説明

調光パネル

【課題】溶液状の温度応答物質や液晶化合物を使用する必要がなく、低コストで簡便に製造することのできる調光パネルを提供する。
【解決手段】2枚のガラス板2,2と、それら2枚のガラス板2,2に挟持された温度応答性層3とから構成される調光パネル1A。温度応答性層3は、ロタキサン構造を含む温度応答性ゲルからなる。温度応答性ゲルは、一例として、一方の末端にブロック基を有し他方の末端に重合性官能基を有する直鎖状分子と、その直鎖状分子が2本以上貫通し得る開口部を有する環状分子とを混合して得られた高分子架橋前駆体の直鎖状分子の重合性官能基を介して、当該直鎖状分子と温度応答性化合物とを共重合させることにより得られる高分子架橋体を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、温度変化に応じて光線透過率が変化する調光パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
温度によって光線透過率が変化する調光パネルとしては、例えば、特許文献1,2に記載のものが知られている。また、電圧の印加によって光線透過率が変化する調光パネルとしては、例えば、特許文献3に記載のものが知られている。
【0003】
特許文献1の調光パネルでは、温度応答性の調光の材料として、温度上昇により白濁化または着色して色調が変わり温度降下により元の状態に戻る有機材料溶液を使用しており、その有機材料溶液としては、水溶性高分子化合物の溶液および非イオン性界面活性剤の溶液が例示されている。
【0004】
特許文献2の調光パネルでは、温度応答性の調光の材料として、メチルセルロースあるいはヒドロキシプロピル・メチルセルロース誘導体を1〜15%溶かした水溶液を使用しており、その水溶液を2枚の透明板間に封入している。
【0005】
特許文献3の調光パネルでは、電圧応答性の調光の材料として、液晶化合物の組成物を使用している。液晶化合物としては、シアノ基、フッ素原子などの極性基が分子長軸方向に結合した化合物、またはシアノ基、フッ素原子などの極性基が分子短軸方向に結合した化合物が挙げられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−26781号公報
【特許文献2】特開平10−48674号公報
【特許文献3】特開2004−131335号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1,2のように調光の材料として溶液状の温度応答物質を使用した場合、当該溶液状の温度応答物質を漏らさないように封入するのに煩雑な製造工程を必要とし、また、調光パネルが破損したときに、溶液状の温度応答物質が漏れ出すため、安全性に問題がある。一方、特許文献3の調光パネルで使用する液晶化合物は高価であるため、かかる液晶化合物を使用した調光パネルは、コストが非常に高くなるという問題がある。
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、溶液状の温度応答物質や液晶化合物を使用する必要がなく、低コストで簡便に製造することのできる調光パネルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、第1に本発明は、少なくとも2枚の透明体と、前記2枚の透明体の間に位置し、温度変化に応じて光線透過率が変化する温度応答性ゲルからなる温度応答性層とを備え、温度応答性ゲルは、ロタキサン構造を含むことを特徴とする調光パネルを提供する(発明1)。
【0010】
なお、本明細書における「透明体」とは、可視光領域から赤外線領域に透過性を有する物をいう。透明体としては、例えば、透明な板体、フィルム体等が挙げられ、具体的には、ガラス板、樹脂フィルム等が例示される。
【0011】
上記発明(発明1)によれば、ロタキサン構造を含む温度応答性ゲルを使用することで、溶液状の温度応答物質や液晶化合物を使用する必要がなく、低コストで簡便に調光パネルを製造することができる。具体的には、ゲルは、液体と比較して調光パネルから漏れにくいという特性を有するため、漏れ防止のための煩雑な封入工程を必要とせず、また、調光パネルが破損した場合でも漏れ出すおそれがないため、安全性も高い。さらに、ロタキサン構造を含むゲルは、コンフォメーション変化に秀でることで、温度応答性に優れる。
【0012】
上記発明(発明1)においては、前記温度応答性層を昇温させることのできる発熱体をさらに備えていてもよい(発明2)。
【0013】
上記発明(発明1,2)において、前記透明体の少なくとも1枚は、ガラス板と透明導電膜とから形成された発熱ガラスであってもよい(発明3)。
【0014】
上記発明(発明1〜3)において、前記温度応答性ゲルは、常温では光線透過率が高く、常温からの温度上昇により白濁化または着色して光線透過率が低くなることが好ましい(発明4)。
【0015】
上記発明(発明1〜4)において、前記温度応答性ゲルは、水分を10質量%以上含むことが好ましい(発明5)。
【0016】
上記発明(発明1〜5)において、前記温度応答性ゲルは、2個以上の環状部分を有するポリマー、ならびに一方の末端にブロック基を有し他方の末端に重合性官能基を有する直鎖状分子および/または両末端に重合性官能基を有する直鎖状分子を、混合して得られた高分子架橋前駆体の前記直鎖状分子の重合性官能基を介して、前記直鎖状分子と温度応答性化合物とを共重合させることにより得られる高分子架橋体を含有してもよい(発明6)。
【0017】
上記発明(発明6)において、前記ポリマーの環状部分は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンからなる群から選ばれる少なくとも1種、または環状ポリエーテル、環状ポリエステル、環状ポリエーテルアミン、環状ポリアミン、シクロアミロースおよび環状構造を有する高分子のデキストリンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい(発明7)。
【0018】
上記発明(発明1〜5)において、前記温度応答性ゲルは、一方の末端にブロック基を有し他方の末端に重合性官能基を有する直鎖状分子および/または両末端に重合性官能基を有する直鎖状分子と、前記直鎖状分子が2本以上貫通し得る開口部を有する環状分子とを混合して得られた高分子架橋前駆体の前記直鎖状分子の重合性官能基を介して、前記直鎖状分子と温度応答性化合物とを共重合させることにより得られる高分子架橋体を含有してもよい(発明8)。
【0019】
上記発明(発明8)において、前記環状分子は、γ−シクロデキストリン、環状ポリエーテル、環状ポリエステル、環状ポリエーテルアミン、環状ポリアミン、シクロアミロースおよび環状構造を有する高分子のデキストリンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい(発明9)。
【0020】
上記発明(発明6〜9)においては、前記温度応答性化合物が、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドであることが好ましい(発明10)。
【発明の効果】
【0021】
本発明に係る調光パネルは、ロタキサン構造を含む温度応答性ゲルを使用することで、溶液状の温度応答物質や液晶化合物を使用する必要がなく、低コストで簡便に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る調光パネルの断面図である。
【図2】本発明の他の実施形態に係る調光パネルの断面図である。
【図3】本発明の他の実施形態に係る調光パネルの断面図である。
【図4】本発明の他の実施形態に係る調光パネルの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態について説明する。
〔第1の実施形態〕
図1に示すように、本発明の第1の実施形態に係る調光パネル1Aは、2枚のガラス板2,2(本発明の透明体に該当)と、それら2枚のガラス板2,2に挟持された温度応答性層3とから構成される。
【0024】
ガラス板2は、温度応答性層3を保持することができ、所定の透明性および強度を有するものであれば特に限定されるものではなく、公知の材料から適宜選択すればよい。ガラス板2としては、例えば、ソーダライムガラス、鉛ガラス、アルミノケイ酸ガラス、ホウケイ酸ガラス、バリウムホウケイ酸ガラス、バリウム・ストロンチウム含有ガラス、石英等からなる無機ガラス板;ポリメチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリル樹脂、ポリジエチレングリコールビスアリルカーボネート等のポリカーボネート樹脂、ポリエステル樹脂、ポリメチルスチレン等のポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂などからなる有機ガラス板;ハイブリッドガラスなどを好ましく挙げることができる。なお、本明細書において、(メタ)アクリレートとは、アクリレートおよびメタクリルレートの両方を意味する。他の類似用語も同様である。
【0025】
ガラス板2の厚さは、上記の目的を達することができれば特に限定されることはなく、通常は0.1〜100mmであり、好ましくは0.3〜50mmであり、特に好ましくは0.5〜30mmである。
【0026】
温度応答性層3は、温度変化に応じて全光線透過率が変化する温度応答性ゲルからなる。ゲルは、液体と比較して流動性が低いため、調光パネルの構成要素としたときでも、当該調光パネルから漏れにくいという特性を有する。したがって、温度応答性層3をゲルで構成することで、溶液状の温度応答物質のように漏れ防止のための煩雑な封入工程を必要とせず、また、調光パネル1Aが破損した場合でも、溶液状の温度応答物質のように漏れ出すおそれがないため、安全性も高い。
【0027】
また、本実施形態における温度応答性ゲルは、ロタキサン構造を含む。ロタキサン構造を含む温度応答性ゲルは、環状分子と直鎖状分子とが機械的な結合(インターロック構造)で構成され、環状分子が直鎖状分子上を自由に動くことができるものである。温度応答性の物質は、コンフォメーション変化を利用して温度応答性を示すことが多いが、上記のようにインターロック構造を有するゲルは、コンフォメーション変化に秀でるため、温度応答性に優れたものとなる。
【0028】
本実施形態における温度応答性ゲルは、所定温度以下の低温(以下「相転移前の安定温度領域」という。)では全光線透過率が高く、かつ、ほぼ一定している。そして、加温することにより所定温度(以下「相転移開始温度」という。)に達すると全光線透過率が低下し始め、比較的狭い温度幅で急激に全光線透過率が低下する。全光線透過率が所定値まで低下した後は、さらに加温しても全光線透過率がほぼ変化しない一定値を示す(この温度領域を以下「相転移後の安定温度領域」という。)こととなる。
【0029】
すなわち、本実施形態における温度応答性ゲルは、常温では全光線透過率が高く、常温からの温度上昇により白濁化または着色して全光線透過率が低くなることが好ましい。ここで、「温度応答性」とは、上記ゲルの相転移前の安定温度領域の温度(好ましくは20℃)と、相転移後の安定温度領域の温度(好ましくは50℃)とでの全光線透過率の差が、30%以上あるものをいう。さらに、調光パネル等への適用の観点から、上記ゲルの全光線透過率の相転移前後の差は、大きいほど好ましい。具体的には、温度応答性層3として、上記全光線透過率の差が、50%以上であることが好ましく、特に60%以上であることが好ましく、さらには70〜99%であることが好ましい。全光線透過率とは、JIS K7105に準拠して測定した値をいう。
【0030】
本実施形態における温度応答性ゲルの相転移開始温度は、10〜100℃の範囲内であることが好ましく、特に20〜80℃の範囲内であることが好ましく、さらには30〜70℃の範囲内であることが好ましい。なお、相転移開始温度から相転移後の安定温度領域に至るまでの温度幅は、通常1〜10℃程度である。
【0031】
本実施形態における温度応答性ゲルは、温度応答性の高分子成分と水分とを含有することが好ましい。この場合、本実施形態における温度応答性ゲルは、水分を10質量%以上含むことが好ましく、特に15〜500質量%含むことが好ましく、さらには20〜200質量%含むことが好ましい。温度応答性ゲル中における水分含有量が10質量%以上であることで、上記全光線透過率の変化特性が効果的に発揮される。
【0032】
温度応答性層3の厚さは、所望の全光線透過率の変化が得られれば特に制限されないが、通常10〜5000μmであり、好ましくは50〜2000μmであり、特に好ましくは100〜1500μmである。
【0033】
好ましい温度応答性層3の全光線透過率の変化特性を具体的に説明すると、乾燥状態の厚さが1000μm(1.0mm)の温度応答性層3(温度応答性ゲルフィルム)を含水量100質量%に調整し、相転移前の安定温度領域の温度から相転移後の安定温度領域に加熱した場合に、JIS K7105による全光線透過率が相転移前の安定温度領域の温度(好ましくは20℃)において50〜99%、好ましくは60〜99%、さらに好ましくは70〜99%のものが、加熱されることにより、相転移後の安定温度領域(好ましくは50℃)において0〜45%、好ましくは0〜35%、さらに好ましくは0〜25%に変化するものである。なお、両温度における全光線透過率の差は前述のとおりである。また、相転移に伴う全光線透過率(%)の変化速度は、特に制限されないが、5分以内であることが好ましい。
【0034】
上記のような温度応答性層3を構成する好ましい温度応答性ゲルとしては、
(1)2個以上の環状部分を有するポリマー、ならびに一方の末端にブロック基を有し他方の末端に重合性官能基を有する直鎖状分子および/または両末端に重合性官能基を有する直鎖状分子を、混合して得られた高分子架橋前駆体の上記直鎖状分子の重合性官能基を介して、上記直鎖状分子と温度応答性化合物とを共重合させることにより得られる高分子架橋体(E1)を含有する温度応答性ゲル、および
(2)一方の末端にブロック基を有し他方の末端に重合性官能基を有する直鎖状分子および/または両末端に重合性官能基を有する直鎖状分子と、前記直鎖状分子が2本以上貫通し得る開口部を有する環状分子とを混合して得られた高分子架橋前駆体の前記直鎖状分子の重合性官能基を介して、前記直鎖状分子と温度応答性化合物とを共重合させることにより得られる高分子架橋体(E2)を含有する温度応答性ゲル
が挙げられる。
【0035】
高分子架橋体(E1)は、以下の製造方法によって得られる。
最初に、2個以上の環状部分を有するポリマー(以下「ポリマー(A)」という。)と、一方の末端にブロック基を有し他方の末端に重合性官能基を有する直鎖状分子(以下「直鎖状分子(B1)」という。)および/または両末端に重合性官能基を有する直鎖状分子(以下「直鎖状分子(B2)」という。)とを用意する。なお、直鎖状分子(B1)と直鎖状分子(B2)とを纏めて「直鎖状分子(B)」という。
【0036】
ポリマー(A)の環状部分は、直鎖状分子(B)を包接することによりロタキサン構造を形成でき、その状態で当該直鎖状分子(B)上を移動できるものである。なお、本明細書において、「環状部分」の「環状」は、実質的に「環状」であることを意味し、直鎖状分子(B)上で移動可能であれば、環状部分は完全には閉環でなくてもよく、例えば螺旋構造であってもよい。また、ポリマー(A)は、後述するとおり比較的大きな分子量を有する環状分子を構成部分とする多量体であり、繰り返し数が少なくても自身の分子量が巨大となる。ポリマー(A)とは、このために行った便宜上の名称であって、2〜10量体程度のオリゴマー領域の繰り返し数のものも含むものである。
【0037】
環状部分を構成する分子(環状分子)としては、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリン、γ−シクロデキストリン等のシクロデキストリン、あるいは、環状ポリエーテル、環状ポリエステル、環状ポリエーテルアミン、環状ポリアミン、ブドウ糖が環状につながったシクロアミロース、環状構造を有する高分子のデキストリン(高度分岐環状デキストリンを含む)等の環状分子が好ましく、これらの環状分子は、ポリマー(A)中または後述の高分子架橋前駆体(C1)もしくは後述の高分子架橋体(E1)中で2種以上混在していてもよい。
【0038】
環状分子としては、直鎖状分子が串刺し状に貫通し易いことからα-シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、γ-シクロデキストリン、及びクラウンエーテルが好ましく、水中で容易に直鎖状分子と包接錯体を形成することからα−シクロデキストリン、β-シクロデキストリン、及びγ-シクロデキストリンが特に好ましい。
【0039】
シクロデキストリン以外の環状分子の重量平均分子量(Mw)は、1000〜50万であることが好ましく、特に5000〜10万であることが好ましい。重量平均分子量が1000未満であると、開口部の直径が小さくなりすぎて、直鎖状分子(B)を包接することが困難となる場合がある。一方、重量平均分子量が50万を超える場合、開口部が大きくなりすぎて、直鎖状分子(B)の適切なブロック基を選択することが困難になる場合がある。なお、本明細書における重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法により測定したポリスチレン換算の値である。
【0040】
一方、環状分子は、水溶性であることが好ましいが、疎水性溶媒中で扱うことも許容される。温度応答性層3の厚さの調整や温度応答性層3の製膜性の向上を考えると、疎水性溶媒中で扱うことの方が好ましい場合もあるからである。
【0041】
環状分子の各種溶液への溶解性は、環状分子の側鎖に高分子鎖および/または置換基を導入することにより調整することができる。かかる高分子鎖としては、例えば、オキシエチレン鎖、アルキル鎖、アクリル酸エステル鎖等が挙げられる。一方、上記置換基としては、例えば、水酸基、チオニル基、アミノ基、スルホニル基、ホスホニル基、アセチル基、アルキル基、トリチル基、トシル基、トリメチルシラン基、フェニル基等が挙げられる。
【0042】
ポリマー(A)中における環状分子の個数は、2個以上であり、好ましくは3〜50個、特に好ましくは3〜10個である。環状分子が2個以上あることで、それによって複数の直鎖状分子(B)を包接することができ、その直鎖状分子(B)を重合させることで、直鎖状分子(B)を構成単位に有する複数の(共)重合体がポリマー(A)を介して互いに結び付けられ、架橋構造が構成される。環状分子が3個以上あると、架橋構造が密になるため、得られる高分子架橋体(E1)の応力緩和性を阻害することなく、強度を向上させることができるためにより好ましい。
【0043】
ポリマー(A)の構造としては、2個以上の環状分子が連結部分によって連結されている構造が好ましい。連結部分となる原料化合物(連結分子)は、環状分子と包接錯体を作らない又は作り難い分子であることが好ましい。このような連結分子を使用することにより、ポリマー(A)を合成するときに、環状分子の開口部を閉塞せずに、環状分子を連結することができる。
【0044】
かかる連結分子としては、直鎖状であってもよいし、分岐鎖状であってもよいが、ある程度かさ高い側鎖を有することが好ましい。例えば、上記環状分子がα-シクロデキストリンの場合には、メチル基よりかさ高い側鎖を有することが好ましい。すなわち、上記環状分子と包接錯体を作らないという観点から、好ましい連結分子としては、ポリプロピレングリコール、ポリアクリル酸エステル、ポリジメチルシロキサン、ポリイソプレン等が挙げられ、中でも特にポリプロピレングリコールが好ましい。
【0045】
1つの連結分子の数平均分子量(Mn)は、100〜100,000であることが好ましく、特に500〜10,000であることが好ましい。連結分子の数平均分子量が100未満であると、形成されたポリマー(A)の環状分子の開口部同士が近接しすぎるため架橋構造をとり難く、また、インターロック構造に基づく効果が十分に発揮されないおそれがある。また、連結分子の数平均分子量が100,000を超えると、直鎖状分子(B)等との相溶性が悪くなり架橋構造の形成が困難となるおそれがある。
【0046】
ポリマー(A)の重量平均分子量(Mw)は、環状分子の種類にも依存するが、通常、1,000〜1,000,000であることが好ましく、特に3,000〜100,000であることが好ましい。ポリマー(A)の重量平均分子量が1,000未満であると、環状分子の個数が2未満となる場合が多く、インターロック構造を形成することができないおそれがあり、また、できたとしても架橋部分が非常に近接するためインターロック構造に基づく効果が十分に発揮できないおそれがある。一方、ポリマー(A)の重量平均分子量が1,000,000を超えると、直鎖状分子(B)等との相溶性が悪くなり架橋構造の形成が困難となるおそれがある。
【0047】
ポリマー(A)は常法によって合成することができる。例えば、官能基を有する環状分子と、当該環状分子の官能基と反応し得る反応性基を末端に有する、連結分子とを反応させることにより、ポリマー(A)が得られる。具体的には、環状分子がα−シクロデキストリンであり、連結分子がポリプロピレングリコールであるポリマー(A)を合成する場合、α−シクロデキストリンと、末端に反応性基を有するポリプロピレングリコールとを混合し、所望により触媒を加え、両者を反応させることにより、ポリマー(A)が得られる。
【0048】
連結分子と結合する環状分子の官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基等が好ましく、連結分子の末端の反応性基としては、例えば、イソシアネート基、エポキシ基、アジリジン基等が好ましい。連結分子としては、例えば、キシリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等のイソシアネート系化合物、エチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールグリシジルエーテル等のエポキシ系化合物、N,N−ヘキサメチレン−1,6−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)等のアジリジン系化合物を末端に有するものを使用することができる。
【0049】
直鎖状分子(B)は、ポリマー(A)の環状分子に包接され得る分子であって、かつ一方の末端にブロック基を有し他方の末端に重合性官能基を有するか(直鎖状分子(B1))、両末端に重合性官能基を有するものである(直鎖状分子(B2))。なお、本明細書において、「直鎖状分子」の「直鎖」は、実質的に「直鎖」であることを意味する。すなわち、直鎖状分子(B)上でポリマー(A)の環状分子が移動可能であれば、直鎖状分子(B)は分岐鎖を有していてもよい。
【0050】
直鎖状分子(B)の両末端(ブロック基・重合性官能基)を除いた部分(本体部分)を構成する分子としては、上記ポリマー(A)の環状分子の開口部に貫通することのできる大きさの分子であればよい。例えば、上記ポリマー(A)の環状分子がα−シクロデキストリンである場合、ポリエチレングリコール、ポリテトラヒドロフラン、ポリエチレン、ポリカプロラクトン等が好ましく、これらから構成される本体部分を有する直鎖状分子(B)は、高分子架橋前駆体(C1)または高分子架橋体(E1)中で2種以上混在していてもよい。
【0051】
直鎖状分子(B)の本体部分を構成する分子の数平均分子量(Mn)は、100〜300,000であることが好ましく、特に200〜200,000であることが好ましく、さらには300〜100,000であることが好ましい。数平均分子量が100未満であると、環状分子の直鎖状分子(B)上での移動量が小さくなり、得られる高分子架橋体(E1)において柔軟性が十分に得られないおそれがある。また、数平均分子量が300,000を超えると、溶媒への溶解性が悪くなり、ゲルを形成できなくなるおそれがある。
【0052】
ブロック基は、直鎖状分子(B1)を包接しているポリマー(A)の環状分子が離脱せず、包接錯体の形態を保持し得る基であれば、特に限定されない。このような基としては、嵩高い基、イオン性基等が挙げられる。
【0053】
ブロック基としては、例えば、ジアルキルフェニル基類、ジニトロフェニル基類、シクロデキストリン類、アダマンタン基類、トリチル基類、フルオレセイン類、ピレン類、アントラセン類等が好ましく、これらのブロック基は、包接錯体または高分子架橋体中で2種以上混在していてもよい。直鎖状分子(B)の片末端に結合してブロック基を形成するキャッピング剤としては、例えば、ジメチルフェニルイソシアネート、トリチルフェニルイソシアネート、2,4-ジニトロフルオロベンゼン、アダマンタンアミン等が好適に用いられる。
【0054】
直鎖状分子(B1)の他方の末端における重合性官能基および直鎖状分子(B2)の両末端における重合性官能基は、当該重合性官能基を介して直鎖状分子(B)と後述する温度応答性成分(D)とを共重合することができるものであれば、特に限定されない。かかる重合性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、エポキシ基、アセチレン基、オキセタニル基等が好ましい。
【0055】
直鎖状分子(B1)は常法によって合成することができる。例えば、一方の末端に重合性官能基を有する直鎖状分子、または両方の末端に互いに異なる重合性官能基を有する直鎖状分子と、ブロック基用のキャッピング剤とを反応させ、一方の末端に上記重合性官能基を残し、他方の末端にブロック基を付加することにより、直鎖状分子(B1)を得ることができる。
【0056】
一例として、一方の末端にヒドロキシル基、他方の末端に(メタ)アクリロイル基を有する直鎖状分子と、イソシアネート基を有するジアルキルフェニル基類とを混合し、所望により触媒を加え、両者を反応させることにより、一方の末端にブロック基としてのジアルキルフェニル基、他方の末端に重合性官能基としての(メタ)アクリロイル基を有する直鎖状分子(B1)が得られる。
【0057】
一方、両末端に重合性官能基を有する直鎖状分子(B2)は、市販のものをそのまま使用するか、例えば、直鎖状分子の両末端の非重合性官能基を重合性官能基に置換することにより得ることができる。
【0058】
一例として、両末端にヒドロキシル基を有する直鎖状分子と、イソシアネート基を有する(メタ)アクリロイル化合物とを混合し、所望により触媒を加え、両者を反応させることにより、両末端に重合性官能基としての(メタ)アクリロイル基を有する直鎖状分子(B2)が得られる。
【0059】
ここで、直鎖状分子(B)としては、一方の末端にブロック基を有し他方の末端に重合性官能基を有する直鎖状分子(B1)を単独で使用してもよいし、両末端に重合性官能基を有する直鎖状分子(B2)を単独で使用してもよいし、あるいは直鎖状分子(B1)および直鎖状分子(B2)を併用してもよい。
【0060】
以上説明したポリマー(A)と直鎖状分子(B)とを用意したら、ポリマー(A)および直鎖状分子(B)を混合し、その全部又は一部について包接錯体を形成することにより高分子架橋前駆体(C1)を製造する。すなわち、ポリマー(A)の環状分子の1個の開口部を直鎖状分子(B)で串刺し状に貫通して、かつ、ポリマー(A)の環状分子の残りの開口部の少なくとも1個を別の直鎖状分子(B)で貫通し、上記2個以上の直鎖状分子(B)が同一のポリマー(A)の複数の環状分子に包接された構造を有する高分子架橋前駆体(C1)を製造する。
【0061】
なお、高分子架橋前駆体(C1)は上記のロタキサン構造を有することを特徴とするが、ポリマー(A)の環状分子の全ての開口部がそのような状態になっていることを要しない。すなわち、混合物としてのポリマー(A)中において、その環状分子の開口部の1個にしか直鎖状分子(B)が串刺し状に貫通されていない構造、さらには、ポリマー(A)の環状分子の開口部に直鎖状分子(B)が全く串刺し状に貫通されていない構造を有していてもよいし、あるいは、ポリマー(A)に包接されない混合物としての直鎖状分子(B)が含まれていてもよい。
【0062】
ポリマー(A)の配合量は、直鎖状分子(B)1質量部に対して、通常0.01〜10質量部であり、好ましくは0.05〜5質量部であり、特に好ましくは0.1〜3質量部である。ポリマー(A)の配合量が、直鎖状分子(B)1質量部に対して0.01質量部未満であると、後述の高分子架橋体(E1)としたときのインターロック構造部分が少なすぎ、ゲルを維持できないおそれがある。一方、ポリマー(A)の配合量が、直鎖状分子(B)1質量部に対して10質量部を超える場合、後述の高分子架橋体(E1)としたときのインターロック構造部分が多くなりすぎて、高分子の自由度が過度に制限され、十分な温度応答性が得られなくなるおそれがある。
【0063】
上記のような高分子架橋前駆体(C1)の製造は、ポリマー(A)および直鎖状分子(B)を溶媒中、例えば水、水酸化ナトリウム水溶液、ジメチルホルムアミド(DMF)と水の混合溶液、メタノールと水の混合溶液等の中に存在させた状態にして(例えば、ポリマー(A)の溶液に直鎖状分子(B)を添加して)、その溶液を撹拌することによって行うことができる。高分子架橋前駆体(C1)が得られたことは、白色沈殿または白濁を生じることや、溶液の粘度が上昇することによって判断することができる。
【0064】
撹拌方法については特に制限はなく、常温または適当に制御された温度で、機械的撹拌処理、超音波処理などの方法で撹拌することができ、特に、超音波処理で撹拌することが好ましい。撹拌時間は、数分〜1時間の条件で行うことが好ましい。超音波の照射条件については特に制限はないが、周波数20〜40kHzで行うことが好ましい。
【0065】
上記のようにして高分子架橋前駆体(C1)を製造したら、ポリマー(A)の環状分子に包接された直鎖状分子(B)の重合性官能基を介して、当該直鎖状分子(B)と温度応答性成分(D)とを共重合し、高分子架橋体(E1)を得る。この高分子架橋体(E1)は、インターロック構造としてのロタキサン構造を含む。
【0066】
本実施形態における温度応答性成分(D)は、直鎖状分子(B)の重合性官能基を介して直鎖状分子(B)と共重合可能であり、かつ高分子ゲルを形成した場合に温度応答性を発現する成分であり、重合性官能基を有することが好ましい。この温度応答性成分(D)は、モノマーであることが好ましいが、重合性官能基を有していれば、オリゴマーやポリマーであってもよい。かかる重合性官能基としては、例えば炭素−炭素二重結合のような重合性基が挙げられる。モノマーの分子量は特に限定はされない。
【0067】
温度応答性成分(D)としては、例えば、(メタ)アクリルアミド、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミド等のN−アルキル置換(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシメチルアクリルアミド等のN−ヒドロキシアルキル置換(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリル酸およびその塩、ビニルメチルエーテル、またはオクチル基、デシル基、ラウリル基、ステアリル基等の長鎖アルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルなどが挙げられ、中でもN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドが好ましい。
【0068】
温度応答性成分(D)としてN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドを使用して得られる高分子架橋体(E1)に水等を含ませた温度応答性ゲルは、熱刺激(昇温)によって透明または半透明から白色に顕著に変化し、光線透過性の変化に非常に優れる。
【0069】
温度応答性成分(D)の配合量は、直鎖状分子(B)1質量部に対して、通常0.01〜500質量部であり、好ましくは0.1〜100質量部であり、特に好ましくは1〜50質量部である。温度応答性成分(D)の配合量が、直鎖状分子(B)1質量部に対して0.01質量部未満であると、温度応答性が不十分になるおそれがあり、500質量部を超える場合は、相対的にインターロック構造部位が少なくなりすぎ、ゲルの維持が困難になるおそれがある。
【0070】
上記のようにして得られる高分子架橋体(E1)は、温度応答性化合物(D)を構成単位として含むものである。
【0071】
直鎖状分子(B1)を使用した場合の高分子架橋体(E1)は、具体的には、ポリマー(A)における環状部分の開口部の1個に、側鎖末端にブロック基を有する第1の重合体の側鎖が串刺し状に貫通し、かつ、同一のポリマー(A)の環状部分の別の開口部に、側鎖末端にブロック基を有する第2の重合体の側鎖が串刺し状に貫通し(同一のポリマー(A)がさらに第3の重合体、第4の重合体・・・第nの重合体等と同様な包接錯体を形成している場合も含む)、ポリマー(A)の環状部分の少なくとも2個の開口部に別個の重合体の側鎖が包接されてなる構造を有する。そして、第n(nは1、2を含む整数)の重合体の主鎖の少なくとも1箇所に、温度応答性化合物(D)またはその残基が含まれる。なお、第nの高分子の側鎖は、直鎖状分子(B)由来である。
【0072】
一方、直鎖状分子(B2)を使用した場合の高分子架橋体(E1)は、具体的には、ポリマー(A)における環状部分の開口部の1個に、第1の重合体と第2の重合体とを連結(架橋)する連結鎖が串刺し状に貫通し、かつ、同一のポリマー(A)の環状部分の別の開口部に、第3の重合体と第4の重合体とを連結(架橋)する連結鎖が串刺し状に貫通し(同一のポリマー(A)がさらに第5の重合体および第6の重合体、第7の重合体および第8の重合体、・・・第nの重合体および第n+1の重合体等と同様な包接錯体を形成している場合も含む)、すなわち、同一のポリマー(A)の環状部分の少なくとも2個の開口部に別個の重合体ペアの連結鎖が包接されてなる構造(ロタキサン構造)を有する。これにより、第1の重合体および第2の重合体のペアと、第3の重合体および第4の重合体のペアとは、同一のポリマー(A)を介して可動性をもって機械的に結合された構造(インターロック構造)を形成する。ポリマー(A)の環状部分の開口部を貫通する連結鎖は、直鎖状分子(B2)由来である。そして、第n(nは1、2を含む整数)の重合体の主鎖の少なくとも1箇所に、水溶性重合性モノマー(D)が含まれる。第nの重合体の主鎖は、水溶性重合性モノマー(D)の重合体であってもよいし、水溶性重合性モノマー(D)と直鎖状分子(B2)との共重合体であってもよいし、直鎖状分子(B2)の重合体であってもよい。なお、第nの重合体と第n+1の重合体との連結鎖は、直鎖状分子(B2)由来である。
【0073】
重合反応は常法によって行えばよく、通常はラジカル重合によって反応させる。例えば、高分子架橋前駆体(C1)および温度応答性成分(D)を含有する溶液に、所望により光重合開始剤を添加して紫外線を照射することにより、あるいは、熱重合開始剤を添加して加熱することにより、直鎖状分子(B)と温度応答性成分(D)とは共重合する。
【0074】
光重合開始剤としては、通常使用されるものであれば特に制限されることなく、例えば、ベンゾフェノン、アセトフェノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン安息香酸、ベンゾイン安息香酸メチル、ベンゾインジメチルケタール、2,4−ジエチルチオキサンソン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ベンジル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル(2−ヒドロキシ−2−プロピル)ケトン、(2,4,6−トリメチルベンジルジフェニル)フォスフィンオキサイド、2−ベンゾチアゾール−N,N−ジエチルジチオカルバメート等を使用することができる。なお、光重合開始剤は、1種類を単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0075】
上記紫外線は、高圧水銀ランプ、フュージョンHランプ、キセノンランプなどで得られ、照射量は、通常100〜500mJ/cmである。
【0076】
一方、熱重合開始剤としては、通常使用されるものであれば特に制限されることなく、例えば、過硫酸カリウム、過酸化ベンゾイル、アゾビスイソブチロニトリル(AIBN)等を使用することができる。熱重合開始剤を使用する場合の加熱温度は、熱重合開始剤の分解温度によって適宜選択すればよいが、通常0〜130℃程度である。また、加熱時間は、熱重合開始剤の半減期にもよるが、通常1分〜24時間程度である。
【0077】
上記光重合開始剤および熱重合開始剤のいずれも、直鎖状分子(B)および温度応答性成分(D)の合計100質量部に対して、通常0.1〜50質量部の割合で配合され、好ましくは0.5〜20質量部で配合される。
【0078】
高分子架橋体(E1)は、例えば水溶液中で重合した場合、未精製であっても温度応答性を発現するが、精製してもよい。精製する場合は、常法によって行えばよく、例えば、水、テトラヒドロフランおよびジメチルホルムアミドで順次洗浄すればよい。
【0079】
以上の方法によれば、ポリマー(A)と直鎖状分子(B)とを混合攪拌するだけで、簡便に高分子架橋前駆体(C1)を製造することができ、さらに得られた高分子架橋前駆体(C1)の直鎖状分子(B)と温度応答性成分(D)とを共重合することで、インターロック構造を有するロタキサン構造を含む高分子架橋体(E1)を簡便に製造することができる。
【0080】
得られた高分子架橋体(E1)においては、環状部分が高分子の側鎖または連結鎖上を移動し得るため柔軟性に優れる。かかる高分子架橋体(E1)はコンフォメーション変化に秀でるため、当該高分子架橋体(E1)に含まれる温度応答性化合物(D)は、優れた温度応答性を示すものとなる。得られた高分子架橋体(E1)に水等を含ませた温度応答性ゲルからなる温度応答性層3は、温度変化に応じて全光線透過率が変化する。特に、温度応答性化合物(D)としてN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドを使用した場合に得られた高分子架橋体(E1)を含有する温度応答性ゲルは、加熱により透明または半透明から白色に顕著に変化する。
【0081】
一方、高分子架橋体(E2)は、以下の製造方法によって得られる。
最初に、高分子架橋体(E1)の製造で使用した直鎖状分子(B)(直鎖状分子(B1)および/または直鎖状分子(B2))と、その直鎖状分子(B)が2本以上貫通し得る開口部を有する環状分子(以下「環状分子(F)」という。)とを用意する。
【0082】
環状分子(F)は、直鎖状分子(B)が2本以上貫通し得る開口部を有するものであり、すなわち、2本以上の直鎖状分子(B)を包接することができ、その状態で当該直鎖状分子(B)上を移動できるものである。なお、本明細書において、「環状分子」の「環状」は、実質的に「環状」であることを意味し、直鎖状分子(B)上で包接したまま移動可能であれば、環状分子(F)は完全には閉環でなくてもよく、例えば螺旋構造であってもよい。
【0083】
環状分子(F)の開口部の直径は、5〜100Åであることが好ましく、7〜70Åであることがより好ましく、8〜20Åであることが特に好ましい。開口部の直径がかかる範囲にあることで、2本以上の直鎖状分子(B)を包接することができ、かつ包接した直鎖状分子(B)が抜け難いものとなる。
【0084】
環状分子(F)としては、具体的には、γ−シクロデキストリン、あるいは、環状ポリエーテル、環状ポリエステル、環状ポリエーテルアミン、環状ポリアミン、ブドウ糖が環状につながったシクロアミロース、環状構造を有する高分子のデキストリン(高度分岐環状デキストリンを含む)等が好ましく、これらの環状分子(F)は、高分子架橋前駆体(C2)または高分子架橋体(E2)中で2種以上混在していてもよい。
【0085】
環状分子(F)としては、2本以上の直鎖状分子(B)が串刺し状に貫通し易いことから、γ−シクロデキストリン、環状構造を有する高分子のデキストリン(高度分岐環状デキストリンを含む)およびクラウンエーテルがさらに好ましく、水中で容易に直鎖状分子(B)と包接錯体を形成することから、γ−シクロデキストリンが特に好ましい。
【0086】
ここで、γ−シクロデキストリンの開口部の直径が8.5〜9Åであり、2本のポリエチレングリコール鎖を包接できることは、Haradaら,「Double-stranded inclusion complexes of cyclodextrin threaded on poly(ethylene glycol)」, NATURE, 14 July 1994, Vol.370, p.126-128 に開示されている。一方、α−シクロデキストリンおよびβ−シクロデキストリンは、それらの開口部の直径が小さすぎることから、2本以上の直鎖状分子(B)を包接することは困難である。
【0087】
また、γ−シクロデキストリン以外の環状分子(F)の重量平均分子量(Mw)は、500〜10万であることが好ましく、特に1000〜5万であることが好ましい。重量平均分子量が500未満であると、開口部の直径が小さくなりすぎて、2本以上の直鎖状分子(B)を包接することが困難となる場合がある。一方、重量平均分子量が10万を超える場合、開口部が大きくなりすぎて、直鎖状分子(B)の適切なブロック基を選択することが困難になる場合がある。
【0088】
一方、環状分子(F)は、水溶性であることが好ましいが、疎水性溶媒中で扱うことも許容される。温度応答性層3の厚さの調整や温度応答性層3の製膜性の向上を考えると、疎水性溶媒中で扱うことの方が好ましい場合もあるからである。
【0089】
環状分子(F)の各種溶液への溶解性は、環状分子(F)の側鎖に高分子鎖および/または置換基を導入することにより調整することができる。かかる高分子鎖としては、例えば、オキシエチレン鎖、アルキル鎖、アクリル酸エステル鎖等が挙げられる。一方、上記置換基としては、例えば、水酸基、チオニル基、アミノ基、スルホニル基、ホスホニル基、アセチル基、アルキル基、トリチル基、トシル基、トリメチルシラン基、フェニル基等が挙げられる。
【0090】
以上説明した直鎖状分子(B)と環状分子(F)とを用意したら、直鎖状分子(B)および環状分子(F)を混合し、その全部又は一部について、環状分子(F)の開口部に直鎖状分子(B)が2本以上貫通した包接錯体を形成させることにより、高分子架橋前駆体(C2)を製造する。この高分子架橋前駆体(C2)は、インターロック構造を形成するためのロタキサン構造を含む。
【0091】
上記高分子架橋前駆体(C2)の製造においては、2本以上の直鎖状分子(B)が一の環状分子(F)のみに包接されていてもよいし、一の直鎖状分子(B)が複数の環状分子(F)に包接されていてもよい。一の直鎖状分子(B)が複数の環状分子(F)に包接されている場合、一の環状分子(F)にて一緒に包接されている他の直鎖状分子(B)と、他の環状分子(F)にて一緒に包接されている他の直鎖状分子(B)とは、同じ直鎖状分子(B)であってもよいし、別の直鎖状分子(B)であってもよい。
【0092】
なお、高分子架橋前駆体(C2)は上記の包接錯体が形成された構造を有することを特徴とするが、全ての環状分子(F)がそのような状態になっていることを要しない。すなわち、混合物としての環状分子(F)中において、一部の環状分子(F)の開口部に1本だけの直鎖状分子(B)が串刺し状に貫通された構造が含まれていてもよい。また、環状分子(F)に包接されない混合物としての直鎖状分子(B)が含まれていてもよい。
【0093】
環状分子(F)の配合量は、直鎖状分子(B)1質量部に対して、通常0.01〜30質量部であり、好ましくは0.05〜10質量部であり、特に好ましくは0.1〜5質量部である。環状分子(F)の配合量が、直鎖状分子(B)1質量部に対して0.01質量部未満であると、後述の高分子架橋体(E2)としたときのインターロック構造部分が少なすぎ、ゲルを維持できないおそれがある。一方、環状分子(F)の配合量が、直鎖状分子(B)1質量部に対して30質量部を超える場合、後述の高分子架橋体(E)としたときのインターロック構造部分が多くなりすぎて、高分子の自由度が過度に制限され、十分な刺激応答性が得られなくなるおそれがある。
【0094】
上記のような高分子架橋前駆体(C2)の製造は、直鎖状分子(B)および環状分子(F)を溶媒中、例えば水、水酸化ナトリウム水溶液、ジメチルホルムアミド(DMF)と水の混合溶液、メタノールと水の混合溶液等の中に存在させた状態にして(例えば、環状分子(F)の溶液に直鎖状分子(B)を添加して)、その溶液を撹拌することによって行うことができる。高分子架橋前駆体(C2)が得られたことは、白色沈殿または白濁を生じることや、溶液の粘度が上昇することによって判断することができる。撹拌方法については、高分子架橋前駆体(C1)の製造と同様である。
【0095】
上記のようにして高分子架橋前駆体(C2)を製造したら、環状分子(F)に包接された直鎖状分子(B)の重合性官能基を介して、当該直鎖状分子(B)と、高分子架橋体(E1)の製造で使用した温度応答性化合物(D)とを共重合し、高分子架橋体(E2)を得る。この高分子架橋体(E2)は、インターロック構造としてのロタキサン構造を含む。高分子架橋前駆体(C2)における直鎖状分子(B)と温度応答性化合物(D)との重合反応は、高分子架橋体(E1)の製造と同様にして行えばよい。また、温度応答性化合物(D)の配合量は、高分子架橋体(E1)の製造と同様である。
【0096】
上記のようにして得られる高分子架橋体(E2)は、温度応答性化合物(D)を構成単位として含むものである。
【0097】
直鎖状分子(B1)を使用した場合の高分子架橋体(E)は、具体的には、環状分子(F)の開口部に、側鎖末端にブロック基を有する第1の高分子の側鎖が串刺し状に貫通し、かつ、同一の環状分子(F)の開口部に、側鎖末端にブロック基を有する第2の高分子の側鎖が串刺し状に貫通し(同一の環状分子(F)がさらに第3の高分子、第4の高分子・・・第nの高分子等と同様な包接錯体を形成している場合も含む)、すなわち、同一の環状分子(F)の開口部に別個の高分子の側鎖が包接されてなる構造を有する。そして、第n(nは1、2を含む整数)の高分子の主鎖の少なくとも1箇所に、温度応答性化合物(D)またはその残基が含まれる。第nの高分子の主鎖は、温度応答性化合物(D)の重合体であってもよいし、温度応答性化合物(D)と直鎖状分子(B1)との共重合体であってもよいし、直鎖状分子(B1)の重合体であってもよい。なお、第nの高分子の側鎖は、直鎖状分子(B)由来である。
【0098】
また、直鎖状分子(B2)を使用した場合の高分子架橋体(E)は、具体的には、環状分子(F)の開口部に、第1の高分子と第2の高分子とを連結(架橋)する連結鎖が串刺し状に貫通し、かつ、同一の環状分子(F)の開口部に、第3の高分子と第4の高分子とを連結(架橋)する連結鎖が串刺し状に貫通し(同一の環状分子(F)がさらに第5の高分子および第6の高分子、第7の高分子および第8の高分子、・・・第nの高分子および第n+1の高分子等と同様な包接錯体を形成している場合も含む)、すなわち、同一の環状分子(F)の開口部に別個の高分子ペアの連結鎖が包接されてなる構造(ロタキサン構造)を有する。これにより、第1の高分子および第2の高分子のペアと、第3の高分子および第4の高分子のペアとは、同一の環状分子(F)を介して可動性をもって機械的に結合された構造(インターロック構造)を形成する。環状分子(F)を貫通する連結鎖は、直鎖状分子(B2)由来である。そして、第n(nは1、2を含む整数)の高分子の主鎖の少なくとも1箇所に、温度応答性化合物(D)またはその残基が含まれる。第nの高分子の主鎖は、温度応答性化合物(D)の重合体であってもよいし、温度応答性化合物(D)と直鎖状分子(B2)との共重合体であってもよいし、直鎖状分子(B2)の重合体であってもよい。なお、第nの高分子と第n+1の高分子との連結鎖は、直鎖状分子(B)由来である。
【0099】
以上の方法によれば、直鎖状分子(B)と環状分子(F)とを混合攪拌するだけで、簡便に高分子架橋前駆体(C2)を製造することができ、さらに得られた高分子架橋前駆体(C2)の直鎖状分子(B)と温度応答性化合物(D)とを共重合することで、インターロック構造を有するロタキサン構造を含む高分子架橋体(E2)を簡便に製造することができる。
【0100】
得られた高分子架橋体(E2)においては、環状分子(F)が高分子の側鎖または連結鎖上を移動し得るため柔軟性に優れ、特に、複数の環状分子(F)同士は、化学結合を介して互いに連結されているわけではないので、より柔軟性に優れる。かかる高分子架橋体(E2)はコンフォメーション変化に特に秀でるため、当該高分子架橋体(E2)に含まれる温度応答性化合物(D)は、非常に優れた温度応答性を示すものとなる。得られた高分子架橋体(E2)に水等を含ませた温度応答性ゲルからなる温度応答性層3は、温度変化に応じて全光線透過率が大きく変化する。
【0101】
特に、温度応答性化合物(D)としてN−イソプロピル(メタ)アクリルアミドを使用した場合に得られた高分子架橋体(E2)を含有する温度応答性ゲルは、加熱により透明または半透明から白色に顕著に変化する。また、環状分子(F)は、複数の環状分子同士が化学結合を介して互いに連結されていないことで、ポリマー(A)を用いた場合に比べ、直鎖状分子(B)、温度応答性化合物(D)およびそれらの重合体に対する相溶性に優れる。そのため、本実施形態に係る高分子架橋体(E2)は、透明時(相転移前の温度安定領域)における全光線透過率が高いという特徴を有する。
【0102】
本実施形態に係る調光パネル1Aは、例えば、温度応答性層3をゲルフィルムとして製造し、当該ゲルフィルムを2枚のガラス板2,2でサンドイッチして、フレーム等によってそれらを固定することにより製造することができる。具体的には、調光パネル1Aは、例えば、以下の工程を経ることにより製造することができる。
【0103】
(工程1)前述した高分子架橋前駆体(C1)または(C2)と温度応答性成分(D)とを混合し、鋳型に流し込むか、あるいはロール・トゥ・ロール方式で工程シート上に塗布する。
(工程2)その後、加熱または紫外線照射等によって、上記高分子架橋前駆体(C1)または(C2)と温度応答性成分(D)とを共重合させる。これにより、フィルム状の高分子架橋体(E1)または(E2)を形成する。
(工程3)鋳型によりゲルフィルムを得た場合は、鋳型より取り出し、ガラス板2上に積層する。なお、鋳型自体を2枚のガラス板2,2により構成し、得られるゲルフィルムをそのまま温度応答性層3としてもよい。一方、ロール・トゥ・ロール方式でゲルフィルムを得た場合は、ゲルフィルムの露出面をガラス板2に接するように積層し、工程シートを除去する。
(工程4)所望により当該フィルム状の高分子架橋体(E1)または(E2)からなるゲルフィルムの含水量を調整することにより、温度応答性層3を得ることができる。なお、上記含水量の調整が特に必要でない場合は、工程2で得られる高分子架橋体が、そのまま温度応答性層3となる。
(工程5)最後に温度応答性層3の露出面側にガラス板2を積層することにより、調光パネル1Aを製造する。
【0104】
また、本実施形態に係る調光パネル1Aは、例えば、前述した高分子架橋前駆体(C1)または(C2)と温度応答性成分(D)とを混合し、一方のガラス板2上に塗布して、加熱または紫外線照射等によって共重合させることにより層状の高分子架橋体(E1)または(E2)を形成し、当該高分子架橋体(E1)または(E2)に所定量の水分を含ませ、得られた温度応答性ゲルからなる温度応答性層3に他方のガラス板2を積層することによっても製造することができる。
【0105】
本実施形態に係る調光パネル1Aにおける温度応答性層3を昇温させて光線透過率を変化させるには、例えば、輻射熱を当てたり、熱風を吹き付けたり、調光パネル1Aのフレーム等に設けた所望の発熱体(ヒータ)を発熱させたり、太陽光により温度上昇させたりすればよい。
【0106】
なお、調光パネル1Aの光線透過率を自在にコントロールする観点からは、上記発熱体と併せて冷却体を設けることも好ましい。冷却体としては、例えばペルチェ素子等が挙げられる。
【0107】
ここで、調光パネル1Aの光線透過率は、A光源によるY値で評価することができる。温度応答性3が相転移する前の安定温度領域(好ましくは20℃)における調光パネルのY値は、通常50〜100%、好ましくは60〜99%、特に好ましくは70〜99%である。一方、温度応答性3が相転移した後の安定温度領域(好ましくは50℃)における調光パネル1AのY値は、通常0〜45%、好ましくは0〜35%、特に好ましくは0〜25%である。
【0108】
本実施形態に係る調光パネル1Aは、温度応答性層3にロタキサン構造を含む温度応答性ゲルを使用することで、溶液状の温度応答物質や高価な液晶化合物を使用する必要がなく、低コストで簡便に製造することができるとともに、光線透過率の変化において優れた温度応答性を有する。また、温度応答性層3を構成する温度応答性ゲルは調光パネル1Aから漏れ出しにくいため、本実施形態に係る調光パネル1Aは、安全性が高い。
【0109】
〔第2の実施形態〕
図2に示すように、本発明の第2の実施形態に係る調光パネル1Bは、上から順に、ガラス板2と、温度応答性層3と、発熱ガラス2Hとを積層して構成される。発熱ガラス2Hは、2枚のガラス板2,2と、それらに挟持された透明導電膜21とから構成される。
【0110】
本実施形態に係る調光パネル1Bにおけるガラス板2および温度応答性層3は、第1の実施形態に係る調光パネル1Aのガラス板2および温度応答性層3と同様である。
【0111】
本実施形態における透明導電膜21は、通電により発熱し、温度応答性層3を加熱することができる膜である(本発明の発熱体に該当)。温度応答性層3は、透明導電膜21の発熱により昇温して、全光線透過率が変化する。
【0112】
透明導電膜21に用いられる材料としては、透明であり、かつ上記のように温度応答性層3の光線透過率を変化させ得るように発熱するものであれば、特に制限されない。かかる材料としては、例えば、酸化錫、酸化インジウム、酸化カドミウム、酸化亜鉛、二酸化亜鉛等の酸化物、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛ドープ酸化インジウム、フッ素ドープ酸化インジウム、アンチモンドープ酸化錫、フッ素ドープ酸化錫(FTO)、アルミニウムドープ酸化亜鉛、錫ドープ酸化インジウム等の複合酸化物、カルコゲナイド、六ホウ化ランタン、窒化チタン、炭化チタン等の非酸化化合物などが挙げられる。これらの中でも、錫ドープ酸化インジウム(ITO)、酸化亜鉛、酸化亜鉛ドープ酸化インジウムおよびフッ素ドープ酸化錫(FTO)が好ましく、特に錫ドープ酸化インジウム(ITO)が好ましい。
【0113】
透明導電膜21の厚さは、通常1nm〜50μmであり、好ましくは5nm〜10μmであり、特に好ましくは10nm〜5μmである。
【0114】
透明導電膜21は、例えば、真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法等の物理的蒸着法、熱CVD(Chemical Vapor Deposition)法、プラズマCVD法、光CVD法等の化学的気相成長法、あるいはバインダー等に分散した導電ペーストを用いた印刷や塗布によって、ガラス板2上に直接形成することができる。
【0115】
その後、ガラス板2上に積層された透明導電膜21の露出面側を別のガラス板2と貼り合せることにより、透明導電膜21が2枚のガラス板2,2に挟持された発熱ガラス2Hを得ることができる。なお、透明導電膜21の露出面側とガラス板2との貼り合せは、従来公知の接着剤を使用することにより行うこともできるし、接着剤等は使用せずに、単に積層して端部を固定具等で固定することにより行うこともできる。なお、発熱ガラス2Hは市販品を使用することができる。
【0116】
調光パネル1Bは、第1の実施形態に係る調光パネル1Aにおける一方のガラス板2を発熱ガラス2Hとする以外、第1の実施形態に係る調光パネル1Aと同様にして製造することができる。なお、透明導電膜21の平面方向の一端および他端には、それぞれ電極が設けられており、透明導電膜21はそれらの電極を通じて通電される。
【0117】
本実施形態に係る調光パネル1Bによれば、透明導電膜21の通電により、温度応答性層3にて容易に全光線透過率を変化させることができる。なお、調光パネル1Bの光線透過率は、第1の実施形態と同様にA光源によるY値により評価することができる。温度応答性層3の相転移に伴う調光パネル1Bの光線透過率の好ましい範囲も、第1の実施形態の場合と同様である。
【0118】
〔第3の実施形態〕
図3に示すように、本発明の第3の実施形態に係る調光パネル1Cは、2枚の樹脂フィルム4,4と、それら2枚の樹脂フィルム4,4に挟持された温度応答性層3と、一方(図3では下側)の樹脂フィルム4に積層された粘着剤層5と、粘着剤層5に積層されたガラス板2とから構成される。
【0119】
本実施形態に係る調光パネル1Cにおけるガラス板2および温度応答性層3は、第1の実施形態に係る調光パネル1Aのガラス板2および温度応答性層3と同様である。
【0120】
本実施形態における樹脂フィルム4は、温度応答性層3を保持することができ、所定の透明性および強度を有するものであれば特に限定されるものではなく、公知の材料から適宜選択すればよい。樹脂フィルム4としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリイミド、ポリ(メタ)アクリル酸エステル、ポリブテン、ポリブタジエン、ポリメチルペンテン、アクリルウレタン、エチレン酢酸ビニル共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン(メタ)アクリル酸エステル共重合体、ABS樹脂、アイオノマー樹脂などの樹脂からなるフィルム、またはそれらの積層フィルムなどを使用することができる。樹脂フィルム4は、延伸フィルムであってもよいし、無延伸フィルムであってもよい。また、樹脂フィルム4は、紫外線吸収剤等の各種添加剤を含んだものであってもよい。
【0121】
樹脂フィルム4の厚さは、上記の目的を達することができれば特に限定されることはなく、通常は5〜1000μmであり、好ましくは10〜500μmであり、特に好ましくは20〜300μmである。
【0122】
粘着剤層5は、樹脂フィルム4とガラス板2とを感圧性をもって接着する層であり、所定の透明性および粘着力を有する粘着剤からなれば特に限定されるものではなく、公知の材料から適宜選択すればよい。
【0123】
粘着剤層5を構成する粘着剤としては、例えば、アクリル系、ポリエステル系、ポリウレタン系、ゴム系、シリコーン系等のいずれであってもよい。また、当該粘着剤は、エマルション型、溶剤型または無溶剤型のいずれでもよく、架橋タイプまたは非架橋タイプのいずれであってもよい。なお、この粘着剤には、所望により帯電防止剤、紫外線吸収剤、着色剤、赤外線吸収剤などの各種添加剤を配合することができる。
【0124】
粘着剤層5の厚さは、上記の目的を達することができれば特に限定されることはなく、通常は1〜300μmであり、好ましくは5〜100μmであり、特に好ましくは10〜50μmである。
【0125】
調光パネル1Cの製造方法としては、2枚の樹脂フィルム4,4とそれらに挟持された温度応答性層3とからなる積層体を製造し、当該積層体とガラス板2とを粘着剤層5を介して貼合することが好ましいが、これに限定されるものではない。2枚の樹脂フィルム4,4とそれらに挟持された温度応答性層3は、ガラス板2を樹脂フィルム4に変更する以外、第1の実施形態に係る調光パネル1Aと同様にして製造することができる。
【0126】
粘着剤層5は、粘着剤の塗布液を、上記積層体における一方の樹脂フィルム4の露出面に塗布することにより形成してもよいし、ガラス板2に塗布することにより形成してもよいし、別の剥離シートに塗布してから上記樹脂フィルム4の露出面またはガラス板2に転写してもよい。
【0127】
本実施形態に係る調光パネル1Cにおける温度応答性層3を昇温させて光線透過率を変化させる方法は、第1の実施形態に係る調光パネル1Aと同様である。また、調光パネル1Cの光線透過率は、第1の実施形態と同様にA光源によるY値により評価することができる。温度応答性層3の相転移に伴う調光パネル1Cの光線透過率の好ましい範囲も、第1の実施形態の場合と同様である。
【0128】
本実施形態に係る調光パネル1Cにおいては、一般的に質量の大きいガラス板2が1枚で足りるため、第1の実施形態に係る調光パネル1Aと比較して軽量化を図ることができる。
【0129】
〔第4の実施形態〕
図4に示すように、本発明の第4の実施形態に係る調光パネル1Dは、2枚の樹脂フィルム4,4と、それら2枚の樹脂フィルム4,4に挟持された温度応答性層3と、一方(図4では下側)の樹脂フィルム4に積層された粘着剤層5と、粘着剤層5に積層された発熱ガラス2Hとから構成される。なお、発熱ガラス2Hは、2枚のガラス板2,2と、それらに挟持された透明導電膜21とからなり、一方のガラス板2(図4では上側)が粘着剤層5と接している。
【0130】
本実施形態に係る調光パネル1Dにおける温度応答性層3は、第1の実施形態に係る調光パネル1Aの温度応答性層3と同様であり、本実施形態に係る調光パネル1Dにおける発熱ガラス2Hは、第2の実施形態に係る調光パネル1Bの発熱ガラス2Hと同様であり、本実施形態に係る調光パネル1Dにおける樹脂フィルム4および粘着剤層5は、第3の実施形態に係る調光パネル1Cの樹脂フィルム4および粘着剤層5と同様である。
【0131】
調光パネル1Dは、第3の実施形態に係る調光パネル1Cにおけるガラス板2を発熱ガラス2Hとする以外、第3の実施形態に係る調光パネル1Cと同様にして製造することができる。なお、透明導電膜21の一端および他端には、それぞれ電極が設けられており、透明導電膜21はそれらの電極を通じて通電される。
【0132】
本実施形態に係る調光パネル1Dによれば、透明導電膜21の通電により、温度応答性層3にて容易に光線透過率を変化させることができる。なお、調光パネル1Dの光線透過率は、第1の実施形態と同様にA光源によるY値により評価することができる。温度応答性層3の相転移に伴う調光パネル1Dの光線透過率の好ましい範囲も、第1の実施形態の場合と同様である。
【0133】
本実施形態に係る調光パネル1Dにおいては、一般的に質量の大きいガラス板2が2枚で足りるため、第2の実施形態に係る調光パネル1Bと比較して軽量化を図ることができる。
【0134】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【0135】
例えば、調光パネル1Bにおける真中のガラス板2は省略されてもよい。また、透明導電膜21の替わりに電熱線が用いられてもよい。
【実施例】
【0136】
以下、実施例等により本発明をさらに具体的に説明するが、本発明の範囲はこれらの実施例等に限定されるものではない。
【0137】
〔製造例1〕(温度応答性ゲルフィルム(1)の製造)
(a)ポリマー(A)の合成
α−シクロデキストリン(ナカライテスク社製)5gをジメチルホルムアミド50mlに溶解させ、この溶液にトリレン2,4−ジイソシアネート末端ポリプロピレングリコール(Aldrich社製,Mn:1,000)3.4gと、錫触媒であるジブチル錫ジラウレート(東京化成社製)200mgとを加え、一晩室温で攪拌した。
【0138】
上記反応溶液をエーテルに注いで沈殿させ、回収した固体を乾燥させた後、水で洗浄して再び乾燥させ、環状分子としてα−シクロデキストリン、連結分子としてポリプロピレングリコールを有し、連結分子を介して環状分子が3〜5個繋がったポリマー(A)4.6gを得た。
【0139】
(b)直鎖状分子(B)の合成
ポリエチレングリコール(PEG1000;和光純薬工業社製,Mn:1000)5gを塩化メチレン50mlに溶解させ、この溶液に3,5−ジメチルフェニルイソシアネート(Aldrich社製)1.6gと、錫触媒であるジブチル錫ジラウレート(東京化成社製)200mgとを加え、一晩室温で攪拌した。
【0140】
次いで、上記溶液に2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製,カレンズMOI)1.7gと、錫触媒であるジブチル錫ジラウレート(東京化成社製)100mgとを加え、さらに一晩室温で攪拌した。
【0141】
得られた溶液を濃縮した後、−75℃に冷却したジエチルエーテル中に注ぐことにより沈澱させ、その沈澱物を回収した。これにより、一方の末端に3,5−ジメチルフェニル基からなるブロック基を有し、他方の末端にメタクリロイル基を有するポリエチレングリコール(MA−PEG−DPI;直鎖状分子(B))3.8gを得た。
【0142】
(c)高分子架橋前駆体(C1)の製造
ポリマー(A)300mgを0.4wt%の水酸化ナトリウム水溶液1mlに溶解させ、この溶液に直鎖状分子(B)112mgを加え、機械的に攪拌しながら超音波照射(35Hz)を300秒行ったところ、溶液が白濁し、粘性が上昇した。このような粘度上昇した白濁物は、ポリマー(A)の環状分子が直鎖状分子(B)を包接してなる高分子架橋前駆体(C1)であると考えられる。
【0143】
(d)高分子架橋体(E1)の製造
高分子架橋前駆体(C1)と考えられる上記白濁物に、温度応答性成分(D)としてN−イソプロピルアクリルアミド2.0gを加え、均一になるまで攪拌した。次いで、光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン及びベンゾフェノンの1:1共融混合物(チバスペシャリティーケミカルズ社製,IRUGACURE 500)40μlを加え、撹拌後、真空ポンプにて脱気を行った。その後、上記操作により得られた混合溶液を、ガラス板上のシリコーンゴム製型(厚さ1mm)の内側に流し込み、空気が入らない様にガラス板で蓋をし、紫外線を3分間照射(照射条件:照度3.0mW/cm,光量300mJ/cm)することにより、ゲル状のフィルムを得た。
【0144】
得られたゲル状のフィルムは、上記高分子架橋前駆体(C)における直鎖状分子(B)の重合性官能基(メタクリロイル基)を介して、直鎖状分子(B)と温度応答性成分(D)とが共重合してなる高分子架橋体(E1)(ポリマー(A)の環状分子に、末端にブロック基を有する高分子の側鎖が包接され、温度応答性成分(D)の重合体がその高分子の主鎖を構成してなる高分子架橋体(E1))であると考えられる。
【0145】
得られたゲル状のフィルムからなる高分子架橋体(E1)は、上記ガラス板の蓋を取り外すことにより取り出し、水、テトラヒドロフランおよびジメチルホルムアミドに順次浸漬して洗浄し、その後乾燥させて透明の高分子架橋体フィルム(厚さ:1.0mm,非延伸)を得た。
【0146】
さらに、高分子架橋体フィルムに対して、室温下(23℃)、水分含有量が100質量%になるように水分を含有させることにより、透明な温度応答性ゲルフィルム(1)を得た。
【0147】
〔製造例2〕(温度応答性ゲルフィルム(2)の製造)
(a)高分子架橋前駆体(C2)の製造
環状分子(F)としてのγ−シクロデキストリン(γ−CD;ナカライテスク社製)98.5mgを0.4wt%の水酸化ナトリウム水溶液1mlに溶解させ、この溶液に、製造例1(b)と同様にして製造した直鎖状分子(B)269mgを加え、機械的に攪拌しながら超音波照射(35Hz)を300秒行ったところ、溶液が白濁した。この白濁物は、環状分子(F)が2本以上の直鎖状分子(B)を包接してなる高分子架橋前駆体(C2)であると考えられる。
【0148】
(b)高分子架橋体(E2)の製造
高分子架橋前駆体(C2)と考えられる上記白濁物に、温度応答性化合物(D)としてN−イソプロピルアクリルアミド2.0gを加え、均一になるまで攪拌した。次いで、光重合開始剤である1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニル−ケトン及びベンゾフェノンの1:1共融混合物(チバスペシャリティーケミカルズ社製,IRUGACURE 500)40μlを加え、撹拌後、真空ポンプにて脱気を行った。その後、上記操作により得られた混合溶液を、ガラス板上のシリコーンゴム製型(厚さ1mm)の内側に流し込み、空気が入らない様にガラス板で蓋をし、紫外線を3分間照射(照射条件:照度3.0mW/cm,光量300mJ/cm)することにより、ゲル状のフィルムを得た。
【0149】
得られたゲル状のフィルムは、上記高分子架橋前駆体(C2)における直鎖状分子(B)の重合性官能基(メタクリロイル基)を介して、直鎖状分子(B)と温度応答性化合物(D)とが共重合してなる高分子架橋体(E2)(環状分子(F)に、末端にブロック基を有する高分子の側鎖が2本以上包接され、温度応答性化合物(D)の重合体がその高分子の主鎖を構成してなる高分子架橋体(E2))であると考えられる。
【0150】
得られたゲル状のフィルムからなる高分子架橋体(E2)は、上記ガラス板の蓋を取り外すことにより取り出し、水、テトラヒドロフランおよびジメチルホルムアミドに順次浸漬して洗浄し、その後乾燥させて透明の高分子架橋体フィルム(厚さ:1.0mm,非延伸)を得た。
【0151】
さらに、高分子架橋体フィルムに対して、室温下(23℃)、水分含有量が100質量%になるように水分を含有させることにより、透明な温度応答性ゲルフィルム(2)を得た。
【0152】
〔製造例3〕(粘着剤層の製造)
アクリル系共重合体(ブチルアクリレート:アクリル酸(質量比)=97:3,Mw=80万)100質量部に対し、イソシアネート系硬化剤(東洋インキ社製,BHS8515)2質量部を添加し、酢酸エチルにより固形分30質量%に調整することにより粘着剤組成物を得た。この粘着剤組成物を、ナイフコーターにより重剥離型剥離フィルム(リンテック社製,SP−PLR38T103−1)の剥離処理面上に乾燥後の膜厚が25μmとなるように塗工し、90℃で1分間乾燥させて粘着剤層を形成した。
【0153】
〔実施例1〕
2枚のソーダライムガラス(厚さ:1.1mm)の間に製造例1で製造した温度応答性ゲルフィルム(1)を挟み、調光パネル(1A)を製造した。
【0154】
〔実施例2〕
発熱ガラス(モノハ社製,warmglass)の上に製造例1で製造した温度応答性ゲルフィルム(1)を重ね、その上にソーダライムガラス(厚さ:1.1mm)を重ねることで、調光パネル(1B)を製造した。
【0155】
〔実施例3〕
温度応答性層として、製造例1で製造した温度応答性ゲルフィルム(1)の替わりに製造例2で製造した温度応答性ゲルフィルム(2)を使用する以外、実施例2と同様にして調光パネル(1B)を製造した。
【0156】
〔実施例4〕
2枚の易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,PET50A4300,厚さ50μm)の間に製造例1で製造した温度応答性ゲルフィルム(1)を挟み、製造例3で製造した粘着剤層を介して、一方の易接着ポリエチレンテレフタレートフィルムと発熱ガラス(モノハ社製,warmglass)とを貼り合わせ、調光パネル(1D)を製造した。
【0157】
〔実施例5〕
2枚の易接着ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製,PET50A4300,厚さ50μm)の間に製造例1で製造した温度応答性ゲルフィルム(1)を挟み、製造例3で製造した粘着剤層を介して、一方の易接着ポリエチレンテレフタレートフィルムとソーダライムガラス(厚さ:1.1mm)とを貼り合わせ、調光パネル(1C)を製造した。
【0158】
〔試験例1〕(全光線透過率の測定)
製造例で得られた温度応答性ゲルフィルムについて、JIS K7105に準拠し、積分球式光線透過率測定装置(日本電色工業社製,NDH−2000)を用いて、0〜50℃において5℃間隔でそれぞれの全光線透過率を測定した。なお、全光線透過率の測定は、設定温度への温度調整開始から5分以内に行った。
【0159】
その結果、温度応答性ゲルフィルム(1)については、0〜30℃まではほぼ安定した値を示し(相転移前の温度安定領域)、32℃から急激に全光線透過率が低下し(相転移開始温度)、38℃程度から再度、全光線透過率が安定した(相転移後の温度安定領域)。温度応答性ゲルフィルム(1)の20℃での全光線透過率は86%であり、50℃での全光線透過率は3%であった。
【0160】
温度応答性ゲルフィルム(2)については、0〜30℃まではほぼ安定した値を示し(相転移前の温度安定領域)、32℃から急激に全光線透過率が低下し(相転移開始温度)、38℃程度から再度、全光線透過率が安定した(相転移後の温度安定領域)。温度応答性ゲルフィルム(2)の20℃での全光線透過率は90%であり、50℃での全光線透過率は5%であった。
【0161】
〔試験例2〕(A光源によるY値の測定)
可視光線透過率・反射率計(スガ試験機社製,HA−TR)を用いて、実施例1〜5で得られた調光パネルについて、室温(20℃)および50℃昇温時におけるA光源のY値(%)をそれぞれ測定した。結果を表1に示す。
【0162】
【表1】

【0163】
表1より、実施例で得られた調光パネルは、20℃から50℃への昇温によって光線透過率が大きく変化(低下)することが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0164】
本発明に係る調光パネルは、例えば、透光および遮光をオン/オフで切り替え可能なブラインド、パーティション、プロジェクタースクリーン等として有用である。
【符号の説明】
【0165】
1A,1B,1C,1D…調光パネル
2…ガラス板
21…透明導電膜
2H…発熱ガラス
3…温度応答性層
4…樹脂フィルム
5…粘着剤層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも2枚の透明体と、
前記2枚の透明体の間に位置し、温度変化に応じて光線透過率が変化する温度応答性ゲルからなる温度応答性層とを備え、
温度応答性ゲルは、ロタキサン構造を含む
ことを特徴とする調光パネル。
【請求項2】
前記温度応答性層を昇温させることのできる発熱体をさらに備えたことを特徴とする請求項1に記載の調光パネル。
【請求項3】
前記透明体の少なくとも1枚は、ガラス板と透明導電膜とから形成された発熱ガラスであることを特徴とする請求項1または2に記載の調光パネル。
【請求項4】
前記温度応答性ゲルは、常温では光線透過率が高く、常温からの温度上昇により白濁化または着色して光線透過率が低くなることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の調光パネル。
【請求項5】
前記温度応答性ゲルは、水分を10質量%以上含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の調光パネル。
【請求項6】
前記温度応答性ゲルは、2個以上の環状部分を有するポリマー、ならびに一方の末端にブロック基を有し他方の末端に重合性官能基を有する直鎖状分子および/または両末端に重合性官能基を有する直鎖状分子を、混合して得られた高分子架橋前駆体の前記直鎖状分子の重合性官能基を介して、前記直鎖状分子と温度応答性化合物とを共重合させることにより得られる高分子架橋体を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の調光パネル。
【請求項7】
前記ポリマーの環状部分は、α−シクロデキストリン、β−シクロデキストリンおよびγ−シクロデキストリンからなる群から選ばれる少なくとも1種、または環状ポリエーテル、環状ポリエステル、環状ポリエーテルアミン、環状ポリアミン、シクロアミロースおよび環状構造を有する高分子のデキストリンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項6に記載の調光パネル。
【請求項8】
前記温度応答性ゲルは、一方の末端にブロック基を有し他方の末端に重合性官能基を有する直鎖状分子および/または両末端に重合性官能基を有する直鎖状分子と、前記直鎖状分子が2本以上貫通し得る開口部を有する環状分子とを混合して得られた高分子架橋前駆体の前記直鎖状分子の重合性官能基を介して、前記直鎖状分子と温度応答性化合物とを共重合させることにより得られる高分子架橋体を含有することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の調光パネル。
【請求項9】
前記環状分子は、γ−シクロデキストリン、環状ポリエーテル、環状ポリエステル、環状ポリエーテルアミン、環状ポリアミン、シクロアミロースおよび環状構造を有する高分子のデキストリンからなる群から選ばれる少なくとも1種であることを特徴とする請求項8に記載の調光パネル。
【請求項10】
前記温度応答性化合物が、N−イソプロピル(メタ)アクリルアミドであることを特徴とする請求項6〜9のいずれか一項に記載の調光パネル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−189746(P2012−189746A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−52474(P2011−52474)
【出願日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】