説明

誘電率が低いナノ粒子膜の製造方法

【課題】ソースガスとしてSi含有ガスを使ってプラズマCVDにより絶縁性微粒子を気相中で形成し、凝集を抑制しながら、形成された微粒子を基板表面まで有効に移送することにより、基板上に低誘電率膜を形成する。
【解決手段】低誘電率膜を形成するための方法は、有機シリコンガス及び不活性ガスから成る反応ガスを容量結合型CVD装置のリアクタ内に導入する工程と、リアクタ内のプラズマ放電周期の関数として気相中で生成される微小粒子のサイズをナノメートルのオーダーのサイズに調節する工程と、基板と上部電極との間の温度勾配を約100℃/cmに制御しながらリアクタ内の上部電極と下部電極との間に配置された基板上に生成微小粒子を堆積する工程とを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シリコンを含有するガスを使用して、プラズマCVD法により、絶縁性のSiOCHまたはSiCの組成を持つ直径数ナノメートルの粒子を気相中に形成し、これらの粒子をウエハ上に堆積することにより多孔質構造を持つ低誘電率の膜を形成する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
デバイスノードの縮小と共に、そのデバイスに使われる層間絶縁膜には次の表に示すように低い比誘電率(Low-k)が求められる。
【0003】
適用時期 デバイスノード k
2003 90 nm 2.9 - 3.1
2005 65 nm 2.6 - 2.8
2007 45 nm 2.2 - 2.4
誘電率が2.7程度のLow-k膜についてはCVD法と塗布法など数多くの膜形成法が提案され良質なLow-k膜の形成が近年可能となり、デバイスノードが90nmノードの量産デバイスへの適用が始まっている。次世代の高速デバイスとしてk=2.5程度以下のさらに低い誘電率のLow-k膜が求められている。
【0004】
その一つとして、ナノ粒子を形成し基板上に堆積させることで低誘電率膜を形成する方法が知られている。例えば、米国特許第6,737,366号、米国特許第6,602,800号に上下電極の間に中間電極を設け、反応器を上下空間に分離し、下部空間でのプラズマ発生を抑制することにより、電荷の発生を低減し、ナノ粒子が電荷の影響を受けずに基板に積層しやすくする技術が開示されている。また、米国特許第 6,537,928号には中間電極に加え更に冷却プレートを中間電極とサセプタの間に配置することにより、下部空間の温度を低く制御し、ナノ粒子が水分を利用して基板上に積層しやすくする技術が開示されている。
【特許文献1】米国特許第6,737,366号
【特許文献2】米国特許第6,602,800号
【特許文献3】米国特許第 6,537,928号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ナノ粒子の生成自体を制御することにより、基板上にナノ粒子を堆積させる技術である。換言すれば、ソースガスとしてのSi含有ガスを使ってプラズマCVDにより絶縁性微粒子を気相中で形成し、凝集を抑制しながら、形成された微粒子を基板表面まで有効に移送することにより、基板上に低誘電率膜を形成する技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
ある態様によれば、本発明は低誘電率膜を形成する方法を与え、当該方法は、(I)有機Siガスと不活性ガスからなる反応ガスを容量結合型CVD装置へ導入する工程と、(II)気相中で生成される微粒子のサイズをリアクタ内部でのプラズマ放電時間の関数としてナノメートルのオーダーに調整する工程と、(III)基板と上部電極との間の温度勾配を約100℃/cmまたはそれ以下に制御しながら、リアクタ内の上部電極と下部電極との間に配置される基板上に、生成された微粒子を堆積する工程であり、温度勾配は90℃/cm、80℃/cm、70℃/cm、60℃/cm、50℃/cm、40℃/cm、30℃/cm、20℃/cm、10℃/cm、5℃/cm、0℃/cm及びこれらの任意の2つの間の範囲(好ましくは50℃/cmまたはそれ以下)を含み、好ましくは下部電極の温度が上部電極の温度より高いところの工程とから成る。
【0007】
上記態様における工程(II)において、ナノ粒子のサイズはRF放電期間により制御され、ラジカルから生成(または重合)されるナノ粒子及び残存ラジカルが混在する(ラジカルのサイズは約0.5nmまたはそれ以下であり、ナノ粒子のサイズは通常約0.5nmより大きく、典型的に約1nmまたはそれ以上である)。ナノ粒子は表面に有意な活性基を有せず、それによりラジカルは活性状態のままであり、こうしてナノ粒子はナノ建築ブロックとして作用し、ラジカルは接着剤として作用する。ナノ粒子はその形成と同時に表面に活性基を有してもよいが(ナノ粒子が互いに強く凝集され得るという理由から)、基板表面へ移送されている間に、ナノ粒子はその表面から活性基を失う(ナノ粒子がラジカルより支配的に存在する条件下では膜が形成されないという理由から)。
【0008】
工程(III)において、膜の密度及び誘電率はラジカルフラックスに対するナノ粒子フラックスの比率により制御され、その結果ナノ粒子及びラジカルは、ナノ粒子(ナノ建築ブロック)がラジカル(接着剤)を使って重合されるところの制御された比率で基板上に一緒に堆積される。フラックス比率は基板と上部電極との間の温度勾配により制御され、温度勾配による伝熱力はナノ粒子をより低温の場所(例えば、下部電極の温度の方が高ければ上部電極)へ移動させ、それによりナノ粒子のフラックスが制御される。本発明において、上記または下記の理論は本発明を限定するものではないが、ある実施例において、理論はその実施例に適用できまたそれを特徴づけるものである。
【0009】
上記において、温度勾配は、|Ts−Tp|/Lと定義され、ここでTsは基板温度であり、Tpは上部電極の温度であり、|Ts−Tp|はTsとTpとの差の絶対値であり、Lは基板と上部電極との間の距離である。Tsは下部電極の温度に実質的に近い。その場合、下部電極の温度がTsとして使用される。ひとつの実施例において、Tsは実験を通じて導出された方程式を使って下部電極の温度から計算される。Ts及びTpは、下部及び上部電極内に埋設された温度測定素子により検出された温度に基づいて、直接的にまたは間接的に測定(決定)される表面温度である。また、温度が複数の位置で測定される場合には、Ts及びTpは各表面の平均温度であってもよい。Lは基板と上部電極との間の距離であり、実質的に下部電極と上部電極との間の距離に近い。ある実施例において、基板の厚み及び下部電極の構造により、下部電極と上部電極との間の距離がLとして使用されるか、またはLがその距離から計算される。ある実施例において、下部電極は基板が載置されるサセプタであり、上部電極は印加電極として機能するシャワーヘッドである。しかし、用語“上部”及び“下部”はそれぞれ“第1”及び“第2”と同等に使用され、それらの幾何学的位置は変化する。上部及び下部電極は斜傾電極または側立電極であってもよい。
【0010】
本発明において、工程(I)及び(II)並びに同様の工程は、ここに参考文献として組み込む、本願の出願人に譲渡された2004年11月17日出願の米国特許出願第10/990,562号に開示された工程に従って実行される。
【0011】
上記実施例は少なくとも以下の態様を含むが、本発明はこれらの態様に限定されるものではない。
【0012】
温度勾配は、0≦(Ts-Tp)/L≦50、5≦(Ts-Tp)/L≦40、10≦(Ts-Tp)/L≦30及びこれらの組み合わせを含む、-10≦(Ts-Tp)/L≦50を満たすように制御される。ここで、Tsは基板の温度(℃)であり、Tpは上部電極の温度(℃)であり、Lは基板と上部電極との間の距離(cm)である。
【0013】
ひとつの実施例において、堆積工程において、上部電極は100℃、150℃、200℃及びこれらの任意の2つの温度範囲を含む、約50℃から約250℃の温度に制御される。
【0014】
ひとつの実施例において、上部電極と下部電極とは、10mm、15mm、20mm、25mm及びこれらの任意の2数間の範囲を含む、約5mmから約30mm、好適には5mmから20mmの距離だけ離隔して設けられる。
【0015】
ひとつの実施例において、堆積したナノ粒子により形成される膜は1.3、1.5、1.7、2.0、2.2、2.5、3.0及びこれらの任意の2数間の範囲を含む、約1.2から約3.5の誘電率を有する。ある実施例において、形成される膜の気孔率は、10%、30%、50%、70%及びこれらの任意の2数間の範囲を含む、約0%から約80%の範囲内にある。例えば、膜の弾性率は1.7〜3.5であり、これは膜の重量及び体積から計算すると60%〜0%の気孔率に相当する。概して、上部電極に対して下部電極の温度が高いほど、形成される膜の誘電率は高くなる。すなわち、形成される膜の誘電率は基板と上部電極との間の温度勾配の関数として制御可能であり、形成される膜の誘電率は基板の温度を下げることにより減少する。
【0016】
他の態様において、本発明は低誘電率膜を形成するための方法を与え、当該方法は、(i)有機シリコンガス及び不活性ガスから成る反応ガスを容量結合CVD装置のリアクタ内に導入する工程と、(ii)以下の関係を満たすよう反応ガスの流量を調節する工程と、
【0017】
【数3】

Q:ガス流量(sccm)
N:シャワープレートのガスノズルの個数
A:シャワープレートのガスノズルの断面積(cm2
P:リアクタ内の圧力(Torr)
L:電極間隔(cm)
(iii)気相中で有機シリコンガスから生成される微小粒子のサイズを、リアクタ内のプラズマ放電周期の関数として、約10nmまたはそれ以下に調節する工程と、(iv)基板と上部電極との間の温度勾配を約100℃/cmまたはそれ以下に制御しながら、プラズマ放電を停止することにより、リアクタ内の上部電極と下部電極との間に配置された基板上に生成微小粒子を堆積する工程とから成る。
【0018】
さらに他の態様において、本発明は低誘電率膜を形成するための方法を与え、当該方法は、(A)有機シリコンガス及び不活性ガスから成る反応ガスをリアクタ内に導入する工程と、(B)約100ミリ秒から約2秒の間、プラズマ放電を実行することにより有機シリコンガスから微小粒子を形成する工程と、(C)基板と上部電極との間の温度勾配を約100℃/cmまたはそれ以下に制御しながら、リアクタ内の上部電極と下部電極との間に配置された基板上に微小粒子を堆積する工程とから成る。
【0019】
さらに他の態様において、本発明は低誘電率膜を形成するための方法を与え、当該方法は、(A)有機シリコンガス及び不活性ガスから成る反応ガスをリアクタ内に導入し、有機シリコンガスからナノ粒子を形成するためにプラズマ放電を実行する工程と、(B)基板と上部電極との間の温度勾配を約100℃/cmまたはそれ以下に制御しながら、有機シリコンガスからナノ粒子を形成するのに必要な時間(T1)、リアクタ内に配置された基板へ形成されたナノ粒子を移送するのに必要な時間(T2)、及び移送中にナノ粒子間で凝集成長が生じるまでの時間(T3)を、プラズマ放電周期及びガス流量の関数として制御することにより、リアクタ内で上部電極と下部電極との間に配置された基板上にナノ粒子を堆積する工程と、
から成る。
【0020】
さらに他の態様において、本発明は低誘電率膜を形成するための方法を与え、当該方法は、(A)有機シリコンガス及び不活性ガスから成る反応ガスをリアクタ内に導入し、有機シリコンガスからナノ粒子を形成するためにプラズマ放電を実行する工程と、(B)有機シリコンガスからナノ粒子を形成するのに必要な時間(T1)、リアクタ内に配置された基板へ形成されたナノ粒子を移送するのに必要な時間(T2)、及び移送中にナノ粒子間で凝集成長が生じるまでの時間(T3)を制御パラメータとして使用し、基板と上部電極との間の温度勾配を100℃/cmまたはそれ以下に制御しながら、リアクタ内で上部電極と下部電極との間に配置された基板上へのナノ粒子の堆積を制御する工程と、から成る。
【0021】
上記工程(B)において、T1、T2、及びT3は、ほぼT1=0.1秒〜1秒かつT2<T3、またはほぼT1=0.1〜1秒、T1=T2かつT3=0となるように制御される。
【0022】
上記実施例及び態様のすべてにおいて、実施例で使用される任意の構成要件は、その置換が実行可能であるかまたは逆効果とならなければ、他の実施例と任意に置換して使用可能である。また、本発明は装置及び方法に同様に適用される。
【0023】
本発明はさらに、これに限定されないが、以下の付加的な態様を含む。
【0024】
有機ガスの流量は不活性ガスの流量に対して、10%またはそれ以下であり、有機ガスの流量は不活性ガスの流量に対して5%またはそれ以下でもよく、プラズマ放電は約8W/cm2から13W/cm2の出力のRF電力を印加することにより実行され、プラズマ放電中のリアクタ内の圧力は約0.1Torrから約10Torrであり、反応ガスの流速はリアクタ内の電極面と平行な方向(概して、基板表面と平行な方向)で2.5cm/秒またはそれ以下に調節され、堆積中の基板温度は約0℃から約450℃の範囲である。
【0025】
さらに、プラズマ放電は13.56MHz、27MHzまたは60MHzのRF電力を使って実行される。プラズマ放電は100MHzまたはそれ以上のVHF電力を使って実行されてもよい。プラズマ放電はRF電力を印加することにより実行され、RF電力のインピーダンスは電子RFマッチングボックスにより調節される。
【0026】
有機シリコンガスは、SiαOα−1R2α−β+2(OCnH2n+1)β(ここで、αは1〜3の整数、βは0、1、2、3または4、nは1〜3の整数、Rはシリコン原子に結合するC1-6炭化水素)、SiR4−α(OCnH2n+1)α(ここで、αは0、1、2、3または4、nは1〜3の整数、Rはシリコン原子に結合するC1-6炭化水素)、Si2OR6−α(OCnH2n+1)α(ここで、αは0、1、2、3または4、nは1〜3の整数、Rはシリコン原子に結合するC1-6炭化水素)、SiHβR4−α(OCnH2n+1)α−β(ここで、αは0、1、2、3または4、βは0、1、2、3または4、nは1または2、Rはシリコン原子に結合するC1-6炭化水素)であって、例えば、Si(CH3)4、Si(CH3)3(OCH3)、Si(CH3)2(OCH3)2、Si(CH3)(OCH3)3、Si(OCH3)4、Si(CH3)3(OC2H5)、Si(CH3)2(OC2H5)2、Si(CH3)(OC2H5)3、Si(OC2H5)4、SiH2(CH3)2、SiH3(CH3)から成る集合から選択されるひとつまたは複数のガスの組み合わせを含む。
【0027】
不活性ガスとして、Arまたは、He、Ne、Kr、Xe及びN2またはこれらの組み合わせから成る集合から選択されるガスが使用される。反応ガスはさらに、形成される薄膜の炭素濃度を調節するためにO2、CO、CO2、N2Oから成る集合から選択される少なくともひとつを含む酸化ガスを含むことができる。
【0028】
さらに、微小粒子は、プラズマ放電周期のひとつのラウンドを約1ミリ秒から約1秒に設定することにより形成される。プラズマ放電は微小粒子が基板上に堆積される間、停止される。または、プラズマ放電周期を約10ミリ秒から約1秒に設定して微小粒子を形成する工程と、プラズマ放電のひとつのラウンド後に約100ミリ秒から約2秒の間プラズマ放電を停止させ微小粒子を基板上に堆積させる工程を1回のサイクルとすることで、少なくとも2回またはそれ以上のサイクルが実行されてもよい。
【0029】
断続的放電処理(パルス型放電)の場合において、反応ガスがシャワープレートのガスノズルを通じてリアクタ内に導入される構成でもって、上部電極と下部電極との間の反応領域内でプラズマが実行され、基板が下部電極上に載置され、反応ガスの流量は以下の関係を満足するように調節される。
【0030】
【数4】

Q:ガス流量(sccm)
N:シャワープレートのガスノズルの個数
A:シャワープレートのガスノズルの断面積(cm2
P:反応器内の圧力(Torr)
L:電極間隔(cm)
さらに、放電がパルスか否かに拘わらず、ガス流はパルス状に適応されてもよい。または、生成されたナノ粒子が基板へ移送される際に増加するようにガス流が調節されてもよい。
【0031】
後処理として、堆積後にプラズマ処理またはUV若しくはEBと組み合わせて熱処理することにより形成膜をキュアする工程を含むことで、膜の機械的強度が改善される。または、膜の機械的強度の改善は、有機シリコンガス雰囲気中に基板を置くことにより、有機シリコン分子を膜上に付着させる工程及び堆積後に膜をキュアする工程を含むことにより達成される。または、膜の機械的強度の改善は、基板をH2Oガス雰囲気中に置く工程及び有機シリコンガス雰囲気中に基板を置く工程を堆積後に1回または複数回繰り返すことにより達成される。
【0032】
さらに、プラズマ放電周期を約10ミリ秒から約1秒に設定することで微小粒子を形成する工程と、プラズマ放電のひとつのラウンド後に約100ミリ秒から約2秒間プラズマ放電を停止させて生成微小粒子を基板上に堆積する工程とを1回のサイクルとすることで、少なくとも2回またはそれ以上のサイクルが実行される実施例において、当該サイクルを30から150回連続して繰り返すことにより低k膜が形成される。サイクルの数は所望の膜厚に応じて適宜調節され、サイクルは5、50及び100サイクルを含む、異なる回数で実行されてもよい。さらに、サイクルは繰り返し無しで1回のみ実行されてもよい。
【0033】
ひとつの実施例において、T1、T2及びT3は、ほぼT1=0.1秒〜1秒かつT2<T3となるように制御される。この条件を達成するために、例えば、パルス型プラズマ放電を使い、プラズマ放電のオン期間のひとつのラウンドが約0.1秒から約1秒に設定され、かつプラズマ放電のオフ期間のひとつのラウンドが約10ミリ秒から約100ミリ秒に設定される。そのオフ期間中に、生成されたナノ粒子の基板上への移送が完了する。プラズマ放電の停止期間中、ナノ粒子の静電力が作用しないため、ナノ粒子はガス流速とほぼ同じ速度で基板まで移送される。さらに、その期間中、ナノ粒子の凝集成長が進む。ナノ粒子はプラズマ放電中に帯電し、その静電力はガス流速による速度の抵抗となるため、その静電力は粒子成長領域内に留まる傾向がある。結果として、この場合、ナノ粒子の成長ステージと移送ステージとは分離可能である。すなわち、プラズマはナノ粒子形成に必要な時間中のみ実行され、その後ナノ粒子の凝集成長が進みナノ粒子が解放される前にプラズマ放電は停止され、ガス流量はナノ粒子を基板上へ移送するように調節される。
【0034】
さらに、ひとつの態様において、T1、T2及びT3は、ほぼT1=0.1秒から1秒、T1=T2、かつT3=0となるように制御される。この条件を達成するために、例えば、連続プラズマ放電が使用され(凝集成長は無視できる、なぜなら、プラズマ励起中はそれが抑制されるからである)、ナノ粒子は適切なサイズになると同時に基板表面に到達するように適応される。この場合、ナノ粒子の成長ステージ及び移送ステージは分離不能である。ナノ粒子はその形成中に移送される。さらに、移送中もプラズマ放電が続くため、電極面に対して垂直方向の相対的に高速のガス流がナノ粒子を移送するのに必要になる。
【0035】
微小粒子の平均サイズは、約1nmから約10nmである。形成される膜の誘電率は2.4またはそれ以下であり、該膜の気孔率は約40%から80%である。
【0036】
発明及び従来技術に対する利点を要約するために、本発明のいくつかの目的及び利点が上述された。本発明の特定の実施例に従いこれらすべての目的及び利点が必ずしも達成される訳ではないことは当然である。よって、本発明はここに教示または示唆された他の目的または利点を達成することなく、ここに教示された利点または利点の集合を達成または最適化するような方法で実施または実行され得ることは当業者の知るところである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0037】
本発明の好適実施例を以下で説明する。本発明はこれに限定されない。本発明の思想から離れることなくさまざまな修正が可能であることは当業者の知るところである。したがって、本発明の形式は例示に過ぎず、本発明の態様を制限するものではない。
【0038】
ナノ粒子(ナノ建築ブロックに相当)及びラジカル(接着剤に相当)が、反応プラズマを使って気相中で生成され(ナノ建築ブロック生成工程)、その後ブロック及び接着剤が基板上に共に堆積する(ナノ建造工程)。ナノ粒子のサイズはRF放電(例えば、パルス状RF放電)周期により制御され、密度及び誘電率はラジカルフラックスに対するナノ粒子フラックスの比率により制御される。まず、ナノ建築ブロック製造工程を説明し、次に、ナノ建造工程を説明する。
【0039】
絶縁性微小粒子がプラズマCVDにより形成される際、RF電力は粒子生成条件の下で局所的に集中する傾向があるため、気相中で安定に直径10nmまたはそれ以下の絶縁性微小粒子を形成するのは一般に困難である。さらに、本発明において、ナノ粒子の直径は約1nmから数十nm、好ましくは約1nmから約20nm、より好ましくは約10nmまたはそれ以下である。ここで、ナノ粒子とは個々の粒子を意味するだけでなく、粒子の集合をも意味するものである。粒子の集合の場合、集合を構成するすべての粒子がナノ粒子であることが所望されるが、それのみではなく、形成された粒子が粒子サイズ分布を有し、その平均粒径が約1nmから10nmである微小粒子の集合から構成されることが好ましい。
【0040】
本発明の一つの態様に従い、ソースガスの希釈率(ガス全体の流量に対するソースガスの流量の比率)はソースガスとして有機シリコン含有ガスを使って、例えば、5%またはそれ以下減少するが、気相中でナノ粒子を形成するための反応時間はガス圧力を約0.5Torrまたはそれ以上に増加しかつ放電領域内のガス流速(電極面に平行な方向)を例えば2.5cm/秒またはそれ以下に減少させることにより確保される。生成されたナノ粒子が凝集を開始する前の時間フレーム内で放電を行い、さらに高いRF電力(例えば、約4W/cm2またはそれ以上)を電極間の領域に印加することにより、粒子は気相中で形成されるようになり、基板上へ堆積する。
【0041】
上記実施例の制御パラメータとして、希釈率、流速、ソースガス流量、リアクタ内の圧力、RF電圧、及び放電周期が含まれる。
【0042】
さらに、膜形成は上記制御パラメータに加え、上位順位(アッパーランキング)パラメータを使って制御される。上記したように、ナノ粒子を使って低誘電率膜を形成する方法のひとつの実施例は、(A)有機シリコンガス及び不活性ガスから成る反応ガスをリアクタ内に導入し、有機シリコンガスからナノ粒子を形成するためにプラズマ放電を実行する工程と、(B)有機シリコンガスからナノ粒子を形成するのに必要な時間(T1)、生成されたナノ粒子をリアクタ内に配置される基板へ移送するのに必要な時間(T2)、及び移送中にナノ粒子間で凝集成長が起こるまでの時間(T3)を制御することにより、基板上にナノ粒子を堆積させる工程とを含む。結果的に、この実施例において、成膜は上記T1、T2及びT3により制御可能である。
【0043】
ナノ粒子のサイズを制御するために、プラズマ中のナノ粒子の粒子成長領域(プラズマシース境界により画定される領域の近傍)内での滞留時間を制御することが必要になる。ひとつの実施例において、ナノ粒子の滞留時間は、ほぼT1=0.1秒〜1秒かつT2<T3を得るように制御される。これは、例えば以下のように、プラズマ放電周期及びサブパラメータとしてのガス流を使って達成される。パルス状のプラズマ放電を使って、放電オン周期のひとつのラウンドが約0.1秒から約1秒に設定され、放電オフ周期のひとつのラウンドが約10ミリ秒から約100ミリ秒に設定され、その間に基板上へのナノ粒子の移送が完了するように適応される。プラズマ放電が停止されている期間中、ナノ粒子の静電力は作用しないため、ナノ粒子はガス流速とほぼ同じ速度で基板へ移送される。さらに、その期間中、ナノ粒子の凝集成長が進む。ナノ粒子はプラズマ放電中に帯電しその静電力がガス流速による速度の抵抗となるため、その静電力は粒子成長領域内に留まる傾向がある。換言すれば、粒子は放電中に粒子成長領域(シース領域)内に滞留しやすい。さらに、プラズマ内でのナノ粒子の凝集はナノ粒子間に働くクーロン斥力により抑制される。結果的に、この場合、ナノ粒子の成長ステージと移送ステージとが分離可能である。すなわち、ナノ粒子を形成するのに必要な時間中のみプラズマが励起され、その後、シースが消滅するようプラズマ放電が停止され、形成されたナノ粒子の基板上への移動がナノ粒子の凝集成長が進む前に完了するようにガス流量が調節される。
【0044】
さらに、ナノ粒子のサイズが小さいほど、帯電したナノ粒子による静電力は小さくなる。結果的に、ガス流が速いほど、粒子成長領域内で成長する前にその領域から飛び出す微小粒子の数は多くなる。成長を開始する微小粒子は、帯電により生じる静電力を増加させ、その領域内により滞留しやすくなる。これにより、基板上に堆積するナノ粒子はある範囲の粒子サイズ分布を有するようになり、0.1nm以下のサイズを有するナノ粒子が堆積するのが困難となる。サイズの小さい粒子の堆積を所望するなら、ナノ粒子の成長速度を増加するかまたはガス流速を減少することにより達成可能である。
【0045】
以下で詳細に説明するように、凝集成長は反応ガスに含まれるソースガスの種類、濃度等の関数である。一般に、プロセスの観点から、標準状態で約0.1秒の凝集時間を扱うのであれば大きな影響はない。
【0046】
上記以外の例において、T1、T2及びT3は、ほぼT1=0.1秒〜1秒、T1=T2かつT3=0を達成するように制御される。これは以下のようにプラズマ放電周期及びサブパラメータとしてガス流を使用して達成される。換言すれば、上で使用したようなパルス放電を使用せず、連続プラズマ放電によりこれが達成される。連続プラズマ放電を使って(粒子間のクーロン斥力によりプラズマ放電中に凝集が抑制されるため凝集成長は無視できる)、粒子成長領域内でサイズが適当になった後に基板表面に到達するようにナノ粒子が適応される。この場合、粒子成長領域内にシースは存在し続けるため、粒子は静電力より大きな速度のガス流が必要となる。ナノ粒子の成長ステージと移送ステージはパルス放電の場合のように分離することはできない。結果的に、静電力をしのぎながらナノ粒子を移送するために、相対的に大きなガス流が要求され、粒子の移送速度はガス流の速度より遅くなる。ナノ粒子の静電力より大きなガス流により速度を増加するのに必要なガス流速(電極面に垂直方向)は、例えば約0.2秒、約0.1秒、約0.05秒または約0.025秒(これらの間の数値を含む)で電極間を通過するものであり、電極間隔が40cmの場合には、それぞれ、約20cm/秒、約40cm/秒、約80cm/秒、約160cm/秒に相当する。
【0047】
他のパラメータが以下で説明される。特に示さなければ、パラメータはパルス放電及び連続放電と共通である。
【0048】
アルゴン(Ar)のような不活性ガスにより励起された高密度プラズマを維持するためにソースガスの希釈率は下げられる。ソースガスの比率が高くなれば、プラズマ密度は降下し、ナノ粒子の形成に必要なラジカル密度を達成できない。不活性ガスとして、Arまたは、He、Ne、Kr、Xe及びN2若しくはこれらの組み合わせから成る集合から選択されたひとつのガスが使用される。ソースガスの希釈率は、例えば、約0.1%から約40%(0.2%、0.5%、1%、2%、3%、4%、5%、10%、20%、及びこれらの間の数値を含む)であり、好ましくは約0.3%から約8%であり、より好ましくは約0.5%から約3%である。
【0049】
ソースガスとして、少なくともシリコンを含み、シリコンに炭素(C)、酸素(O)及び水素(H)が添加された有機シリコンガスが使用される。化学式として、有機シリコンガスはSiαHβOγCλ(ここで、α、β、γ、λは任意の整数)で表される。例えば、SiαOα−1R2α−β+2(OCnH2n+1)β(ここで、αは1〜3の整数、βは0、1、2、3または4、nは1〜3の整数、RはSiに結合するC1-6炭化水素)により表される有機シリコンガスが挙げられる。さらに、SiR4−α(OCnH2n+1)α(ここで、αは0、1、2、3または4、nは1〜3の整数、RはSiに結合するC1-6炭化水素)、Si2OR6−α(OCnH2n+1)α(ここで、αは0、1、2、3または4、nは1〜3の整数、RはSiに結合するC1-6炭化水素)、及びSiHβR4−α(OCnH2n+1)α−β(ここで、αは1、2、3または4、βは0、1、2、3または4、nは1または2、RはSiに結合するC1-6炭化水素)により表される有機シリコンガスが挙げられる。好適な有機シリコンガスとして、Si(CH)(OCH3)、Si(CH)(OCH3)、Si(CH)(OCH3)、Si(OCH3)、Si(CH3)4、Si(CH)(OC2H5)、Si(CH)(OC2H5)、Si(CH)(OC2H5)、Si(OC2H5)、SiH(CH)3、SiH(CH)、SiH(CH)の一つまたは、この集合から選択される複数のガスの組み合わせが使用される。
【0050】
分子が酸素原子を含まない上記ガスが使用される場合、酸化ガスが添加されればSiOCH含有膜が形成され、酸化ガスが添加されなければSiC含有膜が形成される。さらに、O2、CO、CO2、及びN2Oのような酸化ガスを添加することにより、形成された膜の炭素濃度が約0〜約50%の範囲に調節される。
【0051】
電極表面と平行な流速はナノ粒子の成長に必要な時間周期が確保されるところの速度に設定される。流速がそれより速いと、ナノ粒子が成長する前に電極面からナノ粒子が流出してしまう。プラズマ中のナノ粒子成長領域内(例えば、上部電極と下部電極との間)に所定の時間周期の間ソースガスを保持することにより、ナノ粒子の成長が促進される。ナノ粒子の成長に従い、それらは帯電しやすくなる。ガス流速が大きければ、ナノ粒子は成長する前に電極表面から流出するか、または荷電ナノ粒子は基板上に堆積することなくナノ粒子成長領域の外側へ排気されやすい。ガス流速は、例えば、約5cm/秒またはそれ以下(4cm/秒、3cm/秒、2cm/秒、1cm/秒、0.5cm/秒、0.25cm/秒及びこれらの間の数値を含む)であり、好ましくは2.5cm/秒またはそれ以下、より好ましくは約1cm/秒またはそれ以下である。
【0052】
さらに、成長したナノ粒子は、次に基板へ移送されて堆積されなければならない。ガス流速が小さいと、以下で説明するように、移送速度は拡散現象により制御される。しかし、拡散現象による移送速度は小さい。圧力が小さくかつ粒径が小さいほど、拡散現象による移送速度はより増加する。圧力が低ければ分子の衝突の機会は減少するため、ナノ粒子の成長が十分に進むことは困難となる。また、最初に移送される粒子が小さいほど、ナノ粒子が十分に成長しないような場合もある。さらに、ナノ粒子は移送中に凝集して成長するため、その凝集成長が進行する前にナノ粒子が基板へ到達することが所望される。
【0053】
拡散現象による移送速度と凝集成長時間を比較すると、通常のリアクタ内では、ナノ粒子が拡散現象により基板に到達する前にナノ粒子の凝集成長が開始される。したがって、主に拡散により移送するために電極間隔が極端に短い(例えば、10mmまたはそれ以下、さらには5mmまたはそれ以下)ような実施例を除き、ナノ粒子がガス流により強制的に基板上に移送されることが望ましい。以下に説明するように、凝集成長時間(τc)及びガス流速(Q)は以下のように表される。
【0054】
【数5】

Q:ガス流量(sccm)
τc:凝集成長時間(秒)
N:シャワープレートのガスノズルの個数
A:シャワープレートのガスノズルの断面積(cm2
P:リアクタ内の圧力(Torr)
L:リアクタ内の電極間隔(cm)
上記条件を満たすようにガス流量を供給することにより、ナノ粒子は効果的に基板上に堆積する。好適には、ガスは、上記式を満たす最小値であるQの約1.1倍から約30倍(1.5倍、2倍、5倍、10倍、15倍、20倍、及びこれらの間の数値を含む)で供給される。しかし、ガス流量は上記ガス流速またはそれ以下(電極面と平行な方向で)を達成するように制御されるのが好ましい。
【0055】
リアクタ内の圧力は、ナノ粒子形成に必要なソースガス分子が安定する圧力である。ナノ粒子の成長は気相エピタキシーなので、気相衝突が十分に生じる圧力が好ましい。圧力が低いと、極端に小さいナノ粒子前駆体の拡散損失が生じる。リアクタ内の圧力は、例えば、0.1Torrまたはそれ以上(0.2Torr、0.3Torr、0.4Torr、0.5Torr、1Torr、2Torr、5Torr、10Torr、15Torr、及びこれらの間の数値を含む)であり、好ましくは約0.5Torrから約10Torr、より好ましくは約1Torrから約5Torrである。
【0056】
使用されるRF電圧はナノ粒子形成に必要なラジカル密度を確保することが可能でなければならず、それは例えば、1W/cm2またはそれ以上(2W/cm2、3W/cm2、4W/cm2、5W/cm2、7W/cm2、10W/cm2、15W/cm2、20W/cm2、及びこれらの間の数値を含む)であり、好ましくは約4W/cm2またはそれ以上、より好ましくは約8W/cm2から13W/cm2である。
【0057】
使用されるRF電力はひとつの実施例において2MHzまたはそれ以上であり、例えば、13.56MHz、27MHz、60MHz等のRF電力が使用される。
【0058】
また、プラズマ密度を増加するために、100MHzまたはそれ以上のVHF電力が使用される。さらに、VHF電力を使用することにより、放電電圧が減少し、よって気相中での帯電ナノ粒子の凝集効果を低減させることが可能になる。VHF電力はプラズマCVD用に通常使用される平行平板導体の代りに上部電極として図5に示されるスポークアンテナ電極100を使って容易に実現できる。1MHzから50MHzのRF電力を使用する場合、VHF電力は全電力の約2%から約90%(5%、10%、20%、50%、70%、及びこれらの間の数値を含む)、好ましくは約5%から約20%を占める。
【0059】
さらに、リアクタ内のインピーダンスはソースガスの流量及び生じる反応により常に変化する。結果的に、電源及び負荷(すなわち、リアクタ)を含むRF回路関連インピーダンスバランスを常時調節するのが望ましい。マッチングボックスとして、通常のマッチングボックス、電子RFマッチングボックス等が使用される。通常のマッチングボックスの場合、ステップモーターを使ってコンデンサ容量を機械的に変更することによりインピーダンスを制御することでインピーダンスを一致させるため、インピーダンスが一致するまでに数秒かかる。電子RFマッチングボックスの場合、インピーダンスの制御は電子的に為されるため、インピーダンスは機械的方法に比べマイクロ秒の高速で一致する。電気的にインピーダンスを制御する方法として、コンデンサ容量を電気的に変更する方法またはコイルインダクタンスを電気的に変更する方法がある。
【0060】
放電周期は、ナノ粒子の成長に適した時間期間である。微小粒子のサイズは放電周期を調節することにより制御可能である。以下に説明する標準状態において、放電周期は約0.1秒から約1秒の範囲内に調節され、微小粒子のサイズは約1nmから約10nmまでに調節される。ひとつの実施例において、放電周期と粒子サイズとの間の関係はほぼ線形である。他の実施例において、約1秒間(5ミリ秒、10ミリ秒、50ミリ秒、100ミリ秒、0.2秒、0.5秒及びこれらの間の数値を含む)RF電圧を印加することによりナノ粒子を形成する工程と、生成された粒子が移送される約0.2秒から約3秒の間(0.05秒、0.1秒、0.5秒、1秒、2秒及びこれらの間の数値を含む)RF電圧をオフすることによりナノ粒子を堆積する工程をひとつのサイクルとすることで、このサイクルを繰り返すことで薄膜が形成される。サイクルは固定しても、毎回変更してもよい。RF電圧がオフされる期間中の移送速度はナノ粒子のサイズにはそれほど影響されず、ガス流によりナノ粒子を主に移送するなら一定のままである。RF電圧を印加する時間の長さのみを調節することにより粒子サイズを調節することで、異なるサイズの絶縁シリコン粒子(SiO含有絶縁体、SiC含有絶縁体等)がひとつずつ多層化される。堆積工程中のサイクル数は1回またはそれ以上である。またはサイクル動作ではなく連続動作でもよい。連続動作の場合、ガス流により堆積を実行することが望ましく、ナノ粒子の移送はナノ粒子が過度に成長する前に完了しなければならない。
【0061】
上記したように、ナノ粒子のサイズはRF放電間隔により制御可能である。密度及び誘電率はラジカルフラックスに対するナノ粒子フラックスの比率により制御可能である。フラックス比率は基板と上部電極との間の温度勾配により制御可能である。図6は、本発明の実施例に従い、ナノ建築ブロック(ナノ粒子)及び接着剤(ラジカル)を使うボトムアップナノ製造方法の概念を示す略示図である。RF放電により、ソースガス分子が励起され、ラジカルを生成する。ラジカルのサイズは通常は約0.5nmまたはそれ以下であり、ナノ粒子はラジカルの重合により生成される。ナノ粒子の形成と同時に、ナノ粒子は表面に活性基を有し、互いに強く凝集する。しかし、ナノ粒子が基板上に堆積すると、それらは凝集せず、それ自身で重合もしない(膜は形成されない)。すなわち、ナノ粒子は基板への移送中に活性基を失う。一方、ラジカルは活性状態のままであり、接着剤として作用する。ナノ粒子はラジカルを接着剤として使って基板上に一緒に重合される。よって、基板へのナノ粒子の供給及びラジカルの供給を変化させることにより、膜の構造を変更することが可能である。
【0062】
微小粒子の粒径(d)が、1Torr、100℃=375Kのアルゴンガスに対して約70μmの平均自由工程(λ)より小さいなら、微小粒子に加えられる伝熱力(Fth)は以下の式により表される。
【0063】
【数6】

ここで、pはガス圧力[dyn/cm2]、Tはガス温度[K]である。
【0064】
式中のマイナス符号は伝熱力が高温側から低温側へ向かうことを示している。温度勾配(∇T)は実質的にまたはほぼ一定であり以下の式で表される。ここで、Tsは基板の温度(℃)、Tpは上部電極の温度(℃)、及びLは基板と上部電極との間の距離(cm)である。
【0065】
【数7】

式(1)から分かるように、伝熱力は微小粒子サイズの自乗に比例するため、原子、分子及びラジカルのような小さい粒子は伝熱力により大きな影響を受けない。一方、例えば、1〜20nmのサイズのナノ粒子は伝熱力により影響を受ける。よって、伝熱力すなわち温度勾配を制御することにより、ラジカルの移送(ラジカルフラックス)よりも優位にナノ粒子の移送(ナノ粒子フラックス)を制御することが可能である。
【0066】
図7A、7B及び7Cは、本発明の実施例に従い、Ts<Tp、Ts=Tp、Ts>Tpの場合のナノ粒子フラックス及びラジカルフラックスを略示したものである。Ts<Tpの場合(図7A)、伝熱力はナノ粒子に対して下部電極方向に加えられ、それによりナノ粒子フラックスが増加している。結果として、気孔率が大きく誘電率が低い(1に近い)膜が形成される。しかし、伝熱力はナノ粒子フラックスに優位に作用し、ナノ粒子に比べ膜に移送されるラジカル(接着剤)が不十分であるため、膜は構造上の強度が十分ではない。Ts=Tpの場合(図7B)、有意な伝熱力は存在せず、ナノ粒子フラックス及びラジカルフラックスの両方で拡散が支配的である。Ts>Tpの場合(図7C)、伝熱力はナノ粒子に対して上部電極方向に加えられ、それにより基板へのナノ粒子フラックスが減少する。結果として、気孔率が小さく誘電率が高い(3または4のオーダー)膜が形成される。
【0067】
堆積後に後処理を実行することにより、膜の性質が改善される。例えば、膜の機械的強度を改善するために、堆積後にUV及びEBを組み合わせた熱処理により膜をキュアする処理が実行される。熱処理は、例えば、真空状態で約10秒から約5分の間、約300℃から約450℃の温度で実行される。
【0068】
さらに、膜の機械的強度を改善するために、キュア工程はプラズマ処理、UVまたはEBと組み合わせた熱処理により実行されてもよい。後処理としてのプラズマ処理は、200mmウエハの場合、出力が約200W〜約500Wの約27MHzのRF電力条件で、約1Torrから約6Torrの圧力のH2及びHeの雰囲気中で実行される。
【0069】
さらに、膜の機械的強度は、微小粒子膜の形成後に有機シリコンガス雰囲気中で膜を放置することにより微小粒子膜へ有機シリコン分子を付着する工程、及びその膜をキュアする工程により改善される。例えば、堆積した膜のキュアは、シリコンウエハが真空リアクタ内に配置された後350℃〜450℃で実行され、SiOCH組成を有する約10sccmから約500sccmの有機シリコンガスが、約0℃から約250℃にウエハ温度が設定されているリアクタ内に導入される。さらに、キュア工程において、UVが一緒に使用されてもよい。キュアされた膜はSiOH含有膜となる。
【0070】
または、微小粒子膜が形成された後、膜の機械的強度は、H2Oガス雰囲気中で膜を放置する工程と、有機シリコンガス雰囲気中で膜を放置する工程を、短いサイクルまたは複数回繰り返すことにより改善される。例えば、有機シリコンガスが導入される前に、約1sccmから約500sccmのH2Oガスが導入される。
【0071】
形成された膜の弾性率は、ひとつの実施例において約1GPaから約4GPaであり、キュア工程の後約10%から約50%だけ改善される。
【0072】
装置構成
図1において、本発明で使用される平行平板型容量結合プラズマCVD装置の例が示されている。本発明はこの装置に限定されない。また、図は説明上、過度に単純化されている。この装置はナノ粒子測定装置を含むが、このような装置のインストールは商業的に必要ではない。それが含まれるなら、成膜はプラズマ反応及び堆積反応をモニターしながら実行可能である。
【0073】
リアクタ1内で互いに平行かつ対向して上部電極2及び下部電極4から成る一対の導体平板電極を配置し、一方の電極へ例えば13.56MHzのRF電力8を印加し、他方の電極を接地することにより、一対の電極の間にプラズマが励起される。下部電極4は基板を支持する下部ステージとしても機能し、基板3は下部ステージ4上に載置される。温度制御装置が下部ステージ4に接続され、堆積中に、温度は例えば約0℃から約450℃の所定温度(好ましくは、約150℃から約400℃、これは基板温度に等しい)に維持される。例えば、ジメチルジメトキシシラン(DM-DMOS, Si(CH3)2(OCH3)2)のようなソースガス及び例えばアルゴンのような不活性ガスが混合され、反応ガスとして使用される。これらのガスは、流量制御器9により所定流量に制御され、混合されて、反応ガスとして上部電極2(シャワープレート)の上に設けられた吸入口12から導入される。
【0074】
ナノ粒子のサイズ及び密度の測定方法
凝集/分散法を適用することにより、ナノ粒子のサイズ及び密度が測定できる。放電条件及びレーザービーム入力条件の一例が以下に説明されるが、条件はこれらの例に限定されるものではない。
【0075】
入力アルゴンイオンレーザー条件
入力電力:1Wまで
レーザー径:5mm(ICCDカメラ使用時)、0.5mm(PMT使用時)
Ar+レーザーからのレーザービーム(488nm、1W)14が照射され、鏡13で反射される。グラン-トムソンプリズム11を貫通して偏光方向が均一化された状態で、レーザービームは鏡10によりリアクタ1の壁に設けられた真空絶縁ガラス(石英製)の窓5を通じてリアクタ1内に照射される。リアクタ1内のナノ粒子生成領域を通過し、壁の反対側に設けられた窓6を通過したレーザービームがICCDカメラ7により観測される(または、光電子倍増管(PMT)により検出される)。レーザー分散法を使って粒子間の熱凝集現象を観測することにより、微小粒子のサイズが簡単に測定できる。
【0076】
ナノ粒子のサイズ制御及び放電周期
ナノ粒子のサイズは放電周期を制御することにより決定される。図2において、放電期間のナノ粒子サイズに対する依存性が示されている。この実験は、11.9W/cm2で13.56MHzのRF電力、0.3秒の放電周期、4000sccmのアルゴンガス、20sccmのDMDMOS、1Torrの圧力、250℃の基板温度、φ200mmの電極サイズ、20mmの電極間隔、1.0cm/秒の放電領域内ガス流速(電極面に平行な方向)の条件のもとで実行され、レーザー分散法を使って粒子間の熱凝集現象を観測することにより、微小粒子のサイズが簡単に測定された。この図からわかるように、この例は放電後0.1秒に開始され、約1nmの直径を有するナノ粒子が生成され、そのサイズは放電周期が経過するに従い、大きくなる。放電周期に対してナノ粒子サイズを線形的に成長させ、約2nmの直径を有するナノ粒子を生成するためには約0.15秒の放電周期が必要なことがわかる。
【0077】
放電周期を選択することにより、粒子サイズは約1nmから約30nmの範囲内に制御される。さらに、サイズが1nm近傍で大きくばらつく理由は、測定されたサイズ及び信号強度が1nm近傍で突然減少し、それによりS/N比が落ちたためである。サイズが1/2に減少すると、測定された信号強度は(1/2)6まで減少する。これは、測定の問題である。TEM観測により、サイズ制御は小さいサイズ領域でさえも高精度で実行可能であることが確かめられた。
【0078】
点線は実験データの線形近似曲線であり、それよりサイズ成長速度として約6.5nm/秒が得られる。データあてはめの際、DMDMOSの最初の分子サイズとして0.93nmが使用された。ナノ粒子のサイズは、約1ミリ秒から約1秒の範囲内で放電周期を制御することにより、線形的かつ正確にナノメートルのオーダーで制御可能であることがわかる。上記したように、絶縁性シリコン粒子のプラズマCVDによる粒子生成現象はこれまで報告されなかった。
【0079】
生成されたナノ粒子の基板までの移送時間
ナノ粒子は拡散及びガス流により移送され、概して2つの異なる効果が混合される。主要な移送手段に対して効果が好ましいように、装置構成及び圧力が決定される。圧力が低くかつ電極間隔が狭い場合、ナノ粒子の移送は拡散が主になり、圧力が高い場合、ナノ粒子はガス流により移送され、それは拡散速度より速い。
【0080】
拡散による移送現象は、RF電極近傍で生成されたナノ粒子がガス分子との衝突を通じて拡散されながら基板へ移送される、というものである。拡散速度を規定する拡散係数D(単位時間あたりに粒子の広がる面積)は以下の関係式から得られる。
【0081】
【数8】

ここで、Ng、Tg、dg、及びmg、はそれぞれ、ガス密度、ガス温度、ガス分子の直径及びガス分子の質量であり、dSi、mSi、及びnはそれぞれ、シリコン原子の直径、シリコン原子の質量及び微小粒子を構成する原子数であり、kBはボルツマン定数である。さらに、この拡散係数は不活性ガス分子間で拡散するシリコン原子のものであるが、シリコンの含量が大きいシリコン含有ガスに適用可能である。さらに、他の原子の含量が大きくなろうとも、適用される基本は同じである。
【0082】
移送時間はτd=L2/Dと定義され、ここで、Lは移送距離(電極間隔)である。移送時間は粒子サイズ及びガス圧力に依存するが、概して、1Torrのガス圧力、約10−23kgの質量、不活性ガスとしアルゴンを使用し、100℃のガス温度の条件下で、数ナノメートルの微小粒子に対して約0.1秒から約1秒である。図3において、拡散による移送距離が1cmに設定された場合の移送に必要な時間が示されている(他の条件はナノ粒子のサイズ制御及び放電周期の実験に適用されたものと同じ)。低いガス圧力の下で粒子が小さくなるほど、微小粒子の拡散がより容易になるため、移送時間はより短くなる。さらに、移送時間の範囲は、ソースガスの種類、不活性ガスの種類、ガス温度等によりあまり影響されない。
【0083】
電極間隔Lが20mmの場合、拡散による移送時間は約0.4秒であり、Lが10mmの場合、拡散による移送時間は約0.1秒である。この移送時間が経過すると、電極間の粒子密度は十分に減少する。移送時間が経過した後にRF電力がオンされたら、ナノ粒子の生成が再び始まる。これらの工程を連続して繰り返すことにより、堆積される膜の厚さが増加する。
【0084】
微小粒子が主にガス流により移送される場合、以下の式を拡張することにより、移送時間τdが以下の式で記述される。
【0085】
【数9】

Q:ガス流量(sccm)
τd:移送時間(秒)
N:シャワープレートのガスノズルの個数
A:シャワープレートのガスノズルの断面積(cm2
P:リアクタ内の圧力(Torr)
L:リアクタ内の電極間隔(cm)
【0086】
【数10】

ガス流量を増加することにより、移送時間は短縮され、拡散による上記移送速度より有意に大きい移送速度でナノ粒子を移送することが可能である。
【0087】
移送中の微小粒子の凝集成長を抑制する方法
微小かつ均一な多孔膜を製造するために、移送中の微小粒子の凝集成長を抑制することが非常に重要になる。移送の途中で微小粒子が凝集すれば、フロックが形成され、微小な均一の多孔膜の製造が困難になる。微小粒子間の熱移動から生じる凝集成長時間は、τc=1/kcnpにより得られ、ここで、kc及びnpはそれぞれ微小粒子の凝集係数及び密度であり、凝集係数は以下の式で得られる。
【0088】
【数11】

Tp、dp及びρはそれぞれ微小粒子の温度、直径及び質量密度である。さらに、ガス分子の因子は凝集係数の計算には含まれない。ナノ粒子の密度が1011cm-3である条件下ではナノ粒子間の距離はミクロンのオーダーであり、それによりナノ粒子の有効平均自由工程はガス圧力が約1Torrの条件で0.1mmのオーダーであるため、ガス分子による凝集抑制効果は無視できる。言い換えれば、ナノ粒子の凝集はナノ粒子の移送と無関係に時間経過とともに進行する。
【0089】
図4において、微小粒子の凝集時間が示されている(他の条件はナノ粒子のサイズ制御及び放電周期の実験に適用されたものと同じ)。粒子密度が1010cm-3のナノ粒子に対して、凝集時間τcは約0.1秒から約0.3秒である。移送中の微小粒子の凝集成長を抑制するために、移送時間を凝集時間より短くすることが好ましい(τd<τc)。言い換えれば、生成される微小粒子の量をある程度抑制しかつ移送距離を短縮することが好ましい。
【0090】
【数12】

移送時間は拡散及びガス流効果の2つの効果により決定されるが、拡散のみによる移送時間τdが一般に長い(上記実施例では約0.1秒から約1秒)ため、上記関係を満たすためには、ガス流により移送速度を増加させることが好ましい。拡散による移送が無視できる程度にガス流による移送が主になる移送装置の場合、移送中の凝集はガス流条件により制御可能である。L=1cm、A=0.0079cm2(φ0.5mm)、N=9000、凝集成長時間τc=0.1秒の場合、リアクタに導入されるべきガス流量は以下の式を使って計算される。
【0091】
【数13】

移送中の凝集は、Q>237sccmの条件で膜を形成することにより、抑制可能である。
【0092】
上記条件に関して、Q>300sccm、500sccm、1000sccm、2000sccm、3000sccm、4000sccm、5000sccm、6000sccm及びこれらの間の数値が好ましい。しかし、上記したように、電極面と平行な方向のガス流量は2.5cm/秒またはそれ以下が好ましく、適切なガス流がリアクタのサイズ等との関係に基づき選択される。
【0093】
膜特性
上記方法により得られる膜の誘電率は、ひとつの実施例で2.0〜2.5、また2.1〜2.4である。また、ひとつの実施例に従い、形成された膜の弾性率は約1GPaから約4GPaである(弾性率はキュア工程の後、約10%から約50%だけ改善される)。さらに、ひとつの実施例に従い、RIは1.1〜1.3であり、気孔率は約30%から約85%、さらには約40%から約75%、または約50%から約70%である。さらに、膜厚は適宜調節可能であり、特に制限されないが、ひとつの実施例において、約20nmから約2000nm、さらには約50nmから約1000nm、または約100nmから約500nmである。
【0094】
膜形成例
容量結合プラズマCVD装置(日本エー・エス・エム社製、Eagle-10(商標)と類似の基本構成を有する装置)を使って、以下の条件で、シャワーヘッド(付勢された上部電極)とサセプタ(基板または下部電極)との間に所定の温度勾配でナノ粒子を生成しかつ堆積するサイクルを繰り返すことにより、厚さ0.8mmの基板上に400nmの膜厚を有するSiOH含有低k膜が形成された。
サセプタ温度:100℃、115℃、145℃、200℃または250℃
シャワーヘッド温度:95℃
サセプタとシャワーヘッドの間隔:10mm
電極サイズ:φ60mm
ガス共通条件:Ar 40sccm、DMDMOS 0.2sccm、放電領域内のガス流速(電極表面と平行)1.0cm/秒、1Torr
RF電力:13.56MHz、75W(11.9W/cm2
堆積時間:470秒
【0095】
得られた膜の特性は以下の通りである。
厚さ:1400nm
膜密度:(g/cm3):図8参照
誘電率:図9参照
SiOCHナノ粒子は他のガスで希釈されたDMDMOS(ジメチルジメトキシシラン)のRF放電を使って製造された。そのサイズ及び密度はインサイチュレーザ光散乱法(M.Shiratani及びY.Watanabe, Rev. Laser Eng.26, 449,1998)及びエクスサイチュ透過電子顕微鏡により測定された。測定結果は、直径が1〜20nmで、分散が小さく、数密度が1012から10である、サイズの制御されたナノ粒子が製造されたことを示している。
【0096】
その後、ナノ粒子及びラジカルは、基板と上部電極の間のガス温度勾配のパラメータとして基板上に一緒に堆積する。図8に結果が示されている。ナノ粒子フラックスが有意に減少したため、温度勾配が5から50K/cmに増加するに従い膜密度は0.2から1.8g/cm3に急激に増加した。50K/cm以上で、基板へのナノ粒子フラックスがその温度勾配範囲で限界となったため、密度はほぼ一定になった。図9に示されるように、膜の誘電率は1.3〜2.7の範囲であった。膜のFTIR解析結果は、膜がSi-O、Si-CH3、Si-O-Cにより構成されるがSi-Oをほとんど含まないことを示している。これらの結果は、膜密度及び誘電率が容易に制御できたことを示すものである。図8及び9において、温度勾配は上部電極とサセプタとの間の距離及び温度差に基づいて計算された。しかし、上記実験を通じて、基板温度はサセプタ温度と実質的に等しいと仮定した。基板と上部電極との間の距離は9.2mmであった。よって、基板と上部電極との間の温度勾配は図8及び9に示されたものの1.087倍で計算された。
【0097】
上記したように、本発明の少なくともひとつの実施例に従い、プラズマCVDにより低k膜を形成することが可能になった。高集積半導体デバイス用の絶縁膜としてこの低k膜を使用すると、配線容量により生じる遅延を減少させることで半導体デバイスの動作速度を実質的に向上させることが可能になる。
【0098】
本発明は以下の実施例を含むが、これらに限定されない。
【0099】
1)以下の条件で容量結合CVD装置を使って、膜が形成される。
・一般式、SiαHβOγCλ(ここで、α、β、γ、λは任意の整数)で表され、少なくともSiを含み、Siに添加されるC、O及びHから成る有機シリコンガスがソースガスとして使用される。
・有機シリコンガスの流量比は、不活性ガスにより10%またはそれ以下に希釈される。
・反応圧力は、0.1から10Torrの圧力範囲に設定される。
・気相中でナノメートルのオーダーのサイズの微小粒子を生成し、基板上へこの粒子を堆積することにより、低k絶縁膜が形成される。
【0100】
2)有機シリコンガスは、一般式SiαOα−1R2α−β+2(OCnH2n+1)βで表され、ここで、αは1〜3の整数、βは0、1、2、3または4、nは1〜3の整数、RはSiに結合するC1-6炭化水素である。
【0101】
3)有機シリコンガスは、一般式SiR4−α(OCnH2n+1)αで表され、ここで、αは1、2、3または4、nは1〜3の整数、RはSiに結合するC1-6炭化水素である。
【0102】
4)有機シリコンガスは、一般式Si2OR6−α(OCnH2n+1)αで表され、ここで、αは0、1、2、3または4、nは1〜3の整数、RはSiに結合するC1-6炭化水素である。
【0103】
5)有機シリコンガスは、一般式SiHβR4−α(OCnH2n+1)α−βで表され、ここで、αは0、1、2、3または4、βは0、1、2、3または4、nは1または2、RはSiに結合するC1-6炭化水素である。
【0104】
6)1ミリ秒から1秒の間RF電力を印加してナノ粒子を形成し、粒子移送時間中にRF電力をオフして堆積処理することにより、膜が形成される。一度または複数回連続動作することが含まれる。
【0105】
7)ソースガスとして、有機シリコンガスであるDMDMOS(Si(CH3)2(OCH3)2が使用され、不活性ガスとしてArが使用される。
【0106】
8)13.56MHz、27MHzまたは60MHzの周波数のRF電力が使用される。
【0107】
9)100MHzまたはそれ以上のVHF電力が使用される。
【0108】
10)VHF電力が使用される場合、スポークアンテナ電極が使用される。
【0109】
11)膜は、0℃から450℃の範囲の基板温度で形成される。
【0110】
12)膜は、150℃から400℃の範囲の基板温度で形成される。
【0111】
13)有機シリコンガスとして、Si(CH3)4、Si(CH)(OCH3)、Si(CH)(OCH3)、Si(CH)(OCH3)、Si(OCH3)、Si(CH)(OC2H5)、Si(CH)(OC2H5)、Si(CH)(OC2H5)、Si(OC2H5)、SiH(CH)3、SiH(CH)、SiH(CH)の一つまたは、この集合から選択される複数のガスの組み合わせが使用される。
【0112】
14)不活性ガスとして、Arまたは、He、Ne、Kr、Xe及びN2から成る集合から選択されるひとつ若しくはその組み合わせが使用される。
【0113】
15)O2、CO、CO2、及びN2Oのような酸化ガスを添加することにより、形成膜中の炭素濃度が調節される。
【0114】
16)反応空間内でのナノ粒子の移送時間を短縮する条件で、膜が形成される。
【0115】
17)膜の機械的強度を改善するために、UVまたはEBと組み合わせた熱処理により形成膜がキュアされる。
【0116】
18)膜の機械的強度を改善するために、プラズマ処理、UVまたはEBと組み合わせた熱処理により形成膜がキュアされる。
【0117】
19)電子RFマッチングボックスが使用される。
【0118】
20)微小粒子膜が形成された後、膜を有機シリコンガス雰囲気中に置き、有機シリコン分子を微小粒子に付着させ、膜をキュアする工程を実行することにより、膜の機械的強度が改善される。
【0119】
21)微小粒子膜が形成された後、膜をH2O雰囲気中に置き、かつ、膜を有機シリコンガス雰囲気中に置く工程を一度または複数回繰り返すことにより、膜の機械的強度が改善される。
【0120】
本発明の思想から離れることなくさまざまな修正が可能であることは当業者の知るところである。したがって、本発明の形式は例示に過ぎず、本発明の態様を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0121】
【図1】図1は、本発明で使用される平行平板型容量結合CVD装置を略示したものであり、説明のため過度に単純化されている。
【図2】図2は、本発明のひとつの実施例において、プラズマ放電時間とナノ粒子サイズの関係を示すグラフである。
【図3】図3は、本発明のひとつの実施例において、拡散による移送距離が1cmに設定されたときに、ナノ粒子のサイズとナノ粒子を移送するのに必要な時間との間の関係を示すグラフである。
【図4】図4は、本発明のひとつの実施例において、ナノ粒子の凝集時間とナノ粒子サイズとの間の関係を示すグラフである。
【図5】図5は、本発明のひとつの実施例で使用されるスポークアンテナ電極を略示したものであり、説明のため過度に単純化されている。
【図6】図6は、本発明のひとつの実施例に従うナノ建築ブロック(ナノ粒子)及び接着剤(ラジカル)を使用するボトムアップナノ製造方法の概念を示す。
【図7】図7A、B、Cは、本発明のひとつの実施例に従い、Ts<Tp、Ts=Tp、Ts>Tpのときの、ナノ粒子フラックス及びラジカルフラックスを略示したものである。
【図8】図8は、本発明のひとつの実施例に従う電極間の温度勾配と膜密度の関係を示すグラフである。
【図9】図9は、本発明のひとつの実施例に従う電極間の温度勾配と誘電率との関係を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
低誘電率膜を形成する方法であって、
容量結合CVD装置のリアクタ内に、有機シリコンガス及び不活性ガスから成る反応ガスを導入する工程と、
気相中で生成されるナノ粒子のサイズを、リアクタ内のプラズマ放電周期の関数としてナノメートルのオーダーのサイズに調節する工程と、
基板と上部電極との間の温度勾配を100℃/cmまたはそれ以下に制御しながら、リアクタ内の上部電極と下部電極との間に配置される基板上に、生成されたナノ粒子を堆積する工程と、
から成る方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、温度勾配は50℃/cmまたはこれ以下に制御される、ところの方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、温度勾配は、−10≦(Ts−Tp)/L≦50を満たすように制御され、ここで、Tsは基板温度(℃)、Tpは上部電極の温度(℃)、Lは基板と上部電極との間の距離(cm)である、ところの方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法であって、堆積する工程において、上部電極は50℃から250℃の温度に制御される、ところの方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法であって、上部電極及び下部電極は5mmから30mmの距離だけ離隔して設置される、ところの方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法であって、堆積したナノ粒子により形成される膜は1.3から2.7の誘電率を有する、ところの方法。
【請求項7】
請求項6に記載の方法であって、膜の誘電率は基板と上部電極との間の温度勾配の関数として制御される、ところの方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法であって、形成される膜の誘電率は基板温度を下げることにより減少する、ところの方法。
【請求項9】
請求項1に記載の方法であって、有機シリコンガスの流量は不活性ガスの流量の10%またはそれ以下である、ところの方法。
【請求項10】
請求項1に記載の方法であって、プラズマ放電は8W/cm2から13W/cm2でRF電力を印加することにより実行される、ところの方法。
【請求項11】
請求項1に記載の方法であって、微小粒子は、1ミリ秒から1秒に設定されたプラズマ放電周期のひとつのラウンドで形成される、ところの方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法であって、プラズマ放電は、微小粒子が基板上に堆積する期間中、停止される、ところの方法。
【請求項13】
請求項1に記載の方法であって、プラズマ放電は断続的に実行される、ところの方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、1回のサイクルが、10ミリ秒から1秒でプラズマ放電周期のひとつのラウンドを設定して微小粒子を形成する工程と、プラズマ放電のひとつのラウンド後の100ミリ秒から2秒の間プラズマ放電を停止し生成微粒子を基板上に堆積する工程とから成り、少なくとも2回またはそれ以上のサイクルが実行される、ところの方法。
【請求項15】
請求項14に記載の方法であって、反応ガスがリアクタ内に設けられたシャワープレートのガスノズルを通じて導入され、プラズマ放電が上部電極と下部電極との間で実行され、基板が下部電極上に載置されるところの構成において、反応ガスの流量は以下の関係を満たすように調節されるところの方法。
【数1】

Q:ガス流量(sccm)
N:シャワープレートのガスノズルの個数
A:シャワープレートのガスノズルの断面積(cm2
P:リアクタ内の圧力(Torr)
L:電極間隔(cm)
【請求項16】
請求項1に記載の方法であって、基板表面に平行な方向の反応ガスの流速がリアクタ内で2.5cm/秒になるように調節される、ところの方法。
【請求項17】
請求項1に記載の方法であって、プラズマ放電中のリアクタ内の圧力は0.1Torrから10Torrである、ところの方法。
【請求項18】
請求項1に記載の方法であって、プラズマ放電は13.56MHz、27MHz、60MHzのRF電力を使って実行される、ところの方法。
【請求項19】
請求項1に記載の方法であって、有機シリコンガスは、SiαOα−1R2α−β+2(OCnH2n+1)β、ここで、αは1〜3の整数、βは0, 1,2 ,3 または4、 n は1〜3の整数、RはSiに結合するC1-6 炭化水素で表される化合物、SiR4−α(OCnH2n+1)α 、ここで、αは0, 1,2 ,3 または 4、n は1〜3の整数、RはSiに結合するC1-6 炭化水素で表される化合物、SiOR6−α(OCnH2n+1)α、ここで、αは0,1,2,3または4、nは1〜3の整数、RはSiに結合するC1-6 炭化水素で表される化合物、または、SiHβR4−α(OCnH2n+1)α−β 、ここでαは0,1,2 ,3または4、βは0,1,2,3または4、nは1または2、RはSiに結合するC1-6炭化水素で表される化合物のひとつまたはそれ以上である、ところの方法。
【請求項20】
請求項1に記載の方法であって、反応ガスはさらに、形成膜の炭素濃度を調節するために、O2、CO、CO2、及びN2Oの少なくともひとつを含む酸化ガスを含む、ところの方法。
【請求項21】
請求項1に記載の方法であって、さらに、膜形成後に、プラズマ処理、UVまたはEBのひとつまたは任意の組み合わせによる熱処理により、形成膜をキュアする工程を含み、それにより膜の機械的強度が改善されるところの方法。
【請求項22】
請求項1に記載の方法であって、さらに、膜形成後に、有機シリコンガス雰囲気中に基板を置くことにより、膜に有機シリコン分子を付着させる工程と、膜をキュアしそれにより膜の機械的強度を改善する工程とを含む方法。
【請求項23】
請求項1に記載の方法であって、さらに、膜形成後に、H2Oガス雰囲気中に膜を置き、次に有機シリコンガス雰囲気中に膜を置く処理を、一度または複数回繰り返し、それにより膜の機械的強度を改善する工程を含むところの方法。
【請求項24】
低誘電率膜を形成する方法であって、容量結合CVD装置のリアクタ内に有機シリコンガス及び不活性ガスから成る反応ガスを導入する工程と、
以下の関係を満たすように反応ガス流量を調節する工程と、
【数2】

Q:ガス流量(sccm)
N:シャワープレートのガスノズルの個数
A:シャワープレートのガスノズルの断面積(cm2
P:リアクタ内の圧力(Torr)
L:電極間隔(cm)
気相状態の有機シリコンガスから生成される微小粒子のサイズを、リアクタ内のプラズマ放電周期の関数として、10nmまたはそれ以下に調節する工程と、
基板と上部電極との間の温度勾配を100℃/cmまたはそれ以下に制御しながら、プラズマ放電を停止することにより、リアクタ内の上部電極と下部電極との間に配置された基板上へ生成された微小粒子を堆積する工程と、
から成る方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、温度勾配は、−10≦(Ts−Tp)/L≦50を満たすように制御され、ここで、Tsは基板温度(℃)、Tpは上部電極の温度(℃)、Lは基板と上部電極との間の距離(cm)である、ところの方法。
【請求項26】
請求項24に記載の方法であって、堆積したナノ粒子により形成される膜は1.3から2.7の誘電率を有する、ところの方法。
【請求項27】
請求項24に記載の方法であって、1回のサイクルが、10ミリ秒から1秒でプラズマ放電周期のひとつのラウンドを設定して微小粒子を形成する工程と、プラズマ放電のひとつのラウンド後の100ミリ秒から2秒の間プラズマ放電を停止し生成微粒子を基板上に堆積する工程とから成り、少なくとも2回またはそれ以上のサイクルが実行される、ところの方法。
【請求項28】
請求項25に記載の方法であって、低誘電率膜は、前記サイクルを30回から150回連続して繰り返すことにより形成される、ところの方法。
【請求項29】
請求項24に記載の方法であって、生成された膜の気孔率は40%から80%である、ところの方法。
【請求項30】
低誘電率膜を形成するための方法であって、
(A)有機シリコンガス及び不活性ガスから成る反応ガスをリアクタ内に導入する工程と、
(B)100ミリ秒から2秒の間、プラズマ放電を実行することにより有機シリコンガスから微小粒子を形成する工程と、
(C)基板と上部電極との間の温度勾配を100℃/cmまたはそれ以下に制御しながら、リアクタ内の上部電極と下部電極との間に配置された基板上に微小粒子を堆積する工程と、
から成る方法。
【請求項31】
請求項30に記載の方法であって、温度勾配は、−10≦(Ts−Tp)/L≦50を満たすように制御され、ここで、Tsは基板温度(℃)、Tpは上部電極の温度(℃)、Lは基板と上部電極との間の距離(cm)である、ところの方法。
【請求項32】
請求項30に記載の方法であって、堆積したナノ粒子により形成される膜は1.3から2.7の誘電率を有する、ところの方法。
【請求項33】
請求項30に記載の方法であって、微小粒子の平均サイズは1nmから10nmである、ところの方法。
【請求項34】
低誘電率膜を形成する方法であって、
(A)有機シリコンガス及び不活性ガスから成る反応ガスをリアクタ内に導入し、有機シリコンガスからナノ粒子を形成するためにプラズマ放電を実行する工程と、
(B)基板と上部電極との間の温度勾配を100℃/cmまたはそれ以下に制御しながら、有機シリコンガスからナノ粒子を形成するのに必要な時間(T1)、リアクタ内に配置された基板へ形成されたナノ粒子を移送するのに必要な時間(T2)、及び移送中にナノ粒子間で凝集成長が生じるまでの時間(T3)を、プラズマ放電周期及びガス流量の関数として制御することにより、リアクタ内で上部電極と下部電極との間に配置された基板上にナノ粒子を堆積する工程と、
から成る方法。
【請求項35】
請求項34に記載の方法であって、工程(B)において、T1=0.1秒〜1秒かつT2<T3になるように、T1、T2及びT3が制御される、ところの方法。
【請求項36】
請求項34に記載の方法であって、工程(B)において、T1=0.1秒〜1秒、T1=T2かつT3=0になるように、T1、T2及びT3が制御される、ところの方法。
【請求項37】
請求項34に記載の方法であって、温度勾配は、−10≦(Ts−Tp)/L≦50を満たすように制御され、ここで、Tsは基板温度(℃)、Tpは上部電極の温度(℃)、Lは基板と上部電極との間の距離(cm)である、ところの方法。
【請求項38】
低誘電率膜を形成する方法であって、
(A)有機シリコンガス及び不活性ガスから成る反応ガスをリアクタ内に導入し、有機シリコンガスからナノ粒子を形成するためにプラズマ放電を実行する工程と、
(B)有機シリコンガスからナノ粒子を形成するのに必要な時間(T1)、リアクタ内に配置された基板へ形成されたナノ粒子を移送するのに必要な時間(T2)、及び移送中にナノ粒子間で凝集成長が生じるまでの時間(T3)を使って、基板と上部電極との間の温度勾配を100℃/cmまたはそれ以下に制御しながら、リアクタ内で上部電極と下部電極との間に配置された基板上へのナノ粒子の堆積を制御する工程と、
から成る方法。
【請求項39】
請求項38に記載の方法であって、工程(B)において、T1=0.1秒〜1秒かつT2<T3になるように、T1、T2及びT3が制御される、ところの方法。
【請求項40】
請求項38に記載の方法であって、工程(B)において、T1=0.1秒〜1秒、T1=T2かつT3=0になるように、T1、T2及びT3が制御される、ところの方法。
【請求項41】
請求項38に記載の方法であって、温度勾配は、−10≦(Ts−Tp)/L≦50を満たすように制御され、ここで、Tsは基板温度(℃)、Tpは上部電極の温度(℃)、Lは基板と上部電極との間の距離(cm)である、ところの方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2006−332676(P2006−332676A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−146334(P2006−146334)
【出願日】平成18年5月26日(2006.5.26)
【出願人】(000227973)日本エー・エス・エム株式会社 (68)
【出願人】(504145342)国立大学法人九州大学 (960)
【Fターム(参考)】