説明

誘電体組成物及びこれを含むセラミック電子部品

【課題】本発明は、誘電体組成物及びこれを含むセラミック電子部品に関する。
【解決手段】本発明によると、BaTiO(0.995≦m≦1.010)を含む母材粉末と、上記母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの希土類元素を含む酸化物または炭酸塩0.05〜4.00モルを含む第1副成分と、上記母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの遷移金属を含む酸化物または炭酸塩0.05〜0.70モルを含む第2副成分と、上記母材粉末100モルに対して、Si酸化物0.20〜2.00モルを含む第3副成分と、上記母材粉末100モルに対して、Al酸化物0.02〜1.00モルを含む第4副成分と、上記第3副成分に対して、BaまたはCaのうち少なくとも一つを含む酸化物20〜140%を含む第5副成分と、を含む誘電体組成物が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電体組成物及びこれを含むセラミック電子部品に関する。
【背景技術】
【0002】
セラミック材料を用いる電子部品は、キャパシタ、インダクタ、圧電素子、バリスタまたはサーミスタなどがある。
【0003】
このようなセラミック電子部品のうち積層セラミックキャパシタ(MLCC:Multi−Layered Ceramic Capacitor)は、小型でありながら高容量が保障され、実装が容易であるという長所を有する。
【0004】
このような積層セラミックキャパシタは、LCD、PDPなどの映像機器、コンピュータ、個人携帯端末機(PDA:Personal Digital Assistants)または携帯電話などの様々な電子製品の回路基板に装着され、電気を充電または放電させる重要な役割をするチップ形態のコンデンサである。
【0005】
最近、LCD、PDPなどの映像機器の大型化、コンピュータのCPU速度の上昇などによる電子機器の発熱問題が深刻となっており、ICの安定した動作のために、高い温度でも安定した容量と信頼性の確保が求められている。
【0006】
また、このような積層セラミックキャパシタは、用いられる用途及び容量によって多様なサイズと積層形態を有する。
【0007】
特に、最近の電子製品の小型軽量化及び多機能化の傾向に応えるべく、このような電子製品に用いられる積層セラミックキャパシタも超小型化、超高容量化及び昇圧化が求められている。
【0008】
そのために、製品の超小型化のために誘電体層及び内部電極の厚さを薄くし、超高容量化のために多数の誘電体層を積層した積層セラミックキャパシタが製造されている。
【0009】
しかし、積層セラミックキャパシタの製造時に誘電体層の厚さを薄くして昇圧化させる場合、誘電体層にかかる電界強度の上昇及び微細構造上の欠陥により、BDV、高温IRなどの耐電圧及びDC−バイアス(bias)特性が悪くなるという問題点があった。
【0010】
これを防止するためには母材粉末を微粒化させることが必要であるが、この場合、母材粉末の粒子が小さくなると使用者が所望する容量及び温度特性を具現することが困難になり、誘電率が減少するという問題点があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
当技術分野では、信頼性を確保するために、誘電体層の厚さを薄くしなくても従来の誘電体層と同様の容量を実現するための方案が求められてきた。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の一側面によると、BaTiO(0.995≦m≦1.010)を含む母材粉末と、上記母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの希土類元素を含む酸化物または炭酸塩0.05〜4.00モルを含む第1副成分と、上記母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの遷移金属を含む酸化物または炭酸塩0.05〜0.70モルを含む第2副成分と、上記母材粉末100モルに対して、Si酸化物0.20〜2.00モルを含む第3副成分と、上記母材粉末100モルに対して、Al酸化物0.02〜1.00モルを含む第4副成分と、上記第3副成分に対して、BaまたはCaのうち少なくとも一つを含む酸化物20〜140%を含む第5副成分と、を含む誘電体組成物が提供される。ここで、各副成分のモル数値は原子モル(atomic mole)を意味する。
【0013】
本発明の一形態において、上記誘電体組成物の平均グレインサイズ(grain size)が少なくとも0.75μm以下であることができる。
【0014】
本発明の一形態において、上記母材粉末100モルに対して、Mg酸化物または炭酸塩0.01〜2.50モルをさらに含むことができる。
【0015】
本発明の一形態において、上記母材粉末100モルに対して、Zr酸化物0.01〜1.00モルをさらに含むことができる。
【0016】
本発明の一形態において、上記第1副成分の希土類元素は、Y、Dy、Ho、Er、Gdであることができる。
【0017】
本発明の一形態において、上記第2副成分の遷移金属は、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、V、Cr、Cu及びZnからなる群から選択される少なくとも一つであることができる。
【0018】
本発明の他の側面によると、複数の誘電体層が積層されたセラミック素体と、上記セラミック素体の内部に形成され、非金属を含む内部電極と、上記セラミック素体の外表面に形成され、上記内部電極と電気的に連結された外部電極と、を含み、上記誘電体層は、BaTiO(0.995≦m≦1.010)を含む母材粉末と、上記母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの希土類元素を含む酸化物または炭酸塩0.05〜4.00モルを含む第1副成分と、上記母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの遷移金属を含む酸化物または炭酸塩0.05〜0.70モルを含む第2副成分と、上記母材粉末100モルに対して、Si酸化物0.20〜2.00モルを含む第3副成分と、上記母材粉末100モルに対して、Al酸化物0.02〜1.00モルを含む第4副成分と、上記第3副成分に対して、BaまたはCaのうち少なくとも一つを含む酸化物20〜140%を含む第5副成分と、を含むセラミック電子部品が提供される。
【0019】
本発明の一形態において、上記各誘電体層の厚さは0.2〜10μmであることができる。
【0020】
本発明の一形態において、上記内部電極は、NiまたはNi合金を含むことができる。
【0021】
本発明の一形態において、上記内部電極は、上記誘電体層と交互に積層されることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明よると、信頼性を確保するために、誘電体層の厚さを薄くしなくても既存の誘電体層を有する誘電体組成物と同等の水準の容量を実現することができる誘電体組成物及びこれを含むセラミック電子部品を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態による積層セラミックキャパシタを概略的に図示した斜視図である。
【図2】図1のA−A´線の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施形態を説明する。
【0025】
但し、本発明の実施形態は様々な他の形態に変形することができ、本発明の範囲は以下で説明する実施形態に限定されるものではない。
【0026】
また、本発明の実施形態は当技術分野で平均的な知識を有する者に本発明をより完全に説明するために提供されるものである。
【0027】
従って、図面における要素の形状及び大きさ等はより明確な説明のために誇張されることがあり、図面上において同一の符号で表される要素は同一の要素である。
【0028】
また、類似の機能及び作用をする部分に対しては図面全体にわたって同一の符号を用いる。
【0029】
尚、明細書の全体において、ある構成要素を「含む」ということは、特別に反対される記載がない限り、他の構成要素を除くのでなく、他の構成要素をさらに含むことができるということを意味する。
【0030】
本発明は誘電体組成物に関するものであって、本発明の一実施形態による誘電体組成物を含むセラミック電子部品は、積層セラミックキャパシタ、インダクタ、圧電体素子、バリスタ、チップ抵抗またはサーミスタなどがあり、下記ではセラミック電子製品の一例として、積層セラミックキャパシタについて説明する。
【0031】
図1及び図2を参照すると、本実施形態による積層セラミックキャパシタ100は、誘電体層111と第1及び第2内部電極130a、130bが交互に積層されたセラミック素体110を有する。
【0032】
セラミック素体110の両端部には、セラミック素体110の内部に交互に配置された第1及び第2内部電極130a、130bとそれぞれ電気的に連結された第1及び第2外部電極120a、120bが形成されている。
【0033】
セラミック素体110の形状は特に制限されないが、好ましくは直方体状であることができる。
【0034】
また、その寸法も特に制限されず、用途に応じて適切な寸法にすることができ、例えば(0.6〜5.6mm)×(0.3〜5.0mm)×(0.3〜1.9mm)であることができる。
【0035】
誘電体層111の厚さは、キャパシタの容量設計に応じて任意に変更することができるが、薄すぎる厚さの誘電体層111が一つの層内に存在する場合、結晶粒の数が少なくて信頼性に悪影響を与える可能性がある。
【0036】
従って、本実施形態では、焼成後の誘電体層111の厚さが1層当り0.2μm以上となるように設定することができ、より好ましくは0.2〜10.0μmとなるように設定することができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0037】
第1及び第2内部電極130a、130bは、各端面がセラミック素体110の対向する両端部の表面に交互に露出されるように積層されることができる。
【0038】
このような第1及び第2内部電極130a、130bに含有される導電材は、特に限定されないが、誘電体層111の構成材料が耐還元性を有しなければならないため、非金属を用いることができる。
【0039】
このような非金属としてNiまたはNi合金を用いることができ、Ni合金としてはMn、Cr、Co及びAlから選択される1種以上の元素とNiを用いることができる。
【0040】
第1及び第2外部電極120a、120bは、セラミック素体110の両端部に形成され、交互に配置された第1及び第2内部電極130a、130bの露出端面に電気的に連結されてキャパシタ回路を構成することができる。
【0041】
このような第1及び第2外部電極120a、120bに含有される導電材は、特に限定されないが、Ni、Cu、またはこれらの合金を用いることができる。
【0042】
このようなセラミック素体110を構成する誘電体層111は、耐還元性の誘電体組成物を含むことができる。
【0043】
本実施形態による耐還元性の誘電体組成物は、BaTiO(0.995≦m≦1.010)を含む母材粉末と、母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの希土類元素を含む酸化物または炭酸塩0.05〜4.00モルを含む第1副成分と、母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの遷移金属を含む酸化物または炭酸塩0.05〜0.70モルを含む第2副成分と、母材粉末100モルに対して、Si酸化物0.20〜2.00モルを含む第3副成分と、母材粉末100モルに対して、Al酸化物0.02〜1.00モルを含む第4副成分と、第3副成分に対して、BaまたはCaのうち少なくとも一つを含む酸化物20〜140%を含む第5副成分と、を含むことができる。
【0044】
ここで、各副成分の含量は下記に例示した副成分の原子モル(atomic mole)を基準とする。
【0045】
原子モルは、酸化物形態またはイオン状態で投入される場合でも、各元素のmole%を意味するものであり、例えば、Y酸化物がYの場合でも、含量はY+3の含量モルとみなして計算したものを意味する。
【0046】
一方、主成分と最終的に混合される時点での各副成分の比表面積は、好ましくはそれぞれ0.5m/g以上であることができるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0047】
また、上記のような組成を用いて焼成された材料の微細構造を観察すると、平均グレインサイズ(grain size)は少なくとも0.75μm以下が適切であるが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0048】
このように構成された誘電体組成物は、既存の誘電体組成物に比べ、同等の水準の高温耐電圧特性、即ち高温加速寿命を維持しながらも誘電定数1600以上の高誘電率を確保することができる。
【0049】
また、少なくとも1250℃以下の還元雰囲気(酸素分圧基準10−12以上)で焼成が可能であるため、NiまたはNi合金を含む内部電極を用いることができる。
【0050】
従って、誘電体が薄い超高容量MLCCの開発に効果的に適用することができる。
【0051】
以下、本発明の一実施形態による誘電体組成物の各成分をより具体的に説明する。
【0052】
a)母材粉末
母材粉末は、誘電体の主成分であり、BaTiO(0.995≦m≦1.010)系誘電体粉末を用いることができる。
【0053】
この際、m値が0.995未満であると還元性雰囲気の焼成で還元されやすいため半導性物質に変わりやすく、m値が1.010を超過すると焼成温度が上昇しすぎるという問題点が生じる可能性がある。
【0054】
b)第1副成分
第1副成分として、少なくとも一つの希土類元素(rare earth element)を含む酸化物または炭酸塩を含むことができる。
【0055】
この希土類元素は材料の信頼性を高める役割をし、Y、Dy、Ho、Er及びGdなどから選択される少なくとも一つの元素であることができるが、本発明の希土類元素がこれに限定されるものではない。
【0056】
また、希土類元素を含む酸化物または炭酸塩の形態は、特に制限されるものではなく、必要に応じてDy、Y、Hoなどに多様に変更して用いることができる。
【0057】
この際、好ましい耐還元性及び信頼性を実現するための第1副成分の含量は、母材粉末100モルに対して0.05〜4.00モルであることができる。
【0058】
もし、第1副成分の含量が0.05モル未満であると、焼成温度が上昇し、信頼性が低下する可能性がある。
【0059】
また、第1副成分の含量が4.00モルを超過すると、むしろ焼結温度が上昇して、所望の誘電定数値を得ることができない問題点が生じる可能性がある。
【0060】
c)第2副成分
第2副成分として、遷移金属を含む酸化物または炭酸塩を含むことができる。
【0061】
遷移金属酸化物または炭酸塩は、誘電体組成物の耐還元性及び信頼性を付与する役割をする。
【0062】
このような遷移金属は、好ましくは原子価可変アクセプタ(variable−valence acceptor)元素であり、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、V、Cr、Cu及びZnからなる群から選択されることができる。
【0063】
また、遷移金属酸化物または炭酸塩の形態は、特に制限されるものではなく、必要に応じてMnO、VまたはMnCOなどに多様に変更して用いることができる。
【0064】
この際、好ましい耐還元性及び信頼性を実現するための第2副成分の含量は、母材粉末100モルに対して0.05〜0.70モルであることができる。
【0065】
もし、第2副成分の含量が0.05モル未満であると、高温加速寿命が低下し、TCC(温度による誘電定数の変化率)が不安定になる可能性がある。
【0066】
また、第2副成分の含量が0.70モルを超過すると、焼結温度は低くなるが誘電率もともに低下して所望の誘電定数値を得ることができないだけでなく、エージング特性が悪くなる問題点が生じる可能性がある。
【0067】
d)第3副成分
第3副成分は、焼成温度を低めて焼結を促進する役割をするものであり、Si酸化物を含むことができ、他の例としては、Si元素を含むガラス(glass)形態などを含むことができる。
【0068】
この際、好ましい第3副成分の含量は、母材粉末100モルに対して0.20〜2.00モルであることができる。
【0069】
もし、第3副成分の含量が0.20モル未満であると、誘電率は高いが焼成温度が高くなって焼結性が低下する可能性がある。
【0070】
また、第3副成分の含量が2.00モルを超過すると、粒成長の制御が困難であるだけでなく、焼結性が低下して所望の誘電定数値を得ることが困難になる問題点が生じる可能性がある。
【0071】
e)第4副成分
第4副成分は、焼成温度を低めて焼結を促進する役割をするものであり、Al酸化物を含むことができる。
【0072】
この際、好ましい第4副成分の含量は、母材粉末100モルに対して0.02〜1.00モルであることができる。
【0073】
もし、第4副成分の含量が0.02モル未満であると、所望の低い焼成温度で焼成が困難であって、高い温度で焼成がなされる問題が生じる可能性がある。
【0074】
また、第4副成分の含量が1.00モルを超過すると、粒成長の制御が困難であるだけでなく、焼結性が低下して所望の誘電定数値を得ることが困難になる問題点が生じる可能性がある。
【0075】
f)第5副成分
第5副成分は、焼成温度を低めて焼結を促進する役割をするものであり、BaまたはCaのうち少なくとも一つを含む酸化物を含むことができる。
【0076】
この際、好ましい第5副成分の含量は、第3副成分に対して20〜140%に設定することができる。
【0077】
もし、第5副成分の含量が第3副成分の含量に対して20%未満であると、誘電率は高くなるが信頼性が低下するだけでなく、焼成ウィンドウ(優れた特性を示す焼成温度範囲)が狭くなってTCC特性が不安定になる可能性がある。
【0078】
また、第5副成分の含量が第3副成分の含量に対して140%を超過すると、焼成ウィンドウは広くなるが焼成密度が低くなり、焼成温度は上昇する問題点が生じる可能性がある。
【0079】
g)第6副成分
第6副成分は、本実施形態において必ずしも必要な成分ではなく、本実施形態の組成物に必要に応じて選択的に含ませることができる。
【0080】
このような第6副成分として、Mg酸化物または炭酸塩を含むことができる。
【0081】
この際、Mg酸化物または炭酸塩の形態は、特に制限されるものではなく、例えばMgO、MgCOなどを用いることができる。
【0082】
このようなMg酸化物または炭酸塩は、より広い焼成ウィンドウを有するようにし、焼成温度を低めることができる。
【0083】
このような効果を実現するためのMg酸化物または炭酸塩の含量は、母材粉末100モルに対して0.01〜2.50モルに設定することができ、このような範囲を外れる場合、誘電率がむしろ低下する問題点が生じる可能性がある。
【0084】
また、第6副成分として、Mg酸化物または炭酸塩とは別に、Zr酸化物をさらに含むことができる。
【0085】
Zr酸化物は、適切な範囲内で添加すると誘電率をさらに向上させる役割をし、このような効果を実現するためのZr酸化物の含量は、母材粉末100モルに対して0.01〜1.00モルに設定することができる。
【0086】
以下、実施例及び比較例によって本発明をより詳細に説明するが、これは発明の具体的な理解を容易にするためのものであり、本発明の範囲が下記実施例により限定されるものではない。
【0087】
[実施例]
表1に記載された組成及び含量に従って、母材粉末と第1〜第5副成分及び第6副成分が選択的に含まれた原料粉末を、ジルコニアボールを混合及び分散メディアとして用い、エタノール及びトルエンを溶媒として分散剤及びバインダと混合した後、約20時間ボールミルしてスラリーを製造した。
【0088】
製造されたスラリーは、小型ドクターブレード(doctor blade)方式のコータ(coater)を利用して2.0μm及び10〜13μmの厚さのセラミックシートに成形した。
【0089】
成形されたセラミックシートにNi内部電極を印刷した。
【0090】
この際、上下カバーは10〜13μmの厚さのカバー用シートを25層に、20層の印刷されたシート(active sheet)を加圧及び積層して製作し、圧着バー(bar)を製作した。
【0091】
圧着バーは、切断機を利用して3.2mm×1.6mmサイズのチップに切断した。
【0092】
このように切断されたチップは脱バインダのためにか焼し、還元雰囲気で約1100〜1300℃の温度で約2時間焼成した後、約1000℃で再酸化のために約3時間熱処理した。
【0093】
その後、焼成されたチップは、ターミネート工程を経た後約24時間放置し、誘電体の厚さが4.0μm内外で、誘電体の層数が20層である3.2mm×1.6mmサイズのMLCCチップに製作した。
【0094】
[評価]
MLCCチップの常温静電容量及び誘電損失は、LCR meterを利用して、1kHz、1Vの条件で測定し、サンプルを10個ずつ取って常温絶縁をDC50V印加した状態で約60秒経過後に測定した。この際、誘電定数は10の位を切り上げた値を示す。
【0095】
温度による静電容量の変化率(temperature coefficient of capacitance、TCC)は、85℃及び125℃の温度で測定された。
【0096】
また、高温IR昇圧実験は、150℃、1Vr=10V/μmの条件で、電圧段階をDC10V/μmずつ増加させながら抵抗劣化挙動を測定した。ここで、各段階の時間は10分であり、5秒間隔で抵抗値を測定した。
【0097】
このような高温IR昇圧実験から高温耐電圧、即ち高温加速寿命を導出する。高温加速寿命とは、焼成後4.0μm内外の厚さの20層の誘電体層を有するMLCCチップに対して、150℃で電圧段階をDC10V/μmを約10分間印加し、このような電圧段階を継続して増加させながら測定する際、IRが10Ω以上に耐える電圧を意味する。
【0098】
下記表1はそれぞれの組成からなる誘電体と、この誘電体により構成されたX5RまたはX7Rプロト−タイプ(proto−type)チップの特性を示したものである。
【0099】
【表1】

<多様な成分の誘電体組成物とこの誘電体組成物を用いて製作されたプロト−タイプチップの特性>
【0100】
比較例1を参照すると、第1副成分が含まれない場合、高温加速寿命が全く発生しないことを確認することができた。
【0101】
比較例2を参照すると、第1副成分として希土類元素の一つであるY(イットリウム)を母材粉末100モルに対して4.5モル含む場合、誘電定数は1500と低い値を示し、焼結温度も1290℃に上昇することを確認することができた。
【0102】
比較例3を参照すると、第2副成分が含まれない場合、高温加速寿命が1Vrに低下することを確認することができた。
【0103】
比較例4を参照すると、母材粉末100モルに対して第2副成分としてMn(マンガン)0.4モル及びCr(クロム)0.4モルを含む場合、誘電定数は1300と低い値を示し、焼結温度も1260℃に上昇することを確認することができた。
【0104】
比較例5を参照すると、第5副成分としてCa(カルシウム)を第3副成分に対して150%含む場合、高温加速寿命が2Vrに低下し、焼結温度も1270℃に上昇することを確認することができた。
【0105】
比較例6を参照すると、第5副成分としてBa(バリウム)を第3副成分に対して10%含む場合、高温加速寿命が全く発生しないことを確認することができた。
【0106】
比較例7を参照すると、第3副成分としてSi(ケイ素)を母材粉末100モルに対して3.0モル含む場合、焼結温度が1300℃に上昇することを確認することができた。
【0107】
比較例8を参照すると、第3副成分としてSi(ケイ素)を母材粉末100モルに対して0.1モル含む場合、85℃でTCCは−19%であり、125℃でTCCは−35%であって、高温加速寿命が1Vrに低下することを確認することができた。
【0108】
比較例9を参照すると、第4副成分が含まれない場合、高温加速寿命が2Vrに低下し、焼結温度も1290℃に上昇することを確認することができた。
【0109】
比較例10を参照すると、第4副成分としてAl(アルミニウム)を母材粉末100モルに対して2.0モル含む場合、誘電定数が1200と低い値を示すことを確認することができた。
【0110】
一方、本実施形態に従って、母材粉末100モルに対して、第1副成分を0.05〜4.00モル含み、第2副成分を0.05〜0.70モル含み、第3副成分を0.20〜2.00モル含み、第4副成分を0.02〜1.00モル含み、第5副成分を第3副成分に対して20〜140%を含む場合、誘電定数が1600以上の優れた数値を示し、TCCは85及び125℃でそれぞれ−15〜+15%を示した。
【0111】
また、高温加速寿命は3Vr以上を示し、焼結温度は1250℃以下を示すことを確認することができた。
【0112】
従って、このような実施例を満たす範囲で誘電体組成物を製造する場合、信頼性を確保するために、誘電体層の厚さを薄くしなくても既存の誘電体層を有する誘電体組成物と同等の水準の容量を実現することができる。
【0113】
本発明は、上述の実施形態及び添付の図面により限定されず、添付の請求範囲により限定される。
【0114】
従って、請求範囲に記載された本発明の技術的思想を外れない範囲内で、当技術分野の通常の知識を有する者によって様々な形態の置換、変形及び変更が可能であり、これも本発明の範囲に属する。
【符号の説明】
【0115】
100 積層セラミックキャパシタ
110 セラミック素体
111 誘電体層
120a、120b 第1及び第2外部電極
130a、130b 第1及び第2内部電極

【特許請求の範囲】
【請求項1】
BaTiO(0.995≦m≦1.010)を含む母材粉末と、
前記母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの希土類元素を含む酸化物または炭酸塩0.05〜4.00モルを含む第1副成分と、
前記母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの遷移金属を含む酸化物または炭酸塩0.05〜0.70モルを含む第2副成分と、
前記母材粉末100モルに対して、Si酸化物0.20〜2.00モルを含む第3副成分と、
前記母材粉末100モルに対して、Al酸化物0.02〜1.00モルを含む第4副成分と、
前記第3副成分に対して、BaまたはCaのうち少なくとも一つを含む酸化物20〜140%を含む第5副成分と、
を含む誘電体組成物。
【請求項2】
前記誘電体組成物の平均グレインサイズ(grain size)が少なくとも0.75μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項3】
前記母材粉末100モルに対して、Mg酸化物または炭酸塩0.01〜2.50モルをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項4】
前記母材粉末100モルに対して、Zr酸化物0.01〜1.00モルをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項5】
前記第1副成分の希土類元素は、Y、Dy、Ho、Er、Gdであることを特徴とする請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項6】
前記第2副成分の遷移金属は、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、V、Cr、Cu及びZnからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項7】
複数の誘電体層が積層されたセラミック素体と、
前記セラミック素体の内部に形成され、非金属を含む内部電極と、
前記セラミック素体の外表面に形成され、前記内部電極と電気的に連結された外部電極と、を含み、
前記誘電体層は、BaTiO(0.995≦m≦1.010)を含む母材粉末と、前記母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの希土類元素を含む酸化物または炭酸塩0.05〜4.00モルを含む第1副成分と、前記母材粉末100モルに対して、少なくとも一つの遷移金属を含む酸化物または炭酸塩0.05〜0.70モルを含む第2副成分と、前記母材粉末100モルに対して、Si酸化物0.20〜2.00モルを含む第3副成分と、前記母材粉末100モルに対して、Al酸化物0.02〜1.00モルを含む第4副成分と、前記第3副成分に対して、BaまたはCaのうち少なくとも一つを含む酸化物20〜140%を含む第5副成分と、を含むセラミック電子部品。
【請求項8】
前記誘電体組成物の平均グレインサイズ(grain size)が少なくとも0.75μm以下であることを特徴とする請求項7に記載のセラミック電子部品。
【請求項9】
前記母材粉末100モルに対して、Mg酸化物または炭酸塩0.01〜2.50モルをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載のセラミック電子部品。
【請求項10】
前記母材粉末100モルに対して、Zr酸化物0.01〜1.00モルをさらに含むことを特徴とする請求項7に記載のセラミック電子部品。
【請求項11】
前記第1副成分の希土類元素は、Y、Dy、Ho、Er、Gdであることを特徴とする請求項7に記載のセラミック電子部品。
【請求項12】
前記第2副成分の遷移金属は、Mo、W、Mn、Fe、Co、Ni、V、Cr、Cu及びZnからなる群から選択される少なくとも一つであることを特徴とする請求項7に記載のセラミック電子部品。
【請求項13】
前記各誘電体層の厚さは0.2〜10μmであることを特徴とする請求項7に記載のセラミック電子部品。
【請求項14】
前記内部電極は、NiまたはNi合金を含むことを特徴とする請求項7に記載のセラミック電子部品。
【請求項15】
前記内部電極は、前記誘電体層と交互に積層されることを特徴とする請求項7に記載のセラミック電子部品。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−103876(P2013−103876A)
【公開日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−225722(P2012−225722)
【出願日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】