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誘電体粒子を含む電界増強構造とその電界増強構造を含む装置及びその使用方法
説明

誘電体粒子を含む電界増強構造とその電界増強構造を含む装置及びその使用方法

本発明の一態様では、電界増強構造物(100)が開示される。電界増強構造物(100)は、基板(104)と、制御された距離(S)だけ互いに離間された少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子(102,103)を有する規則的な誘電体粒子配列を有する。制御された距離(S)は、共振モードが、励起電磁放射に応じて少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子(102,103)内のそれぞれに共振モードが励起されたときに、各共振モードが相互作用して少なくとも隣り合った誘電体粒子(102,103)間の電界が増強されるように選択される。本発明の他の態様は、前述の電界増強構造物を利用する電界増強装置(1000)と、隣り合った誘電体粒子間の電界を増強する方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、一般に、電界増強構造物に関する。より詳細には、本発明の実施形態は、隣り合った誘電体粒子間の入射電界を増強するための規則的な誘電体粒子構成を含む電界増強構造物に関する。
【背景技術】
【0002】
金属粒子周囲の電界の増強は、現在の科学技術で関心の高い話題である。例えば、表面増強ラマン分光法(「SERS」)は、特別に作成された粗い金属表面又は金属粒子近くの増強電界を利用して検体からのラマン信号を増大させる周知の分光法である。SERSにおいて、検体は、活性化された金属表面又は構造物に吸着されるか又はその近くに配置される。検体並びに金属表面又は粒子に特定の周波数の光を照射すると、金属表面又は粒子の表面プラズモンが励起される。表面プラズモン周波数は、表面又は粒子の形状にあまり依存せず、主に金属の組成の関数である。
【0003】
SERSの際、検体は、表面プラズモンの強い局所的電界を受け、検体固有のラマン光子が検体から散乱する。増強電界は、金属表面又は粒子なしにラマン分光を行ったときよりラマン信号が比較的多い1つの重要な要因と考えられる。例えば、金属表面からの増強電界は、ラマン散乱強度を103〜106倍に増強することがある。
【0004】
最近、ラマン分光法は、電界を増強するために、単純な粗い金属表面とは対照的に、ナノメートルスケールのニードル、アイランド、ワイヤ等のランダムに配向された金属ナノ粒子を使用して実行されてきた。そのような金属表面に吸着した分子からのラマン散乱光子の強度は、1016倍にも高められることがある。このレベルの感度では、ラマン分光法は、これまで単一分子を検出するために使用されてきており、一般にナノ増強ラマン分光法(「NERS」)と呼ばれる。
【0005】
SERSとNERSに関する上記の説明の考察から分かるように、金属粒子の周囲の電界の増強はきわめて有用なものである。SERSとNERSの他に、センサ、ラマンイメージングシステム、ナノアンテナ、他の多くの用途等の他の用途で、電界の増強を使用することができる。特定の用途に限らず、金属粒子又は表面を使用する電界増強には幾つかの制限がある。光を局所的プラズモン又は表面プラズモンに結合することができる周波数は、表面すなわち粒子形状にあまり依存せず、主に金属の組成の関数である。従って、金属表面又は金属粒子のサイズ又は形状の変化は、光を表面プラズモンに結合することができる周波数にほとんど影響がない。従って、光を表面プラズモンに結合することができる周波数は、本質的に、金属表面又は粒子の組成によって決定され、これにより、多くの用途においてその有用性が制限される。
【0006】
拡張性がないことの他に、多くのタイプの金属ナノ粒子は有毒であることが分かっている。金属ナノ粒子の毒性は、電界増強構造物の安全な製造を困難にする可能性があり、また特定の生医学用途での金属ナノ粒子を含む電界増強構造物の適用を制限することがある。更に、金属粒子を有する電界増強構造物の製造は、一般に、金属ナノ粒子の自己集合分布に依存する。従って、金属ナノ粒子を正確に離間させたり整列させたりすることが困難なことがある。
【0007】
従って、電界増強構造物の研究者及び開発者は、センサ、ラマン分光システム、及び他の多くの用途等の種々様々の用途において使用される拡張性を有し且つ有毒でない電界増強構造物の必要性を認識することができる。
【発明の概要】
【0008】
本発明の様々な態様は、隣り合った誘電体粒子間の入射電界を増強するための電界増強構造物、電界増強装置、及び隣り合った誘電体粒子間の電界を増強する方法を対象とする。本発明の一態様では、電界増強構造物が開示される。電界増強構造物は、基板と、制御距離だけ互いに離間された少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子を有する規則的な誘電体粒子配列とを有する。制御距離は、励起電磁放射に応じて少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子のぞれぞれに共振モードが励起されたときに、各共振モードが互いに相互作用して、少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子間の電界が増強されるように選択される。
【0009】
本発明の別の態様では、電界増強装置が開示される。電界増強装置は、励起電磁放射を出力するように動作可能な励起光源を有する。電界増強装置は、更に、電界増強構造物を有する。電界増強構造物は、制御された距離だけ互いに離間された少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子を有する規則的な誘電体粒子配列を有する。制御された距離は、共振モードが、励起電磁放射に応じて少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子のそれぞれに励起されたときに、各共振モードが互いに相互作用して、少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子間の電界が増強されるように選択される。
【0010】
本発明の更に別の態様では、少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子間の電界を増強する方法が開示される。この方法は、少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子のそれぞれに共振モードを励起するように選択された周波数を有する励起電磁放射を少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子に照射するステップを含む。この方法は、更に、少なくとも2つの誘電体粒子を、各共振モードが互いに相互作用して少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子間に増強電界が生じるように十分に近くに位置決めするステップを含む。
【0011】
図面は、図面に示された様々な図又は実施形態において類似の参照番号が類似の要素又は特徴を指す本発明の様々な実施形態を示す。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による電界増強構造物の概略上面図である。
【図2】図1に示した電界増強構造物の概略等角図である。
【図3】図1と図2に示された各誘電体粒子内で励起される幾つかの共振モードを示すグラフである。
【図4】図1と図2に示された各誘電体粒子内に閉じ込められ伝搬するウィスパリングギャラリーモードを示す概略図である。
【図5】図1と図2に示した隣り合った誘電体粒子間の間隔の関数として電界増強を示すグラフである。
【図6】本発明の様々な実施形態により図1と図2に示した電界増強構造物の誘電体粒子内で共振モードを励起するための様々な技法を示す概略等角図である。
【図7】本発明の様々な実施形態により図1と図2に示した電界増強構造物の誘電体粒子内で共振モードを励起するための様々な技法を示す概略等角図である。
【図8】本発明の別の実施形態による電界増強構造物の概略上面図である。
【図9】本発明の更に別の実施形態による誘電体粒子の二次元規則配列を含む電界増強構造物の概略上面図である。
【図10】本発明の一実施形態による開示された電界増強構造物のいずれかを使用するラマン分光システムの機能ブロック図である。
【図11】本発明の例1による電界増強構造物の計算電界強度のグレースケール強度コンタープロットである。
【図12】本発明の例2による電界増強構造物の計算電界強度のグレースケール強度コンタープロットである。
【図13】本発明の例3による電界増強構造物の計算電界強度のグレースケール強度コンタープロットである。
【図14】本発明の例4による電界増強構造物の計算電界強度のグレースケール強度コンタープロットである。
【図15】本発明の例5による電界増強構造物の計算電界強度のグレースケール強度コンタープロットである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の様々な実施形態は、電界増強構造物、電界増強装置、及び隣り合った誘電体粒子間の電界を増強する方法を対象とする。図1と図2は、本発明の一実施形態による電界増強構造物100を示す。電界増強構造物100は、基板104に取り付けられた少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子102及び103を有する。誘電体粒子102及び103はそれぞれ、半径R、厚さT、対応する外周面105及び106を有する円盤状でよい。例えば、誘電体粒子102及び103それぞれの半径Rと厚さTは、それぞれ約50nm〜約3000nmと約50nm〜約300nmである。誘電体粒子102及び103は、X軸に沿って分散され、それらの間に中間増強領域107を画定するように制御された間隔Sで互いに離間されている。中間増強領域107は、隣り合った誘電体粒子102及び103の最も近い部分間の間隙である。間隔Sは、例えば、零より大きく約50nmまでの範囲である。
【0014】
誘電体粒子102及び103は、周囲の媒体の屈折率より比較的高い屈折率(n1)を有する非金属材料から作成されてもよい。従って、屈折率n1は、基板104と周囲空気の屈折率n2より大きい。例えば、誘電体粒子102及び103は、シリコン(425nmでn=5.009)、ゲルマニウム(605nmでn=5.9)、ガリウム砒素(430nmでn=5.107)、別の半導体材料、二酸化チタン(318nmでn=5.38)、又はマイクロ加工技術若しくはナノ加工技術を使用して処理することができる別の適切な相対的に高い屈折率の材料から作成されてもよい。基板104は、例えば、シリカからなるガラス基板や、別の適切な相対的に低い指数の材料でよい。誘電体粒子102及び103は、例えば、基板104上に物理又は化学蒸着法を使用して誘電体層を付着させ、その後で付着された誘電体層から誘電体粒子102及び103をフォトリソグラフィにより画定することによる幾つかの異なる周知のマイクロ加工技術とナノ加工技術を使用して基板104上に形成される。
【0015】
図2で最もよく分かるように、誘電体粒子102及び103は、低屈折率基板104と周囲空気によって取り囲まれる。従って、電界偏波方向や周波数等の光源(図示せず)からの励起電磁放射(「EMR」)特性を適切に選択することによって、誘電体粒子102及び103内で共振モードが励起することができる。図3は、適切に選択された周波数を有する励起EMRを使用して、誘電体粒子102及び103に照射することによって誘電体粒子102及び103のそれぞれで励起可能な幾つかの異なる共振モードω1−ω12を示すグラフ300である。例えば、誘電体粒子102にほぼω1の周波数を有する励起EMRを照射することにより、入射EMRが最低次共振モードの誘電体粒子102に結合される。共振周波数は、X、Y又はZ電界成分のうちの1つと関連付けられてもよい。例えば、図3に示した共振周波数ω1−ω12は、EMRの電界のx成分が各誘電体粒子102及び103内の共振モードを励起する周波数でよい。従って、例えば周波数ω1を有する電界のx成分を有する入射EMRは、誘電体粒子102及び103のそれぞれで最低次の共振モードを励起することができる。電界の他の成分は、誘電体粒子102及び103の対称性により、共振モードを同じ周波数で励起してもよく異なる周波数で励起してもよい。前述の代表的な寸法と屈折率を有する誘電体粒子の場合、共振周波数は、一般に、テラヘルツ範囲である。
【0016】
グラフ300が、単に例示のためであり、グラフと共振周波数の形状が、誘電体粒子102及び103の形状と屈折率に極めて依存することに注意されたい。更に、誘電体粒子のサイズ、形状及び/又は屈折率を変化させると、共振モードの周波数スペクトルが大きく変化することがある。各誘電体粒子102及び103の周波数スペクトルは拡張性があり、粒子サイズを例えば10分の1に小さくすると、共振モードの周波数が対応する10倍高くなる。従って、誘電体粒子102及び103のサイズを変化させることによって共振周波数を制御可能に変更することができる。更に、誘電体粒子102及び103と、基板104及び周囲媒体との間の屈折率の差を変化させると、周波数スペクトルも変化する。誘電体粒子102及び103の屈折率と周囲媒体(即ち、基板104と空気)の屈折率の差が大きいほど、共振モードを維持しながら誘電体粒子102及び103を作成できるサイズが小さくなる。
【0017】
誘電体粒子102及び103のそれぞれで励起される場合があるタイプの共振モードは、ウィスパリングギャラリーモードとしても知られる。ウィスパリングギャラリーモードは、所定の屈折率と形状の誘電体粒子では、特定の共振周波数で生じる。図4は、各誘電体粒子102及び103内のウィスパリングギャラリーモードの伝搬を概略的に示す。図4に示したように、共振周波数のうちの1つで、EMRは、特定の周波数で誘電体粒子102の1つのモードを励起し、方向C1に周囲方向に伝搬する光線402として概略的に示された誘電体粒子102の表面105での全反射を受ける。EMRは、また、誘電体粒子103の1つのモードを励起し、方向C2に周囲方向に伝搬する光線403として概略的に示された誘電体粒子103の表面106での全屈折を受ける。EMRは、粒子のサイズとモードのQ因子に依存する期間、誘電体粒子102及び103内に閉じ込められる。それぞれの誘電体粒子102及び103内の入射EMRの閉じ込めの程度を定量的に示す線質計数(“Q−因子”)は、約106から約1010でよい。Q因子は、閉じ込められたEMRが、誘電体粒子102及び103内で周囲方向に伝搬する回数を表す。閉じ込められたEMRは、誘電体粒子102及び103の対応する表面105及び106の近くで集束され、EMRの電界の強度は、外周面105及び106から中間増強領域107内に半径外方の距離と共に減衰し消滅する。
【0018】
隣り合った誘電体粒子102と103の間隔Sを制御し、誘電体粒子102と103の共振モードの一方を適切に励起することによって、各誘電体粒子102と103内で励起された個別の共振モードが相互作用して、誘電体粒子102と103の間の中間増強領域107内の励起EMRの電界を局所的に増強する。正確な物理的現象は完全には理解されていないが、発明者は、現在、各誘電体粒子102及び103の共振モードと関連した個別のエバネッセント電界が互いに結合して、中間増強領域107内の励起EMRの電界を局所的に増強すると考えている。誘電体粒子102と103間の電界の増強は、励起EMRの電界の約10〜約300倍になる場合がある。
【0019】
誘電体粒子102と103の間の中間増強領域107内の励起EMRの電界の増強範囲は、間隔Sに依存する。電界増強は、中間増強領域107内又はその近くで生成される最大電界強度と励起EMRの電界強度の比率として定義される。図5に示したように、間隔Smaxのとき励起EMRの電界の増強が最大である。隣接誘電体粒子102及び103の間隔SがSmaxより小さいときは、増強効果が減少する。隣接誘電体粒子102及び103の間隔SがSmaxより大きいときも増強効果は減少する。従って、本発明の一実施形態では、間隔Sは、励起EMRの電界の増強を最大にするためにSmax又はその近くになるように選択される。増強された電界は、中間増強領域107内のY軸とほぼ平行な軸に沿った任意の場所に関して実質的に一定である。
【0020】
励起EMRの電界は、励起EMRが各誘電体粒子102及び103の共振モードのいずれかと結合している限り中間増強領域107内で増強されるが、中間増強領域107内の励起EMRの電界の増強の程度は、励起EMRの電界の偏波方向に依存し、また誘電体粒子102及び103の対称性、励起EMRの波動ベクトルに依存する。図6と図7は、誘電体粒子102及び103内で共振モードを励起させる本発明の様々な実施形態を示す。図6に示したように、本発明の一実施形態では、誘電体粒子102及び103のそれぞれで共振モードのうちの1つを励起するために、偏波方向604を有する電界602と共振周波数のうちの1つの周波数とを有する励起EMR600が誘電体粒子102及び103に照射されてもよい。図示したように、電界602の偏波方向604は、誘電体粒子102及び103が分散されたX軸とほぼ平行であり、波動ベクトルkは、Z軸とほぼ平行である。図7に示した本発明の別の実施形態では、誘電体粒子102及び103のそれぞれで共振モードのうちの1つを励起するために、偏波方向704を有する電界702と共振周波数のうちの1つの周波数とを有する励起EMR700が、誘電体粒子102及び103に照射されてもよい。図7に示したように、電界702の偏波方向704は、X軸とほぼ平行であり、波動ベクトルkはY軸とほぼ平行である。
【0021】
励起EMRの電界がX軸とほぼ平行な方向で平面偏波されるとき、円盤状誘電体粒子102及び103では、入射EMRの波動ベクトルkがZ軸とほぼ平行なときに所定の間隔S(図5)のより大きい電界増強が行われる。これは、誘電体粒子102及び103のY軸及びZ軸方向の形状の違いによるものである。誘電体粒子102と103がそれぞれ、X軸に関して球対称性又は円柱対称性を示すように形成されたとき、Y軸又はZ軸とほぼ平行な方向に沿って入射する波動ベクトルkを有する入射EMRの電界増強は同じである。更に、同じ波動ベクトルk方向を有する入射電磁放射の場合、中間増強領域107内の電界増強は、励起EMRの電界の偏波方向が誘電体粒子102及び103が分散されたX軸とほぼ平行なときの方が大きい。
【0022】
本発明の一定の実施形態では、入射電磁放射の電界増強は、更に、誘電体粒子形状を制御することによって増強されてもよい。図8は、本発明の一実施形態による電界増強構造物800を示す。電界増強構造物800は、半径R1を有する第1の部分804と、半径R1より小さい半径R2を有し第1の部分804から突出する第2の部分806とを有する誘電体粒子802を有する。電界増強構造物800は、更に、半径R1を有する第1の部分810と、半径R1より小さい半径R2を有し第1の部分810から突出する第2の部分812とを有する誘電体粒子808を有する。R1は、例えば、R2の大きさの約100〜約200倍である。例えば、誘電体粒子802及び808ぞれぞれの半径R1及び半径R2は、それぞれ約500nm〜約3000nmと約50nm〜約30nmでよい。誘電体粒子802及び808は、第2の部分806と第2の部分812が互いに対向する状態で配向されており、誘電体粒子802及び808は、X軸に沿って分散され、それらの間に中間増強領域814を画定するように制御された間隔Sで互いに離間される。誘電体粒子802及び808は、基板816に取り付けられる。誘電体粒子802と808及び基板816は、図1と図2に示された電界増強構造物100に関連して前述した同じ材料及び方法で作成されてもよい。
【0023】
半径R1と比べて相対的に小さい半径R2から分かるように、誘電体粒子802及び808それぞれで励起される共振モードの強度は、相対的に小さい第2の部分806及び812の方が大きい。従って、同じ間隔Sの場合で、図1に示した誘電体粒子102及び103それぞれの半径Rが、図8に示した誘電体粒子802及び808の半径R1と等しいとき、電界強度構造物800の中間増強領域814に、前述の励起方法のいずれを使用して相対的により増強された電界が生成されることがある。
【0024】
電界増強構造物100及び800に示された誘電体粒子の構成は、単に本発明の幾つかの異なる実施形態を表わす。本発明の他の実施形態では、誘電体粒子の形状は、三角形状でも長方形状でも球状でもよい。例えば、従来の付着処理やエッチング処理等のマイクロ加工又はナノ加工処理を使用して誘電体粒子を形成する代わりに、概略球状の誘電体粒子を、誘電体粒子間の概略制御された間隔で規則的な配列を形成するように基板上に分散させてもよい。更に、隣り合った誘電体粒子(例えば、誘電体粒子102と103、又は誘電体粒子802と808)の形状とサイズは、誘電体粒子のそれぞれで共振モードを励起できるという条件で異なってもよい。例えば、同じ周波数の励起EMRが、誘電体粒子のうちの1つでは低次共振モードを励起し、他の誘電体粒子では高次共振モードを励起してもよい。
【0025】
電界増強構造物100及び800は、2つの隣り合った誘電体粒子を有するように示されているが、本発明の追加の実施形態は、前述の実施形態のいずれかのように誘電体粒子のサイズ、間隔および構造が決定された規則的な2次元配列の誘電体粒子を対象とする。図9は、本発明の別の実施形態による電界増強構造物900を示す。電界増強構造物900は、誘電体粒子で構成された二次元規則配列904を有する低屈折率基板902を含む。例えば、誘電体粒子906は、誘電体粒子907から制御された間隔S1だけ離間され、誘電体粒子906は、誘電体粒子908からの制御された間隔S2だけ離間される。間隔S1及びS2は互いに等しくてもよく、間隔S1とS2は異なってもよい。本発明の幾つかの実施形態では、二次元規則配列904の誘電体粒子はそれぞれ、図8に示した電界増強構造物800と類似の隣り合った誘電体粒子の対応する突出部と対向する複数の突出部を有するように構成されてもよい。
【0026】
前述のように、励起電磁放射が配列904に放射され、隣り合った誘電体粒子間の中間増強領域910及び912内又はその近くに電界が増強されてもよい。例えば、励起電磁放射の電界偏波方向は、方向909又は方向913とほぼ平行でもよく、励起電磁放射の波動ベクトルは、電界偏波方向に対してほぼ垂直でもよい。
【0027】
図1〜図9で示し説明した電界増強構造物の前述の実施形態はいずれも、幾つかの異なる電界増強装置に使用することができる。例えば、図10は、本発明の一実施形態によるラマン分光システム1000の機能ブロック図を示す。ラマン分光システム1000は、前述のように、入射電界を増強するように構成された幾つかの規則的間隔の誘電体粒子1004を支持する基板1003を有する電界増強構造物1002を含む。例えば、図10に示した電界増強構造物1002は、図9に示した電界増強構造物900と同じように構成される。ラマン分光システム1000は、更に、励起EMR源1006と検出器1008とを含む。ラマン分光システム1000は、また、励起EMR源1006と電界増強構造物1002の間に配置された様々な光学構成要素1010と、電界増強構造物1002と検出器1008の間に配置された様々な光学構成要素1012とを含んでもよい。
【0028】
励起EMR源1006は、所望の波長のEMRを放射するのに適した任意の放射源を含んでもよく、調整可能な波長の放射を放出できてもよい。励起EMR源1006として、例えば、市販の半導体レーザ、ヘリウムネオンレーザ、炭酸ガスレーザ、発光ダイオード、白熱灯、及び他の多くの既知の放射線放出源を使用することができる。励起EMR源1006から放出されたEMRは、ラマン分光法を使用して検体を分析し且つ電界増強構造物1000の誘電体粒子1004の少なくとも1つの共振モードを励起するのに適した任意の波長でよい。例えば、励起EMR源1006は、約350nm〜約1000nmの波長範囲を有するEMRを放出する。励起EMR源1006から放出される励起EMRは、放射源1006から電界増強構造物1002に直接送られてもよい。代替として、励起EMRが電界増強構造物1002に当たる前に、光学構成要素1010によって、励起放射の平行化、フィルタリング、及びその後の集束が行われてもよい。光学構成要素1010は、更に、励起EMRの偏波方向を選択的に制御するための1つ又は複数の偏光板を含んでもよい。
【0029】
電界増強構造物1002は、検体のラマン信号を増強することができる。換言すると、励起EMR源1006から励起EMRを電界増強構造物1002の誘電体粒子1004に照射すると、前述のように、隣り合った誘電体粒子1004間に増強電界が生成され、この増強電界により、誘電体粒子1004の近く又は隣りに位置決めされた検体分子によって非弾性的に散乱される光子の数が増える。
【0030】
ラマン散乱光子は、光学構成要素1012によって平行化されてもよく、フィルタリングされてもよく、集束されてもよい。例えば、検出器1008の構造の一部として、又は励起放射の波長をフィルタリングするように構成された個別のユニットとして、1つ又は複数のフィルタを使用してもよく、これにより、検出器1008は、ラマン散乱光子だけを受け取ることができる。検出器1008は、ラマン散乱光子を受け取り検出し、モノクロメーター(又はラマン散乱光子の波長を決定するのに適した任意の他の装置)と、例えばラマン散乱光子の強度を決定する光電子増倍管等の装置とを含んでもよい。理想的には、ラマン散乱光子は、等方的に散乱され、電界増強構造物1002に対する全ての方向に散乱される。従って、電界増強構造物1002に対する検出器1002の位置は、特に重要ではない。しかしながら、検出器1008は、検出器1008に入射することがある入射励起放射の強度を最小にするために、例えば入射励起放射の方向に対して90度の角度に位置決めされてもよい。
【0031】
ラマン分光システム1000を使用してラマン分光を実行するために、ユーザは、電界増強構造物1002の誘電体粒子1004の隣りに単数又は複数の検体分子を配置してもよい。検体と電界増強構造物1002には、励起EMR源1006から励起EMRが照射される。次に、検体によって散乱したラマン散乱光子が、検出器1008によって検出される。
【0032】
ラマン分光法は、開示した電界増強構造物が使用される1つの用途に過ぎない。他の用途には、粒子検知器や他の検出用途がある。本発明の一定の実施形態では、ラマン分光システム1000は、検出器908を使用して、粒子が1つ又は複数の誘電体粒子1004と接触する結果として生じる誘電体粒子1004の共振モードのシフトを検出することにより、電界増強構造物1002上にある粒子を検出するように再構成されてもよい。例えば、電界増強構造物1002の透過スペクトル又は反射スペクトルから共振モードのシフトを検出することによって、誘電体粒子1004上にある1つ又は複数の粒子の存在を検出することができる。
【0033】
本発明の以下の例1〜例5で、2つの隣り合った誘電体粒子を含む様々な電界増強構造物とそれらの計算電界強度について説明する。例1〜例5は、前述した本発明の様々な実施形態と関連して更なる詳細を提供する。例1〜例5において、電界強度は、周知の有限差分時間領域(「FDTD」)法を使用して計算された。図11〜図15の強度コンタープロットは、最大電界強度をゼロデシベルに正規化したグレースケールで示された。図11〜図15には電界の絶対値の対数が示され、明るい領域ほど強い計算電界を示す。隣り合ったシリコン微粒子間の領域の計算に使用される空間格子が、他の領域に使用される空間格子よりかなり細かいので、シリコン円盤は、真の円形から僅かに歪められて示される。
【0034】
[実施例1]
図11は、2000nmの直径と200nmの厚さをそれぞれ有する2つの隣り合ったシリコン円盤を示す。2つの隣り合ったシリコン円盤間の間隔は10nmである。シリコン円盤は、シリコン円盤の屈折率より低い屈折率を有する空気によって取り囲まれている。シリコン円盤には、122.9THzの周波数を有する励起EMRが照射され、この周波数は、ほぼ各シリコン円盤の共振周波数である。励起EMRの波動ベクトルは、図11に示したZ軸とほぼ平行である。励起EMRの電界の偏波方向は、図11に示したX軸とほぼ平行である。図11に、各シリコン円盤内に閉じ込められた共振モードの計算強度と、隣り合ったシリコン円盤間の電界の計算強度を示す。計算されたように、最大電界強度は、シリコン円盤の間にあり、励起EMRの電界の強度の約58.6倍である。
【0035】
[実施例2]
図12は、それぞれ2000nmの直径と200nmの厚さを有する2つの隣り合ったシリコン円盤を示す。2つの隣り合ったシリコン円盤間の間隔は20nmである。シリコン円盤は、シリコン円盤の屈折率より低い屈折率を有する空気によって取り囲まれる。シリコン円盤には、各シリコン円盤の共振周波数又はそれに近い123.6THzの周波数を有する励起EMRが照射される。励起EMRの波動ベクトルは、図12に示したZ軸とほぼ平行である。励起EMRの電界の偏波方向は、図12に示したX軸とほぼ平行である。図12に、各シリコン円盤に閉じ込められた共振モードの計算強度と隣り合ったシリコン円盤間の電界の計算強度を示す。計算したように、最大電界強度は、シリコン円盤間にあり、励起EMRの電界の強度の約46.8倍である。
【0036】
[実施例3]
図13は、2000nmの直径と200nmの厚さをそれぞれ有する2つの隣り合ったシリコン円盤を示す。2つの隣り合ったシリコン円盤間の間隔は5nmである。シリコン円盤は、シリコン円盤の屈折率より低い屈折率を有する空気で取り囲まれる。シリコン円盤には、各シリコン円盤の共振周波数又はそれに近い121.852THzの周波数を有する励起EMRが照射される。励起EMRの波動ベクトルは、図13に示したZ軸とほぼ平行である。励起EMRの電界の偏波方向は、図13に示したX軸とほぼ平行である。図13に、各シリコン円盤内に閉じ込められた共振モードの計算強度と隣り合ったシリコン円盤間の電界の計算強度を示す。計算されたように、最大電界強度は、シリコン円盤間にあり、励起EMRの電界の強度の約81.8倍である。
【0037】
[実施例4]
図14は、2000nmの直径と200nmの厚さを有する2つの隣り合ったシリコン円盤を示す。2つの隣り合ったシリコン円盤間の間隔は20nmである。シリコン円盤は、シリコン円盤の屈折率より低い屈折率を有する空気で取り囲まれる。シリコン円盤は、各シリコン円盤の共振周波数又はそれに近い123.6THzの周波数を有する励起EMRが照射される。励起EMRの波動ベクトルは、図14に示されたX軸とZ軸に対して垂直なY軸とほぼ平行である。励起EMRの電界の偏波方向は、図12に示したX軸とほぼ平行である。図14に、各シリコン円盤内に閉じ込められた共振モードの計算強度と隣り合ったシリコン円盤間の電界の計算強度を示す。計算されたように、最大電界強度は、シリコン円盤間にあり、励起EMRの電界の強度の約18倍である。従って、例2と例4は、励起EMRの伝搬方向がシリコン円盤間の電界増強にどのような影響を及ぼす可能性があるかを示す。電界偏波の方向と、円盤の組成、形状及び間隔が同じであるとき、シリコン円盤間の領域内の電界増強は、励起EMRの波動ベクトルがY軸とほぼ平行なときには、波動ベクトルがZ軸とほぼ平行なときの約2.6分の1である。
【0038】
[実施例5]
図15は、2つの隣り合ったシリコン円盤構造物を示し、各シリコン円盤構造物は、2000nmの直径と200nmの厚さを有する相対的に大きい直径のシリコン円盤を有する。また、各シリコン円盤構造物は、大きい方のシリコン円盤から突出する12.5nmの直径と200nmの厚さを有する相対的に小さいシリコン先端を有する。図15に示した誘電体粒子構成は、図8に示した実施形態と同じである。2つの隣り合った小さいシリコン円盤間の間隔は30nmである。シリコン円盤は、シリコン円盤の屈折率より低い屈折率を有する空気で取り囲まれる。シリコン円盤には、各シリコン円盤構造の共振周波数又はそれに近い121.197THzの周波数を有する励起EMRが照射される。励起EMRの波動ベクトルは、図15に示したZ軸とほぼ平行である。励起EMRの電界の偏波方向は、図15に示したX軸とほぼ平行である。各シリコン円盤構造物内に閉じ込められた共振モードの計算強度と、隣り合った相対的に小さいシリコン先端間の電界の計算強度を、図15に示す。計算されたように、最大電界強度は、シリコン円盤間にあり、励起EMRの電界の強度の約113倍である。
【0039】
本発明を特定の実施形態の観点から説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されない。本発明の趣旨の範囲内の修正は当業者に明らかであろう。例えば、隣り合った誘電体粒子間の増強電界を使用して量子ドット内の特定の電子状態を励起してもよい。従って、本発明の別の実施形態では、図1と図2に示された2つの誘電体粒子102及び103の上に1つ又は複数の量子ドットが形成されてもよく、その結果、中間増強領域107内又はその近くで生成された増強電界が、1つ又は複数の量子ドット内の特定の電子状態を励起する。
【0040】
以上の説明は、説明のためのものであり、本発明の完全な理解を提供するために特定の用語を使用した。しかしながら、本発明を実施するために特定の詳細が必要でないことは当業者に明らかであろう。本発明の特定の実施形態に関する以上の説明は、例示と説明のために提示されている。これらの説明は、網羅的なものでもなく本発明を開示した厳密な形態に限定するものでもない。以上の教示を鑑みて多数の修正と変更が可能である。実施形態は、本発明の原理とその実際の応用例を最もよく説明するために示され説明され、これにより当業者は、本発明と様々な実施形態を、意図された特定の用途に適した様々な改良により最もよく利用することができる。本発明の範囲は、特許請求の範囲とその均等物によって定義される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(104)と、
制御された距離(S)だけ互いに離間された少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子(102,103)を含む規則的な誘電体粒子配列であって、前記制御距離(S)は、励起電磁放射に応じて前記少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子(102,103)内のそれぞれに共振モードが励起されたときに、前記共振モードがそれぞれ相互作用して、前記少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子(102,103)間の電界が増強されるように選択される規則的な誘電体粒子配列とを有することを特徴とする電界増強構造物(100)。
【請求項2】
前記制御された距離(S)は、前記少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子(102,103)間の増強された電界の強度を最大にするように選択されることを特徴とする請求項1に記載の電界増強構造物。
【請求項3】
前記制御された距離(S)は、ゼロより大きいことを特徴とする請求項1に記載の電界増強構造物。
【請求項4】
前記少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子(102,103)がそれぞれ、
半導体材料と、
電気絶縁材料と、
のいずれかを含むことを特徴とする請求項1に記載の電界増強構造物。
【請求項5】
前記少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子(802,808)はそれぞれ、先端を有する突出部(806,812)を含む本体(804,810)を有し、前記突出部(806,812)それぞれの前記先端は、互いに対向し且つ制御された距離(S)だけ互いに離間されたことを特徴とする請求項1に記載の電界増強構造物。
【請求項6】
前記励起電磁放射を出力するように動作可能な励起光源(1006)を含み、
請求項1に記載の前記電界増強構造物(1002)が、励起光源(1006)に動作可能に結合されたことを特徴とする電界増強装置(1000)。
【請求項7】
前記少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子(102,102,1004)は、第1の方向に沿って分散され、
前記励起光源(1006)は、特定の偏波方向と特定の波動ベクトルを有する電界を有する励起電磁放射を出力するように動作可能であり、前記特定の偏波方向は、前記第1の方向とほぼ平行であることを特徴とする請求項6に記載の電界増強装置。
【請求項8】
前記少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子(102,103,1004)はそれぞれ、前記第1の方向とほぼ垂直な第2の方向を定義する厚さを有し、
前記励起光の前記特定の波動ベクトルは、前記第1及び第2の方向とほぼ垂直な第3の方向とほぼ平行であるか、前記励起光の前記特定の波動ベクトルは、前記第2の方向とほぼ平行であることを特徴とする請求項7に記載の電界増強装置。
【請求項9】
前記誘電体粒子(102,103,1004)の隣りに配置された検体によって散乱されたラマン散乱光を受け取るように構成された検出器(1008)を更に有することを特徴とする請求項6に記載の電界増強装置。
【請求項10】
少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子(102,103)間の電界を増強する方法であって、
前記少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子(102,103)に、前記少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子(102,103)内のそれぞれに共振モードを励起するように選択された周波数を有する励起電磁放射を照射するステップと、
前記少なくとも2つの誘電体粒子(102,103)を、前記共振モードがそれぞれ相互作用して前記少なくとも2つの隣り合った誘電体粒子(102,103)間の電界が増強されるように十分近くに位置決めするステップとを含むことを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−532464(P2010−532464A)
【公表日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−553595(P2009−553595)
【出願日】平成20年3月10日(2008.3.10)
【国際出願番号】PCT/US2008/003145
【国際公開番号】WO2008/112189
【国際公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【出願人】(503003854)ヒューレット−パッカード デベロップメント カンパニー エル.ピー. (1,145)
【Fターム(参考)】