説明

調整可能な選択性および分解能を有する真空駆動微分型移動度分析計/質量分析計のための方法およびシステム

微分型移動度分析計と、少なくとも部分的に微分型移動度分析計にシールされ、かつ微分型移動度分析計と流体連絡している質量分析計とを含む、質量分析計システムを、関連方法とともに提供する。質量分析計システムは、a)内部動作圧力で微分型移動度分析計を維持するステップと、b)イオンを微分型移動度分析計に提供するステップと、c)微分型移動度分析計を通って真空チャンバの中へイオンを含むガス流を引き込むために、内部動作圧力よりも低い真空圧で質量分析計を維持するステップと、d)微分型移動度分析計を通るガス流速を変化させるために、微分型移動度分析計と質量分析計との間のガス流を修正するステップとを行うように動作可能となり得、方法はこれらのステップを含み得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(緒言)
本発明は、概して、質量分析計および微分型移動度分析計の両方を含む、方法およびシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
微分型移動度分析計/質量分析計システムでは、偏流ガスが、典型的には微分型移動度分析計の上流の圧縮ガス源から供給される。この偏流ガスは、微分型移動度分析計を通る搬送ガス流の役割を果たす。微分型移動度分析計への偏流ガスの送達は、流量制限弁によって制御することができる。感度は、何パーセントのイオンが最終的に実際に検出されるかという、システムの伝送効率に関する。選択性または分解能とは、同様のイオンを区別する検出器の能力を指す。
【0003】
高電界非対称波形イオン移動度分析(FAIMS)または電界イオン分析(FIS)とも呼ばれる、微分型移動度分析は、イオン移動度分析(IMS)の変化例である。IMSは、典型的には、大気圧で、飛行管の軸長に沿って印加される低い電界強度の一定の静電界において、イオンがガスを通って漂流するために要する時間の差異によって、イオンを分離する。イオンは飛行管の中へ拍動され、それらの飛行時間が記録される。飛行の時間は、イオンの移動度に逆相関する。イオンは、単一の方向(軸方向)の運動を有し、これらの低い電界条件(E<1000V/cm)下でガスを通る移動度に従って分離される。漂流時間、したがって移動度は、イオンのサイズおよび形状、ならびに背景ガスとの相互作用の関数である。
【0004】
微分型移動度分析は、器具類の幾何学形状においてIMSとは異なり、分離理論に付加的な側面を追加する。しばしば分離電圧(SV)と呼ばれるRF電圧が、輸送ガス流の方向に対して垂直に、イオン輸送チャンバにわたって印加される。イオンは、しばしば補償電圧(CV)と呼ばれるDC電位である対抗電圧によって軌道が補正されるまで、壁に向かって移動し、飛行経路から離れる。チャンバを通るイオンの飛行時間を記録する代わりに、特定のイオンの軌道を補正するために必要な電圧が記録される。イオンは、IMSと同様に時間的に分離されず、その代わり、移動度測定が、高電界および低電界イオン移動度の間の差異によって引き起こされるイオン軌道の傾転を補正するために使用される、補償電圧の関数である。そのようなものとして、イオンは、分析計の中へ拍動されず、その代わり連続的に導入され、補償電圧は、異なる微分型移動度のイオンを連続的に通すように走査されるか、または特定の微分型移動度を伴うイオン種のみを通すように固定値に設定される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
典型的には、選択性と感度との間にトレードオフがあり、その両方は、微分型移動度分析計の中のイオンの滞留時間に結び付けられる。具体的には、微分型移動度分析計の中のイオンの滞留時間を増加させることにより、選択性を増加させてもよいが、感度を低減するという代償を払う。
【0006】
上記で説明されるように、以下の説明では、感度は、何パーセントのイオンが最終的に実際に検出されるかという、システムの伝送効率に関する。選択性または分解能とは、同様のイオンを区別する検出器の能力を指す。
【0007】
本発明の実施形態の側面によれば、
a)イオン源からイオンを受容するための微分型移動度分析計であって、内部動作圧力と、電極と、DCおよびRF電圧を電極に提供するための少なくとも1つの電圧源とを有する、微分型移動度分析計と、
b)微分型移動度分析計からイオンを受容するために、少なくとも部分的に微分型移動度分析計にシールされ、かつ微分型移動度分析計と流体連絡している、質量分析計と、
c)真空チャンバであって、真空チャンバが、微分型移動度分析計を通って真空チャンバの中へとイオンを含むガス流を引き込むよう動作可能であるように、内部動作圧力よりも低い真空圧で質量分析計を維持するために質量分析計を包囲する、真空チャンバと、
d)微分型移動度分析計を通るガス流速を修正するためのガスポートであって、微分型移動度分析計と質量分析計との間に位置する、ガスポートと
を備える、質量分析計システムが提供される。
【0008】
本発明のさらなる実施形態の側面によれば、微分型移動度分析計と、少なくとも部分的に微分型移動度分析計にシールされ、かつ微分型移動度分析計と流体連絡している、真空チャンバに格納された質量分析計とを含む、質量分析計システムを操作する方法が提供される。該方法は、
a)内部動作圧力で微分型移動度分析計を維持するステップと、
b)イオンを微分型移動度分析計に提供し、選択された分離RF電圧および選択された補償DC電圧を微分型移動度分析計に提供するステップと、
c)微分型移動度分析計を通って真空チャンバの中へとイオンを含むガス流を引き込むように、内部動作圧力よりも低い真空圧で質量分析計を維持するステップと、
d)微分型移動度分析計を通るガス流速を変化させるように、微分型移動度分析計と質量分析計との間のガス流を修正するステップと
を含む。
【図面の簡単な説明】
【0009】
当業者であれば、以下で説明される図面が例証目的にすぎないことを理解するであろう。図面は、決して出願人の教示の範囲を限定することを目的としない。
【図1】図1は、概略図において、本発明の第1の実施形態の側面による、スロットルガスが微分型移動度分析計と質量分析計との間で添加される、接合チャンバを含む、微分型移動度分析計/質量分析計システムを図示する。
【図2】図2は、概略図において、本発明の第2の実施形態の側面による、スロットルガスが微分型移動度分析計と質量分析計との間で添加される、接合チャンバを含む、微分型移動度分析計/質量分析計システムを図示する。
【図2A】図2Aは、グラフにおいて、真空チャンバ入口または質量分析計入口における電位と比べたDMSオフセット電位に対する種々のイオンの信号を描画する。
【図3】図3は、概略図において、本発明の第3の実施形態の側面による、スロットルガスが微分型移動度分析計と質量分析計との間で添加される、接合チャンバを含み、微分型移動度分析計の中へのガス流が制限される、微分型移動度分析計/質量分析計システムを図示する。
【図4】図4は、概略図において、本発明の第4の実施形態の側面による、微分型移動度分析計を通るガス流速を調整するように、微分型移動度分析計および質量分析計の接合点において制御漏出口が提供される、微分型移動度分析計/質量分析計システムを図示する。
【図5】図5は、概略図において、本発明の第5の実施形態の側面による、スロットルガスが微分型移動度分析計と質量分析計との間で添加される、接合チャンバを含み、微分型移動度分析計が加熱管を含む、微分型移動度分析計/質量分析計システムを図示する。
【図6】図6は、概略図において、本発明の第6の実施形態の側面による、図2で説明されたものと同様であり、カーテンチャンバに提供されるカーテンガスに液体修飾剤を添加するためにバブラが提供される、微分型移動度分析計/質量分析計システムを図示する。
【図7】図7は、概略図において、本発明の第7の実施形態の側面による、図6で説明されたものと同様であり、また、液体修飾剤を伴わずにカーテンガスをカーテンチャンバに直接提供するための追加導管分岐も含む、微分型移動度分析計/質量分析計システムを図示する。
【図8】図8は、概略図において、本発明の第8の実施形態の側面による、スロットルガスが微分型移動度分析計と質量分析計との間で添加される、接合チャンバを含み、スロットルガスに種々の修飾剤を添加するようにバブラが提供される、微分型移動度分析計/質量分析計システムを図示する。
【図9】図9は、概略図において、本発明の第9の実施形態の側面による、そこから流出ガスが微分型移動度分析計と質量分析計との間で引き込まれる、接合チャンバを含む微分型移動度分析計/質量分析計システムを図示する。
【図10】図10は、一連のグラフにおいて、微分型移動度分析計および質量分析計の接合点において添加される可変量のストットルガスとともに、固定された微分型移動度分析計の幾何学形状を使用する、エフェドリンおよび擬似エフェドリンを含有するサンプルの分離のためのCVスキャンの異なる分解能を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1を参照すると、概略図において、本発明の第1の実施形態の側面による微分型移動度分析計/質量分析計システム200が図示されている。微分型移動度分析計/質量分析計システム200は、微分型移動度分析計202と、質量分析計の第1の真空レンズ要素204(以降では、概して質量分析計204と指定される)とを備える。質量分析計204はまた、真空チャンバ227から下流に質量分析計要素204aも備える。イオンは、真空チャンバ227を通して輸送することができ、質量分析計要素204aとして概略的に示される質量分析計の前に、1つ以上の付加的な差動排気真空段階を通して輸送されてもよい。例えば、一実施形態では、3段四重極質量分析計は、約2.3トールの圧力で維持される第1段階と、約6ミリトールの圧力で維持される第2段階と、約10−5トールの圧力で維持される第3段階とを含む、3つの差動排気真空段階を備えてもよい。第3の真空段階は、検出器、ならびに、その間に位置する衝突セルを伴う2つの四重極質量分析計を含有してもよい。システムの中には、説明されていない、いくつかの他のイオン光学要素があってもよいことが、当業者にとって明白となるであろう。説明される微分型移動度分析計/質量分析計の連結は、高圧源からイオンをサンプリングする多くの質量分析計システムに適用可能となり得ることも、当業者にとって明白となるため、この実施例は、限定的となるように意図されていない。これらは、飛行時間(TOF)、イオントラップ、四重極、または当技術分野で公知のような他の質量分析計を含んでもよい。
【0011】
微分型移動度分析計202は、プレート206と、プレート206の外側に沿った電気絶縁体207とを備える。プレート206は、微分型移動度分析計の入口210から微分型移動度分析計202の出口212へと漂流する偏流ガス208を包囲する。絶縁体207は、電極を支持し、それらを他の伝導性要素から隔離する。例えば、絶縁体は、セラミックまたはTeflonTMから製造されてもよい。微分型移動度分析計202の出口212は、バッフル216によって画定される接合またはバッフルチャンバ214の中へ偏流ガスを放出し、その接合チャンバ214は、微分型移動度分析計202と質量分析計204との間でイオンの通行経路を画定する。いくつかの実施形態では、微分型移動度分析計202の出口212が、その間にイオン通行経路を画定するように質量分析計204の入口と整合される一方で、バッフル216は、通行経路に沿って通行するイオン222へのバッフル216の干渉を限定するように、この通行経路から離間される。
【0012】
微分型移動度分析計202および接合チャンバ214は両方とも、カーテンプレート(境界部材)219によって画定されるカーテンチャンバ218内に格納され、カーテンガス源220からのカーテンガスが供給される。カーテンガス源220は、カーテンガスをカーテンチャンバ218の内部に提供する。イオン222は、イオン源(図示せず)から提供され、カーテンチャンバ入口224を介してカーテンチャンバ218の中へ放出される。カーテンチャンバ218内のカーテンガスの圧力は、カーテンガスチャンバ入口224からのカーテンガス流出226、ならびに微分型移動度分析計202の中へのカーテンガス流入228の両方を提供し、その流入228は、微分型移動度分析計202を通して接合チャンバ214の中へイオン222を運ぶ偏流ガス208になる。カーテンプレート219は、それに調整可能なDC電位を提供するように、電力供給部に接続されてもよい。
【0013】
図1に図示されるように、質量分析計204の第1の真空レンズ要素204は、カーテンチャンバ218よりもはるかに低い圧力で維持することができる、真空チャンバ227内に格納される。本発明の実施形態の側面によれば、真空チャンバ227は、真空ポンプ230によって2.3トールの圧力で維持することができる一方で、カーテンチャンバ218および微分型移動度分析計202の内部動作圧力は、760トールの圧力で維持することができる。カーテンチャンバ218と真空チャンバ227との間の有意な圧力差の結果として、偏流ガス208は、微分型移動度分析計202、接合チャンバ214を通り、真空チャンバ入口229を介して、真空チャンバ227および第1の真空レンズ要素204の中へ引き込まれる。示されるように、質量分析計204は、微分型移動度分析計202からイオン222を受容するように、接合チャンバを介して、微分型移動度分析計にシールし(または少なくとも部分的にシールし)、かつ微分型移動度分析計と流体連絡することができる。
【0014】
示されるように、カーテンチャンバのバッフル216は、接合チャンバ214の中へカーテンガスを入れるための制御漏出口またはガスポート232を備える。接合チャンバ214内で、カーテンガスは、微分型移動度分析計202を通る偏流ガス208の流量を抑制する、スロットルガスになる。具体的には、接合チャンバ214内のスロットルガスは、微分型移動度分析計202内および接合チャンバ214の中へのガス流速を修正し、それにより、微分型移動度分析計202内のイオン222の滞留時間を制御する。微分型移動度分析計202内のイオン222の滞留時間を制御することによって、分解能および感度を調整することができる。つまり、微分型移動度分析計202内のイオン222の滞留時間を増加させることにより、分解能を増加させることができるが、イオンの付加的な損失ももたらし、感度を低減し得る。したがって、いくつかの実施形態では、微分型移動度分析計202を通るガス流速にある程度の制御を提供し、それにより、感度と選択性との間のトレードオフを制御するように、接合チャンバ214に添加されるスロットルガスの量を正確に制御できることが望ましくなり得る。図1の実施形態では、カーテンチャンバ218からのスロットルガスの流入は、ガスポート232によって提供される漏出口のサイズを制御することによって、制御することができる。
【0015】
バッフルは、ランダマイザ表面部材を提供するように構成することができ、ガスポート232は、少なくともいくらかバッフル216およびランダマイザ表面に対してスロットルガスを方向付けて、接合チャンバ214の全体を通してスロットルガスを排出するように配向することができる。一実施形態では、ガスポート232は、微分型移動度分析計202と質量分析計入口229との間のガス流線を乱すことなく、スロットルガスを導入する。
【0016】
上記で説明されるように、かつ当技術分野で公知であるように、しばしば分離電圧(SV)と呼ばれるRF電圧を、偏流ガス208(図1に示される)の方向に対して垂直に、微分型移動度分析計のイオン輸送チャンバにわたって印加することができる。RF電圧は、微分型移動度分析計を備えるDMS電極の一方または両方に印加されてもよい。壁に向かって移動し、DMSの経路から離れるイオンの傾向は、しばしば補償電圧(CV)と呼ばれるDC電位によって補正することができる。補償電圧は、微分型移動度分析計を備えるDMS電極の一方または両方にDC電位を印加することによって、生成されてもよい。当技術分野で公知であるように、RF SVおよびDC CVの両方を提供するように、DMS電圧源(図示せず)を提供することができる。代替として、複数の電圧源が提供されてもよい。
【0017】
同様に、再度当技術分野で公知であるように、入口電位電圧源(図示せず)によって、DCデクタラスタリングまたは入口電位を真空チャンバ入口229(再度、図1に示されるような)に提供することができる。この真空チャンバ入口は、開口部であってもよく、または代替として、毛細管、加熱パイプ、毛管パイプ、または鉄パイプであってもよい。
【0018】
真空チャンバ入口229が微分型移動度分析計202の出口よりも小さい、本発明の実施形態では、微分型移動度分析計202に対する真空チャンバ入口229に制動電位を提供することが有利であってもよい。この制動電位は、真空チャンバ入口229に提供されるデクタラスタリングまたは入口電位に対するDMSのプレートまたは電極にDMS DCオフセット電圧を提供することによって、提供することができる。イオンが真空チャンバ229に進入する前に、イオンを減速させることによって、制動電位は、これらのイオンがガス流内に混入される程度を増加させ、それにより、真空チャンバ入口229の側面に影響を及ぼす代わりに、イオンが実際に真空チャンバ入口を通過する可能性を増加させることができる。
【0019】
代替として、例えば、無制限に、真空チャンバ入口229が微分型移動度分析計202からのスリットまたは出口と比べて大きい実施形態等の、本発明のいくつかの実施形態では、DMS DCオフセット電圧を調整することが望ましくなり得る。具体的には、微分型移動度分析計202から真空チャンバ227の中への伝送を改善するようにイオンを減速させることが望ましくない場合、このDCオフセット電圧は、イオンが真空チャンバ入口229を通過する際に、イオンを加速することに実際に肯定的であってもよい。
【0020】
このDMS DCオフセットはまた、微分型移動度分析計202において選択されているイオンの質量に基づいて調整することもできる。これは、2段階過程の一部となり得る。具体的には、真空チャンバ入口229に提供されるデクタラスタリング電圧は、最初に、微分型移動度分析計202において選択されているイオンの質量に基づいて調整することができる。次いで、真空チャンバ入口229に提供される、このデクタラスタリング電圧に対して、微分型移動度分析計202から真空チャンバ入口229を通した伝送を強化するように、DMS DCオフセット電圧を調整することができる。代替として、DMSオフセットDC電位は、所与のイオンについて選択されてもよい。いくつかの実施形態では、DMS電極DCオフセットを自動的に調整して、開口部電位に対して同じ電位を維持するように、電圧源コントローラを設定することができる。次いで、デクタラスタリング電位または入口電位が調整されてもよい。すなわち、これらの実施形態では、DMSオフセット電圧は、オフセットとして電極に印加されるDC電位と入口電圧との間の差異にすぎない。例えば、好ましいDMSオフセット電圧が、−3Vであるとする。次いで、入口電圧が同調されると、これらの制御システムは、これらの実施形態では、現在の入口電圧にかかわらず、−3Vオフセットを維持することができる。例えば、入口電位が最初に50Vである場合、DMS電極上のDC電位を47V(CV=0の状況)で自動的に維持することができる。入口電位が最大100Vに同調された場合、DMS電極に印加されるDCを自動的に97Vに変更することができる。
【0021】
図2を参照すると、概略図において、本発明の第2の実施形態の側面による微分型移動度分析計/質量分析計システム300が図示されている。明確にするために、100が追加された、図1で使用される同じ参照数字が、図1の要素と類似した要素を指定するために図2で使用される。簡潔にするために、図2に関して図1の説明を反復しない。
【0022】
微分型移動度分析計のプレートまたは電極に提供される補償電圧により、微分型移動度分析計の電極の一方または両方の実際のDC電位は、真空チャンバ入口要素に印加されるデクタラスタリング電位とは、DMS DCオフセット量だけ異ならない場合があることに留意することが重要である。例えば、デクタラスタリング電位が真空チャンバ入口要素329に印加されるとする。このデクタラスタリング電位(DP)は、微分型移動度分析計によって選択されているイオンのm/zに基づいて決定され、このDPの決定は、当技術分野で公知である。次いで、DCオフセット電圧が、微分型移動度分析計302のプレートまたは電極306に印加される。加えて、CVが電極306に印加される。CVの印加は、異なる方法で続行してもよい。例えば、10ボルトのCVがあり、次いで、5Vを一方の電極に印加することができる一方で、−5Vが電極に印加されるとする。代替として、10Vを一方の電極に印加することができ、他方の電極には電圧が印加されない。
【0023】
CVの全てが一方の電極に印加される実施例を考慮する。次いで、例えば、100VのDPが、最初に真空チャンバ入口について決定されるとする。真空チャンバ入口と微分型移動度分析計との間のオフセットは、−5Vと決定される。微分型移動度分析計のCVは、10Vである。次いで、微分型移動度分析計の一方の電極が、100V−5V+10Vまたは105Vの電位を有する一方で、他方の電極は、100V−5V=95Vの電位を有する。
【0024】
上述のように、DCオフセット電圧は、マイナスである必要はない。具体的には、開口部または入口寸法が、微分型移動度分析計のスリット寸法により密接に一致する場合、イオンが開口部を通って流れることができるように、イオンを減速させてガス流の中に適正に混入する必要性がなくてもよい。その代わり、イオンを加速させることが望ましくさえなり得る。
【0025】
図2Aを参照すると、寸法1×10×30mmの電極に印加される制動電位の有効性が、種々の質量対電荷比についてグラフに描画されている。試験された全てのイオンについて、最適なDMSオフセット電圧は、マイナスであるように思われ、つまり、最適なDMS電位は、制動電位を確立するように、真空チャンバ入口電位よりもわずかに低くなるべきである。最適なオフセット電圧の大きさおよび最適な電圧範囲の幅は両方とも、関心のイオンの質量対電荷比とともに増加し、おそらく、より高いm/zのイオンについてイオン移動度定数の既知の減少を反映する。図2Aで描画されたデータは、入口に集中する屈曲ガス流によって影響される、より長い期間をイオンに与えるようにイオンを減速し、それにより、微分型移動度分析計および質量分析計の界面領域または接合部における損失を低減することによって、スロット付きDMS分析計から円形質量分析計または真空チャンバ入口へのイオンの移動が改善されてもよいことを実証する。
【0026】
図1のシステム200と同様に、図2のシステム300では、真空チャンバ327の中で維持されたはるかに低い圧力によって、微分型移動度分析計302を通して真空チャンバ327および第1の真空レンズ要素304の中へ偏流ガス308を引き込むことができる。図1のシステム200と同様に、システム300の真空チャンバ327を、例えば、2.3トールで維持することができる一方で、カーテンチャンバ318の中の圧力は、760トールの圧力で維持することができる。
【0027】
図1のシステム200と同様に、システム300の分解能または選択性は、微分型移動度分析計302と真空チャンバ入口329との間の接合チャンバ314にスロットルガスを添加することによって、調整することができる。図2のシステム300では、カーテンガスおよびスロットルガスの両方に共通ガス源が提供されるが、別個のガス源も提供されてもよい。例えば、このガスは、窒素となり得る。スロットルガスは、導管分岐320aを通って接合チャンバ314の中へ流れる。再度、このガスは、微分型移動度分析計を通る流量を抑制するため、スロットルガスと呼ばれる。いくつかの実施形態では、イオンビーム軌道への干渉が、伝送効率を潜在的に軽減し得るため、微分型移動度分析計302と質量分析計との間のイオンビーム軌道またはイオン通行経路に干渉するスロットルガスのクロスビームの可能性を低減するように、ガスを同軸上に添加することができる。例えば、図2に示されるように、ガスポート332は、スロットルガスが、真空チャンバ327に向かい、かつ微分型移動度分析計302から離れた配向で接合チャンバ314に流入するように、配向または傾斜させられる。随意で、接合チャンバ314は、拡大することができ、または、質量分析計の中への進入点においてイオンビームへの干渉を低減するように、スロットルガスの直線速度を低減する余分な構造を含んでもよい。さらに、ガスポート332は随意で、スロットルガスが、イオン通行経路といくらか並行に、接合チャンバの側壁に沿って流れるように、配向されてもよい。別の実施形態では、接合チャンバは、絶縁体の直径よりもはるかに大きい直径で設計されてもよく、ガスポートは、入口を通るガス流が壁に沿って方向付けられるように配向されてもよい。
【0028】
概略図1−9は、原寸に比例していないことに留意されたい。つまり、機能的観点から、スロットルガス流入が接合チャンバを通るイオン流を乱す危険性を低減するように、接合チャンバを図に示されるものよりも大幅に大きくすることができる。さらに、スロットルガスは、壁に沿って方向付けられるよう導入することができ、それにより、スロットルガスが直交流で接合チャンバの中のイオン運動に提供される場合と比較して、混乱を低減し、感度を増加させる。
【0029】
導管分岐320aは、接合チャンバ314の中へのスロットルガスの流速を制御するために使用することができる、制御可能な弁320bを備える。例えば、感度の容認可能な損失という代償を払って、分解能または選択性を増加させるために、導管分岐320aを介してより多くのスロットルガスを接合チャンバ314の中へ入れ、微分型移動度分析計302内のガス流速を低減するように、制御可能な弁320bを開くことができる。これは順に、微分型移動度分析計内のイオン322の滞留時間を増加させることができる。増加した滞留時間は、より狭い移動度ピーク幅、したがって、改善した選択性として現れる。同時に、増加した滞留時間は、増加した拡散損失により、感度をいくらか低下させる。同時に、微分型移動度分析計内の増加した滞留時間により、イオンのより多くが失われ得る。
【0030】
示されるように、図2は、カーテンチャンバ318の中へのカーテンガスの流速を制御するための弁320cを備えることができる。DMSの上流のイオンの適正なクラスタ分離を確保するように、カーテンガス流速を制御することが重要である。クラスタは、乾燥イオンとは異なる移動度を有することができ、したがって、異なる補償電圧(CV)値を有することができる。これらのクラスタは、関心のイオンを伝送している間に濾過され、失われて、低減した感度につながり得る。図2に示されるように、システムは、カーテンガス流およびスロットルガス流の両方を提供するように、共通ガス供給部を備えてもよい。カーテンプレート319の開口からのカーテンガス流出326は、ガス伝導性制限開口329を通る体積流量を引いた、カーテンガスおよびスロットルガスの体積流量の合計によって定義することができる。カーテンガス流出326は、典型的には、所与の化合物および一式の条件について最適化される。したがって、図2に図示された構成では、総体積流量が一定であるならば、総流量のうちのどれだけの部分が、通路320(カーテンガス)または320a(スロットルガス)を通して提供されるかにかかわらず、カーテンガス流出326が一定に維持されてもよい。
【0031】
微分型移動度分析計302が、質量分析計、または少なくとも第1の真空チャンバ327にシールされるか、または少なくとも部分的にシールされる(シールが完璧ではない)際に、質量分析計は、微分型移動度分析計302からイオン322を受容するように、円形開口部を備えることができる。これは、微分型移動度分析計302を質量分析計にシールすることに起因する流線形によって可能となる。微分型移動度分析計302から退出するガス流線は、入口329に集中し、これらの屈曲流線は、入口329を通してイオンを輸送することができる。後続の真空段階およびレンズを通した高伝送効率を確保するように、円形開口部を維持することが望ましくなり得る。
【0032】
図3を参照すると、概略図において、本発明の第3の実施形態の側面による微分型移動度分析計/質量分析計システム400が図示されている。明確にするために、100が追加された、図2で使用される同じ参照数字が、図2の要素と類似した要素を指定するために図3で使用される。簡潔にするために、図3に関して図1および2の説明を反復しない。
【0033】
図2のシステム300と同様に、図3のシステム400の分解能または選択性は、微分型移動度分析計402と真空チャンバ入口429との間の接合チャンバ414にスロットルガスを添加することによって、調整することができる。図2のシステム300と同様に、カーテンガスおよびスロットルガスの両方に共通ガス源を提供することができる。
【0034】
加えて、ガス制限プレート434が、微分型移動度分析計402の入口410に提供される。これらのガス制限プレート434は、Nazarovら(Nazarov EG,Coy SL,Krylov EV,Miller AR,Eiceman G.,Pressure Effects in Differential Mobility Spectrometry,Anal.Chem.,2006,78,7697−7706)と類似の様式で、選択性のさらなる最適化のために微分型移動度分析計402の圧力の同調を促進することができる。具体的には、微分型移動度分析計402の中への偏流ガスの流量を制限するように、ガス制限プレート434が提供されると、真空チャンバ427の中のより低い圧力を提供することによって、微分型移動度分析計402の後部で送出することにより、微分型移動度分析計内の圧力を低下させ、巧妙な分離に合わせて調整するように、余分な程度の選択性または余分なパラメータを提供することができる。ガス制限プレート434の開口の直径は、固定された質量分析計入口の直径で確立された真空の引き込みのために、操作者が微分型移動度分析計402内の圧力を同調することを可能にするように、調整可能となり得る。
【0035】
図4を参照すると、概略図において、本発明の第4の実施形態の側面による微分型移動度分析計/質量分析計システム500が図示されている。明確にするために、300が追加された、図1で使用される同じ参照数字が、図1の要素と類似した要素を指定するために図4で使用される。簡潔にするために、図4に関して図1−3の説明を反復しない。
【0036】
図4のシステム500は、それぞれ、図1および2のシステム200および300の複合型である。つまり、図1のシステム200と同様に、カーテンガス供給部520は、カーテンガスをカーテンチャンバ518に提供し、制御漏出口532が、カーテンチャンバ518から接合チャンバ514の中へ提供される。しかしながら、図2のシステム300と同様に、図4のシステム500の接合チャンバ514の中へのスロットルガスの流量は、ガス流制限器533を調整することによって、カーテンチャンバ518内のカーテンガスの圧力とは無関係に制御することができる。つまり、制御漏出口532のサイズを調整するようにガス流制限器533を調整することができ、それにより、質量分析計504とのシールを機械的に破壊することなく、接合チャンバ514に吸い込まれるスロットルガスの量を調整する。対照的に、図1のシステム200の制御漏出口232は、図1に示されるように、質量分析計とのシールによって提供される漏出口を機械的に改変することによって提供される。具体的には、図1のシステム200のバッフル216は、図1に示された漏出口のサイズを制御するように調整可能である。
【0037】
図5を参照すると、概略図において、本発明の第5の実施形態の側面による微分型移動度分析計/質量分析計システム600が図示されている。明確にするために、300が追加された、図2で使用される同じ参照数字が、図2の要素と類似した要素を指定するために図5で使用される。簡潔にするために、図5に関して図1および2の説明を反復しない。
【0038】
図5のシステム600では、加熱管602aが微分型移動度分析計602の入口610に設置される。加熱管602aは、微分型移動度分析計602の入口610にシールすることができる。加熱管602aは、イオン622が微分型移動度分析計に進入する前にイオン622の付加的なクラスタ分離を促進することができる。例えば、高流速の高性能液体クロマトグラフィ(HPLC)の使用中に、クラスタ化が感度を減少させる問題となり得る。この付加的なクラスタ分離はまた、例えば、大気圧マトリックス支援レーザ脱離イオン化(AP−MALDI)、大気圧化学イオン化(APCI)、脱離エレクトロスプレーイオン化(DESI)、およびリアルタイム直接分析(DART)等の、他のイオン源に役立つことができる。これらのイオン源が例として提供されているが、このアプローチは、イオンならびにクラスタを生成する任意のイオン源の性能を改善できることが、当業者にとって明白となるであろう。加熱管602aはまた、層流条件を促進し、微分型移動度分析計602の入口610における電界の均一性を増加させることもでき、そうすることによって、微分型移動度分析計602の中へのイオン伝送を促進することができる。
【0039】
図5に図示されたシステム600等の、本発明のいくつかの実施形態では、接合チャンバ614の中へのスロットルガスの体積流量の増加は、カーテンチャンバ618の中へのカーテンガスの体積流量の対応する低減によって平衡を保つことができる。例えば、カーテンチャンバおよび接合チャンバの両方の中への、例えば窒素の総流速(それぞれ、カーテンガス流速およびスロットルガス流速)は、カーテンガス流速およびスロットルガス流速の一方の変化を、これらの流速の他方の対照的な変化と平衡させることによって、実質的に一定に保つことができる。これが望ましくなり得る。
【0040】
具体的には、接合チャンバの中へのスロットルガスの流量が増加させられる一方で、カーテンチャンバの中へのカーテンガスの流量が一定に保たれる場合には、微分型質量分析計の入口から離れたカーテンガスの流出が増加すると見込むことができる。これが望ましくなり得る。つまり、例えば、図5に示されるように、微分型移動度分析計を通って質量分析計の中へ入るガス流とは反対の方向である、カーテンガスの特定の流出626が、共通のm/zを共有する特定のイオン群について、これらのイオンをクラスタ分離するように選択されていてもよい。したがって、所望されるカーテンガスの流出速度は、関心のイオン群と、どのような逆流がそれらをクラスタ分離するのに役立つよう所望されるかとに、依存してもよい。接合チャンバ614の中へのスロットルガスの流量が増加させられ、次いで、他のものが等しい場合、境界部材619からの流出626も、選択されたものを越えて増加すると見込むことができ、これは望ましくないものとなり得る。したがって、いくつかの実施形態では、接合チャンバの中へのスロットルガスの流入の増加を平衡させるように、カーテンチャンバの中へのカーテンガスの流入を比例して低減することが望ましくなり得る。
【0041】
図5は、これを達成することができる1つの方法を図示する。具体的には、システム600については、カーテンガスおよびスロットルガスの両方に対する共通ガス源が示されている。したがって、例えば、スロットルガスが接合チャンバに流入する速度を増加させるために、この共通ガス源から、より大きい流量が使用される場合には、この共通ガス源からカーテンチャンバの中へのカーテンガスの流速の対応する低減があってもよい。このカーテンチャンバの中へのカーテンガスの流速の低減は、微分型質量分析計602の入口から離れたカーテンガスの流出626が実質的に不変となるように、接合チャンバの中へのスロットルガスの流速の増加の平衡を保つのに役立つことができる。
【0042】
このカーテンガス流の比例減少とのスロットルガス流の減少の平衡は、本発明の他の実施形態と関連する他の手段を使用して達成することもできる。例えば、図4のシステム500の場合、カーテンチャンバ518の中へのカーテンガス流速を増加させることにより、独力で、スロットルガスが接合チャンバ514に流入する速度を増加させることもでき、最初に選択された流出に対して境界部材519からの流出526の有意な増加をもたらす。しかしながら、この効果は、克服することができ、制御漏出口532を介して接合チャンバ514の中へのスロットルガスの流量を低減するように、ガス流制御器533を調整することによって、スロットルガスが接合チャンバに流入する速度さえも低減することができる。当然ながら、スロットルガス流速が減少する場合、微分型質量分析計の入口から離れたカーテンガスの流出を実質的に一定に維持するように、カーテンチャンバの中へのカーテンガス流を比例的に増加させることができる。
【0043】
図6を参照すると、概略図において、本発明の第6の実施形態の側面による微分型移動度分析計/質量分析計システム700が図示されている。明確にするために、400が追加された、図2で使用される同じ参照数字が、図2の要素と類似した要素を指定するために図6で使用される。簡潔にするために、図6に関して図1および2の説明を反復しない。
【0044】
図6に示されるように、システム700は、図2のシステム300と極めて同様である。しかしながら、図6のシステム700は、追加要素を備える。具体的には、図2のシステム300と同様に、カーテンガス供給部720は、導管分岐720aを介して接合チャンバ714の中へのスロットルガスの流速を制御するために使用することができる、制御可能な弁720bを備える。導管またはカーテンガス供給部720はまた、最終的にカーテンチャンバ718の中に入るカーテンガスの流速を制御するための弁720cも備える。弁720cの下流のカーテンガスの流量は、2つの分岐720dおよび720eに分けられる。分岐720d内のカーテンガスの流量は、弁720fによって制御される。同様に、分岐720e内のカーテンガスの流量は、弁720gによって制御される。
【0045】
分岐720dを通るカーテンガス流は、分岐720dを通過し、最終的に真空チャンバ727の中で維持された真空によって微分型移動度分析計702の中へ送出されるカーテンガス/偏流ガスに修飾液を添加するために使用することができる、バブラ720hの中に入る。同様に、別個の修飾剤を、分岐720eを通ってバブラ720iの中に流れるカーテンガスに添加することができる。バブラ720hおよび720iからのカーテンガス流出は、それぞれ出口弁720jおよび720kによって制御することができ、その後に2つの分岐720dおよび720eが合併し、次いで、修飾剤とともにカーテンガスをカーテンチャンバ718の中へ放出する。上述のように、カーテンガスおよび偏流ガスは、全く同一であり、したがって、カーテンガスに修飾剤を添加することにより、システム700に単純性を追加する。修飾剤は、イオンを異なる程度にクラスタ化し、それにより、微分移動度を遷移させることによって選択性を提供する、蒸気となり得る。修飾剤の例は、イソプロピルアルコール等のアルコール、水、ならびに、とりわけ分子上の交換可能な陽子の数を数えるために使用することができる、重水またはメタノール等の水素および重水素交換剤を含むことができる。一般に、修飾剤は、所与のAC振幅におけるピークの観察された補償電圧を変化させる、偏流ガスへの任意の添加剤として定義されてもよい。補償電圧は、低電界移動度に対する高電界移動度の比に関する。修飾剤は、他の方法ならびにクラスタ化現象で作用することができる。例えば、偏流ガスの分極率を変化させることも、観察された補償電圧を変化させることができる。クラスタ化および分極率の変化は、補償電圧の最適条件を変化させるために修飾剤が使用してもよい機構の2つの例であるが、多くの他の機構もあってもよい。
【0046】
図7を参照すると、概略図において、本発明の第7の実施形態の側面による微分型移動度分析計/質量分析計システム800が図示されている。明確にするために、100が追加された、図6で使用される同じ参照数字が、図6の要素と類似した要素を指定するために図7で使用される。簡潔にするために、図7に関して、図1、2、および6を含む先述の図の説明を反復しない。
【0047】
図7に示されるように、システム800は、図6のシステム700と極めて同様である。しかしながら、図7のシステム800は、追加導管分岐821を備える。導管分岐821は、修飾液が添加されるためのバブラ820hおよび820iを通過することなく、カーテンチャンバ818に直接、カーテンガス、この場合は窒素を提供することができる。代替として、導管分岐821は、チャンバ818に直接カーテンガスを提供することができる一方で、1つ以上の修飾剤を含有する追加ガス分画も添加することができる。
【0048】
図8を参照すると、概略図において、本発明の第8の実施形態の側面による微分型移動度分析計/質量分析計システム900が図示されている。明確にするために、600が追加された、図2で使用される同じ参照数字が、図2の要素と類似した要素を指定するために図8で使用される。簡潔にするために、図8に関して、図1および2を含む先述の図の説明を反復しない。
【0049】
図8に示されるように、システム900は、図2のシステム300と極めて同様である。しかしながら、図8のシステム900は、追加要素を備える。具体的には、図2のシステム300と同様に、カーテンガス供給部920は、カーテンチャンバ918の中へのカーテンガスの流速を制御するための制御可能な弁920cを備える。しかしながら、図2および7の実施形態と違って、別個のガス源がカーテンガスおよびスロットルガスに提供される。具体的には、システム900はさらに、2つの分岐942および944に分かれるスロットルガス源940を備える。導管分岐942内のスロットルガス流は、制御可能な弁946によって制御される。同様に、分岐944内のスロットルガス流は、弁948によって制御される。随意で、下記で説明されるように、ガスポート932を介して接合チャンバに補助物質を供給するための補助供給部を提供することができる。
【0050】
分岐942を通るスロットルガス流は、分岐942を通過するスロットルガスに修飾液を添加するために使用することができる、バブラ950の中に入る。
同様に、別個の修飾剤を、バブラ952によって、分岐944を通って流れるスロットルガスに添加することができる。バブラ950および952からのスロットルガス/液体修飾剤流出は、それぞれ出口弁954および956によって制御することができ、その後に2つの分岐942および944が、共通分岐958に合併する。導管958を通って最終的に接合チャンバ914の中へバブラ950および952によって添加されるスロットルガス流および修飾液は、制御可能な弁960によって制御することができる。
【0051】
種々の制御可能な弁946、948、954、および956は、イオンを異なる程度にクラスタ化し、反応させ、それにより、質量分析計904において観察される質量を遷移させることによって選択性を促進するように制御された方式で、液体修飾剤がバブラ950および952によってスロットルガスに添加されることを可能にする。上記で説明されるように、添加される修飾剤はまた、とりわけ、微分型移動度分析計で事前濾過されたイオン上の交換可能な陽子の数を数えるために使用される、重水またはメタノール等の水素および重水素交換剤を含んでもよい。
【0052】
図1から8の微分型移動度分析計/質量分析計システムでは、微分型移動度分析計は、最初に、微分型移動度分析計内のイオンの比較的短い滞留時間と、微分型移動度分析計内の偏流ガスの比較的高いガス流速とを提供するように、寸法決定することができる。選択性を犠牲にして感度を支持する、この微分型移動度分析計の初期付勢は、上記で説明されるようにスロットルガスを接合チャンバに提供して、偏流ガスの流速を減少させることによって、後でオフセットすることができる。図9に図示された実施形態の側面では、反対のアプローチが取られる。
【0053】
図9を参照すると、概略図において、本発明の第9の実施形態の側面による微分型移動度分析計/質量分析計システム1000が図示されている。明確にするために、800が追加された、図1で使用される同じ参照数字が、図1の要素と類似した要素を指定するために図9で使用される。簡潔にするために、図9に関して、図1を含む先述の図の説明を反復しない。
【0054】
図9に示されるように、システム1000は、それぞれ、図1および2のシステム200および300と極めて同様である。しかしながら、接合チャンバ1014にスロットルガスを添加する代わりに、図9のシステム1000は、接合チャンバ1014から流出ガスを引き出すための真空ポンプ1040を含む、ガス出口1032を備える。接合チャンバ1014から引き出された流出ガスの量が増加するにつれて、微分型移動度分析計1002内の偏流ガス1008のガス流速が増加し、それは、同時に感度を増加させながら、選択性および分解能を軽減することができる。この理由により、図9のシステム1000では、微分型移動度分析計1002は、最初に、微分型移動度分析計1002内のイオン1022の比較的長い滞留時間と、微分型移動度分析計1002内の偏流ガス1008の比較的低いガス流速とを提供するように、寸法決定することができる。感度を犠牲にして選択性を支持する、この微分型移動度分析計1002の初期付勢は、真空ポンプ1040によって提供される真空の引き込みを増加させ、偏流ガスの流速を増加させるように流出ガスが接合チャンバ1014から引き出される速度を増加させることによって、後でオフセットすることができる。
【0055】
流出ガスはまた、質量分析計入口が、真空中への不連続ガス流または非常に低いガス流速のいずれか一方を提供するようにサイズ決定される、DMS/MSシステムに有用であってもよい。当技術分野で公知のように、非常に小さい直径の開口部は、真空システムの中へ非常に低いガス流速を提供することができ、入口ダイヤフラムまたは調整可能な開口部の寸法は、質量分析計真空システムの中へ不連続または可変ガス流を提供してもよい。これらの条件下では、以下でより詳細に説明されるように、流出ガスの引き込みは、質量分析計システムの真空システム内への流速にかかわらず、DMSセルを通して不連続搬送ガス流を提供することがきる。
【0056】
例えば、微分型移動度分析計および質量分析計の接合部から流出ガスを引き出すことは、微分型移動度分析計のより高い流量能力を、低流量で低費用の携帯用質量分析計のより低い流量能力と一致させるために使用することができる。送出能力が質量分析計のサイズおよび重量を低減する際に主な制限となり得るため、より小型の質量分析計を提供するように、この送出能力を犠牲にすることができる。このより低い送出能力を補うために、開口部または入口において、シャッタを真空チャンバに提供することができる。このシャッタは、10ミリ秒にわたって開き、次いで、真空ポンプにかかる負荷を低減するよう1秒(1000ミリ秒)にわたって閉じられるように、例えば、1%の負荷サイクルを有する場合がある。
【0057】
しかしながら、微分型移動度分析計を通る流量は、連続的となり得て、好ましくは連続的である。したがって、図9に示されるように、乱流または他の問題を回避するために、質量分析計との微分型移動度分析計の接合部から流出ガスを引き出すことができる。この接合領域からガスを抽出することによって、微分型移動度分析計で濾過されたイオンの大部分が、真空チャンバ入口に進入することができる一方で、微分型移動度分析計を通る過剰な流量を流出ガスとして排出することができる。この流出ガス流は、微分型移動度分析計の乱流を防止または低減し、一定の微分型移動度分析計の分解能を維持することができる。
【0058】
図10を参照すると、一連のグラフにおいて、エフェドリンおよび擬似エフェドリンを含有するサンプルの分解能およびピーク幅に対するスロットルガスの効果が図示されている。微分型移動度分析計電極の寸法は、1×10×300mmであった。RFは、約4000Vの最高最低振幅に設定された。各グラフにおいて、CV電圧がx軸上に描画される一方で、元の信号強度は、スロットルガスが提供されていない状態で達成される信号強度に対して正規化されてy軸上に描画される。
【0059】
示されるように、より多くのスロットルガスが接合チャンバに添加されるにつれて補償電圧ピーク幅が減少する(改善した選択性)一方で、感度が対応して減退する。つまり、図10の最上トレースであるトレース100は、DMS電極セットが感度について最適化され、スロットルガスが提供されない時に生成されるデータを示す。この場合、擬似エフェドリンおよびエフェドリンの移動度ピークは、非常に広い半値幅を伴う単一ピークを生じるように合併される。0.4L/分のスロットルガス流速を表すトレース102から0.8L/分のスロットルガス流速表すトレース104まで、ストットルガスの体積流量が増加するにつれて、2つの異なるピークは、移動度ピークのそれぞれを狭くすることによって達成される選択性の改善の結果として明白になり始める。スロットルガスが約1.4L/分に設定されると、ピーク中心は、これら2つの構成要素の分離を達成するように十分に分解されるが、感度は、約2という因数だけ減少している。さらに、スロットルガス流の増加は、より高い分解能を提供するが、1.8L/分のスロットルガス流速を表すトレース108に示されるように、感度の損失もより大きくなる。
【0060】
したがって、本発明のこれらの実施形態のいくつかの側面によれば、ピークが容易に区別されることを可能にするよう選択性が改善されている一方で、ピークが識別されることを可能にするレベルに感度がとどまるように、感度と選択性との間の容認可能な妥協に到達するまで、スロットルガスを接合チャンバに添加することができる。
【0061】
スロットルガスが提供されないが、代わりに流出ガスが接合チャンバから引き出される、本発明のいくつかの他の実施形態のいくつかの側面によれば、得られる初期質量スペクトルは、微分型移動度分析計内の非常に高い滞留時間による感度の損失を考慮すると、区別可能であるが、非常に微弱な信号を表すピークを示してもよい。本発明のこれらの側面によれば、微分型移動度分析計を通るガス流速を増加させるように、増加量の流出ガスを接合チャンバから引き出すことができ、それにより、微分型移動度分析計内のイオンの滞留時間を削減する(電極の幾何学形状は、この長い滞留時間を提供するように選択されている)。これが発生すると、ピーク高さが増加し、より高い感度を表すが、より幅広くなり、重複してもよい。この過程を観察することによって、操作者は、ピークが容易に区別可能であり、感度が依然として容認可能である時点で、流出ガス流速の増加を停止することができる。
【0062】
本発明の種々の実施形態のいくつかの側面によれば、微分型移動度分析計が内部動作圧力(カーテンチャンバ動作圧力)で維持される一方で、質量分析計は内部動作圧力よりも大幅に低い真空圧で維持される、上記で定義されるような質量分析計システムを操作する方法が提供される。微分型移動度分析計はまた、微分型移動度分析計を通って質量分析計を格納する真空チャンバの中へ提供されるイオンを含むガス流を引き込むように、質量分析計と流体連絡している。微分型移動度分析計と質量分析計との間のガス流は、質量分析計の中への総体積流量を変化させることなく、微分型移動度分析計内のガス流速を変化させるように修正することができる。上記で説明されるように、このガス流速は、例えば、微分型移動度分析計を通るガス流速を減少させるように、微分型移動度分析計と質量分析計との間のガス流に、スロットルガス流速でスロットルガスを添加することによって修正することができる。随意で、スロットルガス流速は、ガス流速の減少を変動させるように変動させることができる。
【0063】
随意で、方法はさらに、質量スペクトルを提供するように、質量分析計に引き込まれたイオンを検出するステップを含む。最初に、微分型移動度分析計の電極の幾何学形状は、良好な感度を提供するが不良な選択性を提供するように選択されてもよい。次いで、操作者は、質量スペクトルについて選択された分解能を選択し、選択された分解能を提供するようにガス流速を決定し、次いで、調整することができる。次いで、操作者は、微分型移動度分析計内のイオンの滞留時間を増加させることによって、調整されたガス流速を提供して質量スペクトルの選択された分解能を提供するように、スロットルガス流速を変動させてガス流速を減少させることができる。しかしながら、これには、感度をいくぶん減少させる結果もあり得る。
【0064】
随意で、接合チャンバを使用して、その間にイオン用のイオン通行経路を画定するように、微分型移動度分析計の出口を質量分析計の入口に接続することができる。そのような実施形態では、スロットルガスは、スロットルガスによるイオン通行経路の乱れを低減するように、接合チャンバの中へ、かつイオン通行経路から離れる方向に方向付けることができる。代替として、スロットルガスは、単純に、接合チャンバの全体を通して分散させることができる。
【0065】
随意で、質量スペクトルの選択された分解能と、この選択された分解能を提供するための調整されたガス流速とは、実質的に同時に決定することができる。例えば、これらのステップは、スロットルガス流速を変動させるステップと実質的に同時に行うことができ、それにより、操作者は、単純に、スロットルガス流速が増加されるにつれて質量スペクトルの分解能が(感度とともに)どのように変化するかを観察することができる。次いで、操作者が(容認可能な感度を保持しながら)容認可能な分解能に到達した後、スロットルガス流速を一定のレベルで維持することができ、それにより、質量スペクトルの選択された分解能を提供するように調整されたガス流速を決定する。
【0066】
本発明の他の実施形態の側面によれば、微分型移動度分析計と質量分析計との間の接合チャンバにスロットルガスを供給する代わりに、微分型移動度分析計を通るガス流速を増加させるように、流出ガス流速で、微分型移動度分析計と質量分析計との間のガス流から流出ガスを引き出すことができる。流出ガス流速は、ガス流速の増加を変動させるように変動させることができる。つまり、微分型移動度分析計と質量分析計との間のガス流から流出ガスが引き出される、実施形態では、微分型移動度分析計の電極の幾何学形状は、最初に、不良な感度または非常に不良な感度という代償を払って良好な選択性を提供するように選択することができる。次いで、微分型移動度分析計と質量分析計との間のガス流から引き出される流出ガスの流出ガス流速を増加させることによって、感度を改善することができる一方で、選択性が軽減される。
【0067】
本発明のいくつかの実施形態のいくつかの側面によれば、操作者は、選択された伝送感度を決定し、選択された伝送感度を提供するように、調整されたガス流速を決定し、調整されたガス流速を提供して選択された伝送感度を提供するように、ガス流速の増加を提供するように流出ガス流速を変動させることができる。随意で、ステップを一緒に行うことができる。つまり、操作者は、接合チャンバに接続された真空ポンプ速度を次第に増加させて、流出ガス流速を増加させ、同時に、選択された伝送感度がどのように改善するかを質量スペクトルから観察することができる。次いで、いったん容認可能な伝送感度に到達すると(一方で選択性は依然として容認可能である)、調整されたガス流速を提供して選択された伝送感度を提供するように、流出ガス流速を維持することができる。例えば、所与の分離のために、操作者は、干渉を排除するためにどれだけの選択性が必要とされるかを調べ、次いで、依然として干渉を除去しながら感度を最大限化することによって、感度を最適化しようとしてもよい。
【0068】
種々の実施形態と併せて出願人の教示を説明したが、出願人の教示がそのような実施形態に限定されることは意図されない。反対に、出願人の教示は、当業者によって理解されるように、種々の代替案、修正、および同等物を包含する。例えば、カーテン壁の代わりに、質量分析計の入口にカーテンガス流を方向付ける管状構造等の、他の境界部材を提供することができる。DMSの前に載置される加熱デバイスに加えて、加熱デバイスは、イオン源の中、カーテンチャンバの中、または質量分析計入口の周囲等の他の場所にも載置されてもよく、カーテンガスおよび/またはスロットルガスはまた、デクタラスタリングを促進するように加熱されてもよい。また、図6に示されたもの等の本発明の実施形態に関して、バブラが、補助供給部要素であるか、または接合チャンバに提供されたスロットルガスに補助物質を添加するように提供される場合、これらの補助物質は、液体修飾剤に限定される必要はない。例えば、交換試薬を添加することができるように、質量較正剤も添加することができる。添加される質量較正剤は、質量分析を較正するために使用することができる一方で、添加される交換試薬は、質量スペクトルにおいて追加情報を提供するように、イオンの構造に基づいてイオンと反応することができる。全てのそのような代替案、修正、および同等物は、本明細書に添付された請求項によって定義されるような本発明の分野および範囲内であると考えられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン源からイオンを受容するための微分型移動度分析計であって、内部動作圧力と、電極と、DCおよびRF電圧を該電極に提供するための少なくとも1つの電圧源とを有する、微分型移動度分析計と、
該微分型移動度分析計から該イオンを受容するために、少なくとも部分的に該微分型移動度分析計にシールされ、かつ該微分型移動度分析計と流体連絡している、質量分析計と、
真空チャンバであって、該真空チャンバは、該微分型移動度分析計を通って該真空チャンバの中へと該イオンを含むガス流を引き込むように動作可能であるように、該内部動作圧力よりも低い真空圧で該質量分析計を維持するために該質量分析計を包囲する、真空チャンバと、
該微分型移動度分析計を通るガス流速を修正するためのガスポートであって、該微分型移動度分析計と該質量分析計との間に位置する、ガスポートと
を備えている、質量分析計システム。
【請求項2】
境界部材と、
前記イオンを乾燥させ、クラスタ分離するために、前記境界部材によって方向付けられるカーテンガスを前記微分型移動度分析計の入口に提供するためのカーテンガス供給部と、
該イオンをクラスタ分離するために、該カーテンガス、スロットルガス、および該微分型移動度分析計の該入口の上流にある加熱域のうちの少なくとも1つを加熱するための少なくとも1つの加熱器と
をさらに備えている、請求項1に記載の分析計システム。
【請求項3】
前記ガスポートは、前記ガス流速を増加させるために、前記微分型移動度分析計と前記質量分析計との間に位置する前記ガス流からガス流出を引き込むためのガス出口を備えている、請求項1に記載の分析計システム。
【請求項4】
前記ガス出口は、前記ガス流からの前記ガス流出を変動させ、前記ガス流速の増加を変動させるように調整可能である、請求項3に記載の分析計システム。
【請求項5】
前記ガスポートは、前記ガス流速を低減するために、前記微分型移動度分析計と前記質量分析計との間の前記ガス流にスロットルガスを添加するためのガス入口を備えている、請求項1に記載の分析計システム。
【請求項6】
前記ガス入口は、前記ガス流速の減少を変動させるために、前記スロットルガスの流入を変動させるように調整可能である、請求項5に記載の分析計システム。
【請求項7】
前記微分型移動度分析計の出口を前記質量分析計の入口に接続して、その間にイオン通行経路を画定する、接合チャンバをさらに備えており、前記ガスポートは、該接合チャンバの中に位置する、請求項6に記載の分析計システム。
【請求項8】
前記微分型移動度分析計の出口は、前記通行経路に実質的に沿って、前記質量分析計の入口に前記イオンを伝送するように、該質量分析計の入口と整列させられ、
前記接合チャンバは、該通行経路から離間された側壁を備えており、
前記ガスポートは、該側壁に沿って、かつ前記イオン通行経路から離れる方向に、前記スロットルガスを方向付けるように配向される、請求項7に記載の分析計システム。
【請求項9】
前記接合チャンバは、ランダマイザ部材を備えており、
前記ガスポートは、該ランダマイザ部材において前記スロットルガスを方向付けて、該接合チャンバの全体を通して該スロットルガスを分散させるように配向される、請求項7に記載の分析計システム。
【請求項10】
補助物質を前記接合チャンバに供給するための補助供給部をさらに備えており、該補助供給部は、前記ガスポートに接続されている、請求項7に記載の分析計システム。
【請求項11】
微分型移動度分析計と、少なくとも部分的に前記微分型移動度分析計にシールされ、かつ該微分型移動度分析計と流体連絡している、真空チャンバに格納された質量分析計とを含む、質量分析計システムを操作するための方法であって、該方法は、
a)内部動作圧力において該微分型移動度分析計を維持することと、
b)イオンを該微分型移動度分析計に提供し、選択された分離RF電圧および選択された補償DC電圧を該微分型移動度分析計に提供することと、
c)該微分型移動度分析計を通って前記真空チャンバの中へと該イオンを含むガス流を引き込むように、該内部動作圧力よりも低い真空圧において該質量分析計を維持することと、
d)該微分型移動度分析計を通るガス流速を変化させるために、該微分型移動度分析計と該質量分析計との間の該ガス流を修正することと
を含む、方法。
【請求項12】
前記微分型移動度分析計を通る前記ガス流速を変化させるために、該微分型移動度分析計と前記質量分析計との間の前記ガス流を修正することは、該微分型移動度分析計を通るガス流速を減少させるために、該微分型移動度分析計と該質量分析計との間の該ガス流に、スロットルガス流速におけるスロットルガスを添加することを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
d)前記ガス流速における減少を変動させるために、前記スロットルガス流速を変動させることをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
質量スペクトルを提供するために、前記質量分析計に引き込まれた前記イオンを検出することと、
該質量スペクトルに対して選択された分解能を選択することと、
該選択された分解能を提供するために、調整されたガス流速を決定することと、
該調整されたガス流速を提供して該選択された分解能を提供するために、該ガス流速の減少を提供するように該スロットルガス流速を変動させることと
をさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
接合チャンバを使用して、前記微分型移動度分析計の出口を前記質量分析計の入口に接続して、その間にイオン通行経路を画定することをさらに含み、d)該接合チャンバの中へ、かつ該イオン通行経路から離れる方向に、前記スロットルガスを方向付けることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
接合チャンバを使用して、前記微分型移動度分析計の出口を前記質量分析計の入口に接続して、その間にイオン通行経路を画定することをさらに含み、d)該接合チャンバの全体を通して前記スロットルガスを分散させることを含む、請求項13に記載の方法。
【請求項17】
前記質量スペクトルに対する前記選択された分解能を選択することと、該選択された分解能を提供するために前記調整されたガス流速を決定することとは、実質的に同時に起こる、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
補助物質を前記接合チャンバに提供することをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項19】
前記補助物質は、修飾液、質量分析を較正するための質量較正剤、前記イオンのうちの少なくとも一部と反応させるための交換試薬のうちの少なくとも1つを備えている、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記微分型移動度分析計を通る前記ガス流速を変化させるために、該微分型移動度分析計と前記質量分析計との間の前記ガス流を修正することは、該微分型移動度分析計を通るガス流速を増加させるために、該微分型移動度分析計と該質量分析計との間の該ガス流から、流出ガス流速において流出ガスを引き込むことを含む、請求項11に記載の方法。
【請求項21】
d)前記ガス流速における増加を変動させるために、前記流出ガス流速を変動させることをさらに含む、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
選択された伝送感度を決定することと、
該選択された伝送感度を提供するために、調整されたガス流速を決定することと、
該調整されたガス流速を提供して該選択された伝送感度を提供するために、該ガス流速における増加を提供するように前記流出ガス流速を変動させることと
をさらに含む、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記伝送感度を選択することと、該選択された伝送感度を提供するために前記調整されたガス流速を決定することとは、実質的に同時に起こる、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
前記真空チャンバは、前記微分型移動度分析計から前記イオンを受容するための真空チャンバ入口を備えている、請求項11に記載の方法であって、該方法は、
前記選択された分離RF電圧および前記選択された補償DC電圧に加えて、入口DC電位を該真空チャンバ入口に提供し、該入口DC電位およびDMS DCオフセット電圧の合計を該微分型移動度分析計に提供することをさらに含む、方法。
【請求項25】
前記真空チャンバ入口に提供される前記入口DC電位が決定され、次いで、前記DMS DCオフセット電圧は、前記微分型移動度分析計と前記真空チャンバ入口との間のイオン流速を変化させることによって、該微分型移動度分析計から該真空チャンバの中へのイオン伝送を強化するように該入口DC電位に対して調整される、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記微分型移動度分析計の前記電位が、前記DMS DCオフセット電圧によってオフセットされる前記真空チャンバ入口の前記電位を追跡するように、該真空チャンバ入口および該微分型移動度分析計の両方に提供される前記入口DC電位を変化させることをさらに含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
前記微分型移動度分析計を通って前記質量分析計の中へガス流を提供するために、該微分型移動度分析計の入口に、選択された体積流量でカーテンガスを提供し、前記イオンをクラスタ分離するために、該微分型移動度分析計の入口から離れる方向に、かつ該微分型移動度分析計の外側にカーテンガス流出を提供することと、
該カーテンガス流出の実質的に一定の速度を維持するために、前記スロットルガス流速の変化と反比例および比例して、該カーテンガスの該選択された体積流量を調整することと
をさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項28】
前記微分型移動度分析計を通る実質的に一定の流量を維持するために、該微分型移動度分析計と前記質量分析計との間の前記ガス流から、流出ガス流速において流出ガスを引き込むことによって、該微分型移動度分析計と該質量分析計との間の該ガス流を修正することをさらに含む、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−522363(P2011−522363A)
【公表日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510791(P2011−510791)
【出願日】平成21年5月28日(2009.5.28)
【国際出願番号】PCT/CA2009/000741
【国際公開番号】WO2009/143623
【国際公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【出願人】(510075457)ディーエイチ テクノロジーズ デベロップメント プライベート リミテッド (35)
【Fターム(参考)】