説明

誘電体磁器組成物および電子部品

【課題】比誘電率および交流破壊電圧が高く、誘電損失が低く、温度特性および焼結性が良好な誘電体磁器組成物を提供する。
【解決手段】(Ba1−x−y,Ca,Sr(Ti1−z−a,Zr,Sn)Oの組成式で表わされる主成分と、第1副成分と、第2副成分と、を有する誘電体磁器組成物であって、0.03≦x≦0.30、0.00<y≦0.05、0.02<z≦0.2、0≦a≦0.2、0.04≦z+a≦0.3、0.97≦m≦1.03、第1副成分は、酸化亜鉛であり、第2副成分は、La、Pr、Pm、Nd、Sm、Eu、GdおよびYから選ばれる少なくとも1種の酸化物であり、第1副成分が主成分100重量%に対して0.45〜10重量%含有されており、第2副成分は主成分100重量%に対して酸化物換算で0.0重量%より多く、0.3重量%以下含有されている誘電体磁器組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体磁器組成物および電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、急速に進む電気機器の高性能化に伴い、電気回路の小型化、複雑化もまた急速に進んでいる。そのため、電子部品にもより一層の小型化、高性能化が求められている。すなわち、良好な温度特性を維持しつつ、小型化しても静電容量を維持するために比誘電率が高く、さらに高電圧下で使用するために交流破壊電圧が高い誘電体磁器組成物および電子部品が求められている。
【0003】
従来、磁器コンデンサ、積層コンデンサ、高周波用コンデンサ、高電圧用コンデンサ等として広く利用されている高誘電率誘電体磁器組成物として、特許文献1〜4のようにBaTiO−BaZrO−CaTiO−SrTiO系の磁器組成物を主成分としたものが知られている。
【0004】
しかし、このような従来のBaTiO−BaZrO−CaTiO−SrTiO系の磁器組成物は、強誘電性であるため、高い静電容量、低い誘電損失を維持したまま、高い交流破壊電圧を確保することが困難であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開1994−302219号公報
【特許文献2】特開2003−104774号公報
【特許文献3】特開2003−109430号公報
【特許文献4】特開2004−238251号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、このような実状に鑑みてなされ、その目的は、比誘電率および交流破壊電圧が高く、誘電損失が低く、温度特性および焼結性が良好な誘電体磁器組成物を提供することを目的とする。また、本発明は、このような誘電体磁器組成物により構成される誘電体層を有する電子部品を提供することも目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記目的を達成するために、鋭意検討を行った結果、誘電体磁器組成物の組成を特定の成分とし、これらの比率を所定範囲とすることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0008】
すなわち、上記課題を解決する本発明に係る誘電体磁器組成物は、(Ba1−x−y,Ca,Sr(Ti1−z−a,Zr,Sn)Oの組成式で表わされる主成分と、第1副成分と、第2副成分と、を有する誘電体磁器組成物であって、
前記組成式中のxが0.03≦x≦0.30であり、
前記組成式中のyが0.00<y≦0.05であり、
前記組成式中のzが0.02<z≦0.2であり、
前記組成式中のaが0≦a≦0.2であり、
前記組成式中のz+aが0.04≦z+a≦0.3であり、
前記組成式中のmが0.97≦m≦1.03であり、
前記第1副成分は、酸化亜鉛であり、
前記第2副成分は、La、Pr、Pm、Nd、Sm、Eu、GdおよびYから選ばれる少なくとも1種の酸化物であり、
前記第1副成分が前記主成分100重量%に対して0.45〜10重量%含有されており、
前記第2副成分は前記主成分100重量%に対して酸化物換算で0.0重量%より多く、0.3重量%以下含有されている誘電体磁器組成物である。
【0009】
本発明によれば、比誘電率および交流破壊電圧が高く、誘電損失が低く、温度特性および焼結性が良好な誘電体磁器組成物を提供することができる。
【0010】
本発明の実施形態に係る電子部品は、前記誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を有する。
【0011】
本発明の実施形態に係る電子部品としては、特に限定されないが、単板型セラミックコンデンサ、貫通型コンデンサ、積層セラミックコンデンサ、圧電素子、チップインダクタ、チップバリスタ、チップサーミスタ、チップ抵抗、その他の表面実装(SMD)チップ型電子部品が例示される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1(A)は本発明の一実施形態に係るセラミックコンデンサの正面図、図1(B)は本発明の一実施形態に係るセラミックコンデンサの側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態を、図面に示す実施形態に基づき説明する。
【0014】
セラミックコンデンサ2
図1(A)に示すように、本発明の実施形態に係るセラミックコンデンサ2は、誘電体層10と、その対向表面に形成された一対の端子電極12,14と、この端子電極12,14に、それぞれ接続されたリード端子6,8とを有する構成となっており、これらは保護樹脂4に覆われている。セラミックコンデンサ2の形状は、目的や用途に応じて適宜決定すればよいが、誘電体層10が円板形状となっている円板型のコンデンサであることが好ましい。また、そのサイズは、目的や用途に応じて適宜決定すればよいが、通常、直径が3〜20mm程度、好ましくは3〜15mm程度である。
【0015】
誘電体層10の厚みは、特に限定されず、用途等に応じて適宜決定すれば良いが、好ましくは0.3〜2mmである。誘電体層10の厚みを、このような範囲とすることにより、中高圧用途に好適に用いることができる。
【0016】
端子電極12,14は、導電材で構成される。端子電極12,14に用いられる導電材としては、たとえば、Cu、Cu合金、Ag、Ag合金、In−Ga合金等が挙げられる。
【0017】
誘電体層10
前記セラミックコンデンサ2の誘電体層10は、本発明の実施形態に係る誘電体磁器組成物により構成される。
【0018】
本発明の実施形態に係る誘電体磁器組成物は、(Ba1−x−y,Ca,Sr(Ti1−z−a,Zr,Sn)Oの組成式で表わされる主成分と、第1副成分と、第2副成分と、を有する誘電体磁器組成物である。
【0019】
前記組成式中のxは、Caの比率を表し、その範囲は0.03≦x≦0.30である。Caがこの範囲で含有されることにより、比誘電率、交流破壊電圧および焼結性が向上し、温度特性が良好になる傾向となる。このような観点から、xは、好ましくは0.08≦x≦0.16である。
【0020】
前記組成式中のyは、Srの比率を表し、その範囲は0.00<y≦0.05である。Srがこの範囲で含有されることにより、比誘電率が向上し、低温側と高温側の両方の温度特性が良好になる傾向となる。このような観点から、yは好ましくは0.006≦y≦0.02である。
【0021】
前記組成式中のzは、Zrの比率を表し、その範囲は0.02<z≦0.2である。Zrがこの範囲で含有されることにより、比誘電率および交流破壊電圧が向上し、誘電損失が低下し、低温側と高温側の両方の温度特性が良好になる傾向となる。このような観点から、zは好ましくは0.06≦z≦0.15である。
【0022】
前記組成式中のaは、Snの比率を表し、その範囲は0≦a≦0.2である。Snがこの範囲で含有されることにより、比誘電率および交流破壊電圧が向上し、温度特性が良好になる傾向となる。このような観点から、aは好ましくは0≦a≦0.15である。
【0023】
前記組成式中のz+aは、ZrとSnの合計比率を表し、その範囲は0.04≦z+a≦0.3である。Snがこの範囲で含有されることにより、比誘電率および交流破壊電圧が向上し、誘電損失が低下し、温度特性が良好になる傾向となる。このような観点から、z+aは好ましくは0.06≦z+a≦0.2である。
【0024】
前記組成式中のmはAサイトの成分であるBa、Ca、Srと、Bサイト成分であるTi、Zr、Snのモル比を表わし、0.97≦m≦1.03である。mをこの範囲とすることにより、比誘電率、交流破壊電圧および焼結性が向上する傾向となる。このような観点から、mは好ましくは0.97≦m<1.00である。
【0025】
前記第1副成分は、酸化亜鉛である。本発明の実施形態に係る誘電体磁器組成物は、前記第1副成分が前記主成分100重量%に対して0.45〜10重量%含有されている。第1副成分の含有量をこの範囲とすることにより、比誘電率、交流破壊電圧、焼結性が向上し、温度特性が良好になる傾向となる。このような観点から第1副成分の含有量は好ましくは0.8〜6重量%である。
【0026】
前記第2副成分は、La、Pr、Pm、Nd、Sm、Eu、GdおよびYから選ばれる少なくとも1種の酸化物であり、好ましくはLa、Pm、Nd、Sm、GdおよびYから選ばれる少なくとも1種の酸化物である。本発明の実施形態に係る誘電体磁器組成物は、第2副成分が前記主成分100重量%に対して0.0重量%より多く、0.3重量%以下含有されている。第2副成分の含有量をこの範囲にすることで、交流破壊電圧が向上し、温度特性が良好になる傾向となる。また、本発明の実施形態に係る誘電体磁器組成物は、所定の組成および量の主成分を有し、所定の量の第1副成分を有することにより、第2副成分の含有量を比較的少なくしても、交流破壊電圧を向上させ、温度特性を良好にすることができる。このような観点から、第2副成分の含有量は好ましくは0.01重量%以上0.09重量%以下である。
【0027】
セラミックコンデンサ2の製造方法
次に、セラミックコンデンサ2の製造方法について説明する。
まず、焼成後に図1に示す誘電体層10を形成することとなる誘電体磁器組成物粉末を製造する。
【0028】
主成分の原料および各副成分の原料を準備する。主成分の原料としては、Ba、Ca、Sr、Ti、Zr、Snの各酸化物および/または焼成により酸化物となる原料や、これらの複合酸化物などが挙げられ、たとえば、炭酸バリウム(BaCO)、炭酸カルシウム(CaCO)、炭酸ストロンチウム(SrCO)、酸化チタン(TiO)、酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化スズ(SnO)などを用いることができる。この他、たとえば水酸化物など、焼成後に酸化物やチタン化合物となる種々の化合物を用いることも可能である。その場合、金属元素の元素数が合うように、含有量を適宜変更すればよい。
【0029】
また、主成分の原料は、固相法により製造してもよいし、水熱合成法や蓚酸塩法などの液相法により製造してもよいが、製造コストの面から、固相法により製造することが好ましい。
【0030】
第1副成分および第2副成分の原料としては、特に限定されず、焼成により上記した酸化物となる各種化合物、たとえば炭酸塩、硝酸塩、水酸化物、有機金属化合物などから適宜選択して用いることができる。
【0031】
本発明の実施形態に係る誘電体磁器組成物の製造方法としては、まず主成分の原料または、主成分の原料と各副成分の原料とを配合し、ジルコニアボールなどによるボールミルなどを用いて湿式混合する。第1副成分をこの時点で配合する場合には、上記した誘電体磁器組成物の組成になるように第1副成分を配合してもよいし、一部のみ配合して、仮焼き後に残りの第1副成分を添加してもよい。
【0032】
得られた混合物を、造粒し、成形して、得られた成形物を、空気雰囲気中にて仮焼きすることにより、仮焼き粉を得ることができる。仮焼き条件としては、たとえば、仮焼き温度を、好ましくは1000〜1300℃、より好ましくは1150〜1250℃、仮焼き時間を、好ましくは0.5〜4時間とすれば良い。また、主成分の原料と、副成分の原料と、を別々に仮焼した後、混合して誘電体磁器組成物粉末としても良い。
【0033】
次いで、得られた仮焼き粉を粗粉砕する。第1副成分を一部のみ配合した場合には、ここで、仮焼き前に添加した第1副成分の原料と合わせて上記した誘電体磁器組成物の組成になるように残りの第1副成分を添加する。
【0034】
仮焼き粉または仮焼き粉と副成分の原料を、ボールミルなどにより湿式粉砕して、さらに混合し、乾燥して誘電体磁器組成物粉末とする。上記のように、誘電体磁器組成物粉末を固相法により製造することで、所望の特性を実現しながら、製造コストの低減を図ることができる。
【0035】
次いで、得られた誘電体磁器組成物粉末にバインダを適量添加し、造粒し、得られた造粒物を、所定の大きさを有する円板状に圧縮成形することにより、グリーン成形体とする。そして、得られたグリーン成形体を、焼成することにより、誘電体磁器組成物の焼結体を得る。なお、焼成の条件としては、特に限定されないが、保持温度が、好ましくは1200〜1400℃、より好ましくは1280〜1360℃であり、焼成雰囲気を空気中とすることが好ましい。
【0036】
得られた誘電体磁器組成物の焼結体の主表面に、端子電極を印刷し、必要に応じて焼き付けすることにより、端子電極12,14を形成する。その後、端子電極12,14に、ハンダ付等により、リード端子6,8を接合し、最後に、素子本体を保護樹脂4で覆うことにより、図1(A)、図1(B)に示すような単板型セラミックコンデンサを得る。
【0037】
このようにして製造された本発明のセラミックコンデンサは、リード端子6,8を介してプリント基板上などに実装され、各種電子機器等に使用される。
【0038】
以上、本発明の実施形態について説明してきたが、本発明はこうした実施形態に何等限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々異なる態様で実施し得ることは勿論である。
【0039】
上述した実施形態では、本発明に係る電子部品として誘電体層が単層である単板型セラミックコンデンサを例示したが、本発明に係る電子部品としては、単板型セラミックコンデンサに限定されず、上記した誘電体磁器組成物を含む誘電体ペーストおよび電極ペーストを用いた通常の印刷法やシート法により作製される積層型セラミックコンデンサであっても良いし、貫通型コンデンサの誘電体層を上記した誘電体磁器組成物を用いて作製してもよい。
【実施例】
【0040】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0041】
試料1〜58
主成分の原料として、BaCO、CaCO、SrCO、TiO、ZrOおよびSnOを、それぞれ準備した。また、第1副成分の原料としてZnO、第2副成分の原料として、La、Pr11 、Pm、Nd、Sm、Eu、Gd、Yをそれぞれ準備した。そして、準備したこれらの原料を、表1および表2の試料1〜58に示す組成となるように、それぞれ秤量し、この原料配合物をボールミルで湿式混合撹拌を3時間行い、脱水乾燥後、1170〜1210℃で仮焼成し、化学反応を行わせた。
【0042】
次いで、これを粗粉砕した後,再びポットミルで0.5〜2μm程度に微粉砕し,脱水乾燥した後,これに有機結合剤としてポリビニルアルコール(PVA)を添加し,造粒整粒を行い,顆粒粉末とした。この顆粒粉末を300MPaの圧力で成形し直径16.5mm,厚さ1.15mmの円板状の成形物とした。
【0043】
得られた成形体を、空気中で、1350℃前後で本焼成し,磁器素体を得た。このようにして得られた磁器素体の両面に銀(Ag)ペーストで焼付け電極を形成し、これにリード線を半田付けして磁器コンデンサを得た。このようにして得られた試料の比誘電率、誘電損失、交流破壊電圧、温度特性、焼結性を測定した結果を表3に示す。
【0044】
(比誘電率(ε))
比誘電率εは、コンデンサ試料に対し、基準温度20℃において、デジタルLCRメータ(アジレントテクノロジー社製4274A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1.0Vrmsの条件下で測定された静電容量から算出した(単位なし)。比誘電率は高いほうが好ましく、本実施例では、8000以上を良好とした。
【0045】
(誘電損失(tanδ))
誘電損失(tanδ)は、コンデンサ試料に対し、基準温度20℃において、デジタルLCRメータ(アジレントテクノロジー社製4274A)にて、周波数1kHz,入力信号レベル(測定電圧)1.0Vrmsの条件下で測定した。誘電損失は低いほうが好ましく、本実施例では1.5%以下を良好とした。
【0046】
(交流破壊電圧(AC−Eb))
交流破壊電圧(AC−Eb)は、コンデンサの試料に対し、コンデンサの両端に交流電界を100V/sで徐々に印加し、100mAのもれ電流が流れた時点での電圧を測定し、単位厚み当たりの交流破壊電圧を求めた。交流破壊電圧は高いほうが好ましく、本実施例では、4.5kV/mm以上を良好とした。
【0047】
(温度特性(TC))
コンデンサ試料に対し、85℃において、デジタルLCRメータ(YHP社製4284A)にて、周波数1kHz、入力信号レベル(測定電圧)1Vrmsの条件で静電容量を測定し、基準温度20℃における静電容量に対する85℃での静電容量の変化率(ΔC/C20)(単位は%)を算出した。本実施例ではΔC/C20は、Z5U特性を満たす+20%〜−56%を好ましい範囲とした。
【0048】
(焼結性)
得られた焼結体について、焼成後の焼結体の寸法および重量から、焼結体密度を算出し、その焼結体密度が5.5g/cm以上のものを○、5.5g/cm未満の物を×とした。ここで、基準を5.5g/cm未満としたのは、5.5g/cm未満だと素地の強度が著しく低下してしまうためである。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
試料1〜7より、組成式中のmが0.97≦m≦1.03の場合(試料2〜6)は、mが0.96の場合(試料1)に比べ、比誘電率が高く、交流破壊電圧が高くなることが確認できた。また、組成式中のmが0.97≦m≦1.03の場合(試料2〜6)は、mが1.04の場合(試料7)に比べ、焼結性が良好になることが確認できた。なお、試料7では、焼結性が低いため、比誘電率、誘電損失、交流破壊電圧および温度特性を測定できなかった。
【0054】
試料8〜13より、組成式中のxが0.03≦x≦0.30の場合(試料9〜12)には、xが0の場合(試料8)に比べ、焼結性が良好になることが確認できた。なお、試料8では、焼結性が低いため、比誘電率、誘電損失、交流破壊電圧および温度特性を測定できなかった。また、組成式中のxが0.03≦x≦0.30の場合(試料8〜13)には、xが0.4の場合(試料13)に比べ、比誘電率が高くなることが確認できた。
【0055】
試料14〜18より、組成式中のyが0.00<y≦0.05の場合(試料15〜17)は、yが0の場合(試料14)に比べ、比誘電率が高くなることが確認できた。また、組成式中のyが0.00<y≦0.05の場合(試料15〜17)は、yが0.06の場合(試料18)に比べ、比誘電率が高くなり、温度特性が良好になることが確認できた。
【0056】
試料19〜26より、組成式中のzが0.02<z≦0.2の場合(試料20〜25)は、zが0.02の場合(試料19)に比べ、比誘電率が高くなり、誘電損失が低くなり、交流破壊電圧が高くなることが確認できた。また、組成式中のzが0.02<z≦0.2の場合(試料20〜25)は、zが0.25の場合(試料26)に比べ、比誘電率が高くなり、温度特性が良好になることが確認できた。
【0057】
試料20〜25、27〜32より、組成式中のaが0≦a≦0.2の場合(試料20〜25、27〜31)は、aが0.25の場合(試料32)に比べ、比誘電率が高くなり、温度特性が良好になることが確認できた。
【0058】
試料19、33〜37より、組成式中のz+aが0.04≦z+a≦0.3の場合(試料33〜36)は、組成式中のz+aが0.02の場合(試料19)に比べ、比誘電率が高く、誘電損失が低く、交流破壊電圧が高くなることが確認できた。また、組成式中のz+aが0.04≦z+a≦0.3の場合(試料33〜36)は、組成式中のz+aが0.40の場合(試料37)に比べ、比誘電率が高く、温度特性が良好になることが確認できた。
【0059】
試料38〜44より、酸化亜鉛(第1副成分)の含有量が主成分100重量%に対して0.45〜10重量%の場合(試料39〜43)は、酸化亜鉛の含有量が0.3重量%の場合(試料38)に比べ、焼結性が良好になることが確認できた。なお、試料38は焼結性が低いため、比誘電率、誘電損失、交流破壊電圧および温度特性の測定ができなかった。また、酸化亜鉛(第1副成分)の含有量が主成分100重量%に対して0.45〜10重量%の場合(試料39〜43)は、酸化亜鉛の含有量が15重量%の場合に比べ、比誘電率が高くなることが確認できた。
【0060】
試料4、45〜58より、第2副成分としてLa、Pr11、Pm、Nd、Sm、Eu、GdおよびYから選ばれる少なくとも1種からなる第2副成分が前記主成分100重量%に対して酸化物換算で0.0重量%より多く、0.3重量%以下含有されている場合(試料4、45〜51、53〜57)は、前記第2副成分が含まれない場合(試料52)に比べて交流破壊電圧が高くなることが確認できた。また、前記第2副成分が前記主成分100重量%に対して酸化物換算で0.0重量%より多く、0.3重量%以下含有されている場合(試料4、45〜51、53〜57)は、前記第2副成分が0.4重量%含まれる場合(試料58)に比べて比誘電率が高くなり、温度特性が良好になることが確認できた。
【符号の説明】
【0061】
2… 単板型セラミックコンデンサ
4… 保護樹脂
6,8… リード端子
10… 誘電体層
12,14… 端子電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(Ba1−x−y,Ca,Sr(Ti1−z−a,Zr,Sn)Oの組成式で表わされる主成分と、第1副成分と、第2副成分と、を有する誘電体磁器組成物であって、
前記組成式中のxが0.03≦x≦0.30であり、
前記組成式中のyが0.00<y≦0.05であり、
前記組成式中のzが0.02<z≦0.2であり、
前記組成式中のaが0≦a≦0.2であり、
前記組成式中のz+aが0.04≦z+a≦0.3であり、
前記組成式中のmが0.97≦m≦1.03であり、
前記第1副成分は、酸化亜鉛であり、
前記第2副成分は、La、Pr、Pm、Nd、Sm、Eu、GdおよびYから選ばれる少なくとも1種の酸化物であり、
前記第1副成分が前記主成分100重量%に対して0.45〜10重量%含有されており、
前記第2副成分は前記主成分100重量%に対して酸化物換算で0.0重量%より多く、0.3重量%以下含有されている誘電体磁器組成物。
【請求項2】
請求項1に記載の誘電体磁器組成物で構成してある誘電体層を有する電子部品。


【図1】
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【公開番号】特開2012−140258(P2012−140258A)
【公開日】平成24年7月26日(2012.7.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−292562(P2010−292562)
【出願日】平成22年12月28日(2010.12.28)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】