説明

誘電加熱用ホットメルト接着材

【課題】樹脂成形品の外観意匠性・触感を損なわず、被着体である成形品が接着された積層体および成形品に直接熱ダメージを与えず、熱水に浸漬しても接着性を損なわない、誘電加熱に好適なホットメルト接着材を提供する。
【解決手段】(B)金属に表面処理が施された金属材料の少なくとも1面に接して、(A)変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着層が積層された、誘電加熱用ホットメルト接着材。順に、(A)変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着層、(B)金属に表面処理が施された金属材料、及び(A’)変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着層が積層された、誘電加熱用ホットメルト接着材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、誘電加熱によりホットメルト接着層が選択的に加熱される金属層と、金属と樹脂材料の双方に接着性が良好な変性ポリオレフィン樹脂が積層された誘電加熱用ホットメルト接着材であり、誘電加熱により被着体の意匠性を損なうことなく接着が可能で、熱水に浸漬しても接着性を損なわない接着材に関する。エレクトロニクス部材、自動車内装部材、住宅資材、建材などに好適に使用できる。
【背景技術】
【0002】
近年、各種電子機器のモバイル化や自動車メーカーの二酸化炭素削減の取り組みによる成形品の薄肉化、軽量化傾向に加え、各種電子機器筐体や自動車内装部材などの分野で、デザインバリエーションの多様化傾向が急速に進行しており、特に、表面に凹凸がある高い外観意匠性・触感をもつ成形体を得るプロセスが求められている。
【0003】
一方、従来、上記エレクトロニクス部材や自動車内装部材の製造に用いられる接着剤は、溶剤系接着剤が主流であり、成形品に直接塗布した後、乾燥し速やかに二次加工工程に供される。通常、溶剤系接着剤は、スプレーにより成形品に塗布されているが、飛散によるロスや作業環境の悪化、塗装ムラなどの問題点がある。これに対し、ホットメルト接着剤は、溶融状態で塗布し、冷却して接着が完了する簡便な接着剤であり、昨今のVOCフリー要求を満足する利点から、様々な産業で使用されている。
【0004】
上記の外観意匠性を有する成形体製造の際にホットメルト接着剤を使用する場合、熱プレス溶着や振動溶着などの加工方法では、接着加工時の加熱による樹脂系基材の変形や、外観意匠性が損なわれるという問題があった。一方、誘電加熱は、樹脂成形品を直接加熱せず、短時間で接着工程を完了させることができ、例えば、以下のような接着方法が提案されている。(i)高周波誘導加熱装置を用いて、トリアジンチオール金属塩で表面処理された金属箔を、異種の結晶性熱可塑性樹脂材料を重ね合わせて両者を接合する方法(特許文献1)。(ii)体積抵抗率が10−2Ω・cm以下である導電物質を含有するポリオレフィン系樹脂からなる誘電加熱接着用樹脂組成物(特許文献2)。
【0005】
(i)の方法は、0.1MPa以上の圧力で加圧する必要があるため、必要以上の圧力により、成形品の外観意匠性が損なわれ、要求に応えるレベルでないこと、トリアジンチオール金属塩の金属箔への表面処理に溶剤を使用する作業環境および地球環境への悪影響という課題がある。
【0006】
(ii)の方法も、0.2MPaの圧力での接着加工のため、外観意匠性の要求に応えるレベルになく、また、薄肉化・軽量化の傾向に対し、導電物質の粒径以下まで接着層を薄肉化すると接着層に穴があき、接着の信頼性が損なわれること、反対に接着の信頼性を確保すると薄肉化・軽量化に限界があるというのが現状である。
【0007】
また、熱可塑性樹脂層、金属層、熱可塑性樹脂層の順に積層された誘導加熱接着シートとして、高周波誘導加熱により加熱するアルミ箔に、ポリアミド系ホットメルトやポリエステル系ホットメルトの接着材を塗布した誘導加熱接着シートが提案されている(特許文献3)。昨今、ポリオレフィン系樹脂、例えばポリプロピレン系樹脂が、その成形性、剛性、耐熱性、耐薬品性、電気絶縁性に優れ、また、安価であることから、広い範囲で汎用的に使用されているが、この場合、接着材がポリアミドやポリエステルであるため、ポリオレフィン系樹脂からなる被着体を接着できないという課題がある。
【0008】
なお、高周波発熱性を有するポリオレフィン系シート状成形体のみで接着する方法が提案されているが、摩擦熱により溶着する融着方法であり、誘電加熱を用いる融着方法とは原理が異なる(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2004−244446号公報
【特許文献2】特開2003−193009号公報
【特許文献3】特開2001−262085号公報
【特許文献4】特開2009−013231号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、樹脂成形品の外観意匠性・触感を損なわず、被着体である成形品が接着された積層体および成形品に直接熱ダメージを与えず、熱水に浸漬しても接着性を損なわない、誘電加熱に好適なホットメルト接着材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は、上述の現状に鑑み、誘電加熱によりホットメルト接着層を選択的に加熱するための金属層と、金属と樹脂材料の双方に接着性が良好な接着剤が積層された構成が良いとの着想を得、変性ポリオレフィン樹脂からなる接着剤と金属を積層した接着材が被着体の意匠性を損なうことなく接着が可能であることを提案しているが、更に、鋭意検討した結果、金属に表面処理が施された金属材料を用いると、接着後の成形体を熱水に浸漬しても接着性を損なわない優れた耐水耐久性があることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の構成をなす。
【0012】
(1) (B)金属に表面処理が施された金属材料の少なくとも1面に接して、(A)変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着層が積層された、誘電加熱用ホットメルト接着材。
【0013】
(2) 順に、(A)変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着層、(B)金属に表面処理が施された金属材料、及び(A’)変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着層が積層された、誘電加熱用ホットメルト接着材。
((A)と(A’)はそれぞれ同一組成、又は異なった組成でも良い。)
(3) (B)金属に表面処理が施された金属材料の表面処理が、電気めっき、溶融めっき、陽極酸化(アルマイト処理)、クロメート処理である、(1)または(2)に記載の誘電加熱用ホットメルト接着材。
【0014】
(4) 変性ポリオレフィン樹脂が、(a−1)ポリオレフィン樹脂を、エチレン性二重結合および極性基を同一分子内に含む単量体によりグラフト変性されたポリオレフィンである、(1)〜(3)のいずれか一項に記載の誘電加熱用ホットメルト接着材。
【0015】
(5) 極性基が、カルボン酸、その無水物、またはその誘導体であることを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の誘電加熱用ホットメルト接着材。
【0016】
(6) エチレン性二重結合および極性基を同一分子内に含む単量体が、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸グリシジルから選ばれる少なくとも1つである、(1)〜(5)のいずれかに記載の誘電加熱用ホットメルト接着材。
【0017】
(7) 変性ポリオレフィン樹脂が、エチレン性二重結合および極性基を同一分子内に含む化合物に加え、芳香族ビニル単量体または共役ジエン系単量体を用いてグラフト変性されたポリオレフィンである(1)〜(6)のいずれかに記載の誘電加熱用ホットメルト接着材。
【0018】
(8) (a−1)ポリオレフィン樹脂が、エチレン単位、またはプロピレン単位が過半量である(4)〜(7)のいずれかに記載の誘電加熱用ホットメルト接着材。
【0019】
(9) 変性ポリオレフィン樹脂組成物にポリオレフィン樹脂が混合されている、(1)〜(8)のいずれかに記載の誘電加熱用ホットメルト接着材。
【0020】
(10) (B)金属に表面処理が施された金属材料が、鉄、銅、銀、金、アルミニウム、亜鉛、鉛、錫、マグネシウム、鉄を主成分とする合金、銅を主成分とする合金、銀を主成分とする合金、金を主成分とする合金、アルミニウムを主成分とする合金、亜鉛を主成分とする合金、鉛を主成分とする合金、錫を主成分とする合金、マグネシウムを主成分とする合金である、(1)〜(9)のいずれかに記載の誘電加熱用ホットメルト接着材。
【0021】
(11) 変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着層が、シートまたはフィルム状である、(1)〜(10)のいずれかに記載の誘電加熱用ホットメルト接着材。
【0022】
(12) (B)金属に表面処理が施された金属材料が、シートまたはフィルム状である、(1)〜(11)のいずれかに記載の誘電加熱用ホットメルト接着材。
【0023】
(13) 前記変性ポリオレフィン樹脂組成物をシートまたはフィルム状に成形加工し、(B)金属に表面処理が施された金属材料のシートまたはフィルムと積層して、加熱によりラミネーション加工することにより得られる、誘電加熱用ホットメルト接着シートまたはフィルム。
【0024】
(14) (B)金属に表面処理が施された金属材料の少なくとも一面と、変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着層が接し、前記接着層の金属材料と接していない面が(C)被着体と接し、誘電加熱により接着された積層体。
【0025】
(15) (A)変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着層、(B)の金属に表面処理が施された金属材料の層、(A’)変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着層がこの順に積層され、さらに少なくとも2つ以上の(C)被着体の接合面間に挟まれ、誘電加熱により接着された積層体。((A)と(A’)は同一組成、または異なる組成でも良い。)
(16) (13)に記載の接着シートまたはフィルムを少なくとも2つ以上の(C)被着体の接合面間に挟み、誘電加熱により接着された積層体。
【0026】
(17) (C)被着体のうち少なくとも1つ以上が(c−1)外観意匠性を有する被着体であることを特徴とする、(14)〜(16)のいずれかに記載の積層体。
【0027】
(18) (C)被着体が、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、スチレン・アクリロニトリル・共役ジエン共重合体、ポリアミド、ポリイミド、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・アクリロニトリル・共役ジエン共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー及びこれらの発泡成形体からなる群から選ばれる、(14)〜(17)のいずれかに記載の積層体。
【発明の効果】
【0028】
本発明の誘電加熱用ホットメルト接着材は、成形品の外観意匠性・触感を損なわず接着でき、接着後の成形体を熱水に浸漬しても接着性を損なわなず、高い外観意匠性や耐水耐久性が求められる自動車用部品、家電などの電気電子部品、住宅資材、建材、各種産業用資材などの幅広い分野に好適に用いられる。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下に本発明の詳細について述べる。
【0030】
(変性ポリオレフィン樹脂)変性ポリオレフィン樹脂の原料としては、特に限定されず各種のものを使用することができる。例示するならば、エチレン、プロピレン、ブテン−1、4−メチルペンテン−1、オクテン−1などのα−オレフィンを単独または共重合して得た重合体を酸化してカルボキシル基を導入したもの、エチレン/塩化ビニル共重合体、エチレン/塩化ビニリデン共重合体、エチレン/アクリロニトリル共重合体、エチレン/メタクリロニトリル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリルアミド共重合体、エチレン/メタクリルアミド共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン/アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸イソブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸金属塩共重合体、エチレン/メタクリル酸金属塩共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、又はその鹸化物、エチレン/プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/ビニル単量体共重合体;塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレンなどの塩素化ポリオレフィンなどが挙げられる。これらの極性基導入ポリオレフィンは混合しても使用できる。
【0031】
変性ポリオレフィン樹脂としては、(a−1)ポリオレフィン樹脂を、エチレン性二重結合および極性基を同一分子内に含む単量体によりグラフト変性したポリオレフィン樹脂を用いることもできる。
【0032】
前記(a−1)ポリオレフィン樹脂とは、例えばポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンおよび/または1−ブテンとのあらゆる比率でのランダム共重合体またはブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が50重量%以下であるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレンおよび/またはプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、エチレンまたはプロピレンと50重量%以下のビニル化合物などとのランダム共重合体、ブロック共重合体、エチレン/塩化ビニル共重合体、エチレン/塩化ビニリデン共重合体、エチレン/アクリロニトリル共重合体、エチレン/メタクリロニトリル共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、エチレン/アクリルアミド共重合体、エチレン/メタクリルアミド共重合体、エチレン/アクリル酸共重合体、エチレン/メタクリル酸共重合体、エチレン/マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸メチル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル共重合体、エチレン/アクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン/アクリル酸ブチル共重合体、エチレン/アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン/アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン/メタクリル酸メチル共重合体、エチレン/メタクリル酸エチル共重合体、エチレン/メタクリル酸イソプロピル共重合体、エチレン/メタクリル酸ブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸イソブチル共重合体、エチレン/メタクリル酸2−エチルヘキシル共重合体、エチレン/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸エチル/無水マレイン酸共重合体、エチレン/アクリル酸金属塩共重合体、エチレン/メタクリル酸金属塩共重合体、エチレン/酢酸ビニル共重合体、又はその鹸化物、エチレン/プロピオン酸ビニル共重合体、エチレン/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/アクリル酸エチル/メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン/酢酸ビニル/メタクリル酸グリシジル共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/ビニル単量体共重合体;塩素化ポリプロピレン、塩素化ポリエチレンなどの塩素化ポリオレフィン、などが挙げられる。
【0033】
これらポリオレフィン樹脂のなかでも、すぐれた物性バランスを有し、各種のものが入手容易であること、安価であること、等の理由により、ポリエチレン、ポリプロピレンが好ましく、それぞれ、エチレン、プロピレン単位が過半量であるものが好ましい。
【0034】
前記原料ポリオレフィン樹脂には、必要に応じて、他の樹脂またはゴムを本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。
【0035】
前記の他の樹脂またはゴムとしては、たとえばポリペンテン−1、ポリメチルペンテン−1などのポリα−オレフィン;プロピレン含有量が75重量%未満のプロピレン/ブテン−1共重合体などのα−オレフィン共重合体;プロピレン含有量が75重量%未満のエチレン/プロピレン/5−エチリデン−2−ノルボルネン共重合体などのエチレンまたはα−オレフィン/α−オレフィン/ジエン単量体共重合体;ポリブタジエン、ポリイソプレンなどのポリジエン共重合体;スチレン/ブタジエンランダム共重合体などのビニル単量体/ジエン単量体ランダム共重合体;スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体などのビニル単量体/ジエン単量体/ビニル単量体ブロック共重合体;水素化(スチレン/ブタジエンランダム共重合体)などの水素化(ビニル単量体/ジエン単量体ランダム共重合体);水素化(スチレン/ブタジエン/スチレンブロック共重合体)などの水素化(ビニル単量体/ジエン単量体/ビニル単量体ブロック共重合体);アクリロニトリル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体、メタクリル酸メチル/ブタジエン/スチレングラフト共重合体などのビニル単量体/ジエン単量体/ビニル単量体グラフト共重合体;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリ酢酸ビニル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリル酸ブチル、ポリメタクリル酸メチル、ポリスチレンなどのビニル重合体;塩化ビニル/アクリロニトリル共重合体、塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体、アクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリル酸メチル/スチレン共重合体などのビニル共重合体などがあげられる。
【0036】
ポリオレフィン樹脂に対するこれら他の樹脂またはゴムの添加量は、この樹脂の種類またはゴムの種類により異なり、前述のように本発明の効果を損なわない範囲内にあればよいものであるが、通常、25重量%程度以下であることが好ましい。
【0037】
また、これらポリオレフィン樹脂(各種の添加材料を含む場合もある)は粒子状のものであってもペレット状のものであってもよく、その大きさや形はとくに制限されるものではない。
【0038】
また、前記の添加材料(ほかの樹脂、およびゴム)を用いる場合は、この添加材料は予めポリオレフィン樹脂に添加されているものであっても、ポリオレフィン樹脂を溶融するときに添加されるものであってもよく、また変性ポリオレフィン樹脂を製造したのちに適宜の方法でこの変性ポリオレフィン樹脂に添加されるものであってもよい。上記ポリオレフィン樹脂をグラフト変性するためのエチレン性二重結合および極性基を同一分子内に含む単量体としては特に限定なく種々のものを用いることができる。極性基としては、カルボン酸、酸無水物、またはその誘導体、等を好適に用いることができる。このような単量体の具体例としては、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、テトラヒドロフタル酸、イタコン酸、シトラコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、ノルボルネンジカルボン酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプトー2−エン−5,6−ジカルボン酸などの不飽和カルボン酸、またはこれらの酸無水物あるいはこれらの誘導体(例えば、酸ハライド、アミド、イミド、エステルなど)が挙げられる。具体的な化合物の例としては、塩化マレニル、マレニルイミド、無水マレイン酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、テトラヒドロ無水フタル酸、ビシクロ[2,2,1]ヘプトー2−エン−5,6−ジカルボン酸無水物、マレイン酸ジメチル、マレイン酸モノメチル、マレイン酸ジエチル、フマル酸ジエチル、イタコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、テトラヒドロフタル酸ジメチル、ビシクロ[2,2,1]ヘプトー2−エン−5,6−ジカルボン酸ジメチル、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、(メタ)アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノグリシジル、マレイン酸ジグリシジル、イタコン酸モノグリシジル、イタコン酸ジグリシジル、アリルコハク酸モノグリシジル、アリルコハク酸ジグリシジル、p−スチレンカルボン酸グリシジル、アリルグリシジルエーテル、メタアリルグリシジルエーテル、スチレン−p−グリシジルエーテル、p−グリシジルスチレン、3,4−エポキシ−1−ブテン、3,4−エポキシ−3−メチル−1−ブテン、ビニルシクロヘキセンモノオキシド、メタクリル酸アミノエチルおよびメタクリル酸アミノプロピルなどを挙げることができる。これらの中では、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸グリシジル、が好ましい。
【0039】
エチレン性二重結合および極性基を同一分子内に含む単量体の使用量は、特に制限されないが、主鎖のポリオレフィン100重量部に対して0.1〜20重量部であることが好ましい。0.1重量部より少ないと、(B)の金属材料に対する接着性が十分でなく、20重量部より多いと、残留モノマーが多く発生し、物性に悪影響を与える。
【0040】
ポリオレフィンに対して、エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体をグラフト重合する際、本発明の目的を損なわない範囲で、その他の単量体を用いてもよい。その他の単量体としては、水酸基含有エチレン性不飽和化合物、アミノ基含有エチレン性不飽和化合物、エポキシ基含有エチレン性不飽和化合物、芳香族ビニル化合物、共役ジエン系化合物、ビニルエステル化合物、塩化ビニル、オキサゾリン基含有不飽和単量体などが挙げられる。
【0041】
芳香族ビニル化合物や共役ジエン系化合物を用いた場合、ポリプロピレンなどの分子鎖切断型ポリオレフィンへのグラフトの際に分子鎖の切断が抑制され、高い分子量を保ったまま、エチレン性不飽和カルボン酸またはその誘導体を高い比率で導入することができる。
【0042】
芳香族ビニル化合物を例示するならば、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ジメチルスチレン、トリメチルスチレンなどのメチルスチレン;o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン、α−クロロスチレン、β−クロロスチレン、ジクロロスチレン、トリクロロスチレンなどのクロロスチレン;o−ブロモスチレン、m−ブロモスチレン、p−ブロモスチレン、ジブロモスチレン、トリブロモスチレンなどのブロモスチレン;o−フルオロスチレン、m−フルオロスチレン、p−フルオロスチレン、ジフルオロスチレン、トリフルオロスチレンなどのフルオロスチレン;o−ニトロスチレン、m−ニトロスチレン、p−ニトロスチレン、ジニトロスチレン、トリニトロスチレンなどのニトロスチレン;o−ヒドロキシスチレン、m−ヒドロキシスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ジヒドロキシスチレン、トリヒドロキシスチレンなどのビニルフェノール;o−ジビニルベンゼン、m−ジビニルベンゼン、p−ジビニルベンゼンなどのジビニルベンゼン;o−ジイソプロペニルベンゼン、m−ジイソプロペニルベンゼン、p−ジイソプロペニルベンゼンなどのジイソプロペニルベンゼン;などの1種または2種以上が挙げられる。これらのうちスチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレンなどのメチルスチレン、ジビニルベンゼン単量体またはジビニルベンゼン異性体混合物が安価であるという点で好ましい。
【0043】
前記芳香族ビニル単量体または共役ジエン系単量体の添加量は、ポリオレフィン樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.1〜5重量部であることがさらに好ましい。添加量が少なすぎるとポリオレフィン樹脂に対するエチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む単量体のグラフト率が劣る傾向がある。一方、添加量が10重量部を超えるとエチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む単量体のグラフト効率が飽和域に達する。 上記ポリオレフィンとエチレン性不飽和基および極性官能基を同一分子内に含む単量体、さらに必要に応じてビニル芳香族系単量体または共役ジエン系単量体を、ラジカル重合開始剤の存在下、または不存在下で加熱して反応させることにより、変性ポリオレフィンを得ることができる。
【0044】
ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物あるいはアゾ化合物などを挙げることができる。例示するならば、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;パーメタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの有機過酸化物の1種または2種以上があげられる。
【0045】
これらのうち、とくに水素引き抜き能が高いものが好ましく、そのようなラジカル重合開始剤としては、たとえば1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)バレレート、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール;ジクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;t−ブチルパーオキシオクテート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ジ−t−ブチルパーオキシイソフタレートなどのパーオキシエステルなどの1種または2種以上があげられる。
【0046】
前記ラジカル重合開始剤の添加量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部の範囲内にあることが好ましく、0.2〜5重量部の範囲内にあることがさらに好ましい。0.01重量部未満では変性が充分に進行せず、10重量部を超えると流動性、機械的特性の低下を招くことがある。
【0047】
本発明に用いるグラフト重合反応としては、特に制限されないが、溶液重合、含浸重合、溶融重合などを用いることができる。特に、溶融重合が簡便で好ましい。
【0048】
溶融混練時の添加順序及び方法については、ポリオレフィン樹脂とラジカル重合開始剤とエチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む単量体を溶融混練した混合物に、芳香族ビニル単量体を加え溶融混練する添加順序がよく、この添加順序で行うことでエチレン性二重結合及び極性基を同一分子内に含む単量体を効率よくポリオレフィンにグラフトさせ、且つ変性時の機械的物性の低下を抑制できる。なお、その他必要に応じ添加される材料の混合や溶融混練の順序及び方法はとくに制限されるものではない。
【0049】
溶融混練時の加熱温度は、100〜250℃であることが、ポリオレフィン樹脂が充分に溶融し、かつ熱分解しないという点で好ましい。また溶融混練の時間(ラジカル重合開始剤を混合してからの時間)は、通常30秒間〜60分間である。
【0050】
また、前記の溶融混練の装置としては、押出機、バンバリーミキサー、ミル、ニーダー、加熱ロールなどを使用することができる。生産性の面から単軸あるいは2軸の押出機を用いる方法が好ましい。また、各々の材料を充分に均一に混合するために、前記溶融混練を複数回繰返してもよい。
【0051】
変性ポリオレフィン樹脂組成物には必要に応じて、酸化防止剤、金属不活性剤、燐系加工安定剤、紫外線吸収剤、紫外線安定剤、蛍光増白剤、金属石鹸、制酸吸着剤などの安定剤、または架橋剤、連鎖移動剤、核剤、滑剤、可塑剤、充填材、強化材、顔料、染料、難燃剤、帯電防止剤などの添加剤を本発明の効果を損なわない範囲内で添加してもよい。これらの安定剤および添加剤を用いる場合は、予めポリオレフィン樹脂に添加されているものであってもよく、ポリオレフィン樹脂をグラフト変性させる際に添加されるものであってもよく、また変性ポリオレフィン樹脂を製造したのちに適宜の方法でこの変性ポリオレフィン樹脂に添加されるものであってもよい。
【0052】
変性ポリオレフィン樹脂組成物は、ポリオレフィン樹脂と混合して用いても使用することができる。
【0053】
変性ポリオレフィン樹脂組成物に混合されるポリオレフィン樹脂としては、例えばポリプロピレン単独重合体、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、プロピレンとエチレンおよび/または1−ブテンとのあらゆる比率でのランダム共重合体またはブロック共重合体、エチレンとプロピレンとのあらゆる比率においてジエン成分が50重量%以下であるエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体、ポリメチルペンテン、シクロペンタジエンとエチレンおよび/またはプロピレンとの共重合体などの環状ポリオレフィン、エチレンまたはプロピレンと50重量%以下のたとえば酢酸ビニル、メタクリル酸アルキルエステル、アクリル酸アルキルエステル、芳香族ビニルなどのビニル化合物などとのランダム共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマーブロック共重合体、オレフィン系熱可塑性エラストマー(ポリプロピレンとエチレン/プロピレン共重合体又はエチレン−プロピレン−ジエン三元共重合体の単純混合物、その一部架橋物、又はその完全架橋物)などが挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を混合して用いることができる。
【0054】
剛性が高く、安価であるという点からはポリプロピレン単独重合体が好ましく、剛性および耐衝撃性がともに高いという点からはプロピレンとほかの単量体とのブロック共重合体であることが好ましい。また、柔軟性が必要な場合にはポリオレフィン系熱可塑性エラストマーが好ましい。
【0055】
変性ポリオレフィン樹脂組成物とポリオレフィン樹脂を混合する際にその混合量は特に限定はないが、変性ポリオレフィン樹脂組成物100重量部に対し、ポリオレフィン樹脂を0.1〜100重量部含有することが接着性の点で好ましく、更には0.1〜70重量部を含有させることが好ましい。より好ましくは0.3〜50重量部であり、更に好ましくは0.5〜20重量部である。
【0056】
(シートまたはフィルム状成形体について)
変性ポリオレフィン樹脂組成物は、熱溶着性を有するシートまたはフィルム状成形体にすることができる。また、ポリオレフィン樹脂に変性ポリオレフィン樹脂組成物を添加してなるポリオレフィン樹脂組成物も、熱溶着性を有するシートまたはフィルム状成形体にすることができる。本発明でいう熱溶着性とは、熱で溶けて被着体と接合する性質のことである。本発明のシートまたはフィルム状成形体とは、成形体の厚みとしては3μmから3mmが例示でき、好ましくは10μm〜1mmであり、シートあるいはフィルムとして利用することができるものである。
【0057】
熱溶着性を有するポリオレフィンシートまたはフィルム状成形体の製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば変性ポリオレフィン樹脂組成物と、必要に応じてポリオレフィン樹脂をドライブレンド、あるいは溶融混練した後に、各種の押出成形機、射出成形機、カレンダー成形機、インフレーション成形機、ロール成形機、あるいは加熱プレス成形機などを用いてシート状成形体に成形加工することが可能である。
【0058】
(金属材料について)
本発明で用いられる金属材料としては、金属に表面処理が施された磁性体、非磁性体の何れの金属材料も使用することができ、例えば、鉄、銅、銀、金、アルミニウム、亜鉛、鉛、錫、マグネシウム、鉄を主成分とする合金、銅を主成分とする合金、銀を主成分とする合金、金を主成分とする合金、アルミニウムを主成分とする合金、亜鉛を主成分とする合金、鉛を主成分とする合金、錫を主成分とする合金、マグネシウムを主成分とする合金、などが挙げられる。薄膜化できて安価であるという点から、という点から、鉄、銅、アルミニウム、亜鉛、鉄を主成分とする合金、銅を主成分とする合金、アルミニウムを主成分とする合金、亜鉛を主成分とする合金が好ましい。金属の表面処理としては、例えば、電気めっき、溶融めっき、陽極酸化(アルマイト処理)、クロメート処理、火炎焼入れ処理、高周波焼入れ処理、などが挙げられる。柔軟性があり後加工がし易いという点から、電気めっき、溶融めっき、陽極酸化(アルマイト処理)、クロメート処理が好ましい。表面処理を施すことにより、熱水に浸漬されても金属表面が腐食しないので、接着加工直後の接着強度を保持することができる。
【0059】
これらの金属材料は、誘電加熱により発熱体として作用する。
【0060】
これらの金属材料の厚みとしては、1μmから3mmが例示でき、好ましくは3μm〜1mmであり、さらに好ましくは5μm〜0.5mmである。
【0061】
(誘電加熱用ホットメルト接着材の製造方法)
本発明の誘電加熱用ホットメルト接着材の製造方法としては、特に限定されるものではないが、変性ポリオレフィン樹脂組成物のシートまたはフィルム状の成形体と、金属材料のシートまたはフィルムと積層して、各種の熱ラミネーター機、ロール成形機、加熱プレス成形機などを用いてシート状積層体に加工することが可能である。
【0062】
また、変性ポリオレフィンを溶媒に溶解し、金属材料のシートまたはフィルムに塗布乾燥して誘電加熱用ホットメルト接着材とすることもできる。
【0063】
(被着体について)
本発明で用いられる被着体の材料としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリスチレン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル・ウレタン樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・アクリロニトリル・共役ジエン共重合体、ポリカーボネート樹脂、シリコン樹脂、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマーなどの合成高分子材料が挙げられる。これら高分子材料をベースとする発泡成形体も被着体として用いることができる。 被着体としてはこのほか、ガラス、セラミックスなどの無機材料;紙、布などのセルロース系高分子材料、等が挙げられる。
【0064】
被着体の材料として、異なる2種類以上の材料を混合、複合してもよい。また、積層体が本発明の接着性フィルムを介して、異なる2つの被着体が接着してなるものである場合、2つの被着体を構成する材料は、同じ種類の材料でも異なる種類の材料のいずれでもよい。被着体の性状としては特に限定されないが、例えば、フィルム状、シート状、板状、繊維状などが挙げられる。また、被着体には、必要に応じて、離型剤、メッキなどの被膜、塗料による塗膜、プラズマやレーザーなどによる表面改質、表面酸化、エッチングなどの表面処理等を実施してもよい。被着体の具体例としては、トリム類(ドアトリム、内装トリムなど)、成形天井、シート材(内装シート、インパネ表皮、装飾シートなど)等の自動車部材や、室内ドア、パーティション、内装壁板、家具、システムキッチン、等の住宅資材で使用される化粧フィルムや、システムバス、システム洗面化粧台、レストルーム等の水周りの住宅資材部材が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0065】
(誘電加熱用ホットメルト接着材を用いた接着方法について)
本発明の誘電加熱用ホットメルト接着材を用いて被着体を接着する方法として、以下の工程が挙げられる。
【0066】
被着体/変性ポリオレフィン樹脂組成物/金属材料/変性ポリオレフィン樹脂組成物/被着体、を重ね合わせ、誘電加熱装置の上に置く。変性ポリオレフィン樹脂組成物/金属材料/変性ポリオレフィン樹脂組成物の積層部位については、予め熱ラミネーションにより一体化した複合部材を用いてもよい。次いで、誘電加熱装置から誘電電圧をかけて、本発明の誘電加熱用ホットメルト接着材を誘電発熱させ、時間経過とともに当該接着剤の温度が上昇して溶融し、被着体と接着する。接着した状態で誘電電圧を切り、放冷して、被着体/接着剤/被着体からなる複合体を冷却する。誘電加熱装置は、用いる金属材料に合せて、発熱する発振周波数に予め調整する。
【0067】
また、被着体/変性ポリオレフィン樹脂組成物/金属材料を重ね合わせ、誘電加熱装置に置いて、誘電加熱による接着を行った後、前記積層体の金属材料の面に、変性ポリオレフィン樹脂組成物/被着体を重ね合わせ、誘電加熱による接着を行ってもよい。
【0068】
また、被着体/変性ポリオレフィン樹脂組成物/金属材料を積層し、通常の加熱圧着により接着を行った後、前記積層体の金属材料面に変性ポリオレフィン樹脂組成物/被着体を重ねて誘電加熱により接着を行うなど、誘電加熱以外の接着方法と組み合わせることも可能である。
【0069】
また、金属材料を挟む変性ポリオレフィン樹脂組成物の組成は、それぞれ同一組成またはそれぞれ異なっても良い。
【0070】
誘導加熱で用いるコイルは、特に限定されるものではないが、例えば、接合したい部材形状に合せて設計されたコイルを用いると、局部的な過度の加熱がなく均一に加熱できるので好ましく、また平面的な部材だけでなく屈曲した立体的な部材を接合することもできるので好ましい。
【0071】
誘電加熱で印加される設定温度としては、80〜300℃の範囲にあることが好ましく、100〜250℃の範囲であればさらに好ましい。なお、発熱体として作用する金属材料の温度は、熱伝対を用いた測定により確認できる。温度は、発熱体として作用する金属材料とコイルの距離、金属材料の厚みで調整できる。80℃未満の場合には、溶融不足で接着強度が得られない傾向があり、300℃を超える場合には、接着剤が過度に発熱して熱分解する傾向があるからである。
【0072】
さらに、誘電加熱での印加時間としては、1〜600秒間の範囲であることが好ましく、10〜300秒間の範囲であればさらに好ましい。600秒間を超える場合には、接着剤が過度に発熱して熱分解する傾向があるからである。
【実施例】
【0073】
以下に具体的な実施例を示すが、本発明は下記実施例に限定されるものではない。下記実施例および比較例中「部」および「%」は、それぞれ「重量部」および「重量%」を表す。
【0074】
(試験片の作成方法)
一例を示す。実施例、比較例で得られた誘電加熱用ホットメルト接着材を凹凸の柄付のポリプロピレン平板(120mm×120mm)の接着面(柄付面の裏面)とポリプロピレン平板(120mm×120mm)の接着面で挟み、市販のIH調理器(象印、品番EZ−EB15)のトッププレートの上に置き、この積層体に木製の錘(2.5kg)を乗せて固定した(0.002MPa)。30秒間にわたり160℃設定の誘電電圧を印加して加熱後、23℃雰囲気下で冷却・静置し、試験片を得た。
【0075】
(熱水浸漬の接着性評価)
熱水浸漬の接着性評価は、(試験片の作成方法)で得られた積層体を10mm幅に切削して、80℃の熱水に4日間浸漬させた。次いで、ラジオペンチを用いてT字に折り曲げ、10mm幅の接着評価用試験片を作成し、島津製作所製AG−2000Aを用い、23℃にて引張テストスピード50mm/minで行った。比較として、熱水浸漬をしていない試験片も、同様に、島津製作所製AG−2000Aを用い、23℃にて引張テストスピード50mm/minで行った。
【0076】
(凹凸柄の残存率の算出)
接着加工前後に、凹凸の柄付のポリプロピレン平板の60°反射率を光沢計VG−2000(日本電色工業製)を用いて測定した。接着加工前の値を100%、100を0%とし、接着加工後の値から、凹凸柄の残存率を算出した。例えば、接着加工前の反射率が1に対し、接着加工後の反射率が60となった場合、(100−60)/(100−1)×100=40%と算出される。
【0077】
(製造例1)
(a−1)ホモポリプロピレン(プライムポリマー製S119、MFR=60)100部、1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5部をホッパー口よりシリンダー温度200℃、スクリュー回転数250rpmに設定した二軸押出機(日本製鋼所製、品名LABOTEX30;φ30mm、L/D=28)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中より(a−2)スチレン5部、(a−3)グリシジルメタクリレート2部を加え溶融混練して変性ポリオレフィン樹脂ペレットを得た(A−1)。
【0078】
併せて、(a−1)ポリプロピレンエチレンラバー(ダウケミカル製V3401、MFR=8)100部、1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5部をホッパー口よりシリンダー温度200℃、スクリュー回転数250rpmに設定した二軸押出機(日本製鋼所製、品名LABOTEX30;φ30mm、L/D=28)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中より(a−2)スチレン5部、(a−3)グリシジルメタクリレート5部を加え溶融混練して変性ポリオレフィン樹脂ペレットを得た(A−2)。
【0079】
前記樹脂ペレット(A−1)70部、前記樹脂ペレット(A−2)30部を、ホッパー口よりシリンダー温度200℃、スクリュー回転数150rpmに設定した二軸押出機(日本製鋼所製、品名LABOTEX30;φ30mm、L/D=28)に供給して溶融混練で得られた樹脂組成物を、シリンダー及びダイス温度200℃、スクリュー回転数100rpmに設定した単軸押出機(東洋精機製、品名ラボプラストミル;φ20mm、L/D=20)のホッパーに投入し、ダイス先端に取り付けたT型ダイスより、幅約13cm、厚み50μmの熱融着性を有するポリオレフィンシート(A−1T)を得た。
【0080】
(製造例2)
(a−1)ポリプロピレンエチレンラバー(ダウケミカル製DE3401.05、MFR=8)100部、1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5部をホッパー口よりシリンダー温度200℃、スクリュー回転数250rpmに設定した二軸押出機(日本製鋼所製、品名LABOTEX30;φ30mm、L/D=28)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中より(a−2)スチレン3部、(a−3)グリシジルメタクリレート7部を加え溶融混練して変性ポリオレフィン樹脂ペレットを得た(A−3)。得られた樹脂ペレット(A−3)を、シリンダー及びダイス温度200℃、スクリュー回転数100rpmに設定した単軸押出機(東洋精機製、品名ラボプラストミル;φ20mm、L/D=20)のホッパーに投入し、ダイス先端に取り付けたT型ダイスより、幅約13cm、厚み50μmの熱融着性を有するポリオレフィンシート(A−2T)を得た。
【0081】
(実施例1)
熱融着性を有するポリオレフィンシート(A−1T)、アルマイトで処理したアルミ箔、熱融着性を有するポリオレフィンシート(A−1T)の順番に積層し、これを2枚の離型シートの間にはさみ、離型シート越しに240℃のアイロンにて熱ラミネーションを1分間行い、誘導加熱用ホットメルト接着材を得た(A−1L)。(A−1L)を接着材に用い、(試験片の作成方法)の手順に従い、積層体を作成した。
【0082】
(実施例2)
熱融着性を有するポリオレフィンシート(A−2T)、アルマイトで処理したアルミ箔、熱融着性を有するポリオレフィンシート(A−2T)の順番に積層し、これを2枚の離型シートの間にはさみ、離型シート越しに240℃のアイロンにて熱ラミネーションを1分間行い、誘導加熱用ホットメルト接着材を得た(A−2L)。(A−2L)を接着材に用い、(試験片の作成方法)の手順に従い、積層体を作成した。
【0083】
(実施例3)
熱融着性を有するポリオレフィンシート(A−1T)、犠牲アノード型皮膜で処理した亜鉛めっき鋼板、熱融着性を有するポリオレフィンシート(A−1T)の順番に積層し、これを2枚の離型シートの間にはさみ、離型シート越しに240℃のアイロンにて熱ラミネーションを1分間行い、誘導加熱用ホットメルト接着材を得た(A−3L)。(A−3L)を接着材に用い、(試験片の作成方法)の手順に従い、積層体を作成した。
【0084】
(比較例1)
熱融着性を有するポリオレフィンシート(A−1T)、表面処理していない1000番台の純アルミ箔、熱融着性を有するポリオレフィンシート(A−1T)の順番に積層し、これを2枚の離型シートの間にはさみ、離型シート越しに240℃のアイロンにて熱ラミネーションを1分間行い、誘導加熱用ホットメルト接着材を得た(A−4L)。(A−4L)を接着材に用い、(試験片の作成方法)の手順に従い、積層体を作成した。
実施例1〜3、比較例1で得られた熱融着性を有するポリオレフィンシートを用いて、凹凸の柄付の被着体と接着した試験片を作成し、凹凸柄の残存率の算出と熱水浸漬後の接着性評価を行った。
【0085】
【表1】

【0086】
実施例1〜3は本発明の表面処理を施した金属材料を積層した接着材を用い、誘電加熱により接着加工した例であり、外観意匠性を損なわず、また熱水に浸漬しても接着性が低下せず、いずれも非常に良好な接着性能を示した。これに対し、比較例1は、熱水に浸漬すると、アルミで界面剥離となり、接着強度が低下している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(B)金属に表面処理が施された金属材料の少なくとも1面に接して、(A)変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着層が積層された、誘電加熱用ホットメルト接着材。
【請求項2】
順に、(A)変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着層、(B)金属に表面処理が施された金属材料、及び(A’)変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着層が積層された、誘電加熱用ホットメルト接着材。
((A)と(A’)はそれぞれ同一組成、又は異なった組成でも良い。)
【請求項3】
(B)金属に表面処理が施された金属材料の表面処理が、電気めっき、溶融めっき、陽極酸化(アルマイト処理)、クロメート処理である、請求項1または2に記載の誘電加熱用ホットメルト接着材。
【請求項4】
変性ポリオレフィン樹脂が、(a−1)ポリオレフィン樹脂を、エチレン性二重結合および極性基を同一分子内に含む単量体によりグラフト変性されたポリオレフィンである、請求項1〜3のいずれか一項に記載の誘電加熱用ホットメルト接着材。
【請求項5】
極性基が、カルボン酸、その無水物、またはその誘導体であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の誘電加熱用ホットメルト接着材。
【請求項6】
エチレン性二重結合および極性基を同一分子内に含む単量体が、(メタ)アクリル酸、無水マレイン酸、(メタ)アクリル酸グリシジルから選ばれる少なくとも1つである、請求項1〜5のいずれか一項に記載の誘電加熱用ホットメルト接着材。
【請求項7】
変性ポリオレフィン樹脂が、エチレン性二重結合および極性基を同一分子内に含む化合物に加え、芳香族ビニル単量体または共役ジエン系単量体を用いてグラフト変性されたポリオレフィンである請求項1〜6のいずれか一項に記載の誘電加熱用ホットメルト接着材。
【請求項8】
(a−1)ポリオレフィン樹脂が、エチレン単位、またはプロピレン単位が過半量である請求項4〜7のいずれか一項に記載の誘電加熱用ホットメルト接着材。
【請求項9】
変性ポリオレフィン樹脂組成物にポリオレフィン樹脂が混合されている、請求項1〜8のいずれか一項に記載の誘電加熱用ホットメルト接着材。
【請求項10】
(B)金属に表面処理が施された金属材料が、鉄、銅、銀、金、アルミニウム、亜鉛、鉛、錫、マグネシウム、鉄を主成分とする合金、銅を主成分とする合金、銀を主成分とする合金、金を主成分とする合金、アルミニウムを主成分とする合金、亜鉛を主成分とする合金、鉛を主成分とする合金、錫を主成分とする合金、マグネシウムを主成分とする合金である、請求項1〜9のいずれか一項に記載の誘電加熱用ホットメルト接着材。
【請求項11】
変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着層が、シートまたはフィルム状である、請求項1〜10のいずれか一項に記載の誘電加熱用ホットメルト接着材。
【請求項12】
(B)金属に表面処理が施された金属材料が、シートまたはフィルム状である、請求項1〜11のいずれか一項に記載の誘電加熱用ホットメルト接着材。
【請求項13】
前記変性ポリオレフィン樹脂組成物をシートまたはフィルム状に成形加工し、(B)金属に表面処理が施された金属材料のシートまたはフィルムと積層して、加熱によりラミネーション加工することにより得られる、誘電加熱用ホットメルト接着シートまたはフィルム。
【請求項14】
(B)金属に表面処理が施された金属材料の少なくとも一面と、変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着層が接し、前記接着層の金属材料と接していない面が(C)被着体と接し、誘電加熱により接着された積層体。
【請求項15】
(A)変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着層、(B)の金属に表面処理が施された金属材料の層、(A’)変性ポリオレフィン樹脂組成物を含有する接着層がこの順に積層され、さらに少なくとも2つ以上の(C)被着体の接合面間に挟まれ、誘電加熱により接着された積層体。
((A)と(A’)は同一組成、または異なる組成でも良い。)
【請求項16】
請求項13に記載の接着シートまたはフィルムを少なくとも2つ以上の(C)被着体の接合面間に挟み、誘電加熱により接着された積層体。
【請求項17】
(C)被着体のうち少なくとも1つ以上が(c−1)外観意匠性を有する被着体であることを特徴とする、請求項14〜16のいずれか一項に記載の積層体。
【請求項18】
(C)被着体が、ポリオレフィン、ポリスチレン、ポリエステル、スチレン・アクリロニトリル・共役ジエン共重合体、ポリアミド、ポリイミド、不飽和ポリエステル、ポリウレタン、ユリア樹脂、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、(メタ)アクリル樹脂、スチレン・アクリロニトリル共重合体、スチレン・アクリロニトリル・共役ジエン共重合体、ポリオレフィン系熱可塑性エラストマー、ポリスチレン系熱可塑性エラストマー、ポリエステル系熱可塑性エラストマー、ポリアミド系熱可塑性エラストマー、ポリウレタン系熱可塑性エラストマー及びこれらの発泡成形体からなる群から選ばれる、請求項14〜17のいずれか一項に記載の積層体。

【公開番号】特開2012−188483(P2012−188483A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51237(P2011−51237)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】