説明

調整器診断システム、調整器診断装置及び調整器診断方法

【課題】子調整器の診断を行うことが可能な調整器診断システム、調整器診断装置及び調整器診断方法を提供する。
【解決手段】調整器診断システム100は、ガスボンベ110から複数の住宅2側に燃料ガスを供給するメイン流路121と、メイン流路121をバイパスするバイパス流路122と、メイン流路121に設けられた親調整器140と、バイパス流路122に設けられ、親調整器140の調整圧力よりも調整圧力が高く設定された子調整器150と、子調整器150を診断する調整器診断装置160と、を備えている。調整器診断装置160は、バイパス流路122における燃料ガスの圧力又は流量に応じた計測信号を出力する計測センサと、計測センサにより出力された計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形に基づいて、子調整器150の異常を診断する異常診断部とを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調整器診断システム、調整器診断装置及び調整器診断方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、集合住宅など複数の住宅に燃料ガスを供給するガス供給システムが提案されている。ガス供給システムは、ガス供給元からの燃料ガスを複数の住宅側に供給するガス流路と、ガス流路を通じで流れてきた燃料ガスを複数の住宅に分配供給する複数の個別ガス流路とを備えている。
【0003】
また、ガス流路は、メインとなるメイン流路と、メイン流路をバイパスするバイパス流路とからなり、バイパス流路上に漏洩が発生しているか否かを判断する漏洩検知装置が設けられている。そして、漏洩検知装置は、燃料ガスが例えば30日間連続して流れている場合に、漏洩が発生していると判断し、警報や発呼を行う。
【0004】
また、ガス供給システムにおいて、メイン流路には親調整器が設置され、バイパス流路には親調整器よりも調整圧力が高くされた子調整器が設置される。このため、各家庭で小流量の燃料ガスが使用されたり漏洩が発生したりすると、まず、子調整器を介して燃料ガスが流れる。その後、使用される燃料ガスの流量が多くなると、親調整器及び子調整器の双方を介して燃料ガスが流れる(例えば特許文献1及び2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平3−41300号公報
【特許文献2】特開平5−296873号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、従来の漏洩検知装置では漏洩を判断するにあたり、子調整器が正常に動作していることが必要となる。すなわち、子調整器に異物が混入したり、経年劣化により子調整器の調整圧力が低下したりした場合には、漏洩による流量が発生しても親調整器を介して燃料ガスが流れることもある。このような場合、燃料ガスは漏洩検知装置を通ることがなく、漏洩検知をできなくなってしまう。
【0007】
このため、従来では、作業員が現地に訪問し、ガス遮断を行ったうえで圧力計を設置して圧力測定を行う必要があり、子調整器の診断に多くの工数が掛かっていた。
【0008】
本発明はこのような従来の課題を解決するためになされたものであり、その発明の目的とするところは、子調整器の診断を行うことが可能な調整器診断システム、調整器診断装置及び調整器診断方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の調整器診断システムは、ガス供給元から複数の住宅側に燃料ガスを供給するメイン流路と、前記メイン流路をバイパスするバイパス流路と、前記メイン流路に設けられた親調整器と、前記バイパス流路に設けられ、前記親調整器の調整圧力よりも調整圧力が高く設定された子調整器と、前記子調整器を診断する調整器診断装置と、を備え、前記調整器診断装置は、前記バイパス流路における燃料ガスの圧力又は流量に応じた計測信号を出力する計測センサと、前記計測センサにより出力された計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形に基づいて、前記子調整器の異常を診断する異常診断手段と、を有することを特徴とする。
【0010】
この調整器診断システムによれば、バイパス流路における燃料ガスの圧力又は流量に応じた計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形に基づいて、子調整器の異常を診断する。ここで、本件発明者らは、子調整器に異常が発生すると、振動波形が変化することを見出した。このため、上記の如く、振動波形に基づいて子調整器の異常を診断することができる。
【0011】
また、本発明の調整器診断システムにおいて、前記調整器診断装置は、前記子調整器が正常であるときに、前記計測センサにより出力された計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形を加工して得られた加工データを、正常値データとして記憶する記憶手段をさらに備え、前記異常診断手段は、前記記憶手段により記憶された正常値データと、前記計測センサにより出力された計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形とに基づいて、前記子調整器の異常を診断することが好ましい。
【0012】
この調整器診断システムによれば、子調整器が正常であるときの正常値データを記憶し、正常値データと振動波形とに基づいて、子調整器を診断する。ここで、得られる振動波形は、ガス供給システムの配管状況などによって変化し得るものである。このため、上記の如く、調整器診断システムの設置直後など、子調整器が正常であるときに振動波形を加工して得られた加工データを、正常値データとして記憶させておくことで、ガス供給システムの配管状況などの影響があったとしても、子調整器の異常を診断することができる。
【0013】
また、本発明の調整器診断システムにおいて、前記調整器診断装置は、日時を計測可能な時計手段をさらに備え、前記異常診断手段は、前記時計手段により正常値データを記憶したタイミングと同等のタイミングであると判断された場合における、前記計測センサにより出力された計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形に基づいて、前記子調整器の異常を診断することが好ましい。
【0014】
この調整器診断システムによれば、正常値データを記憶したタイミングと同等のタイミングにおける、振動波形に基づいて、子調整器の異常を診断する。一般に同等のタイミング(例えば平日の早朝5時から6時など)では、同じ家庭の同じ人により、同じガス器具が使用される可能性が高い。ここで、振動波形は、各家庭で使用されるガス器具の種類によっても異なってくることから、同等のタイミングとすることにより、同じガス器具の使用に対する振動波形に基づいて子調整器の異常を診断することができる。
【0015】
また、本発明の調整器診断システムにおいて、前記異常診断手段は、前記子調整器の正常時における振動波形を生成する生成手段と、前記微小時間中に得られた振動波形と前記生成手段により生成された振動波形との類似度推移を算出する類似度推移算出手段と、を備え、前記類似度推移算出手段により算出された類似度推移と前記記憶手段により記憶された加工データとに基づいて、前記子調整器の異常を診断することが好ましい。
【0016】
この調整器診断システムによれば、子調整器の正常時における振動波形を生成し、微小時間中に得られた振動波形と生成された振動波形との類似度推移を算出し、算出した類似度推移に基づいて、子調整器の異常を診断する。ここで、生成手段は子調整器の正常時における振動波形を生成しているため、子調整器が正常であると、算出される類似度は高くなる傾向にあり、類似度推移についても全体的に高い値を示す傾向にある。一方、子調整器が異常であると、類似度は正常時ほど高くならず、類似度推移についてもやや低くなる。従って、上記のように類似度推移に基づいて診断を実行することで、子調整器を診断することができる。
【0017】
また、本発明の調整器診断システムにおいて、前記異常診断手段は、前記微小時間中に得られた振動波形を解析して、周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを算出する解析手段を備え、前記解析手段により算出されたスペクトルデータと前記記憶手段により記憶された加工データとに基づいて、前記子調整器の異常を診断することが好ましい。
【0018】
この調整器診断システムによれば、微小時間中に得られた振動波形を解析して、周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを算出し、算出したスペクトルデータに基づいて、子調整器の異常を診断する。ここで、正常な子調整器の使用時における振動波形には、周波数及び振幅に特徴があらわれる。よって、波形を解析して周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを得ると共に、このスペクトルデータに基づいて診断を実行することで、子調整器を診断することができる。
【0019】
また、本発明の調整器診断装置は、ガス供給元から複数の住宅に燃料ガスを供給するメイン流路をバイパスするバイパス流路における燃料ガスの圧力又は流量に応じた計測信号を出力する計測センサと、前記計測センサにより出力された計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形に基づいて、前記メイン流路に設けられた親調整器の調整圧力よりも調整圧力が高く設定され、前記バイパス流路に設けられた子調整器の異常を診断する異常診断手段と、を備えることを特徴とする。
【0020】
この調整器診断装置によれば、バイパス流路における燃料ガスの圧力又は流量に応じた計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形に基づいて、子調整器の異常を診断する。ここで、本件発明者らは、子調整器に異常が発生すると、振動波形が変化することを見出した。このため、上記の如く、振動波形に基づいて子調整器の異常を診断することができる。
【0021】
また、本発明の調整器診断方法は、ガス供給元から複数の住宅に燃料ガスを供給するメイン流路と、前記メイン流路をバイパスするバイパス流路と、前記メイン流路に設けられた親調整器と、前記バイパス流路に設けられ、前記親調整器の調整圧力よりも調整圧力が高く設定された子調整器と、を備えた調整器診断システムの調整器診断方法であって、前記バイパス流路における燃料ガスの圧力又は流量に応じた計測信号を出力する第1工程と、前記第1工程において出力された計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形に基づいて、前記子調整器の異常を診断する第2工程と、を有することを特徴とする。
【0022】
この調整器診断方法によれば、バイパス流路における燃料ガスの圧力又は流量に応じた計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形に基づいて、子調整器の異常を診断する。ここで、本件発明者らは、子調整器に異常が発生すると、振動波形が変化することを見出した。このため、上記の如く、振動波形に基づいて子調整器の異常を診断することができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、子調整器の診断を行うことが可能な調整器診断システム、調整器診断装置及び調整器診断方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施形態に係る調整器診断システムを含むガス供給システムの構成図である。
【図2】図1に示した調整器診断装置の詳細を示す構成図である。
【図3】流量推移の一例を示す図である。
【図4】図2に示した生成部により生成される波形を示す図である。
【図5】図1に示した子調整器の正常時に微小時間中に得られる振動波形を示すグラフの一例である。
【図6】図1に示した子調整器の異常時に微小時間中に得られる振動波形を示すグラフの一例である。
【図7】図1に示した子調整器の正常時と異常時とにおける連続NCCを示すグラフである。
【図8】図2に示した解析部により算出されるスペクトルデータを示すグラフであって、子調整器が正常である場合における圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフである。
【図9】図2に示した解析部により算出されるスペクトルデータを示すグラフであって、子調整器が正常である場合における圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフである。
【図10】調整器診断方法を示すフローチャートであって、連続NCCを正常値データとして記憶する際の処理を示している。
【図11】調整器診断方法を示すフローチャートであって、スペクトルデータを正常値データとして記憶する際の処理を示している。
【図12】調整器診断方法を示すフローチャートであって、連続NCCに基づいて子調整器の異常を診断する第1手法の処理を示している。
【図13】調整器診断方法を示すフローチャートであって、スペクトルデータに基づいて子調整器の異常を診断する第2手法の処理を示している。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明の好適な実施形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の実施形態に係る調整器診断システムを含むガス供給システム1の構成図である。なお、以下では、LPガスを燃料ガスとして供給するガス供給システム1を例に説明するが、これに限らず、ガス供給システム1は都市ガスを供給するものであってもよい。
【0026】
ガス供給システム1は、ガスボンベ(ガス供給元)110から複数の住宅2に燃料ガスを供給する住宅設備である。このガス供給システム1は、調整器診断システム100と、住宅側設備200とからなっている。調整器診断システム100は、ガスボンベ110と、ガス流路120と、圧力調整器130〜150と、調整器診断装置160とを備えている。
【0027】
ガス流路120は、ガスボンベ110から複数の住宅2側まで連続する流路であって、メイン流路121と、バイパス流路122とからなっている。メイン流路121は、ガスボンベ110から複数の住宅2側に燃料ガスを供給するメインとなる流路である。バイパス流路122は、メイン流路121をバイパスするものであって、両端がメイン流路121に接続されている。
【0028】
圧力調整器130〜150は、ガス流路120上に設けられ、閉塞状態と開放状態との2状態により下流側のガス圧力を調整するものである。このうち、元調整器130はガスボンベ110側に設けられている。また、親調整器140は、メイン流路121に設けられている。詳細に親調整器140は、メイン流路121のうちバイパス流路122によってバイパスされる部分に設けられている。子調整器150は、バイパス流路122に設けられ、親調整器140の調整圧力よりも調整圧力が高く設定されたものである。調整器診断装置160は、ガス流路120のうちバイパス流路122上に設けられ、子調整器150が正常であるか異常であるかを診断するものである。
【0029】
住宅側設備200は、複数の個別ガス流路210と、複数のバルブ220と、複数のガスメータ230と、複数のガス器具240とを備えている。複数の個別ガス流路210は、ガス流路120を通じて流れてきた燃料ガスを複数の住宅2に供給するものである。これら複数の個別ガス流路210は、ガス流路120から分岐するようにして、複数の住宅2にそれぞれに燃料ガスを供給する。
【0030】
バルブ220は、各個別ガス流路210の上流部位に設けられている。このバルブ220を開閉することにより、各住宅2の住居者は燃料ガスを家庭内に引き込むことができる。
【0031】
ガスメータ230は、燃料ガスの流量を測定して積算流量を表示するものである。複数のガス器具240は、ガスストーブ、ファンヒータ、給湯器、床暖房、ガステーブル、及び、ガスBF風呂釜などである。
【0032】
このようなガス供給システム1において、小流量の燃料ガスは、親調整器140と子調整器150との調整圧力の違いから、親調整器140側を流れず、子調整器150側を介して流れることとなる。また、大流量の燃料ガスは、親調整器140及び子調整器150の双方を介して流れることとなる。
【0033】
図2は、図1に示した調整器診断装置160の詳細を示す構成図である。図2に示すように、調整器診断装置160は、流量センサ(計測センサ)161と、圧力センサ(計測センサ)162と、判断部163と、トリガ信号発生部164と、時計部(時計手段)165と、初期データ記憶部(記憶手段)166とを備えている。
【0034】
流量センサ161は、調整器診断装置160の流路内におけるガス流量に応じた計測信号を出力するものであって、超音波センサやフローセンサなどで構成される。圧力センサ162は、調整器診断装置160の流路内におけるガス圧力に応じた計測信号を出力するものであって、ピエゾ抵抗式や静電容量式などのセンサによって構成される。
【0035】
判断部163は、調整器診断装置160における各種判断を行うものであって、例えば、流量センサ161からの信号及び圧力センサ162からの信号に基づいて、子調整器150の診断処理を実行するものである。
【0036】
また、判断部163は、異常診断部(異常診断手段)163aと、生成部(生成手段)163bと、類似度推移算出部(類似度推移算出手段)163cと、解析部(解析手段)163dと、サンプリング時間調整部163eとを備えている。
【0037】
異常診断部163aは、子調整器150の異常を診断するものである。この異常診断部163aは、流量センサ161及び圧力センサ162の少なくとも一方の計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形に基づいて、子調整器150の異常を診断する。
【0038】
図3は、流量推移の一例を示す図である。図3に示すように、時刻t1において第1のガス器具240が使用開始されたとする。このとき、流量値はF1を示す。そして、時刻t2において第2のガス器具240が使用開始されたとすると、流量値はF3(=F1+F2)を示す。
【0039】
その後、時刻t3において第1のガス器具240の使用が終了したとすると、流量値は第2のガス器具240のみの流量であるF2を示す。次いで、時刻t4において第2のガス器具240についても使用が終了したとすると、流量値は「0」を示す。
【0040】
本実施形態において異常診断部163aは、時刻t1〜時刻t4のように、流量が所定以上変化した直後の微小時間中に得られる波形に基づいて、子調整器150の異常を診断する。微小時間とは、例えば最大で2秒程度の時間である。なお、微小時間は最大で2秒に限られず、2秒以上の時間であってもよい。ここで、本件発明者らは、子調整器150が正常である場合と、異常である場合とで、微小時間中に得られる振動波形に相違があることを見出した。このため、異常診断部163aは、微小時間中に得られる振動波形から、子調整器150を診断できることとなる。
【0041】
なお、図3に示す例では、流量の所定以上の変化を示しているが、圧力についても同様である。
【0042】
再度、図2を参照する。生成部163b、類似度推移算出部163c、解析部163d及び初期データ記憶部166は、異常診断部163aによる異常診断を行うために機能するものである。すなわち、異常診断部163aは、生成部163b、類似度推移算出部163c、及び初期データ記憶部166と協働して、子調整器150を診断すると共に(第1手法)、解析部163d及び初期データ記憶部166と協働して、子調整器150を診断する(第2手法)。
【0043】
まず、生成部163b、類似度推移算出部163c、及び初期データ記憶部166を説明しつつ、第1の手法を説明について説明する。
【0044】
生成部163bは、子調整器150の正常時における振動波形を生成するものである。図4は、図2に示した生成部163bにより生成される波形を示す図である。生成部163bは、図4に示す如く圧力が振動する子調整器正常時の振動波形を生成する。
【0045】
生成部163bにより子調整器正常時の振動波形を生成する場合には、予め所定の変数を備えた近似式などを記憶しておき、実際にセンサ161,162から得られた信号に基づき、近似式の変数に数値を代入することによって生成することができる。また、子調整器正常時の振動波形の生成方法は、上記に限られず、公知の他の手法など適宜選択可能である。また、生成部163bは子調整器正常時の振動波形を生成するが、子調整器正常時の振動波形は予め記憶されていてもよい。
【0046】
類似度推移算出部163cは、センサ41,42によって計測された微小時間中の振動波形と、生成部163bによって生成された子調整器正常時の振動波形との類似度推移を算出するものである。なお、類似度推移とは、本実施形態において連続的な正規相互相関(NCC:Normalized Cross Correlation)をいう。より具体的には、以下の式(1)により類似度RNCCが求められる。類似度推移算出部163cは、この式(1)による類似度RNCCの算出を連続的に行うことにより、類似度推移(以下、連続NCCという)を求める。
【数1】

【0047】
図5は、図1に示した子調整器150の正常時に微小時間中に得られる振動波形を示すグラフの一例である。子調整器150が正常である場合に得られる振動波形は図5に示すようになる。すなわち、振動波形は、初期値が約3.17kPaであり、その後時刻100msecまでの間に約3.01kPaから約3.16kPaまでの振動を繰り返す。そして、時刻100msec〜時刻200msecにおいて微小な振動を繰り返し、時刻200msec以降ではほぼ一定値(約3.07kPa)となる。
【0048】
ここで、図5に示す振動波形は、図4に示した生成部163bにより生成された振動波形と相関が高い。このため、類似度推移算出部163cにより算出される連続NCCは高い値を示す。
【0049】
図6は、図1に示した子調整器150の異常時に微小時間中に得られる振動波形を示すグラフの一例である。子調整器150が異常である場合、調整圧力が下がることから、得られる振動波形は図6に示すようになる。すなわち、振動波形は、初期値が約2.98kPaであり、その後時刻100msecまでの間に約2.86kPaから約2.97kPaまでの振動を繰り返す。そして、時刻100msec〜時刻200msecにおいて微小な振動を繰り返し、時刻200msec以降ではほぼ一定値(約2.91kPa)となる。
【0050】
ここで、図6に示す振動波形は、図4に示した生成部163bにより生成された振動波形と相関が高いとはいえない。このため、類似度推移算出部163cにより算出される連続NCCは正常時よりも高い値を示さないこととなる。
【0051】
図7は、図1に示した子調整器150の正常時と異常時とにおける連続NCCを示すグラフである。図7に示すように、子調整器150が正常である場合、連続NCCは時刻0において約1.0を示し、約50msecにおいて約0.93程度を示す。その後、連続NCCは、約0.93程度から徐々に上昇してく。
【0052】
これに対して、子調整器150が異常である場合、連続NCCは時刻0においてマイナスの値を示し、約50msecにおいて約0.90程度を示す。その後、連続NCCは、約0.90程度から徐々に上昇してく。
【0053】
以上のように、生成部163bにより子調整器150が正常であるときの振動波形を生成するため、連続NCCは子調整器150が正常であるときの方が、異常であるときよりも高い値を示すこととなる。
【0054】
異常診断部163aは、上記のような値の相違から子調整器150の異常を診断することとなる。具体的に異常診断部163aは、時刻20msecにおける類似度から子調整器150の異常を診断することとなる。時刻20msecにおける正常時の類似度は、約1.0を示す。このため、異常診断部163aは、時刻20msecにおける類似度が1.0の±3%の範囲内にない場合に、子調整器150が異常であると診断する。一方、時刻20msecにおける類似度が1.0の±3%の範囲内にある場合、異常診断部163aは子調整器150が正常であると診断する。
【0055】
なお、上記において異常診断部163aは、1.0を基準に正常であるか異常であるかを判断しているが、これに限らず、約0.93(50msecにおける正常時の類似度)を基準にしてもよい。すなわち、正常時の類似度のいずれかの値を規定値とし、これを基準としてもよい。また、上記において異常診断部163aは、±3%の範囲を基準に正常であるか異常であるかを判断しているが、これに限らず、±1%や±5%を基準にしてもよい。すなわち、予め定めた所定範囲を基準とすればよい。
【0056】
また、図7では子調整器150が正常時であるときの連続NCCを示しているが、ガス供給システム1の配管状況によっては、連続NCCは図7に示すようにならない場合がある。このため、本実施形態に係る調整器診断システム100では、予め子調整器150が正常であるときの連続NCC(加工データの一例)を記憶しておき、これに基づいて子調整器150が正常であるか異常であるかを診断してもよいが、より望ましくは以下のようにする。
【0057】
すなわち、調整器診断システム100の設置直後など、子調整器150が正常であるときに微小時間中に得られた振動波形を加工して得られた連続NCCを、正常値データとして初期データ記憶部166に記憶させておくことが望ましい。これにより、ガス供給システム1の配管状況などの影響があったとしても、子調整器150の異常を精度良く診断できるからである。なお、設置直後であるか否かは、調整器診断装置160の初回電源オン時であるか否かなどに基づいて判断すればよい。
【0058】
また、調整器診断装置160は、日時を計測可能な時計部165を備えているため、初期データ記憶部166に正常値データを記憶させたときと同等のタイミング(時刻、曜日、月等)で、センサ161,162により出力された計測信号から得られる振動波形に基づき、子調整器150の異常を診断することが望ましい。一般に同等のタイミング(例えば平日の早朝5時から6時など)では、同じ家庭2の同じ人により、同じガス器具240が使用される可能性が高い。ここで、振動波形は、各家庭2で使用されるガス器具240の種類によっても異なってくることから、同等のタイミングとすることにより、同じガス器具240の使用に対する振動波形に基づいて子調整器150の異常を診断することができる。なお、同等のタイミングとは、全く同じ時間、分、秒でなくともよく、5〜10分など多少のズレを含むタイミングである。
【0059】
次に、解析部163d、及び初期データ記憶部166を説明しつつ、第2の手法を説明について説明する。
【0060】
解析部163dは、微小時間中に得られた振動波形を解析して、周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを算出するものである。具体的に本実施形態に係る解析部163dは、振動波形をフーリエ変換することにより、スペクトルデータを算出する。なお、解析部163dはフーリエ変換によりスペクトルデータを算出する場合に限らず、他の方法によってスペクトルデータを算出するようにしてもよい。
【0061】
図8は、図2に示した解析部163dにより算出されるスペクトルデータを示すグラフであって、子調整器150が正常である場合における圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフである。図8に示すように、子調整器150が正常である場合、得られるスペクトルデータは20Hzにおいてピークを有する。
【0062】
図9は、図2に示した解析部163dにより算出されるスペクトルデータを示すグラフであって、子調整器150が正常である場合における圧力波形をフーリエ変換して得られるスペクトルデータを示すグラフである。図9に示すように、子調整器150が異常である場合、得られるスペクトルデータは20Hzにおいてピークを有さない。
【0063】
以上のように、スペクトルデータは子調整器150が正常であるときに20Hz付近にピークを示し、異常であるときには20Hz付近にピークを示さないこととなる。
【0064】
異常診断部163aは、上記のような値の相違から子調整器150の異常を診断することとなる。具体的に異常診断部163aは、20Hzにおけるピークの値とから子調整器150の異常を診断することとなる。20Hzにおけるピークの値は、約15.5を示す。このため、異常診断部163aは、20Hzにおけるピークの値が15.5の±10%の範囲内にない場合に、子調整器150が異常であると診断する。一方、20Hzにおけるピークの値が15.5の±10%の範囲内にある場合、異常診断部163aは子調整器150が正常であると診断する。
【0065】
なお、上記において異常診断部163aは、15.5を基準に正常であるか異常であるかを判断しているが、これに限らず、例えば約3.5(5Hzにおける逆ピーク)を基準にしてもよい。すなわち、正常時のピーク等のいずれかの値を規定値とし、これを基準としてもよい。また、上記において異常診断部163aは、±10%の範囲を基準に正常であるか異常であるかを判断しているが、これに限らず、±5%や±20%を基準にしてもよい。すなわち、予め定めた所定範囲を基準とすればよい。
【0066】
なお、上記と同様に、調整器診断システム100の設置直後など、子調整器150が正常であるときに微小時間中に得られた振動波形を加工して得られたスペクトルデータ(加工データの一例)を、正常値データとして初期データ記憶部166に記憶させておくことが望ましい。さらには、初期データ記憶部166に正常値データを記憶させたときと同等のタイミング(時刻、曜日、月等)で、センサ161,162により出力された計測信号から得られる振動波形に基づき、子調整器150の異常を診断することが望ましい。
【0067】
再度、図2を参照する。トリガ信号発生部164は、ガス流量やガス圧力の変化時(例えば図3に示す時刻t1,t2,t3,t4の時点)を検出し、トリガ信号を出力するものである。例えばトリガ信号発生部164は、微分回路を含んで構成されており、微分回路により所定以上の変化を検出する。
【0068】
トリガ信号は各センサ161,162及びサンプリング時間調整部163eに入力される。サンプリング時間調整部163eは、トリガ信号が入力されると予め定められた通常のサンプリング時間(例えば流量では2秒、圧力では10秒)よりもサンプリング時間を短縮する。このとき、サンプリング時間調整部163eは、微小時間だけサンプリング時間を短縮する。これにより、判断部163は、微小時間における振動波形を詳細に計測する。すなわち、異常診断部163aによる診断を正確ならしめるために高速サンプリング実施する。また、各センサ161,162は、トリガ信号が入力されると、高速サンプリングにあわせて信号を出力することとなる。加えて、通常状態におけるセンサ161,162の駆動電流を小さくしておき、トリガ信号入力後に駆動電流を通常電流に大きくするようにしてもよい。
【0069】
また、サンプリング時間調整部163eは、トリガ信号発生部164によりトリガ信号が発生されるまで、ガス流量及びガス圧力の少なくとも一方のサンプリング時間を、通常のサンプリング時間よりも長くし、例えば流量について10秒としておく。ここで、トリガ信号が発生しておらず、流量や圧力に所定以上の変化がない場合とは、流量や圧力が安定しており、計測の必要性が少ない場合といえる。よって、本実施形態では、このような場合にサンプリング時間を長くしておくことで、消費電力を軽減させる。
【0070】
次に、本実施形態に係る調整器診断方法について説明する。図10は、調整器診断方法を示すフローチャートであって、連続NCCを正常値データとして記憶する際の処理を示している。
【0071】
まず、図10に示すように、判断部163は調整器診断システム100の設置直後であるか否かを判断する(S11)。なお、ステップS11では設置直後であるか否かを判断しているが、これに限らず、調整器診断システム100が正常であるタイミングであれば、設置直後でなくともよい。
【0072】
設置直後でないと判断した場合(S11:NO)、図10に示す処理は終了する。一方、設置直後であると判断した場合(S11:YES)、判断部163は、トリガ信号が入力されたか否かを判断する(S12)。トリガ信号が入力されなかったと判断した場合(S12:NO)、トリガ信号が入力されたと判断されるまで、この処理が繰り返される。
【0073】
一方、トリガ信号が入力された判断した場合(S12:YES)、サンプリング時間調整部163eは、サンプリング時間を通常のサンプリング時間よりも短縮し、短縮されたサンプリング時間で圧力を計測する(S13)。具体的には、サンプリング時間を10秒から1マイクロ秒に短縮する。
【0074】
次に、生成部163bは、子調整器正常時の振動波形を生成する(S14)。そして、類似度推移算出部163cは、ステップS14において生成された子調整器正常時の振動波形と、ステップS13の計測によって得られた振動波形とに基づいて、式(1)から連続NCCを算出する(S15)。
【0075】
その後、判断部163は、ステップS15において算出した連続NCCを、正常値データとして初期データ記憶部166に記憶させる(S16)。その後、判断部163は、ステップS13において圧力計測したときのタイミング(時刻、曜日、月等)を、初期データ記憶部166に記憶させる(S17)。その後、図10に示す処理は終了する。
【0076】
図11は、調整器診断方法を示すフローチャートであって、スペクトルデータを正常値データとして記憶する際の処理を示している。
【0077】
まず、図11に示すように、まず、ステップS21〜S23において図10に示したステップS11〜S13と同様の処理が実行される。
【0078】
次に、解析部163dは、ステップS23の計測によって得られた振動波形をフーリエ変換してスペクトルデータを算出する(S24)。その後、判断部163は、ステップS24において算出したスペクトルデータを、正常値データとして初期データ記憶部166に記憶させる(S25)。その後、判断部163は、ステップS13において圧力計測したときのタイミング(時刻、曜日、月等)を、初期データ記憶部166に記憶させる(S26)。その後、図11に示す処理は終了する。
【0079】
図12は、調整器診断方法を示すフローチャートであって、連続NCCに基づいて子調整器150の異常を診断する第1手法の処理を示している。
【0080】
まず、判断部163は、トリガ信号が入力されたか否かを判断する(S31)。トリガ信号が入力されなかったと判断した場合(S31:NO)、トリガ信号が入力されたと判断されるまで、この処理が繰り返される。
【0081】
一方、トリガ信号が入力された判断した場合(S31:YES)、判断部163は、図10に示したステップS16において正常値データを記憶したときと同等のタイミングであるか否かを判断する(S32)。正常値データを記憶したときと同等のタイミングでないと判断した場合(S32:NO)、図12に示す処理は終了する。
【0082】
正常値データを記憶したときと同等のタイミングであると判断した場合(S32:YES)、サンプリング時間調整部163eは、サンプリング時間を通常のサンプリング時間よりも短縮し、短縮されたサンプリング時間で圧力を計測する(S33)。具体的には、サンプリング時間を10秒から1マイクロ秒に短縮する。
【0083】
次に、生成部163bは、子調整器正常時の振動波形を生成する(S34)。そして、類似度推移算出部163cは、ステップS34において生成された子調整器正常時の振動波形と、ステップS33の計測によって得られた振動波形とに基づいて、式(1)から連続NCCを算出する(S35)。
【0084】
その後、異常診断部163aは、図10のステップS16において記憶された正常値データの特定時刻における値を規定値とし、ステップS35において算出された連続NCCのうち特定時刻における値が規定値の所定範囲内であるか否かを判断する(S36)。
【0085】
規定値の所定範囲内であると判断した場合(S36:YES)、異常診断部163aは、子調整器150が正常であると判断する(S37)。そして、図12に示す処理は終了する。一方、規定値の所定範囲内でないと判断した場合(S36:NO)、異常診断部163aは、子調整器150が異常であると判断する(S38)。そして、図12に示す処理は終了する。なお、子調整器150が異常であると診断した場合、通信によりガスの管理センターなどに通知することが望ましい。
【0086】
図13は、調整器診断方法を示すフローチャートであって、スペクトルデータに基づいて子調整器150の異常を診断する第2手法の処理を示している。
【0087】
まず、ステップS41〜S43において図12に示したステップS31〜S33と同様の処理は実行される。次に、解析部163dは、ステップS43の計測によって得られた振動波形をフーリエ変換してスペクトルデータを算出する(S44)。
【0088】
その後、異常診断部163aは、図11のステップS45において記憶された正常値データの特定時刻における値を規定値とし、ステップS44において算出されたスペクトルデータのうち特定時刻における値が規定値の所定範囲内であるか否かを判断する(S45)。
【0089】
規定値の所定範囲内であると判断した場合(S45:YES)、異常診断部163aは、子調整器150が正常であると判断する(S46)。そして、図13に示す処理は終了する。一方、規定値の所定範囲内でないと判断した場合(S45:NO)、異常診断部163aは、子調整器150が異常であると判断する(S47)。そして、図13に示す処理は終了する。なお、この場合も同様に、通信によりガスの管理センターなどに通知することが望ましい。
【0090】
このようにして、本実施形態に係る調整器診断システム100、調整器診断装置160及び調整器診断方法によれば、バイパス流路122における燃料ガスの圧力又は流量に応じた計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形に基づいて、子調整器150の異常を診断する。ここで、本件発明者らは、子調整器150に異常が発生すると、振動波形が変化することを見出した。このため、上記の如く、振動波形に基づいて子調整器150の異常を診断することができる。
【0091】
また、子調整器150が正常であるときの正常値データを記憶し、正常値データと振動波形とに基づいて、子調整器を診断する。ここで、得られる振動波形は、ガス供給システム1の配管状況などによって変化し得るものである。このため、上記の如く、調整器診断システム100の設置直後など、子調整器150が正常であるときに振動波形を加工して得られた加工データを、正常値データとして記憶させておくことで、ガス供給システム1の配管状況などの影響があったとしても、子調整器150の異常を診断することができる。
【0092】
また、正常値データを記憶したタイミングと同等のタイミングにおける、振動波形に基づいて、子調整器150の異常を診断する。一般に同等のタイミング(例えば平日の早朝5時から6時など)では、同じ家庭2の同じ人により、同じガス器具240が使用される可能性が高い。ここで、振動波形は、各家庭2で使用されるガス器具240の種類によっても異なってくることから、同等のタイミングとすることにより、同じガス器具240の使用に対する振動波形に基づいて子調整器150の異常を診断することができる。
【0093】
また、子調整器150の正常時における振動波形を生成し、微小時間中に得られた振動波形と生成された振動波形との連続NCCを算出し、算出した連続NCCに基づいて、子調整器150の異常を診断する。ここで、生成部163bは子調整器150の正常時における振動波形を生成しているため、子調整器150が正常であると、算出される類似度は高くなる傾向にあり、連続NCCについても全体的に高い値を示す傾向にある。一方、子調整器150が異常であると、類似度は正常時ほど高くならず、連続NCCについてもやや低くなる。従って、上記のように連続NCCに基づいて診断を実行することで、子調整器150を診断することができる。
【0094】
また、微小時間中に得られた振動波形を解析して、周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを算出し、算出したスペクトルデータに基づいて、子調整器150の異常を診断する。ここで、正常な子調整器150の使用時における振動波形には、周波数及び振幅に特徴があらわれる。よって、波形を解析して周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを得ると共に、このスペクトルデータに基づいて診断を実行することで、子調整器150を診断することができる。
【0095】
以上、実施形態に基づき本発明を説明したが、本発明は上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、変更を加えてもよい。
【0096】
例えば、本実施形態において類似度推移を式(1)により算出しているが、これに限らず、他の方法で類似度推移を算出するようにしてもよい。
【0097】
また、本実施形態では燃料ガスをLPガスとする場合の例について説明したが、これに限らず、都市ガスの場合にも適用可能である。
【0098】
また、本実施形態では微小時間を最大で2秒としているが、これに限らず、数十秒などのより長い時間であってもよい。
【0099】
また、本実施形態では連続NCCやスペクトルデータの特定時刻における値を規定値とし、規定値の所定範囲内であるか否かに基づいて、子調整器150が正常であるか異常であるかを診断している。しかし、これに限らず、正常値データとして記憶された連続NCCやスペクトルデータと、振動波形を加工して得られた連続NCCやスペクトルデータとの類似度を算出して、子調整器150が正常であるか異常であるかを診断してもよい。
【0100】
さらに、類似度を算出して子調整器150が正常であるか異常であるかを診断する場合、連続NCCやスペクトルデータの全域で類似度を算出してもよいし、一部域のみで類似度を算出してもよい。
【0101】
また、使用終了直後の微小時間中に得られる振動波形からガス器具240を判断する場合、サンプリング時間調整部163eは、使用終了直後の微小時間だけ、サンプリング時間を通常のサンプリング時間よりも短縮することが望ましい。これにより、使用終了直後の微小時間中に得られる振動波形の取得もれを防止できるからである。
【符号の説明】
【0102】
1…ガス供給システム
2…住宅
100…調整器診断システム
110…ガスボンベ(ガス供給元)
120…ガス流路
121…メイン流路
122…バイパス流路
130…元調整器
140…親調整器
150…子調整器
160…調整器診断装置
161…流量センサ(計測センサ)
162…圧力センサ(計測センサ)
163…判断部
163a…異常診断部(異常診断手段)
163b…生成部(生成手段)
163c…類似度推移算出部(類似度推移算出手段)
163d…解析部(解析手段)
163e…サンプリング時間調整部
164…トリガ信号発生部
165…時計部(時計手段)
166…初期データ記憶部(記憶手段)
200…住宅側設備
210…複数の個別ガス流路
220…複数のバルブ
230…複数のガスメータ
240…複数のガス器具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガス供給元から複数の住宅側に燃料ガスを供給するメイン流路と、
前記メイン流路をバイパスするバイパス流路と、
前記メイン流路に設けられた親調整器と、
前記バイパス流路に設けられ、前記親調整器の調整圧力よりも調整圧力が高く設定された子調整器と、
前記子調整器を診断する調整器診断装置と、を備え、
前記調整器診断装置は、
前記バイパス流路における燃料ガスの圧力又は流量に応じた計測信号を出力する計測センサと、
前記計測センサにより出力された計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形に基づいて、前記子調整器の異常を診断する異常診断手段と、
を有することを特徴とする調整器診断システム。
【請求項2】
前記調整器診断装置は、前記子調整器が正常であるときに、前記計測センサにより出力された計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形を加工して得られた加工データを、正常値データとして記憶する記憶手段をさらに備え、
前記異常診断手段は、前記記憶手段により記憶された正常値データと、前記計測センサにより出力された計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形とに基づいて、前記子調整器の異常を診断する
ことを特徴とする請求項1に記載の調整器診断システム。
【請求項3】
前記調整器診断装置は、日時を計測可能な時計手段をさらに備え、
前記異常診断手段は、前記時計手段により正常値データを記憶したタイミングと同等タイミングであると判断された場合における、前記計測センサにより出力された計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形に基づいて、前記子調整器の異常を診断する
ことを特徴とする請求項2に記載の調整器診断システム。
【請求項4】
前記異常診断手段は、
前記子調整器の正常時における振動波形を生成する生成手段と、
前記微小時間中に得られた振動波形と前記生成手段により生成された振動波形との類似度推移を算出する類似度推移算出手段と、を備え、
前記類似度推移算出手段により算出された類似度推移と前記記憶手段により記憶された加工データとに基づいて、前記子調整器の異常を診断する
ことを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載の調整器診断システム。
【請求項5】
前記異常診断手段は、
前記微小時間中に得られた振動波形を解析して、周波数と振幅との相関を示すスペクトルデータを算出する解析手段を備え、
前記解析手段により算出されたスペクトルデータと前記記憶手段により記憶された加工データとに基づいて、前記子調整器の異常を診断する
ことを特徴とする請求項2又は請求項3のいずれかに記載の調整器診断システム。
【請求項6】
ガス供給元から複数の住宅に燃料ガスを供給するメイン流路をバイパスするバイパス流路における燃料ガスの圧力又は流量に応じた計測信号を出力する計測センサと、
前記計測センサにより出力された計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形に基づいて、前記メイン流路に設けられた親調整器の調整圧力よりも調整圧力が高く設定され、前記バイパス流路に設けられた子調整器の異常を診断する異常診断手段と、
を備えることを特徴とする調整器診断装置。
【請求項7】
ガス供給元から複数の住宅に燃料ガスを供給するメイン流路と、
前記メイン流路をバイパスするバイパス流路と、
前記メイン流路に設けられた親調整器と、
前記バイパス流路に設けられ、前記親調整器の調整圧力よりも調整圧力が高く設定された子調整器と、を備えた調整器診断システムの調整器診断方法であって、
前記バイパス流路における燃料ガスの圧力又は流量に応じた計測信号を出力する第1工程と、
前記第1工程において出力された計測信号の所定以上の変化時からの微小時間中に得られる振動波形に基づいて、前記子調整器の異常を診断する第2工程と、
を有することを特徴とする調整器診断方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−220821(P2011−220821A)
【公開日】平成23年11月4日(2011.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−90065(P2010−90065)
【出願日】平成22年4月9日(2010.4.9)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】