調光装置用同期検出回路及び調光装置
【課題】 同期検出回路の電源波形に含まれる切込み波形を除去し、三相4線式電源の各相の電圧線路と中性線路間の電圧波形の基本波に対して、位相差の少ない同期信号パルスを生成し得る調光装置用同期検出回路を提供する。
【解決手段】 同期検出回路1の電源入力端子8a,8b間に接続されたLCフィルタ回路aを備え、該LCフィルタ回路aにより交流電源7の電圧波形(V0)に含まれる歪波形を減衰させて同期信号パルスの位相のずれを補正し、LCフィルタ回路aの出力端子電圧(V1)に基づいて、サイリスタ素子の点弧位相角の基準位相点を設定する。
【解決手段】 同期検出回路1の電源入力端子8a,8b間に接続されたLCフィルタ回路aを備え、該LCフィルタ回路aにより交流電源7の電圧波形(V0)に含まれる歪波形を減衰させて同期信号パルスの位相のずれを補正し、LCフィルタ回路aの出力端子電圧(V1)に基づいて、サイリスタ素子の点弧位相角の基準位相点を設定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、劇場やテレビスタジオなどで使用される調光装置に関し、詳しくは、この種調光装置における、サイリスタ調光器の点弧位相角の基準となる同期信号を発生する同期検出回路の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
劇場やテレビスタジオなどの、数十台から数百台の照明器具が設置される演出空間には、中性線路を有する三相4線式の交流電源の各相に数十台から数百台のサイリスタ調光器が接続された中規模以上の調光装置が設置されている(例えば特許文献1など参照)。
【0003】
この種調光装置の一例を図10に基づき説明すれば、この調光装置は、三相4線式の交流電源7の各相に接続された複数のサイリスタ調光器3と、夫々のサイリスタ調光器3に位相角制御信号を送ってサイリスタ素子による点弧位相角を制御する制御回路2と、交流電源7の各相の電圧線路R,S,Tと中性線路N間の電圧のゼロクロス点を検出して制御回路2に送る各相毎の同期検出回路1’を備えている。
【0004】
制御回路2には、不図示の調光操作卓の操作により調光信号発生部(例えば、DMX出力制御回路)5から発せられる調光信号が供給され、この調光信号に基づき、制御回路2から所定のサイリスタ調光器3に点弧位相角制御信号が送られ、この点弧位相角制御信号によってサイリスタ素子が点弧位相角制御され、該サイリスタ調光器3の出力端子に接続された負荷(照明器具)4の明るさを任意に調整するように構成されている。
また、制御回路2は、同期検出回路1’が検出したゼロクロス点、すなわち、調光装置が受電した各相の電圧線路R,S,Tと中性線路N間の電圧のゼロクロス点が同期信号として供給され、このゼロクロス点を点弧位相角の基準として、位相角制御信号によるサイリスタ素子の点弧位相角を決定している。
【0005】
同期検出回路1’の一例は、図11に示すように、電源入力端子8a,8bに接続された固定抵抗9、可変抵抗10と、その出力側に接続されたフォトカプラcと、その二次側に接続されたプルアップ抵抗12と、その出力側に接続されたシュミット回路13などを備え、固定抵抗9及び可変抵抗10により、シュミット回路13で生成される同期信号パルス(V3)のパルス幅を所定幅に設定し、フォトカプラcによりその一次側に流れる交流信号と二次側に流れる直流信号を電気的に絶縁すると共に、プルアップル抵抗12などにより、電源入力端子8a,8b間の交流電源7からの電圧波形(V0)における出力を波形成形し、シュミット回路13により、その波形(V2)を前記同期信号パルス(V3)に変換して、制御回路2に送るようになっている。
【0006】
ところで、図10の構成の調光装置Aを劇場やテレビスタジオなどに設置した場合、交流電源7と調光装置Aの間に存在する線路インピーダンス6が無視できず、電源7と調光装置A間の線路が長い場合や大電力を同時に調光したときに、点弧位相制御による鋸歯状波電流が中性線路Nに流れることにより、図12のV0に示すように、中性線路Nのインピーダンスによる各相R,S,Tの電圧線路と中性線路間の電圧波形(電源電圧波形)に切込み波形(歪波形)が発生し、調光操作によって切込み波形がゼロクロス点付近を通過するなどした場合、ゼロクロス点が不安定となり、整流波形(V2)に乱れが生じるに伴い、同期信号パルス(V3)も同様に乱れる。この結果、サイリスタ素子の点弧位相角制御の基準が浮動し、誤点弧を生じて、照明器具4の明かりがちらつくなどの不具合を生じていた。
【0007】
このような不具合を解決するために、例えば、図13に示すように、抵抗14とコンデンサ16からなるフィルタ回路を備えた同期検出回路1”を用い、電圧波形(V0)における切込み波形の影響を除去することが考えられる。しかし、このようなフィルタ回路では除去効果が充分ではなく、同期信号パルス(V3)の位相がゼロクロス点より遅れるため、サイリスタ素子の誤点弧を解消し得るとは言い難い。同期信号パルス(V3)の位相の遅れを防ぐためにそのパルス幅を広げることも考えられるが、その場合、サイリスタ素子の位相制御範囲が狭くなる等の別の問題が生じる。
この対策として、交流電源7と調光装置A間の線路インピーダンス6を低減させるべく、電線やバスダクトの断面積を大きくすることが考えられるが、この場合、余分な費用が嵩むという問題があるので、実際には、電源7と調光装置A間の線路長さに制限を設けて対処している。
【0008】
【特許文献1】特開2005−235573号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したように、従来の調光装置においては、三相4線式電源の電路又は幹線電路の中性線路に調光操作に伴う鋸歯状波電流が流れることによって、電路又は幹線電路のインピーダンスに基因する切込み波形が発生し、同期検出回路によるゼロクロス点の同期信号が浮動して、調光制御が不安定になるという問題が生じる。
本発明はこのような従来事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、同期検出回路の電源波形に含まれる切込み波形(歪波形)を除去し、三相4線式電源の各相の電圧線路と中性線路間の電圧波形の基本波に対して、位相差の少ない同期信号パルスを生成することができる調光装置用同期検出回路と、この同期検出回路を備えた調光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の目的を達成するために、本発明に係る調光装置用同期検出回路は、三相4線式交流電源における各相の電圧線路と中性線路間の電圧から、サイリスタ調光器におけるサイリスタ素子の点弧位相角制御の基準となるゼロクロス点を検出する同期検出回路であって、
該同期検出回路の電源入力端子間に接続されたLCフィルタ回路を備え、該LCフィルタ回路により、前記交流電源の電圧波形に含まれる歪波形を減衰させると共に該電圧波形の位相のずれを補正し、該LCフィルタ回路の出力端子電圧に基づいて、前記サイリスタ素子の点弧位相角の基準位相点を設定するよう構成したことを特徴とする。
【0011】
より具体的には、同期検出回路の電源入力端子間に接続されたLCフィルタ回路と、該LCフィルタ回路に接続された電流制限回路と、該電流制限回路に接続されたフォトカプラと、該フォトカプラを通して同期信号パルスを生成するパルス成形回路を備え、
前記LCフィルタ回路により前記交流電源の電圧波形に含まれる歪波形を減衰させると共に該電圧波形の位相のずれを補正し、
前記電流制限回路により前記同期信号パルスのパルス幅を所定幅に設定し、
前記フォトカプラにより一次側に流れる交流信号と二次側に流れる直流信号を電気的に絶縁すると共に、該フォトカプラにより前記LCフィルタ回路の出力端子電圧の波形を成形し、
前記パルス成形回路により前記フォトカプラから出力された波形を同期信号パルスに変換して出力することで、
前記LCフィルタ回路の出力端子電圧に基づいて、前記サイリスタ素子の点弧位相角の基準位相点を設定するよう構成したことを特徴とする。
【0012】
前記LCフィルタ回路が、前記同期検出回路の電源端子間において、抵抗と直列にインダクタとコンデンサを並列接続した並列共振回路で構成され、該並列共振回路の共振周波数が、前記サイリスタ調光器における定格周波数の50%〜200%の範囲内に設定されていることが好ましい。
【0013】
前記並列共振回路の共振周波数が、前記交流電源の電源周波数の値又はその近似値に設定されていても良い。
【0014】
前記サイリスタ調光器の定格周波数が50Hzと60Hz兼用である場合は、前記並列共振回路の共振周波数が50Hzと60Hzの中間値に設定されていることが好ましい。
【0015】
前記フォトカプラやパルス成形回路は、小型トランスやその他の伝送素子を用いて構成することもできるが、この場合、回路構造が複雑になるなどの不具合がある。
これに対し、前記フォトカプラを採用したり、前記パルス成形回路をシュミット回路で構成することで、回路構成を簡単なものとすることができる。
【0016】
前記パルス成形回路を一般的なシュミット回路で構成した場合、その出力がON動作電圧とOFF動作電圧は動作の安定を図るために異なるため、同期信号パルスの位相が電源電圧に対して遅れる傾向にある。よって、この場合は、前記並列共振回路において、前記インダクタのインダクタンスLの値を理論値L0より10%程度(8〜12%の範囲内)大きくし、前記コンデンサの端子電圧の位相を、前記交流電源の電圧に対し進み位相にして、前記シュミット回路における出力ON動作電圧と出力OFF動作電圧の動作の遅れを補正するよう構成することが好ましい。
【0017】
本発明に係る調光装置は、三相4線式の交流電源の各相に接続された複数のサイリスタ調光器と、夫々のサイリスタ調光器に位相角制御信号を送ってサイリスタ素子による点弧位相角を制御する制御回路と、前記交流電源の各相の電圧線路と中性線路間の電圧のゼロクロス点を検出して前記制御回路に送る前記各相に各一毎の計三個の同期検出回路を備え、前記制御回路により、前記同期検出回路で検出されたゼロクロス点を前記サイリスタ素子による点弧位相角制御の基準として、対応する複数個のサイリスタ調光器に位相角制御信号を送り、該サイリスタ調光器に接続された照明器具の調光制御を行う調光装置であって、前記同期検出回路として、前述したいずれかの同期検出回路を用いたことを特徴とする調光装置である。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明に係る調光装置用同期検出回路は、サイリスタ素子の点弧位相角制御の基準となるゼロクロス点を検出するための同期検出回路であって、同期検出回路の電源入力端子間に接続されたLCフィルタ回路により、三相4線式交流電源の電圧波形に含まれる歪波形、すなわち、商用電源から調光装置に至る電圧線路において中性線路に流れる鋸歯状波電流に起因する切込み波形を同期検出回路で減衰すると共に、前記電源電圧との位相差が少ない同期信号を得ることができる。そして、このLCフィルタ回路の出力端子電圧に基づいて、サイリスタ素子の点弧位相角の基準位相点を決定するので、前記電源電圧のゼロクロス点の誤検出や検出遅れなどを防止して、サイリスタ素子が誤点弧する虞れのない、安定した調光制御を可能にすることができる。
【0019】
また、本発明に係る調光装置は、前記した同期検出回路を備えるので、電線やバスダクトの断面積を大きくするコスト高を余儀なくされる手段や、電源と調光装置間の距離を制限する余分な手間を要する手段をとることなく、数十台〜数百台のサイリスタ調光器による調光制御を安定して行うことができる。また、劇場やテレビスタジオなどに好適に用いることができる中小規模の調光装置としても提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態例を図面を参照しながら説明する。
本例の調光装置の概要は、同期検出回路以外の構成要素については、図10に示す従来の調光装置と同様であるため、調光装置については図10を援用して重複する説明及び図示を省略し、発明の要旨である同期検出回路について以下に詳述する。
【0021】
本例の同期検出回路1は、図1及び図2に示すように、三相4線式の交流電源7における各相の電圧線路R,S,Tと中性線路Nに接続される電源入力端子8a,8bと、これら電源入力端子8a,8b間に接続されたLCフィルタ回路aと、該LCフィルタ回路aに接続された電流制限回路bと、該電源制限回路bに接続されたフォトカプラcと、該フォトカプラcに接続されたパルス成形回路dからなり、該パルス成形回路dを調光装置Aの制御回路2に接続して、交流電源7の電圧波形に含まれる歪波形を減衰させると共に該電圧波形の位相のずれを補正したLCフィルタ回路aの出力端子電圧を同期信号パルスに変換して、制御回路2に出力するよう構成されている。
【0022】
LCフィルタ回路aは、電源入力端子8aの出力側に接続された抵抗17に、内部抵抗がRLでインダクタンスがLのインダクタ20と、静電容量がCのコンデンサ21を並列接続した並列共振回路で構成されている。
インダクタ20とコンデンサ21の値は、その共振周波数が、交流電源7の電源周波数に近くなるような値が選ばれる。例えば、サイリスタ調光器3の定格周波数が50Hzと60Hz兼用であれば、インダクタ20とコンデンサ21の並列共振回路aの共振周波数は略55Hzに設定される。
【0023】
電流制限回路bは、並列共振回路aの一次側に接続された抵抗17に接続された可変抵抗18、固定抵抗19で構成され、これら抵抗によって、フォトカプラcの一次側に流れる電流を調整することで、パルス成形回路d(シュミット回路13)によって生成される同期信号パルスのパルス幅を適正な値に設定し得るよう構成されている。
【0024】
フォトカプラcは、その一次側に流れる交流信号と二次側に流れる直流信号を電気的に絶縁している。
フォトカプラcの二次側にはプルアップ抵抗12を接続して、並列共振回路aの端子電圧の波形を成形するようになってる。
また、フォトカプラcの二次側には、パルス成形回路dを構成するシュミット回路13が接続されており、フォトカプラcから出力された波形を同期信号パルスに変換して、制御回路3に出力するようになっている。
【0025】
このように本例の同期検出回路1は、電源入力側に接続された抵抗17の出力側に、インダクタ20とコンデンサ21の並列共振回路aを接続し、この並列共振回路aの出力端子電圧のゼロクロス点を検出することを特徴としている。
すなわち、本例における同期検出回路1によれば、抵抗17の出力側にインダクタ20とコンデンサ21からなる並列共振回路aが接続されており、入力電源の電源周波数に対してこの並列共振回路aのインピーダンスは非常に大きく、従って、フォトカプラcに流れる電流の位相は、電源入力端子8a,8bに印加される電圧の基本波と同相であり、従来の同期検出回路のような位相の遅れを生じない。
一方、調光装置Aの中性線路Nに鋸歯状波電流が流れて生じる、電源入力端子の電圧の切込み波形(歪波形)は高レベルの高調波を含んでおり、この高調波は基本周波数の20次に達し、この切込み波形に対しては、インダクタ20のインピーダンスが大きくなり、従って、抵抗17とコンデンサ21のR−Cフィルタ回路として機能し、コンデンサ21のインピーダンスが小さくなるので、高次の切込み波形は大きく減衰させられる。
【0026】
図3(イ)に、交流電源7から電源入力端子8a,8bに印加される高調波を含んだ電源電圧波形(電源入力端子8a,8b間の電圧波形V0)を、(ロ)にその高調波成分を示し、図4(イ)に、本例の同期検出回路1における並列共振回路aの出力電圧波形(図2のP1における電圧波形V1)を、(ロ)にその高調波成分を、夫々示す。
このように、並列共振回路aの出力端子電圧(V1)は、調光装置Aにおける中性線路Nに誘起される切込み電圧の影響を受けず、よって、パルス成形回路dにより安定した同期信号パルス(V3)が得られ、この同期信号に基づいて制御回路2で作られるサイリスタ調光器3の点弧信号(位相角制御信号)は浮動せず、安定した調光制御が可能となる。
【0027】
以下、本例図2の同期検出回路1の具体例として、該同期検出回路1における回路定数を、抵抗(17)=4kΩ、インダクタ(20)=8H、内部抵抗=2.65kΩ、コンデンサ(21)=0.57μF、固定抵抗(19)=3kΩ、可変抵抗(18)=10kΩとし、並列共振回路aの共振周波数を略55Hzに設定した場合について説明する。
【0028】
上記回路定数を採用することにより、図5に示す動作波形図が確認できた。
図5中のV0は電源入力端子8a,8b間の電圧波形、V1は並列共振回路aの出力端子における電圧波形(図2中のP1で測定)、V2は前記電圧波形V1の出力波形を成形した波形(図2中のP2で測定)、V3はその波形(V2)をシュミット回路13で同期信号パルスに変換した同期信号パルス(図2中のP3で測定)で、切込み波形が減衰され安定した同期信号が得られることが分かる。
【0029】
尚、本例の同期検出回路1では一般のシュミット回路13を採用し、該シュミット回路13は、その出力がON動作電圧とOFF動作電圧が動作の安定を図るために異なる。そのため、図5で見られるように、同期信号パルス(V3)の位相は、電源電圧波形(V0)に対して遅れる傾向にある。
従って、回路設計において、前述した回路定数におけるインダクタ(20):のLの値を、前述した算出式で得られる理論値より10%程度大きく設計し、コンデンサ21の出力端子電圧(P1)の位相を電源電圧(V0)に対して若干進み位相にすることが好ましい。
具体例として、前述した回路定数において、インダクタ:Lの値を10%大きくした回路を構成した。この同期検出回路により、図6に示すとおり、電源電圧波形(V0)に対して遅れのない同期信号パルス(V3)の位相を示す動作波形図が確認できた。
【0030】
ところで、前述したように、調光装置Aの中性線路Nに鋸歯状波電流が流れて生じる電源入力端子の電圧の切込み波形(歪波形)には高レベルの高調波を含んでおり、この高調波は基本周波数の20次に達する場合がある。
よって、並列共振回路aの共振周波数は、実際の調光装置Aの設置現場毎に異なる線路インピーダンス6の大きさ、交流電源7と調光装置A間の線路の長さ、調光する照明器具(負荷4)の数などに応じて、サイリスタ調光器3における定格周波数の50%〜200%の範囲内において、適宜値に設定することが好ましい。
【0031】
本例の同期検出回路において、並列共振回路aの共振周波数の値を、サイリスタ調光器3における定格周波数の50%に設定した場合の動作波形図を図7に、100%に設定した場合の動作波形図を図8に、200%に設定した場合の動作波形図を図9に、夫々示す。
これらによれば、並列共振回路aの共振周波数の値を、サイリスタ調光器3における定格周波数の50%〜200%の範囲内に設定することで、安定した同期信号パルス(V3)を得られることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る同期検出回路とこれを含む調光装置の概要を示すブロック図。
【図2】本発明に係る同期検出回路の一例を示す回路構成図。
【図3】高調波を含んだ電源電圧波形(イ)とその高調波成分布(ロ)を示すグラフ。
【図4】図2に示す同期検出回路に図3の電源電圧波形を印加したときの、P1(V1)の電圧波形(イ)とその高調波成分布(ロ)を示すグラフ。
【図5】図2に示す同期検出回路における電源入力端子間、P1(V1)、P2(V2)、P3(V3)の夫々における電圧波形を示すグラフで、同期信号パルス(V3)が電源電圧(V0)の位相に対し遅れた状態を表す。
【図6】図2に示す同期検出回路における電源入力端子間、P1(V1)、P3(V3)夫々における電圧波形を示すグラフで、同期信号パルス(V3)の電源電圧(V0)位相に対する遅れが改善された状態を表す。
【図7】図2に示す同期検出回路で、並列共振回路の共振周波数の値をサイリスタ調光器における定格周波数の50%に設定した場合における電源入力端子間、P1(V1)、P3(V3)の夫々における電圧波形を示すグラフ。
【図8】図2に示す同期検出回路で、並列共振回路の共振周波数の値をサイリスタ調光器における定格周波数の100%に設定した場合における電源入力端子間、P1(V1)、P3(V3)の夫々における電圧波形を示すグラフ。
【図9】図2に示す同期検出回路で、並列共振回路の共振周波数の値をサイリスタ調光器における定格周波数の200%に設定した場合における電源入力端子間、P1(V1)、P3(V3)の夫々における電圧波形を示すグラフ。
【図10】調光装置の概要を示す回路構成図。
【図11】従来の同期検出回路を示す回路構成図。
【図12】図11の同期検出回路における電源入力端子間、P1(V1)、P2(V2)、P3(V3)の夫々における電圧波形を示すグラフ。
【図13】従来の同期検出回路の改良案を示す回路構成図。
【図14】図13の同期検出回路における電源入力端子間、P1(V1)、P2(V2)、P3(V3)の夫々における電圧波形を示すグラフ。
【符号の説明】
【0033】
1:同期検出回路
a:LCフィルタ回路
b:電流制限回路
c:フォトカプラ
d:パルス成形回路
2:制御回路
3:サイリスタ調光器
4:負荷(照明器具)
5:DXM出力制御回路(調光信号発生部)
6:線路インピーダンス
7:三相4線式の交流電源
8a,8b:入力電源端子
17,19:固定抵抗
18:可変抵抗
12:プルアップ抵抗
13:シュミット回路
20:インダクタ
21:コンデンサ
【技術分野】
【0001】
本発明は、劇場やテレビスタジオなどで使用される調光装置に関し、詳しくは、この種調光装置における、サイリスタ調光器の点弧位相角の基準となる同期信号を発生する同期検出回路の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
劇場やテレビスタジオなどの、数十台から数百台の照明器具が設置される演出空間には、中性線路を有する三相4線式の交流電源の各相に数十台から数百台のサイリスタ調光器が接続された中規模以上の調光装置が設置されている(例えば特許文献1など参照)。
【0003】
この種調光装置の一例を図10に基づき説明すれば、この調光装置は、三相4線式の交流電源7の各相に接続された複数のサイリスタ調光器3と、夫々のサイリスタ調光器3に位相角制御信号を送ってサイリスタ素子による点弧位相角を制御する制御回路2と、交流電源7の各相の電圧線路R,S,Tと中性線路N間の電圧のゼロクロス点を検出して制御回路2に送る各相毎の同期検出回路1’を備えている。
【0004】
制御回路2には、不図示の調光操作卓の操作により調光信号発生部(例えば、DMX出力制御回路)5から発せられる調光信号が供給され、この調光信号に基づき、制御回路2から所定のサイリスタ調光器3に点弧位相角制御信号が送られ、この点弧位相角制御信号によってサイリスタ素子が点弧位相角制御され、該サイリスタ調光器3の出力端子に接続された負荷(照明器具)4の明るさを任意に調整するように構成されている。
また、制御回路2は、同期検出回路1’が検出したゼロクロス点、すなわち、調光装置が受電した各相の電圧線路R,S,Tと中性線路N間の電圧のゼロクロス点が同期信号として供給され、このゼロクロス点を点弧位相角の基準として、位相角制御信号によるサイリスタ素子の点弧位相角を決定している。
【0005】
同期検出回路1’の一例は、図11に示すように、電源入力端子8a,8bに接続された固定抵抗9、可変抵抗10と、その出力側に接続されたフォトカプラcと、その二次側に接続されたプルアップ抵抗12と、その出力側に接続されたシュミット回路13などを備え、固定抵抗9及び可変抵抗10により、シュミット回路13で生成される同期信号パルス(V3)のパルス幅を所定幅に設定し、フォトカプラcによりその一次側に流れる交流信号と二次側に流れる直流信号を電気的に絶縁すると共に、プルアップル抵抗12などにより、電源入力端子8a,8b間の交流電源7からの電圧波形(V0)における出力を波形成形し、シュミット回路13により、その波形(V2)を前記同期信号パルス(V3)に変換して、制御回路2に送るようになっている。
【0006】
ところで、図10の構成の調光装置Aを劇場やテレビスタジオなどに設置した場合、交流電源7と調光装置Aの間に存在する線路インピーダンス6が無視できず、電源7と調光装置A間の線路が長い場合や大電力を同時に調光したときに、点弧位相制御による鋸歯状波電流が中性線路Nに流れることにより、図12のV0に示すように、中性線路Nのインピーダンスによる各相R,S,Tの電圧線路と中性線路間の電圧波形(電源電圧波形)に切込み波形(歪波形)が発生し、調光操作によって切込み波形がゼロクロス点付近を通過するなどした場合、ゼロクロス点が不安定となり、整流波形(V2)に乱れが生じるに伴い、同期信号パルス(V3)も同様に乱れる。この結果、サイリスタ素子の点弧位相角制御の基準が浮動し、誤点弧を生じて、照明器具4の明かりがちらつくなどの不具合を生じていた。
【0007】
このような不具合を解決するために、例えば、図13に示すように、抵抗14とコンデンサ16からなるフィルタ回路を備えた同期検出回路1”を用い、電圧波形(V0)における切込み波形の影響を除去することが考えられる。しかし、このようなフィルタ回路では除去効果が充分ではなく、同期信号パルス(V3)の位相がゼロクロス点より遅れるため、サイリスタ素子の誤点弧を解消し得るとは言い難い。同期信号パルス(V3)の位相の遅れを防ぐためにそのパルス幅を広げることも考えられるが、その場合、サイリスタ素子の位相制御範囲が狭くなる等の別の問題が生じる。
この対策として、交流電源7と調光装置A間の線路インピーダンス6を低減させるべく、電線やバスダクトの断面積を大きくすることが考えられるが、この場合、余分な費用が嵩むという問題があるので、実際には、電源7と調光装置A間の線路長さに制限を設けて対処している。
【0008】
【特許文献1】特開2005−235573号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記したように、従来の調光装置においては、三相4線式電源の電路又は幹線電路の中性線路に調光操作に伴う鋸歯状波電流が流れることによって、電路又は幹線電路のインピーダンスに基因する切込み波形が発生し、同期検出回路によるゼロクロス点の同期信号が浮動して、調光制御が不安定になるという問題が生じる。
本発明はこのような従来事情に鑑みてなされたもので、その目的とする処は、同期検出回路の電源波形に含まれる切込み波形(歪波形)を除去し、三相4線式電源の各相の電圧線路と中性線路間の電圧波形の基本波に対して、位相差の少ない同期信号パルスを生成することができる調光装置用同期検出回路と、この同期検出回路を備えた調光装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以上の目的を達成するために、本発明に係る調光装置用同期検出回路は、三相4線式交流電源における各相の電圧線路と中性線路間の電圧から、サイリスタ調光器におけるサイリスタ素子の点弧位相角制御の基準となるゼロクロス点を検出する同期検出回路であって、
該同期検出回路の電源入力端子間に接続されたLCフィルタ回路を備え、該LCフィルタ回路により、前記交流電源の電圧波形に含まれる歪波形を減衰させると共に該電圧波形の位相のずれを補正し、該LCフィルタ回路の出力端子電圧に基づいて、前記サイリスタ素子の点弧位相角の基準位相点を設定するよう構成したことを特徴とする。
【0011】
より具体的には、同期検出回路の電源入力端子間に接続されたLCフィルタ回路と、該LCフィルタ回路に接続された電流制限回路と、該電流制限回路に接続されたフォトカプラと、該フォトカプラを通して同期信号パルスを生成するパルス成形回路を備え、
前記LCフィルタ回路により前記交流電源の電圧波形に含まれる歪波形を減衰させると共に該電圧波形の位相のずれを補正し、
前記電流制限回路により前記同期信号パルスのパルス幅を所定幅に設定し、
前記フォトカプラにより一次側に流れる交流信号と二次側に流れる直流信号を電気的に絶縁すると共に、該フォトカプラにより前記LCフィルタ回路の出力端子電圧の波形を成形し、
前記パルス成形回路により前記フォトカプラから出力された波形を同期信号パルスに変換して出力することで、
前記LCフィルタ回路の出力端子電圧に基づいて、前記サイリスタ素子の点弧位相角の基準位相点を設定するよう構成したことを特徴とする。
【0012】
前記LCフィルタ回路が、前記同期検出回路の電源端子間において、抵抗と直列にインダクタとコンデンサを並列接続した並列共振回路で構成され、該並列共振回路の共振周波数が、前記サイリスタ調光器における定格周波数の50%〜200%の範囲内に設定されていることが好ましい。
【0013】
前記並列共振回路の共振周波数が、前記交流電源の電源周波数の値又はその近似値に設定されていても良い。
【0014】
前記サイリスタ調光器の定格周波数が50Hzと60Hz兼用である場合は、前記並列共振回路の共振周波数が50Hzと60Hzの中間値に設定されていることが好ましい。
【0015】
前記フォトカプラやパルス成形回路は、小型トランスやその他の伝送素子を用いて構成することもできるが、この場合、回路構造が複雑になるなどの不具合がある。
これに対し、前記フォトカプラを採用したり、前記パルス成形回路をシュミット回路で構成することで、回路構成を簡単なものとすることができる。
【0016】
前記パルス成形回路を一般的なシュミット回路で構成した場合、その出力がON動作電圧とOFF動作電圧は動作の安定を図るために異なるため、同期信号パルスの位相が電源電圧に対して遅れる傾向にある。よって、この場合は、前記並列共振回路において、前記インダクタのインダクタンスLの値を理論値L0より10%程度(8〜12%の範囲内)大きくし、前記コンデンサの端子電圧の位相を、前記交流電源の電圧に対し進み位相にして、前記シュミット回路における出力ON動作電圧と出力OFF動作電圧の動作の遅れを補正するよう構成することが好ましい。
【0017】
本発明に係る調光装置は、三相4線式の交流電源の各相に接続された複数のサイリスタ調光器と、夫々のサイリスタ調光器に位相角制御信号を送ってサイリスタ素子による点弧位相角を制御する制御回路と、前記交流電源の各相の電圧線路と中性線路間の電圧のゼロクロス点を検出して前記制御回路に送る前記各相に各一毎の計三個の同期検出回路を備え、前記制御回路により、前記同期検出回路で検出されたゼロクロス点を前記サイリスタ素子による点弧位相角制御の基準として、対応する複数個のサイリスタ調光器に位相角制御信号を送り、該サイリスタ調光器に接続された照明器具の調光制御を行う調光装置であって、前記同期検出回路として、前述したいずれかの同期検出回路を用いたことを特徴とする調光装置である。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように、本発明に係る調光装置用同期検出回路は、サイリスタ素子の点弧位相角制御の基準となるゼロクロス点を検出するための同期検出回路であって、同期検出回路の電源入力端子間に接続されたLCフィルタ回路により、三相4線式交流電源の電圧波形に含まれる歪波形、すなわち、商用電源から調光装置に至る電圧線路において中性線路に流れる鋸歯状波電流に起因する切込み波形を同期検出回路で減衰すると共に、前記電源電圧との位相差が少ない同期信号を得ることができる。そして、このLCフィルタ回路の出力端子電圧に基づいて、サイリスタ素子の点弧位相角の基準位相点を決定するので、前記電源電圧のゼロクロス点の誤検出や検出遅れなどを防止して、サイリスタ素子が誤点弧する虞れのない、安定した調光制御を可能にすることができる。
【0019】
また、本発明に係る調光装置は、前記した同期検出回路を備えるので、電線やバスダクトの断面積を大きくするコスト高を余儀なくされる手段や、電源と調光装置間の距離を制限する余分な手間を要する手段をとることなく、数十台〜数百台のサイリスタ調光器による調光制御を安定して行うことができる。また、劇場やテレビスタジオなどに好適に用いることができる中小規模の調光装置としても提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態例を図面を参照しながら説明する。
本例の調光装置の概要は、同期検出回路以外の構成要素については、図10に示す従来の調光装置と同様であるため、調光装置については図10を援用して重複する説明及び図示を省略し、発明の要旨である同期検出回路について以下に詳述する。
【0021】
本例の同期検出回路1は、図1及び図2に示すように、三相4線式の交流電源7における各相の電圧線路R,S,Tと中性線路Nに接続される電源入力端子8a,8bと、これら電源入力端子8a,8b間に接続されたLCフィルタ回路aと、該LCフィルタ回路aに接続された電流制限回路bと、該電源制限回路bに接続されたフォトカプラcと、該フォトカプラcに接続されたパルス成形回路dからなり、該パルス成形回路dを調光装置Aの制御回路2に接続して、交流電源7の電圧波形に含まれる歪波形を減衰させると共に該電圧波形の位相のずれを補正したLCフィルタ回路aの出力端子電圧を同期信号パルスに変換して、制御回路2に出力するよう構成されている。
【0022】
LCフィルタ回路aは、電源入力端子8aの出力側に接続された抵抗17に、内部抵抗がRLでインダクタンスがLのインダクタ20と、静電容量がCのコンデンサ21を並列接続した並列共振回路で構成されている。
インダクタ20とコンデンサ21の値は、その共振周波数が、交流電源7の電源周波数に近くなるような値が選ばれる。例えば、サイリスタ調光器3の定格周波数が50Hzと60Hz兼用であれば、インダクタ20とコンデンサ21の並列共振回路aの共振周波数は略55Hzに設定される。
【0023】
電流制限回路bは、並列共振回路aの一次側に接続された抵抗17に接続された可変抵抗18、固定抵抗19で構成され、これら抵抗によって、フォトカプラcの一次側に流れる電流を調整することで、パルス成形回路d(シュミット回路13)によって生成される同期信号パルスのパルス幅を適正な値に設定し得るよう構成されている。
【0024】
フォトカプラcは、その一次側に流れる交流信号と二次側に流れる直流信号を電気的に絶縁している。
フォトカプラcの二次側にはプルアップ抵抗12を接続して、並列共振回路aの端子電圧の波形を成形するようになってる。
また、フォトカプラcの二次側には、パルス成形回路dを構成するシュミット回路13が接続されており、フォトカプラcから出力された波形を同期信号パルスに変換して、制御回路3に出力するようになっている。
【0025】
このように本例の同期検出回路1は、電源入力側に接続された抵抗17の出力側に、インダクタ20とコンデンサ21の並列共振回路aを接続し、この並列共振回路aの出力端子電圧のゼロクロス点を検出することを特徴としている。
すなわち、本例における同期検出回路1によれば、抵抗17の出力側にインダクタ20とコンデンサ21からなる並列共振回路aが接続されており、入力電源の電源周波数に対してこの並列共振回路aのインピーダンスは非常に大きく、従って、フォトカプラcに流れる電流の位相は、電源入力端子8a,8bに印加される電圧の基本波と同相であり、従来の同期検出回路のような位相の遅れを生じない。
一方、調光装置Aの中性線路Nに鋸歯状波電流が流れて生じる、電源入力端子の電圧の切込み波形(歪波形)は高レベルの高調波を含んでおり、この高調波は基本周波数の20次に達し、この切込み波形に対しては、インダクタ20のインピーダンスが大きくなり、従って、抵抗17とコンデンサ21のR−Cフィルタ回路として機能し、コンデンサ21のインピーダンスが小さくなるので、高次の切込み波形は大きく減衰させられる。
【0026】
図3(イ)に、交流電源7から電源入力端子8a,8bに印加される高調波を含んだ電源電圧波形(電源入力端子8a,8b間の電圧波形V0)を、(ロ)にその高調波成分を示し、図4(イ)に、本例の同期検出回路1における並列共振回路aの出力電圧波形(図2のP1における電圧波形V1)を、(ロ)にその高調波成分を、夫々示す。
このように、並列共振回路aの出力端子電圧(V1)は、調光装置Aにおける中性線路Nに誘起される切込み電圧の影響を受けず、よって、パルス成形回路dにより安定した同期信号パルス(V3)が得られ、この同期信号に基づいて制御回路2で作られるサイリスタ調光器3の点弧信号(位相角制御信号)は浮動せず、安定した調光制御が可能となる。
【0027】
以下、本例図2の同期検出回路1の具体例として、該同期検出回路1における回路定数を、抵抗(17)=4kΩ、インダクタ(20)=8H、内部抵抗=2.65kΩ、コンデンサ(21)=0.57μF、固定抵抗(19)=3kΩ、可変抵抗(18)=10kΩとし、並列共振回路aの共振周波数を略55Hzに設定した場合について説明する。
【0028】
上記回路定数を採用することにより、図5に示す動作波形図が確認できた。
図5中のV0は電源入力端子8a,8b間の電圧波形、V1は並列共振回路aの出力端子における電圧波形(図2中のP1で測定)、V2は前記電圧波形V1の出力波形を成形した波形(図2中のP2で測定)、V3はその波形(V2)をシュミット回路13で同期信号パルスに変換した同期信号パルス(図2中のP3で測定)で、切込み波形が減衰され安定した同期信号が得られることが分かる。
【0029】
尚、本例の同期検出回路1では一般のシュミット回路13を採用し、該シュミット回路13は、その出力がON動作電圧とOFF動作電圧が動作の安定を図るために異なる。そのため、図5で見られるように、同期信号パルス(V3)の位相は、電源電圧波形(V0)に対して遅れる傾向にある。
従って、回路設計において、前述した回路定数におけるインダクタ(20):のLの値を、前述した算出式で得られる理論値より10%程度大きく設計し、コンデンサ21の出力端子電圧(P1)の位相を電源電圧(V0)に対して若干進み位相にすることが好ましい。
具体例として、前述した回路定数において、インダクタ:Lの値を10%大きくした回路を構成した。この同期検出回路により、図6に示すとおり、電源電圧波形(V0)に対して遅れのない同期信号パルス(V3)の位相を示す動作波形図が確認できた。
【0030】
ところで、前述したように、調光装置Aの中性線路Nに鋸歯状波電流が流れて生じる電源入力端子の電圧の切込み波形(歪波形)には高レベルの高調波を含んでおり、この高調波は基本周波数の20次に達する場合がある。
よって、並列共振回路aの共振周波数は、実際の調光装置Aの設置現場毎に異なる線路インピーダンス6の大きさ、交流電源7と調光装置A間の線路の長さ、調光する照明器具(負荷4)の数などに応じて、サイリスタ調光器3における定格周波数の50%〜200%の範囲内において、適宜値に設定することが好ましい。
【0031】
本例の同期検出回路において、並列共振回路aの共振周波数の値を、サイリスタ調光器3における定格周波数の50%に設定した場合の動作波形図を図7に、100%に設定した場合の動作波形図を図8に、200%に設定した場合の動作波形図を図9に、夫々示す。
これらによれば、並列共振回路aの共振周波数の値を、サイリスタ調光器3における定格周波数の50%〜200%の範囲内に設定することで、安定した同期信号パルス(V3)を得られることが確認できた。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明に係る同期検出回路とこれを含む調光装置の概要を示すブロック図。
【図2】本発明に係る同期検出回路の一例を示す回路構成図。
【図3】高調波を含んだ電源電圧波形(イ)とその高調波成分布(ロ)を示すグラフ。
【図4】図2に示す同期検出回路に図3の電源電圧波形を印加したときの、P1(V1)の電圧波形(イ)とその高調波成分布(ロ)を示すグラフ。
【図5】図2に示す同期検出回路における電源入力端子間、P1(V1)、P2(V2)、P3(V3)の夫々における電圧波形を示すグラフで、同期信号パルス(V3)が電源電圧(V0)の位相に対し遅れた状態を表す。
【図6】図2に示す同期検出回路における電源入力端子間、P1(V1)、P3(V3)夫々における電圧波形を示すグラフで、同期信号パルス(V3)の電源電圧(V0)位相に対する遅れが改善された状態を表す。
【図7】図2に示す同期検出回路で、並列共振回路の共振周波数の値をサイリスタ調光器における定格周波数の50%に設定した場合における電源入力端子間、P1(V1)、P3(V3)の夫々における電圧波形を示すグラフ。
【図8】図2に示す同期検出回路で、並列共振回路の共振周波数の値をサイリスタ調光器における定格周波数の100%に設定した場合における電源入力端子間、P1(V1)、P3(V3)の夫々における電圧波形を示すグラフ。
【図9】図2に示す同期検出回路で、並列共振回路の共振周波数の値をサイリスタ調光器における定格周波数の200%に設定した場合における電源入力端子間、P1(V1)、P3(V3)の夫々における電圧波形を示すグラフ。
【図10】調光装置の概要を示す回路構成図。
【図11】従来の同期検出回路を示す回路構成図。
【図12】図11の同期検出回路における電源入力端子間、P1(V1)、P2(V2)、P3(V3)の夫々における電圧波形を示すグラフ。
【図13】従来の同期検出回路の改良案を示す回路構成図。
【図14】図13の同期検出回路における電源入力端子間、P1(V1)、P2(V2)、P3(V3)の夫々における電圧波形を示すグラフ。
【符号の説明】
【0033】
1:同期検出回路
a:LCフィルタ回路
b:電流制限回路
c:フォトカプラ
d:パルス成形回路
2:制御回路
3:サイリスタ調光器
4:負荷(照明器具)
5:DXM出力制御回路(調光信号発生部)
6:線路インピーダンス
7:三相4線式の交流電源
8a,8b:入力電源端子
17,19:固定抵抗
18:可変抵抗
12:プルアップ抵抗
13:シュミット回路
20:インダクタ
21:コンデンサ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
三相4線式交流電源における各相の電圧線路と中性線路間の電圧から、サイリスタ調光器におけるサイリスタ素子の点弧位相角制御の基準となるゼロクロス点を検出する同期検出回路であって、
該同期検出回路の電源入力端子間に接続されたLCフィルタ回路を備え、該LCフィルタ回路により、前記交流電源の電圧波形に含まれる歪波形を減衰させると共に該電圧波形の位相のずれを補正し、該LCフィルタ回路の出力端子電圧に基づいて、前記サイリスタ素子の点弧位相角の基準位相点を決定するよう構成したことを特徴とする調光装置用同期検出回路。
【請求項2】
前記LCフィルタ回路に接続された電流制限回路と、該電流制限回路に接続されたフォトカプラを通して同期信号パルスを生成するパルス成形回路をさらに備え、
前記電流制限回路により前記同期信号パルスのパルス幅を所定幅に設定し、
前記フォトカプラにより一次側に流れる交流信号と二次側に流れる直流信号を電気的に絶縁すると共に、該フォトカプラにより前記LCフィルタ回路の出力端子電圧の波形を成形し、
前記パルス成形回路により前記フォトカプラから出力された波形を同期信号パルスに変換して出力することで、
前記LCフィルタ回路の出力端子電圧に基づいて、前記サイリスタ素子の点弧位相角の基準位相点を決定するよう構成したことを特徴とする請求項1記載の調光装置用同期検出回路。
【請求項3】
前記LCフィルタ回路が、前記同期検出回路の電源端子間において、抵抗と直列にインダクタとコンデンサを並列接続した並列共振回路で構成され、該並列共振回路の共振周波数が、前記サイリスタ調光器における定格周波数の50%〜200%の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の調光装置用同期検出回路。
【請求項4】
前記パルス成形回路をシュミット回路で構成したことを特徴とする請求項2又は3記載の調光装置用同期検出回路。
【請求項5】
前記並列共振回路において、前記インダクタのインダクタンスLの値を理論値L0より大きくして、前記シュミット回路における出力ON動作電圧と出力OFF動作電圧の動作の遅れを補正するよう構成したことを特徴とする請求項4記載の調光装置用同期検出回路。
【請求項6】
三相4線式の交流電源の各相に接続された複数のサイリスタ調光器と、夫々のサイリスタ調光器に位相角制御信号を送ってサイリスタ素子による点弧位相角を制御する制御回路と、前記交流電源の各相の電圧線路と中性線路間の電圧のゼロクロス点を検出して前記制御回路に送る前記各相に各一毎の計三個の同期検出回路を備え、前記制御回路により、前記同期検出回路で検出されたゼロクロス点を前記サイリスタ素子による点弧位相角制御の基準として、対応する複数個のサイリスタ調光器に位相角制御信号を送り、該サイリスタ調光器に接続された照明器具の調光制御を行う調光装置であって、
前記同期検出回路として、請求項1〜5のいずれか1項記載の同期検出回路を用いたことを特徴とする調光装置。
【請求項1】
三相4線式交流電源における各相の電圧線路と中性線路間の電圧から、サイリスタ調光器におけるサイリスタ素子の点弧位相角制御の基準となるゼロクロス点を検出する同期検出回路であって、
該同期検出回路の電源入力端子間に接続されたLCフィルタ回路を備え、該LCフィルタ回路により、前記交流電源の電圧波形に含まれる歪波形を減衰させると共に該電圧波形の位相のずれを補正し、該LCフィルタ回路の出力端子電圧に基づいて、前記サイリスタ素子の点弧位相角の基準位相点を決定するよう構成したことを特徴とする調光装置用同期検出回路。
【請求項2】
前記LCフィルタ回路に接続された電流制限回路と、該電流制限回路に接続されたフォトカプラを通して同期信号パルスを生成するパルス成形回路をさらに備え、
前記電流制限回路により前記同期信号パルスのパルス幅を所定幅に設定し、
前記フォトカプラにより一次側に流れる交流信号と二次側に流れる直流信号を電気的に絶縁すると共に、該フォトカプラにより前記LCフィルタ回路の出力端子電圧の波形を成形し、
前記パルス成形回路により前記フォトカプラから出力された波形を同期信号パルスに変換して出力することで、
前記LCフィルタ回路の出力端子電圧に基づいて、前記サイリスタ素子の点弧位相角の基準位相点を決定するよう構成したことを特徴とする請求項1記載の調光装置用同期検出回路。
【請求項3】
前記LCフィルタ回路が、前記同期検出回路の電源端子間において、抵抗と直列にインダクタとコンデンサを並列接続した並列共振回路で構成され、該並列共振回路の共振周波数が、前記サイリスタ調光器における定格周波数の50%〜200%の範囲内に設定されていることを特徴とする請求項1又は2記載の調光装置用同期検出回路。
【請求項4】
前記パルス成形回路をシュミット回路で構成したことを特徴とする請求項2又は3記載の調光装置用同期検出回路。
【請求項5】
前記並列共振回路において、前記インダクタのインダクタンスLの値を理論値L0より大きくして、前記シュミット回路における出力ON動作電圧と出力OFF動作電圧の動作の遅れを補正するよう構成したことを特徴とする請求項4記載の調光装置用同期検出回路。
【請求項6】
三相4線式の交流電源の各相に接続された複数のサイリスタ調光器と、夫々のサイリスタ調光器に位相角制御信号を送ってサイリスタ素子による点弧位相角を制御する制御回路と、前記交流電源の各相の電圧線路と中性線路間の電圧のゼロクロス点を検出して前記制御回路に送る前記各相に各一毎の計三個の同期検出回路を備え、前記制御回路により、前記同期検出回路で検出されたゼロクロス点を前記サイリスタ素子による点弧位相角制御の基準として、対応する複数個のサイリスタ調光器に位相角制御信号を送り、該サイリスタ調光器に接続された照明器具の調光制御を行う調光装置であって、
前記同期検出回路として、請求項1〜5のいずれか1項記載の同期検出回路を用いたことを特徴とする調光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2007−115430(P2007−115430A)
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−302927(P2005−302927)
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(390032573)丸茂電機株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年10月18日(2005.10.18)
【出願人】(390032573)丸茂電機株式会社 (17)
【Fターム(参考)】
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