説明

調心輪付き転がり軸受、及びこれを用いた連続鋳造機用のロール装置

【課題】 調心輪と外輪との間における潤滑性を向上させて、調心機能の低下を抑制することができる調心輪付き転がり軸受、及びこれを用いた連続鋳造機用のロール装置を提供する。
【解決手段】 潤滑剤を、第1油溝に沿って調心輪4と外輪2との間の周方向に導き、且つ、各第2油溝に沿って調心輪4と外輪2との間の軸方向両端部に導くことによって、調心輪4と外輪2との間の周方向及び軸方向の全域に亘り潤滑剤を供給する。また、各第1油路11の孔の総断面積を、各第2油路12の孔の総断面積よりも大きくして、各第1油路11から供給される潤滑剤の量を各第2油路12に流れ込む潤滑剤の量よりも多くすることにより、第1油路11から第1油溝13に導かれた潤滑剤が、第2油溝14に流れ込み易くして、調心輪4と外輪2との間の軸方向両端まで行き渡り易くした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調心輪付き転がり軸受、及びこれを用いた連続鋳造機用のロール装置に関する。
【背景技術】
【0002】
連続鋳造機は、複数のロールを有するセグメントを多数配設することで、鋳片の搬送を行う。このセグメントを構成する複数のロールは、その両端に配設された転がり軸受によって回転自在に支持されている。このロールを支持する転がり軸受は、通常、当該ロールの軸方向の位置を固定する固定側には自動調心転がり軸受、及び当該ロールの軸方向の伸縮を許容する自由側には調心輪付き転がり軸受が用いられ、搬送される鋳片の熱及び重荷重によるロールの撓み及び伸縮を許容している。
【0003】
このうち、例えば、図5に示すように、調心輪付き転がり軸受50として、内輪51と、外輪52と、この内輪51と外輪52との間に配置されたころ53と、外輪52の外周面に揺動可能に嵌め合わされる内周面を有する調心輪54とを備えたものが用いられている。この調心輪付き転がり軸受50では、調心輪54に、その外周面と内周面とを貫通する第1油路55が形成され、外輪52には、その外周面に環状の第1油溝56が形成され、さらに、この第1油溝56と外輪52の内周面とを貫通する第2油路57とが形成されている。
【0004】
前記調心輪付き転がり軸受50においては、給油装置(図示せず)から第1油路55に供給される潤滑剤が、第1油溝56及び第2油路57に導かれる。そして、第1油溝56に導かれた潤滑剤が、調心輪54と外輪52との間に供給され、第2油路57に導かれた潤滑剤が、内輪51の軌道面、外輪52の軌道面、及びころ53の周面などの潤滑を必要とする部位に供給される。
また、他の調心輪付き転がり軸受として、調心輪と外輪との間を潤滑するために、調心輪の内周面及び外輪の外周面に油溜まりとなる多数のポケットを形成したものが提案されている(例えば特許文献1参照)。
この多数のポケットを有する調心輪付き転がり軸受では、各ポケットに固形状潤滑剤を充填して、この固形状潤滑剤から滲出する油で調心輪と外輪との間を潤滑することができる。
【0005】
【特許文献1】特開2006−214469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図5に示す上記従来の調心輪付き転がり軸受50では、第1油路55から第1油溝56に供給された潤滑剤が、第1油溝56に沿って外輪52の周方向のみに導かれるので、第1油溝56から軸方向に離れた外輪52の軸方向両端部に十分な潤滑剤を供給できず、調心輪54と外輪52との間において潤滑不良が生じるおそれがあった。
また、上記多数のポケットに固形状潤滑剤を充填した調心輪付き転がり軸受では、当該固形状潤滑剤が経年変化して劣化することにより、調心輪と外輪との間において潤滑不良が生じるおそれがあった。
【0007】
このように調心輪と外輪との間に潤滑不良が生じると、外輪がスムーズに揺動しなくなり、調心輪と外輪との間にフレッティング摩耗が生じるなどして、調心機能が低下することがあった。そして、この調心機能の低下によって、ロールの撓み及び伸縮の際に、ころと内輪及び外輪の各軌道面との間でエッジロードが発生したり、ころの端面と内輪及び外輪との間でかじりが発生したりすることから、調心輪付き転がり軸受の寿命を低下させるという問題があった。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、調心輪と外輪との間における潤滑性を向上させて、調心機能の低下を抑制することができる調心輪付き転がり軸受、及びこれを用いた連続鋳造機用のロール装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の調心輪付き転がり軸受は、外周に内輪軌道面を有する内輪と、内周に外輪軌道面を有し、外周面が球面の一部からなる外輪と、前記内輪軌道面と外輪軌道面との間に転動自在に配置された転動体と、前記外輪の外周面に揺動可能に嵌め合わされる球面の一部からなる内周面を有する調心輪とを備えた調心輪付き転がり軸受において、前記調心輪は、その外周面と内周面とを貫通する貫通孔からなり、外部から供給される潤滑剤を当該調心輪の内周に導く複数の第1油路を有し、前記調心輪の内周又は前記外輪の外周に、前記複数の第1油路を通して当該調心輪の内周に導かれた潤滑剤を当該内周の周方向へ導く環状の第1油溝と、当該内周の周方向に沿って所定間隔を有して配置され、第1油溝に導かれた潤滑剤を当該内周の軸方向両端側へ導く複数条の第2油溝とが形成され、前記外輪は、前記第1油溝と前記外輪軌道面とを連通する貫通孔からなり、前記第1油路に導かれた潤滑剤を前記外輪軌道面に導くための複数の第2油路を有し、前記各第1油路の孔の総断面積が、前記各第2油路の孔の総断面積よりも大きいことを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、調心輪の各第1油路を通して当該調心輪の内周に導かれた潤滑剤が、環状の第1油溝に沿って当該内周の周方向に導かれ、さらに、複数条の第2油溝に沿って当該内周の軸方向両端側へと導かれるので、当該内周の周方向及び軸方向の全域、すなわち、調心輪と外輪との間の全域に亘って潤滑剤を供給することができる。これによって、調心輪と外輪との間における潤滑性を向上させることができるので、調心輪付き転がり軸受における調心機能の低下を抑制することができる。
【0010】
また、各第1油路の孔の総断面積を、各第2油路の孔の総断面積よりも大きくしているので、各第1油路を通して調心輪の内周に導かれる潤滑剤の量を各第2油路に流れ込む潤滑剤の量よりも多くすることができる。このため、各第1油路から第1油溝に導かれた潤滑剤が、複数条の第2油溝に流れ込み易くなって、調心輪と外輪との間の軸方向両端まで行き渡り易くなる。これにより、調心輪と外輪との間における潤滑剤の流動性を高めることができ、調心輪と外輪との間における潤滑性をより向上させることができるので、調心輪付き転がり軸受における調心機能の低下をより効果的に抑制することができる。
【0011】
また、本発明のロール装置は、鋳片の搬送経路を形成する複数のロールとこのロールの端部を回転自在に支持するとともに、当該ロールの軸方向の位置を固定する固定側転がり軸受、及び当該ロールの軸方向の伸縮を許容する自由側転がり軸受とを備えた連続鋳造機用のロール装置であって、前記固定側転がり軸受及び自由側転がり軸受のうち、少なくとも前記自由側転がり軸受が、請求項1に記載の調心輪付き転がり軸受である
ことを特徴としている。
【0012】
このように構成されたロール装置は、上記のように、各ロールの端部を回転自在に支持する調心輪付き転がり軸受において、その潤滑性を向上させて、調心機能の低下を抑制することにより、当該調心輪付き転がり軸受の寿命が低下するのを抑制できるため、ロール装置のメンテナンスの負担を軽減することができる。
【発明の効果】
【0013】
本発明の調心輪付き転がり軸受、及びこれを用いた連続鋳造機用のロール装置によれば、調心輪と外輪との間における潤滑性を向上させることができるので、調心輪付き転がり軸受における調心機能の低下を抑制することができる。この結果、軸受寿命が低下するのを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の好ましい実施形態について添付図面を参照しながら説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る連続鋳造機用ロール装置の一部を示す平面図である。図1に示すように、ロール装置20は、多数のロール列Lが鋳片の鋳造方向(矢印e)に並べられて鋳片の搬送経路を形成した構成であり、複数のロール列Lが1組のセグメントを構成し、複数組のセグメントによりロール装置が構成されている。
1つのロール列Lは、1本のロールあるいは同心状として軸方向に並べて設けられた2本以上のロールRから構成される。本発明の一実施形態においては、ロール装置20は、主として3本のロールRと、各ロールRの両端部を支持する調心輪付き転がり軸受A,Bとを備えている。
【0015】
図1はこの1つのセグメントを示したものであり、ロールRの配置、調心輪付き転がり軸受A,Bの配置を示している。
鋳片の鋳造方向(矢印e)上流側から3列目のロール列Lは、一体に固定された2本のロールRからなり、回転駆動される駆動ロールである。上流側から1,2列目、及び4列目以下のロール列LはロールRが3本とされており、各ロールRの端部が調心輪付き転がり軸受A,Bに回転自在に支持された従動ロールとされている。
【0016】
一方の調心輪付き転がり軸受Aは、支持するロールRの軸方向の伸縮を許容する自由側の転がり軸受とされている。また、他方の調心輪付き転がり軸受Bは、支持するロールRの軸方向の位置を固定する固定側の転がり軸受とされている。
各自由側の調心輪付き転がり軸受Aは、図2に示すように、ロールRの一方の端部に外嵌された内輪1と、この内輪1の径方向外方側に設けられ、外周面2aが球面の一部からなる外輪2と、内輪1と外輪2との間に配置された複数の円筒ころ3と、外輪2の外周面2aに揺動可能に嵌め合わされる球面の一部からなる内周面4aを有する調心輪4とを備え、この調心輪4が、軸受ハウジングHの内周に嵌合固定されている。調心輪4が嵌合固定される軸受ハウジングHの内周には、給脂路H1とこの給脂路H1が開口するとともに軸受ハウジングHの内周に沿って環状に形成された油溝H2が形成されている。
【0017】
図3も参照して、調心輪4は、その外周面4bの軸方向中央部に形成された環状の外周溝4cと、この外周溝4cと調心輪4の内周面4aとを連通する貫通孔からなる複数の第1油路11とを有している。各第1油路11は、調心輪4の周方向に沿って所定間隔で配置されている。この第1油路11に軸受ハウジングHに設けられた給脂路H1及び油溝H2から潤滑剤が供給される。
このように、軸受ハウジングHの内周に環状の油溝H2及び調心輪4の外周に環状の外周溝4cが形成されていることにより、給脂路H1と第1油路11との円周上の位置が一致しない場合であっても、第1油路11に安定して潤滑剤を供給することができる。
【0018】
内輪1は、外周に形成され、ころ3が軸方向に移動可能なようにころ3よりも軸方向の幅を広く形成した内輪軌道面1aを備えている。
外輪2は、内周に形成された外輪軌道面2bと、この外輪軌道面2bの軸方向端部に径方向内向きに突出形成され、ころ3の端面3aに当接するつば面2cを有するつば部2dとを備えている。
ころ3は、その両端面3aが外輪2のつば面2cと摺接しつつ内輪軌道面1aと外輪軌道面2bとの間を転動する円筒ころである。ここで、内輪1の内輪軌道面1a、外輪2の外輪軌道面2b及びつば面2c、並びにころ3の両端面3aは、いずれも研磨仕上げされている。
【0019】
各固定側の調心輪付き転がり軸受Bは、図4に示すように、ロールRの他方の端部に外嵌された内輪101と、この内輪101の径方向外方側に設けられ、外周面102aが球面の一部からなる外輪102と、内輪101と外輪102との間に配置された複数のころ103と、外輪102の外周面102aに揺動可能に嵌め合わされる球面の一部からなる内周面104aを有する調心輪104とを備え、この調心輪104が、軸受ハウジングJの内周に嵌合固定されている。調心輪104が嵌合固定される軸受ハウジングJの内周には、給脂路J1とこの給脂路J1が開口するとともに軸受ハウジングJの内周に沿って環状に形成された油溝J2が形成されている。
【0020】
本実施形態において、軸受ハウジングJ、及びロールRの他方の端部の形状は、上記記載の範囲における、軸受ハウジングH、及びロールRの一方の端部の形状と同じである。また、本実施形態において、固定側の調心輪付き転がり軸受Bの外輪102、複数のころ103、及び調心輪104は、上記記載の範囲における、自由側の調心輪付き転がり軸受Aの外輪2、複数のころ3、及び調心輪4の形状と同じである。したがって、外輪102は、内周に形成された外輪軌道面102bと、この外輪軌道面102bの軸方向端部に径方向内向きに突出形成され、ころ103の端面103aに当接するつば面102cを有するつば部102dとを備え、調心輪104は、その外周面104bの軸方向中央部に形成された環状の外周溝104cと、この外周溝104cと調心輪104の内周面104aとを連通する貫通孔からなる複数の第1油路111とを有している。
【0021】
本実施形態において、調心輪付き転がり軸受Bは、内輪101が、ころ103の軸方向の荷重を受けるように形成されている点が、調心輪付き転がり軸受Aと異なる。調心輪付き転がり軸受Bの内輪101は、外周に形成された内輪軌道面101aと、この内輪軌道面101aの軸方向の一端部に径方向外向きに突出形成され、ころ103の一方の端面103aに当接する研磨仕上げされたつば面101bを有するつば部101cとを備えている。また、内輪軌道面101aの軸方向の他端部には、ころ103の他方の端面に当接する研磨仕上げされたつば面105aを有するつば輪105が設けられていることが、調心輪付き転がり軸受Aの内輪1と異なる。
このため、自由側の調心輪付き転がり軸受Aと固定側の調心輪付き転がり軸受Bに共通する構成、作用については、自由側の調心輪付き転がり軸受Aを用いて以下に説明する。
【0022】
図3においては、自由側の調心輪付き転がり軸受Aの各構成に対応する固定側の調心輪付き転がり軸受Bの各構成の符号を、括弧書きで示している。
この図3に示すように、外輪2の外周面2aには、前記第1油路11を通して調心輪4の内周に導かれた潤滑剤を外周面2aの周方向へ導く環状の第1油溝13が形成されている。また、外輪2の外周面2aには、第1油溝13から母線に沿って軸方向両端部に向って延びた複数条の第2油溝14が、当該外周面2aの周方向に沿って所定間隔を有して形成されている。この各第2油溝14の軸方向両端部14aは、外輪2の軸方向両端部であって外輪2の軸方向の端面2eに到達しない位置に配置されている。
【0023】
したがって、調心輪4の各第1油路11に潤滑剤が供給されると、この潤滑剤が第1油溝13に沿って外輪2の外周面2aの周方向に導かれ、さらに、各第2油溝14に沿って外輪2の外周面2aの軸方向両端側へと導かれる。このようにして、調心輪4と外輪2との間の周方向及び軸方向の全域に亘って潤滑剤が供給され、この供給された潤滑剤によって外輪2と調心輪4との間に油膜が形成される。これにより、外輪2と調心輪4との間における潤滑性を向上させることができる。
【0024】
また、外輪2には、第1油溝13と外輪軌道面2bとを連通する貫通孔からなり、第1油溝13に導かれた潤滑剤を外輪軌道面2bに導くための複数の第2油路12が形成されている。この複数の第2油路12は、外周面2aの周方向に沿って所定間隔を有して配置されている。この第2油路12から外輪軌道面2bに導かれる潤滑剤により、外輪軌道面2b、内輪軌道面1a及びころ3が潤滑される。なお、本実施形態では、第1油路11と同数の第2油路12が外輪2に形成されている。
【0025】
このように、外輪2の外周に環状の第1油溝13が形成されていることにより、第1油路11と第2油溝14との円周上の位置が一致しない場合であっても、第2油溝14に安定して潤滑剤を供給することができる。
また、図2(図4)に示すように、第1油溝13(第1油溝113)の軸方向の幅寸法Wは、第1油路11(第1油路111)の孔径φcよりも所定寸法(図2(図4)のg1とg2)大きく設定されている。一方の寸法g1は、外輪2(外輪102)の調心輪4(調心輪104)に対する揺動変位における、図2(図4)の右側への変位の最大値とされ、他方の寸法g2は、図2(図4)の左側への変位の最大値とされている。これによって、外輪2(外輪102)が調心輪4(調心輪104)に対し揺動変位した場合であっても、第1油路11(第1油路111)から第1油溝13(第1油溝113)に確実に潤滑剤を供給することができる。
【0026】
さらに、第1油路11(第1油路111)の孔径φcを、第2油路12(第2油路112)の孔径φdよりも大きくしている。これについて、自由側の調心輪付き転がり軸受Aを用いて詳しく説明すると、調心輪4の有する各第1油路11の孔の総断面積を、外輪2の有する各第2油路12の孔の総断面積よりも大きくしているので、各第1油路11を通して調心輪4の内周に導かれる潤滑剤の量を、各第2油路12に流れ込む潤滑剤の量よりも多くすることができる。このため、第1油路11から第1油溝13に導かれた潤滑剤が、第2油溝14に流れ込み易くなって、調心輪4と外輪2との間の軸方向両端部まで行き渡り易くなる。これにより、調心輪4と外輪2との間における潤滑剤の流動性を高めることができるので、調心輪4と外輪2との間における潤滑性をより向上させることができる。その結果、外輪2と調心輪4との間にフレッティング摩耗が生じるのを効果的に防止することができる。
【0027】
このように調心輪4と外輪2との間における潤滑性を向上させることで、調心輪付き転がり軸受Aにおける調心機能の低下を抑制することができる。
したがって、搬送される鋳片の熱及び重荷重により生じる各ロールRの撓み及び伸縮の際に、ころ3と内輪軌道面1a及び外輪軌道面2bとの間でエッジロードが発生するのを抑制することができる。また、ころ3の端面3aと、外輪2のつば面2cとの間でかじりが発生するのを抑制することができる。
これら、自由側の調心輪付き転がり軸受Aにおける作用効果は、固定側の調心輪付き転がり軸受Bも同様に有している。特に、固定側の調心輪付き転がり軸受Bにあっては、図4に示すころ103の端面103aと、内輪101のつば面101b及びつば輪105のつば面105aとの間でかじりが発生するのも抑制することができる。
【0028】
このようにして、調心輪付き転がり軸受A,Bにおける調心機能の低下を抑制することにより、調心輪付き転がり軸受A,Bが損傷するのを抑制でき、その結果、調心輪付き転がり軸受A,Bの寿命が低下するのを抑制できる。これによって、ロール装置20のメンテナンスの負担を軽減することができる。
【0029】
なお、本発明は、前記実施形態に限定されるものではない。例えば、第1油路11と第2油路12とが同数の構成で示したが、異なる数の構成としてもよい。各第1油路11の孔の総断面積が、各第2油路12の孔の総断面積よりも大きい構成となるかぎり、第1油路11及び第2油路12のそれぞれの数、配置及び形状については、使用条件等に応じて適宜変更して実施することができる。
また、第1油溝13及び第2油溝14を、外輪2の外周面2aに形成したが、調心輪4の内周面4aに形成して実施することができる。
【0030】
さらに、第2油溝14を、第1油溝13から母線に沿って軸方向両端部に向って延びるように形成したが、母線に対して傾いた状態で軸方向両端部に延びるように形成してもよい。また、第2油溝14に供給された潤滑剤を、調心輪4と外輪2との間の軸方向両端部に導くことができるかぎり、第2油溝14の配置及び形状については、使用条件等に応じて適宜変更して実施することができる。
また、前記実施形態の連続鋳造機用ロール装置によれば、自由側の転がり軸受が調心輪
付き転がり軸受であって、固定側の転がり軸受が調心輪付き転がり軸受であったが、固定側の転がり軸受は自動調心ころ軸受を用いてもよい。
さらに、前記実施形態では、連続鋳造機用ロール装置の転がり軸受について本発明を適用した場合を例示したが、圧延設備用など他のロール装置の転がり軸受についても適用して実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の一実施形態に係る連続鋳造機用ロール装置の一部を示す平面図である。
【図2】図1の連続鋳造機用ロール装置が有する自由側の調心輪付き転がり軸受の断面図である。
【図3】図2の自由側の調心輪付き転がり軸受の要部を示す一部欠截斜視図である。
【図4】図1の連続鋳造機用ロール装置が有する固定側の調心輪付き転がり軸受の断面図である。
【図5】従来の調心輪付き転がり軸受の要部を示す一部欠截斜視図である。
【符号の説明】
【0032】
1,101 内輪
1a,101a 内輪軌道面
2,102 外輪
2a,102a 外周面
2b,102b 外輪軌道面
3,103 ころ
4,104 調心輪
4a,104a 内周面
4b,104b 外周面
11,111 第1油路
12,112 第2油路
13,113 第1油溝
14,114 第2油溝
20 ロール装置
A 調心輪付き転がり軸受
B 調心輪付き転がり軸受
R ロール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外周に内輪軌道面を有する内輪と、
内周に外輪軌道面を有し、外周面が球面の一部からなる外輪と、
前記内輪軌道面と外輪軌道面との間に転動自在に配置された転動体と、
前記外輪の外周面に揺動可能に嵌め合わされる球面の一部からなる内周面を有する調心輪と
を備えた調心輪付き転がり軸受において、
前記調心輪は、その外周面と内周面とを貫通する貫通孔からなり、外部から供給される潤滑剤を当該調心輪の内周に導く複数の第1油路を有し、
前記調心輪の内周又は前記外輪の外周に、前記複数の第1油路を通して当該調心輪の内周に導かれた潤滑剤を当該内周の周方向へ導く環状の第1油溝と、当該内周の周方向に沿って所定間隔を有して配置され、第1油溝に導かれた潤滑剤を当該内周の軸方向両端側へ導く複数条の第2油溝とが形成され、
前記外輪は、前記第1油溝と前記外輪軌道面とを連通する貫通孔からなり、前記第1油路に導かれた潤滑剤を前記外輪軌道面に導くための複数の第2油路を有し、
前記各第1油路の孔の総断面積が、前記各第2油路の孔の総断面積よりも大きいことを特徴とする調心輪付き転がり軸受。
【請求項2】
鋳片の搬送経路を形成する複数のロールと
このロールの端部を回転自在に支持するとともに、当該ロールの軸方向の位置を固定する固定側転がり軸受、及び当該ロールの軸方向の伸縮を許容する自由側転がり軸受と
を備えた連続鋳造機用のロール装置であって、
前記固定側転がり軸受及び自由側転がり軸受のうち、少なくとも前記自由側転がり軸受が、請求項1に記載の調心輪付き転がり軸受であることを特徴とする連続鋳造機用のロール装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−1921(P2010−1921A)
【公開日】平成22年1月7日(2010.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−159519(P2008−159519)
【出願日】平成20年6月18日(2008.6.18)
【出願人】(000001247)株式会社ジェイテクト (7,053)
【Fターム(参考)】