読取装置
【課題】媒体上の画像を読み取る読取装置において、読取精度を高くすることのできる技術を提供する。
【解決手段】撮像ユニット70は照射部63と受光部641とを備え、回転軸71によって回転自在に支持されている。照射部63は媒体50に対して光を照射する。受光部641は、照射部63から照射された光の反射光を受光する。制御部61は、受光部641によって受光された反射光に応じて生成された出力画像信号を用いて、媒体50上に記録されたコードパターン画像に含まれる位置情報や識別情報を読み取る。ユーザによって筆記動作が開始されると、ペン先69aに加わる圧力に応じて、撮像ユニット70が回転軸71を中心として回転する。この回転に伴って、撮像ユニット70によって光が照射される媒体50上の位置、及び、撮像ユニット70が受光する反射光が媒体50上で反射した位置が変化する。
【解決手段】撮像ユニット70は照射部63と受光部641とを備え、回転軸71によって回転自在に支持されている。照射部63は媒体50に対して光を照射する。受光部641は、照射部63から照射された光の反射光を受光する。制御部61は、受光部641によって受光された反射光に応じて生成された出力画像信号を用いて、媒体50上に記録されたコードパターン画像に含まれる位置情報や識別情報を読み取る。ユーザによって筆記動作が開始されると、ペン先69aに加わる圧力に応じて、撮像ユニット70が回転軸71を中心として回転する。この回転に伴って、撮像ユニット70によって光が照射される媒体50上の位置、及び、撮像ユニット70が受光する反射光が媒体50上で反射した位置が変化する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、用紙面に筆記された文字や図形等を電子データに変換し、これをパソコンや携帯電話等に転送して、筆記内容をそのまま保存したり、メールとして送信したりする技術が注目されている。かかる技術では、微細なドット画像が或る配置パターンで多数形成された用紙と、例えば撮像素子が内蔵されたペン型の読取装置とが用いられる。ユーザがこのペン型の読取装置を用い、この用紙面上の位置を連続的に指定することで筆記を行うと、指定された位置を連ねた軌跡上にあるドット画像が読取装置の撮像素子に読み込まれる。読取装置は、読み込んだ複数のドット画像の相互の位置関係に基づいて、軌跡の位置座標を特定する。これにより、筆記された文字や図形等からなる電子文書の生成や、所定の電子文書への文字や図形等の付加等が可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−94907号公報(第12−14頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、情報を表す画像を読み取る読取装置において、情報の欠落を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る読取装置は、情報を表す画像が形成された媒体上の位置を指示する指示部と、前記媒体に光を照射して該媒体からの反射光を受光し、受光した反射光に応じて該媒体上の前記画像を撮像する撮像手段と、前記指示部に加えられる力に応じて前記撮像手段の位置又は姿勢を変化させ、該撮像手段によって光が照射される媒体上の位置、及び、該撮像手段が受光する反射光が媒体上で反射した位置を変更する変更手段とを具備する構成を有する。
【0006】
本発明の請求項2に係る読取装置は、請求項1に記載の構成において、前記変更手段は、前記指示部に加えられる力が大きいほど前記撮像手段の位置又は姿勢の変化量を大きくする構成を有する。
【0007】
本発明の請求項3に係る読取装置は、請求項1又は2に記載の構成において、前記変更手段は、前記撮像手段を回転自在に支持する回転軸と、前記指示部に加えられる力を該撮像手段に加える部材とを備え、前記指示部に加えられる力が前記撮像手段に加わることによって該撮像手段が前記回転軸を中心として回転する構成を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1によれば、情報を表す画像を読み取る読取装置において、情報の欠落を軽減することができる。
本発明の請求項2によれば、情報を表す画像を読み取る読取装置において、指示部に加えられる力の大きさによって撮像手段の位置又は姿勢の変化量を異ならせることができる。
本発明の請求項3によれば、情報を表す画像を読み取る読取装置において、指示部に加えられる力に応じて撮像手段を回転させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<A:構成>
図1は、本実施形態に係るシステムの構成の一例を示す図である。図において、電子ペン60は、紙等の媒体50に対して文字や図形を筆記する機能を備えるとともに、媒体50に形成されたコードパターン画像(被読取画像)を読み取る機能を備えた読取装置の一例である。情報処理装置10は、例えばパーソナルコンピュータであり、電子ペン60から出力される信号に応じて筆記内容を表す筆記情報を生成する筆記情報生成装置の一例である。
【0010】
媒体50に形成されるコードパターン画像は、媒体50を識別する識別情報や、媒体50上の座標位置を表す位置情報を符号化して画像化したものである。ここで、媒体50に形成されるコードパターン画像の一例について、図2を参照しつつ説明する。図2は、媒体50に形成されるコードパターン画像の一例を示す図である。コードパターン画像は、複数の点状のドット画像の相互の位置関係によって上述した識別情報及び位置情報を表したものであるが、これらのドット画像が配置され得る領域として、領域A1〜A9が予め定められている。図2に示す例では、黒色の領域A1,A2は点状のドット画像が配置された領域を示し、斜線の領域A3乃至A9はドット画像が配置されていない領域を示している。どの領域にドット画像が配置されるかによって識別情報及び位置情報が表現される。媒体50には、例えばプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置(図示略)によって、このコードパターン画像が媒体50の全体に形成されている。電子ペン60によってコードパターン画像が読み取られ、そのコードパターン画像が解析されることによって、その電子ペン60のペン先69aの位置が検出される。
【0011】
媒体50には、上記のコードパターン画像のほか、人間に対して情報を伝えることを目的とした文書や図形など画像が形成されていてもよい。以下では、この画像のことを「文書画像」というが、これには、テキストを含む文書を表す画像に限らず、例えば、絵、写真、図形等の画像や、その他の画像が含まれる。画像形成装置は、コードパターン画像を形成するときはK(黒)のトナーを用いて画像形成を行う一方、文書画像を形成するときはC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のトナーを用いて画像形成を行う。媒体50には、文書画像とコードパターン画像とが重畳されて形成される。このようにコードパターン画像と文書画像とでトナーを異ならせていることで、電子ペン60はコードパターン画像のみを読み取る。なお、本実施形態における「媒体」は、いわゆる紙に限定されるものではなく、例えばOHPシートなどのプラスチックや、その他の材質のシート等であってもよい。また、表示内容を電気的に書き換え可能ないわゆる電子ペーパーであってもよい。要は、媒体50は、画像形成装置等によって少なくともコードパターン画像が形成されたものであればよい。
【0012】
電子ペン60は、媒体50に文字や図形等を筆記する機能を有する筆記具であるとともに、媒体50に形成されたコードパターン画像を読み取る読取装置である。電子ペン60は、媒体50から読み取ったコードパターン画像を示す情報を情報処理装置10に送信する。
【0013】
ここで、電子ペン60の機能的構成の一例について、図面を参照しつつ説明する。図3は、電子ペン60の機能的構成の一例を概略的に示したブロック図である。図において、制御部61は、電子ペン60の全体の動作を制御する制御手段である。圧力センサ62は、電子ペン60による筆記動作をペンチップ69に加わる圧力によって検出する検出手段である。撮像ユニット70は、媒体50に光を照射して媒体50からの反射光を受光し、受光した反射光に応じて該媒体上の前記画像を撮像する撮像手段の一例である。撮像ユニット70は、照射部63と撮像部64とを備える。照射部63は、例えばLEDであり、媒体50上に赤外光を照射する照射手段の一例である。撮像部64は、照射部63から照射された赤外光の反射光に応じて、媒体50上の画像を撮像する撮像手段の一例である。
【0014】
情報メモリ65は、識別情報および位置情報を記憶する記憶手段である。通信部66は、外部装置との通信を制御する通信手段である。バッテリ67は、電子ペン60を駆動するための電力を各部に供給する充電可能な電力供給手段である。ペンIDメモリ68は、電子ペン60の識別情報(ペンID)を記憶する記憶手段である。ペンチップ69は、いわゆるペン軸であり、その先端部にペン先69aが設けられている。ペン先69aは、ユーザによって筆記動作がなされる際に、読取対象となるコードパターン画像(被読取画像)が形成された媒体50上の位置を指示する指示部の一例である。照射部63は、ユーザによって筆記動作がなされる際に、ペン先60aによって指示される媒体50上の位置に対して予め定められた範囲に光を照射する。スイッチ75は、各種設定を切り替える切替手段である。これら各部は、制御部61に接続されている。
【0015】
次に、ペンチップ69と撮像ユニット70の構成の一例について、図面を参照しつつ説明する。図4は、電子ペン60の側断面図の一例である。図において、受光部641はレンズであり、照射部63から照射された光の反射光を受光する受光手段の一例である。プリズム642は、受光部641によって受光された光を反射させて撮像素子643に供給する。撮像素子643は、プリズム642によって反射された反射光に基づいてコードパターン画像を撮像し、撮像したコードパターン画像を表す信号を出力する。ここでは、撮像素子643として、赤外領域に感度があるCMOSセンサであって、撮像した画像を同時に転送できるグローバルシャッタ方式のCMOSセンサが用いられる。撮像素子643は、70fps〜100fps(frame per second)程度の周期の画像取込信号(フレームレート)に従って画像を撮像する。それに伴い、照射部63は、消費電力を抑制するために、撮像素子643への画像取込信号に同期してパルス点灯するように構成されている。なお、ここでは、撮像素子としてCMOSセンサを用いるが、撮像素子はCMOSセンサに限定されるものではなく、CCD等の他の撮像素子を使用してもよい。
【0016】
ペンチップ69は、ペン先69aに加えられる力によって矢印A方向に移動可能に設けられている。回転軸71は、撮像ユニット70を回転自在に支持する。撮像ユニット70には回転端72が固定して設けられており、この回転端72はペンチップ69と圧力センサ62の間の位置に設けられている。ペン先69aに力が加えられると、ペンチップ69が矢印A方向に移動し、この移動によってペン先69aに加えられた力が回転端72に加えられる。ペンチップ69によって回転端72が押圧されることにより、回転端72が回転軸71を中心として回転し、この回転端72の回転に伴って撮像ユニット70全体が回転する。また、回転端72が回転することにより圧力センサ62が押圧され、これによりペン先69aへの圧力が圧力センサ62によって検知される。
【0017】
図5は、ペン先69aに力が加えられることによりペンチップ69が矢印A方向に移動した状態を示す図である。図示のように、ペン先69aに加えられた力がペンチップ69によって撮像ユニット70に加えられ、ペン先69aに加えられた力が撮像ユニット70に加わることによって撮像ユニット70が回転軸71を中心軸として回転する。撮像ユニット70が回転することにより、照射部63によって光が照射される媒体50上の位置と受光部641が受光する反射光が媒体50上で反射した位置(図4の位置p1,図5の位置p2参照)が変化する。すなわち、図4と図5に示すように、媒体50において画像が形成されている面(以下、媒体面という)に対して照射部63の光軸と受光部641の光軸(図4、図5中、1点鎖線)が交差する角度は、ペン先69aに加えられる力に応じて変化する。このように、回転軸71とペンチップ69とは、ペン先69aに加えられる力に応じて撮像ユニット70の位置又は姿勢を変化させ、撮像ユニットによって光が照射される媒体50上の位置、及び、撮像ユニット70が受光する反射光が媒体50上で反射した位置を変更する変更手段として機能する。
【0018】
撮像ユニット70回転角度はペン先69aに加えられる力に応じて図4に示す角度と図5に示す角度の間の範囲で変化する。図4及び図5に示すように、ペン先69aに加わえられる力が大きいほどペンチップ69の移動量は大きくなり、撮像ユニット70の回転量は大きくなる。すなわち、ペン先69aに加えられる力が大きいほど撮像ユニット70の位置又は姿勢の変化量は大きくなる。
【0019】
次に、制御部61の機能的構成の一例について、図6を参照しつつ説明する。図6は、制御部61の機能的構成の一例を示すブロック図である。図において、コード検出部612は、撮像部64から出力される信号(撮像された画像を表す信号)からコードパターン画像を検出する。データ処理部613は、コード検出部612にて検出されたコードパターン画像から識別情報および位置情報を抽出する。照明制御部614は、照射部63をパルス点灯させるための照明制御信号を照射部63に対して送信し、照射部63をパルス点灯させる。撮像制御部615は、照射部63に送信するパルス点灯に同期した画像取込信号を撮像部64に供給する。
【0020】
次に、電子ペン60における制御部61の動作の概略を説明する。図7は、照射部63のパルス点灯を制御する照明制御信号、撮像部64における画像取込信号、および出力画像信号に関する出力タイミングチャートを示した図である。電子ペン60による筆記が開始されると、ペンチップ69に接続された圧力センサ62が筆記動作を検出する。それにより、制御部61は、識別情報及び位置情報の読取処理を開始する。まず、制御部61の照明制御部614は、照射部63をパルス点灯させるための照明制御信号(図7(A))を照射部63に対して送信し、照射部63をパルス点灯させる。
【0021】
撮像部64は、画像取込信号(図7(B))に同期して媒体50上の画像を撮像する。その際に、照射部63は、撮像部64への画像取込信号に同期してパルス点灯する。撮像部64は、パルス点灯する照射部63にて照明される媒体50上の画像を撮像する。そのため、撮像部64では、照射部63にて照明された媒体50上の画像に関する画像信号(出力画像信号:図7(C))が順に生成される。
【0022】
撮像部64にて順次生成された出力画像信号は、コード検出部612に送られる。出力画像信号を受け取ったコード検出部612は、出力画像信号を処理して、撮像部64にて撮像された画像からコードパターン画像を検出する。コード検出部612により取得されたコードパターン画像はデータ処理部613に送られる。コードパターン画像を受け取ったデータ処理部613は、コードパターン画像を復号し、コードパターン画像に埋め込まれている識別情報および位置情報を取得する。
【0023】
<B:動作>
次に、この実施形態の動作について説明する。電子ペン60による筆記が開始されると、ペンチップ69に接続された圧力センサ62が筆記動作を検出する。それにより、制御部61は、識別情報及び位置情報の読取処理を開始する。まず、照明制御部614は、照射部63をパルス点灯されるための照明制御信号を照射部63に対して送信し、照射部63をパルス点灯させる。また、電子ペン60の撮像制御部615は、照射部63に送信するパルス点灯に同期した画像取込信号を、撮像部64に供給する。撮像部64は、撮像制御部615から供給される画像取込信号に応じて、受光部641で受光される反射光に基づいてコードパターン画像を撮像し、撮像したコードパターン画像を表す出力画像信号をコード検出部612へ出力する。
【0024】
次に、コード検出部612及びデータ処理部613の動作について、図8に示すフローチャートを参照しつつ説明する。コード検出部612には、撮像部64から媒体50上の画像を表す出力画像信号が入力される(ステップ601)。コード検出部612は、出力画像信号に含まれるノイズを除去するための処理を行う(ステップ602)。ここで、ノイズとしては、CMOS感度のばらつきや電子回路により発生するノイズ等がある。ノイズを除去するために如何なる処理を行うかは、電子ペン60の撮像系の特性に応じて決定する。例えば、ぼかし処理やアンシャープマスキング等の先鋭化処理を適用することができる。次に、コード検出部612は、画像からドットパターン(ドット画像の位置)を検出する(ステップ603)。また、コード検出部612は、検出したドットパターンを2次元配列上のデジタルデータに変換する(ステップ604)。例えば、2次元配列上で、ドットがある位置を「1」、ドットがない位置を「0」というように変換する。そして、この2次元配列上のデジタルデータ(コードパターン画像)は、コード検出部612からデータ処理部613へと受け渡される。
【0025】
データ処理部613は、受け渡されたコードパターン画像から、図2に示した2つのドットの組み合わせからなるドットパターンを検出する(ステップ605)。例えば、ドットパターンに対応するブロックの境界位置を2次元配列上で動かし、ブロック内に含まれるドットの数が2つになる境界位置を検出することにより、ドットパターンを検出することができる。このようにしてドットパターンが検出されると、データ処理部613は、ドットパターンの種類に基づいて、識別符号および位置符号を検出する(ステップ606)。その後、データ処理部613は、識別符号を復号して識別情報を取得し、位置符号を復号して位置情報を取得する(ステップ607)。図8に示す処理において、受光部641が受光した光量が少なすぎる場合や、逆に受光した光量が多すぎる場合等には、撮像された画像からドットパターンが検出されず、電子ペン60が識別情報及び位置情報を取得できない場合がある。このように識別情報及び位置情報が取得できなかった場合は、データ処理部613は、識別情報および位置情報に代えて、読取の失敗を示す情報を取得する。
【0026】
電子ペン60は、図8の処理により取得した識別情報および位置情報を情報処理装置10に送信する。このとき、電子ペン60は、識別情報および位置情報の読取に失敗した場合は、読取の失敗を示す情報を情報処理装置10に送信する。情報処理装置10は電子ペン60から識別情報および位置情報を受信し、受信した位置情報に基づいて筆記情報を生成する。情報処理装置10は、電子ペン60から読取の失敗を示す情報を受信した場合には、その前後の識別情報および位置情報によって補間したりする等して筆記情報を生成する。
【0027】
<C:動作例1>
次に、この実施形態の具体的な動作の一例について図面を参照しつつ説明する。この動作例では、ユーザが、電子ペン60を用いて、図9に例示する点を媒体50上に筆記した場合の動作例について説明する。ユーザは、媒体50上の位置(x1,y1)を電子ペン60で指示し、ペン先69aを媒体50に押し付ける。これにより、ペンチップ69に接続された圧力センサ62が筆記動作を検出し、識別情報及び位置情報の読取処理を開始する。このとき、ユーザによるペン先69aの押し込み動作に連動して撮像ユニット70が回転する。そのため、図4及び図5に例示したように、媒体50に対する照射部63の光軸と受光部641の光軸の交差角度及び交差位置は、ユーザによるペン先69aの押し込み動作に連動して徐々に変化する。
【0028】
図10は、撮像ユニット70による撮像範囲の遷移の一例を示す図である。図10は、図9に示す筆記動作に対応するものである。なお、図10においては、図面が煩雑になるのを防ぐために、撮像ユニット70による撮像範囲の数を、実際に撮像される数よりも少ない数で図示している。ユーザによって図9に示す位置(x1,y1)でペン先69aが押し込まれる動作に連動して、撮像ユニット70が回転して撮像ユニット70の撮像範囲が領域A1から領域A7まで徐々に変化する。
【0029】
ところで、電子ペン60で媒体50に対して筆記が行われる際には、電子ペン60と媒体50との間の角度は、筆記動作に伴って逐次変化するが、このとき、図13に示すように、従来の電子ペン160においては、電子ペンと媒体との間の角度が90度に近い状態になることがある。電子ペンは、通常の筆記具であるペンのように細長い形状であることが求められるから、照射部163と受光部1641とを、電子ペンの長手方向と直交する方向において比較的近接した位置に配置せざるを得ない。このような配置の制約があるので、電子ペンと媒体との間の角度が90度に近い状態では、図13に示すように、照射部163から照射される光の反射光のうち主に正反射光成分が受光部1641によって受光されることになる。このときコードパターン画像を形作るトナーの種類によっては反射光の強度が強すぎて、受光部1641がカバーし得る受光強度の上限を超える反射光が受光部1641に到達し、コードパターン画像を正確によみとれない場合がある。
【0030】
特に、従来の電子ペンにおいては、媒体50上のある一点が指示される場合において受光部1641が正反射光成分を多く受光してしまうと、コードパターン画像が正確に読み取れず情報の読取に失敗してしまい、その結果、その筆記動作に対する情報が欠落してしまう。それに対し、本実施形態の電子ペン60の撮像ユニット70は、ペン先69aに加えられる力に応じて回転するから、ユーザが媒体50上のある一点を指示した場合であっても、ペン先69aの押し込み開始から押し込み終了までの間の時間において複数の異なる撮像角度で撮像が行われる(図10の領域A1乃至A7参照)。このとき、上述したように、媒体50に対する照射部63の光軸と受光部641の光軸の交差角度は、領域A1,A2,…,A7のそれぞれで異なるから、ペン先69aの押し込みの開始から押し込み完了までの間のいずれかのタイミングにおいて読取に失敗した場合であっても、その他のタイミングで画像の読取が行われる。具体的には、例えば、図10に示す例において、領域A7(斜線で示した領域)に対応する撮像角度において受光部641が正反射光成分を多く受光してしまいコードパターン画像の読取に失敗した場合であっても、それ以外の撮像角度においてコードパターン画像が読み取られる。このように、本実施形態では、ペン先69aのタッチ動作のみの筆記動作が行われた場合であっても、その筆記動作に対する情報の欠落を防ぐことができる。なお、この動作例では媒体50上に図9に示す点を筆記する場合の動作例について説明したが、これに限らず、例えば、ソフトボタンを選択するなどの、表示面上の位置を単に指定する場合にも、本実施形態の電子ペン60は有効である。
【0031】
<D:動作例2>
次に、この実施形態の他の具体的な動作の一例について図面を参照しつつ説明する。この動作例では、ユーザが、電子ペン60を用いて、図11に例示する線を媒体50上に筆記した場合の動作例について説明する。まず、ユーザは、媒体50上の位置(x1,y1)を電子ペン60で指示し、ペン先69aを媒体50に押し付ける。これにより、ペンチップ69に接続された圧力センサ62が筆記動作を検出し、識別情報及び位置情報の読取処理を開始する。このとき、ユーザによるペン先69aの押し込み動作に連動して撮像ユニット70が回転する。そのため、媒体50に対する照射部63の光軸と受光部641の光軸の交差角度及び交差位置は、ユーザによるペン先69aの押し込み動作に連動して徐々に変化する。
【0032】
図12は、撮像ユニット70による撮像範囲の遷移の一例を示す図である。図12は、図11に示す筆記動作に対応するものである。なお、図12においては、図面が煩雑になるのを防ぐために、撮像ユニット70による撮像範囲の数を、実際に撮像される数よりも少ない数で図示している。図11に示す位置(x1,y1)でユーザによってペン先69aが押し込まれる動作に連動して、撮像ユニット70が回転して撮像ユニット70の撮像範囲が領域A1から領域A7まで徐々に移動する。
【0033】
次いで、ユーザは、ペン先69aを媒体50に押し付けたままペン先69aを位置(x1,y1)から位置(x2,y2)まで移動させる(図11参照)。このペン先69aの移動に伴って、図12に示すように、撮像ユニット70の撮像範囲は領域A7から領域A15まで移動する。すなわち、ペン先69aの移動に伴って、領域A7から領域A15のコードパターン画像が順番に撮像され、撮像されたコードパターン画像に応じて位置情報及び識別情報が読み取られる。ところで、ユーザがペン先69aを媒体50の媒体面上で移動させる際には、ペン先69aに加わる圧力はその移動中において一定でない場合がある。そのため、撮像ユニット70の撮像領域の位置は、図12に例示するように、ペン先69aに加えられる力の大小に応じて図中上下方向の位置が変化する場合がある。
【0034】
ペン先69aを位置(x2,y2)まで移動させると、ユーザは、ペン先69aを媒体50から離す。この動作に伴って、ペン先69aに加わる圧力は徐々に減少する。ペン先69aに加わる圧力の減少に伴ってペンチップ69が図4中の矢印A方向と逆方向に移動し、この移動に伴って撮像ユニット70が回転する。これにより、撮像ユニット70の撮像範囲は徐々に移動する。図12に示す例では、撮像ユニット70の撮像範囲は、撮像ユニット70の回転に伴って、領域A15から領域A21まで移動する。
【0035】
この動作例においても、電子ペン60と媒体50との間の角度によっては、受光部641が正反射光成分を多く受光してしまい、コードパターン画像を正確に読み取れない場合がある。しかしながら、本実施形態の撮像ユニット70はペン先69aに加わる圧力に応じて回転するから、いずれかの角度で読取に失敗したとしても、他の撮像角度で読取が行われる。具体的には、例えば、図12に示す例において、領域A7、A8、A13及びA15(斜線で示した領域)で読取に失敗した場合であっても、その他の領域において画像の読取が行われる。この場合は、読み取られた情報を適当な補間手法によって連ねることで、筆記の軌跡をおおよそ特定できる。
【0036】
特に、筆記の開始位置(x1,y1)においては領域A1から領域A7の複数の撮像角度で読取が行われるから、いずれかの角度で読取に失敗したとしても、他の撮像角度で読取が行われる。また、筆記の終了位置(x2,y2)においても領域A15から領域A21の複数の撮像角度で読取が行われるから、いずれかの読取角度で読取に失敗したとしても、他の撮像角度で読取が行われる。すなわち、筆記の開始位置(x1,y1)と筆記の終了位置(x2,y2)とにおいては位置情報が必ず読み取られる。従来の電子ペンでは、筆記の開始位置と筆記の終了位置とで読取に失敗する場合があり、その場合には筆記情報の精度が悪くなる場合があった。それに対し、本実施形態の電子ペン60は、筆記の開始位置と筆記の終了位置では位置情報が必ず読み取られるから、従来と比較して、筆記情報の精度が高くなる。また、筆記の開始位置と筆記の終了位置との間の位置においても、ペン先69aに加えられる力に応じて撮像ユニット70の撮像角度が変化するから、ユーザが電子ペン60の角度を一定に保ったままペン先69aを移動させた場合であっても、情報の読取の失敗が連続して発生することが軽減され、筆記情報の精度が高くなる。
【0037】
<E:変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。以下にその例を示す。なお、以下の各態様を組み合わせてもよい。
(1)上述の実施形態では、媒体50に文字や図形等を筆記する電子ペンについて説明したが、電子ペンはこれに限らず、例えば、ポインティングデバイス(マウス)機能や、媒体上の領域に対応して記録された情報(例えば、コマンド情報)を読み取るスタイラス機能を備えたものであってもよい。
【0038】
(2)上述の実施形態では、電子ペン60は、撮像ユニット70を回転自在に支持する回転軸71と、ペン先69aに加わる圧力を撮像ユニット70に加えるペンチップ69とを備え、ペン先69aに加わる圧力によって撮像ユニット70が回転軸71を中心として揺動する機構を用いた。撮像ユニット70の位置又は姿勢を変化させる機構はこれに限らず、例えば、撮像ユニット70の位置又は姿勢をモータ等によって変化させる駆動機構を電子ペン60が備える構成とし、制御部61が、圧力センサ62によって検出された圧力に応じて撮像ユニット70の位置又は姿勢を変化させるように駆動機構を制御するようにしてもよい。また、他の例として、例えば、ペン先69aに加わる圧力に応じて撮像ユニット70をペンチップ69の軸方向に対して水平方向に揺動させる機構を電子ペン60に設けるようにしてもよい。また、例えば、ペン先69aに加わる圧力に応じて撮像ユニット70を振動させる機構を設けるようにしてもよい。要は、電子ペン60が、ペン先69aに加えられる圧力に応じて撮像ユニット70の位置又は姿勢を変化させ、撮像ユニット70によって光が照射される媒体50上の位置、及び、撮像ユニット70が受光する反射光が媒体50上で反射した位置を変更する機構を備えるものであればよい。すなわち、電子ペン60が、ペン先69aに加えられる力に応じて、媒体50に対して照射部63の光軸と受光部641の光軸が交差する角度を変化させる機構を備えるものであればよい。
【0039】
(3)上述の実施形態では、ペン先69aに加わる圧力が大きいほど撮像ユニット70の回転量が大きくなる機構を用いたが、これに限らず、例えば、ペン先69aに圧力が加わったか否かを検出し、圧力が検出された場合に撮像ユニット70の位置又は姿勢を予め定められた変更量だけ変更するようにしてもよい。要は、電子ペン60は、ペン先69aに加わる圧力に応じて撮像ユニット70の位置又は姿勢を変化させる機構を備えるものであればよい。
【0040】
(4)上述の実施形態では、照射部63として、赤外光を照射するLEDを用いたが、照射部63はこれに限らず、違う特性を有するLEDを用いるようにしてもよい。要は、照射部63は、媒体50に形成されたコードパターン画像をその反射光で読取可能な光を照射するものであればよい。
【0041】
(5)上述の実施形態では、識別情報として、媒体を一意に識別する情報を用いたが、識別情報はこれに限らず、例えば、電子文書を一意に識別する情報を識別情報として用いるようにしてもよい。上述の第1実施形態に例示したように媒体を一意に識別する情報を用いる場合は、同じ電子文書を複数部数形成すると、異なる媒体には異なる識別情報が付与される。これに対し、電子文書を一意に識別する情報を識別情報として用いる場合は、同じ電子文書を形成すると、異なる媒体であっても同じ識別情報が付与される。
【0042】
また、上述の実施形態では、位置情報及び識別情報を表すコードパターン画像を読み取ったが、コードパターン画像が表す情報は位置情報や識別情報に限らず、例えば、テキストデータやコマンドを表す情報であってもよい。また、位置情報のみを表す画像であってもよい。要は、何らかの情報を表す画像が媒体50に形成されていればよい。
【0043】
(6)上記した画像形成装置では、コードパターン画像をKのトナーを用いて形成するようにした。これは、Kのトナーが、C、M、Yのトナーよりも赤外光の吸収量が多く、電子ペン60でコードパターン画像を読み取ることができるからである。しかしながら、コードパターン画像は、特殊トナーを用いて形成することも可能である。ここで、特殊トナーとしては、可視光領域(400nm〜700nm)における最大吸収率が7%以下であり、近赤外領域(800nm〜1000nm)における吸収率が30%以上の不可視トナーが例示される。ここで、「可視」および「不可視」は、目視により認識できるかどうかとは関係しない。形成された媒体に形成された画像が可視光領域における特定の波長の吸収に起因する発色性の有無により認識できるかどうかで「可視」と「不可視」とを区別している。また、可視光領域における特定の波長の吸収に起因する発色性が若干あるが、人間の目で認識し難いものも「不可視」に含める。また、この不可視トナーは、画像の機械読取りのために必要な近赤外光吸収能力を高めるために、平均分散径が100nm〜600nmの範囲のものが望ましい。
また、画像形成装置は、電子写真方式に限らず、インクジェット方式等のその他の如何なる方式を用いてもよい。
【0044】
(7)上述の実施形態に係る電子ペン60の制御部61によって実行されるコンピュータプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータが読取可能な記録媒体に記憶した状態で提供し得る。また、インターネット等のネットワーク経由で電子ペン60にダウンロードさせることも可能である。なお、上述の制御を行う制御手段としてはCPU以外にも種々の装置を適用することができ、例えば、専用のプロセッサなどを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】筆記情報処理システムの全体構成の一例を示す図である。
【図2】コードパターン画像の内容一例を示す図である。
【図3】電子ペンの機能的構成の一例を示すブロック図である。
【図4】電子ペンの構成の一例を示す側断面図である。
【図5】電子ペンの構成の一例を示す側断面図である。
【図6】電子ペンの制御部の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【図7】照明制御信号、画像取込信号および出力画像信号に関する出力タイミングチャートを示した図である。
【図8】電子ペンのコード検出部およびデータ処理部での動作を示したフローチャートを示した図である。
【図9】電子ペンによる筆記内容の一例を示す図である。
【図10】電子ペンの撮像ユニットによる撮像範囲の遷移の一例を示す図である。
【図11】電子ペンによる筆記内容の一例を示す図である。
【図12】電子ペンの撮像ユニットによる撮像範囲の遷移の一例を示す図である。
【図13】電子ペンの構成の一例を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0046】
10…情報処理装置、50…媒体、60…電子ペン、61…制御部、62…圧力センサ、63…照射部、64…撮像部、65…情報メモリ、66…通信部、67…バッテリ、68…ペンIDメモリ、69…ペンチップ、70…撮像ユニット、71…回転軸、72…回転端、75…スイッチ、612…コード検出部、613…データ処理部、614…照明制御部、615…撮像制御部、641,1641…受光部、642…プリズム、643…撮像素子。
【技術分野】
【0001】
本発明は、読取装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、用紙面に筆記された文字や図形等を電子データに変換し、これをパソコンや携帯電話等に転送して、筆記内容をそのまま保存したり、メールとして送信したりする技術が注目されている。かかる技術では、微細なドット画像が或る配置パターンで多数形成された用紙と、例えば撮像素子が内蔵されたペン型の読取装置とが用いられる。ユーザがこのペン型の読取装置を用い、この用紙面上の位置を連続的に指定することで筆記を行うと、指定された位置を連ねた軌跡上にあるドット画像が読取装置の撮像素子に読み込まれる。読取装置は、読み込んだ複数のドット画像の相互の位置関係に基づいて、軌跡の位置座標を特定する。これにより、筆記された文字や図形等からなる電子文書の生成や、所定の電子文書への文字や図形等の付加等が可能となる(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2004−94907号公報(第12−14頁)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、情報を表す画像を読み取る読取装置において、情報の欠落を軽減することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の請求項1に係る読取装置は、情報を表す画像が形成された媒体上の位置を指示する指示部と、前記媒体に光を照射して該媒体からの反射光を受光し、受光した反射光に応じて該媒体上の前記画像を撮像する撮像手段と、前記指示部に加えられる力に応じて前記撮像手段の位置又は姿勢を変化させ、該撮像手段によって光が照射される媒体上の位置、及び、該撮像手段が受光する反射光が媒体上で反射した位置を変更する変更手段とを具備する構成を有する。
【0006】
本発明の請求項2に係る読取装置は、請求項1に記載の構成において、前記変更手段は、前記指示部に加えられる力が大きいほど前記撮像手段の位置又は姿勢の変化量を大きくする構成を有する。
【0007】
本発明の請求項3に係る読取装置は、請求項1又は2に記載の構成において、前記変更手段は、前記撮像手段を回転自在に支持する回転軸と、前記指示部に加えられる力を該撮像手段に加える部材とを備え、前記指示部に加えられる力が前記撮像手段に加わることによって該撮像手段が前記回転軸を中心として回転する構成を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明の請求項1によれば、情報を表す画像を読み取る読取装置において、情報の欠落を軽減することができる。
本発明の請求項2によれば、情報を表す画像を読み取る読取装置において、指示部に加えられる力の大きさによって撮像手段の位置又は姿勢の変化量を異ならせることができる。
本発明の請求項3によれば、情報を表す画像を読み取る読取装置において、指示部に加えられる力に応じて撮像手段を回転させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
<A:構成>
図1は、本実施形態に係るシステムの構成の一例を示す図である。図において、電子ペン60は、紙等の媒体50に対して文字や図形を筆記する機能を備えるとともに、媒体50に形成されたコードパターン画像(被読取画像)を読み取る機能を備えた読取装置の一例である。情報処理装置10は、例えばパーソナルコンピュータであり、電子ペン60から出力される信号に応じて筆記内容を表す筆記情報を生成する筆記情報生成装置の一例である。
【0010】
媒体50に形成されるコードパターン画像は、媒体50を識別する識別情報や、媒体50上の座標位置を表す位置情報を符号化して画像化したものである。ここで、媒体50に形成されるコードパターン画像の一例について、図2を参照しつつ説明する。図2は、媒体50に形成されるコードパターン画像の一例を示す図である。コードパターン画像は、複数の点状のドット画像の相互の位置関係によって上述した識別情報及び位置情報を表したものであるが、これらのドット画像が配置され得る領域として、領域A1〜A9が予め定められている。図2に示す例では、黒色の領域A1,A2は点状のドット画像が配置された領域を示し、斜線の領域A3乃至A9はドット画像が配置されていない領域を示している。どの領域にドット画像が配置されるかによって識別情報及び位置情報が表現される。媒体50には、例えばプリンタ等の電子写真方式の画像形成装置(図示略)によって、このコードパターン画像が媒体50の全体に形成されている。電子ペン60によってコードパターン画像が読み取られ、そのコードパターン画像が解析されることによって、その電子ペン60のペン先69aの位置が検出される。
【0011】
媒体50には、上記のコードパターン画像のほか、人間に対して情報を伝えることを目的とした文書や図形など画像が形成されていてもよい。以下では、この画像のことを「文書画像」というが、これには、テキストを含む文書を表す画像に限らず、例えば、絵、写真、図形等の画像や、その他の画像が含まれる。画像形成装置は、コードパターン画像を形成するときはK(黒)のトナーを用いて画像形成を行う一方、文書画像を形成するときはC(シアン)、M(マゼンタ)、Y(イエロー)のトナーを用いて画像形成を行う。媒体50には、文書画像とコードパターン画像とが重畳されて形成される。このようにコードパターン画像と文書画像とでトナーを異ならせていることで、電子ペン60はコードパターン画像のみを読み取る。なお、本実施形態における「媒体」は、いわゆる紙に限定されるものではなく、例えばOHPシートなどのプラスチックや、その他の材質のシート等であってもよい。また、表示内容を電気的に書き換え可能ないわゆる電子ペーパーであってもよい。要は、媒体50は、画像形成装置等によって少なくともコードパターン画像が形成されたものであればよい。
【0012】
電子ペン60は、媒体50に文字や図形等を筆記する機能を有する筆記具であるとともに、媒体50に形成されたコードパターン画像を読み取る読取装置である。電子ペン60は、媒体50から読み取ったコードパターン画像を示す情報を情報処理装置10に送信する。
【0013】
ここで、電子ペン60の機能的構成の一例について、図面を参照しつつ説明する。図3は、電子ペン60の機能的構成の一例を概略的に示したブロック図である。図において、制御部61は、電子ペン60の全体の動作を制御する制御手段である。圧力センサ62は、電子ペン60による筆記動作をペンチップ69に加わる圧力によって検出する検出手段である。撮像ユニット70は、媒体50に光を照射して媒体50からの反射光を受光し、受光した反射光に応じて該媒体上の前記画像を撮像する撮像手段の一例である。撮像ユニット70は、照射部63と撮像部64とを備える。照射部63は、例えばLEDであり、媒体50上に赤外光を照射する照射手段の一例である。撮像部64は、照射部63から照射された赤外光の反射光に応じて、媒体50上の画像を撮像する撮像手段の一例である。
【0014】
情報メモリ65は、識別情報および位置情報を記憶する記憶手段である。通信部66は、外部装置との通信を制御する通信手段である。バッテリ67は、電子ペン60を駆動するための電力を各部に供給する充電可能な電力供給手段である。ペンIDメモリ68は、電子ペン60の識別情報(ペンID)を記憶する記憶手段である。ペンチップ69は、いわゆるペン軸であり、その先端部にペン先69aが設けられている。ペン先69aは、ユーザによって筆記動作がなされる際に、読取対象となるコードパターン画像(被読取画像)が形成された媒体50上の位置を指示する指示部の一例である。照射部63は、ユーザによって筆記動作がなされる際に、ペン先60aによって指示される媒体50上の位置に対して予め定められた範囲に光を照射する。スイッチ75は、各種設定を切り替える切替手段である。これら各部は、制御部61に接続されている。
【0015】
次に、ペンチップ69と撮像ユニット70の構成の一例について、図面を参照しつつ説明する。図4は、電子ペン60の側断面図の一例である。図において、受光部641はレンズであり、照射部63から照射された光の反射光を受光する受光手段の一例である。プリズム642は、受光部641によって受光された光を反射させて撮像素子643に供給する。撮像素子643は、プリズム642によって反射された反射光に基づいてコードパターン画像を撮像し、撮像したコードパターン画像を表す信号を出力する。ここでは、撮像素子643として、赤外領域に感度があるCMOSセンサであって、撮像した画像を同時に転送できるグローバルシャッタ方式のCMOSセンサが用いられる。撮像素子643は、70fps〜100fps(frame per second)程度の周期の画像取込信号(フレームレート)に従って画像を撮像する。それに伴い、照射部63は、消費電力を抑制するために、撮像素子643への画像取込信号に同期してパルス点灯するように構成されている。なお、ここでは、撮像素子としてCMOSセンサを用いるが、撮像素子はCMOSセンサに限定されるものではなく、CCD等の他の撮像素子を使用してもよい。
【0016】
ペンチップ69は、ペン先69aに加えられる力によって矢印A方向に移動可能に設けられている。回転軸71は、撮像ユニット70を回転自在に支持する。撮像ユニット70には回転端72が固定して設けられており、この回転端72はペンチップ69と圧力センサ62の間の位置に設けられている。ペン先69aに力が加えられると、ペンチップ69が矢印A方向に移動し、この移動によってペン先69aに加えられた力が回転端72に加えられる。ペンチップ69によって回転端72が押圧されることにより、回転端72が回転軸71を中心として回転し、この回転端72の回転に伴って撮像ユニット70全体が回転する。また、回転端72が回転することにより圧力センサ62が押圧され、これによりペン先69aへの圧力が圧力センサ62によって検知される。
【0017】
図5は、ペン先69aに力が加えられることによりペンチップ69が矢印A方向に移動した状態を示す図である。図示のように、ペン先69aに加えられた力がペンチップ69によって撮像ユニット70に加えられ、ペン先69aに加えられた力が撮像ユニット70に加わることによって撮像ユニット70が回転軸71を中心軸として回転する。撮像ユニット70が回転することにより、照射部63によって光が照射される媒体50上の位置と受光部641が受光する反射光が媒体50上で反射した位置(図4の位置p1,図5の位置p2参照)が変化する。すなわち、図4と図5に示すように、媒体50において画像が形成されている面(以下、媒体面という)に対して照射部63の光軸と受光部641の光軸(図4、図5中、1点鎖線)が交差する角度は、ペン先69aに加えられる力に応じて変化する。このように、回転軸71とペンチップ69とは、ペン先69aに加えられる力に応じて撮像ユニット70の位置又は姿勢を変化させ、撮像ユニットによって光が照射される媒体50上の位置、及び、撮像ユニット70が受光する反射光が媒体50上で反射した位置を変更する変更手段として機能する。
【0018】
撮像ユニット70回転角度はペン先69aに加えられる力に応じて図4に示す角度と図5に示す角度の間の範囲で変化する。図4及び図5に示すように、ペン先69aに加わえられる力が大きいほどペンチップ69の移動量は大きくなり、撮像ユニット70の回転量は大きくなる。すなわち、ペン先69aに加えられる力が大きいほど撮像ユニット70の位置又は姿勢の変化量は大きくなる。
【0019】
次に、制御部61の機能的構成の一例について、図6を参照しつつ説明する。図6は、制御部61の機能的構成の一例を示すブロック図である。図において、コード検出部612は、撮像部64から出力される信号(撮像された画像を表す信号)からコードパターン画像を検出する。データ処理部613は、コード検出部612にて検出されたコードパターン画像から識別情報および位置情報を抽出する。照明制御部614は、照射部63をパルス点灯させるための照明制御信号を照射部63に対して送信し、照射部63をパルス点灯させる。撮像制御部615は、照射部63に送信するパルス点灯に同期した画像取込信号を撮像部64に供給する。
【0020】
次に、電子ペン60における制御部61の動作の概略を説明する。図7は、照射部63のパルス点灯を制御する照明制御信号、撮像部64における画像取込信号、および出力画像信号に関する出力タイミングチャートを示した図である。電子ペン60による筆記が開始されると、ペンチップ69に接続された圧力センサ62が筆記動作を検出する。それにより、制御部61は、識別情報及び位置情報の読取処理を開始する。まず、制御部61の照明制御部614は、照射部63をパルス点灯させるための照明制御信号(図7(A))を照射部63に対して送信し、照射部63をパルス点灯させる。
【0021】
撮像部64は、画像取込信号(図7(B))に同期して媒体50上の画像を撮像する。その際に、照射部63は、撮像部64への画像取込信号に同期してパルス点灯する。撮像部64は、パルス点灯する照射部63にて照明される媒体50上の画像を撮像する。そのため、撮像部64では、照射部63にて照明された媒体50上の画像に関する画像信号(出力画像信号:図7(C))が順に生成される。
【0022】
撮像部64にて順次生成された出力画像信号は、コード検出部612に送られる。出力画像信号を受け取ったコード検出部612は、出力画像信号を処理して、撮像部64にて撮像された画像からコードパターン画像を検出する。コード検出部612により取得されたコードパターン画像はデータ処理部613に送られる。コードパターン画像を受け取ったデータ処理部613は、コードパターン画像を復号し、コードパターン画像に埋め込まれている識別情報および位置情報を取得する。
【0023】
<B:動作>
次に、この実施形態の動作について説明する。電子ペン60による筆記が開始されると、ペンチップ69に接続された圧力センサ62が筆記動作を検出する。それにより、制御部61は、識別情報及び位置情報の読取処理を開始する。まず、照明制御部614は、照射部63をパルス点灯されるための照明制御信号を照射部63に対して送信し、照射部63をパルス点灯させる。また、電子ペン60の撮像制御部615は、照射部63に送信するパルス点灯に同期した画像取込信号を、撮像部64に供給する。撮像部64は、撮像制御部615から供給される画像取込信号に応じて、受光部641で受光される反射光に基づいてコードパターン画像を撮像し、撮像したコードパターン画像を表す出力画像信号をコード検出部612へ出力する。
【0024】
次に、コード検出部612及びデータ処理部613の動作について、図8に示すフローチャートを参照しつつ説明する。コード検出部612には、撮像部64から媒体50上の画像を表す出力画像信号が入力される(ステップ601)。コード検出部612は、出力画像信号に含まれるノイズを除去するための処理を行う(ステップ602)。ここで、ノイズとしては、CMOS感度のばらつきや電子回路により発生するノイズ等がある。ノイズを除去するために如何なる処理を行うかは、電子ペン60の撮像系の特性に応じて決定する。例えば、ぼかし処理やアンシャープマスキング等の先鋭化処理を適用することができる。次に、コード検出部612は、画像からドットパターン(ドット画像の位置)を検出する(ステップ603)。また、コード検出部612は、検出したドットパターンを2次元配列上のデジタルデータに変換する(ステップ604)。例えば、2次元配列上で、ドットがある位置を「1」、ドットがない位置を「0」というように変換する。そして、この2次元配列上のデジタルデータ(コードパターン画像)は、コード検出部612からデータ処理部613へと受け渡される。
【0025】
データ処理部613は、受け渡されたコードパターン画像から、図2に示した2つのドットの組み合わせからなるドットパターンを検出する(ステップ605)。例えば、ドットパターンに対応するブロックの境界位置を2次元配列上で動かし、ブロック内に含まれるドットの数が2つになる境界位置を検出することにより、ドットパターンを検出することができる。このようにしてドットパターンが検出されると、データ処理部613は、ドットパターンの種類に基づいて、識別符号および位置符号を検出する(ステップ606)。その後、データ処理部613は、識別符号を復号して識別情報を取得し、位置符号を復号して位置情報を取得する(ステップ607)。図8に示す処理において、受光部641が受光した光量が少なすぎる場合や、逆に受光した光量が多すぎる場合等には、撮像された画像からドットパターンが検出されず、電子ペン60が識別情報及び位置情報を取得できない場合がある。このように識別情報及び位置情報が取得できなかった場合は、データ処理部613は、識別情報および位置情報に代えて、読取の失敗を示す情報を取得する。
【0026】
電子ペン60は、図8の処理により取得した識別情報および位置情報を情報処理装置10に送信する。このとき、電子ペン60は、識別情報および位置情報の読取に失敗した場合は、読取の失敗を示す情報を情報処理装置10に送信する。情報処理装置10は電子ペン60から識別情報および位置情報を受信し、受信した位置情報に基づいて筆記情報を生成する。情報処理装置10は、電子ペン60から読取の失敗を示す情報を受信した場合には、その前後の識別情報および位置情報によって補間したりする等して筆記情報を生成する。
【0027】
<C:動作例1>
次に、この実施形態の具体的な動作の一例について図面を参照しつつ説明する。この動作例では、ユーザが、電子ペン60を用いて、図9に例示する点を媒体50上に筆記した場合の動作例について説明する。ユーザは、媒体50上の位置(x1,y1)を電子ペン60で指示し、ペン先69aを媒体50に押し付ける。これにより、ペンチップ69に接続された圧力センサ62が筆記動作を検出し、識別情報及び位置情報の読取処理を開始する。このとき、ユーザによるペン先69aの押し込み動作に連動して撮像ユニット70が回転する。そのため、図4及び図5に例示したように、媒体50に対する照射部63の光軸と受光部641の光軸の交差角度及び交差位置は、ユーザによるペン先69aの押し込み動作に連動して徐々に変化する。
【0028】
図10は、撮像ユニット70による撮像範囲の遷移の一例を示す図である。図10は、図9に示す筆記動作に対応するものである。なお、図10においては、図面が煩雑になるのを防ぐために、撮像ユニット70による撮像範囲の数を、実際に撮像される数よりも少ない数で図示している。ユーザによって図9に示す位置(x1,y1)でペン先69aが押し込まれる動作に連動して、撮像ユニット70が回転して撮像ユニット70の撮像範囲が領域A1から領域A7まで徐々に変化する。
【0029】
ところで、電子ペン60で媒体50に対して筆記が行われる際には、電子ペン60と媒体50との間の角度は、筆記動作に伴って逐次変化するが、このとき、図13に示すように、従来の電子ペン160においては、電子ペンと媒体との間の角度が90度に近い状態になることがある。電子ペンは、通常の筆記具であるペンのように細長い形状であることが求められるから、照射部163と受光部1641とを、電子ペンの長手方向と直交する方向において比較的近接した位置に配置せざるを得ない。このような配置の制約があるので、電子ペンと媒体との間の角度が90度に近い状態では、図13に示すように、照射部163から照射される光の反射光のうち主に正反射光成分が受光部1641によって受光されることになる。このときコードパターン画像を形作るトナーの種類によっては反射光の強度が強すぎて、受光部1641がカバーし得る受光強度の上限を超える反射光が受光部1641に到達し、コードパターン画像を正確によみとれない場合がある。
【0030】
特に、従来の電子ペンにおいては、媒体50上のある一点が指示される場合において受光部1641が正反射光成分を多く受光してしまうと、コードパターン画像が正確に読み取れず情報の読取に失敗してしまい、その結果、その筆記動作に対する情報が欠落してしまう。それに対し、本実施形態の電子ペン60の撮像ユニット70は、ペン先69aに加えられる力に応じて回転するから、ユーザが媒体50上のある一点を指示した場合であっても、ペン先69aの押し込み開始から押し込み終了までの間の時間において複数の異なる撮像角度で撮像が行われる(図10の領域A1乃至A7参照)。このとき、上述したように、媒体50に対する照射部63の光軸と受光部641の光軸の交差角度は、領域A1,A2,…,A7のそれぞれで異なるから、ペン先69aの押し込みの開始から押し込み完了までの間のいずれかのタイミングにおいて読取に失敗した場合であっても、その他のタイミングで画像の読取が行われる。具体的には、例えば、図10に示す例において、領域A7(斜線で示した領域)に対応する撮像角度において受光部641が正反射光成分を多く受光してしまいコードパターン画像の読取に失敗した場合であっても、それ以外の撮像角度においてコードパターン画像が読み取られる。このように、本実施形態では、ペン先69aのタッチ動作のみの筆記動作が行われた場合であっても、その筆記動作に対する情報の欠落を防ぐことができる。なお、この動作例では媒体50上に図9に示す点を筆記する場合の動作例について説明したが、これに限らず、例えば、ソフトボタンを選択するなどの、表示面上の位置を単に指定する場合にも、本実施形態の電子ペン60は有効である。
【0031】
<D:動作例2>
次に、この実施形態の他の具体的な動作の一例について図面を参照しつつ説明する。この動作例では、ユーザが、電子ペン60を用いて、図11に例示する線を媒体50上に筆記した場合の動作例について説明する。まず、ユーザは、媒体50上の位置(x1,y1)を電子ペン60で指示し、ペン先69aを媒体50に押し付ける。これにより、ペンチップ69に接続された圧力センサ62が筆記動作を検出し、識別情報及び位置情報の読取処理を開始する。このとき、ユーザによるペン先69aの押し込み動作に連動して撮像ユニット70が回転する。そのため、媒体50に対する照射部63の光軸と受光部641の光軸の交差角度及び交差位置は、ユーザによるペン先69aの押し込み動作に連動して徐々に変化する。
【0032】
図12は、撮像ユニット70による撮像範囲の遷移の一例を示す図である。図12は、図11に示す筆記動作に対応するものである。なお、図12においては、図面が煩雑になるのを防ぐために、撮像ユニット70による撮像範囲の数を、実際に撮像される数よりも少ない数で図示している。図11に示す位置(x1,y1)でユーザによってペン先69aが押し込まれる動作に連動して、撮像ユニット70が回転して撮像ユニット70の撮像範囲が領域A1から領域A7まで徐々に移動する。
【0033】
次いで、ユーザは、ペン先69aを媒体50に押し付けたままペン先69aを位置(x1,y1)から位置(x2,y2)まで移動させる(図11参照)。このペン先69aの移動に伴って、図12に示すように、撮像ユニット70の撮像範囲は領域A7から領域A15まで移動する。すなわち、ペン先69aの移動に伴って、領域A7から領域A15のコードパターン画像が順番に撮像され、撮像されたコードパターン画像に応じて位置情報及び識別情報が読み取られる。ところで、ユーザがペン先69aを媒体50の媒体面上で移動させる際には、ペン先69aに加わる圧力はその移動中において一定でない場合がある。そのため、撮像ユニット70の撮像領域の位置は、図12に例示するように、ペン先69aに加えられる力の大小に応じて図中上下方向の位置が変化する場合がある。
【0034】
ペン先69aを位置(x2,y2)まで移動させると、ユーザは、ペン先69aを媒体50から離す。この動作に伴って、ペン先69aに加わる圧力は徐々に減少する。ペン先69aに加わる圧力の減少に伴ってペンチップ69が図4中の矢印A方向と逆方向に移動し、この移動に伴って撮像ユニット70が回転する。これにより、撮像ユニット70の撮像範囲は徐々に移動する。図12に示す例では、撮像ユニット70の撮像範囲は、撮像ユニット70の回転に伴って、領域A15から領域A21まで移動する。
【0035】
この動作例においても、電子ペン60と媒体50との間の角度によっては、受光部641が正反射光成分を多く受光してしまい、コードパターン画像を正確に読み取れない場合がある。しかしながら、本実施形態の撮像ユニット70はペン先69aに加わる圧力に応じて回転するから、いずれかの角度で読取に失敗したとしても、他の撮像角度で読取が行われる。具体的には、例えば、図12に示す例において、領域A7、A8、A13及びA15(斜線で示した領域)で読取に失敗した場合であっても、その他の領域において画像の読取が行われる。この場合は、読み取られた情報を適当な補間手法によって連ねることで、筆記の軌跡をおおよそ特定できる。
【0036】
特に、筆記の開始位置(x1,y1)においては領域A1から領域A7の複数の撮像角度で読取が行われるから、いずれかの角度で読取に失敗したとしても、他の撮像角度で読取が行われる。また、筆記の終了位置(x2,y2)においても領域A15から領域A21の複数の撮像角度で読取が行われるから、いずれかの読取角度で読取に失敗したとしても、他の撮像角度で読取が行われる。すなわち、筆記の開始位置(x1,y1)と筆記の終了位置(x2,y2)とにおいては位置情報が必ず読み取られる。従来の電子ペンでは、筆記の開始位置と筆記の終了位置とで読取に失敗する場合があり、その場合には筆記情報の精度が悪くなる場合があった。それに対し、本実施形態の電子ペン60は、筆記の開始位置と筆記の終了位置では位置情報が必ず読み取られるから、従来と比較して、筆記情報の精度が高くなる。また、筆記の開始位置と筆記の終了位置との間の位置においても、ペン先69aに加えられる力に応じて撮像ユニット70の撮像角度が変化するから、ユーザが電子ペン60の角度を一定に保ったままペン先69aを移動させた場合であっても、情報の読取の失敗が連続して発生することが軽減され、筆記情報の精度が高くなる。
【0037】
<E:変形例>
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述した実施形態に限定されることなく、他の様々な形態で実施可能である。以下にその例を示す。なお、以下の各態様を組み合わせてもよい。
(1)上述の実施形態では、媒体50に文字や図形等を筆記する電子ペンについて説明したが、電子ペンはこれに限らず、例えば、ポインティングデバイス(マウス)機能や、媒体上の領域に対応して記録された情報(例えば、コマンド情報)を読み取るスタイラス機能を備えたものであってもよい。
【0038】
(2)上述の実施形態では、電子ペン60は、撮像ユニット70を回転自在に支持する回転軸71と、ペン先69aに加わる圧力を撮像ユニット70に加えるペンチップ69とを備え、ペン先69aに加わる圧力によって撮像ユニット70が回転軸71を中心として揺動する機構を用いた。撮像ユニット70の位置又は姿勢を変化させる機構はこれに限らず、例えば、撮像ユニット70の位置又は姿勢をモータ等によって変化させる駆動機構を電子ペン60が備える構成とし、制御部61が、圧力センサ62によって検出された圧力に応じて撮像ユニット70の位置又は姿勢を変化させるように駆動機構を制御するようにしてもよい。また、他の例として、例えば、ペン先69aに加わる圧力に応じて撮像ユニット70をペンチップ69の軸方向に対して水平方向に揺動させる機構を電子ペン60に設けるようにしてもよい。また、例えば、ペン先69aに加わる圧力に応じて撮像ユニット70を振動させる機構を設けるようにしてもよい。要は、電子ペン60が、ペン先69aに加えられる圧力に応じて撮像ユニット70の位置又は姿勢を変化させ、撮像ユニット70によって光が照射される媒体50上の位置、及び、撮像ユニット70が受光する反射光が媒体50上で反射した位置を変更する機構を備えるものであればよい。すなわち、電子ペン60が、ペン先69aに加えられる力に応じて、媒体50に対して照射部63の光軸と受光部641の光軸が交差する角度を変化させる機構を備えるものであればよい。
【0039】
(3)上述の実施形態では、ペン先69aに加わる圧力が大きいほど撮像ユニット70の回転量が大きくなる機構を用いたが、これに限らず、例えば、ペン先69aに圧力が加わったか否かを検出し、圧力が検出された場合に撮像ユニット70の位置又は姿勢を予め定められた変更量だけ変更するようにしてもよい。要は、電子ペン60は、ペン先69aに加わる圧力に応じて撮像ユニット70の位置又は姿勢を変化させる機構を備えるものであればよい。
【0040】
(4)上述の実施形態では、照射部63として、赤外光を照射するLEDを用いたが、照射部63はこれに限らず、違う特性を有するLEDを用いるようにしてもよい。要は、照射部63は、媒体50に形成されたコードパターン画像をその反射光で読取可能な光を照射するものであればよい。
【0041】
(5)上述の実施形態では、識別情報として、媒体を一意に識別する情報を用いたが、識別情報はこれに限らず、例えば、電子文書を一意に識別する情報を識別情報として用いるようにしてもよい。上述の第1実施形態に例示したように媒体を一意に識別する情報を用いる場合は、同じ電子文書を複数部数形成すると、異なる媒体には異なる識別情報が付与される。これに対し、電子文書を一意に識別する情報を識別情報として用いる場合は、同じ電子文書を形成すると、異なる媒体であっても同じ識別情報が付与される。
【0042】
また、上述の実施形態では、位置情報及び識別情報を表すコードパターン画像を読み取ったが、コードパターン画像が表す情報は位置情報や識別情報に限らず、例えば、テキストデータやコマンドを表す情報であってもよい。また、位置情報のみを表す画像であってもよい。要は、何らかの情報を表す画像が媒体50に形成されていればよい。
【0043】
(6)上記した画像形成装置では、コードパターン画像をKのトナーを用いて形成するようにした。これは、Kのトナーが、C、M、Yのトナーよりも赤外光の吸収量が多く、電子ペン60でコードパターン画像を読み取ることができるからである。しかしながら、コードパターン画像は、特殊トナーを用いて形成することも可能である。ここで、特殊トナーとしては、可視光領域(400nm〜700nm)における最大吸収率が7%以下であり、近赤外領域(800nm〜1000nm)における吸収率が30%以上の不可視トナーが例示される。ここで、「可視」および「不可視」は、目視により認識できるかどうかとは関係しない。形成された媒体に形成された画像が可視光領域における特定の波長の吸収に起因する発色性の有無により認識できるかどうかで「可視」と「不可視」とを区別している。また、可視光領域における特定の波長の吸収に起因する発色性が若干あるが、人間の目で認識し難いものも「不可視」に含める。また、この不可視トナーは、画像の機械読取りのために必要な近赤外光吸収能力を高めるために、平均分散径が100nm〜600nmの範囲のものが望ましい。
また、画像形成装置は、電子写真方式に限らず、インクジェット方式等のその他の如何なる方式を用いてもよい。
【0044】
(7)上述の実施形態に係る電子ペン60の制御部61によって実行されるコンピュータプログラムは、磁気記録媒体(磁気テープ、磁気ディスクなど)、光記録媒体(光ディスクなど)、光磁気記録媒体、半導体メモリなどのコンピュータが読取可能な記録媒体に記憶した状態で提供し得る。また、インターネット等のネットワーク経由で電子ペン60にダウンロードさせることも可能である。なお、上述の制御を行う制御手段としてはCPU以外にも種々の装置を適用することができ、例えば、専用のプロセッサなどを用いてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】筆記情報処理システムの全体構成の一例を示す図である。
【図2】コードパターン画像の内容一例を示す図である。
【図3】電子ペンの機能的構成の一例を示すブロック図である。
【図4】電子ペンの構成の一例を示す側断面図である。
【図5】電子ペンの構成の一例を示す側断面図である。
【図6】電子ペンの制御部の機能的構成の一例を示すブロック図である。
【図7】照明制御信号、画像取込信号および出力画像信号に関する出力タイミングチャートを示した図である。
【図8】電子ペンのコード検出部およびデータ処理部での動作を示したフローチャートを示した図である。
【図9】電子ペンによる筆記内容の一例を示す図である。
【図10】電子ペンの撮像ユニットによる撮像範囲の遷移の一例を示す図である。
【図11】電子ペンによる筆記内容の一例を示す図である。
【図12】電子ペンの撮像ユニットによる撮像範囲の遷移の一例を示す図である。
【図13】電子ペンの構成の一例を示す側断面図である。
【符号の説明】
【0046】
10…情報処理装置、50…媒体、60…電子ペン、61…制御部、62…圧力センサ、63…照射部、64…撮像部、65…情報メモリ、66…通信部、67…バッテリ、68…ペンIDメモリ、69…ペンチップ、70…撮像ユニット、71…回転軸、72…回転端、75…スイッチ、612…コード検出部、613…データ処理部、614…照明制御部、615…撮像制御部、641,1641…受光部、642…プリズム、643…撮像素子。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
情報を表す画像が形成された媒体上の位置を指示する指示部と、
前記媒体に光を照射して該媒体からの反射光を受光し、受光した反射光に応じて該媒体上の前記画像を撮像する撮像手段と、
前記指示部に加えられる力に応じて前記撮像手段の位置又は姿勢を変化させ、該撮像手段によって光が照射される媒体上の位置、及び、該撮像手段が受光する反射光が媒体上で反射した位置を変更する変更手段と
を具備することを特徴とする読取装置。
【請求項2】
前記変更手段は、前記指示部に加えられる力が大きいほど前記撮像手段の位置又は姿勢の変化量を大きくする
ことを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項3】
前記変更手段は、前記撮像手段を回転自在に支持する回転軸と、前記指示部に加えられる力を該撮像手段に加える部材とを備え、
前記指示部に加えられる力が前記撮像手段に加わることによって該撮像手段が前記回転軸を中心として回転する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の読取装置。
【請求項1】
情報を表す画像が形成された媒体上の位置を指示する指示部と、
前記媒体に光を照射して該媒体からの反射光を受光し、受光した反射光に応じて該媒体上の前記画像を撮像する撮像手段と、
前記指示部に加えられる力に応じて前記撮像手段の位置又は姿勢を変化させ、該撮像手段によって光が照射される媒体上の位置、及び、該撮像手段が受光する反射光が媒体上で反射した位置を変更する変更手段と
を具備することを特徴とする読取装置。
【請求項2】
前記変更手段は、前記指示部に加えられる力が大きいほど前記撮像手段の位置又は姿勢の変化量を大きくする
ことを特徴とする請求項1に記載の読取装置。
【請求項3】
前記変更手段は、前記撮像手段を回転自在に支持する回転軸と、前記指示部に加えられる力を該撮像手段に加える部材とを備え、
前記指示部に加えられる力が前記撮像手段に加わることによって該撮像手段が前記回転軸を中心として回転する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の読取装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2010−141525(P2010−141525A)
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−314840(P2008−314840)
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年12月10日(2008.12.10)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】
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