説明

誘電体組成物及びその製造方法

【課題】従来よりも高い温度で使用可能であり、加えて従来よりも高い誘電率を有する誘電体組成物およびその製造方法を提供する。
【解決手段】一般式:M(1)1−xM(2)M(3)1−yM(4)2+x―y1―x+yで示される組成であることを特徴とする誘電体組成物(但し、M(1)元素はY,La,Ce,Pr,Nd,Gdから選ばれる1種以上の元素であり、M(2)元素はMg,Ca,Sr,Baから選ばれる1種以上の元素であり、M(3)元素はTi,Zrから選ばれる1種以上の元素であり、M(4)元素はV,Nb,Taから選ばれる1種以上の元素であり、O元素とN元素は酸素と窒素である。)により上記課題が解決できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機化合物を主体とする誘電体組成物とその製造方法に関する。さらに詳細には、高い比誘電率を有し、しかも従来よりも高い温度条件下でも使用可能な高温誘電体組成物とその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題に対して全世界的な注目が集まりつつあり、電気自動車やハイブリッドカー、次世代送電網等の普及によるCO排出量の削減或いはエネルギー効率の向上が強く求められている。これらには高い接合部温度を有するパワーモジュールが一般に用いられており、そのため、パワーモジュール周辺に配置される電子デバイスには、動作温度の高温化が要求されている。
【0003】
誘電体はコンデンサー、サーミスター、フィルター、共振器、アンテナ、発信子などに広く用いられているが、代表的誘電体であるチタン酸バリウムは、キュリー点のために使用温度範囲の上限は125℃である。しかしながら、パワーモジュールの接合部温度は200℃に達すると見込まれており、チタン酸バリウムにかわる高温度の条件下でも使用可能な誘電体組成物の開発が強く望まれている。
加えて、電気自動車、ハイブリッドカー等の車載用途を考えた場合、一般の車載部品と同様に電子デバイスにも小型軽量化が求められている。代表的誘電体であるチタン酸バリウムは1000から2000程度の高い比誘電率を有する誘電体であるが、現今の電子デバイスに対する小型軽量化の要請から、誘電体材料(誘電体組成物)には、一層の高誘電率化が強く求められている。
【0004】
チタン酸バリウムの使用温度範囲の上限を拡張する試みとして、Baサイトの一部をCaで置換し、さらにDy及びMgOを添加する方法が検討されている(下記非特許文献1参照)。本方法によれば、キュリー点近傍における急激な比誘電率変化は抑制されるが、同時にキュリー点以下の使用可能温度域において比誘電率が低下するといった難点がある。
【0005】
窒化物、酸窒化物は、酸化物に比して共有結合性が高いことから、一般に酸化物よりも熱的相転移点が高い。チタン酸バリウムのキュリー点は相転移に起因するため、窒素を含有する誘電体材料は高いキュリー点を有するものと推察される。
チタン酸バリウムと同様の結晶構造であるペロブスカイト型構造をもつ窒化物、酸窒化物(窒化物、酸窒化物系ペロブスカイト型化合物)として、多種の化合物が知られている。特許文献1には、ペロブスカイト型構造を有する多種の窒化物、酸窒化物について、合成方法並びに誘電体特性について開示されており、加えて、90から370K(−183から97℃)の温度範囲で比誘電率に変化がないことが記載されている。しかしながら、誘電体特性に関する詳細は記載されて居らず、窒化物、酸窒化物系ペロブスカイト型化合物の誘電体的性質については明らかとなっていない。
【0006】
非特許文献2にはペロブスカイト型構造を有する多種の酸窒化物である、BaTaON及びSrTaONが誘電体的性質を示し、その比誘電率はそれぞれ4900、2900程度であることが開示されている。しかしながら、現今の電子デバイスに対する小型軽量化の要請に答えるためには、非特許文献2に記載された比誘電率では十分とはいえない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】US4734390号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】久保寺紀之 他 セラミックス 45 (2010)453−457.
【非特許文献2】Young−Il Kim, et. al., Chem. Mater.,16 (2004)1267−1276.
【非特許文献3】Teruki Motohashi, et. al., Mater. Res. Bull., 44 (2009)1899−1905.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記のような問題を解決しようとするものであり、室温から200℃の間にキュリー点を持たず、しかも従来知られている酸窒化物系ペロブスカイト型化合物よりも高い比誘電率を有する誘電体組成物及びその製造方法の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、特定の化学組成を有する化合物が、室温から200℃の間にキュリー点を持たず、しかも従来知られている酸窒化物系ペロブスカイト型化合物よりも高い比誘電率を有することを見いだし、以下に示す本発明を完成させるに至った。
【0011】
[1]一般式:M(1)1−xM(2)M(3)1−yM(4)2+x―y1―x+y
で示される組成であることを特徴とする誘電体組成物。
但し、M(1)元素はY,La,Ce,Pr,Nd,Gdから選ばれる1種以上の元素であり、M(2)元素はMg,Ca,Sr,Baから選ばれる1種以上の元素であり、M(3)元素はTi,Zrから選ばれる1種以上の元素であり、M(4)元素はV,Nb,Taから選ばれる1種以上の元素であり、O元素とN元素は酸素と窒素であり、0<x<1かつ0≦y≦1である。
[2]0<x≦0.9,0≦y≦0.9であることを特徴とする上記[1]に記載の誘電体組成物。
[3]M(1)元素が、La,Ce,Pr,Ndから選ばれる一種以上であり、M(2)元素がSr,Baから選ばれる一種以上であることを特徴とする上記[2]に記載の誘電体組成物。
[4]M(1)元素がLa、M(2)元素がBa、M(3)元素がTi、M(4)元素がTaであることを特徴とする上記[3]に記載の誘電体組成物。
【0012】
[5]以下の〔1〕〜〔3〕のいずれかの原料を加熱して、以下の〔4〕〜〔6〕のいずれかの中間化合物を生成する工程と、該中間化合物を還元性雰囲気中で加熱する工程とを含むことを特徴とする上記[1]〜[4]の何れか一項に記載の誘電体組成物の製造方法。
〔1〕M(1)元素、M(2)元素及びM(3)元素のうちの一又は二以上を含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(3)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔2〕M(1)元素、M(2)元素及びM(4)元素のうちの一又は二以上を含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔3〕M(1)元素、M(2)元素、M(3)元素及びM(4)元素のうちの一又は二以上を含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素、M(3)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔4〕M(1)元素及び/又はM(2)元素と、M(3)元素とを含む化合物を一又は二以上含有してなる中間化合物(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(3)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔5〕M(1)元素及び/又はM(2)元素と、M(4)元素とを含む化合物を一又は二以上含有してなる中間化合物(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔6〕M(1)元素及び/又はM(2)元素と、M(3)元素及び/又はM(4)元素とを含む化合物を一又は二以上含有してなる中間化合物(但し、M(1)元素、M(2)元素、M(3)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
[6]前記化合物の少なくとも一つは酸化物であることを特徴とする上記[5]に記載の誘電体組成物の製造方法。
[7]以下の〔1〕〜〔3〕のいずれかの原料を加熱する工程を含むことを特徴とする上記[1]〜[4]の何れか一項に記載の誘電体組成物の製造方法。
〔1〕M(1)元素、M(2)元素及びM(3)元素のうちの一又は二以上を含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(3)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔2〕M(1)元素、M(2)元素及びM(4)元素のうちの一又は二以上を含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔3〕M(1)元素、M(2)元素、M(3)元素及びM(4)元素のうちの一又は二以上を含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素、M(3)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)。
[8]前記化合物の少なくとも一つは酸化物であることを特徴とする上記[7]に記載の誘電体組成物の製造方法。
[9]以下の〔1〕〜〔3〕のいずれかの原料を加熱する工程を含むことを特徴とする上記[1]〜[4]の何れか一項に記載の誘電体組成物の製造方法。
〔1〕M(1)元素及び/又はM(2)元素と、M(3)元素とを含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(3)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔2〕M(1)元素及び/又はM(2)元素と、M(4)元素とを含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔3〕M(1)元素及び/又はM(2)元素と、M(3)元素及び/又はM(4)元素とを含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素、M(3)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)。
[10]前記化合物の少なくとも一つは酸化物であることを特徴とする上記[9]に記載の誘電体組成物の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
上記の構成によれば、室温から200℃の間にキュリー点を持たず、しかも従来知られている酸窒化物系ペロブスカイト型化合物よりも高い比誘電率を有する誘電体組成物を提供することができる。つまり、高い比誘電率を有するとともに、従来よりも高い温度条件下でも誘電体として使用可能な誘電体組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本実施形態に係る誘電体組成物について詳細に説明する。
本実施形態の誘電体組成物は、
一般式:M(1)1−xM(2)M(3)1−yM(4)2+x―y1―x+y
で示される組成からなることを特徴とする。
但し、M(1)元素はY,La,Ce,Pr,Nd,Gdから選ばれる1種以上の元素であり、M(2)元素はMg,Ca,Sr,Baから選ばれる1種以上の元素であり、M(3)元素はTi,Zrから選ばれる1種以上の元素であり、M(4)元素はV,Nb,Taから選ばれる1種以上の元素であり、O元素とN元素は酸素と窒素である。
なお、本発明の誘電体組成物には、本発明の効果を損なわない範囲内で他の元素を含有してもよい。また、製造工程で不可避的に導入される他の元素を含有してもよい。
なお、本実施形態において、上記xとyの値は、0<x<1,0≦y≦1の範囲である。
以下、各元素及び上記xとyの数値範囲の限定理由について詳細に説明する。
【0015】
M(1)元素について、好ましくは、La,Ce,Pr,Ndから選ばれる一種以上である。また、M(2)元素について、好ましくは、Sr,Baから選ばれる一種以上である。
上記の一般式で表される組成の誘電体組成物において、M(1)及びM(2)元素のそれぞれが、La,Ce,Pr,Ndから選ばれる一種以上、及びSr,Baから選ばれる一種以上である場合に、室温から200℃の間にキュリー点を持たず、しかも従来知られている酸窒化物系ペロブスカイト型化合物よりも高い比誘電率を有する誘電体組成物を得ることができる。
もっとも好ましいM(1),M(2),M(3)及びM(4)元素は、それぞれLa、Ba、Ti、Taである。M(1),M(2),M(3)及びM(4)元素を、それぞれLa、Ba、Ti、Taとした場合に、室温から200℃の間にキュリー点を持たず、しかも従来知られている酸窒化物系ペロブスカイト型化合物よりも十分に高い比誘電率を有する誘電体組成物を得ることができる。
【0016】
また、本実施形態において、上記x及びyの値は、0<x<1,0≦y≦1の範囲である。なお、0<x≦0.9,0≦y≦0.9であることが好ましい。x及びyの値が0<x≦0.9,0≦y≦0.9の範囲にある場合に、室温から200℃の間にキュリー点を持たず、しかも従来知られている酸窒化物系ペロブスカイト型化合物よりも高い比誘電率を有する誘電体組成物を得ることができる。
より好ましいx及びyの値は、0<x≦0.4,0≦y≦0.5である。x及びyの値が0<x≦0.4,0≦y≦0.5の範囲にある場合に、室温から200℃の間にキュリー点を持たず、しかも従来知られている酸窒化物系ペロブスカイト型化合物よりも十分に高い比誘電率を有する誘電体組成物を得ることができる。
更に好ましいx及びyの値は、0.05<x≦0.2,0.05≦y≦0.15である。x及びyの値が0.05<x≦0.2,0.15≦y≦0.15の範囲にある場合に、室温から200℃の間にキュリー点を持たず、しかも従来知られている酸窒化物系ペロブスカイト型化合物よりも十分に高い比誘電率を有する誘電体組成物を得ることができる。
なお、誘電率の値がxとyの値によって変化する理由は定かではないが、イオン半径が異なる元素の固溶、或いは酸化数が異なる元素の固溶による窒素含有量の変化により結晶構造に適度な歪みが生じ、その結果誘電分極が生じやすくなる場合が考えられる。
【0017】
次に、本実施形態に係る、誘電体組成物の製造方法について説明する。
本実施形態の誘電体組成物の製造方法は、上記した、
一般式:M(1)1−xM(2)M(3)1−yM(4)2+x―y1―x+y
(但し、M(1)元素はY,La,Ce,Pr,Nd,Gdから選ばれる1種以上の元素であり、M(2)元素はMg,Ca,Sr,Baから選ばれる1種以上の元素であり、M(3)元素はTi,Zrから選ばれる1種以上の元素であり、M(4)元素はV,Nb,Taから選ばれる1種以上の元素であり、OとNは酸素と窒素である。)で示される組成である誘電体組成物を得るために、以下の〔1〕〜〔3〕のいずれかの原料を加熱して、以下の〔4〕〜〔6〕のいずれかの中間化合物を生成する工程と、該中間化合物を還元性雰囲気中で加熱する工程とを含むことを特徴とする。
〔1〕M(1)元素、M(2)元素及びM(3)元素のうちの一又は二以上を含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(3)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔2〕M(1)元素、M(2)元素及びM(4)元素のうちの一又は二以上を含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔3〕M(1)元素、M(2)元素、M(3)元素及びM(4)元素のうちの一又は二以上を含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素、M(3)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔4〕M(1)元素及び/又はM(2)元素と、M(3)元素とを含む化合物を一又は二以上含有してなる中間化合物(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(3)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔5〕M(1)元素及び/又はM(2)元素と、M(4)元素とを含む化合物を一又は二以上含有してなる中間化合物(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔6〕M(1)元素及び/又はM(2)元素と、M(3)元素及び/又はM(4)元素とを含む化合物を一又は二以上含有してなる中間化合物(但し、M(1)元素、M(2)元素、M(3)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
なお、中間化合物は、上記〔1〕〜〔3〕に示すような原料(合成用原料)を機械的に混合することにより得られた混合粉末、あるいは液相を介して混合する方法により得られた原料混合物を仮焼することにより得ることができる。
【0018】
本発明の誘電体組成物の合成用原料として用いられる、上記〔1〕〜〔3〕に記載の化合物の少なくとも一つは酸化物であることが好ましい。なお、酸化物のほかに、加熱により酸化物を形成する化合物、あるいは上記元素を含有する複化合物を用いてもよい。
【0019】
また、上記合成用原料の混合方法は、粉末状の合成用原料(原料粉末)を機械的に混合する方法と、液相を介して混合する方法が挙げられる。
機械的に混合する場合は、溶媒を用いない乾式ミルによっても混合可能だが、一般には湿式ミルにより溶媒とともに混合し混合スラリーとするほうが好ましい。溶媒を用いた湿式ミル方を用いたほうが、この混合スラリーを蒸発乾固することにより、短時間で微視的に均一な混合粉末を得ることができる。
なお、ミルの種類としては、ボールミル、振動ミル、アトリッションミル等を用いることができるが、設備費用の観点からはボールミルが適している。また、湿式ミルで混合する際に用いる溶媒は、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ヘキサン、アセトン、水等を挙げることができるが、安全性等及び原料粉末の酸化防止を勘案すると、エタノール、ヘキサンの何れかが好ましい。
【0020】
また、原料粉末と溶媒の比率は、得られる混合スラリーの粘度によって決定される。好ましい混合スラリーの粘度は、50から500cpsである。混合スラリーの粘度が50cpsより小さいと、混合スラリーの乾燥に要するエネルギー量が増大するため好ましくない。一方、混合スラリーの粘度が500cpsを越えると、均一な混合粉末を得るのに長時間を要するため好ましくない。
得られた混合スラリーは、乾燥機等に静置して溶媒を蒸発させてもよいが、スプレードライヤーを用いると、原料粉末の再分離を心配することなく、さらに短時間で、溶媒を除去した混合粉末を得ることができる。また、スプレードライヤーを用いて得られた混合粉末は、数十から数百μmの顆粒状を呈しているため、流動性に優れ、取り扱いが容易となる。
【0021】
また、液相を介して原料粉末を混合して原料混合物とする場合について説明する。
本発明の誘電体組成物の合成に用いられる原料混合物は、共沈法、金属アルコキシド法、ゲル化法(非特許文献3参照)等の液相を介する方法によっても得ることができる。誘電体組成物の合成に液相を介する方法により得られた原料混合物を用いた場合は、原料粉末を機械的に混合した場合よりも短時間での焼成により所望の誘電体組成物を得ることができる。
【0022】
本発明の誘電体組成物の合成には、上述したような、原料粉末の機械的混合により得られた混合粉末、あるいは液相を介した方法により得られた原料混合物を仮焼することにより得られる中間化合物のほかに、中間化合物同士の混合物、或いは中間化合物と原料粉末との混合物等を用いることができる。この場合の混合方法は、上記した原料粉末の混合方法と同様の方法を用いることができる。
【0023】
また、中間化合物を構成する上記〔4〕〜〔6〕に記載の化合物の少なくとも一つは酸化物であることが好ましい。なお、M(1),M(2),M(3)及びM(4)元素を、それぞれLa、Ba、Ti、Taとした場合については、中間化合物として、
LaTi,LaTiO,LaTiO,LaTi12,La1.33Ti16,LaTi15,LaTi27,LaTi24,LaTi17,LaTi,BaTi13,BaTi,BaTiO,BaTi13,BaTiO,BaTi5.513,BaTi16,BaTi1740,BaTi11,BaTi,BaTi20,BaTi1322,BaTi1227,BaTi1330
BaLaTi15,BaLaTi10,BaLaTi18,Ba3.99La8.94Ti1854,Ba0.998La2.235Ti4.513.5
LaTaO,LaTaO,LaTa19,LaTa,BaTa15,BaTa,BaTa1532,BaTa15,BaTa
LaTi1.92Ta1.0811,LaTi3.84Ta2.1622
などが例示できる。
【0024】
上記した中間化合物は、酸化物若しくは加熱により酸化物を形成する化合物である混合粉末または原料混合物を空気中で加熱(仮焼)することにより得られる。なお、後述する窒化処理工程の反応性を勘案し、加熱温度(仮焼成温度)は1400℃以下であることが好ましい。仮焼成温度が1400℃を超えると、生成した中間化合物の粒径が大きくなるため、窒化処理工程での反応性が低下し好ましくない。
【0025】
尚、上記した酸化物群は、あくまでも中間化合物例を示したものであり、上記した酸化物群を構成するLa、Ba、Ti及びTaのそれぞれを、M(1),M(2),M(3)及びM(4)元素(M(1)元素はY,La,Ce,Pr,Nd,Gdから選ばれる1種以上の元素であり、M(2)元素はMg,Ca,Sr,Baから選ばれる1種以上の元素であり、M(3)元素はTi,Zrから選ばれる1種以上の元素であり、M(4)元素はV,Nb,Taから選ばれる1種以上の元素)とした場合においても、同様の効果が得られる。また、上記した酸化物とM(1)元素の酸化物、M(2)元素の酸化物からなる複酸化物を用いても同様の効果が得られる。
【0026】
また、本実施形態に係る誘電体組成物は、上述したような原料(合成用原料)を還元性雰囲気で加熱(焼成)することにより製造することも可能である。
つまり、本実施形態に係る誘電体組成物の製造方法は、以下の〔7〕〜〔9〕のいずれかの原料を還元性雰囲気中で加熱する工程を含んでもよい。
〔7〕M(1)元素、M(2)元素及びM(3)元素のうちの一又は二以上を含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(3)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔8〕M(1)元素、M(2)元素及びM(4)元素のうちの一又は二以上を含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔9〕M(1)元素、M(2)元素、M(3)元素及びM(4)元素のうちの一又は二以上を含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素、M(3)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
このように、本実施形態に係る誘電体組成物は、上述したような中間化合物を生成せず、原料を直接還元窒化する方法でも製造することができる。
【0027】
また、本実施形態に係る誘電体組成物は、上述したような中間化合物を出発原料として、この出発原料を還元性雰囲気で加熱(焼成)することにより製造することも可能である。
つまり、本実施形態に係る誘電体組成物の製造方法は、以下の〔10〕〜〔12〕のいずれかの原料(中間化合物)を還元性雰囲気中で加熱する工程を含んでもよい。
〔10〕M(1)元素及び/又はM(2)元素と、M(3)元素とを含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(3)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔11〕M(1)元素及び/又はM(2)元素と、M(4)元素とを含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔12〕M(1)元素及び/又はM(2)元素と、M(3)元素及び/又はM(4)元素とを含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素、M(3)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
【0028】
上記の原料混合物、混合粉末、中間化合物あるいは中間化合物を含む混合物を還元性雰囲気中で焼成(窒化処理工程)する際は、嵩密度40%以下の充填率に保持した状態で焼成するとよい。嵩密度とは粉末の体積充填率であり、一定容器に充填したときの質量と体積の比を化合物の理論密度で割った値である。嵩密度を40%以下の状態に保持したまま焼成するのは、原料混合物、混合粉末、中間化合物あるいは中間化合物を含む混合物の周りに自由な空間がある状態で焼成することにより、原料混合物、混合粉末、中間化合物あるいは中間化合物を含む混合物と雰囲気ガスとの反応性が向上するためである。
【0029】
還元性雰囲気中で焼成する際の焼成温度は、800から1500℃の温度範囲とする。これにより所望の誘電体組成物が得られるが、好ましい温度範囲は800〜1200℃である。焼成温度が800℃よりも低いと所望の誘電体組成物を得るのに長時間を要し、1500℃よりも高いと誘電体組成物の表面において熱分解が始まるため、何れも好ましくない。
また、焼成時間は1時間から20時間程度であるが、より均一な誘電体組成物とするために、繰り返し焼成を行っても差し支えない。繰り返し焼成を行う場合は、2回目以降の焼成前に一回目の焼成物を解砕混合して均一性を高めるとよい。
焼成雰囲気は、還元性雰囲気とする。なお、窒素、アンモニアから選ばれる一種以上と、必要に応じて水素を加えた雰囲気中が好ましい。もっとも好ましいのはアンモニア雰囲気中である。雰囲気ガスは、焼成炉中に充填された状態でも差し支えないが、雰囲気ガスの気流中で焼成する方が望ましい。ガス流量は、通常10ml/分以上である。
【0030】
また、中間化合物あるいは中間化合物を含む混合物を充填する容器の材質としては、アルミナ、カルシア、マグネシア、黒鉛或いは窒化硼素を使用することが出来る。
焼成開始時は、一旦減圧もしくは真空状態として、炉内の残留空気を炉外に排気するか、若しくは、使用する雰囲気ガスを用いて炉内に残留している空気をパージする必要があるが、後者の場合、残留空気の除去には長時間を要するため、減圧もしくは真空状態とする方が好ましい。
【0031】
本発明の誘電体組成物の焼結体を作製する場合には、少量の焼結助剤を用いることができる。焼結助剤としては、アルカリ金属、アルカリ土類金属、珪素、ビスマス、硼素の酸化物、フッ化物などが挙げられる。一般に焼結助剤の添加量は、0.1から10重量%程度である。
【0032】
また、本発明に係る誘電体組成物を用いて、積層焼結体を作製することも可能である。
この積層焼結体を作製する場合は、本発明の誘電体組成物粉末に、焼結助剤、バインダー、溶媒、その他添加剤を加えて、混練して、セラミック・スラリーを形成する。バインダーとしては、ポリビニルブチラール樹脂やポリビニルアルコール、アクリル酸ポリマー等を使用することができる。溶媒としては、エタノールやイソプロピルアルコール、水等を使用することができる。
得られたセラミック・スラリーを、PETフィルムなどの長尺のベース・フィルムに、ドクターブレード、ロールコータなどの塗布機を用いてシート状に塗布し、セラミック・グリーンシートとする。
【0033】
また、積層セラミックコンデンサーを作製する場合は、このセラミック・グリーンシートに、スクリーン印刷等によって導電ペーストを塗布し、内部電極金属層を形成する。この内部電極金属層の形成に用いる導電ペーストには、Pt,Pd,Ag,Cu,Ni等の金属粉末をバインダーに分散したものを用いる。
内部電極金属層が形成されたセラミック・グリーンシートを、所定形状に打ち抜いて、これらを積み重ね、圧着してセラミック積層体を得る。この積層体を切断分割して、積層体チップとする。この積層体チップを加熱し、脱バインダーした後、焼成する。
焼成後の積層体チップに導電ペーストを焼き付けることにより外部電極を形成して、積層セラミックコンデンサーを得る。また、未焼成の積層体チップに導電ペーストを塗布してセラミック誘電体層の焼成と同時に焼き付けるようにしてもよい。
【0034】
本発明の誘電体組成物は、誘電体組成物粉末と樹脂とを混合した複合体を作製することにより、コンデンサーとしての機能を有する回路基板材料とすることもできる。
この場合の樹脂は、熱可塑性、熱硬化性樹脂のいずれでも良いが、はんだ耐熱性などの点から、好ましくは熱硬化性樹脂を用いる。熱可塑性樹脂では、ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、液晶ポリマー樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、フッ素樹脂などを用いることができる。また、熱硬化性樹脂では、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、シアネート樹脂、ベンゾシクロブテン樹脂など一般的にプリント配線板の絶縁層に使用される樹脂を用いることができる。特に、熱硬化収縮性、粘性などの点からエポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂とは分子構造中にエポキシ基(オキシラン環)を2個以上含むプレポリマーおよび、それと硬化剤とを組合せた樹脂である。また、この硬化剤には、フェノールノボラック樹脂、ビスフェノールA型ノボラック樹脂、アミノトリアジン化合物、ナフトール化合物など、従来から用いられている硬化剤を用いることができる。
【0035】
複合体を作製する際の誘電体組成物粉末の樹脂への分散方法は、超音波分散、3本ロール、クレアミックス、ホモジナイザー、メディア分散機、自転・公転ミキサーなど、従来の方法を用いることができるが、分散状態の制御の点で3本ロール、メディア分散機、自転・公転ミキサーから選ばれる一種を用いるのが好ましい。
尚、誘電体組成物粉末を樹脂中に均一に分散させるための方法として、誘電体組成物粉末表面の修飾、分散剤の添加、溶剤の添加などが行われる。誘電体組成物粉末の表面の修飾としてはロジン処理、酸性処理、塩基性処理など、また、分散剤としてはノニオン性、カチオン性、アニオン性の界面活性剤、多価カルボン酸などの湿潤剤、両親和性物質、高立体障害の置換基を有する樹脂などが挙げられる。
【0036】
以上のようにして、誘電体組成物粉末と樹脂、さらに適宜、溶剤、分散剤などからなるペースト溶液を、スピンナー、スクリーン印刷、ブレードコーター、ダイコーターなどを用いて基板上に塗布し、製膜した後、ホットプレート、オーブンなどの加熱装置を用いて、溶剤の除去や熱硬化を行うことによって回路基板材料を得ることができる。
基板は有機系基板、無機系基板、およびこれらの基板に回路の構成材料が配置されたものから選択できる。
上記の複合体は、プリント配線基板の内蔵キャパシタ作製に用いられる他、多層基板の層間絶縁膜、周波数フィルター、無線用アンテナ、電磁シールドなど、多くの電子部品、装置への適用が可能である。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例にのみ限定されるものではない。
【0038】
<実施例1>
まず、誘電体組成物の合成用原料として炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末及び酸化チタン粉末を用いて、中間化合物を合成した。
具体的には、本発明における一般式において、xを表1に示す値、またy=0とした組成の誘電体組成物となるよう、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末及び酸化チタン粉末を、表1に示す割合で秤取し、溶媒としてエタノールを用いた湿式ボールミルにより均一に混合し混合スラリーとした。次に、得られたスラリーを蒸発乾固して混合粉末とした後、この混合粉末を解砕した粉末をアルミナ製容器に配置し、空気中、1100℃で2時間焼成し、中間化合物を合成した。なお、得られた中間化合物をメノー乳鉢で解砕し、粉末X線回折装置により生成相を同定したところ、LaTi,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
次に、得られた中間化合物をアルミナ製ボートに配置し、アンモニア気流中1100℃で6時間焼成し、誘電体組成物を生成した。得られた誘電体組成物は濃赤色から赤褐色を呈していた。また、得られた誘電体組成物の結晶構造は、粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成は、La0.9Ba0.1TiO0.9であった。
また、誘電率の測定には、得られた誘電体組成物の粉末を10MPaの圧力で直径10mm、厚さ1mm程度の円板状に成形し、更に、200MPaの圧力でCIP成形した試料を用いた。試料の成形体密度を測定した後、導電性ペーストを塗布し、真空中、300K、100kHzで静電容量を測定した。比誘電率は、得られた静電容量の値から、特許第3246001号公報に記載された方法に準拠して、リヒトネッカーの対数混合則を用いて補正を行った。なお、実施例1の場合の比誘電率は、11000であった。なお、実施例2〜11の比誘電率は、実施例1の比誘電率を100とした場合の相対値として表1に示す。
次に、得られた誘電体組成物の試料を冷却・加熱装置に装填し、真空中、−130℃から800℃までの温度範囲で比誘電率の変化を調べた。比誘電率には、チタン酸バリウムのキュリー・ワイス効果に相当する顕著な変化、すなわち、強誘電体から常誘電体への相転移を示す変化は認められず、本発明の誘電体組成物は広範な温度範囲で使用可能であることがわかった。
【0039】
<実施例2>
実施例2は、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末及び酸化チタン粉末を表1に示す割合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で誘電体組成物を生成した。なお、得られた中間化合物の生成相を同定したところ、実施例1と同様に、LaTi,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
得られた誘電体組成物の結晶構造は粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成はLa0.95Ba0.05TiO2.050.95であった。また、その比誘電率は実施例1の比誘電率を100とすると、85.2であった。
実施例2の誘電体組成物は実施例1の誘電体組成物と同じ結晶構造を有し、かつ、実施例1の誘電体組成物と組成の成分は同じであるから、実施例1の誘電体組成物と同様に、広範な温度範囲で強誘電体として使用可能であると考えられる。
【0040】
<実施例3>
実施例3は、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末及び酸化チタン粉末を表1に示す割合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で誘電体組成物を生成した。なお、得られた中間化合物の生成相を同定したところ、実施例1と同様に、LaTi,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
得られた誘電体組成物の結晶構造は粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成はLa0.925Ba0.075TiO2.0750.925であった。また、その比誘電率は実施例1の比誘電率を100とすると、93.3であった。
実施例3の誘電体組成物は実施例1の誘電体組成物と同じ結晶構造を有し、かつ、実施例1の誘電体組成物と組成の成分は同じであるから、実施例1の誘電体組成物と同様に、広範な温度範囲で強誘電体として使用可能であると考えられる。
【0041】
<実施例4>
実施例4は、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末及び酸化チタン粉末を表1に示す割合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で誘電体組成物を生成した。なお、得られた中間化合物の生成相を同定したところ、実施例1と同様に、LaTi,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
得られた誘電体組成物の結晶構造は粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成はLa0.91Ba0.09TiO2.090.91であった。また、その比誘電率は実施例1の比誘電率を100とすると、98.0であった。
実施例4の誘電体組成物は実施例1の誘電体組成物と同じ結晶構造を有し、かつ、実施例1の誘電体組成物と組成の成分は同じであるから、実施例1の誘電体組成物と同様に、広範な温度範囲で強誘電体として使用可能であると考えられる。
【0042】
<実施例5>
実施例5は、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末及び酸化チタン粉末を表1に示す割合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で誘電体組成物を生成した。なお、得られた中間化合物の生成相を同定したところ、実施例1と同様に、LaTi,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
得られた誘電体組成物の結晶構造は粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成はLa0.89Ba0.11TiO2.110.89であった。また、その比誘電率は実施例1の比誘電率を100とすると、98.1であった。
実施例5の誘電体組成物は実施例1の誘電体組成物と同じ結晶構造を有し、かつ、実施例1の誘電体組成物と組成の成分は同じであるから、実施例1の誘電体組成物と同様に、広範な温度範囲で強誘電体として使用可能であると考えられる。
【0043】
<実施例6>
実施例6は、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末及び酸化チタン粉末を表1に示す割合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で誘電体組成物を生成した。なお、得られた中間化合物の生成相を同定したところ、実施例1と同様に、LaTi,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
得られた誘電体組成物の結晶構造は粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成はLa0.875Ba0.125TiO2.1250.875であった。また、その比誘電率は実施例1の比誘電率を100とすると、94.2であった。
実施例6の誘電体組成物は実施例1の誘電体組成物と同じ結晶構造を有し、かつ、実施例1の誘電体組成物と組成の成分は同じであるから、実施例1の誘電体組成物と同様に、広範な温度範囲で強誘電体として使用可能であると考えられる。
【0044】
<実施例7>
実施例7は、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末及び酸化チタン粉末を表1に示す割合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で誘電体組成物を生成した。なお、得られた中間化合物の生成相を同定したところ、実施例1と同様に、LaTi,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
得られた誘電体組成物の結晶構造は粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成はLa0.85Ba0.15TiO2.150.85であった。また、その比誘電率は実施例1の比誘電率を100とすると、88.8であった。
実施例7の誘電体組成物は実施例1の誘電体組成物と同じ結晶構造を有し、かつ、実施例1の誘電体組成物と組成の成分は同じであるから、実施例1の誘電体組成物と同様に、広範な温度範囲で強誘電体として使用可能であると考えられる。
【0045】
<実施例8>
実施例8は、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末及び酸化チタン粉末を表1に示す割合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で誘電体組成物を生成した。なお、得られた中間化合物の生成相を同定したところ、実施例1と同様に、LaTi,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
得られた誘電体組成物の結晶構造は粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成はLa0.8Ba0.2TiO2.20.8であった。また、その比誘電率は実施例1の比誘電率を100とすると、83.9であった。
実施例8の誘電体組成物は実施例1の誘電体組成物と同じ結晶構造を有し、かつ、実施例1の誘電体組成物と組成の成分は同じであるから、実施例1の誘電体組成物と同様に、広範な温度範囲で強誘電体として使用可能であると考えられる。
【0046】
<実施例9>
実施例9は、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末及び酸化チタン粉末を表1に示す割合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で誘電体組成物を生成した。なお、得られた中間化合物の生成相を同定したところ、実施例1と同様に、LaTi,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
得られた誘電体組成物の結晶構造は粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成はLa0.7Ba0.3TiO2.30.7であった。また、その比誘電率は実施例1の比誘電率を100とすると、82.4であった。
実施例9の誘電体組成物は実施例1の誘電体組成物と同じ結晶構造を有し、かつ、実施例1の誘電体組成物と組成の成分は同じであるから、実施例1の誘電体組成物と同様に、広範な温度範囲で強誘電体として使用可能であると考えられる。
【0047】
<実施例10>
実施例10は、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末及び酸化チタン粉末を表1に示す割合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で誘電体組成物を生成した。なお、得られた中間化合物の生成相を同定したところ、実施例1と同様に、LaTi,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
得られた誘電体組成物の結晶構造は粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成はLa0.6Ba0.4TiO2.40.6であった。また、その比誘電率は実施例1の比誘電率を100とすると、79.9であった。
実施例10の誘電体組成物は実施例1の誘電体組成物と同じ結晶構造を有し、かつ、実施例1の誘電体組成物と組成の成分は同じであるから、実施例1の誘電体組成物と同様に、広範な温度範囲で強誘電体として使用可能であると考えられる。
【0048】
<実施例11>
実施例11は、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末及び酸化チタン粉末を表1に示す割合を用いた以外は、実施例1と同様の方法で誘電体組成物を生成した。なお、得られた中間化合物の生成相を同定したところ、実施例1と同様に、LaTi,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
得られた誘電体組成物の結晶構造は粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成はLa0.5Ba0.5TiO2.50.5であった。また、その比誘電率は実施例1の比誘電率を100とすると、71.1であった。
実施例11の誘電体組成物は実施例1の誘電体組成物と同じ結晶構造を有し、かつ、実施例1の誘電体組成物と組成の成分は同じであるから、実施例1の誘電体組成物と同様に、広範な温度範囲で強誘電体として使用可能であると考えられる。
【0049】
【表1】

【0050】
<実施例12>
誘電体組成物の合成用原料として炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末、酸化チタン粉末及び酸化タンタル粉末を用いて、中間化合物を合成した。
具体的には、本発明における一般式において、x=0.1、またyを表2に示す値とした組成の誘電体組成物となるよう、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末及び酸化チタン粉末を、表2に示す割合で秤取し、溶媒としてエタノールを用いた湿式ボールミルにより均一に混合し混合スラリーとした。次に、得られたスラリーを蒸発乾固して混合粉末とした後、この混合粉末を解砕した粉末をアルミナ製容器に配置し、空気中、1300℃で2時間焼成し、中間化合物を合成した。なお、得られた中間化合物をメノー乳鉢で解砕し、粉末X線回折装置により生成相を同定したところ、LaTi,LaTaO,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
次に、得られた中間化合物をアルミナ製ボートに配置し、アンモニア気流中1200℃で6時間焼成し、誘電体組成物を生成した。得られた誘電体組成物は濃赤色から赤褐色を呈していた。また、得られた誘電体組成物の結晶構造は、粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成は、La0.9Ba0.1Ti0.95Ta0.052。050.95であった。
続いて、実施例1〜11と同様にして比誘電率の測定を行った。なお、実施例12〜22の比誘電率は、実施例1の比誘電率を100とした場合の相対値として表2に示す。
次に、得られた誘電体組成物の試料を冷却・加熱装置に装填し、真空中、−130℃から800℃までの温度範囲で比誘電率の変化を調べた。実施例1と同様に、比誘電率には、チタン酸バリウムのキュリー・ワイス効果に相当する顕著な変化は認められず、本発明の誘電体組成物は広範な温度範囲で使用可能であることがわかった。
【0051】
<実施例13>
実施例13は、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末、酸化チタン粉末及び酸化タンタル粉末を表2に示す割合を用いた以外は、実施例12と同様の方法で誘電体組成物を生成した。なお、得られた中間化合物の生成相を同定したところ、実施例12と同様に、LaTi,LaTaO,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
得られた誘電体組成物の結晶構造は粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成はLa0.9Ba0.1Ti0.925Ta0.0752。0250.975であった。また、その比誘電率は実施例1の比誘電率を100とすると、130.0であった。
実施例13の誘電体組成物は実施例12の誘電体組成物と同じ結晶構造を有し、かつ、実施例12の誘電体組成物と組成の成分は同じであるから、実施例12の誘電体組成物と同様に、広範な温度範囲で強誘電体として使用可能であると考えられる。
【0052】
<実施例14>
実施例14は、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末、酸化チタン粉末及び酸化タンタル粉末を表2に示す割合を用いた以外は、実施例12と同様の方法で誘電体組成物を生成した。なお、得られた中間化合物の生成相を同定したところ、実施例12と同様に、LaTi,LaTaO,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
得られた誘電体組成物の結晶構造は粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成はLa0.9Ba0.1Ti0.91Ta0.092。010.99であった。また、その比誘電率は実施例1の比誘電率を100とすると、129.4であった。
実施例14の誘電体組成物は実施例12の誘電体組成物と同じ結晶構造を有し、かつ、実施例12の誘電体組成物と組成の成分は同じであるから、実施例12の誘電体組成物と同様に、広範な温度範囲で強誘電体として使用可能であると考えられる。
【0053】
<実施例15>
実施例15は、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末、酸化チタン粉末及び酸化タンタル粉末を表2に示す割合を用いた以外は、実施例12と同様の方法で誘電体組成物を生成した。なお、得られた中間化合物の生成相を同定したところ、実施例12と同様に、LaTi,LaTaO,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
得られた誘電体組成物の結晶構造は粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成はLa0.9Ba0.1Ti0.9Ta0.1Nであった。また、その比誘電率は実施例1の比誘電率を100とすると、127.4であった。
実施例15の誘電体組成物は実施例12の誘電体組成物と同じ結晶構造を有し、かつ、実施例12の誘電体組成物と組成の成分は同じであるから、実施例12の誘電体組成物と同様に、広範な温度範囲で強誘電体として使用可能であると考えられる。
【0054】
<実施例16>
実施例16は、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末、酸化チタン粉末及び酸化タンタル粉末を表2に示す割合を用いた以外は、実施例12と同様の方法で誘電体組成物を生成した。なお、得られた中間化合物の生成相を同定したところ、実施例12と同様に、LaTi,LaTaO,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
得られた誘電体組成物の結晶構造は粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成はLa0.9Ba0.1Ti0.89Ta0.111.991.01であった。また、その比誘電率は実施例1の比誘電率を100とすると、125.1であった。
実施例16の誘電体組成物は実施例12の誘電体組成物と同じ結晶構造を有し、かつ、実施例12の誘電体組成物と組成の成分は同じであるから、実施例12の誘電体組成物と同様に、広範な温度範囲で強誘電体として使用可能であると考えられる。
【0055】
<実施例17>
実施例17は、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末、酸化チタン粉末及び酸化タンタル粉末を表2に示す割合を用いた以外は、実施例12と同様の方法で誘電体組成物を生成した。なお、得られた中間化合物の生成相を同定したところ、実施例12と同様に、LaTi,LaTaO,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
得られた誘電体組成物の結晶構造は粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成はLa0.9Ba0.1Ti0.875Ta0.1251.9751.025であった。また、その比誘電率は実施例1の比誘電率を100とすると、122.6であった。
実施例17の誘電体組成物は実施例12の誘電体組成物と同じ結晶構造を有し、かつ、実施例12の誘電体組成物と組成の成分は同じであるから、実施例12の誘電体組成物と同様に、広範な温度範囲で強誘電体として使用可能であると考えられる。
【0056】
<実施例18>
実施例18は、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末、酸化チタン粉末及び酸化タンタル粉末を表2に示す割合を用いた以外は、実施例12と同様の方法で誘電体組成物を生成した。なお、得られた中間化合物の生成相を同定したところ、実施例12と同様に、LaTi,LaTaO,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
得られた誘電体組成物の結晶構造は粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成はLa0.9Ba0.1Ti0.85Ta0.151.951.05であった。また、その比誘電率は実施例1の比誘電率を100とすると、121.3であった。
実施例18の誘電体組成物は実施例12の誘電体組成物と同じ結晶構造を有し、かつ、実施例12の誘電体組成物と組成の成分は同じであるから、実施例12の誘電体組成物と同様に、広範な温度範囲で強誘電体として使用可能であると考えられる。
【0057】
<実施例19>
実施例19は、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末、酸化チタン粉末及び酸化タンタル粉末を表2に示す割合を用いた以外は、実施例12と同様の方法で誘電体組成物を生成した。なお、得られた中間化合物の生成相を同定したところ、実施例12と同様に、LaTi,LaTaO,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
得られた誘電体組成物の結晶構造は粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成はLa0.9Ba0.1Ti0.8Ta0.21.91.1であった。また、その比誘電率は実施例1の比誘電率を100とすると、117.4であった。
実施例19の誘電体組成物は実施例12の誘電体組成物と同じ結晶構造を有し、かつ、実施例12の誘電体組成物と組成の成分は同じであるから、実施例12の誘電体組成物と同様に、広範な温度範囲で強誘電体として使用可能であると考えられる。
【0058】
<実施例20>
実施例20は、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末、酸化チタン粉末及び酸化タンタル粉末を表2に示す割合を用いた以外は、実施例12と同様の方法で誘電体組成物を生成した。なお、得られた中間化合物の生成相を同定したところ、実施例12と同様に、LaTi,LaTaO,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
得られた誘電体組成物の結晶構造は粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成はLa0.9Ba0.1Ti0.7Ta0.31.81.2であった。また、その比誘電率は実施例1の比誘電率を100とすると、109.5であった。
実施例20の誘電体組成物は実施例12の誘電体組成物と同じ結晶構造を有し、かつ、実施例12の誘電体組成物と組成の成分は同じであるから、実施例12の誘電体組成物と同様に、広範な温度範囲で強誘電体として使用可能であると考えられる。
【0059】
<実施例21>
実施例21は、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末、酸化チタン粉末及び酸化タンタル粉末を表2に示す割合を用いた以外は、実施例12と同様の方法で誘電体組成物を生成した。なお、得られた中間化合物の生成相を同定したところ、実施例12と同様に、LaTi,LaTaO,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
得られた誘電体組成物の結晶構造は粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成はLa0.9Ba0.1Ti0.6Ta0.41.71.3であった。また、その比誘電率は実施例1の比誘電率を100とすると、103.4であった。
実施例21の誘電体組成物は実施例12の誘電体組成物と同じ結晶構造を有し、かつ、実施例12の誘電体組成物と組成の成分は同じであるから、実施例12の誘電体組成物と同様に、広範な温度範囲で強誘電体として使用可能であると考えられる。
【0060】
<実施例22>
実施例22は、炭酸バリウム粉末、酸化ランタン粉末、酸化チタン粉末及び酸化タンタル粉末を表2に示す割合を用いた以外は、実施例12と同様の方法で誘電体組成物を生成した。なお、得られた中間化合物の生成相を同定したところ、実施例12と同様に、LaTi,LaTaO,BaTiOおよび少量のLaからなることがわかった。
得られた誘電体組成物の結晶構造は粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成はLa0.9Ba0.1Ti0.5Ta0.51.61.4であった。また、その比誘電率は実施例1の比誘電率を100とすると、101.0であった。
実施例22の誘電体組成物は実施例12の誘電体組成物と同じ結晶構造を有し、かつ、実施例12の誘電体組成物と組成の成分は同じであるから、実施例12の誘電体組成物と同様に、広範な温度範囲で強誘電体として使用可能であると考えられる。
【0061】
【表2】

【0062】
<比較例1>
本発明における一般式のxとyを、x=0,y=0とした組成の酸窒化物を合成した。
まず、酸化ランタン粉末及び酸化チタン粉末を用いて、中間化合物の合成を行った。具体的には、酸化ランタン粉末及び酸化チタン粉末を、表3に示す割合で秤取し、溶媒としてエタノールを用いた湿式ボールミルにより均一に混合し混合スラリーとした。次に、得られたスラリーを蒸発乾固して混合粉末とした後、この混合粉末を解砕した粉末をアルミナ製容器に配置し、空気中、1100℃で2時間焼成し、中間化合物を合成した。なお、得られた中間化合物をメノー乳鉢で解砕し、粉末X線回折装置により生成相を同定したところ、LaTiおよび少量のLaからなることがわかった。
次に、得られた中間化合物をアルミナ製ボートに配置し、アンモニア気流中1100℃で6時間焼成し、誘電体組成物を生成した。得られた誘電体組成物は濃赤色から赤褐色を呈していた。また、得られた誘電体組成物の結晶構造は、粉末X線回折法により窒素を含有するペロブスカイト相であることが確認された。また、その組成は、LaTiONであった。
続いて、実施例1〜11と同様にして比誘電率の測定を行った。なお、比較例1の比誘電率は、実施例1の比誘電率を100とした場合の相対値として表3に示す。
【0063】
<比較例2>
本発明における一般式のxとyを、x=1,y=0とした組成の酸化物を合成した。
酸化バリウム粉末及び酸化チタン粉末を用いて、チタン酸バリウムを合成した。具体的には、酸化バリウム粉末及び酸化チタン粉末を、表3に示す割合で秤取し、溶媒としてエタノールを用いた湿式ボールミルにより均一に混合し混合スラリーとした。次に、得られたスラリーを蒸発乾固して混合粉末とした後、アルミナ製容器に配置し、空気中、1100℃で2時間焼成した。得られた生成物をメノー乳鉢で解砕し、粉末X線回折装置により生成相を同定したところ、BaTiOからなることがわかった。
続いて、実施例1〜11と同様にして比誘電率の測定を行った。なお、比較例2の比誘電率は、実施例1の比誘電率を100とした場合の相対値として表3に示す。
【0064】
【表3】

【0065】
<実施例23>
実施例1で用いた誘電体組成物の粉末に、B;63mol%、SiO;3mol%、LiO;34mol%の組成を有する焼結助剤を5mol%添加し、成形助剤(バインダー)として少量のポリビニルアルコールを用いて成形し、400℃で脱バインダーを行った。その後に窒素雰囲気中、1000℃で焼結した。得られた焼結体は気孔率が0.1%以下であった。
【0066】
<実施例24>
エポキシ樹脂の主剤としてジシクロペンタジエン系のHP7200(大日本インキ工業(株)製);20重量部、硬化剤としてフェノールノボラック系のTD−2131(大日本インキ工業(株)製);8重量部、硬化促進剤としてトリフェニルホスフィン(北興化学(株)製);0.28重量部、溶剤γ−ブチロラクトン;30.5重量部を混合し、エポキシ樹脂溶液を作製した。この樹脂溶液に、無機フィラーとして、実施例1で用いた誘電体組成物粉末;215重量部を混合して、複合体(樹脂組成物)を調整した。このとき、無機フィラーと樹脂の合計量を100体積%としたとき、無機フィラーの含有量は65体積%であった。
次に、3本ロールを用いてこの樹脂組成物を混練したのち、厚さ300μmのアルミ基板上にダイコーターを用いて塗布し、オーブンを用いて、80℃×20分間で乾燥させ溶剤を除去した後、170℃×1時間で樹脂を硬化させ、膜厚10μmの回路基板材料としての誘電体組成物を得た。
次に、この誘電体組成物にアルミ電極を蒸着法により形成し、JIS K6911に準拠して比誘電率を測定した結果、比誘電率は650であった。
【産業上の利用可能性】
【0067】
本発明の誘電体組成物は、室温から200℃の間にキュリー点を持たず、しかも従来知られている酸窒化物系ペロブスカイト型化合物よりも高い比誘電率を有することから、パワーモジュール周辺に配置される電子デバイスに好適である。今後、本発明が、大いに活用され、産業の発展に大きく寄与することが期待できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式:M(1)1−xM(2)M(3)1−yM(4)2+x―y1―x+y
で示される組成からなることを特徴とする誘電体組成物。
但し、M(1)元素はY,La,Ce,Pr,Nd,Gdから選ばれる1種以上の元素であり、M(2)元素はMg,Ca,Sr,Baから選ばれる1種以上の元素であり、M(3)元素はTi,Zrから選ばれる1種以上の元素であり、M(4)元素はV,Nb,Taから選ばれる1種以上の元素であり、OとNは酸素と窒素であり、0<x<1かつ0≦y≦1である。
【請求項2】
0<x≦0.9,0≦y≦0.9であることを特徴とする請求項1に記載の誘電体組成物。
【請求項3】
M(1)元素が、La,Ce,Pr,Ndから選ばれる1種以上であり、M(2)元素がSr,Baから選ばれる1種以上であることを特徴とする請求項2に記載の誘電体組成物。
【請求項4】
M(1)元素がLa、M(2)元素がBa、M(3)元素がTi、M(4)元素がTaであることを特徴とする請求項3に記載の誘電体組成物。
【請求項5】
以下の〔1〕〜〔3〕のいずれかの原料を加熱して、以下の〔4〕〜〔6〕のいずれかの中間化合物を生成する工程と、該中間化合物を還元性雰囲気中で加熱する工程とを含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の誘電体組成物の製造方法。
〔1〕M(1)元素、M(2)元素及びM(3)元素のうちの一又は二以上を含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(3)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)、
〔2〕M(1)元素、M(2)元素及びM(4)元素のうちの一又は二以上を含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)、
〔3〕M(1)元素、M(2)元素、M(3)元素及びM(4)元素のうちの一又は二以上を含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素、M(3)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔4〕M(1)元素及び/又はM(2)元素と、M(3)元素とを含む化合物を一又は二以上含有してなる中間化合物(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(3)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔5〕M(1)元素及び/又はM(2)元素と、M(4)元素とを含む化合物を一又は二以上含有してなる中間化合物(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔6〕M(1)元素及び/又はM(2)元素と、M(3)元素及び/又はM(4)元素とを含む化合物を一又は二以上含有してなる中間化合物(但し、M(1)元素、M(2)元素、M(3)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
【請求項6】
前記化合物の少なくとも一つは酸化物であることを特徴とする請求項5に記載の誘電体組成物の製造方法。
【請求項7】
以下の〔1〕〜〔3〕のいずれかの原料を還元性雰囲気中で加熱する工程を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の誘電体組成物の製造方法。
〔1〕M(1)元素、M(2)元素及びM(3)元素のうちの一又は二以上を含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(3)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)、
〔2〕M(1)元素、M(2)元素及びM(4)元素のうちの一又は二以上を含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)、
〔3〕M(1)元素、M(2)元素、M(3)元素及びM(4)元素のうちの一又は二以上を含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素、M(3)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
【請求項8】
前記化合物の少なくとも一つは酸化物であることを特徴とする請求項5に記載の誘電体組成物の製造方法。
【請求項9】
以下の〔1〕〜〔3〕のいずれかの原料を還元性雰囲気中で加熱する工程を含むことを特徴とする請求項1〜4の何れか一項に記載の誘電体組成物の製造方法。
〔1〕M(1)元素及び/又はM(2)元素と、M(3)元素とを含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(3)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔2〕M(1)元素及び/又はM(2)元素と、M(4)元素とを含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
〔3〕M(1)元素及び/又はM(2)元素と、M(3)元素及び/又はM(4)元素とを含む化合物を一又は二以上含有してなる原料(但し、M(1)元素、M(2)元素、M(3)元素及びM(4)元素は前記化合物の少なくともいずれか一つに含まれる)
【請求項10】
前記化合物の少なくとも一つは酸化物であることを特徴とする請求項7に記載の誘電体組成物の製造方法。

【公開番号】特開2013−1625(P2013−1625A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−137308(P2011−137308)
【出願日】平成23年6月21日(2011.6.21)
【出願人】(000002004)昭和電工株式会社 (3,251)
【出願人】(301023238)独立行政法人物質・材料研究機構 (1,333)
【Fターム(参考)】