説明

調味料及びその製造方法

【課題】調味対象の食品の上に戴置可能な物性を備えた調味料であって、野菜のシャキシャキとした食感を得ることが可能な調味料を提供すること。
【解決手段】乾燥野菜と、増粘剤とを含む調味料であって、乾燥野菜の分量が、給水前状態の全重量対比で6%〜19%であり、かつ調整後の具材部が全重量対比で60%〜98%であることを特徴とする。野菜本来のシャキシャキとした食感を維持した具材を大量に含んでおり、かつ必要以上の流動性を有していないため、調味対象の食材、例えば肉や野菜など、に戴置しても液が垂れることがない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼肉等の食品に用いる調味料であって、調味対象の食品の上に戴置しても液だれを起こすことなく、かつ野菜のシャキシャキとした食感を感じることが可能な調味料、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
本来、食品の味を補強ないし調整する目的で使用される調味料であるが、近年の消費者の本物志向の高まりに伴い、香味や食感についても本物感を求める傾向が顕著である。
そうした中、従来から固形分として野菜を含有してなる調味料は種々提案されていた。
【0003】
例えば特許文献1には、おろし野菜(但し、水分含量が15%以下の乾燥野菜を除く)と、乾燥野菜とを併用して含有した液体調味料が提案されている。また特許文献2には、全体の60重量%以上が粒径1〜6mm及びまたは40重量%以上が粒径2〜6mmの大きさのおろし野菜、ごま粒子、豆板醤等を加えた調味料の製造方法として、粒子の崩壊による食感低下を防止すべく所定の粘度及び撹拌状態を規定した製造方法が開示されている。
【0004】
確かにおろし野菜を含有させることは、野菜繊維の食感を高める上では有効であるといえる。しかし、おろし野菜を調味料に含有させる場合、需要者が求める本物感を実現するためには相当程度の水分を含有しなければならず、調味料の物性としては流動性が高いものに限定されてしまうため、食品の上に戴置可能な調味料として本物感を追及することができない。
【0005】
また、具材入り調味料の混合において、例えば特許文献3にみられるように溶解性の高い原料であるα化澱粉を予め所定のブリックスの調味液に混和し、その後具材を混和する製造方法が開示されているが、特定の具材そのものの均一拡散を実現する手段については言及がない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平11− 130
【特許文献2】特開平 8−317772
【特許文献3】特開2004−254633
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで本発明は、調味対象の食品の上に戴置可能な物性を備えた調味料であって、野菜のシャキシャキとした食感を得ることが可能な調味料を提供することを第一の課題とする。
【0008】
なお、その手法として相対的に多量の乾燥野菜を用いるが、その混合にあたっては均一に拡散させることが通常難しく液上部に浮かんでしまうことが課題として挙げられる他、乾燥野菜が水分を吸収し膨潤することによるハンドリングの困難化が挙げられる。そこで前記調味料の製造方法として、乾燥野菜を均一に拡散させることを容易とすることを第二の課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記第一の課題を解決すべく、本発明は以下の構成を有する。
(1)乾燥野菜と、増粘剤 とを含む調味料であって、乾燥野菜の分量が、給水前状態の全重量対比で6%〜19%であり、かつ調整後の具材部が全重量対比で60%〜98%であることを特徴とする調味料(請求項1)。
【0010】
この発明に係る調味料においては、乾燥野菜を全重量対比で6%ないし19%、より好ましくは12%ないし17%含んでいる。一般的に野菜の水分含有比率は60%ないし95%程度であるのに対し、通常乾燥野菜の水分含有比率は10%程度である。乾燥野菜は撹拌混合処理により他の原料の水分を吸水するが、もどっても50%程度である。調味料の製造工程においては加熱処理を行うが、乾燥野菜は加熱に強く、煮崩れを起こさない。そのため工業的な製造工程においてもシャキシャキとした食感が損なわれることがない。
【0011】
なお、乾燥野菜の配合比率が6%に満たない場合、十分なシャキシャキとした食感を得ることができず、逆に19%を超えた場合、製造の際のハンドリングに困難性が生じる。
【0012】
更に、増粘剤を配合していることにより、具材部の表面の付着性を高めることとなり、調味対象である肉や野菜の上に乗せても垂れない。具材入り調味料として所望の商品特性を得るためには、増粘剤の配合比率は0.5%〜1.0%とすることが望ましい(請求項5)。0.5%に満たない場合、乾燥野菜の付着性を向上させることができず、具材の食感を強く感じられる調味料としての所望の物性を得られない一方、1.0%を超えて配合した場合粘性が高まり過ぎ食感が却って低下してしまう。
【0013】
また、調整後の具材部の比率は、60%ないし98%、より好ましくは74%ないし90%であることが望ましい。60%に満たない場合、調味対象の食材の上に戴置するには柔らかすぎ、98%を超えた場合は固すぎ、いずれにしても所望の物性を得ることができない。
【0014】
なお、乾燥野菜の粒径としては、2mm〜10mm、より好ましくは4mm〜6mmである(請求項2、請求項3)。2mmよりも小さいと喫食時に十分なシャキシャキとした食感を奏することができない。粒径の上限として、10mmを超えると製造工程における適切な均一撹拌を行うにあたって支障が生じることがあったり、食感が悪くなる。また飽くまで調味料であり本調味料自体が喫食対象ではないことから著しく大きな粒径である場合、調味料の域を超えてしまうことから6mm程度までが好ましい。
【0015】
乾燥野菜の原料として、典型的にはタマネギであるが、これに限らず、例えばニンニク、ショウガ、大根、ニンジン、ラッキョウ、エシャロットなど所望の食感を奏しかつ味覚として許容される原料を適宜選択することができる(請求項4)。
【0016】
なお、本発明に係る調味料においては、Bx(ブリックス)を35.0〜80.0°の範囲となるよう、他の原料を適宜選択することが好ましい(請求項6)。これは、乾燥野菜には低粘度の液体に混合すると水分を吸収して膨潤し粘着性が高まるためダマになったり液上部に浮いてしまい均一拡散が困難な性質を有するところ、高いBx(ブリックス)とすることにより乾燥野菜の膨潤する速度が抑制されるため、かかる不都合が生じず均一拡散が容易になるためである。
【0017】
また、前記第二の課題を解決すべく、本発明は以下の構成を有する。
(2)乾燥野菜を配合した調味料の製造方法であって、糖分を含む水性原料の一部又は全部を予め撹拌混合しBx(ブリックス)を35.0〜80.0°とした混和物を生成し、その後当該混和物に乾燥野菜を混合させることを特徴とする、乾燥野菜を配合した調味料の製造方法(請求項7)。
【0018】
更には、以下の構成としても良い。
(3)乾燥野菜及び加工澱粉を配合した調味料の製造方法であって、糖分を含む水性原料の一部又は全部を予め撹拌混合しBx(ブリックス)を35.0〜80.0°とした混和物を生成し、その後当該混和物に乾燥野菜及び加工澱粉を混合させることを特徴とする、乾燥野菜及び加工澱粉を配合した調味料の製造方法(請求項8)。
【0019】
このように、予めBxの高い混和物を生成し、その後乾燥野菜を投入することにより、乾燥野菜の膨潤する速度が抑制され、ハンドリングの困難性が解消される。
【発明の効果】
【0020】
本発明に係る調味料によれば、野菜本来のシャキシャキとした食感を維持した具材を大量に含んでおり、かつ必要以上の流動性を有していないため、調味対象の食材、例えば肉や野菜などに戴置しても液が垂れることがない。そのため喫食者にとって調味料の液が衣服等にはねるといった心配をする必要もなく、また屋外でのバーベキューなどにおいても手が汚れることなく本物の野菜の食感を堪能することが可能となる。
【0021】
また、本発明の製造方法によることで、乾燥野菜の均一拡散を行うことの困難性が緩和され、製造効率が向上する。
【0022】
なお、本発明において「乾燥野菜」とは、水分を除く処理を行った野菜を意味し、自然乾燥・人工乾燥といった乾燥方法の如何を問わない。また含まれる野菜として、典型的にはタマネギであるが、これに限られず、調味に利用可能な野菜であって所望の食感が得られるものであれば適宜適用可能である。
【0023】
増粘剤としては、馬鈴薯澱粉、とうもろこし澱粉、小麦粉澱粉、米澱粉、ワキシー澱粉等の生澱粉、α化澱粉、老化澱粉等の加工澱粉、小麦粉、米粉、とうもろこし粉、その他の穀粉、キサンタンガム、ローカストビーンガム、タマリンドガム等のガム質、カラギーナン、アルギン酸、ペクチン、寒天等の各種多糖類ならびにゼラチンが採用し得る。
【0024】
「具材部」とは、乾燥野菜を含む、製品である調味料中に含まれる固形成分を意味する。配合により種々適用可能であるが、典型的にはごま、リンゴパルプ、唐辛子等が挙げられる。
【0025】
「液部」とは、製品である調味料中に含まれる具材部以外の配合物をいう。本発明に係る調味料において想定している液部の物性としては、加工澱粉その他水分を担持することが可能な成分の存在により、流動性が極めて低い物性を有している。「糖分」とは、水あめ、はちみつ、上白糖その他種類を問わず、混和物のBx(ブリックス)を高めるものを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下に実施例を示し、本発明を更に詳述する。なお下記実施例はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0027】
表1及び表2中に示す各配合例で示された原材料を撹拌混合し、95℃・5分間の条件で加熱を行い冷却して得た組成物につき11名の専門パネルにて官能評価を行った。官能評価は、調整した組成物の、見た目の具材感、喫食時の食感、調味対象食品(焼肉)に戴置した場合のたれ落ち度合、の各点について評価を行い、その結果を「良好」「不良」の2段階で評価した。表1及び表2は、その結果をまとめて示したものである。
【0028】
表1(配合例1ないし配合例5)は乾燥野菜の配合比率について変更を加えたものであり、具材量の比率がこれに応じて変わっている。なお検討段階において乾燥野菜の配合比率を25%とした配合例の試作を行ったが、具材のまとまりを保つことができずボロボロと零れ落ちが発生した。一方表2(配合例6ないし配合例10)は加工澱粉(増粘剤)の配合比率について変更を加えたものである。また配合例3と配合例8とは同一の配合比率である。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
この結果からも明らかなとおり、乾燥野菜の配合比率を6%以上とすることにより、所望の外観上の具材感は得ることができた。食感及びたれ落ちの観点からも同範囲であれば概ね満足が得られる結果が示されたが、より好ましくは食感に関しては上限が17%、更にたれ落ち防止を厳密に求める場合、12%を下回るものではやや劣る結果となり、配合例3ないし配合例4について、より優れた検査結果が得られた。
【0032】
一方、増粘剤としての加工澱粉の配合比率によっては、その多少によって商品特性を著しく左右するまでの差異を生じることはなかったが、具材感、食感、たれ落ちのいずれにおいてもより適切な特性を現出したのは配合比率0.5%〜1.0%であった。(配合例7及び配合例8)
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明により、乾燥野菜を含有することによりシャキシャキとした食感を有する調味料を得ることができる。これにより焼肉や野菜を喫食する場面における調味のバリエーションが広がり、家庭の食卓における焼肉料理の消費需要が増進される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
乾燥野菜及び増粘剤を含んでなる調味料であって、
乾燥野菜の分量が、吸水前状態の全重量対比で6%〜19%であり、
かつ調整後の具材部が全重量対比で60%〜98%であることを特徴とする調味料。
【請求項2】
前記乾燥野菜の粒径が吸水前状態で2〜10mm径であることを特徴とする、請求項1に記載の調味料。
【請求項3】
前記乾燥野菜の粒径が吸水前状態で4〜6mm径であることを特徴とする、請求項1に記載の調味料。
【請求項4】
前記乾燥野菜が、タマネギ、ニンニク、ショウガ、大根、ニンジン、ラッキョウ、エシャロットから選択された1又は複数の野菜を乾燥させたものであることを特徴とする、請求項1から請求項3のいずれかに記載の調味料。
【請求項5】
前記増粘剤の配合量が、全重量対比で0.5〜1.0%であることを特徴とする、請求項1から請求項4のいずれかに記載の調味料。
【請求項6】
Bx(ブリックス)が35.0〜80.0°であることを特徴とする、請求項1から請求項5のいずれかに記載の調味料。
【請求項7】
乾燥野菜を配合した調味料の製造方法であって、糖分を含む水性原料の一部又は全部を予め撹拌混合しBx(ブリックス)を35.0〜80.0°とした混和物を生成し、その後当該混和物に乾燥野菜を混合させることを特徴とする、乾燥野菜を配合した調味料の製造方法。
【請求項8】
乾燥野菜及び加工澱粉を配合した調味料の製造方法であって、糖分を含む水性原料の一部又は全部を予め撹拌混合しBx(ブリックス)を35.0〜80.0°とした混和物を生成し、その後当該混和物に乾燥野菜及び加工澱粉を混合させることを特徴とする、乾燥野菜及び加工澱粉を配合した調味料の製造方法。


【公開番号】特開2012−170353(P2012−170353A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33195(P2011−33195)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(301032517)エバラ食品工業株式会社 (3)
【Fターム(参考)】