説明

誘電体共振部品

【課題】共振器数が増大した場合においても、機械的強度の低下が防止され、低コストで実装効率の高い誘電体共振部品を提供する。
【解決手段】誘電体ブロック2には、第1の面21から第2の面22にかけて第3の面23及び第4の面24に略平行に延びる貫通長穴45が形成されており、貫通長穴45の内面にはシールド導体46が形成されている。貫通長穴45の第5の面25に近い先端部45aは、複数の貫通孔41のいずれよりも第5の面25の近くに位置する。複数の貫通孔41は、誘電体ブロック2の貫通長穴45と第3の面23、第4の面24及び第6の面26との間の領域にて配列されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体ブロックに複数の共振器を形成してなり、マイクロ波帯などの高周波帯で使用される、誘電体フィルタや誘電体送受共用器などの誘電体共振部品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話機などの移動体通信機器は、アンテナにより送受信する信号を通過帯域フィルタなどのフィルタを介して、所望の周波数帯のみを送受信することができるように構成されている。このような機能性電子部品である誘電体フィルタや誘電体送受共用器などの誘電体共振部品としては、誘電体ブロックを用い、これに複数の共振器を作りこんでなる一体型のものがしばしば用いられる。
【0003】
しかるに、近年、移動体通信機器、特に基地局用途のものにおいて高性能化が要請されており、これに伴い移動体通信機器に用いられる誘電体共振部品にも高性能化が要請されている。そのため、より多くの共振器を単一の誘電体ブロックに作り込んで高性能化が図られている。この場合、誘電体ブロックが長手方向に長くなりすぎて機械的強度が低下しやすくなるという問題があった。また、最近においては、実装効率の高い誘電体共振部品が要請されており、長手方向にあまり長すぎる誘電体共振部品には、実装効率の低下を招くという問題もあった。
【0004】
このような問題を回避するために、たとえば特許文献1には、2つの誘電体フィルタを分割して作製し、それぞれを互いに電気的及び機械的に接合する方法が提案されている。
【0005】
また、特許文献2には、誘電体ブロックを途中で湾曲させてU字形状とすることで実装効率の向上を図ることが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】登録実用新案第3010568号公報
【特許文献2】特開昭62−73801号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、部品点数が増加し、更に組立作業によるコストアップの問題が生じる。また、電気的な整合がとりにくく、誘電体共振部品の特性がばらつくという問題が生じる。たとえば、高周波の誘電体共振部品に適用する場合には、金属端子のインダクタンス成分がインピーダンス整合を悪化させ、また、金属端子の部分から高周波が漏洩し性能を悪化させる。
【0008】
一方、特許文献2に記載の方法では、機械的強度の低下の問題は依然として解決されない。
【0009】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、高性能化に応えるべく誘電体共振部品の共振器数が増大した場合においても、機械的強度の低下が防止され、低コストで実装効率の高い誘電体共振部品を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、以上の如き目的を達成するものとして、
互いに略平行な第1の面及び第2の面と、前記第1の面及び第2の面に略直交し且つ互いに略平行な第3の面及び第4の面と、前記第1の面及び第2の面並びに前記第3の面及び第4の面に略直交する第5の面及び第6の面と、を含む外面、を有する誘電体ブロックと、
該誘電体ブロックに前記第1の面から前記第2の面にかけて形成された複数の貫通孔と、
該貫通孔の内面に形成された内導体と、
前記第1の面を除く前記外面に形成された外導体と、
前記貫通孔に対応して形成される共振器同士を結合させるように前記第1の面にて前記内導体から延びた結合電極と、
前記共振器のうちのいずれかと結合する入出力電極と、
を含んでなる誘電体共振部品であって、
前記誘電体ブロックには、前記第1の面から前記第2の面にかけて前記第3の面及び第4の面に略平行に延びる貫通長穴が形成されており、該貫通長穴の内面にはシールド導体が形成されており、
前記貫通長穴の前記第5の面に近い先端部は、前記複数の貫通孔のいずれよりも前記第5の面の近くに位置し、
前記複数の貫通孔は、前記誘電体ブロックの前記貫通長穴と前記第3の面、第4の面及び第6の面との間の領域にて配列されていることを特徴とする誘電体共振部品、
が提供される。
【0011】
本発明の一態様においては、前記入出力電極は、前記貫通長穴と前記第3の面との間の領域に位置する第1入出力電極と、前記貫通長穴と前記第4の面との間の領域に位置する第2入出力電極とからなる。
【0012】
本発明の一態様においては、前記貫通長穴の前記第5の面に近い先端部は、前記結合電極及び前記入出力電極のいずれよりも前記第5の面の近くに位置する。
【0013】
本発明の一態様においては、前記誘電体ブロックの第1の面には、前記貫通長穴の前記第5の面に近い先端部から前記第5の面にかけて短絡電極が形成されており、該短絡電極は前記第5の面に形成された外導体及び前記貫通長穴の内面に形成されたシールド導体にそれぞれ接続されている。
【0014】
本発明の一態様においては、前記誘電体ブロックは誘電体セラミックからなる。
【0015】
本発明の一態様においては、前記第1の面を略覆うように配置された電磁シールドカバーを備えている。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、誘電体ブロックに形成した貫通長穴の内面にシールド導体を形成し、貫通長穴の第5の面に近い先端部を貫通孔のいずれよりも第5の面の近くに位置させ、複数の貫通孔を貫通長穴と第3の面、第4の面及び第6の面との間の領域にて配列させたことで、共振器数が増大した場合においても、長手方向に長くなりすぎることがなく、機械的強度の低下が防止され、低コストで実装効率の高い誘電体共振部品が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による誘電体共振部品の第1の実施形態を示す模式的斜視図である。
【図2】第1の実施形態の誘電体共振部品を示す模式的部分拡大平面図である。
【図3】本発明による誘電体共振部品の第2の実施形態を示す模式的斜視図である。
【図4】第2の実施形態の誘電体共振部品を示す模式的分解斜視図である。
【図5】図3のA矢視模式的部分断面図である。
【図6】図3のA矢視模式的断面図である。
【図7】本発明による誘電体共振部品の第3の実施形態を示す模式的断面図である。
【図8】本発明による誘電体共振部品の第4の実施形態を示す模式的斜視図である。
【図9】第4の実施形態の誘電体共振部品を示す模式的分解斜視図である。
【図10】本発明による誘電体共振部品の第5の実施形態を示す模式的分解斜視図である。
【図11】第5の実施形態の誘電体共振部品の模式的部分拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照しながら本発明の具体的な実施形態を説明する。尚、図面において、互いに同一または類似の機能を有する部材または部分などには同一の符号が付されている。
【0019】
[第1の実施形態]
図1は本発明による誘電体共振部品の第1の実施形態を示す模式的分解斜視図であり、図2は本実施形態の誘電体共振部品の模式的部分拡大平面図である。本実施形態においては、誘電体共振部品は誘電体フィルタである。
【0020】
本実施形態の誘電体フィルタは誘電体ブロック2を有する。誘電体ブロック2の材質としては、たとえば誘電体セラミックを使用することができ、特に比誘電率εが10程度のフォルステライト系セラミックを使用することができる。
【0021】
誘電体ブロック2は、互いに略平行な第1の面21及び第2の面22を有する。誘電体ブロック2は、更に、第1の面21及び第2の面22に略直交し且つ互いに略平行な第3の面23及び第4の面24を有する。誘電体ブロック2は、更に、第1の面21及び第2の面22並びに第3の面23及び第4の面24に略直交し且つ互いに略平行な第5の面25及び第6の面26を有する。かくして、誘電体ブロック2の外面は、第1の面21〜第6の面26を含んでなる。
【0022】
第1の面21は上面である。第2の面22は、下面であり、第1の面21から距離(高さ)Hを隔てて第1の面21と反対向き且つ略平行に位置している。第3の面23及び第4の面24は、一対の側面であり、距離(幅)Wを隔てて互いに反対向きに位置している。第5の面25及び第6の面26は、一対の端面であり、距離(長さ)Lを隔てて互いに反対向きに位置している。誘電体ブロック2の寸法は、所要の特性に応じて、適宜設定することができるが、たとえば、高さHが4mm〜25mmで、長さLが45mm〜130mmで、幅Wが25mm〜60mmである。Lは3W以内であることが好ましい。一例を挙げれば、長さLが約55mmで、幅Wが約40mmで、高さHが約9mmである。
【0023】
誘電体ブロック2には、第1の面21から第2の面22にかけて貫通する複数の貫通孔41が形成されている。貫通孔41の内面には内導体42が形成されている。誘電体ブロック2の第1の面21を除く外面には、外導体43が形成されている。外導体43は第2の面22に形成された外導体43に接続されている。第1の面21には、内導体42から延び、貫通孔41に対応して形成される1/4波長型の共振器同士を結合させる結合電極44が形成されている。この結合電極44の形状は、図示されるものに限定されず、所要の結合が得られるものであれば適宜変更してもよい。尚、第1の面21には、外導体43に接続された結合調整電極(図示されていない)が付されていてもよい。これらの結合電極44および結合調整電極により互いに隣接する共振器同士の所要の結合がとられる。
【0024】
誘電体ブロック2には、第1の面21から第2の面22にかけて第3の面23及び第4の面24に略平行に延びる貫通長穴45が形成されており、該貫通長穴45の内面にはシールド導体46が形成されている。シールド導体46は第2の面22に形成された外導体43に接続されている。貫通長穴45は、幅がDで、長さ即ち第5の面25に近い先端部45aと第6の面26に近い先端部45bとの間の距離がL’である。幅Dは、適宜設定することができ、たとえば3mm〜15mmであり、一例を挙げれば約6mmである。また、長さL’は、適宜設定することができ、たとえば20mm〜105mmであり、一例を挙げれば約35mmである。
【0025】
複数の貫通孔41は、誘電体ブロック2の貫通長穴45と第3の面23、第4の面24及び第6の面26との間のコ字形状の領域にて配列されている。即ち、貫通孔41は、第4の面24から第6の面26を経て第3の面23へと連なる誘電体ブロック外面に沿った領域にて、貫通長穴45を挟むようにコ字形状に配列されている。誘電体ブロック2の第1の面21には、以上のような共振器配列(即ち貫通孔配列)の一方端及び他方端の貫通孔41に対応して形成される共振器と結合するように、それぞれ入出力電極即ち第1入出力電極47及び第2入出力電極48が形成されていることが好ましい。即ち、第1入出力電極47は貫通長穴45と第3の面23との間の領域に位置し、第2入出力電極48は貫通長穴45と第4の面24との間の領域に位置する。第1入出力電極47及び第2入出力電極48は、一方が入力電極として機能し、他方が出力電極として機能する。これにより、一方端から他方端までの共振器配列を有する誘電体フィルタが構成される。
【0026】
図2に示されるように、貫通長穴45の第5の面25に近い先端部45aは、貫通孔41のいずれよりも第5の面25の近くに位置する。これにより、共振器配列の一方端及び他方端の共振器同士の結合が良好に抑制される。先端部45aと第5の面25との間の距離は、例えば2〜15mmである。また、貫通孔41は、貫通長穴45と第3の面23及び第4の面24との間の領域に位置し、電気特性上ほぼ中央部に配列されることが好ましい。
【0027】
更には、貫通長穴45の第5の面25に近い先端部45aは、結合電極44及び入出力電極47,48のいずれよりも第5の面25の近くに位置することが好ましい。これにより、共振器配列の一方端及び他方端の共振器同士の結合が更に良好に抑制され、入出力電極47,48間での電磁波の不要伝播が抑制されて、アイソレーション特性が良好になる。
【0028】
また、誘電体ブロック2の第1の面21には、貫通長穴45の第5の面25に近い先端部45aから第5の面25にかけて短絡電極(短絡導体)49が形成されていることが好ましい。短絡電極49は第5の面25に形成された外導体43及び貫通長穴45の内面に形成されたシールド導体46にそれぞれ接続されている。これにより、アイソレーション特性は更に良好になる。
【0029】
誘電体ブロック2は、第1の面21及び第2の面22と略平行な断面の形状が第1の面21から第2の面22に至るまで同一である。このような誘電体ブロック2は、金型にてセラミック粉体を圧縮成形し焼成することで製造することができる。第1の面21及び第2の面22と略平行な断面の形状が第1の面21から第2の面22に至るまで同一であることで、1軸圧縮成形にて簡単に誘電体ブロック2を製造することができる。
【0030】
このような構造にすることで、高機能を得るために共振器数を多くしても、共振器配列をコ字形状とすることにより長さLの増大が抑えられ、しかも、一体物の誘電体ブロック2を用いることで、特別の部材を別途追加することなく、機械的強度の低下が防止される。かくして、低コストで実装効率の高い誘電体フィルタが提供される。
【0031】
[第2の実施形態]
図3は本発明による誘電体共振部品の第2の実施形態を示す模式的斜視図であり、図4は本実施形態の誘電体共振部品の模式的分解斜視図である。また、図5は図3のA矢視模式的部分断面図であり、図6は図3のA矢視模式的断面図である。図5と図6とは、互いに異なる部分の断面を示す。
【0032】
本実施形態は、電磁シールドカバーを備えることを除いて、第1の実施形態と同一である。
【0033】
電磁シールドカバー10は、誘電体ブロック2の第1の面21を略覆うように配置されていることが好ましい。具体的には、電磁シールドカバー10は、誘電体ブロック2の第1の面21の開放域(導体が形成されていない領域部)から隔てられて該開放域を覆うように配置されており、たとえば厚み0.3mm〜0.8mm程度の金属板を成形したものからなる。電磁シールドカバー10の材質は、導電性であれば良く、例えば鉄系の金属、特に表面をすずめっきした鉄などを用いることができる。電磁シールドカバー10は、誘電体ブロック2の第3の面23〜第6の面26に付された外導体43及び貫通長穴45に形成されたシールド導体46に接合されている。この接合には、たとえば半田または導電性接着剤が用いられる。これにより、第1の面(開放域)21からの電波漏洩を抑制し、良好な電磁シールド効果を発揮して、一層高い電気特性を得ることができる。
【0034】
尚、図5には、本実施形態における外部回路との接続形態の一例が示されている。図5に示されるように、第2入出力電極48には同軸型接続ケーブル12の内部導体が接続されており、該接続ケーブル12によって誘電体フィルタが外部回路と接続される。接続ケーブル12の外部導体は、たとえば電磁シールドカバー10に接続される。第1入出力電極47についても同様である。
【0035】
誘電体フィルタと外部回路との接続方法については、上記の限りではなく、必要に応じて公知の他の方法が用いられ、同軸型の接続コネクタを用いたものでも良いし、リードピンを用いたものでも良い。
【0036】
[第3の実施形態]
図7は、本発明による誘電体共振部品の第3の実施形態を示す模式的断面図である。この図は、上記第2の実施形態に係る図6に対応する部分を示している。
【0037】
本実施形態は、電磁シールドカバーの取付形態を除いて、第2の実施形態と同一である。
【0038】
本第3の実施形態では、誘電体ブロック2の第1の面21に、貫通長穴45に形成されたシールド導体46に接続された接続導体40が形成されている。電磁シールドカバー10は接続導体40を介してシールド導体46に接続されている。これにより、貫通長穴45の幅Dが小さくとも、電磁シールドカバー10とシールド導体46との間の電気的接続を容易にとることができ、誘電体共振部品の小型化に寄与することができる。
【0039】
[第4の実施形態]
図8は本発明による誘電体共振部品の第4の実施形態を示す模式的斜視図であり、図9は本実施形態の誘電体共振部品の模式的分解斜視図である。本実施形態においては、誘電体共振部品は誘電体送受共用器である。
【0040】
本実施形態では、誘電体ブロック2の貫通長穴45と第3の面23との間の領域に6個の共振器により送信側フィルタFtが形成されており、誘電体ブロック2の貫通長穴45と第4の面24との間の領域に6個の共振器により受信側フィルタFrが形成されている。誘電体ブロック2の貫通長穴45と第6の面26との間の領域には、第1の面21において、送信側フィルタFt及び受信側フィルタFrの双方と結合する送受共通電極60が形成されている。第1入出力電極47は送信信号入力電極として機能し、第2入出力電極48は受信信号出力電極として機能し、送受共通電極60は送信信号出力電極及び受信信号入力電極として機能する。送受共通電極60はアンテナ等の送受信手段に接続される。
【0041】
本実施形態においても、誘電体ブロック2の貫通長穴45と第3の面23、第4の面24及び第6の面26との間のコ字形状の領域を1つの領域と見なして、このコ字形状の領域に複数の貫通孔41が配列されているものとする。このように、本発明においては、誘電体ブロック2の貫通長穴45と第6の面26との間には貫通孔41が存在しなくてもよい。
【0042】
誘電体ブロック2の材質は、第1の実施形態のものと同一である。誘電体ブロック2の寸法は、図2及び図3に示される表記に従えば、Hは4mm〜25mm、Lは50mm〜130mm、Wは25mm〜60mm、Dは3mm〜15mm、L’は40mm〜115mmであることが好ましい。より具体的な形態としては、Lはたとえば約100mmであり、Wはたとえば約40mmであり、Hはたとえば約9mmである。また、Dはたとえば6mmであり、L’はたとえば約80mmである。また、Lは3W以内が好ましい。
【0043】
その他の構成は、第1の実施形態のものに準ずる。たとえば、貫通長穴45と貫通孔41との位置関係、貫通長穴45と結合電極44との位置関係、並びに貫通長穴45と第1入出力電極47及び第2入出力電極48との位置関係、更には、短絡電極49及び電磁シールドカバー10の存在は、第1の実施形態のものと同一である。従って、これらの構成に基づき得られる上記第1の実施形態で説明した効果は、本第4の実施形態においても同様に得られる。
【0044】
本実施形態によれば、共振器数が多い一体型誘電体送受共用器であっても、第1の実施形態と同様に、高機能を得るために共振器数を多くしても、貫通長穴45の一方側に送信側フィルタFtを構成する共振器を配列し、貫通長穴45の他方側に受信側フィルタFrを構成する共振器を配列することにより長さLの増大が抑えられ、しかも、一体物の誘電体ブロック2を用いることで、特別の部材を別途追加することなく、機械的強度の低下が防止される。かくして、低コストで実装効率の高い誘電体送受共用器が提供される。
【0045】
[第5の実施形態]
図10は本発明による誘電体共振部品の第5の実施形態を示す模式的分解斜視図であり、図11は本実施形態の誘電体共振部品の模式的部分拡大断面図である。
【0046】
本実施形態は、誘電体ブロック2の第1の面21に形成された短絡電極(短絡導体)49が、第5の面25と隣接する第1の面21の縁辺部の全体に形成されており(即ち、第1の面21と第5の面25との境界線に沿って延在しており)、第5の面25に付された外導体43に接続されるように下向きに延びた電磁シールドカバー10の部分が、第1の面21上の短絡導体49に接続されていることを除いて、第4の実施形態と同一である。
【0047】
即ち、電磁シールドカバー10の第5の面25に付された外導体43と電気的に接続されるように下向きに延びた部分は、下端縁部が水平且つ外向きに折り曲げられており、この下端縁部の下面が、第5の面25と隣接する第1の面21の縁辺部の全体に形成された短絡導体49に接合されている。
【0048】
このような構造にすることで、第4の実施形態で得られる作用効果に加えて、L寸法のバラツキが発生しても電磁シールドカバー10は短絡電極49を介して第5の面25に形成された外導体43に確実に接続されるので、歩留まり良く製品を製造することができる。また、第1入出力電極47及び第2入出力電極48により近いところを接地できるので、さらに電磁シールド効果が良好になり高い電気特性を得ることができる。
[その他の実施形態]
以上の実施形態では、寸法、個数及び形状などについて、特定のものが記載されているが、本発明は、それらに限定されるものではなく、適宜変更が可能である。
【0049】
たとえば、誘電体ブロック2に形成される共振器の数は、長さLが約100mmの場合には、たとえば7または8とすることができるが、これに限定されず、適宜変更が可能である。
【符号の説明】
【0050】
2 誘電体ブロック
21 第1の面
22 第2の面
23 第3の面
24 第4の面
25 第5の面
26 第6の面
40 接続導体
41 貫通孔
42 内導体
43 外導体
44 結合電極
45 貫通長穴
45a,45b 貫通長穴の先端部
46 シールド導体
47 第1入出力電極
48 第2入出力電極
49 短絡電極
60 送受共通電極
10 電磁シールドカバー
12 同軸型接続ケーブル
Ft 送信側フィルタ
Fr 受信側フィルタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに略平行な第1の面及び第2の面と、前記第1の面及び第2の面に略直交し且つ互いに略平行な第3の面及び第4の面と、前記第1の面及び第2の面並びに前記第3の面及び第4の面に略直交する第5の面及び第6の面と、を含む外面、を有する誘電体ブロックと、
該誘電体ブロックに前記第1の面から前記第2の面にかけて形成された複数の貫通孔と、
該貫通孔の内面に形成された内導体と、
前記第1の面を除く前記外面に形成された外導体と、
前記貫通孔に対応して形成される共振器同士を結合させるように前記第1の面にて前記内導体から延びた結合電極と、
前記共振器のうちのいずれかと結合する入出力電極と、
を含んでなる誘電体共振部品であって、
前記誘電体ブロックには、前記第1の面から前記第2の面にかけて前記第3の面及び第4の面に略平行に延びる貫通長穴が形成されており、該貫通長穴の内面にはシールド導体が形成されており、
前記貫通長穴の前記第5の面に近い先端部は、前記複数の貫通孔のいずれよりも前記第5の面の近くに位置し、
前記複数の貫通孔は、前記誘電体ブロックの前記貫通長穴と前記第3の面、第4の面及び第6の面との間の領域にて配列されていることを特徴とする誘電体共振部品。
【請求項2】
前記入出力電極は、前記貫通長穴と前記第3の面との間の領域に位置する第1入出力電極と、前記貫通長穴と前記第4の面との間の領域に位置する第2入出力電極とからなることを特徴とする、請求項1に記載の誘電体共振部品。
【請求項3】
前記貫通長穴の前記第5の面に近い先端部は、前記結合電極及び前記入出力電極のいずれよりも前記第5の面の近くに位置することを特徴とする、請求項1または2に記載の誘電体共振部品。
【請求項4】
前記誘電体ブロックの第1の面には、前記貫通長穴の前記第5の面に近い先端部から前記第5の面にかけて短絡電極が形成されており、該短絡電極は前記第5の面に形成された外導体及び前記貫通長穴の内面に形成されたシールド導体にそれぞれ接続されていることを特徴とする、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の誘電体共振部品。
【請求項5】
前記誘電体ブロックは誘電体セラミックからなることを特徴とする、請求項1乃至4のいずれか一項に記載の誘電体共振部品。
【請求項6】
前記第1の面を略覆うように配置された電磁シールドカバーを備えていることを特徴とする、請求項1乃至5のいずれか一項に記載の誘電体共振部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate


【公開番号】特開2012−222607(P2012−222607A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86312(P2011−86312)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【出願人】(000000206)宇部興産株式会社 (2,022)
【Fターム(参考)】