説明

読取装置

【課題】読取媒体に照射した光の反射光または透過光の強度を精度良く読取り可能な読取装置を提供する。
【解決手段】読取装置40は、赤外線吸収剤16の充填された溝部14が規則的に予め形成された第1の領域18を有する読取媒体10の第1の領域18に、照明部44から赤外線を照射して読取媒体10による反射光を導出部46で受光するとともに受光した反射光の強度を示す強度情報を導出する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取媒体に照射した光の反射光または透過光の強度を読み取る読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ICカードやクレジットカード等の情報記録媒体へ特徴的な情報を付与するために、磁気層を設けて磁気情報を付与したり、ICチップを設けてこのICチップに情報を記憶させたり、エンボスやバーコード等により特有の情報を付与する方法が知られている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
これらの中でも、エンボスや光学マーク等の光学的に読取り可能なパターンを用いて、情報記録媒体へ特有の情報を付与する方法は、特定の部品を情報記録媒体へ追加して設ける必要がないことから、情報記録媒体に特徴的な情報を付与する方法として広く用いられている。
【0004】
これらの光学的に読み取り可能なパターンの読取りとしては、これらのパターンに照明光を照射して、この照明光に対する反射率または透過率に基づいてパターンを認識することにより情報記録体の特徴情報を読み取っている。
詳細には、光学マークを示す領域と、該領域以外の領域との反射率または透過率の差や、エンボスによる凹部と凸部との間の反射率または透過率の差に基づいて、パターンを認識することにより特徴情報を読み取っている。このため、反射率または透過率のコントラストが重要となっている。
【0005】
また、特許文献3には、情報記録媒体の表面ではなく、情報記録媒体の内側の層に識別情報を記録し、この識別情報を読み取ることが行われている。
しかし、この場合についても、反射率または透過率のコントラストが重要となっていた。
【特許文献1】特開平6−287985号公報
【特許文献2】特開平7−166498号公報
【特許文献3】特開平8−120598号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、読取媒体に照射した光の反射光または透過光の強度を精度良く読取り可能な読取装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題は、以下の本発明により達成される。すなわち、
【0008】
請求項1に係る発明は、赤外線吸収剤が充填された溝部の予め形成された第1の領域を有する読取媒体と、前記読取媒体の前記第1の領域へ赤外線を照射する赤外線照射手段と、該赤外線の前記読取媒体の透過光または反射光を受光すると共に、受光した透過光または反射光に基づいて、前記溝部の形成領域及び前記溝部の非形成領域の透過光または反射光の強度を示す強度情報を導出する導出手段と、を備えた読取装置である。
【0009】
請求項2に係る発明は、前記溝部は、線状または点状であることを特徴とする請求項1に記載の読取装置である。
【0010】
請求項3に係る発明は、前記第1の領域は、前記溝部が予め定められた規則性に従って配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の読取装置である。
【0011】
請求項4に係る発明は、前記導出手段によって導出された強度情報に基づいて、前記読取媒体に照射された前記赤外線の該読取媒体上の位置を示す座標情報を算出する座標算出手段と、前記座標算出手段によって算出された座標情報に基づいて、前記読取媒体に照射された赤外線が前記読取媒体上を移動した軌跡を示す軌跡情報を算出する軌跡算出手段と、を備えた請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の読取装置である。
【0012】
請求項5に係る発明は、前記軌跡情報を表示する表示手段を更に備えた請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の読取装置である。
【0013】
請求項6に係る発明は、前記表示手段は、前記読取媒体に一体的に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の読取装置である。
【0014】
請求項7に係る発明は、前記第1の領域は、前記溝部によって画像を表した領域であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の読取装置である。
【0015】
請求項8に係る発明は、前記導出手段によって導出された強度情報に基づいて、前記読取媒体の前記第1の領域に示される画像の画像情報を抽出する抽出手段を更に備えた請求項7に記載の読取装置である。
【0016】
請求項9に係る発明は、前記抽出手段によって抽出された画像情報を表示する表示手段を更に備えた請求項8に記載の読取装置である。
【0017】
請求項10に係る発明は、前記表示手段は前記読取媒体に一体的に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の読取装置である。
【0018】
請求項11に係る発明は、前記第1の領域は、前記読取媒体の表面に設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項10の何れか1項に記載の読取装置である。
【0019】
請求項12に係る発明は、前記読取媒体は、赤外線反射層上に前記第1の領域を有する基板が積層されて構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項11の何れか1項に記載の読取装置である。
【0020】
請求項13に係る発明は、前記読取媒体は、溝部の形成された基板上に赤外線反射層が積層され、さらに該赤外線反射層を介して該溝部に赤外線吸収剤が充填されていることを特徴とする請求項1〜請求項11の何れか1項に記載の読取装置である。
【発明の効果】
【0021】
上記に示したように、本発明によれば、読取媒体に照射した光の反射光または透過光の強度を精度良く読取り可能な読取装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
本発明の読取装置の一の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0023】
(第1の実施の形態)
本実施の形態の読取装置において読取り対象となる読取媒体について説明する。
図1に示すように、読取媒体10は、赤外線反射層26上に、基板12を積層して構成されている。基板12の表面には、赤外線吸収剤16の充填された溝部14の予め形成された第1の領域18が設けられている。
【0024】
なお、「表面」とは、読取媒体10の使用形態における表裏とは関係無く、外界に曝されている部分を示している。
【0025】
なお、本実施の形態では、第1の領域18は、読取媒体10の基板12の表面に設けられている場合を説明するが、基板12の内部に設けられていても良く、表面であることに限られない。しかしながら、第1の領域18が読取媒体10の表面に形成された構成である方が、後述する読取装置における第1の領域18へ照射した赤外線の反射光または透過光の強度を精度良く読み取ることができる。
【0026】
この溝部14は、溝部14と溝部14との間隔をP、溝部14の幅をW、溝部14の深さをDとしたときに、下記式(1)及び式(2)の関係を満たしていることが好ましい。
【0027】
【数1】


式(1)
【0028】
【数2】


式(2)
【0029】
この溝部14の形状は、線状であってもよいし、点状であってもよい。なお、本実施の形態では、溝部14は規則的に配置されているとして説明する。
また、第1の領域18には、この赤外線吸収剤16の充填された溝部14が少なくとも1つ形成されていればよく、複数形成されていてもよい。
【0030】
本実施の形態では、第1の領域18内には、図2に示すように、溝部14が線状に形成されており、且つ規則性をもって同一幅の溝部14が格子状に配列されている場合を説明する。
なお、この溝部14としては、異なる幅の溝部14が周期的に配列されていてもよい。
【0031】
溝部14の形成方法としては、基板12上に、タイミング方法、レーザ加工方法、ドライエッチング方法、インプリント方法等が用いられる。
【0032】
この溝部14には、赤外線吸収剤16が充填されている。赤外線吸収剤は、赤外領域(700nm〜950nmの波長領域)の光を吸収する特性を有していることから、人による視認が困難であり、且つ後述する読取装置によって赤外領域の光(以下、赤外線と称する)を照射することによって容易に光学的に認識される。
【0033】
赤外線吸収剤16の溝部14への充填方法としては、スキージ、スピンコート、インクジェット等を挙げることができる。
【0034】
この赤外線吸収剤としては、有機系または無機系の赤外線吸収剤を用いることが出来る。
【0035】
有機系の赤外線吸収剤としては、シアニン系色素、ナフトキノン系色素、フタロシアニン系色素、アントラキノン系色素、ジオール系色素、トリフェニルメタン系色素等が挙げられる。これらは可視領域にも吸収があるため、赤みがかったクリーム色を呈している。
【0036】
これらの有機系の赤外線吸収剤の具体例としては、下記一般式(1)、下記構造式(1)で表されるn−ブトキシ置換ナフタロシアニン(以下、「HNPc−OnBu」と略す場合がある。)、下記一般式(2)におけるMがVOであるn−ブトキシ置換バナジルナフタロシアニン(以下、「VONPc−OnBu」と略す場合がある。)、下記一般式(2)におけるMがCuであるn−ブトキシ置換銅ナフタロシアニン(以下、「CuNPc−OnBu」と略す場合がある。)、下記一般式(2)におけるMがNiであるn−ブトキシ置換ニッケルナフタロシアニン(以下、「NiNPc−OnBu」と略す場合がある。)、下記構造式(3)で表されるフェニル置換バナジルナフタロシアニン(以下、「VONPc−Ph」と略す場合がある。)、下記構造式(4)で表されるi−ブトキシ・ニトロ置換銅ナフタロシアニン(以下、「CuNPc−OiBuNO」と略す場合がある。)、下記構造式(5)で表されるt−ブチル置換バナジルナフタロシアニン(以下、「VONPc−tBu」と略す場合がある。)、下記構造式(6)で表される化合物(以下、「ST173」という場合がある。)、下記構造式(7)で表される化合物(以下、「CR44(OH)」という場合がある。)などが挙げられる。
ここで、下記構造式(1)および下記一般式(2)における「OBu」は「n−ブトキシ基」を意味し、下記構造式(4)における「OBu」は「i−ブトキシ基」を意味する。
【0037】
これらの中でも、赤外波長領域に吸収帯域があり、且つ可視光の吸収が少ないという理由から、下記一般式(1)によって示される赤外線吸収剤を用いることが好ましい。
【0038】
【化1】

(一般式1)

【0039】
なお、赤外線吸収剤としては、これらに限られず、いかなるものも用いることができる。
【0040】
【化2】

【0041】
【化3】

【0042】
【化4】

【0043】
【化5】

【0044】
【化6】

【0045】
【化7】

【0046】
【化8】

【0047】
また、無機系の赤外線吸収剤としては、例えば、少なくともNd(ネオジム),Yb(イッテルビウム),In(インジウム),Sn(スズ),Zn(亜鉛)を含有した化合物を用いることができる。特に、これら金属及びこれらの酸化物、硫化物、ハロゲン化物などの化合物が望ましく、これら化合物は白色、または淡い青色であり、不可視の材料として優れている。
【0048】
これらの化合粒の具体的な例としては、酸化イッテルビウム、酸化錫、酸化亜鉛、硫化イッテルビウム、硫化亜鉛、塩化イッテルビウム、塩化インジウム、重化錫、塩化亜鉛、臭化イッテルビウム、臭化インジウム、インジウム−錫混合酸化物、またはインジウム−錫混合酸化物とアルミナ、硫酸バリウム、二酸化珪素、炭酸カルシウムから選ばれる1種と混合物などが挙げられる。
【0049】
また、Yb、In、Sn、Znのいずれか1つ以上を含み、これらと酸との塩も有効な赤外線吸収剤である。これらの具体的な例として、硫酸イッテルビウム、硫酸亜鉛、硫酸インジウム、硝酸イッテルビウム、硝酸錫、過塩素酸イッテルビウム、炭酸イッテルビウム、炭酸亜鉛、炭酸インジウム、酢酸イッテルビウム、酢酸亜鉛、酢酸錫、ニコチン酸イッテルビウム、リン酸イッテルビウム、リン酸亜鉛、リン酸錫、シュウ酸イッテルビウム、シュウ酸亜鉛、シュウ酸錫等が挙げられる。
【0050】
この溝部14の形成された第1の領域18の算術平均粗さRaは、0.1μm以上80μm以下である事が望ましく、0.1μm以上10μm以下であることが更に望ましく、0.1μm以上2μm以下であることが特に望ましい。
【0051】
この第1の領域18の中心線平均粗さが0.1μm以上2μm以下の範囲内であることにより、読取媒体10の表面を略均一にすることができ、溝部14の欠け等を抑制することができる。このため、後述する読取装置による読取媒体10の第1の領域18の読取時において、誤認識を抑制することが可能となる。
【0052】
この中心線平均粗さRaは、JIS B 0651の方法に基づき、第1の領域18について、JIS−B−0601に規定される測定長さ4mm〜80mm、カットオフ値0.8〜8mmで測定した時の中心線平均粗さを三次元表面粗さ測定器(SE−3500、小坂研究所社製)を使用して測定することができる。
【0053】
このような構成の読取媒体10では、後述する読取装置によって赤外線が照射されることによって、第1の領域18の溝部14の形成領域(以下、溝部形成領域17と称する)と、第1の領域18内の溝部形成領域17以外の領域(以下、非形成領域15と称する)と、の反射光または透過光の強度が光学的に認識されることによって、各種情報が読み取られる(詳細後述)。
【0054】
上記基板12は、赤外線反射層26上に積層されている。この赤外線反射層26は、読取媒体10の赤外線吸収剤16の充填されている領域より、読取媒体10の視認される方向(図1ではX方向)の下流側に設けられている。
【0055】
赤外線反射層26は、赤外領域の光(赤外線)を反射する機能を有する層である。
赤外線反射層26としては、例えば、TiOとSiOとの積層膜や、SiNとSiOとの積層膜等を用いることができる。
【0056】
この赤外線反射層26の厚みは、0.1μm以上20μm以下の範囲内であることが望ましく、1μm以上15μm以下の範囲内であることが更に望ましく、4μm以上7μm以下の範囲内であることが特に望ましい。
【0057】
この赤外線反射層26の形成方法としては、スパッタリング法、CVD法等を用いることができる。
【0058】
このように、読取媒体10の赤外線吸収剤16の充填された領域より、読取媒体10の視認される方向(図1ではX方向)の下流側に設けられていることによって、基板12の溝部14によって示される第1の領域18に、後述する読取装置によって赤外線が照射されたときに、溝部形成領域17及び非形成領域15の反射率または透過率の強度情報の導出において、これらの溝部形成領域17と非形成領域15との反射率の強度の差を大きくすることができるので、読取装置における認識精度の低下を抑制することができる。
【0059】
なお、本実施の形態では、読取媒体10は、赤外線反射層26上に、赤外線吸収剤16の充填された溝部14の形成された第1の領域18を有する基板12が積層された構成である場合を説明するが、赤外線反射層26を有さない構成であってもよい。
【0060】
しかし、赤外線反射層26を有する方が、後述する読取装置による認識精度の低下を抑制する点で好ましい。
【0061】
なお、本実施の形態では、読取媒体10は、赤外線反射層26上に、基板12が積層されて構成されている場合を説明するが、図3の読取媒体30に示すように、溝部14の形成された基板12上に赤外線反射層26が積層され、さらにこの溝部14に赤外線反射層26を介して赤外線吸収剤16が充填された構成であってもよい。
【0062】
また、赤外線反射層26は、第1の領域18の非形成領域15にのみ積層した構成であってもよい。
【0063】
なお、本実施の形態では、読取媒体10は、赤外線反射層26上に、赤外線吸収剤16の充填された溝部14の形成された第1の領域18を有する基板12が積層された構成である場合を説明するが、図4の読取媒体20のように、基板24上に、表示層22、及び上記赤外線反射層26を介して、上記基板12が積層された構成であってもよい。
【0064】
なお、図4に示すように、読取媒体20が表示層22を含んだ構成である場合には、表示層22より読取媒体20の視認される方向Xの上流側に存在する層、例えば、基板12及び赤外線反射層26は、少なくとも赤外領域以外の波長領域の光に対して透光性を有していることが好ましい。
【0065】
本実施の形態において、この「透光性を有する」とは、赤外領域以外の波長領域の光、具体的には波長350nm以上700nm以下の範囲内の光を80%以上透過する性質を示している。
【0066】
この表示層22としては、各種画像を表示する機能を有する機能層であればよく、例えば、液晶により各種画像を表示する機能層や、電気泳動方式により各種画像を表示する機能層を挙げることができる。
【0067】
例えば、表示層22を電気泳動方式により各種画像を表示する機能層とする場合には、電極層、電気泳動粒子の分散された分散媒からなる電気泳動層、及び電極層を少なくとも積層した構成とし、電気泳動粒子として電界により電極層間を移動する粒子を用いた一般的な電気泳動層の構成とすればよい。このような構成とした場合には、該一対の電極層に電圧を印加して電気泳動層内の電気泳動粒子を移動させることで、表示層22に各種画像を表示することができる。
【0068】
また、例えば、表示層22を液晶により各種画像を表示する機能層とする場合には、例えば、電極層、液晶層、及び電極層を少なくとも積層した構成とし、この液晶層を、電場によって入射光のうち特定の色光の反射・透過状態を変調する機能を有し且つ変調された状態が無電場で保持される性質を有する層とすればよい。このような構成とした場合には、該一対の電極層の内の所定の領域間に電圧を印加することによって、液晶層の任意の領域に印加された電圧に応じた光学的特性分布を生じさせることで、表示層22に各種画像を表示することができる。
【0069】
なお、図4に示すように、読取媒体20が表示層22の設けられた構成である場合についても同様に、赤外線反射層26の設けられていない構成であってもよい。しかし、表示層22と基板12との間に赤外線反射層26が設けられた構成である方が、赤外線反射層26が設けられていない場合に比べて、読取媒体20の第1の領域18内の溝部形成領域17及び非形成領域15の反射率または透過率の強度の認識精度低下を抑制することができるとともに、赤外線反射層26は可視光に対して透過性を有することから、表示層22の画像視認に影響を与える事を抑制することができる。
【0070】
次に、上記読取媒体10を用いた読取装置40について説明する。
【0071】
なお、本実施の形態の読取装置40においては、図1に示す読取媒体10を用い、また読取媒体10の第1の領域18及びこの第1の領域18に形成されている溝部14は、図2に示すように、読取媒体10の全体に渡って第1の領域18が形成され、且つ、第1の領域18には、同一の深さ及び同一幅の溝部14が格子状に設けられているとして説明する。
【0072】
図5に示すように、読取装置40は、読取媒体10と、処理装置34と、を含んで構成されている。
【0073】
処理装置34は、読取媒体10の第1の領域18を読み取る読取部42と、主制御部36と、表示部38と、を含んで構成されている。主制御部36は、読取部42及び表示部38と信号授受可能に接続されている。
【0074】
読取部42は、第1の領域18に対して赤外線を照射する照明部44と、照明部44により照射された赤外線の読取媒体10からの反射光を受光する導出部46と、を含んで構成されている。
【0075】
読取部42は、読取媒体10上を操作者によって移動させることが可能で、且つ、操作者が読取部42の少なくとも一部について読取媒体10に接触している、または近い位置にあることを認識可能な形状であればよく、挟持し易い等の観点から、ペン状に構成されていることが好ましい。
【0076】
なお、本実施の形態では、導出部46は、照明部44から照射された赤外線の読取媒体10からの反射光を受光する場合を説明するが、照明部44から照射された赤外線の読取媒体10の透過光を受光するように構成してもよい。
【0077】
照明部44は、赤外線を出射する光源44Aと、光源44Aから出射された赤外線を読取媒体10の第1の領域18方向へと案内して該第1の領域18内へと照射する光学系44Bとを含んで構成されている。
【0078】
赤外線を出射する光源44Aとしては、LED、VCSEL等を用いることができる。
なお、光学系44Bの代りに、第1の領域18の表面へと光を集光させる集光レンズを用いてもよい。また、周囲の影響を受けないように遮光板を設けても良い。
【0079】
導出部46は、第1の領域18の溝部14の形成された領域と、溝部14の形成されていない領域との反射光を受光すると共に、この反射光の強度を示す強度情報を導出する。
【0080】
この導出部46は、撮像素子46Aと、照明部44から照射された赤外線の第1の領域18からの反射光を撮像素子46Aの受光面に結像させるレンズユニット46Bと、を含んで構成されている。
【0081】
撮像素子46Aは、照明部44から照射された赤外線の第1の領域18からの反射光を受光すると共に、受光した反射光の強度を示す強度情報を導出する。
この撮像素子46Aとしては、CMOSやCCD等を用いることができ、この撮像素子46Aによって、第1の領域18の溝部14の形成された領域と、溝部14の形成されていない領域との反射光の強度を示す強度情報が導出されることになる。
【0082】
なお、本実施の形態においては、読取部42は、読取部42が読取媒体10上で移動しない状態において照明部44から照射された赤外線を導出部46によって受光したときに、該導出部46の受光する領域は、第1の領域18に設けられた格子状に設けられた複数の溝部14の内の、同じ方向に配列された複数の溝部14の内の1つの溝部14のみを含む領域であるとする。
【0083】
主制御部36は、図7に示すように、制御回路36Aと、信号処理回路36Bと、移動量移動方向算出部36Cと、座標情報算出部36Dと、軌跡情報算出部36Eと、を含んで構成されている。
【0084】
読取部42の照明部44、導出部46、上記信号処理回路36B、移動量移動方向算出部36C、座標情報算出部36D、軌跡情報算出部36E、及び表示部38は、制御回路36Aに信号授受可能に接続されている。
【0085】
表示部38は、各種情報を表示し、本実施の形態では、主制御部36において読取部42から取得した第1の領域18の溝部形成領域17と非形成領域15との反射光の強度情報に基づいて算出した、照明部44から読取媒体10に照射された赤外線の読取媒体10上の移動軌跡を示す軌跡情報を表示する。
【0086】
表示部38の一例には、CRTやLCD等が挙げられる。
【0087】
制御回路36Aでは、図示を省略するユーザによって操作指示されるスイッチ45がオン状態とされて、このスイッチ45のオン状態を示す信号が入力される。このスイッチ45は、例えば、読取部42に設けられており、制御回路36Aに信号授受可能に設けられている。
【0088】
このスイッチ45がオン状態とされると、制御回路36Aでは、導出部46へ読取りを示す信号を出力するとともに、信号処理回路36Bに計測開始を示す信号を出力する。
【0089】
導出部46では、制御回路36Aからの読取りを示す信号を受け付けると、照明部44から第1の領域18へと赤外線を照射するとともに、導出部46によって、読取媒体10から受光した反射光の強度を示す強度情報を導出する。
【0090】
信号処理回路36Bは、制御回路36Aからの計測開始を示す信号を受け付けると、導出部46による導出結果、すなわち、第1の領域18内の溝部14の形成領域及び非形成領域各々の反射光の強度を示す強度情報を受信する。
信号処理回路36Bでは、この受信した強度情報について、増幅等の所定の信号処理を施した後に、移動量移動方向算出部36Cへと該強度情報を出力する。
【0091】
ここで、図6に示すように、撮像素子46Aの受光面を複数の領域に分割したときの、任意の4点の領域内の感光部として、例えば、撮像素子46Aの受光面の中心位置47Aを通る任意の直線上の該中心位置47Aから等しい間隔隔てた一対の領域46A及び領域A、及び該中心位置47Aを通り、該直線に直交する直線上の該中心位置47Aから等しい間隔隔てた一対の領域46A及び領域A各々内の感光部において受光される反射光の強度に注目する。
【0092】
読取部42が読取媒体10上の格子状に溝部14の形成された第1の領域18内を移動することによって、照明部44から照射される赤外線の照射領域が第1の領域18内で移動すると、撮像素子46Aには、読取媒体10の第1の領域18で反射した光が入射される。
【0093】
この入射される光の強度は、格子状に形成された溝部14のパターン、すなわち溝部形成領域17では赤外線吸収剤16の影響により非常に弱く、非形成領域15では強くなる。
【0094】
このため、読取部42が格子状に溝部14の形成された第1の領域18内を移動して格子状に規則的に配列された各溝部14を横切ると、撮像素子46Aの各領域46A及び領域A、及び領域46A及び領域Aに入射される反射光の強度を示す強度情報には、読取媒体10の第1の領域18における縦方向と横方向との反射光の強度の変化を示す情報が含まれていることとなる。
【0095】
この強度情報は、例えば、読取部42が図8に示すように線状の溝部14の溝部形成領域17を横切る場合には、撮像素子46Aの領域46A、領域46A、領域A、及び領域Aでは、各々図9(A)〜(D)に示すようなタイミングで、反射光の強度の変化を示す強度情報が導出される。
【0096】
例えば、横方向(例えば、領域46Aと領域Aとの対向方向と、溝部14の幅方向とが一致する方向)に読取部42が移動する場合には、撮像素子46Aの領域46A及び領域Aに相当する導出部46の領域は、略同時に溝部14を幅方向に横切る。このため、領域46A及び領域Aで導出される反射光の強度を示す情報は、図9(A)及び図9(B)に示すように略同時に変化して位相差は生じない。このため、読取部42の移動により領域46A及び領域46Aにおいて導出される反射光の強度の変化を示す波形は、図9(A)及び図(B)に示すように、略同時に反射光の強度が変化する波形となる。
【0097】
一方、導出部46の領域46Aに対応する領域と、領域46Aに対応する領域とは、溝部14を横切るタイミングが異なるために位相差が生じ、図9(A)及び図9(C)に示すように、領域46A及び領域46Aにおける反射光の強度変化を示す波形は、異なるタイミングで変化したものとなる。同様に、導出部46の領域46Aに対応する領域と、領域46Aに対応する領域とは、溝部14を横切るタイミングが異なるために位相差が生じ、図9(A)及び図9(D)に示すように、領域46A及び領域46Aの反射光の強度変化を示す波形は、異なるタイミングで変化する。
【0098】
移動量移動方向算出部36Cでは、信号処理回路36Bから受け付けた強度情報に基づいて、読取部42、すなわち照明部44によって照射された赤外線の読取媒体10上における移動量及び移動方向を算出する。
【0099】
この移動量移動方向算出部36Cにおける移動量及び移動方向の算出は、上記位相差から移動量及び移動方向を求めることができる。
例えば、領域46A、領域46A、領域46A、及び領域46Aにおける反射光の強度変化を示す波形(図9(A)及び図9(B)参照)の排他的論理和をとると、例えば、領域46Aと領域46Aとの反射光の強度変化を示す波形の排他的論理和は、図9(E)に示すように無信号となる。また、領域46Aと領域46Aとの反射光の強度変化を示す波形の排他的論理和は、図9(F)に示すように、溝部14の境界で信号が発生する。すなわち、この方法によって、読取媒体10の第1の領域18内の任意の位置(座標)から他の点に読取部42が移動すると、その間に横切る格子状の溝部14により移動のベクトル量(移動量)が算出される。
【0100】
座標情報算出部36Dでは、移動量移動方向算出部36Cで算出された、読取部42の移動方向及び移動量を示す情報に基づいて、読取部42(すなわち、照明部44によって照射された赤外線)の読取媒体10上の位置を示す座標情報を算出する。
【0101】
この座標情報の算出は、例えば、スイッチ45がオン状態とされた後に最初に照明部44から読取媒体10に赤外線を照射した位置を、読取媒体10上の予め定めた任意の位置として予め定め、この任意の位置を基準位置として、移動量移動方向算出部36Cで算出された読取部42の移動量及び移動方向を示す情報に基づいて、予め定めた所定時間または移動量等の所定間隔毎に、移動量及び移動方向に応じた座標情報を算出すればよい。
座標情報算出部36Dは、算出した座標情報を軌跡情報算出部36Eへと出力する。
【0102】
軌跡情報算出部36Eでは、座標情報算出部36Dで算出された座標情報に基づいて、座標情報によって示される読取部42の読取媒体10上の位置を時系列に連続した線として算出することによって、読取部42の読取媒体10上の移動軌跡を示す軌跡情報を算出する。
軌跡情報算出部36Eでは、算出した軌跡情報を制御回路36Aへと出力する。
【0103】
制御回路36Aでは、軌跡情報算出部36Eから軌跡情報を受け付けると、受け付けた軌跡情報を表示部38へと表示する。
【0104】
表示部38は、各種情報を表示し、本実施の形態では、主制御部36において読取部42から取得した第1の領域18の溝部形成領域17及び非形成領域15の反射光の強度情報に基づいて算出された、読取部42の読取媒体10上の移動軌跡を示す軌跡情報を表示する。
【0105】
これによって、読取部42の読取媒体10の移動軌跡を示す軌跡情報が、表示部38に視認可能に表示される。
【0106】
以上説明したように、本実施の形態の読取装置40によれば、赤外線吸収剤16の充填された溝部14が規則的に予め形成された第1の領域18を有する読取媒体10の第1の領域18に、照明部44から赤外線を照射して読取媒体10による反射光を導出部46で受光するとともに受光した反射光の強度を示す強度情報を導出する。
【0107】
このように、赤外線吸収剤16の充填された溝部14の形成された第1の領域18に赤外線を照射してその反射光を読み取るので、本実施の形態で説明した読取媒体の構成を有さない読取媒体を読み取る場合に比べて、導出部46に受光される溝部形成領域17と非形成領域15との反射光の強度の差が大きくなる。このため、読取媒体10に照射した赤外線の反射光を精度良く読み取ることができる。
【0108】
なお、導出部46において、読取媒体10に照射した赤外線の透過光を読み取る場合には、読取媒体10に照射した赤外線の透過光を精度良く読み取ることができる。
【0109】
また、このように、溝部形成領域17と非形成領域15との反射光の強度の差が、本実施の形態を有さない読取媒体に比べて大きくなることから、読取媒体10の第1の領域18内の溝部14の幅をより狭く、且つ溝部14間の間隔をより狭く形成することが可能となる。
【0110】
さらに、この強度情報に基づいて、読取部42の軌跡情報を算出することから、軌跡情報を精度良く求めることができる。
【0111】
また、さらに、導出部46によって導出した強度情報に基づいて、読取部42の読取媒体10上の移動量及び移動方向を算出し、この算出結果に基づいて読取部42の読取媒体10上の位置を示す座標情報を算出し、この座標情報算出結果に基づいて読取部42の読取媒体10上の移動した軌跡を示す軌跡情報を算出し、表示部38または表示層22に表示するので、精度良く読取部42の軌跡情報を表示部38に表示することができる。
【0112】
またさらに、赤外線反射層26を設けることによって、照明部44から照射された赤外線が、溝部形成領域17以外の領域(非形成領域15)を照射する場合には、この赤外線は赤外線反射層26で反射され、この赤外線が赤外線吸収剤16の充填された溝部形成領域17に照射される場合には、この赤外線は赤外線吸収剤16によって吸収されることから、読取装置40における読取り精度の低下をさらに抑制することができる。
【0113】
なお、上記説明では、読取装置40は、読取媒体10と処理装置34とを含んで構成され、処理装置34は、読取部42と、主制御部36と、表示部38と、を含んで構成されている場合を説明したが、読取媒体10に換えて、表示層22を備えた読取媒体20を用いる場合には、処理装置34は表示部38を含まない構成であってもよい。
【0114】
この場合には、例えば、図10に示すように、読取装置41は、処理装置35と、読取媒体20と、を含んだ構成とし、処理装置35を、主制御部36と読取部42とを含む構成とすればよい。
【0115】
そして、主制御部36の制御回路36Aと、表示層22の図示を省略する電極とを電気的に接続した構成とし、制御回路36Aは、例えば、軌跡情報算出部36Eで算出された軌跡情報に基づいた駆動電圧を該軌跡情報に応じた領域に応じて該電極に印加することによって、軌跡情報を示す画像を表示層22に表示すればよい。
【0116】
このように、表示部38を表示層22として読取媒体20に一体的に設けた構成とした読取媒体20に溝部形成領域17と非形成領域15各々の反射光の強度情報を導出し、この導出した強度情報に基づいて読取部42の軌跡情報を表示層22に表示するので、読取媒体20上の読取部42の軌跡情報を、同一の読取媒体20上の表示層22に電子的に且つ視認可能に保存することができる。また、読取媒体20は携帯可能であるため、容易に軌跡情報を電子的に視認可能に保存することができる。
【0117】
(第2の実施の形態)
上記第1の実施の形態では、読取媒体10の第1の領域18には、規則的に且つ格子状に溝部14が形成されており、この読取媒体10上において読取部42を移動させてその移動軌跡を表示する場合を説明したが、本実施の形態では、読取媒体の第1の領域には、溝部14によって図形や文字などの画像が示されており、読取装置では、この図形や文字等の画像を読み取る場合を説明する。
【0118】
なお、本実施の形態の読取装置において、上記第1の実施の形態で説明した読取装置と同一機能及び同一構成の部分には、同一符号を付与して詳細な説明を省略する。
【0119】
図11及び図12に示すように、本実施の形態で用いる読取媒体50は、第1の実施の形態で説明した読取媒体10と同様に、赤外線反射層26上に、基板12を積層して構成されている。基板12の表面には、赤外線吸収剤16の充填された溝部14の予め形成された第1の領域18が設けられている。
【0120】
本実施の形態で用いる読取媒体50の、第1の実施の形態で説明した読取媒体10と異なる点は、第1の実施の形態の第1の領域18に相当する本実施の形態における第2の領域19内に形成されている溝部14が、数字、文字、及び図柄等の画像を示すように形成されている点である。
【0121】
この溝部14の形成された第1の領域18の算術平均粗さRaは、第1の領域18と同様に、0.1μm以上80μm以下である事が望ましく、0.1μm以上10μm以下であることが更に望ましく、0.1μm以上2μm以下であることが特に望ましい。
【0122】
この第1の領域18の算術平均粗さが0.1μm以上2μm以下の範囲内とすることによって、読取媒体50の表面を略均一にすることができ、溝部14の欠け等を抑制することができ、後述する読取装置による読取媒体50の読取時において、誤認識を抑制することが可能となる。この中心線平均粗さRaの測定は、第1の実施例で示した方法を用いる。
【0123】
なお、読取媒体50のその他の構成は、読取媒体10と同一であるため、詳細な説明を省略する。
【0124】
次に、上記読取媒体50を用いた読取装置52について説明する。
【0125】
図12に示すように、読取装置52は、読取媒体50と、処理装置54と、を含んで構成されている。なお、読取装置52及び表示媒体50の、上記説明した読取装置40及び表示媒体10各々と同一構成には同一符号を付与して詳細な説明を省略する。
【0126】
処理装置54は、読取媒体50の第1の領域18を読み取る読取部58と、主制御部56と、表示部39と、を含んで構成されている。主制御部56は、読取部58及び表示部39と信号授受可能に接続されている。
【0127】
読取部58は、第1の領域18に対して赤外線を照射する照明部44と、照明部44により照射された赤外線の読取媒体50からの反射光を受光する導出部59と、を含んで構成されている。
【0128】
なお、本実施の形態では、導出部59は、照明部44から照射された赤外線の読取媒体50からの反射光を受光する場合を説明するが、照明部44から照射された赤外線の読取媒体50の透過光を受光するように構成してもよい。
【0129】
導出部59は、撮像素子59Aと、照明部44から照射された赤外線の第1の領域18からの反射光を撮像素子59Aの受光面に結像させるレンズユニット59Bと、を含んで構成されている。
【0130】
撮像素子59Aは、照明部44から照射された赤外線の第1の領域18からの反射光を受光すると共に、受光した反射光の強度を示す強度情報を導出する。
【0131】
この撮像素子59Aとしては、CMOSやCCD等を用いることができ、この撮像素子59Aによって、第1の領域18の溝部14の形成された領域(溝部形成領域17と称する)と、溝部14の形成されていない領域(非形成領域15と称する)との反射光の強度を示す強度情報が取得されることになる。
【0132】
なお、本実施の形態においては、読取部58は、読取部58が読取媒体50上で移動しない固定された状態において、照明部44から照射された赤外線を導出部59によって受光したときに、該導出部59の受光する領域は、第1の領域18の全領域を含む領域であるとするが、移動されることによって第1の領域18の全領域を含む領域を受光するような構成であってもよい。
【0133】
主制御部56は、図13に示すように、制御回路56Aと、信号処理回路56Bと、特徴抽出部56Cと、を含んで構成されている。
【0134】
読取部58の照明部44、導出部59、上記信号処理回路56B、特徴抽出部56C、及び表示部39は、制御回路56Aに信号授受可能に接続されている。
【0135】
表示部39は、各種情報を表示し、本実施の形態では、主制御部56において読取部58から取得した第1の領域18の溝部形成領域17と非形成領域15との反射光の強度を示す強度情報に基づいて算出された、第1の領域18の特徴を示す特徴情報を表示する。この特徴情報の一例としては、第1の領域18の溝部14によって示される文字を示す文字情報や、模様を示す模様情報や、画像を示す画像情報等が挙げられる。
【0136】
表示部39の一例には、CRTやLCD等が挙げられる。
【0137】
制御回路56Aでは、操作者によって操作指示されるスイッチ47がオン状態とされて、このスイッチ47のオン状態を示す信号が入力される。このスイッチ47は、読取部58に設けられており、制御回路56Aに信号授受可能に設けられている。
【0138】
このスイッチ47がオン状態とされると、制御回路56Aでは、読取部58へ読取りを示す信号を出力するとともに、信号処理回路56Bに計測開始を示す信号を出力する。
【0139】
読取部58では、制御回路56Aからの読取りを示す信号を受け付けると、照明部44から第1の領域18へと赤外線を照射するとともに、導出部59によって、読取媒体50の第1の領域18から受光した反射光の強度を示す強度情報を導出する。
【0140】
信号処理回路56Bは、制御回路56Aからの計測開始を示す信号を受け付けると、導出部59による導出結果、すなわち、第1の領域18内の溝部形成領域17と非形成領域15との反射光の強度を示す強度情報を受信する。
信号処理回路56Bでは、この受信した強度情報について、増幅等の所定の信号処理を施した後に、特徴抽出部56Cへと該強度情報を出力する。
【0141】
特徴抽出部56Cでは、受け付けた強度情報に基づいて、第1の領域18内の特徴抽出を行う。この特徴抽出としては、従来公知の技術を採用することができ、例えば、エッジ抽出処理等により第1の領域18内の溝部14によって示される文字や図柄等の画像を示す情報を特徴情報として抽出する。
特徴抽出部56Cは、抽出した文字や図柄等の特徴情報を、制御回路56Aへと出力する。
【0142】
制御回路56Aでは、特徴抽出部56Cから特徴情報を受け付けると、受け付けた特徴情報を表示部39へ表示する。
このため、表示部39には、例えば、第1の領域18内の溝部14によって示される文字や図柄等の画像が表示される。
【0143】
以上説明したように、本実施の形態の読取装置52によれば、赤外線吸収剤16の充填された溝部14の形成された第1の領域18を有する読取媒体50の第1の領域18に、照明部44から赤外線を照射して、読取媒体50による反射光を導出部59で受光するとともに受光した反射光の強度を示す強度情報を導出する。
【0144】
このように、赤外線吸収剤16の充填された溝部14の形成された第1の領域18に赤外線を照射してその反射光を読み取るので、本実施の形態で説明した読取媒体の構成を有さない読取媒体を読み取る場合に比べて、導出部59に受光される溝部形成領域17と非形成領域15との反射光の強度の差が大きくなる。このため、読取媒体50に照射した赤外線の反射光を精度良く読み取ることができる。
【0145】
なお、導出部59において、読取媒体50に照射した赤外線の透過光を読み取る場合には、読取媒体50に照射した赤外線の透過光を精度良く読み取ることができる。
【0146】
また、このように、溝部形成領域17と非形成領域15との反射光の強度の差が、本実施の形態を有さない読取媒体に比べて大きくなることから、読取媒体50の第1の領域18内の溝部14を密に形成することが可能となる。
【0147】
さらに、この強度情報に基づいて、第1の領域18の特徴情報を算出することから、第1の領域18の特徴情報を精度良く求めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0148】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る読取媒体の断面の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る読取媒体の一例を示す模式的な平面図である。
【図3】本発明の第1の実施の形態に係る、図1に示す読取媒体とは異なる形態の読取媒体の断面を示す模式図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態に係る、図1に示す読取媒体とは異なる形態の読取媒体の断面を示す模式図である。
【図5】本発明の第1の実施の形態に係る、読取装置の一例を示す模式図である。
【図6】本発明の第1の実施の形態に係る、導出部の受光面を光受光側から見たときの一例を示す模式図である。
【図7】本発明の第1の実施の形態に係る、読取装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図8】本発明の第1の実施の形態に係る、読取部が溝部を通過する様子を模式的に示す状態遷移図である。
【図9】(A)〜(F)本発明の第1の実施の形態に係る、読取部が溝部を通過したときに導出される反射光の強度情報を示す波形の一例を示した線図である。
【図10】本発明の第1の実施の形態に係る、読取装置の一例を示す模式図である。
【図11】本発明の第2の実施の形態に係る読取媒体の一例を示す模式図である。
【図12】本発明の第2の実施の形態に係る読取装置の一理恵を示す模式図である。
【図13】本発明の第2の実施の形態に係る読取装置の電気的構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0149】
10、20、30、50 読取媒体
14 溝部
16 赤外線吸収剤
22 表示層
26 赤外線反射層
36E 軌跡情報算出部
36D 座標情報算出部
38、39 表示部
40、41、52 読取装置
42、58 読取部
44 照明部
46、59 導出部
56C 特徴抽出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
赤外線吸収剤が充填された溝部の予め形成された第1の領域を有する読取媒体と、
前記読取媒体の前記第1の領域へ赤外線を照射する赤外線照射手段と、
該赤外線の前記読取媒体の透過光または反射光を受光すると共に、受光した透過光または反射光に基づいて、前記溝部の形成領域及び前記溝部の非形成領域の透過光または反射光の強度を示す強度情報を導出する導出手段と、
を備えた読取装置。
【請求項2】
前記溝部は、線状または点状であることを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項3】
前記第1の領域は、前記溝部が予め定められた規則性に従って配置されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の読取装置。
【請求項4】
前記導出手段によって導出された強度情報に基づいて、前記読取媒体に照射された前記赤外線の該読取媒体上の位置を示す座標情報を算出する座標算出手段と、
前記座標算出手段によって算出された座標情報に基づいて、前記読取媒体に照射された赤外線が前記読取媒体上を移動した軌跡を示す軌跡情報を算出する軌跡算出手段と、
を備えた請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の読取装置。
【請求項5】
前記軌跡情報を表示する表示手段を更に備えた請求項1〜請求項3の何れか1項に記載の読取装置。
【請求項6】
前記表示手段は、前記読取媒体に一体的に設けられていることを特徴とする請求項5に記載の読取装置。
【請求項7】
前記第1の領域は、前記溝部によって画像を表した領域であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の読取装置。
【請求項8】
前記導出手段によって導出された強度情報に基づいて、前記読取媒体の前記第1の領域に示される画像の画像情報を抽出する抽出手段を更に備えた請求項7に記載の読取装置。
【請求項9】
前記抽出手段によって抽出された画像情報を表示する表示手段を更に備えた請求項8に記載の読取装置。
【請求項10】
前記表示手段は前記読取媒体に一体的に設けられていることを特徴とする請求項9に記載の読取装置。
【請求項11】
前記第1の領域は、前記読取媒体の表面に設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項10の何れか1項に記載の読取装置。
【請求項12】
前記読取媒体は、赤外線反射層上に前記第1の領域を有する基板が積層されて構成されていることを特徴とする請求項1〜請求項11の何れか1項に記載の読取装置。
【請求項13】
前記読取媒体は、溝部の形成された基板上に赤外線反射層が積層され、さらに該赤外線反射層を介して該溝部に赤外線吸収剤が充填されていることを特徴とする請求項1〜請求項11の何れか1項に記載の読取装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2008−299436(P2008−299436A)
【公開日】平成20年12月11日(2008.12.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−142450(P2007−142450)
【出願日】平成19年5月29日(2007.5.29)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】