説明

誘導電流検出装置を有さない能動EMIフィルタ

【課題】
【解決手段】能動EMIフィルタは、アース線を流れる電流を、そのアース線に結合されたコンデンサにかかる電圧として検出する。EMIフィルタは、同相電圧を検出し、該同相電圧と雑音との差を決定することによって、アース線への出力を提供し、その差の低減を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スイッチングモータ駆動システムにおけるEMI低減に関するものであり、より具体的には、EMI低減のための能動フィルタであって誘導電流検出装置を用いない能動フィルタに関するものである。
【背景技術】
【0002】
可変周波数インバータのモータ駆動の用途および類似のシステムでは、切り換え操作によって、多量の同相雑音電流が発生する。EMIフィルタが無い場合、このような同相雑音電流は、逆行して設備配線に流れ込む。配線に逆流する雑音電流を排除するために、EMIフィルタを挿入することが可能である。
【0003】
同相雑音電流のための従来の受動EMIフィルタは、配線に直列に挿入された複数のインダクタと、配線とアースとの間に接続された複数のYコンデンサとを備える。Yコンデンサの漏れ電流を抑えるためにはYコンデンサの容量を制限しなくてはならないので、通常は、EMIの標準規格を満たすために大型の同相インダクタを用いる必要がある。
【0004】
受動EMIフィルタの有するこれらの問題に対処するため、本明細書で開示される能動EMIフィルタは、サイズの低減およびコストの削減の両方を実現しうる代替の解決策を提供するものである。
【0005】
能動型同相雑音消去の基本概念は、同相雑音電流を検出し、それを同じ振幅で且つ逆の極性で二倍にしたうえでアース線に注入することによって、雑音電流を消去するというものである。その結果、インバータからの同相雑音電流は、全て、能動フィルタ回路構成で形成された閉ループに迂回するので、設備配線に逆流することはない。
【0006】
このタイプの能動EMIフィルタは、International Rectifier Corp.が有する米国特許第6,636,107号、ならびに米国特許出願第10/336,157号、第10/426,123号、および第10/443,686号に開示されている。これらの特許文献による開示内容は、いずれも、その全体を引用によって本明細書に組み込まれるものとする。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来の技術では、消去するべき同相雑音電流を検出するために、変流器などの誘導電流検出装置を用いてきた。磁気回路を有するこの種の電流検出装置は、漏れ磁束を有するうえ、能動フィルタ全体のパフォーマンスを制約する非線形性などの他の欠点も有する。また、この種の電流検出装置の磁気回路はサイズが大きい。したがって、この種の能動フィルタは、シリコンチップ上に設けるのに適していない。
【0008】
引用によって本明細書に組み込まれたInternational Rectifier Corp.による米国特許出願第10/602,162号は、誘導電流検出装置を必要としない能動EMIフィルタを開示している。この種のフィルタは、更なる改善を望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
提案されるトポロジーは、消去するべき同相雑音電流を得る手段として電流検出装置を用いる替わりに、電圧入力を有している。この場合は、従来の技術で見られるような電流検出の替わりに、誤差増幅器によって、AC線のいずれかとアースとの間の電圧差を検出する。この誤差増幅器は、雑音電流に起因する電圧を誘発する特定値のインピーダンスを有する。誤差増幅器は、AC線とアースとの間の電圧差を増幅させることによって、消去電流を生成する。消去電流は、同相雑音電流を相殺する目的でアース線に供給される。
【0010】
誤差増幅器は、3つの入力を、すなわち上記の電圧入力と2つの電流入力とを有する。第2の入力は、出力絶縁コンデンサにおける電流を検出する。第3の入力は、高周波応答の改善を図る目的で設けられる。
【0011】
添付の図面を参照にした以下の発明の説明から、本発明のその他の特徴および利点が明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1および図2を参照せよ。誤差増幅器10は、REF端子およびCOM端子を介し、AC線電位の1つ、すなわち本実施形態ではNEUTRAL線を基準にしている。したがって、雑音電圧の検出は、アースと端子VFBとに接続されたYコンデンサC17を介して行うことができる。
【0013】
同相雑音電流Icom noiseは、図2において15として図式化されたモータ巻線および駆動回路構成によって生成される。誤差増幅器10は、雑音電圧を負の極性で増幅する。次いで、注入電流は、増幅器10の出力OUTとアースとの間のYコンデンサC16を通じてアース戻り線に供給される。消去電流は、コンデンサC16によって注入される。これは、増幅器の出力電圧を電流に関して微分する。
【0014】
誤差増幅器10は、少なくとも2つの入力、すなわち非反転入力および反転入力(下記参照)と、1つの出力とを有する。
【0015】
非反転入力#1、すなわちQ11のベースとQ14のベースとの間のノードは、Y級コンデンサC17を介してGROUND線上の雑音電位を検出する。
【0016】
反転入力#3、すなわちQ9のエミッタとQ18のエミッタとの間のノードも、やはり、GROUND線上の雑音電位を検出する。この反転入力は、Y級コンデンサC18を介して接地される。
【0017】
誤差増幅器10の出力OUTは、Y級コンデンサC16を介して接地され、出力OUTからアースへと消去電流を導き、更に、Q10のエミッタとQ17のエミッタとの間のノードである反転入力#2に出力OUTをフィードバックする。
【0018】
送電線のインピーダンスによって誘発される増幅器の不測の不安定性を回避するとともに、60Hz同相電圧の大振幅を吸収するためには、能動型の雑音消去を実施するにあたって、いくつかの重要な点を考慮する必要がある。したがって、提案されるトポロジーは、以下の内部構造を特徴として備えている。すなわち、
・高い入力インピーダンスを得るため、増幅器10は、Q11のベースとQ14のベースとの間のノードである高インピーダンス電圧入力#1を有する。このような高い入力インピーダンスは、C17の容量を小さくするうえで重要である。これは、必要とされる総Y容量値を制限するので、同相消去を行ううえで重要である。
・給電線の途中で出力電圧を維持するため、増幅器は、低い入力インピーダンスの第2の入力#2を有し、出力OUTから電流の形で誤差信号を受信する。第2の入力は、Q10のエミッタとQ17のエミッタとの間のノードである。中間点におけるこのような電圧の維持は、増幅器の出力段階において、次の電流注入に備えて最大のヘッドルームを確保するうえで重要である。
・より高い周波数応答を得るため、そして、利得−帯域幅間のトレードオフおよびスルーレートの制限を回避するため、増幅器は、YコンデンサC18および端子CFBを介してアース線から電流の形で誤差信号を入力する低インピーダンスの第3の入力#3を有する。電流入力構造の欠点を回避するため、この第3の入力は、主に、高周波数帯域において有効である。第3の入力は、Q9のエミッタとQ18のエミッタとの間のノードである。この機能は、帯域の向上を図るうえで有効である。増幅器は、しかしながら、必要に応じて、この入力を伴わずとも目的に叶うことが可能である。
・増幅器は、トランス抵抗増幅器40で構成されるメインの利得段を有し、その後に、出力電流容量を強化するバッファ増幅器50が続く。トランス抵抗増幅器40は、電流ミラー回路Q1,Q2,Q3,Q23,Q24,Q25と、抵抗器R36,R37とを含む。バッファ増幅器50は、図1のQ7,Q19,Q8,Q16を含む。
・誤差増幅器10のバス電圧は、端子VBUSを介してLIVE線から供給される。
・60Hz同相電圧大信号からの影響を回避するため、誤差増幅器は、第1の電圧入力の最前段に高域フィルタ機能30を有する。このフィルタは、図1のC17,R29,C12,R30を含む。この機能は、増幅器が、60Hzの数百ボルトレベルに対して数十ミリボルトレベルの高周波雑音を検出および消去することを可能にする。
【0019】
図1および図2に示されるように、同相雑音を検出したり、開示された回路の動作をテストしたりする目的で、RF受信器20または同等の任意の装置を設けることが可能である。
【0020】
他の可能な変更形態は、電圧バッファ増幅器の替わりに、電流増幅段を有する増幅器を含むことが可能である。
【0021】
以上では、特定の実施の形態を取り上げて発明を説明してきたが、当業者ならば、他の変更および代替の形態ならびに他の用途を多数思い付くことが可能である。したがって、本発明は、本明細書に記載された詳細に限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】回路図である。
【図2】本発明の一実施形態を示した機能ブロック図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力システム用のフィルタであって、
前記システム内の複数のシステム配線に結合され、それぞれの前記システム配線を流れる電流に関連する電圧を得るための誤差増幅器であって、前記システム配線の二者間の電流の差に基づいて信号を出力するように動作可能である誤差増幅器と、
前記システム配線のいずれか一者に結合されている出力信号と、を備え、
前記出力信号は、前記二者のシステム配線間の電圧の差を低減させるために、当該電圧の差に影響を及ぼす、フィルタ。
【請求項2】
請求項1に記載の回路であって、
前記誤差増幅器は、少なくとも1つのコンデンサによって前記複数のシステム配線に結合されている、回路。
【請求項3】
請求項1に記載の回路であって、
少なくとも1本のシステム配線はAC電源線であり、少なくとも他の1本のシステム配線はアース線である、回路。
【請求項4】
請求項1に記載の回路であって、
前記AC電源線はニュートラル線である、回路。
【請求項5】
請求項1に記載の回路であって、更に、
前記誤差増幅器に電力を供給するための前記誤差増幅器用の電源を備え、
前記電源は、前記電力システム内の1本またはそれ以上の入力線に結合されている、回路。
【請求項6】
請求項3に記載の回路であって、
前記誤差増幅器は、前記電源線を基準としていると共に、前記アース線から前記電圧を受信する第1の入力を有する、回路。
【請求項7】
請求項6に記載の回路であって、
前記誤差増幅器は、前記アース線に対して前記出力信号を出力する、回路。
【請求項8】
請求項6に記載の回路であって、
前記誤差増幅器は、前記誤差増幅器のヘッドルームを制御するために前記出力信号を受信する第2の入力を有する、回路。
【請求項9】
請求項8に記載の回路であって、
前記誤差増幅器は、前記誤差増幅器の周波数応答を制御するために前記アース線から前記出力信号を受信する第3の入力を有する、回路。
【請求項10】
請求項6に記載の回路であって、
前記誤差増幅器は、前記誤差増幅器の周波数応答を制御するために前記アース線から前記出力信号を受信する別の入力を有する、回路。
【請求項11】
請求項1に記載の回路であって、更に、
前記誤差増幅器の入力において、高域フィルタを備える、回路。
【請求項12】
請求項1に記載の回路であって、
前記誤差増幅器は、入力回路およびトランス抵抗増幅器を含む、回路。
【請求項13】
請求項12に記載の回路であって、更に、
前記トランス抵抗増幅器の出力を受信して前記出力信号を送信するバッファ回路を備える、回路。
【請求項14】
請求項1に記載の回路であって、更に、
前記出力信号を送信するバッファ回路を備える、回路。
【請求項15】
電力回路において、能動EMIフィルタを用いてEMIを低減させる方法であって、
入力線およびアース線の少なくとも一方にかかる電圧であって、その線を流れる電流に関連する電圧を検出する工程と、
前記入力線および前記アース線の少なくとももう一方の電圧を検出する工程と、
前記検出された電圧を比較し、それら電圧間の差に基づいて電圧信号を提供する工程と、
前記電圧の差を低減させるために、前記入力線および前記アース線の少なくとも一方に前記電圧信号を印可する工程と、を備える、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、更に、
閉ループフィードバック制御を得るために、前記電圧の差を増幅させる工程を備える、方法。
【請求項17】
能動EMIフィルタであって、
誤差信号を増幅させるための誤差増幅器と、
検出された電流に関連する電圧を生じさせるために、前記誤差増幅器の入力に結合されたコンデンサと、
検出された電流に関連する電圧を生じさせるために、前記誤差増幅器の第2の入力に結合された第2のコンデンサと、
前記誤差増幅器の出力と、前記第1のコンデンサおよび前記第2のコンデンサの少なくとも一方とに結合された出力コンデンサと、を備え、
前記誤差増幅器は、前記第1のコンデンサで生じた電圧と前記第2のコンデンサで生じた電圧との差を検出するとともに、前記第1のコンデンサの電圧と前記第2のコンデンサの電圧との差を相殺する目的で前記出力コンデンサに電圧を供給するように動作可能である、能動EMIフィルタ。
【請求項18】
請求項15に記載の方法であって、更に、
前記比較の工程および前記印加の工程を実行するための誤差増幅器と、前記誤差増幅器に電力を供給するための電源とを用意する工程と、
前記電源を前記電力システム内の1つまたはそれ以上の入力線に結合させる工程と、を備える、方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法であって、
前記誤差増幅器の基準を前記入力線とする工程を含み、
前記誤差増幅器の第1の入力は、前記アース線から前記電圧を受信する、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
前記誤差増幅器は、前記アース線に対して前記出力信号を出力する、方法。
【請求項21】
請求項19に記載の方法であって、
前記誤差増幅器は、前記出力信号を受信して前記誤差増幅器のヘッドルームを制御する第2の入力を有する、方法。
【請求項22】
請求項21に記載の方法であって、
前記誤差増幅器は、前記アース線から前記出力信号を受信して前記誤差増幅器の周波数応答を制御する第3の入力を有する、方法。
【請求項23】
請求項19に記載の方法であって、
前記誤差増幅器は、前記アース線から前記出力信号を受信して前記誤差増幅器の周波数応答を制御する別の入力を有する、方法。
【請求項24】
請求項15に記載の方法であって、
少なくとも1本のシステム配線はAC電源線であり、少なくとも他の1本のシステム配線はアース線である、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、
前記AC電源線はニュートラル線である、方法。
【請求項26】
電力システムと併用される能動EMIフィルタであって、
請求項17に記載の能動EMIフィルタと、
前記電力システム内の複数のシステム配線に結合され、それぞれのシステム配線を流れる電流に関連する電圧を得るための誤差増幅器であって、前記システム配線の二者間の電流の差に基づいて信号を出力するように動作可能である誤差増幅器と、
前記システム配線のいずれか一者に結合されている出力信号と、を備え、
前記出力信号は、前記二者のシステム配線間の電圧の差を低減させるために、当該電圧の差に影響を及ぼす、能動EMIフィルタ。
【請求項27】
請求項17に記載の回路であって、
少なくとも1本のシステム配線はAC電源線であり、少なくとも他の1本のシステム配線はアース線である、回路。
【請求項28】
請求項27に記載の回路であって、
前記AC電源線はニュートラル線である、回路。
【請求項29】
請求項17に記載の回路であって、更に、
前記誤差増幅器に電力を供給するための前記誤差増幅器用の電源を備え、
前記電源は、前記電力システム内の1本またはそれ以上の入力線に結合されている、回路。
【請求項30】
請求項17に記載の回路であって、
前記誤差増幅器は、前記入力線を基準としていると共に、前記アース線から前記電圧を受信する第1の入力を有する、回路。
【請求項31】
請求項30に記載の回路であって、
前記誤差増幅器は、前記アース線に対して前記出力信号を出力する、回路。
【請求項32】
請求項17に記載の回路であって、
前記誤差増幅器は、前記誤差増幅器のヘッドルームを制御するために前記出力信号を受信する第2の入力を有する、回路。
【請求項33】
請求項32に記載の回路であって、
前記誤差増幅器は、前記誤差増幅器の周波数応答を制御するために前記アース線から前記出力信号を受信する第3の入力を有する、回路。
【請求項34】
請求項17に記載の回路であって、
前記誤差増幅器は、前記誤差増幅器の周波数応答を制御するために前記アース線から前記出力信号を受信する別の入力を有する、回路。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−526729(P2007−526729A)
【公表日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−515123(P2006−515123)
【出願日】平成16年6月3日(2004.6.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/017484
【国際公開番号】WO2004/109896
【国際公開日】平成16年12月16日(2004.12.16)
【出願人】(505300623)インターナショナル・レクティファイヤ・コーポレーション (23)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL RECTIFIER CORPORATION
【Fターム(参考)】