説明

誘電体シート

【課題】柔軟性に優れるとともに、高い耐電圧性を有することから、信頼性の高い電子部品を製造することが可能な誘電体シートを提供する。
【解決手段】変性ポリビニルアセタール樹脂と誘電体粒子とを含有する誘電体シートであって、前記変性ポリビニルアセタール樹脂は、少なくとも下記(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂を含有する誘電体シート。(1)ビニルアルコール単位(2)環状アセタール構造を有する単位(3)酢酸ビニル単位(4)アセトアセチル基を有する単位またはN−(2−アセチルエチル)アクリルアミド単位

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体シートに関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器に広く使用される電子部品の一つにコンデンサがあり、電子機器の小型化にともなって、コンデンサに対しても小型化や薄型化が要求されている。例えば、積層型コンデンサ、巻回型コンデンサ(フィルムコンデンサ)等が製造されており、このような小型、薄型のコンデンサを作製するために、誘電体シートが用いられている。
このような誘電体シートに対しては、次のような要望がある。
【0003】
まず、積層型電子部品の小型化を図るため、誘電体シートの誘電率を高くすることが要求される。また、環境問題への対応として、燃料電池や風力発電、ハイブリッドカー等、新たなパワーエレクトロニクスの市場が拡大する中で、電源回路に用いられるコンデンサ等の電子部品については、上述したような小型化に加えて、高電圧に耐えることが要求される。
【0004】
一方、誘電体シートが、これを巻回して作製される巻回型コンデンサに使用される場合や、周囲の形状に合わせて折り曲げることが可能な多層配線基板に使用される場合には、柔軟性(可撓性)を有している必要がある。
【0005】
これに対して、特許文献1には、薄型のコンデンサを形成することが可能な材料として、熱硬化性樹脂中に高誘電率を有する誘電体セラミックスを含有させた、可撓性を有する誘電体フィルムが記載されている。この誘電体フィルムでは、熱硬化性樹脂として、エポキシ樹脂を用いることで、耐熱性に優れ、取得可能な静電容量値の大きい箔状のコンデンサを得ることが可能となるとしている。
【0006】
しかしながら、このようなコンデンサでは、エポキシ樹脂からなる熱硬化性樹脂と、誘電体セラミックスとを複合化することによって、両者の界面に電界集中が発生し、破壊の起点となるため、耐電圧性が低下するという問題点があった。
これにより、ハイブリッドカーや燃料電池車等のコンデンサ材料として使用した場合、耐電圧性が不充分なものとなっていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−356619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、柔軟性に優れるとともに、高い耐電圧性を有することから、信頼性の高い電子部品を製造することが可能な誘電体シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、変性ポリビニルアセタール樹脂と誘電体粒子とを含有する誘電体シートであって、上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、少なくとも下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂を含有する誘電体シートである。
【0010】
【化1】

式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Rは下記一般式(5)、及び/又は(6)で表される官能基を有する基を表す。
【0011】
【化2】

以下に本発明を詳述する。
【0012】
本発明者らは、鋭意検討の結果、所定の構造単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂を誘電体シートの樹脂成分として用いることにより、ポリビニルアセタール樹脂が有する優れた柔軟性を実現しつつ、耐電圧性の問題も大幅に改善できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0013】
本発明の誘電体シートは、変性ポリビニルアセタール樹脂を含有する。
上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、少なくとも下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位を有する。
【0014】
【化3】

式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Rは下記一般式(5)及び/又は(6)で表される官能基を有する基を表す。
【0015】
【化4】

【0016】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、上記一般式(4)で表される構造単位を有することで、加熱により他の分子中の官能基やエポキシ樹脂の官能基と架橋構造を形成する。
これにより、本発明の誘電体シートは、適度な強度及び柔軟性を有するものとなる。
更に、上記変性ポリビニルアセタール樹脂は、造膜性に優れた熱可塑性樹脂であるため、溶剤の揮発のみでフィルム化することができる。このため、未硬化状態のシートでも、充分な強度を有し、ハンドリング可能であり、高速でシート成形することができる。
【0017】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(1)で表されるビニルアルコール単位の含有量の好ましい下限は17モル%、好ましい上限は40モル%である。上記一般式(1)で表されるビニルアルコール単位の含有量が17モル%未満であると、溶解時に使用する有機溶剤に対する溶解性が低下することがある。上記一般式(1)で表されるビニルアルコール単位の含有量が40モル%を超えると、吸湿しやすくなるため、保存安定性が悪くなることがある。
【0018】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(2)で表されるアセタール単位の含有量の好ましい下限は40モル%、好ましい上限は80モル%である。上記一般式(2)で表されるアセタール単位の含有量が40モル%未満であると、溶解時に使用する有機溶剤に不溶となることがある。上記一般式(2)で表されるアセタール単位の含有量が80モル%を超えると、残存水酸基量が少なくなって得られる架橋ポリビニルアセタール樹脂の強度が低下することがある。また、上記一般式(2)で表されるアセタールの構造単位において、Rはメチル基及び/又はプロパノール基であることが好ましく、なかでもRがメチル基であることがより好ましい。Rをメチル基とすることにより、耐熱性を向上させることが可能となる。
なお、本明細書において、アセタール化度の計算方法としては、変性ポリビニルアセタール樹脂のアセタール基が2個の水酸基をアセタール化して得られたものであることから、アセタール化された2個の水酸基を数える方法を採用してアセタール化度のモル%を計算する。
【0019】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(3)で表されるアセチル単位の含有量の好ましい下限は0.1モル%、好ましい上限は25モル%である。上記範囲を超えると、原料のポリビニルアルコールの溶解性が低下し、アセタール化反応が困難となる。
【0020】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(4)で表される構造単位は、架橋性を有しており、加熱を行うことで、他の分子中の官能基と容易に架橋構造を形成することができる。これにより、未変性のポリビニルアセタール樹脂を使用したときと比較して、耐熱性に優れ、かつ、他の樹脂と優れた相溶性を実現することができる。
このため、本発明の誘電体シートは、上記変性ポリビニルアセタール樹脂を単独で使用してもよいが、変性ポリビニルアセタール樹脂とエポキシ樹脂とを混合して用いたとしても両者の界面に電界集中が発生して耐電圧性が低下するという問題点を解決することが可能となり、耐電圧性や柔軟性に優れた誘電体シートを得ることができる。
【0021】
上記一般式(4)で表される構造単位において、Rは、下記一般式(5)及び/又は(6)で表される官能基を有する基である。
【0022】
【化5】

【0023】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂において、上記一般式(4)で表される構造単位の含有量の好ましい下限は0.01モル%、好ましい上限は30モル%である。上記一般式(4)で表される構造単位の含有量が0.01モル%未満であると、架橋構造が形成されることによる効果が充分に得られないことがあり、30モル%を超えると、室温での安定性に劣ることがある。
【0024】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂の重合度の好ましい下限は200、好ましい上限は4000である。より好ましい下限は1500、より好ましい上限は4000である。重合度を上記範囲内とすることにより、得られる架橋体が柔軟性に優れるものとなる。
【0025】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂を製造する方法としては、例えば、上記Rが一般式(5)で表される基である変性ポリビニルアセタール樹脂を製造する場合、β−ジカルボニル基を有する変性ポリビニルアルコールをアセタール化する方法、未変性のポリビニルアルコールをアセタール化した後、β−ジカルボニル基を付加させる方法等が挙げられる。好ましくは、β−ジカルボニル基を有する変性ポリビニルアルコールをアセタール化する方法である。
上記β−ジカルボニル基の付加方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中に4−メチレン−2−オキセタノン等を添加する方法等が挙げられる。
【0026】
上記アセタール化の方法としては特に限定されず、従来公知の方法を用いることができ、例えば、酸触媒の存在下で変性ポリビニルアルコールの水溶液、アルコール溶液、水/アルコール混合溶液、ジメチルスルホキシド(DMSO)溶液中に各種アルデヒドを添加する方法等が挙げられる。
【0027】
上記アセタール化に用いるアルデヒドとしては特に限定されず、例えば、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピオンアルデヒド、ブチルアルデヒド、アミルアルデヒド、ヘキシルアルデヒド、ヘプチルアルデヒド、2−エチルヘキシルアルデヒド、シクロヘキシルアルデヒド、フルフラール、グリオキザール、グルタルアルデヒド、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−メチルベンズアルデヒド、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、m−ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、β−フェニルプロピオンアルデヒド等が挙げられる。なかでも、アセトアルデヒドを単独で用いるか、又は、アセトアルデヒドとブチルアルデヒド等の他のアルデヒドとを併用することが好ましい。
【0028】
上記酸触媒としては特に限定されず、有機酸、無機酸のどちらでも使用可能であり、例えば、酢酸、パラトルエンスルホン酸、硝酸、硫酸、塩酸等が挙げられる。
【0029】
上記アセタール化の反応を停止するために、アルカリによる中和を行うことが好ましい。上記アルカリとしては特に限定されず、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、アンモニア、酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム等が挙げられる。
また、上記中和工程の前後に、水等を用いて得られた変性ポリビニルアセタール樹脂を洗浄することが好ましい。なお、洗浄水中に含まれる不純物の混入を防ぐため、洗浄は純水で行うことがより好ましい。
【0030】
本発明の誘電体シートは、上記変性ポリビニルアセタール樹脂に加えて、未変性のポリビニルアセタール樹脂やエポキシ樹脂、フェノール等の樹脂を含有してもよい。これらのなかでは、エポキシ樹脂が好ましい。
上記エポキシ樹脂を含有することで耐熱性が向上するため耐電圧性を向上させることができる。
【0031】
上記エポキシ樹脂としては特に限定されないが、一分子中に平均2個以上のエポキシ基を有するものが好ましい。また、上記エポキシ樹脂は、例えば、シリコーン骨格、ウレタン骨格、ポリイミド骨格、ポリアミド骨格等を有していてもよく、また、臭素原子、リン原子、硫黄原子、窒素原子等を含んでいてもよい。
【0032】
上記エポキシ樹脂としては、一分子中に平均2個以上のエポキシ基を有するエポキシ化合物が使用することができ、具体的には例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、水添ビスフェノールA型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、ビフェニルアラルキル型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフタレンアラルキル型エポキシ樹脂、及び、トリフェニルメタン型エポキシ樹脂等のグリシジエルエーテル型エポキシ樹脂や、ヘキサヒドロフタル酸グリシジルエステル、ダイマー酸グリシジルエステル、トリグリシジルイソシアヌレート及びテトラグリシジルジアミノジフェニルメタン等のグリシジルアミン系エポキシ樹脂等が挙げられる。これらのエポキシ樹脂を単独で使用してもよく、また2種以上を併用してもよい。
【0033】
上記変性ポリビニルアセタール樹脂と他の樹脂とを混合して用いる場合、上記変性ポリビニルアセタール樹脂の含有量は、上記変性ポリビニルアセタール樹脂と他の樹脂との合計量を100重量部に対して、20重量部以上であることが好ましい。上記ポリビニルアセタール樹脂の含有量が20重量部未満であると、造膜性が劣り、均一なシート成形が困難となる。
【0034】
上記エポキシ樹脂を使用する場合は、通常硬化剤を併用する。
上記硬化剤としては、例えば、ジシアンジアミド、イミダゾール類、芳香族アミン類、フェノールノボラック樹脂、クレゾールノボラック樹脂等が挙げられる。
上記芳香族アミン類としては、メタキシリレンジアミン等が好ましい。
また、室温での活性が低く、加熱やUV処理などにより活性化する潜在性硬化剤等を用いてもよい。
【0035】
また、本発明では、上記エポキシ樹脂及び硬化剤との反応を促進するため、硬化促進剤が含まれていてもよい。上記硬化促進剤としては、例えば、3級アミン類、イミダゾール類や芳香族系有機酸(安息香酸やサリチル酸等)等が挙げられる。
【0036】
上記誘電体粒子としては、誘電体セラミックスからなるものが好ましい。
上記誘電体セラミックとしては、例えば、チタン酸バリウム(BaTiO)、チタン酸カルシウム(CaTiO)、チタン酸ストロンチウム(SrTiO)、チタン酸鉛(PbTiO)及びPbTi1/2Zr1/2等のチタン酸鉛系セラミックス、チタン酸マグネシウム系セラミックス、チタン酸ビスマス系セラミックス、その他チタン酸金属系セラミックス、Pb(Mg2/3Nb1/3)O、Ba(SnMgTa)O、Ba(ZrZnTa)O、TiO、ZrO、SnO、酸化アルミニウム系セラミックス、酸化ジルコニウム系セラミックス、ジルコン酸鉛系セラミックス、ジルコン酸バリウム系セラミックス、その他ジルコン酸金属系セラミック、鉛複合酸化物系セラミックス、その他の公知の高誘電率を有する誘電体セラミックスが挙げられる。
これらは単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。
また、これらの高誘電率を有する誘電体セラミックスを無機質又は有機質で表面処理したものを用いてよい。更に、その形状については特に限定されない。
【0037】
本発明の誘電体シートにおける誘電体粒子の平均粒子径は1μm以下であることが好ましい。上記誘電体粒子の平均粒子径が1μmを超えると、樹脂への均一な分散及び混合が困難となり、誘電体シート表面に粒子による凹凸が現れてシート表面の平滑性が損なわれ、この結果基板に対する密着性が悪くなったり、耐湿性が劣ったりすることがある。
また、本発明の誘電体シートにおける上記誘電体粒子の含有量は、20〜70体積%であることが好ましい。
【0038】
本発明の誘電体シートの一方又は両方の主面に導電層を形成することで電極付の誘電体シートを製造することができる。
上記導電層を形成する方法としては特に限定されず、例えば、誘電体シートの一方又は両方の主面に金属箔を形成することで導電層としてもよく、メッキ法により導電層を形成してもよい。また、CVD法等の薄膜形成方法により導電層を形成してもよい。
【0039】
本発明の誘電体シートを製造する方法としては、特に限定されず、例えば、上記変性ポリビニルアセタール樹脂、エポキシ樹脂、硬化剤、及び必要に応じて添加する硬化促進剤、有機溶剤、各種添加剤をボールミル、ブレンダーミル、3本ロール等の各種混合機を用いて混合した後、樹脂フィルム等に塗工、乾燥する方法が挙げられる。また、押出成形等で製造してもよい。
【0040】
上記有機溶剤としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類、酢酸エチル、酢酸ブチル、セロソルブアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、カルビトールアセテート等の酢酸エステル類、セロソルブ、ブチルセロソルブ等のセロソルブ類、カルビトール、ブチルカルビトール等のカルビトール類、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素の他、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドン等が挙げられる。これらの有機溶剤は単独で使用してもよく、2種以上を併用してもよい。上記有機溶剤の使用量は特に限定されず、従来から使用されている量とすることができる。
【0041】
本発明の誘電体シートは、積層型コンデンサ、巻回型コンデンサ(フィルムコンデンサ)、積層型ノイズフィルタ等に使用することができる。
図1は、本発明の誘電体シートを用いて作製した巻回型のフィルムコンデンサ(巻回型コンデンサ)の一例を示す模式図である。
このフィルムコンデンサ3は、一方の主面に電極2が形成された誘電体シート1と、同じく一方主面に電極が形成された誘電体シートを巻回することにより形成されている。
本発明の誘導体シートは、柔軟性に優れることから、このような巻回を行う必要がある誘導体シートにも好適に使用することができる。また、高い耐電圧性を有することから、信頼性の高いフィルムコンデンサを製造することができる。
【発明の効果】
【0042】
本発明によれば、柔軟性に優れるとともに、高い耐電圧性を有することから、信頼性の高い電子部品を製造することが可能な誘電体シートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】本発明の誘電体シートを用いて作製したフィルムコンデンサの構成を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0045】
(実施例1)
(変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
ケン化度99モル%、上記一般式(5)で表されるRを有する構造単位含有量が2モル%の変性ポリビニルアルコール100重量部を1000重量部の蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに35%塩酸70重量部を加え、更にアセトアルデヒド80重量部を添加した。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水、乾燥して変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量(上記一般式(1)で表される構造単位含有量)は22モル%、アセタール単位含有量(上記一般式(2)で表される構造単位含有量)は75モル%、アセチル単位含有量(上記一般式(3)で表される構造単位含有量)は1モル%、上記一般式(5)で表されるRを有する構造単位含有量(上記一般式(4)で表される構造単位含有量)は2モル%であった。
【0046】
(誘電体シートの作製)
チタン酸ストロンチウム粉100重量部を、MEK25重量部とトルエン25重量部との混合溶媒に加えて分散させ、1次分散液とした。上述で得られた変性ポリビニルアセタール樹脂30重量部をMEK135重量部とトルエン135重量部との混合溶媒に溶解させ、1次分散液に全量加えた後、メタキシリレンジアミン0.6重量部を添加し、12時間攪拌させた。得られた溶液を乾燥後の厚みが10μmになるように離型PET上に塗工し、70℃で1時間乾燥後、さらに100℃で1時間乾燥させることにより誘電体シートを得た。
【0047】
(実施例2)
(変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
ケン化度99モル%、上記一般式(6)で表されるRを有する構造単位含有量が4モル%の変性ポリビニルアルコール100重量部を1000重量部の蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに35%塩酸70重量部を加え、更にアセトアルデヒド75重量部を添加した。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水、乾燥して変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量(上記一般式(1)で表される構造単位含有量)は26モル%、アセタール単位含有量(上記一般式(2)で表される構造単位含有量)は69モル%、アセチル単位含有量(上記一般式(3)で表される構造単位含有量)は1モル%、上記一般式(6)で表されるRを有する構造単位含有量(上記一般式(4)で表される構造単位含有量)は4モル%であった。
【0048】
(誘電体シートの作製)
実施例2で得られた樹脂を使用した以外は実施例1と同様の方法にて誘電体シートを得た。
【0049】
(実施例3)
(変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
ケン化度92モル%、上記一般式(5)で表されるRを有する構造単位含有量が8モル%の変性ポリビニルアルコール100重量部を1000重量部の蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに35%塩酸70重量部を加え、更にアセトアルデヒド80重量部を添加した。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水、乾燥して変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量(上記一般式(1)で表される構造単位含有量)は23モル%、アセタール単位含有量(上記一般式(2)で表される構造単位含有量)は61モル%、アセチル単位含有量(上記一般式(3)で表される構造単位含有量)は8モル%、上記一般式(5)で表されるRを有する構造単位含有量(上記一般式(4)で表される構造単位含有量)は8モル%であった。
【0050】
(誘電体シートの作製)
チタン酸ストロンチウム粉100重量部を、MEK25重量部とトルエン25重量部との混合溶媒に加えて分散させ、1次分散液とした。
上述で得られた変性ポリビニルアセタール樹脂18重量部とビスフェノールA型エポキシ(JER828、ジェパンエポキシレジン社製)12重量部をMEK85重量部とトルエン85重量部との混合溶媒に溶解させた。
全量を1次分散液に加えた後、メタキシリレンジアミン2.4重量部を添加し、12時間攪拌させた。得られた溶液を乾燥後の厚みが10μmになるように離型PET上に塗工し、70℃で1時間乾燥後、さらに140℃で1時間乾燥させることにより誘電体シートを得た。
【0051】
(実施例4)
(変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
ケン化度94モル%、上記一般式(6)で表されるRを有する構造単位含有量が7モル%の変性ポリビニルアルコール100重量部を1000重量部の蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに35%塩酸70重量部を加え、更にアセトアルデヒド70重量部を添加した。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水、乾燥して変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量(上記一般式(1)で表される構造単位含有量)は25モル%、アセタール単位含有量(上記一般式(2)で表される構造単位含有量)は62モル%、アセチル単位含有量(上記一般式(3)で表される構造単位含有量)は6モル%、上記一般式(6)で表されるRを有する構造単位含有量(上記一般式(4)で表される構造単位含有量)7モル%であった。
【0052】
(誘電体シートの作製)
チタン酸ストロンチウム粉100重量部を、MEK25重量部とトルエン25重量部との混合溶媒に加えて分散させ、1次分散液とした。
上述で得られた変性ポリビニルアセタール樹脂30重量部と安息香酸0.06重量部、MEK135重量部とトルエン135重量部との混合溶媒に溶解させた。
全量を1次分散液に加えた後、メタキシリレンジアミン0.6重量部を添加し、12時間攪拌させた。得られた溶液を乾燥後の厚みが10μmになるように離型PET上に塗工し、70℃で1時間乾燥後、さらに100℃で1時間乾燥させることにより誘電体シートを得た。
【0053】
(実施例5)
(変性ポリビニルアセタール樹脂の作製)
ケン化度98モル%、上記一般式(6)で表されるRを有する構造単位含有量が1モル%の変性ポリビニルアルコール100重量部を1000重量部の蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに35%塩酸70重量部を加え、更にアセトアルデヒド80重量部を添加した。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水、乾燥して変性ポリビニルアセタール樹脂を得た。得られた変性ポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量(上記一般式(1)で表される構造単位含有量)は23モル%、アセタール単位含有量(上記一般式(2)で表される構造単位含有量)は74モル%、アセチル単位含有量(上記一般式(3)で表される構造単位含有量)は2モル%、上記一般式(6)で表されるRを有する構造単位含有量(上記一般式(4)で表される構造単位含有量)1モル%であった。
【0054】
(誘電体シートの作製)
チタン酸ストロンチウム粉100重量部を、MEK25重量部とトルエン25重量部との混合溶媒に加えて分散させ、1次分散液とした。
上述で得られた変性ポリビニルアセタール樹脂24重量部、フェノールノボラック型エポキシ(JER152、ジェパンエポキシレジン社製)6重量部、安息香酸0.06重量部をMEK130重量部とトルエン130重量部との混合溶媒に溶解させた。
全量を1次分散液に加えた後、メタキシリレンジアミン1.6重量部を添加し、12時間攪拌させた。得られた溶液を乾燥後の厚みが10μmになるように離型PET上に塗工し、70℃で1時間乾燥後、さらに140℃で1時間乾燥させることにより誘電体シートを得た。
【0055】
(比較例1)
ケン化度98モル%のポリビニルアルコール100重量部を1000重量部の蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに35%塩酸70重量部を加え、更にアセトアルデヒド80重量部を添加した。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。
次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水、乾燥してポリビニルアセタール樹脂を得た。得られたポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量(上記一般式(1)で表される構造単位含有量)は24モル%、アセタール単位含有量(上記一般式(2)で表される構造単位含有量)は75モル%、アセチル単位含有量(上記一般式(3)で表される構造単位含有量)は1モル%であった。
【0056】
(誘電体シートの作製)
比較例1で得られた樹脂を使用した以外は実施例1と同様の方法にて誘電体シートを得た。
【0057】
(比較例2)
(ポリビニルアセタール樹脂の作製)
ケン化度99モル%のポリビニルアルコール100重量部を1000重量部の蒸留水に加温溶解した後、20℃に保ち、これに35%塩酸70重量部を加え、更にブチルアルデヒド58重量部を添加した。反応終了後、蒸留水にて10時間流水洗浄し、水酸化ナトリウムを添加して溶液のpHを8に調整した。次に、蒸留水により溶液を2時間流水洗浄した後、脱水、乾燥してポリビニルアセタール樹脂を得た。
得られたポリビニルアセタール樹脂の残存水酸基量(上記一般式(1)で表される構造単位含有量)は35モル%、上記一般式(2)で表される構造単位含有量は64モル%、アセチル単位含有量(上記一般式(3)で表される構造単位含有量)は1モル%であった。
【0058】
(誘電体シートの作製)
比較例2で得られた樹脂を使用した以外は実施例1と同様の方法にて誘電体シートを得た。
【0059】
(比較例3)
(誘電体シートの作製)
チタン酸ストロンチウム粉100重量部を、MEK25重量部とトルエン25重量部との混合溶媒に加えて分散させ、1次分散液とした。
ビスフェノールA型エポキシ(JER828、ジェパンエポキシレジン社製)30重量部をMEK30重量部とトルエン30重量部との混合溶媒に溶解させた。
全量を1次分散液に加えた後、メタキシリレンジアミン5.9重量部を添加し、12時間攪拌させた。得られた溶液を乾燥後の厚みが10μmになるように離型PET上に塗工し、70℃で1時間乾燥後、さらに140℃で1時間乾燥させることにより誘電体シートを得た。
【0060】
(比較例4)
(誘電体シートの作製)
チタン酸ストロンチウム粉100重量部を、MEK25重量部とトルエン25重量部との混合溶媒に加えて分散させ、1次分散液とした。
フェノールノボラック型エポキシ(JER152、ジェパンエポキシレジン社製)30重量部をMEK30重量部とトルエン30重量部との混合溶媒に溶解させた。
全量を1次分散液に加えた後、メタキシリレンジアミン5.9重量部を添加し、12時間攪拌させた。得られた溶液を乾燥後の厚みが10μmになるように離型PET上に塗工し、70℃で1時間乾燥後、さらに140℃で1時間乾燥させることにより誘電体シートを得た。
【0061】
(比較例5)
(誘電体シートの作製)
チタン酸ストロンチウム粉100重量部を、MEK25重量部とトルエン25重量部との混合溶媒に加えて分散させ、1次分散液とした。
比較例1で得られたポリビニルアセタール樹脂24重量部とビスフェノールA型エポキシ(JER828、ジェパンエポキシレジン社製)6重量部をMEK130重量部とトルエン130重量部との混合溶媒に溶解させた。
全量を1次分散液に加えた後、メタキシリレンジアミン1.6重量部を添加し、12時間攪拌させた。得られた溶液を乾燥後の厚みが10μmになるように離型PET上に塗工し、70℃で1時間乾燥後、更に140℃で1時間乾燥させることにより誘電体シートを得た。
【0062】
(評価)
(1)柔軟性
得られた誘電体シートを離型PETから剥離し、1cm×5cmにカットした後、テンシロン(AGS型、島津製作所社製)を用い、引張速度10mm/分で破断するまでの引張伸度を測定した。
なお、測定値が60%以上である場合を「○」、60%未満である場合を「×」として評価した。
【0063】
(2)比誘電率、耐電圧
得られた誘電体シートを離型PETから剥離した後、誘電体シートの両主面にアルミニウムを蒸着し、測定サンプルを作製した。
その後、LCRメーター(アジレント社製)を用いて周波数1kHz、100℃での比誘電率の測定した。
また、耐電圧・絶縁抵抗試験器(TOS9201、菊水電子工業社製)を用いて100V/sで測定した。
なお、耐電圧の測定値が100V/μm以上である場合を「○」、100V/μm未満である場合を「×」として評価した。
【0064】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、柔軟性に優れるとともに、高い耐電圧性を有することから、信頼性の高い電子部品を製造することが可能な誘電体シートを提供できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
変性ポリビニルアセタール樹脂と誘電体粒子とを含有する誘電体シートであって、
前記変性ポリビニルアセタール樹脂は、少なくとも下記一般式(1)、(2)、(3)及び(4)で表される構造単位を有する変性ポリビニルアセタール樹脂を含有することを特徴とする誘電体シート。
【化1】

式中、Rは水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、Rは下記一般式(5)、及び/又は(6)で表される官能基を有する基を表す。
【化2】

【請求項2】
一方又は両方の主面に導電層を有することを特徴とする請求項1記載の誘電体シート。


【図1】
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【公開番号】特開2012−12470(P2012−12470A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149628(P2010−149628)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】