説明

誘電体層の無電解メッキ用活性化溶液

【課題】
【解決手段】金属の無電解析出用に、酸化物表面を活性化する溶液を提供する。溶液には、酸化物表面と化学結合を形成可能な少なくとも一つの官能基と、触媒と化学結合を形成可能な少なくとも一つの官能基と、を有する結合剤が含まれる。本発明は、また、電子デバイスの製造方法と、その製造方法を用いて製造した電子デバイスとを提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
[クロスリファレンス]
本出願は、Artur KOLICSにより「誘電体層の無電解メッキ用活性化溶液」の名称で2007年12月21日に出願された米国特許出願S/N61/016,439号、整理番号XCR−010に基づく優先権を主張するものである。2007年12月21日出願の米国特許出願S/N61/016,439号は、参照することによりその全体が本明細書に組み込まれる。
【技術分野】
【0002】
本発明は、集積回路等の電子デバイスの製造に関する。より詳しくは、本発明は、電子デバイスの無電解メッキ用に誘電酸化物表面を活性化する方法および溶液に関する。
【0003】
無電解析出処理は、電子デバイスの製造時に頻繁に用いられる処理である。この処理は、誘電体基板上に金属層を析出させる必要がある用途で、特に重要になる。無電解析出処理は、所定の触媒表面では容易に進行する。触媒表面の一般的な例として、金属や金属活性化誘電体が挙げられる。無電解析出を行なうために誘電体表面に触媒活性を与える多くの処理方法が開発され、これら周知の処理方法の中には、満足できる結果を与えるものも多い。ただし、これら周知の処理方法の中には、複雑で、実際の製造作業としては実用的でないものもある。また、これら周知の処理方法の中には、処理速度が遅く、実際の製造作業にとっては長すぎる処理時間がかかるものもある。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、電子デバイスに関し、より詳しくは、金属の無電解析出を必要とする電子デバイスのメタライゼーション(金属化)に関する。本発明は、集積回路を用いる半導体デバイスの製造等、電子デバイスの製造に用いられる溶液および電子デバイスの製造方法に、予期しない改善をもたらすものである。本発明の実施形態は、無電解析出を行うための酸化物表面の活性化に必要な処理時間を大きく短縮できる。このように処理時間を大きく改善する一方で、本発明の実施形態は、基板に無電解析出される金属の付着力等の望ましい特性は保持することができる。
【0005】
本発明の一つの態様は、金属層の無電解析出用に酸化物表面を活性化する溶液である。本発明の一実施形態において、溶液は、所定量の結合剤を含む。結合剤は、酸化物表面と化学結合を形成可能な少なくとも一つの官能基と、触媒と化学結合を形成可能な少なくとも一つの官能基と、を有する。
【0006】
本発明の別の態様は、電子デバイスの製造方法である。本発明の一実施形態において、製造方法は、酸化物表面を準備する工程と、酸化物表面を溶液にさらして、金属を無電解析出させるために酸化物表面を活性化する工程と、活性化した酸化物表面上に金属層を無電解析出させる工程と、を備える。酸化物表面を活性化する溶液は、所定量の結合剤を含む。結合剤は、酸化物表面と化学結合を形成可能な少なくとも一つの官能基と、触媒と化学結合を形成可能な少なくとも一つの官能基と、を有する。
【0007】
本発明の第三の態様は、電子デバイスである。本発明の一実施形態において、電子デバイスは、酸化物表面を備える誘電酸化物と、無電解析出用の触媒と、誘電酸化物の酸化物表面と化学的に結合し、触媒とも化学的に結合するバインダーと、触媒により無電解析出される金属層と、を備える。
【0008】
本発明は、以下に説明する、または、図示する、詳細な構成や成分の配合にその適用を何ら限定されるものではない。本発明は、他の実施形態でも実現可能であり、さまざまな態様や形態で実行および実施可能である。さらに、当然のことながら、本明細書で用いる表現や用語は、説明を目的とするもので、何ら、本発明を限定するものでない。
【0009】
当業者には自明のことであるが、本発明の開示内容の基礎となる考え方を利用すれば、容易に、本発明の態様を実施可能な他の構成、方法およびシステムを設計可能である。したがって、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で、特許請求の範囲は、等価の構成も含むものと考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態を示す図。 当業者には自明のことであるが、図に示した各構成要素は、説明を容易に、かつ、分かりやすくするためのものであり、必ずしも正確な縮尺で描かれているわけではない。たとえば、本発明の実施形態の理解を助ける目的で、図に示した一部の構成要素の寸法を、他の構成要素の寸法に比べて、誇張している場合もある。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、電子デバイスに関し、より詳しくは、電子デバイスのメタライゼーション(金属化)に関する。本発明は、電子デバイス製造における、たとえば、集積回路を用いる半導体デバイス製造時における、少なくとも一つの問題を克服することを目的とする。
【0012】
以下、本発明の実施例および工程を、集積回路の製造に用いられるシリコンウェハー等の半導体ウェハーの処理を中心に、説明する。以下の説明は、主に、酸化物誘電体構造上にまたは酸化物誘電体構造内に形成される金属層を含むメタライゼーション(金属化)層を用いるシリコン電子デバイスに関するものである。ただし、本発明を他の半導体デバイスや、さまざまな金属層およびシリコン以外の半導体ウェハーの実施形態にも適用可能なことは言うまでもない。
【0013】
本発明の一つの態様は、金属層の無電解析出用に酸化物表面を活性化する溶液である。本明細書において、金属層は、導電性層と定義され、銅等の金属元素、コバルトニッケル合金等の金属合金またはコバルト−タングステン−リン等の金属複合材から形成可能である。本発明の一実施形態において、溶液は、所定量の結合剤を含む。結合剤は、通常、酸化物表面と化学結合を形成可能な少なくとも一つの官能基および触媒と化学結合を形成可能な少なくとも一つの官能基を有する。本発明の好適な実施例において、溶液は、所定量の水溶性溶媒と、所定量の触媒と、所定量の結合剤と、所定量の水と、を含む。
【0014】
好適な実施形態において、酸化物表面を活性化する溶液は、シリコン集積回路技術で利用可能な酸化物表面を活性化するように調整される。本発明の実施例に好適な酸化物の例としては、これらに限定されるものではないが、二酸化ケイ素(SiO2)、炭素ドープ二酸化ケイ素(SiOC)、酸化ケイ素を主体とするlow k(低誘電率)誘電体およびSiOCH、SiON、SiOCN並びにSiOCHN等のケイ素酸化物が挙げられる。本発明の実施例に好適な別の酸化物としては、これらに限定されるものではないが、五酸化タンタル(Ta25)および二酸化チタン(TiO2)が挙げられる。本発明の好適な実施例において、溶液を用いて、ダマシンまたはデュアルダマシン・メタライゼーション層用にパターン形成された酸化物を活性化する。ただし、本発明は、パターン化されていない酸化物の実施形態にも適しており、基本的に、集積回路の製造に通常用いられる任意の種類の誘電酸化物に適している。
【0015】
酸化物表面を活性化する溶液は、さまざまな水溶性溶媒を含有可能である。本発明の具体的な実施例において、溶液が溶媒に溶解される成分に充分な溶解度を提供可能なように、水溶性溶媒の種類や量が選択される。すなわち、本発明の実施例は、有効量の水溶性溶媒を用いる。この場合、一種類の水溶性溶媒のみを用いてもよいし、複数の異なる水溶性溶媒の混合物を用いるようにしてもよい。本発明の一部の実施例に適した水溶性溶媒の例としては、これらに限定されるものではないが、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、アセトニトリル、アルコールまたはこれらの混合物が挙げられる。本発明の実施例に適した他の水溶性溶媒は、本明細書の開示により、当業者には明らかであろう。
【0016】
無電解析出の実施に適した触媒は、数多くある。本発明の好適な実施例は、無電解析出に適した周知の触媒化合物および溶液に溶解される触媒源を用いる。金属の無電解析出用に酸化物表面を活性化する溶液の好適な実施例は、パラジウム化合物、プラチナ化合物、ルテニウム化合物、銅化合物、銀化合物、レニウム化合物またはこれらの混合物等の触媒源を含む。本発明の具体的な実施例において、溶液が無電解析出を実現するために有効な量の触媒を酸化物表面に提供可能なように、水溶性溶媒の種類や量が選択される。
【0017】
さまざまな化学組成を有する結合剤を、本発明の実施例で用いることができる。酸化物表面と化学結合を形成可能な少なくとも一つの官能基、および触媒と化学結合を形成可能な少なくとも一つの官能基には、多くの選択肢がある。本発明の一部の実施例において、酸化物表面と化学結合を形成可能な2つ、3つまたはそれ以上の官能基を有する結合剤を用いるようにしてもよい。同様に、本発明の一部の実施例において、触媒と化学結合を形成可能な2つ、3つまたはそれ以上の官能基を有する結合剤を用いるようにしてもよい。酸化物表面と化学結合を形成可能な複数の異なる種類の官能基を有する結合剤を選択してもよいし、触媒と化学結合を形成可能な複数の異なる種類の官能基を有する結合剤を選択してもよい。また、本発明の実施例は、複数の異なる種類の結合剤の混合物を用いるものでもよい。
【0018】
本発明の好適な実施例において、結合剤は、酸化物表面と化学結合を形成する、モノアルコキシシランやジアルコキシシラン等のアルコキシシランを含む。結合剤は、さらに、これらに限定されるものではないが、触媒と化学結合を形成する、アミン基、イミン基、カルボキシレート基、リン酸基、ホスホン酸基およびエポキシ基等の一つ以上の極性基を含む。本発明の一部の実施例に従う結合剤は、複数の異なる極性基または複数の異なる極性基の混合物を含むものでもよい。本発明の具体的な実施例において、溶液が無電解析出を実現するために有効な量の触媒を酸化物表面に結合可能なように、結合剤の種類および量が選択される。
【0019】
望ましくは、溶液に用いられる水は、半導体デバイスの製造に通常用いられる高純度脱イオン水である。溶液に水を添加することにより、一つ以上の効果が得られる。たとえば、水の存在により、溶液に加えられる成分のうち一つまたは複数の成分の溶解が進む。本発明の一部の実施例において、結合剤と酸化物表面とを含む一つまたは複数の化学反応に水が関係する。一般に、酸化物表面の活性化に効果的な溶液を調整可能なように、溶液に添加される水の量が選択される。本発明の一部の実施例において、水の量は、溶液の全容積の約20%未満である。本発明の他の実施例において、水の量は、溶液の全容積の約10%未満である。
【0020】
本発明の一実施例において、酸化物表面を活性化する溶液は、約0.01グラム/リットルないし1グラム/リットルの範囲の触媒化合物と、約70重量パーセントないし約95重量パーセントの水溶性溶媒と、約0.5重量パーセントないし約10重量パーセントの結合剤と、約1重量パーセントないし約20重量パーセントの範囲の水と、を含む。
【0021】
本発明のより具体的な実施例において、酸化物表面を活性化する溶液は、約0.01グラム/リットルないし1グラム/リットルの範囲のパラジウム化合物を含有する触媒化合物と、約70重量パーセントないし約95重量パーセントのジメチルスルホキシドを含有する水溶性溶媒と、約0.5重量パーセントないし約10重量パーセントのアルコキシアルキルアミンシランを含有する結合剤と、約1重量パーセントないし約20重量パーセントの範囲の水と、を含む。
【0022】
本発明の別の実施例において、溶液は、一般式(R1−O)4-nMXnで表される結合剤を含む。ここで、Mはシリコン、ゲルマニウムまたはスズであり、Xは触媒と化学結合を形成可能な官能基であり、R1−Oは酸化物表面と化学結合を形成可能な官能基であり、Oは酸素であり、nは1、2または3である。本発明の好適な実施例において、Xは、一つ以上の極性基、たとえば、これらに限定されるものではないが、アミン、イミン、エポキシ、ヒドロキシル、カルボキシ、カルボキシレート、リン酸塩、ホスホン酸塩、スルホン酸塩、ボロン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩またはこれらの組み合わせである。望ましくは、R1はアルキル基等の有機基であり、R1−Oはメトキシ、エトキシおよびプロポキシ等のアルコキシ基である。本発明のより好適な実施例において、(R1−O)4-nは、これらに限定されるものではないが、メトキシ、エトキシ、プロポキシおよびこれらの組み合わせ等の一つ以上の基であり、Xnは、これらに限定されるものではないが、アミン、イミン、エポキシ、ヒドロキシル、カルボキシ、カルボキシレート、リン酸塩、ホスホン酸塩およびこれらの組み合わせ等の一つ以上の基である。別の好適な実施例において、R1はアルキル基であり、Mはシリコンであり、Xはアルキルアミンである。
【0023】
本発明の別の態様は、電子デバイスの製造方法である。本発明の一実施形態において、製造方法は、酸化物表面を準備する工程と、酸化物表面を溶液にさらして、金属を無電解析出させるために、酸化物表面を活性化する工程と、活性化した酸化物表面上に金属層を無電解析出させる工程と、を備える。酸化物表面を活性化する溶液は、上述した溶液と基本的に同じ組成で、基本的に同じ特性を有する。一般的に、酸化物表面を活性化する溶液は、上述したように、所定量の結合剤を含む。結合剤は、上述したように、酸化物表面と化学結合を形成可能な少なくとも一つの官能基および触媒と化学結合を形成可能な少なくとも一つの官能基を有する。好適な実施例において、上述したように、酸化物表面を活性化する溶液は、所定量の水溶性溶媒と、所定量の触媒と、所定量の結合剤と、所定量の水と、を含む。
【0024】
本発明の別の実施例に従う電子デバイスの製造方法において、酸化物表面を活性化する溶液は、製造方法の各実施例において、それぞれ、上述した溶液組成のいずれかが用いられるように、複数の異なる溶液組成を有する。溶液組成の詳細に関しては上述したため、本発明の方法の実施例において、説明を繰り返さない。
【0025】
電子デバイスを製造する方法の好適な実施例において、無電解メッキ溶液中に活性化した酸化物表面を入れることにより、活性化した酸化物表面上に金属層を無電解析出させることができる。無電解メッキ溶液は、金属膜、金属合金膜または金属複合材膜を形成可能に調整される。本発明の実施例に適した金属膜の例としては、これらに限定されるものではないが、銅、コバルト、ニッケル、コバルト−タングステン、コバルト−タングステン−リンが挙げられる。本発明の実施例に好適な無電解析出処理に関しては、参照することにより本明細書にその全体が組み込まれる、Kolicsらに付与された米国特許第6,794,288号およびKolicsらに付与された米国特許第6,911,076号に詳述されている。必要に応じて、製造方法が、イオンや錯化剤等の化学種を実質的に含まない液体を用いて、活性化した酸化物表面を洗浄するようにしてもよい。本発明の一部の実施例において、高純度脱イオン水を用いて洗浄するようにしてもよい。
【0026】
本発明に従う電子デバイスを製造する方法の他の実施例において、金属層を無電解析出させる前に、還元剤を含む溶液を用いて、活性化した酸化物表面を洗浄するようにしてもよい。望ましくは、約10℃から約95℃の範囲の温度で、最大約60秒間、還元剤を含む溶液を用いて活性化した酸化物表面を洗浄する。本発明の一部の実施例において、還元剤を含む溶液は、さらに、所定量のpH調整剤、所定量の錯化剤、所定量の界面活性剤またはこれらの組み合わせを含む。本発明の実施例に適した還元剤の例としては、これらに限定されるものではないが、ボラン、ホウ化水素、ヒドラジン、次亜リン酸塩、アルデヒド、アスコルビン酸塩およびこれらの混合物が挙げられる。
【0027】
本発明の別の実施例において、酸化物表面を準備する工程は、これらに限定されるものではないが、SiO2、SiOC、SiOCH、SiON、SiOCN、SiOCHN、Ta25およびTiO2等の酸化物を準備して、約10℃から約95℃の範囲の温度で、約30秒間から約600秒間、酸化物表面を溶液に浸すことにより、活性化する。より好適な実施例において、約50℃から約70℃の範囲の温度で、約60秒間から約180秒間、酸化物表面を溶液に浸すことにより、活性化する。
【0028】
本発明の第三の態様は、電子デバイスである。本発明の一実施例に従う電子デバイス100の一部の断面側面図を示す図1を参照して、説明する。電子デバイス100は、酸化物表面115を備える誘電酸化物110と、無電解析出用の触媒120と、酸化物表面115と化学的に結合し触媒120とも化学的に結合するバインダー130と、触媒120上に無電解析出される金属層140と、を備える。
【0029】
図1は正確な縮尺で描かれているわけではないことに注意が必要である。より詳しく言えば、触媒120の厚みとバインダー130の厚みは、誇張して図示されている。図1に示す電子デバイス100は、隙間を充填する金属として用いられる金属層140を備える。ただし、これは本発明の一部の実施例の場合であり、別の実施例では、金属層140は、未充填層であり、隙間を充填する処理は別に実施される。さらに、図1は、ダマシン・メタライゼーション構造を形成する平坦化表面を示す。
【0030】
望ましくは、バインダー130は、酸化物表面115と結合剤との反応および触媒120と結合剤との反応による化学反応生成物を含む。結合剤は、一般式(R1−O)4-nMXnで表され、Mはシリコン、ゲルマニウムまたはスズであり、Xは触媒120と化学結合を形成可能な官能基であり、R1−Oは酸化物表面115と化学結合を形成可能な官能基であり、Oは酸素であり、nは1、2または3である。誘電酸化物110が、これらに限定されるものではないが、SiO2、SiOC、SiOCH、SiON、SiOCN、SiOCHN、Ta25およびTiO2等の酸化物を含む構成が望ましい。触媒120は、これらに限定されるものではないが、パラジウム、プラチナ、ルテニウム、銅、銀、レニウムまたはこれらの混合物等の一つ以上の金属を含む。
【0031】
本発明の一部の実施例において、金属層140は、これらに限定されるものではないが、銅、コバルト、ニッケル、タングステン、リンおよびこれらの混合物等の一つ以上の元素を含有する。銅メタライゼーションの例では、金属層140は銅、または、拡散障壁が必要な場合には銅の拡散障壁であることが望ましい。
【0032】
本発明の一部の実施例において、バインダー130は、O4-nMXnの一般化学式で表され、ここで、O、M、Xおよびnの定義は上述した通りである。好適な実施例において、バインダー130は、O4-nMXnを含み、ここで、Xは、アミン、イミン、エポキシ、ヒドロキシル、カルボキシ、カルボキシレート、リン酸塩、ホスホン酸塩またはこれらの組み合わせである。別の好適な実施例において、バインダー130に用いられる結合剤は、アルキル基であるR1を含む。本発明の好適な実施例において、Mはシリコンである。
【0033】
本発明の実施例において、バインダー130は、ポリマーネットワーク(高分子網目)を備える。酸化物表面に化学的に結合された隣接する結合剤と横方向の結合を形成可能な結合剤を用いることにより、ポリマーネットワークが形成される。たとえば、3つのアルコキシ基を有するアルコキシアルキルアミンシラン等の結合剤は、酸化物表面115に結合して、酸化ケイ素結合のポリマーネットワークを形成可能である。
【0034】
以上、本明細書において、発明を具体的な実施例を参照して説明してきた。ただし、当業者には自明のことであるが、以下の特許請求の範囲に記載される本発明の要旨を逸脱しない範囲で、さまざまに変形および変更可能である。したがって、本明細書および図面は、本発明を例示するものであり、何ら本発明を限定するものではない。このようなさまざまな変形および変更も、本発明の要旨の範囲内に含まれるものである。
【0035】
以上、本発明の効果や利点および課題の解決方法を、具体的な実施例に関して説明してきた。ただし、効果、利点および課題の解決方法並びにこれらの効果、利点および課題の解決方法を実現する、または、より顕著にするいかなる要素も、以下に示す特許請求の範囲の一部または全部に対して、決定的な、必要な、または不可欠な特徴または要素と解釈するべきではない。
【0036】
本明細書で用いられている用語である「備える(comprises,comprising)」、「含む(includes,including)」、「有する(has,having)」、「少なくとも一つの(at least one of)」またはこれらのさまざまなバリエーションは、非排他的な包含を意味するものである。たとえば、構成要素の一覧を挙げた処理、方法、製品または装置は、必ずしもこれらの構成要素に限定されるものではなく、一覧に明示的に挙げていない他の構成要素や処理、方法、製品または装置に固有のものではない他の構成要素も含まれる。さらに、特にそうでないと明示しない限り、「または(or)」は、包含的な用語であり、排他的な用語ではない。たとえば、「条件AまたはB」は、Aが成立し(または存在し)Bが成立しない(または存在しない)場合にも、Aが成立せず(または存在せず)Bが成立する(または存在する)場合にも、AもBも成立する(または存在する)場合にも、満たされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無電解析出用に酸化物表面を活性化する溶液であって、
所定量の水溶性溶媒と、
所定量の触媒と、
前記酸化物表面と化学結合を形成可能な少なくとも一つの官能基と、前記触媒と化学結合を形成可能な少なくとも一つの官能基と、を有する所定量の結合剤と、
所定量の水と、を含む、溶液。
【請求項2】
請求項1に記載の溶液であって、
前記水溶性溶媒が、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、アセトニトリル、アルコールまたはこれらの混合物である、溶液。
【請求項3】
請求項1に記載の溶液であって、
前記触媒の供給源が、パラジウム化合物、プラチナ化合物、ルテニウム化合物、銅化合物、銀化合物、レニウム化合物またはこれらの混合物である、溶液。
【請求項4】
請求項1に記載の溶液であって、
前記結合剤が、モノアルコキシシランまたはジアルコキシシランと、アミン基、イミン基、カルボキシレート基、リン酸基、ホスホン酸基およびエポキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基と、を含む、溶液。
【請求項5】
請求項1に記載の溶液であって、
前記酸化物が、SiO2、SiOC、SiOCH、SiON、SiOCN、SiOCHN、Ta25およびTiO2の少なくとも一つを含む、溶液。
【請求項6】
請求項1に記載の溶液であって、
前記触媒は、化合物として約0.01グラム/リットルないし1グラム/リットルの範囲の量だけ前記溶液に添加され、前記水溶性溶媒の量は、70重量パーセントないし95重量パーセントの範囲であり、前記結合剤の量は、0.5重量パーセントないし10重量パーセントの範囲であり、前記水の量は、1重量パーセントないし20重量パーセントの範囲である、溶液。
【請求項7】
請求項1に記載の溶液であって、
前記触媒の供給源はパラジウム化合物であって、その量は0.01グラム/リットルないし1グラム/リットルの範囲であり、前記水溶性溶媒はジメチルスルホキシドであって、その量は70重量パーセントないし95重量パーセントの範囲であり、前記結合剤はアルコキシアルキルアミンシランであって、その量は約0.5重量パーセントないし約10重量パーセントの範囲であり、前記水の量は約1重量パーセントないし約20重量パーセントの範囲である、溶液。
【請求項8】
請求項1に記載の溶液であって、
前記結合剤は一般式(R1−O)4-nMXnで表され、
Mはシリコン、ゲルマニウムまたはスズであり、
Xは前記触媒と化学結合を形成可能な官能基であり、
1−Oは前記酸化物表面と化学結合を形成可能な官能基であり、Oは酸素であり、
nは1、2または3である、溶液。
【請求項9】
請求項8に記載の溶液であって、
nが、アミン、イミン、エポキシ、ヒドロキシル、カルボキシ、カルボキシレート、リン酸塩、ホスホン酸塩またはこれらの組み合わせである、溶液。
【請求項10】
請求項8に記載の溶液であって、
nが、スルホン酸塩、ボロン酸塩、炭酸塩、重炭酸塩またはこれらの組み合わせである、溶液。
【請求項11】
請求項8に記載の溶液であって、
1がアルキル基である、溶液。
【請求項12】
請求項8に記載の溶液であって、
(R1−O)4-nが、メトキシ、エトキシ、プロポキシまたはこれらの組み合わせである、溶液。
【請求項13】
請求項8に記載の溶液であって、
(R1−O)4-nが、メトキシ、エトキシ、プロポキシまたはこれらの組み合わせであり、Xが、アミン、イミン、エポキシ、ヒドロキシル、カルボキシ、カルボキシレート、リン酸塩、ホスホン酸塩またはこれらの組み合わせである、溶液。
【請求項14】
請求項8に記載の溶液であって、
1がアルキル基であり、Mがシリコンであり、Xがアルキルアミンである、溶液。
【請求項15】
請求項1に記載の溶液であって、
前記水の量が全容積の約10%未満である、溶液。
【請求項16】
電子デバイスの製造方法であって、
酸化物表面を準備する工程と、
前記酸化物表面を溶液にさらして、金属の無電解析出のために前記酸化物表面を活性化する工程であって、前記酸化物表面を活性化する溶液が、
所定量の水溶性溶媒と、
所定量の触媒と、
前記酸化物表面と化学結合を形成可能な少なくとも一つの官能基と、前記触媒と化学結合を形成可能な少なくとも一つの官能基と、を有する所定量の結合剤と、
所定量の水と、を含む工程と、
前記活性化した酸化物表面上に金属層を無電解析出させる工程と、を備える、方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法であって、
前記水溶性溶媒が、ジメチルスルホキシド、ホルムアミド、アセトニトリル、アルコールまたはこれらの混合物である、方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法であって、
前記結合剤が、モノアルコキシシランまたはジアルコキシシランと、アミン基、イミン基、カルボキシレート基、リン酸基、ホスホン酸基およびエポキシ基からなる群から選択される少なくとも一つの基と、を含む、方法。
【請求項19】
請求項16に記載の方法であって、
前記結合剤は一般式(R1−O)4-nMXnで表され、
Mはシリコン、ゲルマニウムまたはスズであり、
Xは前記触媒と化学結合を形成可能な官能基であり、
1−Oは前記酸化物表面と化学結合を形成可能な官能基であり、Oは酸素であり、
nは1、2または3である、方法。
【請求項20】
請求項19に記載の方法であって、
1がアルキル基であり、Mがシリコンであり、Xがアルキルアミンである、方法。
【請求項21】
請求項16に記載の方法であって、
前記活性化した酸化物表面上に前記金属層を無電解析出させる前記工程が、前記活性化した酸化物表面を無電解メッキ浴に入れて、金属、金属合金または金属複合材料を形成する、方法。
【請求項22】
請求項16に記載の方法であって、
さらに、前記金属層を無電解析出させる前記工程の前に、前記活性化した酸化物表面を還元剤を含む溶液で洗浄する工程を備える、方法。
【請求項23】
請求項16に記載の方法であって、さらに、
前記金属層を無電解析出させる前記工程の前に、還元溶液を用いて、前記活性化した酸化物表面を約10℃から約95℃の範囲の温度で、最大約60秒間洗浄する工程を備え、
前記還元溶液が、所定量の還元剤を含み、さらに、所定量のpH調整剤、所定量の錯化剤、所定量の界面活性剤またはこれらの組み合わせを含む、方法。
【請求項24】
請求項16に記載の方法であって、
前記酸化物表面は、
SiO2、SiOC、SiOCH、SiON、SiOCN、SiOCHN、Ta25およびTiO2からなる群から選択される少なくとも一つを含み、
約10℃から約95℃の範囲の温度で、約30秒間から約600秒間、前記酸化物表面を前記溶液に浸されることにより、活性化する、方法。
【請求項25】
請求項16に記載の方法であって、
約10℃から約95℃の範囲の温度で、約30秒間から約600秒間、前記酸化物表面を前記溶液に浸すことにより、前記酸化物表面を活性化する、方法。
【請求項26】
請求項16に記載の方法であって、
約50℃から約70℃の範囲の温度で、約60秒間から約180秒間、前記酸化物表面を前記溶液に浸すことにより、前記酸化物表面を活性化する、方法。
【請求項27】
請求項16に記載の方法であって、さらに、
前記金属層を無電解析出させる前記工程の前に、前記活性化した酸化物表面を還元剤を含む溶液で洗浄する工程を備え、
前記還元剤が、ボラン、ホウ化水素、ヒドラジン、次亜リン酸塩、アルデヒド、アスコルビン酸塩またはこれらの混合物を含む、方法。
【請求項28】
電子デバイスであって、
酸化物表面を備える誘電酸化物と、
無電解析出のための触媒と、
前記誘電酸化物の酸化物表面と化学的に結合し、前記触媒とも化学的に結合するバインダーと、
前記触媒上に無電解析出される金属層と、を備える、電子デバイス。
【請求項29】
請求項28に記載の電子デバイスであって、
前記バインダーが、前記酸化物表面と結合剤との反応および前記触媒と前記結合剤との反応により生成される化学反応生成物を含み、
前記結合剤は一般式(R1−O)4-nMXnで表され、
Mはシリコン、ゲルマニウムまたはスズであり、
Xは前記触媒と化学結合を形成可能な官能基であり、
1−Oは前記酸化物表面と化学結合を形成可能な官能基であり、Oは酸素であり、
nは1、2または3である、電子デバイス。
【請求項30】
請求項29に記載の電子デバイスであって、
前記酸化物が、SiO2、SiOC、SiOCH、SiON、SiOCN、SiOCHN、Ta25およびTiO2の少なくとも一つを含む、電子デバイス。
【請求項31】
請求項29に記載の電子デバイスであって、
前記触媒が、パラジウム、プラチナ、ルテニウム、銅、銀、レニウムまたはこれらの混合物である、電子デバイス。
【請求項32】
請求項29に記載の電子デバイスであって、
前記金属層が、銅、コバルト、ニッケル、タングステン、リンおよびこれらの混合物の少なくとも一つを含む、電子デバイス。
【請求項33】
請求項29に記載の電子デバイスであって、
前記バインダーがO4-nMXnを含む、電子デバイス。
【請求項34】
請求項29に記載の電子デバイスであって、
前記バインダーがO4-nMXnを含み、
Xが、アミン、イミン、エポキシ、ヒドロキシル、カルボキシ、カルボキシレート、リン酸塩、ホスホン酸塩またはこれらの組み合わせである、電子デバイス。
【請求項35】
請求項29に記載の電子デバイスであって、
1がアルキル基である、電子デバイス。
【請求項36】
請求項29に記載の電子デバイスであって、
前記バインダーがポリマーネットワークを備える、電子デバイス。
【請求項37】
電子デバイスの製造方法であって、
酸化物表面を準備する工程と、
前記酸化物表面を溶液にさらして、金属を無電解析出させるために前記酸化物表面を活性化する工程であって、前記酸化物表面を活性化する溶液が、前記酸化物表面と化学結合を形成可能な少なくとも一つの官能基ならびに触媒と化学結合を形成可能な少なくとも一つの官能基を有する所定量の結合剤を含む工程と、
前記活性化した酸化物表面上に金属層を無電解析出させる工程と、を備える、方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−509344(P2011−509344A)
【公表日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−539924(P2010−539924)
【出願日】平成20年12月20日(2008.12.20)
【国際出願番号】PCT/US2008/087877
【国際公開番号】WO2009/086230
【国際公開日】平成21年7月9日(2009.7.9)
【出願人】(592010081)ラム リサーチ コーポレーション (467)
【氏名又は名称原語表記】LAM RESEARCH CORPORATION
【Fターム(参考)】