説明

調和空気の吹出装置

【課題】吹出口がパネルの辺部または縁部の一部に沿ってのみ設けられている既存の空気調和機に対し、調和空気を室内全体に均等に行き渡らせることを促進することができる、調和空気の吹出装置の提供。
【解決手段】調和空気の吹出装置21は、調和空気を収容する収容室29を内部に有する箱体23と、箱体の上部に設けられ収容室に連通した少なくとも二つの受入口25,25と、箱体の底部または側部に設けられ、屈曲または湾曲したエリアで調和空気の吹出しが行われる吹出口手段27とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、空気調和機の吹出口に設けられて調和空気を所望の領域に導いて吹出させる、調和空気の吹出装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、天井埋込型空気調和機が開示されている。この装置は、天井の裏側に配置され主として熱交換器や送風機等を収容した空気調和機本体と、天井の表面に露出して配置された平面的にみて正方形の化粧パネルとを備えている。そして、この化粧パネルは、上記正方形の四辺の位置それぞれに、各辺に沿って延びる直線的な吹出口を有しており、それら吹出口により四方向から吹出される調和空気によって、対象の室内雰囲気を調整していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−27336号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した従来の空気調和機では、化粧パネルの四辺に当たる四方向だけから調和空気が吹き出すだけなので、調和空気が室内全体に均等に行き渡りにくい問題がある。また、かかる問題に対し、円環状に開口する吹出口を供えた空気調和機を新たに設置しなおすことも可能であるが、その場合、あまりにもコスト負担が大きく、現実的ではない。
【0005】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、吹出口がパネルの辺部または縁部の一部に沿ってのみ設けられている既存の空気調和機に対し、調和空気を室内全体に均等に行き渡らせることを促進することができる、調和空気の吹出装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した目的を達成するため、本発明の調和空気の吹出装置は、調和空気を収容する収容室を内部に有する箱体と、前記箱体の上部に設けられ前記収容室に連通した受入口と、前記箱体の底部または側部に設けられ、屈曲または湾曲したエリアで調和空気の吹出しが行われる吹出口手段とを備える。
【発明の効果】
【0007】
本発明の調和空気の吹出装置によれば、吹出口がパネルの辺部または縁部の一部に沿ってのみ設けられている既存の空気調和機に対し、調和空気を室内全体に均等に行き渡らせることを促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施の形態1の吹出装置を天井埋込型空気調和機に適用した状態を示す図である。
【図2】本実施の形態1に係る調和空気の吹出装置の全体を示す斜視図である。
【図3】(a)及び(b)は、調和空気の吹出装置の上面及び下面を示す図である。
【図4】本発明の実施の形態2に関する図1と同態様の図である。
【図5】本発明の実施の形態2に関する図2と同態様の図である。
【図6】本発明の実施の形態3に関する図3の(a)と同態様の図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明に係る調和空気の吹出装置の実施の形態について添付図面に基づいて説明する。なお、図中、同一符号は同一又は対応部分を示すものとする。
【0010】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態1の吹出装置を天井埋込型空気調和機に適用した状態を示し、(a)は横から見た状態を、(b)は下から見上げた状態を示す。天井埋込型空気調和機1は、空気調和機本体3と、化粧パネル5とを備えている。
【0011】
空気調和機本体3は、天井7の裏側に配置され主として熱交換器や送風機等を収容している。化粧パネル5は、天井7の表側に露出しており、平面的にみて正方形の盤状の部分である。化粧パネル5には、四つの吹出口9が設けられている。四つの吹出口9は、化粧パネル5の正方形の四辺の位置それぞれに部分的に、各辺に沿うようにして直線的に延びている。天井埋込型空気調和機1では、吹出口9は化粧パネル5の辺部に沿ってのみ設けられている。
【0012】
調和空気の吹出装置21は、上記化粧パネル5の下面であって、化粧パネル5の正方形のコーナー部に取り付けられる。なお、図1は、吹出装置が取り付けられた状態と、もともとの化粧パネルの構成との、双方を図示するように配慮し、吹出装置は一つだけ取り付けた態様を示しているが、実際には、四つ全てのコーナーに吹出装置が取り付けられて実施されることとなるであろう。
【0013】
次に、調和空気の吹出装置の詳細について説明する。図2は、本実施の形態1に係る調和空気の吹出装置の全体を示す斜視図である。図3の(a)及び(b)は、調和空気の吹出装置の上面及び下面を示す図である。
【0014】
調和空気の吹出装置21は、箱体23と、二つの受入口25,25と、吹出口手段27とを備える。箱体23は、その内部に、調和空気を収容する収容室29を有している。箱体23は、二つの先端部31,31を有する平面視L字状の形態を有しており、上面33、下面35、内側側面37、外側側面39、一対の端面41,41で構成されている。
【0015】
上面33及び下面35は、平面視L字状を有しており、相互に平行に配置されている。また、内側側面37、外側側面39、一対の端面41,41は、上面33及び下面35の間で、それらと直角に延びている。内側側面37及び外側側面39は、平面視L字状に延びており、それぞれ上面33及び下面35のL字の屈曲における内側及び外側に位置している。前述の収容室29は、これら上面33、下面35、内側側面37、外側側面39、一対の端面41,41によって画定されている。
【0016】
受入口25,25は、箱体23の上部、すなわち、上面33における対応する先端部31,31に形成されており、収容室29に連通している。
【0017】
また、吹出口手段27は、箱体23の底部すなわち下面35に形成されている。吹出口手段27は、屈曲または湾曲したエリアで収容室29内の調和空気の吹出しを行うことができるものであり、本実施の形態で具体的には、L字状に屈曲して延びる一つの吹出口43で構成されている。
【0018】
次に、上述した調和空気の吹出装置の作用について説明する。四つの調和空気の吹出装置21は、図1に例示されるように、化粧パネル5の正方形の対応するコーナー部に取り付けられる。各コーナー部では、受入口25,25の一方が、隣り合う一対の吹出口9の一方にあてがわれ、受入口25,25の他方が、隣り合う一対の吹出口9の他方にあてがわれる。天井埋込型空気調和機1が稼動し、吹出口9のそれぞれから放出された調和空気は、調和空気の吹出装置21で覆われていない部分では、そのまま室内に吹出されるが、調和空気の吹出装置21で覆われた部分では、まず、受入口25,25を介して吹出装置21内の収容室29に流れる。そして、収容室29内に流入した調和空気は、L字状に延びる吹出口43から室内へと吹出される。すなわち、各辺の中央部では、吹出口9から、二辺の間のコーナー部それぞれでは、吹出口43から調和空気が吹出され、天井埋込型空気調和機1の全体としてみれば、360度全周から調和空気が吹出されている態様と同様となり、調和空気を室内全体に均等に行き渡らせることを促すことができる。
【0019】
以上説明したように、本実施の形態の調和空気の吹出装置によれば、空気調和機を新たに設置しなおすのではなく、吹出口がパネルの辺部または縁部の一部に沿ってのみ設けられている既存の空気調和機を用いながら、調和空気を室内全体に均等に行き渡らせることを実現することができる。
【0020】
実施の形態2.
図4及び図5に基づいて、本実施の形態2に係る調和空気の吹出装置について説明する。図4及び図5はそれぞれ、本実施の形態2に関する図1及び図2と同態様の図である。なお、本実施の形態2は、以下に説明する部分を除いては、上記実施の形態1と同様であるものとする。
【0021】
本実施の形態の調和空気の吹出装置121は、箱体23の側部すなわち外側側面39に形成された吹出口手段127を備えている。吹出口手段127も、屈曲または湾曲したエリアで収容室29内の調和空気の吹出しを行うことができるものであり、本実施の形態2で具体的には、L字状に屈曲して開口する一つの吹出口143で構成されている。
【0022】
本実施の形態の吹出装置121によっても、化粧パネル5の各辺の中央部では、吹出口9から、二辺の間のコーナー部それぞれでは、吹出口143から調和空気が吹出され、天井埋込型空気調和機1の全体としてみれば、360度全周から調和空気が吹出されている態様と同様となり、調和空気を室内全体に均等に行き渡らせることを促すことができる。よって、吹出口がパネルの辺部または縁部の一部に沿ってのみ設けられている既存の空気調和機を用いながら、調和空気を室内全体に均等に行き渡らせることを実現することができる。
【0023】
実施の形態3.
図6に基づいて、本実施の形態3に係る調和空気の吹出装置について説明する。図6は、本実施の形態3に関する図3の(a)と同態様の図である。
【0024】
本実施の形態の調和空気の吹出装置221もまた、箱体23の上面33に一対の受入口25,25を有している。一対の受入口25,25は、上面33における対応する先端部31,31に形成され、収容室29に連通している。さらに、受入口25,25のそれぞれには、スライド式のシャッタ板245が設けられている。受入口25,25のそれぞれは、シャッタ板245の開閉量に応じて開口面積が変更されるようになっている。なお、図6では、説明の理解を助けるため、一対のシャッタ板245の開閉量(開口面積)をあえて異ならせて図示している。
【0025】
また、図示省略されているが、本実施の形態の調和空気の吹出装置221にも、屈曲または湾曲したエリアで収容室29内の調和空気の吹出しを行うことができる吹出口手段が設けられているが、その具体的態様は、実施の形態1の上記吹出口43でもよいし、実施の形態2の上記吹出口143でもよい。
【0026】
以上のように構成された本実施の形態3の吹出装置221によっても、化粧パネル5の各辺の中央部では、吹出口9から、二辺の間のコーナー部それぞれでは、吹出口43又は143から調和空気が吹出され、天井埋込型空気調和機1の全体としてみれば、360度全周から調和空気が吹出されている態様と同様となり、調和空気を室内全体に均等に行き渡らせることを促すことができる。よって、吹出口がパネルの辺部または縁部の一部に沿ってのみ設けられている既存の空気調和機を用いながら、調和空気を室内全体に均等に行き渡らせることを実現することができる。
【0027】
さらに加えて、本実施の形態3では、受入口25,25の調和空気流入量を調整することができるので、もともとある吹出口9における吹出装置221で覆われていない部分からの吹出風量と、新たに設けられた吹出装置221の吹出口43又は143からの吹出風量との関係を所望に調整することができる。これは、特に、当初から四辺と四コーナーとによる360度全周から吹出しが行える天井埋込型空気調和機においては、直線形の吹出口とコーナー形の吹出口とでは、風の偏り等により吹出し力の差が生じうるところ、本実施の形態であれば、受入口25,25の調和空気流入量を調整することで、直線形とコーナー形とを含む全周方向にわたって、できる限り均一な吹出しを実現することができる。しかも、かかる調整は、全周吹出しの実現に重要な吹出装置の吹出口の開口状態は変化させることなく実現できる利点もある。
【0028】
以上、好ましい実施の形態を参照して本発明の内容を具体的に説明したが、本発明の基本的技術思想及び教示に基づいて、当業者であれば、種々の改変態様を採り得ることは自明である。
【0029】
箱体は、L字状以外の形態で実施することもできる。
【0030】
受入口の数や位置は、化粧パネルの吹出口から調和空気を受け取ることができれば、特に限定されるものではない。
【0031】
吹出口手段は、一つの吹出口で構成されることには限定されず、屈曲または湾曲したエリアで調和空気の吹出しが行えればよく、よって、L字状または円弧状に屈曲または湾曲した態様で並べられた多数の吹出口で構成することもできる。また、湾曲の一例であるが、一つの吹出口が円弧状に形成されていてもよい。
【0032】
また、吹出口手段としての吹出口には、ルーバ等の風向変更・調整機構が設けられていてもよい。
【0033】
また、化粧パネルは、四角形には限定されるものではない。よって、例えば、三角形や五角形以上の多角形、あるいは、円形や楕円形等であってもよい。そのような多角形・円形等のパネルの辺部または縁部の一部に沿って当該辺部または縁部に部分的に吹出口が設けられている既存の空気調和機に対しも、本発明は提供でき、上述した有効な作用効果が得られる。
【符号の説明】
【0034】
21,121,221 調和空気の吹出装置、23 箱体、25 受入口、27,127 吹出口手段、29 収容室、31 先端部、43,143 吹出口、245 シャッタ板。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調和空気を収容する収容室を内部に有する箱体と、
前記箱体の上部に設けられ前記収容室に連通した受入口と、
前記箱体の底部または側部に設けられ、屈曲または湾曲したエリアで調和空気の吹出しが行われる吹出口手段と
を備えた調和空気の吹出装置。
【請求項2】
前記受入口は、少なくとも二つ設けられている請求項1の調和空気の吹出装置。
【請求項3】
前記箱体は二つの先端部を有する平面視L字状をなしており、
前記受入口は、前記二つの先端部のそれぞれに配置されており、
前記吹出口手段は、L字状に延びる一つの吹出口によって構成されている
請求項2の調和空気の吹出装置。
【請求項4】
前記受入口には、スライド式のシャッタ板が設けられており、該受入口は、前記シャッタ板の開閉に応じて開口面積が変更される、請求項1乃至3の何れか一項の調和空気の吹出装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−202669(P2012−202669A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70345(P2011−70345)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【出願人】(000236056)三菱電機ビルテクノサービス株式会社 (1,792)
【Fターム(参考)】