに概ね平行に配向されるセグメント39を含む。セグメント39は互いに概ね平行であり、コイル・ターン34aのセグメント41に概ね平行である。要素10の様々なコイル・ターンの組合せセグメント39、41は、図1Aの43で示す領域を作り、これによりプラズマ内に有効なイオン化の大領域ができる。有効イオン化領域43は、概ね同様な水平設置面積を有する完全に平坦なコイルの従来技術で達成され得る領域より大きい。
【0040】
たとえば、多数のコイル・ターン(つまりターン34b)がターン34aと共面でないため、既存のターン34aの外側を囲む追加ターンを要することなく、これらのターン34bがプラズマのイオン化でセグメント39に貢献できる。理解できるように、図1Fに示すS字形コイルのような従来技術の水平コイルでは、各追加セグメント41が、既存のターンの外側周囲に、ターン34aと類似で他の共面および同心のターン35を必要とするであろう。これらの追加ターン35は、コイルの水平設置面積を著しく増大させるであろう。より大きなコイル設置面積は、順により大きな誘電体ウィンドウ24、およびより大きなチャンバ13を要し、これがチャンバおよびシステム全体の全体費用を増加させる。しかし、要素10のイオン化領域43に貢献する各追加セグメント39は、平面36内の再外郭のコイル・ターンを取り巻く他のコイルを必要としない。逆に、コイル・ターン34bは平面36の外側にあり、その水平設置面積ではなく、要素10の垂直方向の高さを増加させるだけである。したがって、水平断面積の小さいプロセス・チャンバを使用することができる。要素10のコイル・ターンは、図1A、1B、1D、1Eに概ね半円の形状で示されているが、本発明に従って他の形状を有することも可能である。
【0041】
図1Aから1E、2Aから2B、3Aから3B、4、5Aおよび5Bに示すように、本発明の原理に従った誘導要素は、概ね同様な設置面積を有する従来技術の平坦な要素で達成し得るよりも大きな有効イオン化領域をプラズマ・プロセス・チャンバ内に生成する。
【0042】
一実施形態では、図1Dおよび1Eに示すように、本発明の誘導要素がファラデー・シールドとの関係で配置され、そのため、領域43を形成するセグメント39、41がファラデー・シールドの溝穴に直交するように配向されている。図1Eに示すように、誘導要素10は、誘電体ウィンドウ24aおよび溝穴付きシールド15より上に配置されている。溝穴23は、領域43内のコイル・ターンのセグメント39、41に概ね直交するようにシールド15内で配向されている。図1Eに示すように、このような配列は、このようなシールドのないシステムよりもさらに大きな有効領域の誘導エネルギー結合およびガス・イオン化をプラズマ内に確保する。
【0043】
それゆえ、誘電体ウィンドウ24およびチャンバ13の同じ断面寸法を維持しながら、従来技術のコイル誘導要素およびアンテナによって達成し得るよりも大きく高密度なプラズマを、本発明の誘導要素10によってチャンバ13のプロセス空間14内に生成できる。さらに、図に示されたもの、および本明細書に記載されたもののような誘導要素は、誘電体ウィンドウおよびプロセス・チャンバの水平断面寸法を単位としてコイル・ターンの制限される数が少ない。このような方法で、図1Fに示すS字形アンテナなどの純粋に平坦なコイル・アンテナで空間的に可能であろうよりも多くの数の有利なコイル・ターンが、本発明の誘導要素によって領域43内で使用できる。主要なプラズマ発生領域43は誘導要素の中心に概ね近接しているため、たとえば図1Aから1E、2Aから2B、3Aから3B、4、5Aから5Bなどの本発明の設計を使用すると、より多くのコイル・ターン39、41を誘導要素の中央領域43内に配置でき、誘導要素の水平設置面積または断面寸法に著しい影響を与えないままで、より高密度なプラズマを生成できる。また、本発明の誘導要素10は、誘電体ウィンドウ24の平面25に概ね平行に配向された平面内で一定のコイル・ターン(つまりターン34a)を維持することによって、プラズマの安定性をなおも維持することが発見された。
【0044】
本明細書では概ね、本発明の原理による様々な誘導要素を説明する際に、種々のコイル・ターン、コイル・ターン部分、およびコイル・ターン・セグメントまたはコイル・セグメントの異なる配向、方向、および平面を、本明細書で開示されるプロセス・システムの誘電体ウィンドウ24aから導出される水平基準面25に対して「水平」および「垂直」であるとして説明する。同様に、コイル・ターン、コイル・ターン部分、およびコイル・ターン・セグメントも、同じ水平基準面25に対して平行(水平)または直交(鉛直)であるとして示す。しかし、「水平」、「鉛直」、「平行」、および「直交」などの命名は、絶対的な制限ではなく、1つの基準面に対して水平であるとして示される要素は、基準面が90°回転する場合に実際には鉛直に配向することを当業者は容易に理解されよう。さらに、1つの基準面に概ね平行である要素は、その第1の基準面と概ね90°に配向することのできる別の基準面に概ね直交することになる。同様に、本発明の誘導要素のコイル・ターンはコイルのターンであるので、常に完全に、または絶対に単一平面内にあるわけではない。むしろ、水平、鉛直、平行である、または直交すると示されるコイル・ターン、ターン部分、およびターン・セグメントは、適切な箇所において、本発明の誘導要素の構成に応じて、ターン、部分、セグメント、または配向が、概ね、または大部分が、鉛直、水平、平行であるか、または直交するという意味である。さらに本明細書では、平面は、方向または配向を示すために使用され、このことは、コイル・ターンを常に平面的なものとして画定するという意味ではない。したがって、本発明、具体的には請求の範囲に記載される本発明は、当業者は理解するように、絶対的な配向に限定されない。
【0045】
図1Aのコイル34aに類似の要素10のコイルでは、プラズマ電流は、プロセス空間内部のプラズマ28を安定化する、プロセス空間14内の閉ループ内に維持される。この電流ループは、図1Aでループ35として略図で示される。前述のように、要素10などの本明細書で開示されるコイル設計と類似のコイル設計での別の利点は、誘導要素10内のコイル・ターンの合計数と、要素の中心に近接したターンの数とが、中心を共有し、同一平面にある多数のコイル・ターンを水平面内で使用する従来技術の平面コイルのように、誘電体ウィンドウの寸法によって制限されないことである。本発明では、ターンは、水平面の上で角度をなし、より多数の直交コイル・ターン34bを誘導要素10の中心に配置することができ、それによって要素10および誘電体ウィンドウの全直径または長さ/幅の寸法を著しく増大させることなく、要素の中心領域43での有効ターン・セグメント39の数と、プラズマに結合されるエネルギー量とを増大させることができる。
【0046】
再び図1Aを参照すると、概ね垂直な各コイル・ターン34bは、概ね水平面36内に配設され、したがって誘電体ウィンドウ24の平らな表面30に概ね平行なセグメント39を含む。上記で論じたように、誘導要素またはアンテナ10は、セグメント39も互いに、かつターン・セグメント41と概ね平行となるように構成される。コイル・ターン・セグメント39および41の組み合わせにより、誘導要素要素10の主プラズマ生成領域が提供される。プロセス空間内にプラズマを拡散させるか、またはプラズマを束縛するために、各セグメント39および41のそれぞれの間の距離の変更を利用することができる。すなわち、概ね同じ水平フットプリント内で誘導要素10内のコイル・ターンの数が増加すると、各セグメント39、41のそれぞれをより接近させて配置することになり、したがってプラズマがより密になる。コイル・ターンの数が減少し、種々のコイル・ターン・セグメント39および41の間の間隔が増大することにより、プラズマはより疎になる。
【0047】
図1Bに示すように、種々の鉛直コイル・ターン34bは、鉛直基準面38に概ね平行に配向する。図1Bに示すように、鉛直コイル・ターン34bは1つのターンから次のターンに移行しなければならないので、鉛直コイル・ターンは、それぞれ完全に、基準面38に完全に平行な、画定される鉛直平面内にあるわけではない。しかし本発明を述べる目的では、鉛直コイル・ターン34bが基準面38に概ね平行であり、基準面36と、誘電体ウィンドウ24aの平らな表面30とに概ね直交するとみなす。
【0048】
図1Aに示す本発明の一実施形態では、誘導要素10は、水平コイル・ターン34aが概ね平面36内に配向するように形成される。ターン34aは、平面36に概ね直交する鉛直コイル・ターン34bのいずれかの側に配置される。そのようにして、プラズマの全体の対称性が維持される。RF電源26aからのRF出力は、セグメント42でマッチング・ユニット26aを使用する要素10に結合される。セグメント42は、図1Bでは概ね垂直な配置で示される。しかし、セグメント42を平面36内に配向することもできる。セグメント42は、コイルの内部端42aに位置する。RF出力は、誘導要素を形成するコイルの端部で図1B〜1D、2A〜2B、3A〜3B、4、および5A〜5Bの要素に同様に結合する。
【0049】
図1Aおよび1Bの実施形態に示す要素10は、どんな誘電体ウィンドウ24aの形状にも適合するように修正することができる。例えば、図1Aおよび1Bに示す実施形態は、円形または楕円形の誘電体ウィンドウに対して概ね適する半円形状を有する水平コイル・ターン34aを使用する。図1Cに示すような誘導要素またはアンテナ10aは、長方形の形状の水平コイル・ターン43aを有し、ウィンドウ形状を最も効果的に利用し、要素1Aで多数のコイル・ターンを保証する上で長方形誘電体ウィンドウに適する。同様に、図1A〜Cおよび本明細書の他の図に示すように、鉛直ターン34bの形状を、半円ではなく、長方形または他の形状に変更することができる。図4に、半円水平コイル・ターン53および長方形鉛直ターン55を使用する要素10eを示す。当業者は容易に理解されるように、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書で説明する誘導要素のコイル・ターンの形状に様々な修正を行うことができる。例えば、より多数の、または少数の水平ターン34aおよび/または鉛直ターン34bを本発明の原理に従って使用し、特定のプロセス空間およびチャンバの幾何形状用に設計を調整することができる。
【0050】
ICPシステム内で使用される誘導要素またはアンテナ向けの代替設計を図2Aおよび2Bに示す。図2Aおよび2Bでは、水平ターンの構成の違いと、RF電源へのその結合の違いとのために、水平コイル・ターンと鉛直コイル・ターンとの間の結合が変化する。
【0051】
具体的には、図1Aの誘導要素10は、らせん式に巻かれ、内部コイル端42aおよび外部コイル端42bが画定される複数の水平コイル・ターン34aを使用する。図1Aに示す実施形態では、RF出力は、内部コイル端42aに近接する水平コイル・ターンと結合する。しかし、図2Aに示す実施形態では、RF出力は、外部コイル端46bでアンテナ10bと結合する。内部コイル端46aでは、鉛直コイル・ターン48は、水平コイル・ターン48と結合し、一体の要素10bを提供する。本発明の原理によれば、水平コイル・ターン45および鉛直コイル・ターン48の数を変更することができる。例えば、図2Bのアンテナ10cは、図2Aのアンテナ10bよりも少ない数の鉛直コイル・ターン48を使用する。
【0052】
図3Aを参照すると、本発明の別の実施形態では、水平基準面36と鉛直基準面38との間の平面にあるように傾斜するか、または角度をなす直立コイル・ターンを有する誘導要素を使用することができる。図3Aに示すように、誘導要素10dは、水平コイル・ターン50aと、概ね水平面の外側にある直立コイル・ターン50bとを有する。水平コイル・ターン50aは、水平基準面36に概ね平行に配置され、したがって誘電体ウィンドウ表面30に概ね平行となる(図3Bを参照)。コイル・ターン50bは水平基準面36の上で角度をなす。1つまたは複数のコイル・ターン50bの大部分を、直交または鉛直面38内に配置することができる。しかし、本発明の別の態様によれば、コイル・ターン52などの他のコイル・ターン50bが水平基準面36と鉛直基準面38との間で傾斜するか、または角度をなすようにすることができる。コイル・ターン52の傾きまたは角度は、誘電体ウィンドウを貫通する、要素1Dの磁場の等高線に影響を与え、したがってプラズマに送達されるエネルギーに影響を与える。したがって、中心コイル・ターン52は、アンテナ10dのインダクタンス特性に影響を与え、プラズマの形状および密度に対する可変性を提供する。このようにして、誘導要素またはアンテナの操作を特定のプロセス・チャンバや、プラズマに送達されるRF出力のレベルなどの他のパラメータに調整するのに適するようにコイル・ターン52の傾きを変更し、望ましい密で一様なプラズマを提供することができる。
【0053】
本明細書で開示されるような誘導要素またはアンテナを使用する本発明のシステムの別の利点は、このシステムを誘導要素に対する「ホット・スポット」をなくするために使用できることである。誘導要素は、エネルギーをプラズマに結合することに対して最も大きな役割を担うその主要部分または領域を一般に有する。図1Fに示すような従来技術のS型コイルでは、その部分は、概ね、コイル・ターンの平行セグメントが整列される要素の中心43にある。しかし、図1Fの誘導要素37の主要プラズマ部分43は、プラズマのある領域(すなわちホット・スポット)で過剰なエネルギーをしばしば供給する。その結果、水晶ウィンドウなどの誘電体ウィンドウ24aが、実際にICPシステム内でスパッタまたは侵食される可能性がある。そのような誘電体ウィンドウ24aのスパッタリングは、堆積プロセスであっても、エッチ・プロセスであっても、全体のプラズマ・プロセスを汚染する可能性がある。誘電体ウィンドウのスパッタリングを低減するためにチャンバ内でファラデー・シールドを使用する場合、そのシールド自体がスパッタリングされる可能性があり、それによってもプラズマ・プロセスが汚染される可能性がある。図1A〜1E、2A〜2B、および3A〜3Bに示すような本発明の誘導要素では、要素の中心領域43のコイル・ターンは、セグメント39などのあるセグメントが水平面内にあっても、そのコイル・ターンの大部分が水平面の上にあるように構成され、配列される。そのような構成を用いて、本発明者は、プラズマ中の望ましくないホット・スポットと、生じるファラデー・シールドまたは誘電体ウィンドウのスパッタリングとを低減することができることを発見した。そのようなスパッタリングは、基板のプラズマ・プロセスでの汚染を引き起こす可能性があるので、したがって本発明はそのような汚染を低減する。
【0054】
図5Aおよび5Bに、本発明の原理によるプロセス・システムで使用するための、3次元誘導要素の追加の実施形態を示す。図5Aおよび5Bに示す誘導要素またはアンテナは、アンテナ設計の全体の水平フットプリントを著しく増大させることなくプロセス空間内に密で一様なプラズマを供給するための、概ね水平な面の外側に配向するセグメントまたは部分を有するコイル・ターンを使用する。本発明の別の態様によれば、図5Aおよび5Bの誘導要素は、要素の鉛直高を低減することもできるコイル・ターンを使用する。図5Aおよび5Bの要素は、基部面の上方に鉛直に起き上がるが、要素の全体の鉛直高を制限するためにやはり概ね水平に延びる追加のコイル・ターンを使用する。
【0055】
次いで図5Aを参照すると、誘導要素60は複数のコイル・ターン62を含む。コイル・ターン62のうちのいくつかは、図に示すような離隔され概ね平行な平面に配向するターン部分64を含む。この離隔され概ね平行な平面は、概ね水平に配向するように示されている。すなわち、誘導要素60が図1Dに示すように誘電体ウィンドウの上端に配置される場合、コイル・ターン62の部分64は、誘電体ウィンドウによって画定される平面25およびその平面の上の空間に平行な、概ね水平な平面にあることになる(図1Dを参照)。そのようにして、コイル・ターン部分は、概ねスタックされたコイル・ターンを形成する。しかしコイル・ターン62のうちのいくつかは、コイル・ターンの部分の鉛直高を上げるように、すなわち水平に配向するコイル・ターン部分を鉛直にスタックするように概ね鉛直に配向する、その部分またはセグメント66も含む。コイル・ターン62は、大部分が水平に配向するように構成される。したがって図5A、5Bに示すように、誘導要素60のコイル・ターン62のうちのいくつかは、互いに鉛直にスタックされるターン部分またはセグメントを含む。誘導要素60の構成は、鉛直に配向する部分66および水平に配向する部分64を有するコイル・ターンを使用するが、コイル・ターン62は、スタックされた形状で互いに離隔された複数の水平面内に、大部分が概ね水平に配向する。すなわち、各コイル・ターンのかなりの部分またはセグメントが概ね水平に配向する。コイル・ターンの鉛直部分66により、コイル・ターン62が図5Aに示すスタックされた形状を形成するように、水平部分64の間の鉛直方向の間隔が提供される。そのようにして、誘導要素の水平フットプリントを著しく増大することなく、誘導要素の効果的なプラズマ生成領域を増大させることができる。さらに、コイル・ターンは、大部分が水平に配向するように構成されるので、誘導要素の鉛直高も最小化される。具体的には、コイル・ターン62は、互いに概ね平行かつ同一平面上にあり、要素60の中心プラズマ生成領域71を画定する平行部分68を含む。本発明の原理に従って、スタックされたコイル・ターン62により、誘導要素の全体の水平フットプリントを増加させることなく、誘導要素60の中心71に近接して配置すべきより多数の部分68が提供される。誘導要素60内の追加のコイル・ターン62は、より大きな水平フットプリントではなく、誘導要素への追加の鉛直高に変換される。したがって、誘導要素60は、プラズマ・プロセス・システム中のプロセス・チャンバの水平断面寸法を著しく増大させることなく、密で一様なプラズマを生成または維持するために使用することができる。図5Aに示すように、RF出力は、内部コイル端70で誘導要素60に誘導的に結合される。コイル・ターン62はスタックされ、大部分が水平に配向するので、鉛直高は、例えば図1の要素10の場合ほどは著しく増大しない。このようにして、要素60により、水平および鉛直的にコンパクトな設計が提供され、通常は実質的により大きな誘導要素を必要とする、密で一様なプラズマを維持するためにこの要素60を使用することができる。
【0056】
図5Bに本発明の原理による誘導要素の別の実施形態を示す。この実施形態では、図5Aの誘導要素60の様々な特徴、ならびに図1Aに示す誘導要素10の特徴の組み合わせを使用する。より具体的には、誘導要素72は、前述のようなスタックされた形状の、またはスタックされた形状から角度をなすコイル・ターン62を含む。コイル・ターン62は、大部分が水平面内に位置する。それらのターンの水平部分64が、鉛直部分よりも著しく長いからである。そのようにして、コイル・ターン62は、スタックされた形状で、図5Aの誘導要素に類似の鉛直に離隔された水平面内に配向する。誘導要素72は、スタックされた構成に角度をなして配向する1つまたは複数のコイル・ターン74も含む。図5Bでは、コイル・ターン74は、スタックされたコイル・ターン62に概ね直交する鉛直面に大部分が配向する。しかし、追加のコイル・ターン74を水平または鉛直方向の間のいずれかの方向に角度をなすことができる。RF出力は、外部コイル端76で誘導要素72に結合する。図5A〜5Bの要素のコイル・ターンは、概ね半円形状として示されているが、他の形状も有することができる。同様に、図5Bでは概ね鉛直に配向するコイル・ターン74が示されているが、図3Aおよび3Bに示されるのと同様にコイル・ターン74を水平と鉛直の間の角度をなすことができる。
【0057】
図6A〜6Dに、本発明の原理によるプラズマ・プロセス・システム内で使用するための誘導要素用の別の代替設計を示す。図6A〜6Dの要素は、比較的接近して隔離された巻きコイル・ターンを有する、コイルの形態の従来の誘導要素からの変形形態である。すなわち、図6A〜6Dは、非コイル形式に配列された、反復された導体セグメントを使用する誘導要素の実施形態を示す。より具体的には、誘導要素に関して、反復された導体セグメントは、本明細書で説明する他の実施形態に関して説明したような、単なる反復されたコイルのコイル・ターンの形態ではない。具体的には、図6A〜6Dの実施形態は、プラズマ中にエネルギーを結合するために平面誘電体ウィンドウを使用するように設計される。図6A〜6Dの誘導要素は、誘導要素の中心の周りに円形パターンに配置される複数の、同一の反復された導体セグメントをそれぞれ備える。図6A、6C、および6Dなどの一部の要素は、誘導要素の中心から半径方向外側に延びるように配設される、反復された導体セグメントを有する。そのような誘導要素は、プロセス・チャンバ内部にリング形状のプラズマを生成し、そのような誘導要素の中心に近接して配置することがある他の追加のハードウェアと共に使用することができる。例えば、プラズマ・プロセスのために図6A〜6Dの誘導要素の中心に、マグネトロン装置、ガス注入アセンブリ、測定装置、および他のプロセス・ハードウェアを配置することができる。図6A〜6Dに示す要素は、隣接する中心を共有する複数のコイル・ターンを含む従来の巻きコイルまたはアンテナとは幾分異なる。実施形態のうちのいくつかは、図6Bの誘導要素などのような複数の層を使用し、図6Bの誘導要素は、概ね円形パターンに配列された、コイル・ターンの形態の反復されたセグメントを使用するが、図6A〜6Dの誘導要素は、従来の巻きコイルまたはらせんコイル・アンテナと比較して、概ねアンテナの端部で入力インピーダンスが減少する。さらに、図6〜6Dの誘導要素は、従来のコイル設計と比較して、より低いインダクタンスを有することができる。
【0058】
図6Aを参照すると、誘電体ウィンドウの水平面に概ね平行な平面に配向するように構成される誘導要素80が示されている(図1Dを参照)。誘導要素80は、誘導要素の中心84から半径方向外側に延びるように配置される複数の反復されたセグメント82を形成する。反復される各セグメント82は、プラズマの生成に寄与し、セグメントが中心84の周りに半径方向に配置されるので、そのような要素で円形またはリング形状のプラズマが生成される。誘導要素80は、基準円87によって示すように大部分が円形形状である外部部分86を含む反復された導体セグメント82を有する。本発明の原理によれば、誘導要素80は、誘導要素の中心84に近接して配置することができるマグネトロン、ガス注入アセンブリ、または測定装置などの他のプロセス構成要素と共に組み合わせて使用することができる、密で一様なリング形状のプラズマを生成する。プラズマ生成は、反復されたセグメント86に近接した中心から半径方向外側に大部分は維持されるからである。誘導要素80は、誘導要素の概ね一方の側が時計方向などの一方向に電流を導通し、誘導要素の他方の側が反時計方向などの反対方向に電流を導通するように、概ね誘導要素の中心84を通って延びるクロスオーバ・セグメント88を含む。そのようにして、リング形状プラズマ内でより整合性のあるプラズマ密度が達成される。RF出力は、端子81で要素80に結合する。
【0059】
図6Bに、平面誘電体ウィンドウに概ね平行な平面に配向するようにやはり構成され(図1Dを参照)、個々のコイルを形成する、反復された導体セグメント92を含む誘導要素90を示す。セグメント92は、コイルを形成するが、反復された導体セグメントは、コイル形式には配列されない。すなわち、個々のコイル92は、単により大きなコイル構造のコイル・ターンなのではない。各コイル92は、約1と2分の1のターンを含み、誘導要素の中心94の周りに概ね円形パターンで配列される。図6Bの実施形態は、らせん形状のコイルを有する。図6Bに示すように、各コイル・セグメント92は、概ね鉛直な軸93の周りに巻かれ、その結果反復された各コイル・セグメント92の1と2分の1ターンにより、鉛直に離隔されるが、水平に配向する平面に位置付けられるセグメントを有する複数の層の誘導要素が提供される。各コイル・セグメントは、各コイル・セグメントが下側部分96と上側部分98との間で同様に巻かれるように、種々のコイル・セグメント92の間に配置される移行セグメント95を含む。各コイル・セグメント92は、誘導要素90の中心94の周りに同様に配列される。RF出力は、端子91で要素90に結合する。
【0060】
図6Cの誘導要素100も平面誘電体ウィンドウに概ね平行な水平面に配向するように構成され、誘導要素の中心104から半径方向外側に延びるように配設される、反復された導体セグメント102を形成する。反復されたセグメント102は、それぞれが概ね直線状の外側部101と円形または丸まった(radiused)端部103を有する、概ね楕円形の部分を含む。誘導要素100は、図6Bに示す誘導要素に類似の複数のレベルまたは層も有する。しかし、参照番号106によって示される第1層および参照番号108によって示される第2層として存在する複数の層は、2つの鉛直方向に離隔された水平面のパターンを反復することによって形成される。より具体的には、誘導要素100は、ほぼ点105で始まる第1層106中で、複数の反復された導体セグメントを形成する。ほぼ点107で、移行が行われ、その移行において、誘導要素100を形成するために使用される導体が、レベル108に鉛直上方に延び、次いでパターンを反復し、下の層106の反復されたセグメントと重なる、または同じように延びる反復されたセグメントが形成される。RF出力は、端子109で要素100に結合する。
【0061】
図6Dに、本発明の原理によるプラズマ・プロセス・システムで使用するための誘導要素用の別の代替設計を示す。誘導要素110は、誘電体ウィンドウに概ね平行な水平面に配向するように構成され、誘導要素110の中心114から半径方向外側に延びる反復されたセグメント112を形成する。セグメント112は、図6Cに示すセグメント102と同様の形式で配向する。しかし、誘導要素110は、単一レベルまたは単一層のみを使用し、反復されたセグメント112は、異なる形態をとる。図6Cに示すような楕円形状部分を形成するのではなく、この反復されたセグメントは、多数の角度をなすコーナ116を有し、そのコーナ116は、概ね、誘導要素110の中心114に対して半径を有するように形成される湾曲した長方形とみなすことができる形である。この湾曲した長方形は、半径方向に配向するセグメント117によって接続される、曲線状の内側部113および曲線状の外側部115を含む。RF出力は、端子101で要素に結合する。
【0062】
本発明の別の態様によれば、プロセス・チャンバのプロセス空間中に電気エネルギーを結合するためにプロセス・チャンバの側壁部分と、同時にプロセス・チャンバの端壁部分の両方を介して、誘導電気要素を構成し、使用することができる。従来においては、典型的な誘電体ウィンドウは、図1Dに示すように、チャンバの端部またはチャンバの端壁に近接して配置され、通常は、チャンバの上端に配置される。そのようにして、従来の平面コイル・アンテナからの電気エネルギーは、チャンバのプロセス空間中に下方に配向する。あるいは、チャンバの側壁を誘電体材料で形成することができ、らせんコイルまたはソレノイド・コイルを側壁の周りに巻いてチャンバ中にエネルギーを結合することができる。本発明の別の態様によれば、コイル・ターンのセグメントがチャンバの側壁部分に沿うと同時にチャンバの端壁にも沿って配置され、または配向するように、複数のコイル・ターンを有する概ね非平面の誘導要素が構成される。それによって誘導要素からの電気エネルギーが、側壁および端壁部分を同時に介して結合する。すなわち一実施形態では、誘導電気エネルギーは、チャンバの側部ならびに上端からプラズマ中に結合する。この目的で、そのような誘導要素を使用するプロセス・システムは、水晶などの誘電体材料で形成される側壁部分および端壁部分を有する。
【0063】
次いで図7Aを参照すると、コイルの形態の誘導要素120が側壁部分121および端壁部分122を含むプロセス・チャンバの区間123の周りに形成され、構成されることが示されている。プロセス・チャンバ123は、図8Bに示すチャンバなどのより大きなチャンバ中に組み込むことができる。区間123は、一般に、基板に近接してプラズマを形成するようにプロセスすべき基板に対向して配置される。図7A〜7Cに示す区間123は、概ね平坦な端壁部分122および円筒形の側壁部分121を有する概ね円筒形であるように示されているが、この区間は、図8Bに示す幾分の円錐形状などの他の形状をとることもできる。誘導要素120は、参照番号124によって集合的に示される複数のコイルを含むコイルとして形成され、各ターンは、チャンバ側壁部分121の周りに沿って配向するセグメント126を含む。コイル・ターン124は、端壁部分122に沿って配向するセグメント127も含む。そのようにして、誘導要素120のコイル・ターン124は、チャンバの側壁部分と端壁部分の両方を介してエネルギーをプラズマ中に結合する。側壁部分121および端壁部分122は、電気エネルギーを、それを介してプラズマに結合することを可能とするための、水晶などの適切な誘電体材料で形成される。
【0064】
コイル・ターン124は、誘電体チャンバ区間123の概ねすべての側部からエネルギーをプラズマ中に結合するように、区間123の周りに巻かれ、配列される。すなわち要素120は、概ねチャンバ側壁部分121に沿って配向するコイル・ターンのセグメントと、チャンバ端壁部分122に沿って配向するコイル・ターンのセグメントとを含む。この目的のために、端部130でRF電源の端子に結合する誘導要素120は、コイル・ターンを含み、各コイル・ターンは、端壁部分を横切って巻かれるセグメントと、側壁部分122の周りに巻かれるセグメントとを有する。コイル・ターンの側壁セグメントは、互いに角度をなして配向する区間を含む。具体的には、側壁部分121に沿って配置されるコイル・ターンの側壁セグメントは、それぞれ側壁部分の下方に延びる区間132と、水平区間133によって示されるような、側壁部分121の周りに延びる区間とを含む。各コイル・ターンの側壁セグメントは、鉛直区間134によって示されるような、側壁部分121を超えて後方に延びる区間をさらに含む。次いでコイル・ターンは、端壁部分122を超えて後方に延びる。図7Aに示すように、このパターンは、種々のコイル・ターン124に対して反復され、チャンバ区間123の一方の側の下方に進む。下部のコイル124aでは、セグメント135でコイル・ターン124bの上への移行が行われ、次いでそのコイル・ターン124bは、側壁部分121の周囲と上方に向かって巻かれ、端壁部分122の上に巻かれ、端部136で終了するまでチャンバ区間123の他方の側に沿って反復する。端部136は、RF電源の他端に結合する。図に示すように、コイル120は基本的にコイル・ターンの組を有し、ターンの1つの組が概ねチャンバの一方の側に沿って配置され、別のターンの組が概ねチャンバの別の側に沿って配置される。
【0065】
図7Aに示す要素の実施形態では、側壁部分に沿ったコイル・ターン・セグメントは、図7Aに示すように鋭い90度の曲がりを含む。参照番号132、134によって示される、側壁部分122の上方および下方に向かって巻かれる種々のコイル・ターン区間は、概ね鉛直な向きに配向する。区間133を含む誘導要素の別の区間は、概ね水平に配向する。コイル・ターン区間132、134と区間133との間に約90°の曲がりがある。あるいは、コイル・ターンの種々の区間に対して他の配向も使用することもできる。
【0066】
例えば図7Bを参照すると、誘導要素120に類似の誘導要素の代替実施形態が示されている。誘導要素140は、図7Aの誘導要素120に類似のプロセス・チャンバ区間123の側壁部分121の周りと、端壁部分122の上とに延びる複数のコイル・ターン142を含む。しかし、コイル・ターン142の区間134と区間133との間の移行は、個々の区間134、133が互いに概ね直交しないように、90°よりも大きい角度となる。側壁区間133と134との間の角度は、チャンバ区間123の特定の形状を収容するように変更することができる。例えば、この角度を90°未満にすることもできる。要素140は、チャンバの端壁および側壁の両方を介してエネルギーをプラズマ中に結合する。
【0067】
図7Cに、電気エネルギーをチャンバの端壁部分および側壁部分からプロセス・チャンバ中に結合するために使用される誘導要素の別の代替実施形態を示す。図7Cの実施形態は、図7A、7Bに示すような、そこで形成される複数の角度をなす区間を有するコイル・ターンを使用しない。誘導要素150は、概ね円形の巻きコイル・ターンを使用する。そのコイル・ターンは、ターンの区間がチャンバ区間123の周りにあり、ターンの区間が同時に端壁部分122を横切り、側壁部分121を横切るように巻かれる。前述と同様に、この要素は、区間123の対向する側部に配置されるコイル・ターンの2つの組を形成する。
【0068】
図7A、7B、および7Cの誘導要素120、140、150は、それぞれ様々な角度から電気エネルギーをプラズマ中に誘導的に結合するために使用することができ、プラズマ中への電気エネルギーの貫通を変化させるために使用することができる。それによって、誘導要素は、平面コイルでは達成不可能な方式でプラズマの安定性および一様性に影響を与える。例えば、平面コイルでは、コイルとプラズマとの間の結合インターフェースの寸法に影響を与える能力はほとんどなく、したがってRF出力がプラズマ中に堆積する領域が拡大される。一般に、ICP出力は、アンテナとインターフェースをとるプラズマ層中に堆積し、誘電体ウィンドウから表皮厚さの数倍延びる。図7A〜7Cに示すようなアンテナ設計は、プロセス・チャンバの側壁部分121に沿って配向するコイル・ターンのセグメントの配向を変化させることにより変動を生成し、その結果エネルギーは、チャンバの上端からプラズマ中に向けて送られるだけでなく、側部からも送られる。
【0069】
図7Dに、本発明の原理によるプロセス・チャンバの端壁および側壁を介してエネルギーをプラズマ中に誘導的に結合するために使用することができる非平面誘導要素の別の実施形態を示す。誘導要素160は、図7A〜7Cに示す誘導要素に類似の、反復された巻きコイル・ターンを使用しない。むしろ、誘導要素160は、6A〜6Dに示される誘導要素の変形形態であり、誘導要素の反復されたセグメントが、非コイル形式に配列され、中心軸の周りに円形パターンに半径方向に配列される。このセグメントは、誘導要素の中心から半径方向外側に延びるように配設される。しかし要素160は、図6A〜6Dに示すように概ね平坦または平面になるようには構成されず、要素160は、チャンバの上端に沿って配向するセグメントと、チャンバの側部に沿うように配向するセグメントとを有する。
【0070】
より具体的には、中心軸161の周りに半径方向に配列される反復された各セグメント162は、コーナー163で曲がり、概ね水平な上端セグメント164と、概ね鉛直なセグメント166とを形成する。上端セグメント164は、プロセス・チャンバの端壁または上端壁部分122に沿って概ね配向し、鉛直セグメント166は、プロセス・チャンバの側壁部分121に沿って概ね配向する。例えば、図6Aの要素80中の種々の反復されたセグメントを図7Dに示すような方式で曲げることによって、要素160に類似の誘導要素を形成することができる。各側部セグメント166は、概ね水平に配向するが、側壁部分121に沿って配置される区間167を含む。要素160は、電気エネルギーをチャンバの上から、かつチャンバの側部を介してプロセス・チャンバ中に結合する。
【0071】
本発明の一態様によると、本明細書に開示したICPシステムおよび誘導要素は、プラズマ・エッチングまたはプラズマ増速CVD(PECVD)に対して使用できる。本発明の別の態様によると該誘導結合プラズマは、スパッタ堆積プロセスまたはスパッタ・エッチング・プロセスに対して使用できる。本発明の別の態様によると、本明細書で開示した誘導要素は、第2の独立したバイアス誘導要素と組み合わせて、プロセス・チャンバ内のプラズマにさらに作用し、またはスパッタ粒子をイオン化させるためにスパッタ堆積に使用できる。
【0072】
その目的に関して、プロセス空間204を画定するプロセス・チャンバ202を使用したプロセス・システム200を図8Aに示す。該プロセス空間204で、処理される基板206を保持する。システム200では、本発明の原理に従って本明細書で先に示した誘導要素を用いており、このシステムは、ターゲットからスパッタされる粒子を基板上に堆積する以前にイオン化するイオン化PVD法に特に適するものである。基板206は、基板206およびプロセス空間204を囲む誘電体チャンバ部分210の下方に配置されたウェーハ支持体208上に着座している。支持体208は、適切な電源206aでバイアスすることができる基板ホルダ206aを含んでいる。アパチャ・プレート212、ならびにスパッタ堆積ターゲット214および関連するマウント215は誘電体チャンバ部分210の上面上に配置されている。アパチャ・プレート212は、アパチャまたは開口213を中に含み、ターゲット214はリング・ターゲット形状することが可能であり、アパチャ213を囲んでいる。ターゲット214は適切なDC電源226bに結合されている。誘電ウィンドウ216は、アパチャ・プレート212およびターゲット214の上面上に配置されている。誘導要素220は、誘電ウィンドウ216の上面上に配置されている。
【0073】
本発明の原理によると、誘導要素220は、適切に構成されたいくつかの誘導要素のいずれか1つとすることができる。該誘導要素は、図1Aおよび8Aに示した誘導要素10のように、平面誘電体ウィンドウと組み合わせて動作可能である。図1Dのシステムに関して考察したように、ファラデー・シールド234、236をシステム200で用いる場合もある。誘導要素10は、垂直コイル・ターン222および水平コイル・ターン224を含んでいる。水平コイル・ターン224は概ね、誘電体ウィンドウ216の平面頂部表面225に対して平行な平面内に位置している。誘導要素220は電気エネルギーをプロセス空間204に結合させるものであり、具体的には、ウィンドウ216を介してエネルギーをプロセス空間204内のプラズマに結合させる。プラズマは、ターゲット214から材料をスパッタし、ターゲット材料のスパッタ原子をイオン化するのに用いられており、該スパッタ原子は、公知のイオン化スパッタ堆積技法に従って基板206上に堆積される。誘導要素220は、マッチング・ユニット226aを介してRF電源に結合されている。ターゲット214は、ターゲットをバイアスするためにDC電源226bに結合されている。図8Aに示す誘導要素220は設計上、図1Aおよび1Bに示した誘導要素と同様であるが、本発明の原理による他の誘導要素も平面誘電ウィンドウ216と組み合わせてシステム200で用いることが可能である。例えば、図1C、2A〜2B、3A〜3B、4、5A〜5B、および6A〜6Dに示した誘導要素も、平面ウィンドウ216に近接して使用できる。
【0074】
本発明に一態様によりプロセス空間204に形成されたプラズマをさらに制御してこれに作用するために、第2誘導要素230を誘電体チャンバ部分210の周辺に配置する。この目的のために、第2誘導要素230は、図8Aに示すように、部分210の周りに巻かれた円筒状コイル要素の形状とすることができる。誘導要素230は、マッチング・ユニット232aを介してRF電源232に結合されている。電源232は、RF電源226とは独立に動作する。このようにして、1次誘導要素220および2次誘導要素230は独立にバイアスされ、動作するものである。2つの独立なRF電源226、232は、プラズマに伝達される電力量を調整するために使用できる。
【0075】
独立にバイアスされた誘導要素を用いる本発明のシステム200の具体的な利点は、イオン化PVDプロセスで実現される。イオン化金属PVDプロセスなどのイオン化PVD(iPVD)プロセスでは、1次要素によって生成および維持されたプラズマを用いて金属粒子(例えばAl粒子)がスパッタされ、スパッタ後に粒子が2次要素によってイオン化される。イオン化PVDプロセスによって、アスペクト比が高いフィーチャが用いられた基板上に金属膜を堆積することが可能になる。電子温度および電子密度を最大限に上げることが、PVDプロセスにおいて金属粒子のイオン化を最適化するための重要な課題である。しかし、iPVDプロセスでしばしば起こるのは、1次プラズマ内に存在する金属粒子の密度増大によって1次プラズマ内の電子温度が冷却または低下し、これによって達成可能な総合的金属イオン化率が低下することである。さらに、スパッタ金属粒子に関連するエネルギーはアルゴン等のプロセス・ガスによって吸収されることが多く、その結果、アルゴン・プロセス・ガスの密度が低下または希薄化する。次いで、このアルゴンガスの希薄化によって、スパッタ原子の高温化効果が低下し、これによって金属イオン化率がさらに低下する。
【0076】
図8Aに示され、本発明の原理によるシステムを用いて、金属原子は、別個の誘導要素220および230からの誘導結合エネルギーによって規定されるように、プロセス空間の2つの異なる領域で高密度プラズマと相互作用することになる。上記で考察した本発明の原理により、1次誘導要素220によってターゲット214に近接した高密度で均一のプラズマが供給される。基盤206に堆積される材料は、ターゲット214からスパッタされ、1次プラズマによってイオン化される。スパッタされた材料の幾分かは局所ガス温度まで完全には冷却することなく1次プラズマ領域を通過するもので、したがってプラズマ粒子と衝突してイオン化する可能性がない。第2誘導要素230によりスパッタ材料のイオン化が大幅に強化されるが、それは、スパッタ原子が2次プラズマに達するまでにある熱的状態まで冷却される可能性がある、すなわちプラズマ粒子と衝突してイオン化される可能性があるからである。さらに、先にイオン化され、プラズマ電子と再結合して中性状態になったスパッタ原子のあらゆる部分が、2次プラズマによって再びイオン化される。この再イオン化は、誘導要素230に近接したプロセス空間、すなわち基板206のすぐ上方の空間の領域で行われることになる。2次誘導要素230によって、1次誘導要素220の効果とは独立にプロセス・チャンバ202のプラズマにエネルギーが供給される。このようにして、大量のエネルギーが、プラズマならびにターゲット214からスパッタされた金属粒子に伝達され、したがって、これにより金属粒子の所望のイオン化が増大し、イオン化金属の流速の均一性を改善する。さらに、2次誘導要素230は、プラズマ場の外周部に対してRFエネルギーを追加する。この場所は、大量のイオン化金属流速が誘電体チャンバ部分210に関連した再結合および側壁吸着で失われるところである。本発明の一実施形態では、1次誘導要素は、約13.56MHzで動作するRF電源226に結合することができ、2次RF電源232は約2MHzで動作できる。電源226、232は独立に動作する。一般に、該誘導要素は、400kHzから100MHzまでの励起周波数範囲にある電源によって給電される。該RF電源は、プラズマに最大RF電力を伝達するために、マッチング・ユニット226a、232aを介して誘導要素に結合される。
【0077】
図8Aに示されたように、2つの誘導要素を用いて生成したプラズマは、電力が2つの独立したエネルギー源からプラズマに伝達されるために、ターゲット電力およびガス圧力パラメータを広範囲にわたってより適切に制御される。さらに、図8Aに示したシステム200は金属粒子イオン化領域の大きさを増大させるが、この増大は、基板206のすぐ上にある領域のプラズマに対する独立な制御、したがってターゲット214からスパッタされる粒子とプラズマとの相互作用に対する独立な制御を可能にすることによって行われる。さらに本発明者は、システム200と同様のシステムにおいて、イオン音響波、電子プラズマ波、および他の結合機構など、電気エネルギーをプラズマに導入するための他の物理的機構も使用可能であると判断した。さらに、本明細書で考察した本発明のシステムに関する別の利点は、プラズマに伝達された総電力を2つの部分に分割して、プラズマにより高い累積電力レベルを伝達する場合に備えることが可能なことである。さらに、1次および2次誘導要素間で電力要件を2つに分けることによって、これらの要素の加熱が低減され、該要素の冷却が容易になる。
【0078】
システム200は、ターゲット214からスパッタされた粒子の空間イオン化効率を高めるためにも使用することができる。アパチャ・プレート212にある中央開口部213のサイズは、基板に当たるスパッタ原子を冷却およびイオン化する前に制限するものである。中央開口部のサイズは、イオン化するために1次要素220からプラズマに送り返すスパッタ粒子をより多くまたは少なくために変更することができる。これによって、基板表面に当たる前のスパッタ粒子のイオン化確率が高められる。図8Aのシステムによって、イオン化プロセスの、プロセス空間204内のガス圧力に対する依存性が弱まり、かつ、ターゲット214に伝達されそこからスパッタ粒子に達するエネルギー量に対する依存性も弱まる。したがって、システムの総合的な「プロセス・ウィンドウ」は大きくなる。このことは、単一の平面誘導要素を用い、プロセス・ガス圧力範囲および電力制約がある程度に限定されていた従来技術のシステムに対する重要な利点である。
【0079】
上述のように、ガス・プラズマに対するエネルギー誘導結合をさらに高めるために、システム200では、誘電体ウィンドウ216の内側面に近接したスロット・シールド234、ならびに2次誘導要素230に近接したチャンバ部分210を囲むシールド236の形態で、ファラデー・シールドを使用できる。ファラデー・シールドは、チャンバ内部の誘電体表面上に蓄積して内部部品とプラズマの間で電気的短絡を引き起こす可能性のある金属材料を用いるイオン化PVDシステムで有効である。ファラデー・シールドにより、要素230からプラズマへのエネルギー誘導結合も強化される。ファラデー・シールドは、一般に接地され、公知の原理によって動作して、上述のように誘導要素220、230から発生した容量性電界を低減する。
【0080】
図8Bに、システム200に類似し、上述のような1次非平面誘導要素、および2次誘導要素を用いた本発明の代替形態を示す。システム245では1次誘導要素250を用いている。該要素は、図7A〜7Dに関して本明細書で上述した要素に類似しており、チャンバの端壁部分251および側壁部分252の双方から電気エネルギーをプロセス・チャンバ246に結合させている。この目的のために、図8Aに示した平坦な誘電体ウィンドウではなく、端壁部分251および側壁部分252を有する誘電体チャンバ部分248を、アパチャ・プレート247の上方で使用している。リング形状のターゲット254およびマウント254はチャンバ部分248の周囲に配置され、誘導要素250がチャンバ部分248の周囲に巻かれて、ターゲット254に近接するチャンバ246にエネルギーを誘導結合させ、これによって、公知のプラズマ原理に従ってターゲットから材料粒子をスパッタする。ターゲット254は、ターゲットをバイアスするためにDC電源255bに結合されている。図7Bで開示した要素と形状が類似する誘導要素を図8Bに示している。しかし、本発明の原理に従って同様に設計された別の誘導要素が使用可能である。たとえば、図7A、7Cおよび7Dに示した誘導要素が、やはり図8Bに示したシステム245と共に使用できる。誘導要素250は、マッチング・ユニット255aおよびRF電源255に動作可能に結合される。RF電源255は、2次誘導要素257に結合された別のRF電源およびマッチング・ユニット256aとは独立に動作する。ファラデー・シールド258がシステム245内で示されている。ファラデー・シールド258を使用して、支持体261上のチャンバ246内に配置された基板260を処理するための、2次誘導要素257を介したチャンバ246へのエネルギー誘導結合を改善することができる。支持体261は基板ホルダ260bを含み、該ホルダは、電源260aからバイアスされて、プロセス電圧および基板260に関するパラメータを制御することができる。
【0081】
図8Bに示したシステム245に類似のプラズマ・プロセス・システムを用いて、誘導要素250の個々のコイル・ターン間にある誘電体チャンバ部分248の領域にターゲット254をマウントすることにより、プロセス・チャンバの設計を変更する場合がある。図8Bを参照すると、ターゲット254は、誘導要素250の隣接コイル・ターン間の符号259で示された領域に配置されることがある。
【0082】
図8Cに、本発明の原理による1次および2次誘導要素を用いる別のシステム270を示す。システム270では、概ね平面の1次要素280、たとえば図4、5A〜5Bおよび6A〜6Dに示した要素のいずれかを使用する。システム270では、基板274が支持体275により支持されたチャンバ272を用いている。支持体275は基板ホルダ274bを含み、該ホルダは電圧および基板274に関するプロセス・パラメータを制御するために電源274aによりバイアスできる。基板274上に材料層をスパッタ堆積するために、ターゲット277、マウント279、および誘電体ウィンドウ278を、アパチャ・プレート276の上方に配置している。DC電源282bはターゲット277をバイアスする。誘導要素280を平面誘電体ウィンドウ278の一方の側に対して結合してチャンバ272内のプラズマに電気エネルギーを供給する。誘導要素280は、マッチング・ユニット282aを介してRF電源282に結合されている。ファラデー・シールド283を誘電体ウィンドウ278の内側面で用いて、上述のように、要素280からの電気エネルギーの誘導結合を強化することがある。
【0083】
図8Aおよび8Bに示すように、チャンバ誘電体部分286の周囲で使用されている2次誘電要素285は、その周囲に巻かれた円筒状コイルの形態にはなっていない。代りに、要素285は、反復して横に並べられた複数のセグメント部288を含み、このセグメント部はチャンバ部286の外壁に対して垂直方向に配向している。反復セグメント部288は、図8Cに示すように概ね垂直方向に配向し、チャンバ272の周囲に総体として円筒形状の要素を形成する。本発明の原理に従ってプロセス・チャンバ272にエネルギーを誘導結合するために、誘電要素285は、適切なRF電源290にマッチング・ユニット290aを介して結合されている。本発明の好ましい一実施形態では、図8Cに示すように反復セグメント部288はU形状をしている。ただし、他の形状の反復セグメント部を使用する場合がある。さらに、図8A、8Bに示す円筒状コイルを、本発明の原理によるシステム270で使用する場合もある。
【0084】
本発明をその実施形態の説明に沿って例示し、この実施形態はかなり詳細に記載したが、本出願人の意図は、添付の特許請求項の範囲をそのような詳細に限定または如何様にも制限するものではない。さらなる利点および変更形態も当業者には容易に明らかであろう。したがって、本発明はそのより広範な態様において、特定の詳細、代表的な装置および方法、ならびに図示および記載した例示的実施例に限定されるものではない。したがって、出願人の全般的発明概念の精神または範囲から逸脱することなく、そのような詳細から逸脱することが可能である。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセス・チャンバ(13、202、246)に電気エネルギを結合して該プロセス・チャンバ(13、202、246)内でプロセス・ガスからプラズマ(28)を発生させるための要素にして、該要素は、長さ方向に沿って順次配置された多数のコイル・ターン(32、52、220)を有する単一のコイルで構成される導電性要素(10、220、280)であり、該コイル・ターンの少なくとも一つ(34a、43a、45、50a、53、224)は、プラズマ処理システムの誘電体ウインドウにほぼ平行な第1平面(36)に配向され、該コイル・ターンの少なくとも一つ(34b、43、45、50b、55、222)は、前記第1平面(36)と角度をなす第2平面(38)に配向されている、要素。
【請求項2】
前記第1平面(36)にさらに別のコイル・ターン(34a、43、45、50a、53、224)が配向され、前記第2の平面(38)にある前記コイル・ターン(34b、43、48、50b、55、222)が、前記少なくとも一つのコイル・ターン(34a、43、45、50a、53、224)と前記別のコイル・ターン34a、43、45、50a、53、224)との間に配設されている、請求項1に記載の要素。
【請求項3】
前記第1平面(36)に複数のコイル・ターン(34a、43、45、50a、53、224)が配向されている、請求項1または2に記載の要素。
【請求項4】
前記第2平面(38)にほぼ平行な平面に配向された複数のコイル・ターン(34b、43、48、222)をさらに有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の要素。
【請求項5】
前記第1および第2平面(36、38)の間の角度をなす第3平面に配向された、少なくとも1個のコイル・ターン(50b)をさらに有する、請求項1から3までのいずれか一項に記載の要素。
【請求項6】
前記第2平面(38)が、前記第1平面(36)にほぼ直交する、請求項1から5のいずれか一項に記載の要素。
【請求項7】
プロセス空間(14、204)を画定し、基板(19、206)をプロセス空間(14、204)中に保持する基板サポート(17、208)を含むプロセス・チャンバ(13、202)と、プロセス・ガスを前記プロセス空間(14、204)に導入するガス導入口(20)と、誘電体ウィンドウ(24a、216)を有し、前記プロセス空間(14、204)に導入されたプロセス・ガスからプラズマ(28)を生成するプラズマ源とを有し、前記誘電体ウィンドウ(24a、216)が、概ね平坦な表面(30)を有し、かつ前記プロセス空間(14、204)と近接して前記プロセス・チャンバ(13、202)に接続しており、さらに、前記プロセス・チャンバ(13、202)の外側に、前記誘電体ウィンドウ(24a、216)に近接して位置し、少なくとも一つのコイル・ターンが誘電体ウィンドウ(24a、216)にほぼ平行に配向され、該前記誘電ウィンドウ(24a、216)を介して前記プロセス空間(14、204)に電気エネルギーを結合させて内部にプラズマ(28)を生成するための請求項1から6のいずれか一項に記載の誘電要素(10、220、280)を有する、プラズマ(28)により基板(19、206)を処理する処理システム(12、200)。
【請求項8】
前記要素(10、220)が、前記第1平面(36)と角度をなす平面に配向する複数のコイル・ターン(34b、43、48、50b、222)を含む、請求項7に記載の処理システム(12、200)。
【請求項9】
前記コイル・ターン(34a、34b、50a、50b、222、224)の少なくとも1個が、半円形である、請求項7または8に記載の処理システム。
【請求項10】
前記コイル・ターン(43a、55)の少なくとも1個(43a、55)が、長方形である、請求項7または8に記載の処理システム(12、200)。
【請求項11】
前記第1平面(36)の前記コイル・ターン(34a、43a)が、内側コイル端部(42a、46a)と外側コイル端部(42b、46b)を画成し、前記第2平面(38)の前記コイル・ターン(34b、43、48)が、前記第1平面(36)のコイル・ターン(34a)の外側コイル端部(42b)に結合される、請求項7から10までのいずれか一項に記載の処理システム(12、200)。
【請求項12】
前記第1平面(36)の前記コイル・ターン(34a、43a)が、内側コイル端部(42a、46a)と外側コイル端部(42b、46b)を画成し、前記第2平面(38)の前記コイル・ターン(34b、43、48)が、前記第1平面(36)のコイル・ターン(34a、43a)の内側コイルの端部(46a)に結合される、請求項7から10までのいずれか一項に記載の処理システム(12、200)。
【請求項13】
前記要素が、第1平面(36)に配向される部分と、第2平面(38)に配向される部分とを有するコイル・ターンをさらに有する、請求項7に記載の処理システム(12、200)。
【請求項14】
前記第2平面(38)が、前記第1平面(36)にほぼ直交する、請求項7に記載の処理システム。

【図1A】
image rotate

【図1B】
image rotate

【図1C】
image rotate

【図1D】
image rotate

【図1E】
image rotate

【図1F】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3A】
image rotate

【図3B】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6A】
image rotate

【図6B】
image rotate

【図6C】
image rotate

【図6D】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図7C】
image rotate

【図7D】
image rotate

【図8A】
image rotate

【図8B】
image rotate

【図8C】
image rotate


【公開番号】特開2011−18650(P2011−18650A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−173727(P2010−173727)
【出願日】平成22年8月2日(2010.8.2)
【分割の表示】特願2000−608406(P2000−608406)の分割
【原出願日】平成12年3月23日(2000.3.23)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(510207287)トーキョー エレクトロン ユーエス ホールディングス、 インコーポレイテッド (1)
【Fターム(参考)】