説明

誘電体バリア放電ランプを用いた光照射装置

【課題】 簡単な装置構成により、均一な照度が得られ、かつ、種々の形状の照射対象範囲に対しても効率の良い紫外線を含む各種波長領域の光の照射が可能な誘電体バリア放電ランプを用いた光照射装置を提供すること。
【解決手段】 放電ガスを封入した細長い管状の気密容器1内に、その中心軸方向に沿って延長配置された内部電極2と、前記管状の気密容器1の外周に設けられた外部電極3とからなり、前記内部電極が直列に接続された複数本の誘電体バリア放電ランプ11、12、…、17と、これらの誘電体バリア放電ランプの前記直列に接続された内部電極と前記外部電極間に高周波駆動信号を供給する高周波電源19、20と、を備えた光照射装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は誘電体バリア放電ランプを用いた光照射装置に関し、特に、光化学処理装置に適した光照射装置に関する。
【背景技術】
【0002】
キセノンなどの希ガスあるいはキセノン又はクリプトンなどの希ガス及び塩素などの混合ガスを無声放電させて、固有の単色に近い放射を発生させるエキシマ放電ランプ、すなわち、誘電体バリア放電ランプは、高い紫外線照度が得られるため、光化学処理装置等の紫外線照射装置に用いられている。
【0003】
このような誘電体バリア放電ランプの構造は、電極の一方を、エキシマ生成ガスを封入した細長い管状の気密容器内に、その中心軸方向に沿って延在する内部電極を封装し、他方の電極を管状の気密容器の外周に巻回された導体により外部電極として備えるものである(特許文献1参照)。
【0004】
このような誘電体バリア放電ランプを用いた従来の紫外線照射装置は、図3に示すように、ほぼ同一のランプ長を有する複数本、例えば7本のエキシマランプ31、32、…、37が、例えば破線で示すほぼ円形の照射対象範囲38に対向してほぼ平行に配列されている。複数本のエキシマランプ31、32、…37の内部電極31−1、32−1、…、37−1には、それぞれ、インバータ41、42、…、47が接続され、高周波パルスが供給される。
【特許文献1】特開2002−319371号公報 第8−9頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記の従来の紫外線照射装置においては、複数本のエキシマランプのそれぞれに高周波電源としてのインバータを設けており、装置が大型化するばかりではなく、インバータそれぞれの特性の相違に基づき、複数本のエキシマランプの照度が均一にならないという欠点もあった。
【0006】
さらに、従来の紫外線照射装置においては、複数本のエキシマランプのランプ長はほぼ同一であるため、照射対象範囲が長方形でなく、円形のような場合には、照射対象範囲外に紫外線が照射され、照射効率が悪いという欠点もあった。
【0007】
したがって本発明はかかる従来の欠点を除去し、簡単な装置構成により、均一な照度が得られ、かつ、種々の形状の照射対象範囲に対しても効率の良い紫外線を含む各種波長領域の光の照射が可能な誘電体バリア放電ランプを用いた光照射装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の誘電体バリア放電ランプを用いた光照射装置は、放電ガスを封入した細長い管状の気密容器内に、その中心軸方向に沿って延長配置された内部電極と、前記管状の気密容器の外周に設けられた外部電極とからなり、前記内部電極が直列に接続された複数本の誘電体バリア放電ランプと、これらの誘電体バリア放電ランプの前記直列に接続された内部電極と前記外部電極間に高周波駆動信号を供給する高周波電源と、を備えたことを特徴とする。
【0009】
また、本発明の誘電体バリア放電ランプを用いた光照射装置においては、前記高周波駆動信号は、前記直列に接続された内部電極の端部から供給することを特徴とする。
【0010】
さらに、本発明の誘電体バリア放電ランプを用いた光照射装置においては、前記高周波駆動信号は、前記直列に接続された内部電極の両端部から供給することを特徴とする。
【0011】
さらに、本発明の誘電体バリア放電ランプを用いた光照射装置においては、前記複数本の誘電体バリア放電ランプは、それらのランプ長が光照射範囲の寸法に合わせて、異なる長さに選定されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡単な装置構成により、均一な照度が得られ、かつ、種々の形状の照射対象範囲に対しても効率の良い紫外線を含む光の照射が可能な誘電体バリア放電ランプを用いた光照射装置が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下本発明の実施例を図面を参照して詳細に説明する。
【0014】
図1は本発明の光照射装置に用いられる誘電体バリア放電ランプの一例であるエキシマランプの構造を示す縦断面図である。
【0015】
同図に示すように、エキシマランプ10は、気密容器1、内部電極2、外部電極3および一対の導入線4−1、4−2から構成されている。
【0016】
気密容器1は、紫外線透過性の材料からなり、細長い円筒状の中空部1aおよびその両端に形成された封止部1bを備えている。封止部1bは、内部にモリブデン箔1b1が埋設されたピンチシール構造となっている。
【0017】
気密容器1の中空部1aの内部には、エキシマ生成ガスが封入されている。
【0018】
内部電極2は、連結部2a、多数の単位メッシュ部2bおよび両端直線部2cからなる。連結部2aは、金属細線を巻回してなるコイルを主体として構成されている。単位メッシュ部2bは、連結部2aに一定ピッチで多数配設したリング状部からなる。両端直線部2cは、連結部2aの両端を引き伸ばして形成されている。
【0019】
このような内部電極2は、約2kgの張力を作用させた状態で、気密容器1の両端に形成された封止部1b内のモリブデン箔1b1の一端に両端直線部2cが溶接されている。内部電極2の連結部2aは、所定の張力で気密容器1内に装架されている。
【0020】
外部電極3は、気密容器1の外周面に金属線を一定のピッチで密接して巻回したコイル3aからなっている。
【0021】
一対の導入線4−1、4−2は、それらの一端部が気密容器1の両端に形成された封止部1bに埋設されたモリブデン箔1b1に溶接され、他端が封止部1bから外部へ露出している。
【0022】
図2は、本発明を上記エキシマランプを用いた紫外線照射装置に適用した実施形態を示す平面図である。異なるランプ長を有する複数本、例えば7本のエキシマランプ11、12、…、17は、それぞれランプ長は異なるが、構造は実質的に図1に示したランプと同一の構造を備えている。これらのランプは、例えば破線で示すほぼ円形の照射対象範囲18に対向してほぼ平行に配列されている。エキシマランプ11、12、…、17はそれぞれエキシマ生成ガスを封入した細長い管状の気密容器11−1、12−1、…、17−1内に、その中心軸方向に沿って延在する内部電極11−2、12−2、…、17−2が設けられている。管状の気密容器11−1、12−1、…、17−1の外周面には、それぞれ、外部電極11−3、12−3、…、17−3が設けられている。
【0023】
エキシマランプ11、12、…、17は、それぞれ、紫外線の照射対象範囲18の形状に対応した異なるランプ長を有している。図2においては、照射対象範囲18はほぼ円形であるため、照射対象範囲18の上端から中央部に向かってランプ長は徐々に長くなり、下端に向かって徐々に短くなる。なお、エキシマランプ11、12、…、17は照射対象範囲18に対して、その上方あるいは下方の少なくも一方に配置されている。
【0024】
エキシマランプ11、12、…、17は、それぞれの内部電極11−2、12−2、…、17−2が直列に接続され、その両端に第1および第2のインバータ19、20が接続され、高周波パルスが供給される。すなわち、エキシマランプ11の内部電極11−2の第1の導入線(図1の4−1、以下同じ。)は第1のインバータ19に接続され、この第1の導入線を介して高周波パルスがエキシマランプ11に供給される。エキシマランプ11の内部電極11−2の第2の導入線(図1の4−2以下同じ。)は、隣接するエキシマランプ12の内部電極12−2の第2の導入線に接続される。また、エキシマランプ12の内部電極12−2の第1の導入線は、隣接するエキシマランプ13の内部電極13−2の第1の導入線に接続される。以下同様に、エキシマランプ13、14、…、17の内部電極13−2、14−2、…、17−2が相互に接続される。そして、エキシマランプ17の内部電極17−2の第2の導入線は、第2のインバータ20に接続され、この第2の導入線を介して高周波パルスがエキシマランプ11に供給される。
【0025】
第1および第2のインバータ19、20は、ほぼ同一のパルス電圧をほぼ同一の周波数、同一の位相で発生し、この高圧側出力端をそれぞれエキシマランプ11の内部電極11−2の第1の導入線、エキシマランプ17の内部電極17−2の第2の導入線に供給する。第1および第2のインバータ19、20の低圧側出力端は、例えば接地され、図示しないが、例えばアルミブロックのような共通の接地導体を介してエキシマランプ11、12、…、17の各外部電極11−3、12−3、…、17−3に接続されている。すなわち、アルミブロックに形成された凹状の反射面内にエキシマランプ11、12、…、17を収納し、各外部電極11−3、12−3、…、17−3はこのアルミブロックに接続されている。
【0026】
このように構成された紫外線照射装置においては、第1および第2のインバータ19、20から、駆動用の高周波パルスを、内部電極が直列接続されたエキシマランプ11、12、…、17の内部電極の両端と外部電極間に供給することにより、エキシマランプ11、12、…、17を同時に点灯駆動することができる。この場合、各エキシマランプ11、12、…、17の内部電極の両端の導入線4−1、4−2間は、同電位であり、また、直列接続された内部電極の両端、すなわち、エキシマランプ11の内部電極11−2の第1の導入線(図1の4−1)とエキシマランプ17の内部電極11−2の第2の導入線(図1の4−2)との間には電位差がなく、それらの途中のどの位置においてもほぼ同電位に保持されるため、各エキシマランプ11、12、…、17は均一な照度により点灯することができる。また、従来の並列給電の場合のように、エキシマランプ11、12、…、17毎にインバータを設ける必要がないため、装置が小型化できるとともに、インバータ毎の特性の差に起因する照度のばらつきを防止することができる。さらにこの場合、異なるランプ長のエキシマランプ11、12、…、17毎に異なる出力のインバータを設ける必要がなく、ランプ全体に要する電力のみ考慮すればよいため、インバータの設計も容易となる。
【0027】
また、複数本のエキシマランプ11、12、…、17を同時に点灯駆動するためのインバータは2個で済み、ランプの本数に比較して大幅に少なくできる。また、インバータを2個用いるため、エキシマランプ11、17の給電端である導入線4−1、4−2に流れる電流は1個の場合に比較して半減するため、これらの部分での温度上昇も半減することができる。
【0028】
さらに、上記のように構成された紫外線照射装置においては、複数本のエキシマランプ11、12、…、17はそれぞれランプ長が異なっていても、全体として1本のランプとして駆動点灯できるため、インバータの出力をランプ長に応じて調整する必要もなく、装置の構成を簡素化できる。したがって、複数本のエキシマランプ11、12、…、17それぞれのランプ長を、所望の照射対象範囲にあわせることができる。したがって、紫外線照射を必要な範囲に限定することができ、効率的な照射が可能である。
【0029】
なお、上記の実施形態においては、インバータを2個用いたが、いずれか1方のみでも動作させることができる。すなわち、1個のインバータを用いる場合、図示しないが、その高圧側出力を2分岐して、直列接続された内部電極の両端にそれぞれ供給すればよい。
【0030】
また、本発明に使用するエキシマランプは、上記の実施形態に限られるものではなく、種々の形態の誘電体バリア放電ランプが使用できる。例えば、図2のエキシマランプ10において、単位メッシュ部2bは、連結部2aに一定ピッチで多数配設したリング状部から構成したが、連結部2aを含めて内部電極全体をスパイラル状に構成したランプも使用可能である。また、誘電体バリア放電ランプの放電媒体としては、キセノン、クリプトンなどの希ガスあるいはこれらの混合ガス、あるいは、これらと水銀ガスとの混合ガス等、公知の媒体を用いることができる。
【0031】
さらに、上記の実施形態においては、紫外線照射装置を例として説明したが、本発明はこれに限られることなく、紫外線以外の波長領域の光を照射する装置にも適用可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の光照射装置に用いられるエキシマランプの構造を示す縦断面図である。
【図2】図1のエキシマランプを用い、本発明を紫外線照射装置に適用した実施形態を示す概略平面図である。
【図3】従来の紫外線照射装置の構成を示す概略平面図である。
【符号の説明】
【0033】
1…気密容器、2…内部電極、3…外部電極、4−1、4−2…導入線、11、12、…、17…エキシマランプ、11−2、12−2、…、17−2…内部電極、18…照射対象範囲、19…第1のインバータ、20…第2のインバータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放電ガスを封入した細長い管状の気密容器内に、その中心軸方向に沿って延長配置された内部電極と、前記管状の気密容器の外周に設けられた外部電極とからなり、前記内部電極が直列に接続された複数本の誘電体バリア放電ランプと、これらの誘電体バリア放電ランプの前記直列に接続された内部電極と前記外部電極間に高周波駆動信号を供給する高周波電源と、を備えたことを特徴とする誘電体バリア放電ランプを用いた光照射装置。
【請求項2】
前記高周波駆動信号は、前記直列に接続された内部電極の一端又は両端部から供給することを特徴とする請求項1記載の誘電体バリア放電ランプを用いた光照射装置。
【請求項3】
前記複数本の誘電体バリア放電ランプは、それらのランプ長が光照射範囲の寸法に合わせて、異なる長さに選定されていることを特徴とする請求項1または2記載の誘電体バリア放電ランプを用いた光照射装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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