説明

誘導音生成装置及び誘導音生成プログラム

【課題】 目的地と現在地との位置的関係を音源属性に関係付け、音による目的地への誘導を明瞭化することにある。
【解決手段】 音源属性可変手段(4、32、112)が、目的地に対する現在地の位置又は目的地に対する現在地の位置変化(8、18、118)に応じて、音源属性(16)を変化させる。属性適用手段(6、36、114)は、音源属性可変手段(4、32、112)が生成した音源属性(20、116)を音源(10)に適用し、目的地に対する現在地の位置又は目的地に対する現在地の位置変化により音源属性を変化させた誘導音(12)を生成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、音を用いて目的地に誘導するナビゲーション技術に関し、たとえば、方向感や距離感を持つ誘導音を生成する誘導音生成装置及び誘導音生成プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
目的地に人を誘導するための誘導情報として音を利用することが知られている。利用者が聴取する音に関し、特許文献1には、3D(3Dimension )音響に方向感を付与することにより、誘導方向から利用者に音声が聞こえるようにし、利用者を目的地に誘導することが記載されている。
【0003】
音に対する振幅差や位相差について、特許文献2には、ステレオ音つまり、複数の音源からそれぞれ放射された音が聴取者の左右の耳に伝達される際の視聴者の左右の耳間の音圧差又は伝達時間差(位相差)を与え、音に定位感を与えることが記載されている。
【0004】
また、音像や周波数について、特許文献3には、オーディオ信号の音像を前方定位させるため、前方定位感のある周波数帯域を強調することが記載されている。
【0005】
また、効果音による案内について、特許文献4には、近接案内地点までの距離に応じた効果音を再生して案内することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−209137号公報
【特許文献2】特開平6−261399号公報
【特許文献3】特開平6−269097号公報
【特許文献4】特開2008−286749号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、誘導情報に音を用いるには、携帯電話機など、モバイル端末に搭載された音源を利用することができ、その場合、目的地の方向などを聴覚に音で訴える。
【0008】
しかしながら、目的地に利用者が向かう場合に、現在地に対する目的地の方向や、目的地に対する利用者の位置的変化を明瞭に認識することは難しい。つまり、音から目的地の方向を表す方向感を認識することが難しい。また、移動した場合には、その変化を認識しにくいという課題がある。
【0009】
そこで、本開示の誘導音生成装置又は誘導音生成プログラムの目的は、上記課題に鑑み、目的地と現在地との位置的関係を音源属性に関係付け、音による目的地への誘導を明瞭化することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本開示の誘導音生成装置およびその誘導音生成プログラムの一側面によれば、音源、音源属性可変手段および属性適用手段を備える。音源属性可変手段は、目的地に対する現在地の位置又は位置変化に応じて音源属性を変化させる。属性適用手段は、音源属性可変手段が生成した音源属性を音源に適用し、目的地に対する現在地の位置又は位置変化により音源属性を変化させた誘導音を生成する。音源属性が変化する誘導音を聴取すれば、音源属性の変化により、現在地から目的地に誘導される。
【発明の効果】
【0011】
本開示の誘導音生成装置又は誘導音生成プログラムによれば、次のいずれかの効果が得られる。
【0012】
(1) 目的地に対する現在地の位置または位置変化に応じた音源属性を持つ誘導音を生成するので、誘導音が持つ音源属性により目的地と現在地との位置的変化を認識でき、利用者を目的地に誘導することができる。
【0013】
(2) 目的地に対する現在地の位置または位置変化で誘導音の音源属性を変化させ、その音源属性の変化を聴覚に認識させ、利用者を目的地に誘導することができる。
【0014】
そして、本発明の他の目的、特徴及び利点は、添付図面及び各実施の形態を参照することにより、一層明確になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】第1の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。
【図2】利用者と目的地の位置関係の一例を示す図である。
【図3】誘導音を生成する処理の一例を示すフローチャートである。
【図4】誘導音生成装置の一例を示す図である。
【図5】第2の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。
【図6】立体音響上の音源の距離と方向の一例を示す図である。
【図7】利用者と、目的地及び音源の位置の一例を示す図である。
【図8】関数f1(t)の一例であって、のこぎり波の一例を示す図である。
【図9】関数f2(t)の一例であって、のこぎり波の一例を示す図である。
【図10】関数Rの一例を示す図である。
【図11】第3の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。
【図12】第4の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。
【図13】第5の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。
【図14】誘導音を生成する処理の一例を示すフローチャートである。
【図15】音程の音源属性を適用する処理の一例を示すフローチャートである。
【図16】第6の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。
【図17】第7の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。
【図18】周波数特性の傾きの一例を示す図である。
【図19】周波数特性の音源属性を適用する処理の一例を示すフローチャートである。
【図20】調整処理前後の周波数特性と回帰直線の一例を示すフローチャートである。
【図21】第8の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。
【図22】帯域幅の音源属性を適用する処理の一例を示すフローチャートである。
【図23】第9の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。
【図24】SNRの音源属性を適用する処理の一例を示すフローチャートである。
【図25】第10の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。
【図26】目的地の位置及び音源の位置の変化の一例を示す図である。
【図27】誘導音を生成する処理の一例を示すフローチャートである。
【図28】誘導音源属性を生成する処理の一例を示すフローチャートである。
【図29】音源の移動先の一例を示す図である。
【図30】誘導音の音程を変更する処理の一例を示すフローチャートである。
【図31】他の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。
【図32】音源属性のテーブルの一例を示す図である。
【図33】誘導装置の構成例を示す図である。
【図34】関数f1(t)の変形例であって、減少を繰り返す関数の一例を示す図である。
【図35】関数f2(t)の変形例であって、増加を繰り返す関数の一例をす示す図である。
【図36】関数Θ(Φ(t))の一例を示す図である。
【図37】音源の位置の変化の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
〔第1の実施の形態〕
【0017】
第1の実施の形態について、図1を参照する。図1は、第1の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。なお、図1に示す構成は一例であって、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。
【0018】
誘導音生成装置2は、誘導音生成手段又はナビゲーション音生成手段の一例であり、目的地へ誘導するための誘導音を生成する。目的地への誘導機能の実行により、誘導音生成装置2は、目的地と現在地の間の変化量から目的地への誘導音を生成する。なお、目的地は任意に設定可能な場所であって、たとえば、誘導音生成装置2を利用する利用者がこれから向かう場所である。この目的地は、たとえば利用者により誘導音生成装置2に設定される。現在地は、誘導音生成装置2が現存する位置であり、誘導音生成装置2を利用している利用者の現在の位置である。
【0019】
属性強調手段4は、たとえば音源属性を変化させる音源属性可変手段の一例であって、目的地と利用者の位置に関する位置情報8を受けて、この受けた位置情報8に応じて音源属性を変化させ、この変化により音源属性16を強調して出力する。この音源属性は、たとえば目的地と現在地の間の距離、現在地における目的地の方向若しくは角度、音量、音程、音のテンポ、音の周波数特性、音の帯域幅、SN比(SNR: signal-to-noise ratio)等の音源の属性を含む。音源属性には、1つの音源属性を用いてもよく、複数の音源属性を用いてもよい。音源属性の強調は、例えばこれらの音源属性を変化させることにより行う。音源属性が変化すると、音源属性が変化しない場合に比べ利用者の聴覚に大きな刺激を与えることになる。属性強調手段4が音源の属性を強調することにより、誘導音生成装置2の利用者は直感的に目的地の方向を認識することができ、目的地が分かりやすくなる。
【0020】
属性適用手段6は、誘導音の音源に音源属性を適用する手段であって、入力された音源10の音源属性を属性強調手段4で生成した強調された音源属性に変更し、誘導音12を生成する。この誘導音12には強調された音源属性が適用されているので、目的地への誘導が強調され、目的地の方向が認識しやすい。属性適用手段6により生成した誘導音12は、目的地へ案内される利用者に与えられる。誘導音12が空気等の中を伝搬する気導音である場合、誘導音は利用者の耳を介して利用者の聴覚に伝えられる。誘導音12が頭蓋骨等の骨を伝って伝搬する骨導音である場合、誘導音12は利用者の頭蓋骨を介して利用者の聴覚に伝えられる。なお、音源10は、誘導音12の音源であって、例えば、音楽、音声、旋律(メロディ)又は特定周波数により構成されるパルス音若しくは連続音などである。
【0021】
属性強調手段4及び属性適用手段6は、誘導音生成装置2の処理部14に構成される。処理部14は、誘導音生成装置2において実行される演算処理又は制御処理を行う手段であってたとえば、CPU(Central Processing Unit )においてプログラムを実行することで構成される。
【0022】
次に、利用者と目的地の位置に関する位置情報について、図2を参照する。図2は、利用者と目的地の位置関係の一例を示す図である。尚、図2に示す位置関係は一例であって、斯かる位置関係に本発明が限定されるものではない。
【0023】
図2に示す利用者Uと目的地DPの位置では、利用者Uの位置および目的地DPの位置がxy座標平面上に表されている。利用者Uの位置は、誘導音生成装置2の現在地を表し、xy座標平面上の原点、即ちx=0、y=0の位置に位置し、利用者Uの正面方向をx軸の正方向、利用者Uの右側方向をy軸の正方向に設定している。図2に示す目的地は、利用者Uに対して正面側でありかつ右側に位置している。なお、誘導音生成装置2には、利用者Uがこの誘導音生成装置2を一般的な利用方法で使用した場合に利用者Uの正面側となる方向が装置の正面方向として設定されている。
【0024】
利用者Uと目的地DPの間の距離lは、利用者Uから目的地DPまでの直線距離として設定し、利用者Uに対する目的地DPの方向は、角度Φとして表される。なお、角度Φは、利用者Uの正面方向(誘導音生成装置2に設定されている装置の正面方向)と、利用者Uに対する目的地DPの方向との間の角度として設定している。即ち、角度Φは利用者Uの正面を0度とし、そこから時計回り(右回り)に測定する。なお、利用者Uと誘導音生成装置2は同位置又は近傍位置に配置されるので、距離lは目的地に対する現在地の距離を表し、角度Φは目的地に対する現在地の角度を表している。即ち、距離l及び角度Φは、目的地に対する現在地の位置を表し、位置情報8の一例である。
【0025】
利用者Uが移動すると、距離l及び角度Φが変化する。時間(時刻)tにおいて目的地DPの位置が(距離,角度)=(l(t),Φ(t))であり、時間tから所定時間としてΔt時間が経過した、時間t+Δtにおいては、目的地DPの位置が(距離,角度)=(l(t+Δt),Φ(t+Δt))となる。この場合、時間tから時間t+Δtの間の距離の変化量Δl(t)は式(1)で表され、角度の変化量ΔΦ(t)は式(2)で表される。なお、距離の変化量Δl(t)及び角度の変化量ΔΦ(t)は、目的地DPと利用者Uの位置の変化量を表す値である。なお、利用者Uと誘導音生成装置2は同位置又は近傍位置に配置されるので、距離の変化量Δl(t)及び角度の変化量ΔΦ(t)は、目的地に対する現在地の位置の変化の量を表し、位置情報8の一例である。
【0026】
【数1】

【数2】

【0027】
Δl(t)の値が0の場合、所定時間の間に距離が変わらないことを表す。Δl(t)の値が0より大きい場合、目的地までの距離が長くなり、目的地が遠くなったことを表す。そして、Δl(t)の値が0より小さい場合、目的地までの距離が短くなり、目的地が近くなったことを表す。ΔΦ(t)の値が0の場合、所定時間の間に目的地の方向が変わらないことを表す。ΔΦ(t)の値が0より大きい場合、目的地の角度が大きくなり、目的地が利用者の正面方向から遠くなったことを表す。そして、ΔΦ(t)の値が0より小さい場合、目的地の角度が小さくなり、目的地が利用者の正面方向に近くなったことを表す。
【0028】
次に、誘導音の生成について、図3を参照する。図3は、誘導音を生成する処理の一例を示すフローチャートである。この誘導音を生成する処理は、本開示の誘導音生成プログラムの一例であって、斯かる処理に本発明が限定されるものではない。
【0029】
図3に示す処理手順は、処理部14が備える属性強調手段4及び属性適用手段6により実行される。
【0030】
属性強調手段4が位置情報8として、目的地と利用者の位置に関する情報を受けると、属性強調手段4は、目的地と利用者の位置に関する位置情報に基づき音源属性を変化させ、音源の属性を強調する(ステップS1)。たとえば利用者が目的地を認識しやすいようにする。強調された音源属性は、属性強調手段4から出力され、属性適用手段6に入力される。
【0031】
強調された音源属性と、音源10が属性適用手段6に入力されると、属性適用手段6は音源10の属性をステップS1で得た強調された音源属性に変更し、目的地への誘導音12を算出して出力する(ステップS2)。音源10に強調した音源属性を適用することにより、たとえば、目的地の方向が認識しやすいように強調された目的地への誘導音12を得ることができる。なお、誘導音12は、たとえば目的地へ誘導するための目的地への誘導音である。
【0032】
目的地への誘導音の強調は、位置情報8として、たとえば、位置の変化量Δl(t)又は角度の変化量ΔΦ(t)を強調する。たとえば、変化量Δl(t)又は角度の変化量ΔΦ(t)に基づいて利用者と目的地の間の距離又は角度が小さくなるか、大きくなるか、又は変化しないかに分けて、音源属性を変化させる。
【0033】
目的地への誘導音12の強調は、位置情報8として、たとえば、距離l及び角度Φを強調する。この場合、たとえば、利用者の両耳に対して出力する誘導音12を制御して、利用者に立体音響として認知させる。利用者が立体音響として認知すると、聞こえる音が3次元的に拡がり、音に距離感及び方向感が生じる。そこで、たとえば、誘導音12を制御して利用者の位置から目的地へ向かうように音を移動させるように、変化させる。
【0034】
このように、音源属性を強調して音源に適用することにより、誘導音が強調され、この強調により、目的地が直感的にわかりやすくなり、誘導が容易になる。
【0035】
〔第2の実施の形態〕
【0036】
第2の実施の形態について、図4及び図5を参照する。図4は、誘導音生成装置の一例を示す図、図5は、第2の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。なお、図4及び図5に示す構成は一例であって、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。図1と同一部分には同一符号を付してある。
【0037】
図4に示す音源属性強調手段32は、属性強調手段4又は音源属性可変手段の一例である。音源属性強調手段32は、音源属性16の指定を受け入れて、また、目的地と利用者の位置の変化量18の入力を受け入れる。音源属性強調手段32は、この受けた位置の変化量18に応じて音源属性16を変化させ、利用者Uが直感的に目的地の方向を認識しやすいように音源属性16を強調し、強調された音源属性20を出力する。目的地と利用者の位置の変化量18は、たとえば目的地に対する現在地の位置の変化の量であって、位置情報8の一例である。
【0038】
図4に示す音源属性適用手段36は、属性適用手段6の一例である。音源属性適用手段36は、入力された音源10の音源属性を音源属性強調手段32で生成した強調された音源属性20に変更し、目的地への誘導音22を生成する。即ち、音源属性適用手段36は、例えば目的地への方向を認識しやすいように強調した目的地への誘導音22を算出して生成する。なお、目的地への誘導音22は、誘導音の一例である。
【0039】
音源属性16と目的地と利用者の位置の変化量18の入力を受けて、音源属性強調手段32が、目的地と利用者の位置の変化量18に応じて、強調された音源属性20を出力し、音源属性適用手段36が音源10の属性を強調する。例えば、目的地方向に近づけば、音源属性強調手段32が、音源10を知覚しやすいように音源属性16を強調する。また、例えば目的地方向から遠ざかれば、音源属性強調手段32が、音源10を知覚しにくいように音源属性を強調する。このように構成すると、音源属性適用手段36が、音源属性強調手段32により算出した強調された音源属性20を音源10に適用することで、属性を強調した音源が出力され、利用者を目的地にわかりやすく誘導できる。
【0040】
音源属性16として例えば距離の情報を用いて、音源10を強調する場合、図5に示す音源属性強調手段32は、音源属性16として、「距離」の指定を受ける。また、音源属性強調手段32は、目的地と現在地の間の距離を強調する手段として距離強調手段34を備えて、距離の音源属性を強調して出力する。図5に示す音源属性適用手段36は、音源10に距離の音源属性を適用する手段として距離適用手段38を備え、強調された距離の音源属性20を音源10に適用して目的地への誘導音22を生成する。
【0041】
距離の強調では、利用者の両耳に入力する誘導音22を制御して、利用者に立体音響を認知させる。これにより、利用者は3次元的な拡がりを有する領域に設定された音源から音が聞こえるような体感を得ることになり、利用者と音源の間に距離及び方向を設定することができる。
【0042】
次に、立体音響上の音源の距離と方向について図6を参照する。図6は、立体音響上の音源の距離と方向の一例を示す図である。
【0043】
図6に示す利用者Uには、利用者Uの右耳REに右耳用の出力音in_R(l,α,n)(=INR )が入力され、利用者Uの左耳LEに左耳用の出力音in_L(l,α,n)(=INL )が入力される。距離l、方向αに位置する音源SPの定位感を得るため、距離l、方向αに位置する音源SPに対する利用者Uの右耳REへの伝達特性HR (l,α)と、利用者Uの左耳LEへの伝達特性HL (l,α)を測定し、伝達特性からインパルス応答を求める。
【0044】
伝達特性HL (l,α)、HR (l,α)は、周波数毎の複素スペクトルであり、この伝達特性HL (l,α)、HR (l,α)に対応するインパルス応答をhrtfL(l,α,m)、hrtfR(l,α,m)として表す。なお、mはm=0,...,M−1となる数値であり、Mはインパルス応答長である。
【0045】
距離l、方向αに位置する音源SPの定位感を得るためには、音源の信号sig(n)に、インパルス応答hrtfL(l,α,m)及びhrtfR(l,α,m)を畳み込んで左耳用の処理音及び、右耳用の処理音を作成する。そして、左耳用の処理音を利用者Uの左耳LEに出力し、右耳用の処理音を利用者Uの右耳REに出力すれば良い。耳に出力する処理音、即ち、耳に対する出力音は、音源の信号とインパルス応答を用いた関数として表すことができる。左耳用の処理音及び右耳用の処理音の生成は、右耳用の出力音in_R(l,α,n)及び左耳用の出力音in_L(l,α,n)として得られ、式(3)の様になる。
【0046】
【数3】

【0047】
音源の距離がrとなるように音源の距離を変更するため、たとえば、予め音源の方向と距離を網羅するように変えて伝達特性HL (l,α)、HR (l,α)を求め、たとえば伝達特性データベースに保存しておく。そして、距離r即ち、図6に示す距離lを変更する場合、伝達特性データベースから、音源距離の差|l−r|が最小となる伝達特性(左耳用・右耳用)を得る。得た伝達特性に対応するインパルス特性を算出し、式(3)に与えることで、音源の距離がrとなるように音源信号を変更する。なお、伝達特性に対応するインパルス特性の算出は、伝達特性を周波数時間変換することで行う。
【0048】
音源の方向がθとなるように音源の方向を変更するには、たとえば、予め音源の方向と距離を網羅するように変えて伝達特性HL (l,α)、HR (l,α)を求め、たとえば伝達特性データベースに保存しておく。そして、方向θ、即ち図6に示す方向αを変更する場合、伝達特性データベースから、音源距離の差|α−θ|が最小となる伝達特性(左耳用・右耳用)を得る。得た伝達特性に対応するインパルス特性を算出し、式(3)に与えることで、音源の方向がθとなるように音源信号を変更する。
【0049】
伝達特性を伝達特性データベースに保存しておくことで、距離及び方向を変えて、出力音として誘導音22を出力することが可能となり、音源の定位感を持たせた立体音響を利用者Uに与えることができる。
【0050】
次に、音源を用いた距離及び方向の座標について図7を参照する。図7は、利用者と、目的地及び音源の位置の一例を示す図である。尚、図7に示す位置関係は一例であって、斯かる位置関係に本発明が限定されるものではない。図2と同一部分には同一符号を付してある。
【0051】
目的地と利用者の位置関係は第1の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0052】
図7に示すxy座標平面上において利用者Uは、xy座標平面上の原点、即ちx=0、y=0に位置している。xy座標では、利用者Uの正面方向がx軸の正方向に設定され、利用者Uの右側方向がy軸の正方向に設定されている。図7に示す音源SPは、利用者に対して正面側でありかつ右側に位置している。なお、音源SPは、利用者Uに出力音in_R(l,α,n)及びin_L(l,α,n)を与えることにより、利用者Uが認識している立体音響上の音源である。
【0053】
図7に示す音源の位置は、(距離,角度)=(r,θ)として表される。利用者Uと音源SPの間の距離rは、利用者から音源までの直線距離として設定し、利用者に対する音源の方向は、角度θとして表される。距離r及び角度θは時間tの関数であるので(r(t),θ(t))で表される。r(t)は時間tにおける、利用者と音源間の距離であり、θ(t)は時間tにおける利用者と音源の角度である。なお、角度θは、利用者Uの正面方向と、利用者Uに対する音源の方向との間の角度として設定している。即ち、角度は利用者Uの正面を0度とし、そこから時計回り(右回り)に測定する。
【0054】
次に、音源の距離の強調は、たとえば以下のようにして行う。
【0055】
音源の距離の強調には、たとえば、目的地と利用者の位置の変化量18として、距離の変化量Δl(t)が用いられる。たとえば、音源の距離の強調は、Δl(t)が0より小さい場合、0より大きい場合、及び0である場合に分けて、音源の距離r(t)を制御して、距離r(t)の時間変化を異ならせることで行われる。距離r(t)はたとえば、式(4)以下のように設定する。
【0056】
【数4】

但し、f1(t):周期的に単調減少を繰り返す関数
f2(t):周期的に単調増加を繰り返す関数
R:lの関数
Rmax:Rの最大値であり、たとえば100(m)に設定する。
Rmin:Rの最小値であり、たとえば1(m)に設定する。
なお、(m)は、距離の単位「メートル」を表す。
【0057】
周期的に単調減少を繰り返す関数f1(t)は、たとえば図8に示すのこぎり波(saw-tooth wave)とすることができる。図8に示すのこぎり波は、時間の経過につれて、数値1から直線的に減少し、数値0になると急激に数値1に上昇する関数であって、このような値の変化を所定の周期aで繰り返す。図8に示すのこぎり波は以下の式(5)で表される。
【数5】

但し、floor(t)は床関数(floor function)であって、aは関数f1(t)の周期である。
【0058】
f1(t)として式(5)を用いると、Δl(t)が0より小さい場合、利用者Uに対し、音源SPが時間の経過につれて距離Rmaxから距離Rminに直線的に接近し、距離Rminまで接近すると、急激に距離Rmaxまで遠ざかる立体音響を与えることができる。そして、このような立体音響を周期aで繰り返し与えることができる。
【0059】
周期的に単調増加を繰り返す関数f2(t)は、たとえば図9に示すのこぎり波とすることができる。図9に示すのこぎり波は、時間の経過につれて、数値0から直線的に増加し、数値1になると急激に数値0に下降する関数であって、このような値の変化を所定の周期aで繰り返す。図9に示すのこぎり波は式(6)で表される。
【数6】

【0060】
f2(t)として式(6)を用いると、Δl(t)が0を超える場合、利用者Uに対し、音源SPが時間の経過につれて距離Rminから距離Rmaxに直線的に遠ざかり、距離Rmaxまで遠ざかると、急激に距離Rminまで接近する立体音響を与えることができる。そして、このような立体音響を周期aで繰り返し与えることができる。
【0061】
Δl(t)が0であり、目的地と利用者の位置の変化量18が0である場合には、r(t)をたとえば、図10に示す関数R(l(t))に設定する。図10に示す関数R(l(t))は、時間tにおける距離l(t)と立体音響上の距離を表すRを軸とする関数であって、(l(t),R)で表して、点(0,Rmin)と点(lmax,Rmax)を直線で結ぶ領域と、R=Rmaxとなる領域を有する。距離l(t)が0の場合、利用者Uが目的地に存在することを表し、R=Rminに設定する。距離l(t)が0より大きくなるにつれてRの値は直線的に増加し、距離l(t)がlmaxとなり、Rが最大値(Rmax)に到達する。lmax以上の距離では、R=RmaxとしてRを一定値に設定する。図10に示す関数R(l(t))では、距離l(t)が0からlmaxの範囲では、r(t)は距離l(t)に比例した値に設定され、距離l(t)がlmax以上の場合、r(t)はRmaxに設定される。このように設定することで、Δl(t)が変化しない場合には、距離l(t)に応じた音源属性に設定することができる。
【0062】
このように、目的地と利用者の位置の変化量18としてΔl(t)に応じて、r(t)の関数を変えることにより、距離の音源属性が変化し、距離の音源属性を強調することができる。
【0063】
次に、目的地と利用者の位置の変化量18から目的地への誘導音22を生成する処理では、たとえば、音源属性を強調する処理(図3のステップS1)及び強調された音源属性を適用する処理(図3のステップS2)を行う。音源属性を強調する処理は、音源属性強調手段32が実行し、強調された音源属性20を適用する処理は音源属性適用手段36が実行する。
【0064】
(1) 音源属性を強調する処理
【0065】
目的地と利用者の位置の変化量18として、距離の変化量Δl(t)が音源属性強調手段32に入力され、音源属性16として「距離」が音源属性強調手段32に入力される。音源属性強調手段32の距離強調手段34は、距離の変化量Δl(t)に応じてr(t)を求めて距離の音源属性16を強調する。そして音源属性強調手段32は、r(t)に応じて、強調された距離の音源属性20を出力する。そして、強調された距離の音源属性20が音源属性適用手段36に入力される。
【0066】
(2) 強調した音源属性を適用する処理
【0067】
強調された距離の音源属性20と、音源10が音源属性適用手段36に入力されると、音源属性適用手段36の距離適用手段38は音源10の属性を強調された距離の音源属性20に変更し、目的地への誘導音22を算出して出力する。即ち、距離適用手段38は、強調された距離の音源属性20としてr(t)の関数情報を受け、音源の距離がr(t)となるように、式(3)に示す右耳用の出力音in_R(l,α,n)及び左耳用の出力音in_L(l,α,n)を生成する。距離適用手段38は右耳用の出力音in_R(l,α,n)及び左耳用の出力音in_L(l,α,n)を目的地への誘導音22として出力する。利用者Uが右耳用の出力音in_R(l,α,n)及び左耳用の出力音in_L(l,α,n)を聞くことにより、利用者Uはr(t)に応じて変化する音源の立体音響を得て、その音源の変化から、距離の変化量Δl(t)が容易に把握できる。
【0068】
音源属性強調手段32は、利用者Uの位置の変化量に応じて、目的地方向に近づけば、音源属性の距離が小さくなるように制御し、目的地方向から遠ざかれば、音源属性の距離が大きくなるように制御する。音源属性の距離の制御により、音源が知覚しやすくなり、音源が鮮明になる。これによって、目的地が近づき又は遠ざかったことを直感的に感じることができる。これにより、たとえば、単に距離に応じて立体音響上の音源を一定の距離に定位させる場合に比べ、目的地がわかりやすく利用者Uを誘導することができる。
【0069】
〔第3の実施の形態〕
【0070】
第3の実施の形態について、図11を参照する。図11は、第3の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。なお、図11に示す構成は一例であって、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。図1、図4及び図5と同一部分には同一符号を付してある。
【0071】
この実施の形態では、音源属性強調手段32及び音源属性適用手段36により、属性を強調した音源が出力され、利用者を目的地にわかりやすく誘導できる。音源属性強調手段32及び音源属性適用手段36は第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0072】
音源属性16として例えば方向の情報を用いて、音源10を強調する場合、図11に示す音源属性強調手段32は、音源属性16として、「方向」の指定を受ける。また、音源属性強調手段32は、目的地と利用者の位置の変化量18とを受けて、この受けた情報に応じて目的地と現在地の間の方向を強調して出力する。目的地と現在地の間の方向の情報は音源属性16の一例である。音源属性強調手段32は、目的地と現在地の間の方向を強調する手段として方向強調手段42を備える。
【0073】
図11に示す音源属性適用手段36は、強調された方向の情報である音源属性20を音源10に適用して目的地への誘導音22を生成する手段として方向適用手段44を備える。
【0074】
方向強調手段42では、利用者の両耳に入力する誘導音22を制御して、利用者に立体音響を認知させる。これにより、利用者は3次元的な拡がりを有する領域に設定された音源から音が聞こえるような体感を得ることになり、利用者と音源の間に距離及び方向を設定することができる。音源の距離と方向の関係ならびに音源を用いた距離及び方向の表現については、第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0075】
次に、音源の方向の強調は、たとえば、以下のようにして行う。
【0076】
音源の方向の強調では、たとえば、目的地と利用者の位置の変化量18として、角度の変化量ΔΦ(t)が用いられる。たとえば、音源の角度の強調は、ΔΦ(t)が0より小さい場合、0より大きい場合、及び0である場合に分けて、音源の方向θ(t)を制御して、方向θ(t)の時間変化を異ならせることで行われる。方向θ(t)は、たとえば式(7)のように設定する。
【0077】
【数7】

但し、Θmax:Θの最大値であり、たとえば、1/4π(ラジアン)に設定する。
Θmin:Θの最小値であり、たとえば、0(ラジアン)に設定する。
なお、(ラジアン)は、角度の単位を表し、f1(t)及びf2(t)は第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0078】
f1(t)として式(5)を用いると、ΔΦ(t)が0より小さい場合、時間の経過につれて音源が利用者Uの正面に対し、角度Θmaxから角度Θmin、たとえば利用者Uの正面に向けて移動し、音源が角度Θminに移動すると、急激に音源が利用者Uの正面に対し、角度Θmaxに移動する立体音響を与えることができる。そして、このような立体音響を周期aで繰り返し与えることができる。
【0079】
f2(t)として式(6)を用いると、ΔΦ(t)が0を超える場合、時間の経過につれて音源が利用者Uの正面に対し、角度Θminから角度Θmaxに向けて移動し、音源が角度Θmaxに移動すると、急激に音源が角度Θminに移動する立体音響を与えることができる。そして、このような立体音響を周期aで繰り返し与えることができる。
【0080】
ΔΦ(t)が0であり、目的地と利用者の位置の変化量18が0である場合には、θ(t)をたとえば、Φ(t)に設定する。このように設定することで、ΔΦ(t)が変化しない場合には、目的地の方向に立体音響の音源が設定されるので、利用者Uは目的地の方向から音が聞こえるように感じることとなる。
【0081】
このように、目的地と利用者の位置の変化量18としてΔΦ(t)に応じて、θ(t)の関数を変えることにより、方向の音源属性が変化し、方向の音源属性を強調することができる。
【0082】
次に、目的地と利用者の位置の変化量18から目的地への誘導音22を生成する処理では、たとえば、音源属性を強調する処理(図3のステップS1)及び強調した音源属性を適用する処理(図3のステップS2)を行う。
【0083】
(1) 音源属性を強調する処理
【0084】
目的地と利用者の位置の変化量18として、角度の変化量ΔΦ(t)が音源属性強調手段32に入力され、音源属性16として「方向」が音源属性強調手段32に入力されると、音源属性強調手段32の方向強調手段42は、角度の変化量ΔΦ(t)に応じてθ(t)を求めて方向の音源属性を強調する。そして音源属性強調手段32は、θ(t)に応じて、強調された方向の音源属性20を出力する。そして、強調された方向の音源属性20が音源属性適用手段36に入力される。
【0085】
(2) 強調した音源属性を適用する処理
【0086】
強調された方向の音源属性20と、音源10が音源属性適用手段36に入力されると、音源属性適用手段36の方向適用手段44は音源10の属性を強調された方向の音源属性に変更し、目的地への誘導音22を算出して出力する。即ち、方向適用手段44は、方向の音源属性としてθ(t)の関数情報を受け、音源の方向がθ(t)となるように、式(3)に示す右耳用の出力音in_R(l,α,n)及び左耳用の出力音in_L(l,α,n)を生成する。方向適用手段44は右耳用の出力音in_R(l,α,n)及び左耳用の出力音in_L(l,α,n)を目的地への誘導音22として出力する。利用者Uが右耳用の出力音in_R(l,α,n)及び左耳用の出力音in_L(l,α,n)を聞くことにより、利用者Uは、θ(t)に応じて変化し、一定方向から聞こえる音源の立体音響を得て、その音源の変化又は不変化から、角度の変化量ΔΦ(t)が容易に把握できる。
【0087】
音源属性強調手段32は、利用者Uの位置の変化量に応じて、目的地方向に近づけば、音源属性の角度を小さくなるように制御し、目的地方向から遠ざかれば、音源属性の角度を大きくなるように制御する。音源属性の角度の制御により、音源が知覚しやすくなり、音源が鮮明になる。これにより、変化の量を大きくすれば、利用者と目的地の間の実際の角度の変化よりも大きく変化させることができる。たとえば単に、利用者と目的地の角度と等しい角度の方向に音源を定位させるものに比べ、利用者Uを目的地にわかりやすく誘導できる。
【0088】
〔第4の実施の形態〕
【0089】
第4の実施の形態について、図12を参照する。図12は、第4の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。なお、図12に示す構成は一例であって、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。図1、図4、図5及び図11と同一部分には同一符号を付してある。
【0090】
この実施の形態では、音源属性強調手段32及び音源属性適用手段36により、属性を強調した音源が出力され、利用者を目的地にわかりやすく誘導できる。音源属性強調手段32及び音源属性適用手段36は第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0091】
音源属性16として例えば音量の情報を用いて、音源10を強調する場合、図12に示す音源属性強調手段32は、音源属性16として、「音量」の指定を受ける。また、音源属性強調手段32は、目的地と利用者の位置の変化量18とを受け、この受けた情報に応じて音量の音源属性に変化を与えて強調する。音源属性強調手段32は、目的地と現在地の間の距離及び方向を、音量を用いて強調する手段として音量強調手段52を備える。
【0092】
図12に示す音源属性適用手段36は、強調された音量の情報である音源属性20を音源10に適用して目的地への誘導音22を生成する手段として音量適用手段54を備える。
【0093】
次に、音量を用いた強調では、たとえば、目的地に対する利用者の位置の変化量(目的地と利用者の位置の変化量18)に基づいて、目的地への誘導音22を生成し、この目的地への誘導音22を利用者Uに提示する。利用者Uに提示する音源の音量の倍率v(%)は、たとえば式(8)、式(9)及び式(10)を用いて決定する。なお、倍率v(%)は、元の音源10の音量に対する割合であって、値vは、元の音源10の音量を100とした場合の音量である。
【0094】
【数8】

【数9】

【数10】

但し、Vmax: vの最大値であり、たとえば3に設定する。
Vmin: vの最小値であり、たとえば0.1に設定する。
coeff_v: v1の寄与度を表し、0から1までの範囲の値に設定する。
【0095】
f1(t)及びf2(t)は第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0096】
v1(t)は距離の強調を表す。f1(t)として式(5)を用いると、Δl(t)が0より小さい場合、時間の経過につれてv1(t)の値がVmaxからVminまで直線的に減少し、値がVminまで減少すると、急激に値がVmaxまで上昇することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。f2(t)として式(6)を用いると、Δl(t)が0を超える場合、時間の経過につれてv1(t)の値がVminからVmaxまで直線的に上昇し、値がVmaxまで上昇すると、急激に値がVminまで減少することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。Δl(t)が0であり、目的地と利用者の位置の変化量18が0である場合には、v1(t)は固定値1.0に設定する。このように、目的地と利用者の位置の変化量18としてΔl(t)に応じて、v1(t)の関数を変えることにより、音量を用いて距離を強調することができる。
【0097】
v2(t)は方向の強調を表す。f1(t)として式(5)を用いると、ΔΦ(t)が0より小さい場合、時間の経過につれてv2(t)の値がVmaxからVminまで直線的に減少し、値がVminまで減少すると、急激に値がVmaxまで上昇することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。f2(t)として式(6)を用いると、ΔΦ(t)が0を超える場合、時間の経過につれてv2(t)の値がVminからVmaxまで直線的に上昇し、値がVmaxまで上昇すると、急激に値がVminまで減少することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。ΔΦ(t)が0であり、目的地と利用者の位置の変化量18が0である場合には、v2(t)は固定値1.0に設定する。このように、目的地と利用者の位置の変化量18としてΔΦ(t)に応じて、v2(t)の関数を変えることにより、音量を用いて方向を強調することができる。
【0098】
v(Δl(t),ΔΦ(t))では、距離の強調を表す値v1(t)及び方向の強調を表す値v2(t)のそれぞれに係数coeff_v及び係数(1−coeff_v)を掛けた後にv1(t)及びv2(t)を加算している。よって、v(Δl(t),ΔΦ(t))は、距離及び方向の強調が可能である。v(Δl(t),ΔΦ(t))により音源を強調すると、距離及び方向の両方を強調させることができる。coeff_vが0から0.5未満の範囲に設定されると、v(Δl(t),ΔΦ(t))では、方向が距離よりも強調され、coeff_vが0.5を超え1までの範囲に設定されると、v(Δl(t),ΔΦ(t))では、距離が方向よりも強調される。coeff_vが0.5に設定されると、v(Δl(t),ΔΦ(t))では、距離と方向の強調の割合が同じになる。また、coeff_vが0に設定されると、v(Δl(t),ΔΦ(t))は、方向を強調する設定となり、coeff_vが1に設定されると、v(Δl(t),ΔΦ(t))は、距離を強調する設定となる。このように、v(Δl(t),ΔΦ(t))を表す式(8)が係数coeff_v及び(1−coeff_v)を含むことにより、距離と方向の強調の割合を既定値として又は任意に設定することが可能であり、距離と方向の強調度合いの選択の自由度が高められる。
【0099】
次に、目的地と利用者の位置の変化量18から目的地への誘導音22を生成する処理では、たとえば、音源属性を強調する処理(図3のステップS1)及び強調した音源属性を適用する処理(図3のステップS2)を行う。
【0100】
(1) 音源属性を強調する処理
【0101】
目的地と利用者の位置の変化量18として、距離の変化量Δl(t)及び角度の変化量ΔΦ(t)が音源属性強調手段32に入力され、音源属性16として「音量」が音源属性強調手段32に入力される。音源属性強調手段32の音量強調手段52は、距離の変化量Δl(t)に応じてv1(t)を求めて音量の音源属性を変化させ、距離を強調する。音量強調手段52は、角度の変化量ΔΦ(t)に応じてv2(t)を求めて音量の音源属性を変化させ、方向を強調する。音量強調手段52は、v1(t)及びv2(t)を用いて、v(Δl(t),ΔΦ(t))を求め、距離及び方向を強調する。このようにして、音量強調手段52により、音源属性が強調される。
【0102】
音源属性強調手段32は、強調された音量の音源属性20としてv(Δl(t),ΔΦ(t))を出力する。そして強調された音量の音源属性20が音源属性適用手段36に入力される。
【0103】
(2) 強調した音源属性を適用する処理
【0104】
強調された音量の音源属性20と、音源10が音源属性適用手段36に入力されると、音源属性適用手段36の音量適用手段54は入力された値v(Δl(t),ΔΦ(t))を用いて音源10の信号を変更する。この音源10の変更は、たとえば、式(11)のように行い、音量を強調した音源信号のサンプルes(t)が音源10の音源信号のサンプルs(t)のv(Δl(t),ΔΦ(t))( =v )(%)倍となるように変更する。
【0105】
【数11】

但し、v: 式(8)において算出して得た値、即ち、v(Δl(t),ΔΦ(t))である。
s(t): 音源10の音源信号のサンプル
es(t): 音量を強調した音源信号のサンプル
【0106】
このように、音源10の音量を変更することにより、その音源の音量の変化又は不変化から、距離の変化量Δl(t)及び角度の変化量ΔΦ(t)が容易に把握できる。音源属性強調手段32は、利用者Uの位置の変化量に応じて、目的地方向に近づけば、音源の音量を大きくなるように制御し、目的地方向から遠ざかれば、音源の音量を小さくするように制御する。音源の音量が大きくなると、音源が知覚しやすくなり、音源が鮮明になる。利用者Uと目的地の間の実際の距離の変化よりも大きく音量を変化させることができるので、たとえば一定の音量の音源を提示するものに比べ、利用者Uを目的地にわかりやすく誘導できる。
【0107】
〔第5の実施の形態〕
【0108】
第5の実施の形態について、図13を参照する。図13は、第5の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。なお、図13に示す構成は一例であって、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。図1、図4、図5、図11及び図12と同一部分には同一符号を付してある。
【0109】
この実施の形態では、音源属性強調手段32及び音源属性適用手段36により、属性を強調した音源が出力され、利用者を目的地にわかりやすく誘導できる。音源属性強調手段32及び音源属性適用手段36は第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0110】
音源属性16として例えば音程の情報を用いて、音源を強調する場合、図13示す音源属性強調手段32は、音源属性16として、「音程」の指定を受ける。また、音源属性強調手段32は、目的地と利用者の位置の変化量18とを受け、この受けた情報に応じて音程の音源属性に変化を与えて強調する。音源属性強調手段32は、目的地と現在地の間の距離及び方向を、音程を用いて強調する手段として音程強調手段62を備える。
【0111】
図13に示す音源属性適用手段36は、強調された音程の情報を音源10に適用して目的地への誘導音22を生成する手段として音程適用手段64を備える。
【0112】
次に、音程を用いた強調では、たとえば、目的地に対する利用者の位置の変化量(目的地と利用者の位置の変化量18)に基づいて、目的地への誘導音22を生成し、この目的地への誘導音22を利用者Uに提示する。利用者Uに提示する音源の音程の制御量pは、たとえば式(12)、式(13)及び式(14)を用いて決定する。なお、制御量pは、元の音源10の音程に対する変化量であって、値pが大きくなると、音程の変化の量が大きくなることを表す。
【0113】
【数12】

【数13】

【数14】

但し、Pmax: pの最大値であり、たとえば、2に設定する。
Pmin: pの最小値であり、たとえば、0.5に設定する。
coeff_p: p1の寄与度を表し、0から1までの範囲の値に設定する。
【0114】
f1(t)及びf2(t)は第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0115】
p1(t)は距離の強調を表す。f1(t)として式(5)を用いると、Δl(t)が0より小さい場合、時間の経過につれてp1(t)の値がPmaxからPminまで直線的に減少し、値がPminまで減少すると、急激に値がPmaxまで上昇することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。f2(t)として式(6)を用いると、Δl(t)が0を超える場合、時間の経過につれてp1(t)の値がPminからPmaxまで直線的に上昇し、値がPmaxまで上昇すると、急激に値がPminまで減少することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。Δl(t)が0であり、目的地と利用者の位置の変化量18が0である場合には、p1(t)は固定値1.0に設定する。このように、目的地と利用者の位置の変化量18としてΔl(t)に応じて、p1(t)の関数を変えることにより、音程を用いて距離を強調することができる。
【0116】
p2(t)は方向の強調を表す。f1(t)として式(5)を用いると、ΔΦ(t)が0より小さい場合、時間の経過につれてp2(t)の値がPmaxからPminまで直線的に減少し、値がPminまで減少すると、急激に値がPmaxまで上昇することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。f2(t)として式(6)を用いると、ΔΦ(t)が0を超える場合、時間の経過につれてp2(t)の値がPminからPmaxまで直線的に上昇し、値がPmaxまで上昇すると、急激に値がPminまで減少することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。ΔΦ(t)が0であり、目的地と利用者の位置の変化量18が0である場合には、p2(t)は固定値1.0に設定する。このように、目的地と利用者の位置の変化量18としてΔΦ(t)に応じて、p2(t)の関数を変えることにより、音程を用いて方向を強調することができる。
【0117】
p(Δl(t),ΔΦ(t))では、距離の強調を表す値p1(t)及び方向の強調を表す値p2(t)のそれぞれに係数coeff_p及び係数(1−coeff_p)を掛けた後にp1(t)及びp2(t)を加算している。よって、p(Δl(t),ΔΦ(t))は、距離及び方向の強調が可能である。p(Δl(t),ΔΦ(t))により音源を強調すると、距離及び方向の両方を強調させることができる。coeff_pが0から0.5未満の範囲に設定されると、p(Δl(t),ΔΦ(t))では、方向が距離よりも強調され、coeff_pが0.5を超えから1までの範囲に設定されると、p(Δl(t),ΔΦ(t))では、距離が方向よりも強調される。coeff_pが0.5に設定されると、p(Δl(t),ΔΦ(t))では、距離と方向の強調の割合が同じになる。また、coeff_pが0に設定されると、p(Δl(t),ΔΦ(t))は、方向を強調する設定となり、coeff_pが1に設定されると、p(Δl(t),ΔΦ(t))は、距離を強調する設定となる。このように、p(Δl(t),ΔΦ(t))を表す式(12)が係数coeff_p及び(1−coeff_p)を含むことにより、距離と方向の強調の割合を既定値として又は任意に設定することが可能であり、距離と方向の強調度合いの選択の自由度が高められる。
【0118】
次に、誘導音を生成する処理について、図14を参照する。図14は誘導音を生成する処理の一例を示すフローチャートである。この誘導音を生成する処理は、本開示の誘導音生成プログラムの一例であって、斯かる処理に本発明が限定されるものではない。
【0119】
図14に示す処理手順では、音源属性を強調する処理(ステップS11)及び強調した音源属性を適用する処理(ステップS12)が実行される。これらの処理手順は、音源属性強調手段32及び音源属性適用手段36により実行される。
【0120】
(1) 音源属性を強調する処理
【0121】
目的地と利用者の位置の変化量18として、距離の変化量Δl(t)及び角度の変化量ΔΦ(t)が音源属性強調手段32に入力され、音源属性16として「音程」が音源属性強調手段32に入力される。音源属性強調手段32の音程強調手段62は、距離の変化量Δl(t)に応じてp1(t)を求めて音程の音源属性を変化させ、距離を強調する。音程強調手段62は、角度の変化量ΔΦ(t)に応じてp2(t)を求めて音程の音源属性を変化させ、方向を強調する。音程強調手段62は、p1(t)及びp2(t)を用いて、p(Δl(t),ΔΦ(t))を求め、距離及び方向を強調する。このようにして、音程強調手段62により、音源属性が強調される。
【0122】
音源属性強調手段32は、強調された音程の音源属性20としてp(Δl(t),ΔΦ(t))を出力する。そして強調された音程の音源属性20が音源属性適用手段36に入力される。
【0123】
(2) 強調した音源属性を適用する処理
【0124】
強調した音源属性を適用する処理について、図15を参照する。図15は、音程の音源属性を適用する処理の一例を示すフローチャートである。なお、図15に示す処理は一例であって、斯かる処理に本発明が限定されるものではない。図15に示す音程の音源属性を適用する処理の手順は図14に示す強調した音源属性を適用する処理(ステップS12)のサブルーチンである。
【0125】
強調された音程の音源属性20と、音源10が音源属性適用手段36に入力されると、音源属性適用手段36の音程適用手段64は音源10の音源信号を時間周波数変換して周波数成分Sを求める(ステップS21)。この時間周波数変換では、音源信号をN個の帯域に分割して、それぞれの帯域に対する周波数成分Sを算出する。周波数成分は、周波数(単位:Hz)毎の複素数であり、k番目の帯域の周波数成分は、たとえばS(k)として表される。音源信号をN個の帯域に分割する場合、たとえば、それぞれの帯域の幅が同じ幅となるように分割しておく。このように分割することで帯域幅の管理を容易にすることができる。なお、kは分割した帯域の番号であって、kは0からN−1までの整数である。
【0126】
次に、強調された音程の音源属性20を用いて、音源の周波数成分をp(Hz)低くして(ステップS22)、音源の周波数成分を変更する。ここで、低くする値である制御量pとして、式(12)で求めたp(Δl(t),ΔΦ(t))を用いて帯域の移動数jを式(15)のようにして求める。
【0127】
【数15】

但し、Δf:k番目の周波数f(k)からk−1番目の周波数f(k−1)を引いた値{f(k) − f(k−1)}であり、周波数成分の帯域の幅を表す。
round():少数点以下を四捨五入して整数を出力する関数である。
【0128】
各周波数成分の帯域の幅をΔfに設定すると、j個分の帯域幅はp(Hz)又はp(Hz)の近傍値となる。そこで、k番目の帯域の周波数成分S'(k)を式(16)のようにして求める。なお、S'(k)は周波数変更後の周波数成分を表す。
【0129】
【数16】

【0130】
そして、式(16)で得た音源の周波数成分S'(k)を周波数時間変換する(ステップS23)。周波数変更後の周波数成分S'(k)は変更前の周波数成分S(k)に比べkの値がj個分小さくなるので、周波数がp(Hz)低くなった音源信号を得る。そして処理を終了する(図14のend)。
【0131】
このように、音源10の音程を変更することにより、その音源の音程の変化又は不変化から、距離の変化量Δl(t)及び角度の変化量ΔΦ(t)が容易に把握できる。音源属性強調手段32は、利用者Uの位置の変化量に応じて、音源の音程を下げる量を制御する。音程の低下量が小さいと、音源が知覚しやすくなり、音源が鮮明になる。利用者Uと目的地の間の実際の距離の変化よりも大きく音程を変化させることができるので、一定の音程の音源を提示するものに比べ、利用者Uを目的地にわかりやすく誘導できる。
【0132】
〔第6の実施の形態〕
【0133】
第6の実施の形態について、図16を参照する。図16は、第6の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。なお、図16に示す構成は一例であって、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。図1、図4、図5、図11、図12及び図13と同一部分には同一符号を付してある。
【0134】
この実施の形態では、音源属性強調手段32及び音源属性適用手段36により、属性を強調した音源が出力され、利用者を目的地にわかりやすく誘導できる。音源属性強調手段32及び音源属性適用手段36は第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0135】
音源属性16として例えばテンポ(音源の速度)を用いて、音源10を強調する場合、図16に示す音源属性強調手段32は、音源属性16として、「テンポ」の指定を受ける。音源属性強調手段32は、目的地と利用者の位置の変化量18とを受け、この受けた情報に応じてテンポの音源属性に変化を与えて強調する。音源属性強調手段32は、目的地と現在地の間の距離及び方向を、テンポを用いて強調する手段としてテンポ強調手段72を備える。
【0136】
図16に示す音源属性適用手段36は、強調されたテンポの情報を音源10に適用して目的地への誘導音22を生成する手段としてテンポ適用手段74を備える。
【0137】
次に、テンポを用いた強調では、たとえば、目的地に対する利用者の位置の変化量(目的地と利用者の位置の変化量18)に基づいて、目的地への誘導音22を生成し、この目的地への誘導音22を利用者Uに提示する。利用者Uに提示する音源のテンポの制御量の倍率m(%)は、たとえば式(17)、式(18)及び式(19)を用いて決定する。なお、制御量の倍率m(%)は、元の音源10のテンポに対する割合である。
【0138】
【数17】

【数18】

【数19】

但し、Mmax: mの最大値であり、たとえば2に設定する。
Mmin: mの最小値であり、たとえば0.5に設定する。
coeff_m: m1の寄与度を表し、0から1までの範囲の値に設定する。
【0139】
f1(t)及びf2(t)は第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0140】
m1(t)は距離の強調を表す。f1(t)として式(5)を用いると、Δl(t)が0より小さい場合、時間の経過につれてm1(t)の値がMmaxからMminまで直線的に減少し、値がMminまで減少すると、急激に値がMmaxまで上昇することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。f2(t)として式(6)を用いると、Δl(t)が0を超える場合、時間の経過につれてm1(t)の値がMminからMmaxまで直線的に上昇し、値がMmaxまで上昇すると、急激に値がMminまで減少することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。Δl(t)が0であり、目的地と利用者の位置の変化量18が0である場合には、m1(t)は固定値1.0に設定する。このように、目的地と利用者の位置の変化量18としてΔl(t)に応じて、m1(t)の関数を変えることにより、テンポを用いて距離を強調することができる。
【0141】
m2(t)は方向の強調を表す。f1(t)として式(5)を用いると、ΔΦ(t)が0より小さい場合、時間の経過につれてm2(t)の値がMmaxからMminまで直線的に減少し、値がMminまで減少すると、急激に値がMmaxまで上昇することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。f2(t)として式(6)を用いると、ΔΦ(t)が0を超える場合、時間の経過につれてm2(t)の値がMminからMmaxまで直線的に上昇し、値がMmaxまで上昇すると、急激に値がMminまで減少することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。ΔΦ(t)が0であり、目的地と利用者の位置の変化量18が0である場合には、m2(t)は固定値1.0に設定する。このように、目的地と利用者の位置の変化量18としてΔΦ(t)に応じて、m2(t)の関数を変えることにより、テンポを用いて方向を強調することができる。
【0142】
m(Δl(t),ΔΦ(t))では、距離の強調を表す値m1(t)及び方向の強調を表す値m2(t)のそれぞれに係数coeff_m及び係数(1−coeff_m)を掛けた後にm1(t)及びm2(t)を加算している。よって、m(Δl(t),ΔΦ(t))は、距離及び方向の強調が可能である。m(Δl(t),ΔΦ(t))により音源を強調すると、距離及び方向の両方を強調させることができる。coeff_mが0から0.5未満の範囲に設定されると、m(Δl(t),ΔΦ(t))では、方向が距離よりも強調され、coeff_mが0.5を超え1までの範囲に設定されると、m(Δl(t),ΔΦ(t))では、距離が方向よりも強調される。coeff_mが0.5に設定されると、m(Δl(t),ΔΦ(t))では、距離と方向の強調の割合が同じになる。また、coeff_mが0に設定されると、m(Δl(t),ΔΦ(t))は、方向を強調する設定となり、coeff_mが1に設定されると、m(Δl(t),ΔΦ(t))は、距離を強調する設定となる。このように、m(Δl(t),ΔΦ(t))を表す式(17)が係数coeff_m及び(1−coeff_m)を含むことにより、距離と方向の強調の割合を既定値として又は任意に設定することが可能であり、距離と方向の強調度合いの選択の自由度が高められる。
【0143】
次に、目的地と利用者の位置の変化量18から目的地への誘導音22を生成する処理では、たとえば、音源属性を強調する処理(図3のステップS1)及び強調した音源属性を適用する処理(図3のステップS2)を行う。
【0144】
(1) 音源属性を強調する処理
【0145】
目的地と利用者の位置の変化量18として、距離の変化量Δl(t)及び角度の変化量ΔΦ(t)が音源属性強調手段32に入力され、音源属性16として「テンポ」が音源属性強調手段32に入力される。音源属性強調手段32のテンポ強調手段72は、距離の変化量Δl(t)に応じてm1(t)を求めてテンポの音源属性を変化させ、距離を強調する。テンポ強調手段72は、角度の変化量ΔΦ(t)に応じてm2(t)を求めてテンポの音源属性を変化させ、方向を強調する。テンポ強調手段72は、m1(t)及びm2(t)を用いて、m(Δl(t),ΔΦ(t))を求め、距離及び方向を強調する。このようにして、テンポ強調手段72により、音源属性が強調される。
【0146】
音源属性強調手段32は、強調されたテンポの音源属性20としてm(Δl(t),ΔΦ(t))を出力する。そして強調されたテンポの音源属性20が音源属性適用手段36に入力される。
【0147】
(2) 強調した音源属性を適用する処理
【0148】
強調されたテンポの音源属性20と、音源10が音源属性適用手段36に入力されると、音源のテンポがm(%)となるように、信号波形を用いた速度変換の方法で音源を変更する。mは式(17)で得た値、即ちm(Δl(t),ΔΦ(t))である。
【0149】
テンポの変更には、たとえば、信号波形を用いた速度変換の方法を用いることができる。この速度変換の方法の一例としてたとえば、時間領域調波構造伸縮(TDHS:time-domainharmonic scaling )がある(「電子情報通信工学シリーズ 音声情報処理」古井貞熙著 森北出版株式会社 59頁〜60頁に記載)。この時間領域調波構造伸縮技術では、隣接するピッチ素片を、時間的連続性を考慮して、時間軸上の位置によって異なる適切な重みを乗じた後に加え合わせることで圧縮または伸張する。具体的には、伸張する場合には隣接するピッチ素片の重複する長さ2Pずつの区間にそれぞれ三角形の重みを掛けて加え合わせたものを、Pの長さに圧縮し、元の1・2の周期で標本化する。
【0150】
このように、音源10のテンポを変更することにより、その音源のテンポの変化又は不変化から、距離の変化量Δl(t)及び角度の変化量ΔΦ(t)が容易に把握できる。音源属性強調手段32は、利用者Uの位置の変化量に応じて、目的地方向に近づけば、音源のテンポを上げ、目的地方向から遠ざかれば、音源のテンポを下げるように制御する。音源のテンポの制御により、音源が知覚しやすくなり、音源が鮮明になる。利用者Uと目的地の間の位置が、近づいたか、遠ざかったかの変化に応じて音源のテンポを変化させることができるので、たとえば一定のテンポの音源を提示するものに比べ、利用者Uを目的地にわかりやすく誘導できる。
【0151】
〔第7の実施の形態〕
【0152】
第7の実施の形態について、図17を参照する。図17は、第7の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。なお、図17に示す構成は一例であって、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。図1、図4、図5、図11、図12、図13及び図16と同一部分には同一符号を付してある。
【0153】
この実施の形態では、音源属性強調手段32及び音源属性適用手段36により、属性を強調した音源が出力され、利用者を目的地にわかりやすく誘導できる。音源属性強調手段32及び音源属性適用手段36は第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0154】
音源属性16として例えば周波数特性の情報を用いて、音源10を強調する場合、図17に示す音源属性強調手段32は、音源属性16として、「周波数特性」の指定を受ける。音源属性強調手段32は、目的地と利用者の位置の変化量18とを受け、この受けた情報に応じて周波数特性の音源属性に変化を与えて強調する。音源属性強調手段32は、目的地と現在地の間の距離及び方向を、周波数特性を用いて強調する手段として周波数特性強調手段82を備える。
【0155】
図17に示す音源属性適用手段36は、強調された周波数特性の情報である音源属性20を音源10に適用して目的地への誘導音22を生成する手段として周波数特性適用手段84を備える。
【0156】
次に、周波数特性を用いた強調では、たとえば、目的地に対する利用者の位置の変化量(目的地と利用者の位置の変化量18)に基づいて、目的地への誘導音22を生成し、この目的地への誘導音22を利用者Uに提示する。利用者Uに提示する音源の周波数特性の傾きの制御量c(db/Hz)は、たとえば式(20)、式(21)及び式(22)を用いて決定する。なお、この音源の周波数特性の傾きの制御量cは、横軸(x軸)を周波数(Hz)、縦軸(y軸)をゲイン(dB)とする図18に示すxy座標系上の直線(周波数特性線)の傾きを表す量である。
【0157】
【数20】

【数21】

【数22】

但し、Cmax: cの最大値であり、たとえば5に設定する。
Cmin: cの最小値であり、たとえば0に設定する。
coeff_c: c1の寄与度を表し、0から1までの範囲の値に設定する。
【0158】
f1(t)及びf2(t)は第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0159】
c1(t)は距離の強調を表す。f1(t)として式(5)を用いると、Δl(t)が0より小さい場合、時間の経過につれてc1(t)の値がCmaxからCminまで直線的に減少し、値がCminまで減少すると、急激に値がCmaxまで上昇することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。f2(t)として式(6)を用いると、Δl(t)が0を超える場合、時間の経過につれてc1(t)の値がCminからCmaxまで直線的に上昇し、値がCmaxまで上昇すると、急激に値がCminまで減少することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。Δl(t)が0であり、目的地と利用者の位置の変化量18が0である場合には、c1(t)は固定値1.0に設定する。このように、目的地と利用者の位置の変化量18としてΔl(t)に応じて、c1(t)の関数を変えることにより、周波数特性を用いて距離を強調することができる。
【0160】
c2(t)は方向の強調を表す。f1(t)として式(5)を用いると、ΔΦ(t)が0より小さい場合、時間の経過につれてc2(t)の値がCmaxからCminまで直線的に減少し、値がCminまで減少すると、急激に値がCmaxまで上昇することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。f2(t)として式(6)を用いると、ΔΦ(t)が0を超える場合、時間の経過につれてc2(t)の値がCminからCmaxまで直線的に上昇し、値がCmaxまで上昇すると、急激に値がCminまで減少することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。ΔΦ(t)が0であり、目的地と利用者の位置の変化量18が0である場合には、c2(t)は固定値1.0に設定する。このように、目的地と利用者の位置の変化量18としてΔΦ(t)に応じて、c2(t)の関数を変えることにより、周波数特性を用いて方向を強調することができる。
【0161】
c(Δl(t),ΔΦ(t))では、距離の強調を表す値c1(t)及び方向の強調を表す値c2(t)のそれぞれに係数coeff_c及び係数(1−coeff_c)を掛けた後にc1(t)及びc2(t)を加算している。よって、c(Δl(t),ΔΦ(t))は、距離及び方向の強調が可能である。c(Δl(t),ΔΦ(t))により音源を強調すると、距離及び方向の両方を強調させることができる。coeff_cが0から0.5未満の範囲に設定されると、c(Δl(t),ΔΦ(t))では、方向が距離よりも強調され、coeff_cが0.5を超え1までの範囲に設定されると、c(Δl(t),ΔΦ(t))では、距離が方向よりも強調される。coeff_cが0.5に設定されると、c(Δl(t),ΔΦ(t))では、距離と方向の強調の割合が同じになる。また、coeff_cが0に設定されると、c(Δl(t),ΔΦ(t))は、方向を強調する設定となり、coeff_cが1に設定されると、c(Δl(t),ΔΦ(t))は、距離を強調する設定となる。このように、c(Δl(t),ΔΦ(t))を表す式(20)が係数coeff_c及び(1−coeff_c)を含むことにより、距離と方向の強調の割合を既定値として又は任意に設定することが可能であり、距離と方向の強調度合いの選択の自由度が高められる。
【0162】
傾きの制御量cを用いて、各周波数のゲインe(f)を表すと式(23)で表される。なお、ゲインe(f)は、音の出力と入力との比による値である。
【0163】
【数23】

【0164】
傾きの制御量cが大きくなると周波数が高い高音領域の音の利得が上昇し、音の鮮明感を聴覚に与えることになる。また、傾きの制御量cが小さくなると、高音領域の音の利得が低下し、音のこもり感が増大し、音の不鮮明感を聴覚に与えることになる。即ち、制御量c(db/Hz)を用いた音源属性の強調では、時間の経過につれて、制御量cをCmaxとCminの間で変動させ、聴覚に与える鮮明感を変動させることができる。
【0165】
次に、目的地と利用者の位置の変化量18から目的地への誘導音22を生成する処理では、たとえば、音源属性を強調する処理(図14のステップS11)及び強調した音源属性を適用する処理(図14のステップS12)を行う。
【0166】
(1) 音源属性を強調する処理
【0167】
目的地と利用者の位置の変化量18として、距離の変化量Δl(t)及び角度の変化量ΔΦ(t)が音源属性強調手段32に入力され、音源属性16として「周波数特性」が音源属性強調手段32に入力される。音源属性強調手段32の周波数特性強調手段82は、距離の変化量Δl(t)に応じてc1(t)を求めて周波数特性の音源属性を変化させ、距離を強調する。周波数特性強調手段82は、角度の変化量ΔΦ(t)に応じてc2(t)を求めて周波数特性の音源属性を変化させ、方向を強調する。周波数特性強調手段82は、c1(t)及びc2(t)を用いて、c(Δl(t),ΔΦ(t))を求め、距離及び方向を強調する。このようにして、周波数特性強調手段82により、音源属性が強調される。
【0168】
音源属性強調手段32は、強調された周波数特性の音源属性20として周波数特性の傾きの制御量c(Δl(t),ΔΦ(t))又は、この制御量c(Δl(t),ΔΦ(t))を用いて決定される各周波数のゲインe(f)を出力する。そして強調された周波数特性の音源属性20が音源属性適用手段36に入力される。
【0169】
(2) 強調した音源属性を適用する処理
【0170】
強調した音源属性を適用する処理について、図19を参照する。図19は、周波数特性の音源属性を適用する処理の一例を示すフローチャートである。なお、図19に示す処理は一例であって、斯かる処理に本発明が限定されるものではない。この周波数特性の音源属性を適用する処理の手順は図14に示す強調した音源属性を適用する処理(ステップS12)のサブルーチンである。
【0171】
強調された周波数特性の音源属性20と、音源10が音源属性適用手段36に入力されると、音源属性適用手段36の周波数特性適用手段84は音源10の音源信号を時間周波数変換して周波数成分Sを求める(ステップS31)。この時間周波数変換では、音源信号をN個の帯域に分割して、それぞれの帯域に対する周波数成分Sを算出する。周波数成分は、周波数(単位:Hz)毎の複素数であり、k番目の帯域の周波数成分は、たとえばS(k)として表される。音源信号をN個の帯域に分割する場合、たとえば、それぞれの帯域の幅が同じ幅となるように分割しておく。このように分割することで帯域幅の管理を容易にすることができる。なお、kは分割した帯域の番号であって、kは0からN−1までの整数である。
【0172】
次に、制御量cを用いて決定されたゲインe(f)を用いて音源の周波数成分を調節する(ステップS32)。調節処理後の周波数成分S''(k)は、たとえば、調節処理前の周波数成分S(k)にe(f)を乗じて式(24)のようにして求める。
【0173】
【数24】

【0174】
そして、式(24)で得た処理後の音源の周波数成分S''(k)を周波数時間変換し(ステップS33)、周波数特性が調節された音源信号を得て目的地への誘導音22を生成し、処理を終了する(図14のend)。
【0175】
周波数成分S(k)を式(24)により調整すると、たとえば、図20に示す処理前の音源の周波数特性CBが、処理後の音源の周波数特性CAに調整される。即ち、処理前の音源の周波数特性CBの回帰線LBに比較して処理後の音源の周波数特性CAの回帰線LAの傾き量は大きくなる(傾きの値は小さくなる)。周波数特性を強調することで処理後の音源の周波数特性CA及び回帰直線LAの傾きが変動するので、音源10の鮮明感から距離の変化量Δl(t)及び角度の変化量ΔΦ(t)が容易に把握できる。
【0176】
音源属性強調手段32は、利用者Uの位置の変化量に応じて、目的地方向に近づけば、音源の周波数特性の傾きを大きくし、目的地方向から遠ざかれば、音源の周波数特性の傾きを小さく制御する。音源の周波数特性の傾きが大きくなると、音源が知覚しやすくなり、音源が鮮明になる。利用者Uと目的地の間の位置が、近づいたか、遠ざかったかの変化に応じて音源の周波数特性線の傾きを変化させることができるので、たとえば一定の周波数特性の傾きの音源を提示するものに比べ、利用者Uを目的地にわかりやすく誘導できる。
【0177】
〔第8の実施の形態〕
【0178】
第8の実施の形態について、図21を参照する。図21は、第8の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。なお、図21に示す構成は一例であって、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。図1、図4、図5、図11、図12、図13、図16及び図17と同一部分には同一符号を付してある。
【0179】
この実施の形態では、音源属性強調手段32及び音源属性適用手段36により、属性を強調した音源が出力され、利用者を目的地にわかりやすく誘導できる。音源属性強調手段32及び音源属性適用手段36は第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0180】
音源属性16として例えば帯域幅の情報を用いて、音源10を強調する場合、図21に示す音源属性強調手段32は、音源属性16として、「帯域幅」の指定を受ける。音源属性強調手段32は、目的地と利用者の位置の変化量18とを受けて、帯域幅の音源属性に変化を与えて強調し、この受けた情報に応じて目的地と現在地の間の距離及び方向を強調して出力する。音源属性強調手段32は、目的地と現在地の間の距離及び方向を、音源の帯域幅を用いて強調する手段として帯域幅強調手段92を備える。
【0181】
図21に示す音源属性適用手段36は、強調された帯域幅の情報を音源10に適用して目的地への誘導音22を生成する手段として帯域幅適用手段94を備える。
【0182】
次に、音源の帯域幅を用いた強調では、たとえば、目的地に対する利用者の位置の変化量(目的地と利用者の位置の変化量18)に基づいて、目的地への誘導音22を生成し、この目的地への誘導音22を利用者Uに提示する。利用者Uに提示する音源の帯域幅の制御量wは、たとえば式(25)、式(26)及び式(27)を用いて決定する。なお、制御量wは、元の音源10の帯域幅を小さくする割合であって、たとえばwが100(%)の場合、音源10の帯域幅の減少はなく、wが50(%)の場合、音源10の帯域幅が半減することを表す。
【0183】
【数25】

【数26】

【数27】

但し、Wmax: wの最大値であり、たとえば200に設定する。
Wmin: wの最小値であり、たとえば0に設定する。
coeff_w: w1の寄与度を表し、0から1までの範囲の値に設定する。
【0184】
f1(t)及びf2(t)は第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0185】
w1(t)は距離の強調を表す。f1(t)として式(5)を用いると、Δl(t)が0より小さい場合、時間の経過につれてw1(t)の値がWmaxからWminまで直線的に減少し、値がWminまで減少すると、急激に値がWmaxまで上昇することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。f2(t)として式(6)を用いると、Δl(t)が0を超える場合、時間の経過につれてw1(t)の値がWminからWmaxまで直線的に上昇し、値がWmaxまで上昇すると、急激に値がWminまで減少することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。Δl(t)が0であり、目的地と利用者の位置の変化量18が0である場合には、w1(t)は固定値1.0に設定する。このように、目的地と利用者の位置の変化量18としてΔl(t)に応じて、w1(t)の関数を変えることにより、音源の帯域幅を用いて距離を強調することができる。
【0186】
w2(t)は方向の強調を表す。f1(t)として式(5)を用いると、ΔΦ(t)が0より小さい場合、時間の経過につれてw2(t)の値がWmaxからWminまで直線的に減少し、値がWminまで減少すると、急激に値がWmaxまで上昇することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。f2(t)として式(6)を用いると、ΔΦ(t)が0を超える場合、時間の経過につれてw2(t)の値がWminからWmaxまで直線的に上昇し、値がWmaxまで上昇すると、急激に値がWminまで減少することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。ΔΦ(t)が0であり、目的地と利用者の位置の変化量18が0である場合には、w2(t)は固定値1.0に設定する。このように、目的地と利用者の位置の変化量18としてΔΦ(t)に応じて、w2(t)の関数を変えることにより、音源の帯域幅を用いて方向を強調することができる。
【0187】
w(Δl(t),ΔΦ(t))では、距離の強調を表す値w1(t)及び方向の強調を表す値w2(t)のそれぞれに係数coeff_w及び係数(1−coeff_w)を掛けた後にw1(t)及びw2(t)を加算している。よって、w(Δl(t),ΔΦ(t))は、距離及び方向の強調が可能である。w(Δl(t),ΔΦ(t))により音源を強調すると、距離及び方向の両方を強調させることができる。coeff_wが0から0.5未満の範囲に設定されると、w(Δl(t),ΔΦ(t))では、方向が距離よりも強調され、coeff_wが0.5を超え1までの範囲に設定されると、w(Δl(t),ΔΦ(t))では、距離が方向よりも強調される。coeff_wが0.5に設定されると、w(Δl(t),ΔΦ(t))では、距離と方向の強調の割合が同じになる。また、coeff_wが0に設定されると、w(Δl(t),ΔΦ(t))は、方向を強調する設定となり、coeff_wが1に設定されると、w(Δl(t),ΔΦ(t))は、距離を強調する設定となる。このように、w(Δl(t),ΔΦ(t))を表す式(25)が係数coeff_w及び(1−coeff_w)を含むことにより、距離と方向の強調の割合を既定値として又は任意に設定することが可能であり、距離と方向の強調度合いの選択の自由度が高められる。
【0188】
次に、目的地と利用者の位置の変化量18から目的地への誘導音22を生成する処理では、たとえば、音源属性を強調する処理(図14のステップS11)及び強調した音源属性を適用する処理(図14のステップS12)を行う。
【0189】
(1) 音源属性を強調する処理
【0190】
目的地と利用者の位置の変化量18として、距離の変化量Δl(t)及び角度の変化量ΔΦ(t)が音源属性強調手段32に入力され、音源属性16として「帯域幅」が音源属性強調手段32に入力される。音源属性強調手段32の帯域幅強調手段92は、距離の変化量Δl(t)に応じてw1(t)を求めて帯域幅の音源属性を変化させ、距離を強調する。帯域幅強調手段92は、角度の変化量ΔΦ(t)に応じてw2(t)を求めて帯域幅の音源属性を変化させ、方向を強調する。帯域幅強調手段92は、w1(t)及びw2(t)を用いて、w(Δl(t),ΔΦ(t))を求め、距離及び方向を強調する。このようにして、帯域幅強調手段92により、音源属性が強調される。
【0191】
音源属性強調手段32は、強調された帯域幅の音源属性20としてw(Δl(t),ΔΦ(t))を出力する。そして強調された帯域幅の音源属性20が音源属性適用手段36に入力される。
【0192】
(2) 強調した音源属性を適用する処理
【0193】
強調した音源属性を適用する処理について、図22を参照する。図22は、帯域幅の音源属性を適用する処理の一例を示すフローチャートである。なお、図22に示す処理は一例であって、斯かる処理に本発明が限定されるものではない。この帯域幅の音源属性を適用する処理の手順は図14に示す強調した音源属性を適用する処理(ステップS12)のサブルーチンである。
【0194】
強調された帯域幅の音源属性20と、音源10が音源属性適用手段36に入力されると、音源属性適用手段36の帯域幅適用手段94は音源10の音源信号を時間周波数変換して周波数成分Sを求める(ステップS41)。この時間周波数変換では、音源信号をN個の帯域に分割して、それぞれの帯域に対する周波数成分Sを算出する。周波数成分は、周波数(単位:Hz)毎の複素数であり、k番目の帯域の周波数成分は、たとえばS(k)として表される。音源信号をN個の帯域に分割する場合、たとえば、それぞれの帯域の幅が同じ幅となるように分割しておく。このように分割することで帯域幅の管理を容易にすることができる。なお、kは分割した帯域の番号であって、kは0からN−1までの整数である。
【0195】
次に、帯域幅の制御量w(Δl(t),ΔΦ(t))(=w)を用いて音源の帯域を調節する(ステップS42)。調節後の周波数成分S'''(k)は、wを用いて式(28)により求めた帯域数qを用いて、式(29)により設定する。即ち、kの値が0からq−1までの範囲において、S'''(k)をS(k)と同じ値とし、q−1を超える範囲において、S'''(k)を0にしている。なお、帯域数qは帯域の分割数N以下の整数である。
【数28】

【数29】

【0196】
そして、式(29)により得た処理後の音源の周波数成分S'''(k)を周波数時間変換し(ステップS43)、音源の帯域幅が調節された音源信号を得て、誘導音22を生成し、処理を終了する(図14のend)。
【0197】
周波数成分S(k)を式(29)により調整すると、帯域幅が、N分のqに減少する。帯域幅の制御量wが強調されることにより帯域数qが変動し、音源10の帯域幅が変動する。音源10の帯域幅の変化又は不変化から、距離の変化量Δl(t)及び角度の変化量ΔΦ(t)が容易に把握できる。音源属性強調手段32は、利用者Uの位置の変化量に応じて、音源の帯域幅を制御し、目的地方向に近づくと、音源の帯域幅を大きくし、目的地方向から遠ざかると、音源の帯域幅を小さく制御する。音源の帯域幅が広がると、音の表現が豊かになり、音源が知覚しやすくなり、音源が鮮明になる。利用者と目的地の間の位置が、近づいたか、遠ざかったかの変化に応じて音源の帯域幅を変化させることができるので、たとえば一定の帯域幅の音源を提示するものに比べ、利用者Uを目的地にわかりやすく誘導できる。
【0198】
〔第9の実施の形態〕
【0199】
第9の実施の形態について、図23を参照する。図23は、第9の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。なお、図23に示す構成は一例であって、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。図1、図4、図5、図11、図12、図13、図16、図17及び図21と同一部分には同一符号を付してある。
【0200】
この実施の形態では、音源属性強調手段32及び音源属性適用手段36により、属性を強調した音源である誘導音22が出力され、利用者を目的地にわかりやすく誘導できる。音源属性強調手段32及び音源属性適用手段36は第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0201】
音源属性16としてSNR(Signal- Noise ratio )の情報を用いて、音源10を強調する場合、図23に示す音源属性強調手段32は、音源属性16として、「SNR」の指定を受ける。音源属性強調手段32は、目的地と利用者の位置の変化量18を受けて、この受けた情報に応じてSNRの音源属性に変化を与えて強調する。音源属性強調手段32は、目的地と現在地の間の距離及び方向を、SNRを用いて強調する手段としてSNR強調手段102を備える。
【0202】
図23に示す音源属性適用手段36は、強調されたSNRの情報である音源属性20を音源10に適用して目的地への誘導音22を生成する手段としてSNR適用手段104を備える。
【0203】
次に、SNRを用いた強調では、たとえば、目的地に対する利用者の位置の変化量(目的地と利用者の位置の変化量18)に基づいて、目的地への誘導音22を生成し、この目的地への誘導音22を利用者Uに提示する。利用者Uに提示する音源のSNRの制御量sは、たとえば式(30)、式(31)及び式(32)を用いて決定する。なお、制御量sは、SNRの大きさを表す。
【0204】
【数30】

【数31】

【数32】

但し、Smax: sの最大値でありたとえば0に設定する。
Smin: sの最小値でありたとえば20に設定する。
coeff_s: s1の寄与度を表し、0から1までの範囲の値に設定する。
【0205】
f1(t)及びf2(t)は第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0206】
s1(t)は距離の強調を表す。f1(t)として式(5)を用いると、Δl(t)が0より小さい場合、時間の経過につれてs1(t)の値がSmaxからSminまで直線的に減少し、値がSminまで減少すると、急激に値がSmaxまで上昇することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。f2(t)として式(6)を用いると、Δl(t)が0を超える場合、時間の経過につれてs1(t)の値がSminからSmaxまで直線的に上昇し、値がSmaxまで上昇すると、急激に値がSminまで減少することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。Δl(t)が0であり、目的地と利用者の位置の変化量18が0である場合には、s1(t)は固定値1.0に設定する。このように、目的地と利用者の位置の変化量18としてΔl(t)に応じて、s1(t)の関数を変えることにより、音源のSNRを用いて距離を強調することができる。
【0207】
s2(t)は方向の強調を表す。f1(t)として式(5)を用いると、ΔΦ(t)が0より小さい場合、時間の経過につれてs2(t)の値がSmaxからSminまで直線的に減少し、値がSminまで減少すると、急激に値がSmaxまで上昇することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。f2(t)として式(6)を用いると、ΔΦ(t)が0を超える場合、時間の経過につれてs2(t)の値がSminからSmaxまで直線的に上昇し、値がSmaxまで上昇すると、急激に値がSminまで減少することになる。そして、このような値の変化を周期aで繰り返すことができる。ΔΦ(t)が0であり、目的地と利用者の位置の変化量18が0である場合には、s2(t)は固定値1.0に設定する。このように、目的地と利用者の位置の変化量18としてΔΦ(t)に応じて、s2(t)の関数を変えることにより、音源のSNRを用いて方向を強調することができる。
【0208】
s(Δl(t),ΔΦ(t))では、距離の強調を表す値s1(t)及び方向の強調を表す値s2(t)のそれぞれに係数coeff_s及び係数(1−coeff_s)を掛けた後にs1(t)及びs2(t)を加算している。よって、s(Δl(t),ΔΦ(t))は、距離及び方向の強調が可能である。s(Δl(t),ΔΦ(t))により音源を強調すると、距離及び方向の両方を強調させることができる。coeff_sが0から0.5未満の範囲に設定されると、s(Δl(t),ΔΦ(t))では、方向が距離よりも強調され、coeff_sが0.5を超え1までの範囲に設定されると、s(Δl(t),ΔΦ(t))では、距離が方向よりも強調される。coeff_sが0.5に設定されると、s(Δl(t),ΔΦ(t))では、距離と方向の強調の割合が同じになる。また、coeff_sが0に設定されると、s(Δl(t),ΔΦ(t))は、方向を強調する設定となり、coeff_sが1に設定されると、s(Δl(t),ΔΦ(t))は、距離を強調する設定となる。このように、s(Δl(t),ΔΦ(t))を表す式(30)が係数coeff_s及び(1−coeff_s)を含むことにより、距離と方向の強調の割合を既定値として又は任意に設定することが可能であり、距離と方向の強調度合いの選択の自由度が高められる。
【0209】
次に、目的地と利用者の位置の変化量18から目的地への誘導音22を生成する処理では、たとえば、音源属性を強調する処理(図14のステップS11)及び強調した音源属性を適用する処理(図14のステップS12)を行う。
【0210】
(1) 音源属性を強調する処理
【0211】
目的地と利用者の位置の変化量18として、距離の変化量Δl(t)及び角度の変化量ΔΦ(t)が音源属性強調手段32に入力され、音源属性16として「SNR」が音源属性強調手段32に入力される。音源属性強調手段32のSNR強調手段102は、距離の変化量Δl(t)に応じてs1(t)を求めてSNRの音源属性を変化させ、距離を強調する。SNR強調手段102は、角度の変化量ΔΦ(t)に応じてs2(t)を求めてSNRの音源属性を変化させ、方向を強調する。SNR強調手段102は、s1(t)及びs2(t)を用いて、s(Δl(t),ΔΦ(t))を求め、距離及び方向を強調する。このようにして、SNR強調手段102により、音源属性が強調される。
【0212】
音源属性強調手段32は、強調されたSNRの音源属性20としてs(Δl(t),ΔΦ(t))を出力する。そして強調されたSNRの音源属性20が音源属性適用手段36に入力される。
【0213】
(2) 強調した音源属性を適用する処理
【0214】
強調した音源属性を適用する処理について、図24を参照する。図24は、SNRの音源属性を適用する処理の一例を示すフローチャートである。なお、図24に示す処理は一例であって、斯かる処理に本発明が限定されるものではない。このSNRの音源属性を適用する処理の手順は図14に示す強調した音源属性を適用する処理(ステップS12)のサブルーチンである。
【0215】
強調されたSNRの音源属性20と、音源10が音源属性適用手段36に入力されると、音源10の音源信号の大きさSl(dB)を測定して算出する(ステップS51)。音源信号の大きさSl(dB)は式(33)で表される。
【0216】
【数33】

但し、Sl: 音源信号の大きさ(dB)
Q: フレームのサンプル数
【0217】
次に、白色雑音を生成する(ステップS52)。白色雑音は、すべての周波数成分をほぼ同量ずつ含む雑音であって、正規分布を持つ乱数として生成する方法で得ることできる。白色雑音を得た後、白色雑音の大きさをSNRの制御量s(dB)となるように白色雑音を調節する(ステップS53)。なお、SNRの制御量s(dB)は、音源属性適用手段36に入力されたs(Δl(t),ΔΦ(t))値である。白色雑音の調整は、たとえば、式(34)のように行う。
【0218】
【数34】

但し、w(t): 調整前の白色雑音信号のサンプル
w’(t): 調整後の白色雑音信号のサンプル
【0219】
そして、音源10の音源信号と白色雑音を重畳して(ステップS54)、目的地への誘導音22を生成し、処理を終了する(図14のend)。この音源信号と白色雑音の重畳は、たとえば式(35)のように行う。
【0220】
【数35】

【0221】
音源10に重畳するノイズの量をSNRとして調整すると、ノイズの量の変化により距離の変化量Δl(t)及び角度の変化量ΔΦ(t)が容易に把握できる。音源属性強調手段32は、利用者Uの位置の変化量に応じて、音源のSNRを制御し、目的地方向に近づくと、音源のSNRを大きくし、目的地方向から遠ざかると、音源のSNRを小さく制御する。音源のSNRが大きくなると、音源が知覚しやすくなり、音源が鮮明になる。利用者と目的地の間の位置が、近づいたか、遠ざかったかの変化に応じて音源のSNRを変化させることができるので、たとえば一定のSNRの音源を提示するものに比べ、利用者Uを目的地にわかりやすく誘導できる。
【0222】
〔第10の実施の形態〕
【0223】
第10の実施の形態について、図25を参照する。図25は、第10の実施の形態に係る誘導音生成装置の一例を示す図である。なお、図25に示す構成は一例であって、斯かる構成に本発明が限定されるものではない。図1、図5、図11、図12、図13、図16、図17、図21及び図23と同一部分には同一符号を付してある。
【0224】
誘導音源属性生成手段112は属性強調手段4又は音源属性可変手段の一例である。誘導音源属性生成手段112は音源属性16として、「距離」及び「方向」の指定を受け、目的地と利用者の位置118の情報として距離l(t)及び角度Φ(t)を受ける。この距離l(t)及び角度Φ(t)は、目的地に対する利用者の位置を表す情報である。誘導音源属性生成手段112は、この受けた情報l(t)及びΦ(t)に応じて目的地と現在地の間の距離の情報及び目的地と現在地の間の方向の情報に変化を与えて強調し、距離の情報及び方向の情報が強調された誘導音源属性116を生成する。この強調された誘導音源属性116は、強調された音源属性20の一例であって、例えば誘導音源の属性を含む。誘導音源属性116は、距離の情報及び方向の情報の強調による、利用者Uが直感的に目的地の方向を認識しやすいような誘導音源属性である。なお、目的地と現在地の間の距離の情報及び目的地と現在地の間の方向の情報は音源属性の一例である。目的地と利用者の位置の情報l(t)及びΦ(t)は、第2の実施の形態と同様でありその説明を省略する。
【0225】
誘導音源属性適用手段114は、属性適用手段6の一例である。誘導音源属性適用手段114は、入力された音源10の音源属性を、誘導音源属性生成手段112で生成した誘導音源属性116を用いて強調した音源属性に変更する。そして、誘導音源属性適用手段114は、音源属性の変更により得られた音源10から目的地への誘導音22を算出して生成する。目的地への誘導音22は、音源属性の変更により目的地の方向を認識しやすいように誘導するような誘導音である。
【0226】
次に距離及び方向の強調について図26を参照する。図26に示すxy座標平面は、利用者Uを原点に配置したxy座標平面であって、利用者Uの正面方向をx軸の正方向、利用者Uの右側方向をy軸の正方向に設定している。なお、図26に示す目的地の位置及び音源の位置は、距離及び方向の強調を把握するため、その概要を示すものであり、斯かる図示の位置関係に本発明が限定されるものではない。また、図26では、隣接する音源の間に直線が付されているが、音源の位置の移動先の把握を容易にするため、便宜上付されたものである。
【0227】
利用者Uが時間につれて動いた場合、目的地が時間につれて動いた場合、又は、利用者U及び目的地が時間につれて動いた場合などでは、利用者に対する目的地の相対的な位置が変化する。図26に示す、DP1、DP2、DP3、DP4及びDP5は、時間の経過とともに移動する目的地の利用者に対する相対位置を表している。DP1は時刻(t+Δt)における目的地の位置、DP2は時刻(t+2Δt)における目的地の位置、DP3は時刻(t+3Δt)における目的地の位置、DP4は時刻(t+4Δt)における目的地の位置、DP5は時刻(t+5Δt)における目的地の位置である。立体音響における音源SPは、各時刻における目的地の位置を強調するため、各時刻における目的地の位置に応じて微少時間Δt毎に移動する。図26に示す音源SPは、時刻(t+Δt)においてSP1に設定し、時刻(t+2Δt)においてSP2に設定し、時刻(t+3Δt)においてSP3に設定し、時刻(t+4Δt)においてSP4に設定し、時刻(t+5Δt)においてSP5に設定する。なお、微少時間Δtは、利用者Uが音源の位置の変化を一連の変化と認知する程度の時間であり、たとえばミリ秒から秒単位の時間である。なお、立体音響上の音源SPは、立体音響を利用者Uに与えて、利用者Uが音源の定位感を得ることにより得られる。立体音響の利用者への付与については第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0228】
各時刻における目的地の位置は、たとえば距離l、角度Φを用いて次のように表され、各時刻における音源の位置は、たとえば距離r、角度θを用いて次のように表される。なお、距離l及び距離rが表す距離、ならびに角度Φ及び角度θが表す角度は、第2の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0229】
目的地DP1の位置:(距離,角度)=(l(t+Δt),Φ(t+Δt))
目的地DP2の位置:(距離,角度)=(l(t+2Δt),Φ(t+2Δt))
目的地DP3の位置:(距離,角度)=(l(t+3Δt),Φ(t+3Δt))
目的地DP4の位置:(距離,角度)=(l(t+4Δt),Φ(t+4Δt))
目的地DP5の位置:(距離,角度)=(l(t+5Δt),Φ(t+5Δt))
音源SP1の位置:(距離,角度)=(r(t+Δt),θ(t+Δt))
音源SP2の位置:(距離,角度)=(r(t+2Δt),θ(t+2Δt))
音源SP3の位置:(距離,角度)=(r(t+3Δt),θ(t+3Δt))
音源SP4の位置:(距離,角度)=(r(t+4Δt),θ(t+4Δt))
音源SP5の位置:(距離,角度)=(r(t+5Δt),θ(t+5Δt))
【0230】
音源SPの位置は、微少時間Δt毎に移動する複数回の音源位置の移動を経て目的地に到達するように設定される。たとえば、図26に示す音源位置の移動では、SP1からSP5までの5回の音源の位置を示し、4回の位置の移動を経て目的地DP5へ到達させている。この場合、初回の音源の位置は、目的地の位置に対して距離及び角度とも小さな値に設定し、音源の位置を移動させるにつれて、即ち、音源位置の提示を重ねるにつれて、距離の差及び角度の差を小さくするように設定する。そして、複数回の音源位置の移動後、目的地の位置及び音源の位置を重ねるように設定する。図26に示す音源位置の移動では、音源SP1の位置から音源SP5の位置までの移動を経て、音源SP5と目的地DP5を重ねている。音源SPを既述のように設定することで目的地DPが強調される。斯かる音源SPの設定は、誘導音源属性生成手段112により行われる。
【0231】
図26に示す音源SPは、例えば、距離に関し、利用者Uの耳元などの利用者Uに近い距離から、目的地までの距離に近づけるように変化している。また、図26に示す音源SPは、例えば、方向に関し、利用者Uの向いている方向から目的地の方向に近づけるように変化している。音源SPが、利用者の位置から目的地の位置に向かうように変化し、移動している。これらの音源SPの変化により、目的地が強調されている。
【0232】
次に、目的地と利用者の位置の変化量から目的地への誘導音を生成する処理について、図27及び図28を参照する。図27は、誘導音を生成する処理の一例を示すフローチャート、図28は、誘導音源属性を生成する処理の一例を示すフローチャートである。尚、図27及び図28に示す処理手順は一例であって、斯かる処理手順に本発明が限定されるものではない。図28は図27の誘導音源属性を生成する処理(ステップS61)のサブルーチンである。
【0233】
図27に示す処理手順は、処理部14が備える誘導音源属性生成手段112及び誘導音源属性適用手段114により実行される。
【0234】
誘導音源属性生成手段112が目的地と利用者の位置118に関する情報と、音源属性として距離及び角度の指定を受けると、誘導音源属性生成手段112は、誘導音源属性116を生成して(ステップS61)、たとえば、利用者が直感的に目的地の方向を認識しやすいようにする。この生成された誘導音源属性116は、誘導音源属性適用手段114に向けて出力される。
【0235】
誘導音源属性適用手段114は、誘導音源属性生成手段112が生成した誘導音源属性116を音源10に適用して(ステップS62)、音源10の属性を強調した音源属性に変更する。誘導音源属性116が適用された音は、目的地への誘導音22として出力されることになる。目的地への誘導音22は、目的地の方向を認識しやすく誘導するように方向の音源属性及び距離の音源属性が変化する。
【0236】
次に、誘導音源属性の生成は、例えば、図28に示す誘導音を生成する処理手順の実行により生成する。誘導音源属性を生成する処理を開始すると、カウンターi、距離の変数rp及び角度の変数θpの初期化が行われ、i=0、rp=0及びθp=0に設定される(ステップS71)。カウンターi、距離の変数rp及び角度の変数θpはそれぞれ誘導音源属性の生成に用いられる変数である。カウンターiは音源位置の変更の処理回数をカウントするための変数である。なお、音源SPの位置の変更の処理回数の最大値がMの場合には、カウンターiは、0からM−1までの整数値であって、処理回数に応じて数値が1ずつ加算される。rpは、直前の距離r即ち変更処理前の距離rを表す変数である。θpは直前の角度θ即ち変更処理前の角度θを表す変数である。
【0237】
i、rp及びθpを用いて時間t+iΔtの音源SPの位置(r,θ)を式(36)、式(37)、式(38)、及び式(39)により算出して決定する(ステップS72)。
【数36】

【数37】

【数38】

【数39】

【0238】
sは音源SPが(距離rp、角度θp)の位置にある場合における、音源SPと目的地DPの距離を表す。λは音源SPが(距離rp,角度θp)の位置にある場合における、音源SPに対する目的地DPの角度を表す。即ち、θpは、図29に示すxy座標において、音源SPから目的地DPへの方向とx軸とが成す角度を表す。距離rの決定に際し、距離sを値(M−1)で割った値が直前の距離rpに加算され、距離θの決定に際し、距離λを値(M−1)で割った値が直前の角度θpに加算される。iの値が小さいと、「s/(M−i)」及び「λ/(M−i)」は小さくr及びθの値は小さい。処理回数が増えるにつれて、r及びθの値は大きくなり、音源SPの位置が目的地DPの位置に近づくことになる。誘導音源属性生成手段112は、r及びθの値を誘導音源属性116として出力し、誘導音源属性適用手段114により音源10への適用がされることになる(図27のステップS62)。
【0239】
r及びθの値を算出して決定すると、カウンターi、距離rp及び角度θpの更新処理を行い、カウンターi、距離rp及び角度θp をそれぞれrp=r、θp=θ及びi=i+1に設定する(ステップS73)。そして、誘導音源の生成及び出力を終了するかどうかを判断する(ステップS74)。この終了の判断は、たとえば誘導音源属性生成手段112が、外部より終了通知を受けた場合(ステップS74のYes)、誘導音源属性を生成する処理を終了する。誘導音源属性生成手段112が、外部より終了通知を受けない場合(ステップS74のNo)、誘導音源属性を生成する処理を進め、「i>M」であるかを判断する(ステップS75)。「i>M」でない場合(ステップS75のNo)、ステップS72に戻りステップS73で更新したカウンターi、距離rp及び角度θpを用いて距離r及び角度θの算出及び決定を繰り返す。「i>M」である場合(ステップS75のYes)、ステップ71に戻りカウンターi、距離rp及び角度θpの初期化を行い(ステップS71)、初期化したカウンターi、距離rp及び角度θpを用いて距離r及び角度θの算出及び決定を繰り返す。
【0240】
「i>M」でない場合には、更新したカウンターi、距離rp及び角度θpを用いた距離r及び角度θの算出が行われ、音源SPが目的地の位置に接近していく誘導音源属性属性116が生成され、出力される。そして「i>M」である場合になると、カウンターi、距離rp及び角度θpがリセットされて距離r及び角度θが算出され、終了通知がされるまで、誘導音源属性116の生成が繰り返される。これにより、利用者Uは、終了通知がされるまで、目的地への誘導音22の供給を受けることができる。
【0241】
誘導音源属性生成手段112は音源属性を利用者の位置から目的地の位置に向かうように変化させる。誘導音源属性適用手段114は、誘導音源属性生成手段112が算出した誘導音源属性116を音源10に適用することで、利用者の位置から目的地に向かう属性を持つ音源を出力する。このように、誘導音が強調されることにより、目的地の位置、目的地の距離又は目的地の方向が直感的にわかりやすく示され、誘導が容易になる。
【0242】
〔第11の実施の形態〕
【0243】
第11の実施の形態では、誘導音源属性生成手段112(図25)が、利用者Uに対する立体音響上の音源の速度即ち、音源と利用者の相対速度により、音程の音源属性に変化を与える。音程の変化量は、音源の周波数の変化割合Δpとして表され、たとえば、式(40)及び式(41)を用いて決定する。なお、Vは音速、vsは音源の速度(利用者Uに対する音源の速度)を表す。なお、距離r及び直前の距離rpは第10の実施の形態と同様であるのでその説明を省略する。
【0244】
【数40】

【数41】

【0245】
誘導音源属性生成手段112は、音源の周波数の変化割合Δpを誘導音源属性116として出力する。誘導音源属性適用手段114(図25)は変化割合Δpの入力を受け、変化割合Δpを用いて音源10の音程を変更し、音程を変更した目的地への誘導音22を生成する。
【0246】
その他の構成は、第10の実施の形態と同様であるので、その説明を省略する。なお、第11の実施の形態では、第10の実施の形態を包含し、距離及び方向の強調も行う。
【0247】
次に、誘導音の音程を変更する処理について、図30を参照する。図30は、誘導音の音程を変更する処理の一例を示すフローチャートである。この処理手順は、誘導音源属性適用手段114が、誘導音源属性を音源に適用する処理(図27のステップS62)を実行する際に、追加して行う処理である。
【0248】
誘導音源属性生成手段112は、音源10の音源信号を時間周波数変換して、周波数成分Sを得る(ステップS81)。この時間周波数変換では、音源信号をN個の帯域に分割して、それぞれの帯域に対する周波数成分Sを算出する。周波数成分は、周波数(単位:Hz)毎の複素数であり、k番目の帯域の周波数成分は、たとえばS(k)として表される。音源信号をN個の帯域に分割する場合、たとえば、それぞれの帯域の幅が同じ幅となるように分割しておく。このように分割することで帯域幅の管理を容易にすることができる。なお、kは分割した帯域の番号であって、kは0からN−1までの整数である。
【0249】
次に、変化割合Δpを用いて、音源の周波数成分をp(Hz)低くして(ステップS82)、音源の周波数成分を変化させる。低くする値pは、たとえば、式(42)で求める。そして値pを用いて帯域の移動数jを式(43)のようにして求める。
【0250】
【数42】

但し、F:音源の代表周波数であって、たとえば2000(Hz)に設定する。
【0251】
【数43】

但し、Δf:k番目の周波数f(k)からk−1番目の周波数f(k−1)を引いた値{f(k) − f(k−1)}であり、周波数成分の帯域の幅を表す。
round():少数点以下を四捨五入して整数を出力する関数である。
【0252】
各周波数成分の帯域の幅をΔfに設定すると、j個分の帯域幅はp(Hz)又はp(Hz)の近傍値となる。そこで、k番目の帯域の周波数成分S’(k)を式(44)のようにして求める。なお、S'(k)は周波数変更後の周波数成分を表す。
【数44】

そして、式(44)で得た音源の周波数成分S’(k)を周波数時間変換する(ステップS83)。周波数変更後の周波数成分S’(k)は変更前の周波数成分S(k)に比べkの値がj個分小さくなるので、周波数がp(Hz)低くなった音源信号を得る。
【0253】
このように、音源10の音程を変更することにより、利用者は目的地に移動する誘導音源の音程変化を感じることができる。この音程変化は、誘導音源が遠ざかるほど音程が下がるように聞こえるので、誘導音源の位置のみを変化させる場合よりも、さらに目的地の方向を認識しやすくできる。
【0254】
〔他の実施の形態〕
【0255】
第2の実施の形態ないし第9の実施の形態では、それぞれ距離、方向、音量、音程、テンポ、周波数特性、帯域幅、SNRを強調するように設定したが、たとえば、誘導音生成装置2がこれらの全てを強調できるように構成してもよい。この場合、たとえば、図31に示す誘導音生成装置2を構成する。音源属性強調手段32が、距離、方向、音量、音程、テンポ、周波数特性、帯域幅及びSNRそれぞれの強調手段を備えるように構成する。音源属性適用手段36が、距離、方向、音量、音程、テンポ、周波数特性、帯域幅及びSNRそれぞれの適用手段を備えるように構成する。そして、図32に示す音源属性テーブル122には属性124として、距離、方向、音量、音程、テンポ、周波数特性、帯域幅及びSNRの音源属性を設定する。距離、方向、音量、音程、テンポ、周波数特性、帯域幅及びSNRの音源属性の少なくとも1つが選択され、音源属性強調手段32に入力されることにより、選択された強調手段及び適用手段を実行するように構成すれば良い。なお、図32に示す音源属性テーブル122のように各音源属性に対応する値126を記憶すれば、Δl=0、ΔΦ=0の場合にこの値を読み出して利用することにより、音源10に適用することができる。
【0256】
〔上記実施の形態のハードウェア〕
【0257】
上記実施の形態に用いられるハードウェアについて、図33を参照する。既述の誘導音生成装置2は誘導音生成機能を含む誘導装置200として構成することができる。図33は誘導装置200の構成例を示している。
【0258】
図33に示す誘導装置200は、CPU202、ROM(Read-Only Memory)204、RAM(Random-Access Memory)206、受信装置208、記憶装置210、入出力装置212、音声出力部214およびバス216によって構成されている。
【0259】
ROM204または記憶装置210はプログラム記憶手段の一例である。記憶装置210には、ハードディスク、磁気ディスクなどの記憶装置を用いることができる。この記憶装置210またはROM204には既述のフローチャートで示したプログラムや既述のテーブル122のデータ、伝達特性データ、その他の設定値が格納される。また、ROM204または記憶装置210は、音や音声などのデジタルデータを記憶して、音源10を204と210が構成する。RAM206はワークエリアを構成する。rp、θp、iなどの変数、処理回数の最大値M、音源信号の分割数N等の値は、例えばRAM206に記憶する。
【0260】
CPU202は、既述のプログラムを実行し、処理部14を構成して既述の属性の強調、属性の適用などを実行する。
【0261】
受信装置208は、位置情報を受信する手段として、たとえば誘導装置200の位置に関する位置情報8の信号を受ける。この位置情報8をたとえばグローバル・ポジショニング・システム(GPS)から受ける場合、受信装置208は、GPS受信機で構成する。また、たとえば、受信装置208を基地局と通信する通信装置として構成する場合、基地局を利用して位置情報8を生成することができる。
【0262】
音声出力部214は、既述の目的地への誘導音22の出力に用いられ、具体的には、電気信号を音声信号に変換するスピーカ218などを備えている。なお、スピーカ218は、イヤホン、ヘッドホン、又は骨伝導用のスピーカ等であってもよい。
【0263】
入出力装置212は、例えば目的地の設定又は設定値の入力手段として用いられる。
【0264】
誘導装置200は、誘導手段又はナビゲーション手段として、たとえば、携帯電話機等のモバイル端末装置、カーナビゲーションシステムなどのナビゲーションシステム、パーソナルコンピュータ(PC)として構成できる。斯かる構成とすることで、誘導音を生成して目的地への誘導音を外部へ出力する。
【0265】
上記実施の形態について、特徴事項、利点又は変形例等を列挙する。
【0266】
(1) 第2の実施の形態では、f1(t)及びf2(t)としてのこぎり波を用いたがこれに限らない。f1(t)は、繰り返し周期毎に、瞬時に最大値に立ち上がり、最大値から最小値まで単調減少を行うような関数であれば良い。f2(t)は、繰り返し周期毎に、最大値まで単調増加し、最大値に達すると瞬時に最小値に切り替わるような関数であれば良い。たとえばf1(t)として図34に示す減少を繰り返す関数用い、f2(t)として図35に示す増加を繰り返す関数用いてもよい。図34に示す減少を繰り返す関数及び図35に示す増加を繰り返す関数は、コサインを用いたコサイン関数であって、それぞれ式(45)及び式(46)で表される。
【0267】
【数45】

【数46】

【0268】
(2) 第2の実施の形態では、図10に示す関数R(t)を例示したがこれに限定されない。たとえば、lmaxまで単調増加し、lmaxに達するとRmaxに固定されるような関数であれば良い。また、lmaxでRmax×0.9となり、以降はlが増えるとRmaxに漸近するような関数でも良い。
【0269】
(3) 第3の実施の形態では、式(7)において、ΔΦ(t)=0の場合にθ(t)=Φ(t)としたが、たとえば、式(47)を用いてθ(t)を設定してもよい。図36に示す関数Θ(Φ(t))は、時間tにおける角度Φ(t)と立体音響上の角度を表すΘを軸とする関数であって、(Φ(t),Θ)で表して、点(0,Θmin)と点(Φmax,Θmax)を直線で結ぶ領域と、Θ=Θmaxとなる領域を有する。角度Φ(t)が0の場合、目的地が利用者Uの正面方向にあることを表し、たとえばΘminとして0に設定する。角度Φ(t)が0より大きくなるにつれてΘの値は直線的に増加し、角度Φ(t)がΦmaxとなり、Θが最大値(Θmax)に到達する。Φmax以上の角度では、Θ=Φmaxとして、Θを一定値に設定する。図36に示す関数Θ(Φ(t))では、角度Φ(t)が0からΦmaxの範囲では、θ(t)は角度Φ(t)に比例した値に設定され、角度Φ(t)がΦmax以上の場合、θ(t)はΘmaxに設定される。このように設定することで、ΔΦ(t)が変化しない場合には、角度Φ(t)に応じた音源属性に設定することができる。
【0270】
【数47】

【0271】
図36に示す関数Θ(Φ(t))に限らず、たとえばΦmaxまで単調増加し、Φmaxに達するとΘmaxに固定されるような関数であれば良い。また、ΦmaxでΘmax×0.9となり、以降はΦが増えるとΘmaxに漸近するような関数でも良い。
【0272】
(4) 第2の実施の形態では距離を強調し、第3の実施の形態では方向を強調したが、距離の強調と方向の強調を組み合わせて距離と方向の両方を強調するにするように構成してもよい。この場合、たとえば、音源属性強調手段32に距離強調手段34と方向強調手段42の両方を設定し、音源属性適用手段36に距離適用手段38と方向適用手段44の両方を設定する構成にすればよい。これにより目的地までの距離及び目的地の方向の把握が容易にできる。
【0273】
(5) 第4の実施の形態から第11の実施の形態では、目的地と現在地の間の距離及び方向を強調して出力したが、これに限定されない、たとえば、目的地と現在地の間の距離及び方向のいずれか1つを強調するように構成しても、強調した目的地までの距離又は目的地の方向の把握が容易になる。
【0274】
(6) 第2の実施の形態から第9の実施の形態では、音源属性強調手段32が音源属性16の指定を受けたがこれに限定されない。たとえば、強調する音源属性が予め設定されている場合は、この音源属性の指定を省略することができる。
【0275】
(7) 第9の実施の形態では、SNRを強調するにあたり白色雑音を用いたがこれに限定されない、たとえば、ブラウニアンノイズ、ピンクノイス、ブルーノイズ、バイオレットノイズなどの雑音を用いても音源属性を強調することができる。
【0276】
(8) 第10の実施の形態の誘導音源属性を生成する処理手順では、距離r及び角度θを決定した後に終了か否かの判断を行ったがこれに限定されない。終了か否かの判断は任意のタイミングで行えばよく、又は、強制終了等の非常停止措置を用いて停止してもよい。
【0277】
(9) 既述の実施の形態では、音源属性の変化又は変更を以て音源属性の強調と称した。この音源属性の強調には、音量を小さくする、音程を下げる、テンポを遅くする、周波数特性の変化を大きくする、帯域幅を狭くする、ノイズを多くする等の強調を含む。音源属性の強調は、音源属性を弱める場合も、含むものとする。
【0278】
(10) 第2の実施の形態から第9の実施の形態では、距離の変化量Δl(t)及び角度の変化量ΔΦ(t)が0を超える場合、0より小さい場合、又は0である場合とに分けて強調を異ならせたがこれに限定されない。例えば、距離の変化量Δl(t)又は角度の変化量ΔΦ(t)の大きさも考慮して音源属性を強調してもよい。例えば、以下に示すようにしても良い。
【0279】
音源属性強調手段32が、音源属性と目的地に対する利用者の位置の変化量の入力を受けて、音源属性を、目的地に対する利用者の位置の変化量Δl(t)に応じて、目的地方向に近づくほど音源を知覚しやすいように音源属性を強調する。また、音源属性強調手段32が、目的地方向から遠ざかるほど音源を知覚しにくいように音源属性を強調する。このように構成すると、音源属性適用手段36が、音源属性強調手段32により算出した強調した音源属性を音源に適用することで、属性を強調した音源が出力され、利用者を目的地にわかりやすく誘導できる。
【0280】
目的地と利用者の位置の変化量が目的地から遠ざかる方向に変化する場合に、音源属性強調手段32が音源属性のうち、少なくとも音源の距離(r)が大きくなるように制御する。このように構成すると、音源属性強調手段32は、利用者の位置の変化量に応じて、目的地方向に近づくほど音源属性の距離を小さく、目的地方向から遠ざかるほど音源属性の距離を大きくするように制御することができる。よって、目的地が遠のいたことを直感的に感じることができるので、一定の距離に定位させる場合に比べ、利用者を目的地にわかりやすく誘導できる。
【0281】
音源属性のうち、少なくとも音源の方向θを、目的地と利用者の位置の変化量が目的地に遠ざかる方向に変化する場合に、音源属性強調手段32は音源の方向θが大きくなるように制御する。このように構成すると、音源属性強調手段32は、利用者の位置の変化量に応じて、目的地方向に近づくほど音源属性の角度を小さく、目的地方向から遠ざかるほど音源属性の角度を大きくするように制御することができる。利用者と目的地の間の実際の角度の変化よりも大きく変化させることができるので、利用者と目的地の角度と等しい角度の方向に音源を定位させる場合に比べ、利用者を目的地にわかりやすく誘導できる。
【0282】
音源属性のうち、少なくとも音量を、目的地と利用者の位置の変化量が目的地に遠ざかる方向に変化する場合に、音源属性強調手段32は、音量が小さくなるように制御する。このように構成すると、音源属性強調手段32は、利用者の位置の変化量に応じて、目的地方向に近づくほど音源の音量を大きく、目的地方向から遠ざかるほど音源の音量を小さくするように制御することができる。利用者と目的地の間の実際の距離の変化よりも大きく音量を変化させることができるので、一定の音量の音源を提示する場合に比べ、利用者を目的地にわかりやすく誘導できる。
【0283】
音源属性のうち、少なくとも音程を、目的地と利用者の位置の変化量が目的地に遠ざかる方向に変化する場合に、音源属性強調手段32は、音源の音程が低くなるように制御する。このように構成すると、音源属性強調手段32は、利用者の位置の変化量に応じて、目的地方向に近づくほど音源の音程を上げ、目的地方向から遠ざかるほど音源の音程を下げるように制御することができる。利用者と目的地の間の実際の距離の変化よりも大きく音程を変化させることができるので、一定の音程の音源を提示する場合に比べ、利用者を目的地にわかりやすく誘導できる。
【0284】
音源属性のうち、少なくともテンポを、目的地と利用者の位置の変化量が目的地に遠ざかる方向に変化する場合に、音源属性強調手段32は、音源のテンポが遅くなるように制御する。このように構成すると、音源属性強調手段32は、利用者の位置の変化量に応じて、目的地方向に近づくほど音源のテンポを上げ、目的地方向から遠ざかるほど音源のテンポを下げるように制御することができる。利用者と目的地の間の位置が、近づいたか、遠ざかったかの変化に応じてテンポを変化させることができるので、一定のテンポの音源を提示するものに比べ、利用者を目的地にわかりやすく誘導できる。
【0285】
音源属性のうち、少なくとも周波数特性を、目的地と利用者の位置の変化量が目的地に遠ざかる方向に変化する場合に、音源属性強調手段32は、音源の周波数特性の変化量が大きくなるように制御する。このように構成すると、音源属性強調手段32は、利用者の位置の変化量に応じて、目的地方向に近づくほど音源の周波数特性の傾きを大きくし、目的地方向から遠ざかるほど音源の周波数特性の傾きを小さく制御することができる。また、音源属性強調手段32は、利用者と目的地の間の位置が、近づいたか、遠ざかったかの変化に応じて音源の周波数特性の傾きを変化させることができる。よって、一定の周波数特性の傾きの音源を提示する場合に比べ、利用者を目的地にわかりやすく誘導できる。
【0286】
音源属性のうち、少なくとも帯域幅を、目的地と利用者の位置の変化量が目的地に遠ざかる方向に変化する場合に、音源属性強調手段32は、音源の帯域幅が狭くなるように制御する。このように構成すると、音源属性強調手段32は、利用者の位置の変化量に応じて、目的地方向に近づくほど音源の帯域幅を大きくし、目的地方向から遠ざかるほど音源の帯域幅を小さく制御し、利用者と目的地の間の位置が、近づいたか、遠ざかったかの変化に応じて音源の帯域幅を変化させることができる。よって、一定の帯域幅の音源を提示する場合に比べ、利用者と目的地に比べ目的地にわかりやすく誘導できる。
【0287】
音源属性のうち、少なくともSNRを、目的地と利用者の位置の変化量が目的地に遠ざかる方向に変化する場合に、音源属性強調手段32は、音源のSNRが小さくなるように制御する。このように構成すると、音源属性強調手段32は、利用者の位置の変化量に応じて、目的地方向に近づくほど音源のSNRを大きくし、目的地方向から遠ざかるほど音源のSNRを小さく制御することができる。また、音源属性強調手段32は、利用者と目的地の間の位置が、近づいたか、遠ざかったかの変化に応じて音源のSNRを変化させることができる。よって、一定のSNRの音源を提示するものに比べ、利用者を目的地にわかりやすく誘導できる。
【0288】
(11) 第10の実施の形態では、音源SPの移動にあたり、利用者Uの正面方向から目的地方向へ移動させたがこれに限定されない。たとえば、図37に示す音源SPのように利用者Uの側方向から目的地方向へ移動させるようにしてもよい。図37に示す音源では、音源SP11から、音源SP12、音源SP13、音源SP14、音源SP15の順に移動させている。このように移動させても、音源の位置の角度が変化することにより、目的地の方向を強調することができる。
【0289】
(12) 第10の実施の形態では、音源の距離及び方向の両方を移動させたがこれに限定されない。例えば、誘導音源属性生成手段112によって音源属性のうち少なくとも距離を、利用者に近い距離から、目的地までの距離に近づけるように変化させる。そして、誘導音源属性適用手段114は、誘導音源属性生成手段112が算出した誘導音源属性のうち少なくとも距離を音源10に適用するようにしてもよい。この場合、利用者Uは目的地に移動する誘導音源の距離変化を感じることができ、目的地までの距離感を感じやすくなる。また、距離変化として、例えば目的地との距離によって誘導音源の距離属性の変化量が異なるようにする。この場合、利用者Uにとっては、目的地が遠いほど誘導音源が利用者の場所から誘導音源が遠ざかった位置まで移動するように聞こえるようにできる。
【0290】
少なくとも距離を変化させる他、例えば、誘導音源属性生成手段112によって音源属性のうち少なくとも方向を、利用者の向いている向きから、目的地の方向に近づけるように変化させる。そして、誘導音源属性適用手段114は、誘導音源属性生成手段112が算出した誘導音源属性116のうち少なくとも方向を音源に適用するようにしてもよい。、この場合、利用者Uは目的地に移動する誘導音源の方向変化を感じることができ、目的地までの方向と、方向の角度差を感じやすくなる。また、方向変化として、例えば目的地との距離によって誘導音源の方向属性の変化量が異なるようにする。この場合、利用者Uにとっては、目的地との方向の角度差が大きいほど誘導音源が、利用者の方向から誘導音源の方向が変化した位置まで移動するように聞こえるようにできる。
【0291】
次に、以上述べた実施例を含む実施の形態に関し、更に以下の付記を開示する。以下の付記に本発明が限定されるものではない。
【0292】
(付記1)
現在地から目的地に誘導する誘導音を生成する誘導音生成装置であって、
音源と、
目的地に対する現在地の位置又は位置変化に応じて、音源属性を変化させる音源属性可変手段と、
前記音源属性可変手段が生成した前記音源属性を前記音源に適用し、前記目的地に対する現在地の位置又は位置変化により音源属性を変化させた誘導音を生成する属性適用手段と
を備えることを特徴とする誘導音生成装置。
【0293】
(付記2)
前記誘導音により、目的地までの距離、目的地の方向又は目的地までの距離と目的地の方向の双方の情報を強調することを特徴とする付記1記載の誘導音生成装置。
【0294】
(付記3)
前記音源属性は、目的地までの距離、目的地の方向、音源の音量、音源の音程、音源のテンポ、音源の周波数特性、音源の帯域幅、音源のSN比の少なくともいずれかを含み、
前記目的地に対する現在地の位置変化に応じて、前記音源属性を変化させることを特徴とする付記1又は2記載の誘導音生成装置。
【0295】
(付記4)
前記誘導音が、複数の音の組み合わせにより立体音響を構成し、この立体音響の音源が時間の経過により目的地へ誘導する方向に移動することを特徴とする付記1ないし4のいずれか1項に記載の誘導音生成装置。
【0296】
(付記5)
目的地方向に近づく場合に、前記誘導音を鮮明にすることを特徴とする付記1ないし4のいずれかに記載の誘導音生成装置。
【0297】
(付記6)
前記音源の移動は、前記音源が前記現在地又はその近傍の位置から前記目的地に接近する移動、又は装置の正面方向方向から、目的地に接近する移動であることを特徴とする付記4に記載の誘導音生成装置。
【0298】
(付記7)
前記誘導音を、前記音源の相対速度に応じて変化させることを特徴とする付記4又は6に記載の誘導音生成装置。
【0299】
(付記8)
現在地から目的地に誘導する誘導音を生成する誘導音生成装置の誘導音生成プログラムであって、
目的地に対する現在地の位置又は位置変化に応じて、音源属性を変化させ、
変化させて生成した前記音源属性を音源に適用し、前記目的地に対する現在地の位置又は位置変化により音源属性を変化させた誘導音を生成する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする誘導音生成プログラム。
【0300】
以上説明したように、誘導音生成装置及び誘導音生成プログラムの最も好ましい実施の形態等について説明したが、本発明は、上記記載に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載され、又は発明を実施するための形態に開示された発明の要旨に基づき、当業者において様々な変形や変更が可能であることは勿論であり、斯かる変形や変更が、本発明の範囲に含まれることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0301】
2 誘導音生成装置
4 属性強調手段
6 属性適用手段
8 位置情報
10 音源
12 目的地への誘導音
14 処理部
16 音源属性
32 音源属性強調手段
34 距離強調手段
36 音源属性適用手段
38 距離適用手段
42 方向強調手段
44 方向適用手段
52 音量強調手段
54 音量適用手段
62 音程強調手段
64 音程適用手段
72 テンポ強調手段
74 テンポ適用手段
82 周波数特性強調手段
84 周波数特性適用手段
92 帯域幅強調手段
94 帯域幅適用手段
102 SNR強調手段
104 SNR帯域幅適用手段
112 誘導音源属性生成手段
114 誘導音源属性適用手段
200 誘導装置
208 受信装置
210 記憶装置
212 入出力装置
214 音声出力部
218 スピーカ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現在地から目的地に誘導する誘導音を生成する誘導音生成装置であって、
音源と、
目的地に対する現在地の位置又は位置変化に応じて、音源属性を変化させる音源属性可変手段と、
前記音源属性可変手段が生成した前記音源属性を前記音源に適用し、前記目的地に対する現在地の位置又は位置変化により音源属性を変化させた誘導音を生成する属性適用手段と、
を備えることを特徴とする誘導音生成装置。
【請求項2】
前記誘導音により、目的地までの距離、目的地の方向又は目的地までの距離と目的地の方向の双方の情報を強調することを特徴とする請求項1記載の誘導音生成装置。
【請求項3】
前記音源属性は、目的地までの距離、目的地の方向、音源の音量、音源の音程、音源のテンポ、音源の周波数特性、音源の帯域幅、音源のSN比の少なくともいずれかを含み、
前記目的地に対する現在地の位置変化に応じて、前記音源属性を変化させることを特徴とする請求項1又は2記載の誘導音生成装置。
【請求項4】
前記誘導音が、複数の音の組み合わせにより立体音響を構成し、この立体音響の音源が時間の経過により目的地へ誘導する方向に移動することを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の誘導音生成装置。
【請求項5】
現在地から目的地に誘導する誘導音を生成する誘導音生成装置の誘導音生成プログラムであって、
目的地に対する現在地の位置又は位置変化に応じて、音源属性を変化させ、
変化させて生成した前記音源属性を音源に適用し、前記目的地に対する現在地の位置又は位置変化により音源属性を変化させた誘導音を生成する、
処理をコンピュータに実行させることを特徴とする誘導音生成プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【図31】
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【図32】
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【図33】
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【図34】
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【図35】
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【図36】
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【図37】
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【公開番号】特開2012−215477(P2012−215477A)
【公開日】平成24年11月8日(2012.11.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−81281(P2011−81281)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】