説明

誘電材料およびこれを調製する方法

【課題】 優れた特性(例えば、安定な誘電特性、高い信頼性、低い焼結温度、高い絶縁抵抗および高い相分解温度)を有する組成物を達成するために、従来の誘電性ZnTiO材料系の特性を改善する新規な材料系を提供すること。
【解決手段】 式(I):
(Zn1−aMg)(Ti1−b−cMn (I)
によって表される組成物を含む誘電材料であって、ここで、Dは、5以上の原子価を有する元素であり、aは、0以上0.5以下であり、bは、c以上0.1以下であり、cは、0より大きく0.1以下であり、dは、1以上1.5以下である、誘電材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、誘電材料、特に、ZnTiOベースの誘電材料に関する。本発明はまた、誘電材料を調製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の説明)
最近、オーディオ/ビデオ機器、コンピューターデバイス、コミュニケーション機器(例えば、コードレス電話受信器および移動電話)、ならびに衛星通信のための送信機/受信器は、より高周波数を有しており、サイズが小さくなり、重量が軽くなっている。従って、高周波数の複数のチップモジュールを製造することの要求が増加している。このモジュールを製造するために電気回路において、セラミック誘電体は、しばしば、バイパス回路、結合回路(coupling circuit)、共振器およびフィルターに適用され、ここで、高品質因子(Q)、低い等価直列抵抗(ESR)および高い絶縁抵抗(IR)を有する低静電容量多層セラミックコンデンサを製造するための超低温マイクロ波−誘電材料の適用が特に重要である。この材料は、通常、低い誘電損失、低い等価直列抵抗(ESR)、高い信頼性、高い絶縁抵抗(IR)、高い機械強度、および低い膨張係数を必要とする。
【0003】
従来、貴金属(例えば、金、白金およびパラジウム)が、コンデンサの内部電極および末端電極を作製するために使用されている。安価な材料(例えば、銀、銀合金、銅、および動合金)もまた、費用を減少させるために使用される。特に、低いオーム抵抗を有する銀および銀合金が幅広く使用される。しかし、銀が比較的低い融点(約960℃)を有するので、適用のために、銀と同時燃焼(co−fired)されるために、低い焼結温度を有するセラミック材料が、使用されなければならない。
【0004】
任意のさらなる焼結融剤(sintering flux)なしで通常の条件下で、理想的な機械的強度および誘電特性を達成するために、誘電材料は、1300℃〜1600℃の範囲の温度で焼結されなければならない。通常、チタン酸バリウム、チタン酸マグネシウムおよびバリウムペロブスカイトのような材料が使用される。銀と焼結するために、約900℃で焼結され得る材料の開発についての要求がある。例えば、ホウ素を含む、メタチタン酸亜鉛−ルチル混合物は、非特許文献1に開示され、(Zn,Mg)TiO化合物は、非特許文献2に開示され、(SrCa)TiOに基づく誘電材料は、特許文献1に開示され、BaO−TiOに基づく誘電材料は、特許文献2に開示され、TiO−ZnOに基づく誘電材料は、特許文献3に開示され、そしてZnTiO−ZnO−TiOに基づく誘電材料は、特許文献4に開示された。
【0005】
特許文献5は、BガラスまたはB含有ガラス質成分が、誘電性ZnTiO材料系の焼結温度を、1100℃から約900℃に下げるために誘電性ZnTiO材料系に添加されることを開示する。さらに、誘電性ZnTiO材料系の絶縁抵抗を増加させるためのMnOの添加もまた開示される。この特許の教示に従って、0.1〜10%MnOの添加は、誘電性ZnTiO材料系の絶縁抵抗を1011オームにまで増加させ得る。この特許はB含有ガラス質成分(例えば、ZnO−SiO−BおよびBi−ZnO−B)の使用を教示するものの、B含有ガラス質成分中のZnOの量の重要性も、材料の特徴に対するBおよびZnOの割合の効果も理解していない。
【0006】
特許文献4は、Mg(通常、MgO)が、誘電性ZnTiO材料系の品質因子を改善するため、およびZnTiOへのZnTiOの変換の相分解温度を上昇させるために添加され、ここで、MgOの好ましい量が、0.02mol〜0.5molである。しかし、この特許に提供される誘電材料の焼結温度は、1050〜1250℃に達し、これは、非常に高く、低い温度(約900℃)で銀と同時燃焼する要件を満足しない。
【0007】
ZnTiO誘電材料系中の酸化ホウ素(B)、ホウ素ガラスまたはホウ素含有ガラスの使用が、生成物の不安定な焼結特性および制御不可能な誘電特性という問題を引き起こすことが見出されている。本出願の発明者らは、Bガラスが、特許文献3に開示される誘電性ZnTiO材料系に直接添加される場合、補助焼結特性を有するように、最初にB−ZnOを生成するために、BがZnOと反応しなければならないので、ZnTiO中のZn/Tiの割合が、変化し、従って、誘電特性が変化することを見出した。Bの融点が約460℃であるので、Bの一部は、このような温度で加熱される場合、蒸発し、その結果、最終的な補助焼結においてBの量は、容易に制御されず、不安定な焼結特性を生じる。さらに、B含有ガラス質成分が添加される場合、高い量のZnOを有する組成物は、材料の主成分中のZn/Tiの割合に直接的に影響し、そして低い量のZnOを有する組成物は、B含有ガラス質成分のかなり多くのBを、材料の主成分中に含まれる亜鉛と反応させ、これはまた、材料の主成分中のZn/Tiの割合に影響し、従って、誘電特性が変化する。
【0008】
さらに、多層セラミックコンデンサの主な開発傾向は、高い容量に向かっており、これは、各誘電層の厚みおよび積み重なった層の量を低下させることによって達成される。誘電層がより薄くなるほど、高温および高圧での多層セラミックコンデンサの信頼性がより重要になる。銀と同時に燃焼され得る誘電性ZnTiO材料系が、開発されたものの、高い温度および高い圧力下でその低い絶縁抵抗に起因する層の薄層化および高い容量という要件に適合し得ない。
【特許文献1】JP−A No.243725/1994
【特許文献2】JP−A No.325641/1993
【特許文献3】米国特許第5,723,395号
【特許文献4】米国特許第5,866,492号
【特許文献5】米国特許第5,723,395号
【非特許文献1】J.Am.Ceram.Soc.,82[11]3043−48(1999)
【非特許文献2】J.Am.Ceram.Soc.82[12]3476−80(1999)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
結果として、本発明は、優れた特性(例えば、安定な誘電特性、高い信頼性、低い焼結温度、高い絶縁抵抗および高い相分解温度)を有する組成物を達成するために、従来の誘電性ZnTiO材料系の特性を改善する新規な材料系を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によると、以下の項目1〜29が提供され、上記目的が達成される。
【0011】
(項目1.) 式(I):
(Zn1−aMg)(Ti1−b−cMn (I)
によって表される組成物を含む誘電材料であって、ここで、Dは、5以上の原子価を有する元素であり、aは、0以上0.5以下であり、bは、c以上0.1以下であり、cは、0より大きく0.1以下であり、dは、1以上1.5以下である、誘電材料。
【0012】
(項目2.) 項目1に記載の誘電材料であって、(Zn1−aMg)(Ti1−b−cMnの重量に基づいてe重量%の量で焼結融剤をさらに含み、ここで、eは、0より大きく10以下である、誘電材料。
【0013】
(項目3.) 項目2に記載の誘電材料であって、前記焼結融剤が酸化ホウ素である、誘電材料。
【0014】
(項目4.) 項目3に記載の誘電材料であって、前記酸化ホウ素が、Bである、誘電材料。
【0015】
(項目5.) 項目2に記載の誘電材料であって、前記焼結融剤が、亜鉛−ホウ化物(Zn−B)化合物である、誘電材料。
【0016】
(項目6.) 項目5に記載の誘電材料であって、前記亜鉛−ホウ化物化合物が、[(ZnO)・B]である、誘電材料。
【0017】
(項目7.) 項目1に記載の誘電材料であって、Dが、ニオブ(Nb)、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)からなる群から選択される、誘電材料。
【0018】
(項目8.) 項目1に記載の誘電材料であって、aが0以上0.5未満である、誘電材料。
【0019】
(項目9.) 項目1に記載の誘電材料であって、bが0.02より大きく0.1以下である、誘電材料。
【0020】
(項目10.) 項目1に記載の誘電材料であって、cが0.005より大きく0.1より小さい、誘電材料。
【0021】
(項目11.) 項目1に記載の誘電材料であって、dが1より大きく1.5以下である、誘電材料。
【0022】
(項目12.) 項目2に記載の誘電材料であって、eが3より大きく10より小さい、誘電材料。
【0023】
(項目13.) 項目1に記載の誘電材料を含む、多層セラミック素子。
【0024】
(項目14.) 項目13に記載の多層セラミック素子であって、該多層セラミック素子が、銀、銀合金、銅または銅合金から作製された少なくとも1つの電極を有する多層セラミックコンデンサである、多層セラミック素子。
【0025】
(項目15.) 誘電材料を調製する方法であって、該方法が、以下:
(a)亜鉛含有化合物、マグネシウム含有化合物、チタン含有化合物、マンガン含有化合物およびD元素含有化合物を含む原材料を提供する工程であって、ここで、原材料中の
化合物の初期量が、式(I):
(Zn1−aMg)(Ti1−b−cMn (I)
によって決定され、ここで、Dは、5以上の原子価を有する元素であり、aは、0以上0.5以下であり、bは、c以上0.1以下であり、cは、0より大きく0.1以下であり、dは、1以上1.5以下である、工程;
(b)水中で工程(a)の原材料を混合および製粉して、混合物を形成する工程;および
(c)工程(b)の混合物を乾燥し、次いで、該乾燥混合物をか焼して、該誘電材料を作製する工程、
を包含する、方法。
【0026】
(項目16.) 項目15に記載の方法であって、前記工程(c)が、工程(b)の混合物を乾燥し、次いで、該乾燥混合物を1000〜1250℃で1〜3時間か焼する、方法。
【0027】
(項目17.) 項目15に記載の方法であって、(Zn1−aMg)(Ti1−b−cMnの重量に基づいてe重量%の量で焼結融剤を添加する工程をさらに含み、ここで、eは、0より大きく10以下である、方法。
【0028】
(項目18.) 項目17に記載の方法であって、前記焼結融剤が酸化ホウ素である、方法。
【0029】
(項目19.) 項目18に記載の方法であって、前記酸化ホウ素が、Bである、方法。
【0030】
(項目20.) 項目17に記載の方法であって、前記焼結融剤が、亜鉛−ホウ化物(Zn−B)化合物である、方法。
【0031】
(項目21.) 項目20に記載の方法であって、前記亜鉛−ホウ化物化合物が、[(ZnO)・B]である、方法。
【0032】
(項目22.) 項目15に記載の方法であって、前記亜鉛含有化合物がZnOであり、前記マグネシウム含有化合物がMgOであり、前記チタン含有化合物がTiOであり、そして前記マンガン含有化合物がMnOである、方法。
【0033】
(項目23.) 項目15に記載の方法であって、Dが、ニオブ(Nb)、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)からなる群から選択される、誘電材料。
【0034】
(項目24.) 項目15に記載の方法であって、前記D元素含有化合物が、D元素の酸化物である、方法。
【0035】
(項目25.) 誘電材料であって、該誘電材料が、式(II):
(Zn1−aMg)(Ti1−b−cMn + e重量%のB (II)
によって表される組成物を含み、ここで、Bの量が、(Zn1−aMg)(Ti1−b−cMnの重量に基づいてe重量%であり、Dは、5以上の原子価を有する元素であり、aは、0以上0.5以下であり、bは、c以上0.1以下であり、cは、0より大きく0.1以下であり、dは、1以上1.5以下であり、eは、0より大きく10以下である、誘電材料。
【0036】
(項目26.) 項目25に記載の誘電材料であって、D元素が、ニオブ(Nb)、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)からなる群から選択される、誘電材料。
【0037】
(項目27.) 項目25に記載の誘電材料であって、aは、0以上0.5未満であり、bは、0.02より大きく0.1以下であり、cは、0.005より大きく0.1より小さく、dは、1より大きく1.5以下であり、eは、3より大きく10より小さい、誘電材料。
【0038】
(項目28.) 項目25に記載の誘電材料を含む、多層セラミック素子。
【0039】
(項目29.) 項目28に記載の多層セラミック素子であって、該多層セラミック素子が、銀、銀合金、銅または銅合金から作製された少なくとも1つの電極を有する多層セラミックコンデンサである、多層セラミック素子。
【0040】
(発明の要旨)
本発明の目的は、式(I):
(Zn1−aMg)(Ti1−b−cMn (I)
によって表される組成物を含む誘電材料を提供することであり、ここで、Dは、5以上の原子価を有する元素であり、aは、0以上0.5以下であり、bは、c以上0.1以下であり、cは、0より大きく0.1以下であり、dは、1以上1.5以下であり、これは、高い品質因子、超低い焼結温度、セラミック成分の安定な特性、安定な誘電特性、高い相分解温度、高い絶縁抵抗および高い破壊電圧のような優れた特性を有する。
【0041】
本発明はまた、上記式(I)によって表されるZnTiOベースの誘電材料を調製する方法に関する。
【0042】
(発明の詳細な説明)
本発明は、式(I):
(Zn1−aMg)(Ti1−b−cMn (I)
によって表される組成物を含む誘電材料に関し、ここで、Dは、5以上の原子価を有する元素であり、aは、0以上0.5以下であり、bは、c以上0.1以下であり、cは、0より大きく0.1以下であり、dは、1以上1.5以下であり、好ましくは、aは、0以上0.5未満であり、bは、0.02より大きく0.1以下であり、cは、0.005より大きく0.1未満であり、dは、1より大きく1.5以下である。
【0043】
本発明において、従来の誘電性ZnTiO材料系のZnは、MgOによって置換され、これは、誘電材料の相分解温度が、その焼結温度よりも高く、従って、その優れたマイクロ波−誘電特性の維持を容易にする。さらに、従来の誘電性ZnTiO材料系のTiは、MnOによって置換され、これは、有意に絶縁抵抗を上昇させ得、従って、多層セラミックコンデンサの製造を容易にする。
【0044】
式(I)中のD元素は、5以上の原子価を有する元素、好ましくは、5の原子価を有する金属元素、より好ましくは、周期表のVA族またはVIA族の元素、最も好ましくは、ニオブ(Nb)、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)である。D元素の添加は、品質因子、信頼性および破壊電圧を上昇させ得る。式(I)中のD元素が5以上の原子価を有することが注意される。しかし、調製手順の間、開始工程(すなわち、追加工程)において5の原子価を有さなくてもよい。例えば、1つの実施形態において、Nbが追加工程に添加される。Nbがこの工程において4の原子価を有するが、以下の焼結工程の間、5の原子価を有するように酸化される場合、式(I)の要件に適合する。
【0045】
焼結温度を低下させるために、焼結融剤が本発明の焼結工程の間に添加されて、誘電材料の焼結温度を950℃以下に低下させ得、その結果、誘電材料が、多層セラミック素子(例えば、多層セラミックコンデンサ)の製造の間、純粋な銀から作製される電極で同時燃焼され得る。1つの実施形態において、焼結融剤の量は、(Zn1−aMg)(Ti1−b−cMnの重量に基づいてe重量%であり、ここで、eは、0より大きく10以下であり、好ましくは、eは、3より大きく10より小さい。焼結融剤は、酸化ホウ素または亜鉛−ホウ化物(Zn−B)化合物、好ましくは、Bまたは[(ZnO)・B]、より好ましくは、[(ZnO)・B]であり得る。
【0046】
本発明はまた、式(I):
(Zn1−aMg)(Ti1−b−cMn (I)
によって表される組成物を含むZnTiOベースの誘電材料を調製する方法に関し、ここで、Dは、5以上の原子価を有する元素であり、aは、0以上0.5以下であり、bは、c以上0.1以下であり、cは、0より大きく0.1以下であり、dは、1以上1.5以下である。セラミック誘電材料を製造する従来の方法は、誘電材料を作製するために使用され得る。さらに、焼結融剤は、誘電材料内に添加され得、その結果、誘電材料が、950℃以下の温度で純粋な銀から作製された電極で同時燃焼され得る。一般的に、本発明の誘電材料を調製する方法は、以下の工程を包含する:
(a)原材料(亜鉛含有化合物、マグネシウム含有化合物、チタン含有化合物、マンガン含有化合物およびD元素含有化合物を含む)を提供する工程であって、ここで、この原材料中の化合物の初期量は、式(I):
(Zn1−aMg)(Ti1−b−cMn (I)
によって決定され、ここで、Dは、5以上の原子価を有する元素であり、aは、0以上0.5以下であり、bは、c以上0.1以下であり、cは、0より大きく0.1以下であり、dは、1以上1.5以下であり、好ましくは、aは、0以上0.5未満であり、bは、0.02より大きく0.1以下であり、cは、0.005より大きく0.1未満であり、dは、1より大きく1.5以下である、工程;
(b)混合物を形成するために、水中で工程(a)の原材料を混合および製粉する工程;および
(c)工程(b)の混合物を乾燥し、次いで、この乾燥混合物をか焼(calcining)して誘電材料を作製する工程。
【0047】
工程(a)において、原材料は、酸化物および炭酸塩のような所望の金属種を含む化合物を含む。好ましくは、亜鉛含有化合物は、酸化亜鉛(例えば、ZnO)であり、マグネシウム含有化合物は、酸化マグネシウム(例えば、MgO)であり、チタン含有化合物は、酸化チタン(例えば、TiO)であり、そしてマンガン含有化合物は、酸化マグネシウム(例えば、MnO)である。D元素は、5以上の原子価を有する元素、好ましくは、5の原子価を有する金属元素、より好ましくは、周期表のVA族またはVIA族の元素、最も好ましくは、ニオブ(Nb)、タングステン(W)またはモリブデン(Mo)である。例えば、D含有化合物は、好ましくは、Nb、WOまたはMoである。
【0048】
工程(b)において、原材料は、脱イオン水と混合されて混合物を形成し、これは、その後、製粉される。1つの実施形態において、製粉時間は、好ましくは、3時間より長く、より好ましくは、約5時間である。
【0049】
工程(c)において、工程(b)由来の混合物を乾燥させ、次いで、か焼される。1つの実施形態において、この混合物は、誘電材料を作製するために、1200℃未満、好ましくは、1000℃〜1250℃の間、より好ましくは、約1150℃の温度で、1〜3時間、好ましくは、約2時間、か焼の間に微粉化(pulvarize)される。
【0050】
本発明の誘電材料は、適切な量の有機結合剤(例えば、ポリビニルアセテート(PVA))、可塑剤(例えば、ポリエチレングリコール(PEG))、分散剤および湿潤剤と混合されて、誘電材料ペーストを形成し得、この誘電材料ペーストは、低温(例えば、900℃)で焼結されて、セラミック体を生成し得る。
【0051】
焼結温度を低下させるために、焼結融剤が誘電材料中に添加され得る。焼結融剤の量は、(Zn1−aMg)(Ti1−b−cMnの重量に基づいてe重量%であり、ここで、eは、0より大きく10以下である。焼結融剤は、誘電材料の焼結温度を950℃以下に低下させるために使用され、その結果、この誘電材料は、多層セラミックコンデンサの製造の間に、純粋な銀から作製される電極と同時に燃焼され得る。1つの実施形態において、焼結融剤は、亜鉛−ホウ化物(Zn−B)化合物(例えば、[(ZnO)・B])である。
【0052】
特に、本発明の誘電材料は、導体材料(例えば、銀、銀合金、銅および銅合金)と同時に燃焼されて、多層セラミックコンデンサ、温度補償コンデンサ、LCフィルターおよび誘電フィルターのコンデンサデバイスを作製し得る。低い容量を有するこの多層セラミックコンデンサは、セラミック材料部分、内部電極および内部電極に接続された末端電極を構成する。本発明の誘電材料は、セラミック材料部分に適用される。本発明由来の誘電材料ペーストは、20〜30μmの厚みを有するセラミックフィルムを形成するようにこすり落とされ、これに、銀、銀合金、銅および/または銅合金の導電性金属ペーストが、スクリーン印刷技術によって適用されて、内部電極を形成する。乾燥後、コーティングされたセラミックフィルムは、積み重ねられ、次いで、いくつかのコーティングされていないセラミックフィルムが、このコーティングされたセラミックフィルムの下側および上側に積み重ねられて、セラミック材料部分および内部電極を有するセラミック体を形成する。次いで、セラミック体が、加熱プレスされ、切断され、そして約900℃で約1時間焼結される。銀、銀合金、銅および/または銅合金の金属ペーストが、セラミック体の2つの端部上に浸漬メッキ(dip−galvanize)されて、末端電極を形成する。
【0053】
添付の実施例を参照して、本発明は、ここで、詳細に説明される;しかし、本発明の範囲は、これらの実施例に制限されない。
【実施例】
【0054】
(実施例1〜24)
ZnO、MgO、TiO、MnOおよびNならびに任意のBの焼結融剤を含む原材料が、表1に与えられるa、b、c、dおよびeの適切な値に従って提供される。最初に、ZnO、MgO、TiO、MnOおよびNが、脱イオン水中に混合され、そして2mmの酸化ジルコニウムボールを用いてボールミル中で5時間製粉されて、約0.3〜0.4μmの平均粒子サイズの混合原料粉末を提供した。次いで、混合粉末を、オーブンにおいて100℃で乾燥し、1150℃で2時間、か焼し、そして2mmの酸化ジルコニウムボールを用いて水中で製粉して、約0.5μmの平均粒子サイズのセラミック粉末を提供した。次いで、このセラミック粉末を表1のeの比で(eが0でなければ)[(ZnO)・B]と混合し、誘電材料粉末を作製した。
【0055】
適切な量のポリビニルアセテート(PVA)、ポリエチレングリコール(PEG)、分散剤および湿潤剤を、この誘電材料粉末に添加して、誘電材料ペーストを作製し、これを続いて、900℃で2時間焼結して、セラミック体を作製した。相対的なセラミック密度(D、g/cm)、誘電率(K)、損失率(tanδ)、絶縁抵抗(I.R.、オーム)、温度係数(TCC、ppm/℃)および高加速寿命試験(HALT、時間)を測定し、そして結果を表1に示す。
【0056】
【表1】

【0057】
実施例1〜4は、誘電特性に対する、サンプル材料中における異なる量のZnおよびMgの効果を示す。誘電率は、Mgの量の増加とともに減少する。しかし、過剰に多い量のMg(例えば、実施例4)は、粉末の焼結に影響し、そして電気的特性(例えば、比較的高い損失率および比較的低い絶縁抵抗)に対してネガティブな影響を有する。さらに、これらの結果はまた、損失率および温度係数は、aが約0.3である場合に、最小であることを示す。
【0058】
実施例5〜7は、cが0.01である場合の、電気的特性に対する、サンプル材料中の異なる量のMnの効果を示す。これらの結果は、Mnを添加しない場合(実施例5)、高加速寿命試験(0.1時間のみ)が、理想的でないことを示す。Mnの添加量が増加する場合に、高加速寿命試験の結果は、より良くなる。
【0059】
実施例8〜13は、cが0.02である場合の、電気的特性に対する、サンプル材料中の異なる量のMnの効果を示す。これらの結果は、Mnを添加しない場合(実施例8)、高加速寿命試験(0.1時間のみ)が、理想的でないことを示す。Mnの添加量が増加する場合に、高加速寿命試験の結果は、より良くなる。しかし、過剰に多い量のMn(例えば、実施例13)は、高加速寿命試験の結果を低下させるので、電気的特性に対してネガティブな影響を有する。
【0060】
実施例14〜17は、電気的特性に対する、サンプル材料中の異なる量のNbの効果を示す。誘電率および高加速寿命試験の結果は、Nbの量の増加とともに増加する。しかし、高加速寿命試験の結果は、実施例16および17に示されるように、Nbの量が、Mnの量よりも多い(すなわち、c>b)場合、減少する。
【0061】
実施例18〜20は、電気的特性に対する、サンプル材料の(Ti+Mn+Nb)に対する(Zn+Mg)の異なる比の効果を示す。これらの結果は、温度係数が、(Ti+Mn+Nb)に対する(Zn+Mg)の適切な比によって、0に近づくように調整され得ることを示す。
【0062】
実施例21〜24は、電気的特性に対する、サンプル材料中の異なる量のBの効果を示す。これらの結果は、Bが添加されない場合(例えば、実施例21)、セラミック体が焼結され得ないことを示し、従って、表1の実施例21において測定されたデータがない。しかし、過剰に多い量のBは、温度係数を増加させ、そして高加速寿命試験の結果を低下させる。
【0063】
本発明は、式(Zn1−aMg)(Ti1−b−cMnによって表される組成物を有する新規なZnTiOベースの誘電材料に関し、ここで、Dは、5以上の原子価を有する元素であり、aは、0以上0.5以下であり、bは、c以上0.1以下であり、cは、0より大きく0.1以下であり、dは、1以上1.5以下であり、これは、超低い焼結温度、高い信頼性、および高い誘電強度の特性を有し、高い品質因子、低いESR、および高い絶縁抵抗を有する低い電気容量の多層セラミックコンデンサを作製するために適用され得る。本発明はまた、このような新規なZnTiOベースの誘電材料を調製する方法に関する。
【0064】
本発明のいくつかの実施形態が、示されそして記載されたが、種々の改変および改善が、当業者によってなされ得る。従って、本発明の実施形態は、説明として記載されるが、制限の意味として記載されない。本発明が示された特定の形態に制限され得ず、そして本発明の精神および範囲を維持する全ての改変が、添付の特許請求の範囲内に規定される範囲内であることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I):
(Zn1−aMg)(Ti1−b−cMn (I)
によって表される組成物を含む誘電材料であって、ここで、Dは、5以上の原子価を有する元素であり、aは、0以上0.5以下であり、bは、c以上0.1以下であり、cは、0より大きく0.1以下であり、dは、1以上1.5以下である、誘電材料。
【請求項2】
請求項1に記載の誘電材料であって、(Zn1−aMg)(Ti1−b−cMnの重量に基づいてe重量%の量で焼結融剤をさらに含み、ここで、eは、0より大きく10以下である、誘電材料。
【請求項3】
請求項2に記載の誘電材料であって、前記焼結融剤が酸化ホウ素である、誘電材料。
【請求項4】
請求項3に記載の誘電材料であって、前記酸化ホウ素が、Bである、誘電材料。
【請求項5】
請求項2に記載の誘電材料であって、前記焼結融剤が、亜鉛−ホウ化物(Zn−B)化合物である、誘電材料。
【請求項6】
請求項5に記載の誘電材料であって、前記亜鉛−ホウ化物化合物が、[(ZnO)・B]である、誘電材料。
【請求項7】
請求項1に記載の誘電材料であって、Dが、ニオブ(Nb)、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)からなる群から選択される、誘電材料。
【請求項8】
請求項1に記載の誘電材料であって、aが0以上0.5未満である、誘電材料。
【請求項9】
請求項1に記載の誘電材料であって、bが0.02より大きく0.1以下である、誘電材料。
【請求項10】
請求項1に記載の誘電材料であって、cが0.005より大きく0.1より小さい、誘電材料。
【請求項11】
請求項1に記載の誘電材料であって、dが1より大きく1.5以下である、誘電材料。
【請求項12】
請求項2に記載の誘電材料であって、eが3より大きく10より小さい、誘電材料。
【請求項13】
請求項1に記載の誘電材料を含む、多層セラミック素子。
【請求項14】
請求項13に記載の多層セラミック素子であって、該多層セラミック素子が、銀、銀合金、銅または銅合金から作製された少なくとも1つの電極を有する多層セラミックコンデンサである、多層セラミック素子。
【請求項15】
誘電材料を調製する方法であって、該方法が、以下:
(a)亜鉛含有化合物、マグネシウム含有化合物、チタン含有化合物、マンガン含有化合物およびD元素含有化合物を含む原材料を提供する工程であって、ここで、原材料中の
化合物の初期量が、式(I):
(Zn1−aMg)(Ti1−b−cMn (I)
によって決定され、ここで、Dは、5以上の原子価を有する元素であり、aは、0以上0.5以下であり、bは、c以上0.1以下であり、cは、0より大きく0.1以下であり、dは、1以上1.5以下である、工程;
(b)水中で工程(a)の原材料を混合および製粉して、混合物を形成する工程;および
(c)工程(b)の混合物を乾燥し、次いで、該乾燥混合物をか焼して、該誘電材料を作製する工程、
を包含する、方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法であって、前記工程(c)が、工程(b)の混合物を乾燥し、次いで、該乾燥混合物を1000〜1250℃で1〜3時間か焼する、方法。
【請求項17】
請求項15に記載の方法であって、(Zn1−aMg)(Ti1−b−cMnの重量に基づいてe重量%の量で焼結融剤を添加する工程をさらに含み、ここで、eは、0より大きく10以下である、方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記焼結融剤が酸化ホウ素である、方法。
【請求項19】
請求項18に記載の方法であって、前記酸化ホウ素が、Bである、方法。
【請求項20】
請求項17に記載の方法であって、前記焼結融剤が、亜鉛−ホウ化物(Zn−B)化合物である、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記亜鉛−ホウ化物化合物が、[(ZnO)・B]である、方法。
【請求項22】
請求項15に記載の方法であって、前記亜鉛含有化合物がZnOであり、前記マグネシウム含有化合物がMgOであり、前記チタン含有化合物がTiOであり、そして前記マンガン含有化合物がMnOである、方法。
【請求項23】
請求項15に記載の方法であって、Dが、ニオブ(Nb)、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)からなる群から選択される、誘電材料。
【請求項24】
請求項15に記載の方法であって、前記D元素含有化合物が、D元素の酸化物である、方法。
【請求項25】
誘電材料であって、該誘電材料が、式(II):
(Zn1−aMg)(Ti1−b−cMn + e重量%のB (II)
によって表される組成物を含み、ここで、Bの量が、(Zn1−aMg)(Ti1−b−cMnの重量に基づいてe重量%であり、Dは、5以上の原子価を有する元素であり、aは、0以上0.5以下であり、bは、c以上0.1以下であり、cは、0より大きく0.1以下であり、dは、1以上1.5以下であり、eは、0より大きく10以下である、誘電材料。
【請求項26】
請求項25に記載の誘電材料であって、D元素が、ニオブ(Nb)、タングステン(W)およびモリブデン(Mo)からなる群から選択される、誘電材料。
【請求項27】
請求項25に記載の誘電材料であって、aは、0以上0.5未満であり、bは、0.02より大きく0.1以下であり、cは、0.005より大きく0.1より小さく、dは、1より大きく1.5以下であり、eは、3より大きく10より小さい、誘電材料。
【請求項28】
請求項25に記載の誘電材料を含む、多層セラミック素子。
【請求項29】
請求項28に記載の多層セラミック素子であって、該多層セラミック素子が、銀、銀合金、銅または銅合金から作製された少なくとも1つの電極を有する多層セラミックコンデンサである、多層セラミック素子。

【公開番号】特開2006−104044(P2006−104044A)
【公開日】平成18年4月20日(2006.4.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−44830(P2005−44830)
【出願日】平成17年2月21日(2005.2.21)
【出願人】(505064334)ヤゲオ コーポレイション (1)
【Fターム(参考)】