説明

調湿システム

【課題】比較的単純な構造により、複数の室内空間を調湿できる調湿システムを提供する。
【解決手段】調湿システムは、複数の調湿ユニット(10)と1つの冷媒回路(80,101)とを備える。冷媒回路(80,101)は、冷媒を圧縮する圧縮機(84,102)と、複数の調湿ユニット(10)の各放湿側の調湿部(40,150)の液体吸収剤を冷媒によって加熱するための放熱部(46a,46b,103)と、複数の調湿ユニット(10)の各吸湿側の調湿部(40,150)を冷媒によって冷却するための蒸発部(46b,46a,105)とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体吸収剤を用いて空気を調湿する調湿システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、液体吸収剤を用いて水分を調湿する調湿装置が知られている。例えば特許文献1には、この種の調湿装置が開示されている(例えば同文献の図8を参照)。
【0003】
この調湿装置は、給気側モジュールと排気側モジュールとを有して液体吸収剤が循環する循環流路と、冷媒が循環して蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う冷媒回路とを有している。
【0004】
給気側モジュールと排気側モジュールは、液体吸収剤の流路と空気流路とを区画する透湿膜をそれぞれ備えている。給気側モジュールの透湿膜は、室内側へ空気を供給するための給気通路に面し、排気側モジュールの透湿膜は、室外へ空気を排出するための排気通路に面している。冷媒回路は、圧縮機、凝縮器、膨張弁、及び蒸発器が接続された閉回路である。
【0005】
この調湿装置の運転時には、凝縮器で加熱された液体吸収剤が、排気側モジュールへ送られる。排気側モジュールでは、液体吸収剤中の水分が空気(排気)へ放出され、液体吸収剤の濃度が徐々に高くなっていく。排気側モジュールを通過した液体吸収剤は、蒸発器で冷却された後、給気側モジュールへ送られる。給気側モジュールでは、空気(給気)中の水分が液体吸収剤へ吸収され、液体吸収剤の濃度が徐々に低くなっていく。給気側モジュールを通過した液体吸収剤は、再び凝縮器で加熱されて排気側モジュールへ送られる。また、給気側モジュールで除湿された空気は、室内へ供給される。
【0006】
以上のように、この調湿装置では、冷媒回路によって液体吸収剤を加熱又は冷却しながら各モジュールで放湿動作又は吸湿動作を行うことで、空気と液体吸収剤との間での水蒸気分圧の差を確保して空気の調湿を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平5−146627号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、上記のような調湿装置としては、複数の室内空間を同時に除湿したり加湿したりする要求がある。仮に、特許文献1に開示の調湿装置を用いて、複数の室内空間を同時に除湿したり加湿したりしようとすると、室内空間の数量に応じて、冷媒回路の数や循環回路の数量を増加させる必要があり、調湿システムの複雑化、高コスト化を招いてしまう。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的は、比較的単純な構造により、複数の室内空間を調湿できる調湿システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1の発明は、調湿システムを対象とし、液体吸収剤と空気との間で水分を授受する2つの調湿部(40,150)を有し、一方の調湿部(40,150)の液体吸収剤中の水分を空気中へ放出するとともに、空気中の水分を他方の調湿部(40,150)の液体吸収剤中に吸収して空気を除湿又は加湿する複数の調湿ユニット(10)と、冷媒を圧縮する圧縮機(84,102)と、前記複数の調湿ユニット(10)の各放湿側の調湿部(40,150)の液体吸収剤を冷媒によって加熱するための放熱部(46a,46b,103)と、前記複数の調湿ユニット(10)の各吸湿側の調湿部(40,150)を冷媒によって冷却するための蒸発部(46b,46a,105)とを有して蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う1つの冷媒回路(80,101)とを備えていることを特徴とする。
【0011】
第1の発明の調湿システムは、複数の調湿ユニット(10)と1つの冷媒回路(80,101)とを備える。各調湿ユニット(10)では、放湿側の調湿部(40,150)において液体吸収剤中の水分が空気中へ放出される一方、吸湿側の調湿部(40,150)において空気中の水分が液体吸収剤へ吸収される。これにより、各調湿部(40,150)では、空気の除湿や加湿がそれぞれ行われる。
【0012】
本発明では、各調湿ユニット(10)の放湿側の調湿部(40,150)の液体吸収剤を加熱するための放熱部(46a,46b,103)と、各調湿ユニット(10)の吸湿側の調湿部(40,150)の液体吸収剤を冷却するための蒸発部(46b,46a,105)とが、それぞれ1つの冷媒回路(80,101)に設けられる。つまり、本発明では、冷媒回路(80,101)の圧縮機(84,12)、放熱部(46a,46b,103)、及び蒸発部(46b,46a,105)が、複数の調湿ユニット(10)に共有される。その結果、調湿システムの簡素化が図られる。
【0013】
第2の発明は、第1の発明において、前記複数の調湿ユニット(10)の各調湿用モジュール(40)が直列に接続されて前記液体吸収剤が循環する複数の吸収剤循環回路(30)を備え、前記冷媒回路(80)は、各吸収剤循環回路(30)に対応する前記放熱部(46a,46b)及び蒸発部(46b,46a)を有して互いに並列に設けられる複数の利用回路(90)を備えている。
【0014】
第2の発明では、各調湿ユニット(10)毎に吸収剤循環回路(30)が設けられ、これらの吸収剤循環回路(30)にそれぞれ2つの調湿用モジュール(40)が直列に接続される。また、冷媒回路(80)には、放熱部(46a,46b)及び蒸発部(46b,46a)を有する複数の利用回路(90)が並列に設けられる。複数の利用回路(90)へ分流して各放熱部(46a,46b)にそれぞれ送られた冷媒は、各調湿ユニット(10)の放湿側の調湿用モジュール(40)の液体吸収剤の加熱に利用される。また、各蒸発部(46b,46a)にそれぞれ送られた冷媒は、各調湿ユニット(10)の吸湿側の調湿用モジュール(40)の液体吸収剤の冷却に利用される。
【0015】
第3の発明は、第2の発明において、前記冷媒回路(80)には、各利用回路(90)へ供給される冷媒の流量をそれぞれ調整する複数の冷媒流量調整部(88)が設けられていることを特徴とする。
【0016】
第3の発明では、冷媒流量調整部(88)によって各利用回路(90)へ供給される冷媒の流量がそれぞれ個別に調整可能となる。これにより、放熱部(46a,46b)での液体吸収剤の加熱能力や、蒸発部(46b,46a)での液体吸収剤の冷却能力も個別に調整できる。その結果、各調湿ユニット(10)における除湿能力や加湿能力も個別に調整できる。
【0017】
第4の発明は、第2又は第3の発明において、前記各調湿ユニット(10)の2つの調湿用モジュール(40)は、室内へ供給される空気が流れる給気側モジュール(40a)と、室外へ排出される空気が流れる排気側モジュール(40b)とで構成され、前記冷媒回路(80)は、前記給気側モジュール(40a)へ送られる液体吸収剤と前記冷媒回路(80)の冷媒とを熱交換させる第1伝熱部(46a)と、前記排気側モジュール(40b)へ送られる液体吸収剤と前記冷媒回路(80)の冷媒とを熱交換させる第2伝熱部(46b)と、前記1伝熱部(46a)が前記放熱部となり前記第2伝熱部(46b)が前記蒸発部とする冷媒流路と、前記第2伝熱部(46b)が前記放熱部となり前記第1伝熱部(46a)が前記蒸発部となる冷媒流路とを切り換える流路切換機構(91)とを備えていることを特徴とする。
【0018】
第4の発明では、各利用回路(90)の冷媒の流路が流路切換機構(91)によって切り換えられることで、除湿運転と加湿運転とが個別に切換可能となっている。
【0019】
具体的に、第1伝熱部(46a)が放熱部となり第2伝熱部(46b)が蒸発部になる運転が行われると、給気側モジュール(40a)に送られる液体吸収剤が放熱部によって加熱される。すると、給気側モジュール(40a)では、液体吸収剤中の水蒸気分圧が、空気中の水蒸気分圧より高くなり易い。従って、給気側モジュール(40a)では、液体吸収剤中の水分が空気中に放出される。また、この運転では、排気側モジュール(40b)に送られる液体吸収剤が蒸発部によって冷却される。すると、排気側モジュール(40b)では、液体吸収剤の水蒸気分圧が空気中の水蒸気分圧より低くなり易い。従って、排気側モジュール(40b)では、空気中の水分が液体吸収剤中へ吸収され、液体吸収剤の濃度が低くなる。以上のような運転が継続して行われることで、水分が付与された空気が室内へ供給され、この室内が加湿される。
【0020】
また、第2伝熱部(46b)が放熱部となり第1伝熱部(46a)が蒸発部になる運転が行われると、給気側モジュール(40a)に送られる液体吸収剤が蒸発部によって冷却される。すると、給気側モジュール(40a)では、液体吸収剤中の水蒸気分圧が、空気中の水蒸気分圧より低くなり易い。従って、給気側モジュール(40a)では、空気中の水分が液体吸収剤中に吸収される。また、この運転では、排気側モジュール(40b)に送られる液体吸収剤が放熱部によって加熱される。すると、排気側モジュール(40b)では、液体吸収剤中の水蒸気分圧が空気中の水蒸気分圧より高くなり易い。従って、排気側モジュール(40b)では、空気中の水分が液体吸収剤中へ放出され、液体吸収剤の濃度が高くなる。以上のような運転が継続して行われることで、水分が除去された空気が室内へ供給され、この室内が除湿される。
【0021】
第5の発明は、第2乃至第4のいずれか1つの発明において、前記複数の吸収剤循環回路(30)には、液体吸収剤の循環量を調整する循環量調整機構(31)がそれぞれ設けられていることを特徴とする。
【0022】
第5の発明では、循環量調整機構(31)によって吸収剤循環回路(30)を循環する液体吸収剤の循環量が調整可能となる。その結果、各調湿用モジュール(40)での放湿量や吸湿量も個別に調整でき、ひいては各調湿ユニット(10)における除湿能力や加湿能力も個別に調整できる。
【0023】
第6の発明は、第1の発明において、前記放熱部(103)の冷媒と熱交換する液体吸収剤が流れる加熱流路(121)と、前記蒸発部(105)の冷媒と熱交換する液体吸収剤が流れる冷却流路(122)とを有し、前記加熱流路(121)の流出端と前記冷却流路(122)の流入端との間に前記複数の放湿側の調湿用モジュール(150)を並列に接続し、且つ前記冷却流路(122)の流出端と前記加熱流路(121)の流入端との間に前記複数の吸湿側の調湿用モジュール(150)を並列に接続する1つの吸収剤回路(120)を備えていることを特徴とする。
【0024】
第6の発明の調湿システムは、1つの冷媒回路(101)と1つの吸収剤回路(120)とを有する。吸収剤回路(120)では、加熱流路(121)を流れる液体吸収剤が放熱部(103)によって加熱された後、放湿側の調湿用モジュール(150)に送られる。これにより、放湿側の調湿用モジュール(150)では、液体吸収剤中から空気中への水分の放出が促進される。また、吸収剤回路(120)では、冷却流路(122)を流れる液体吸収剤が蒸発部(105)によって冷却された後、吸湿側の調湿用モジュール(150)に送られる。これにより、吸湿側の調湿用モジュール(150)では、空気中から液体吸収剤中への水分の吸収が促進される。
【0025】
第7の発明は、第6の発明において、前記吸収剤回路(120)には、各調湿ユニット(10)の調湿用モジュール(150)へ供給される液体吸収剤の流量をそれぞれ調整する複数の流量調整部(141,142)が設けられていることを特徴とする。
【0026】
第7の発明では、調湿用モジュール(150)へ供給される液体吸収剤の流量が流量調整部(141,142)によって調整される。これにより、各調湿用モジュール(150)での放湿量や吸湿量も個別に調整でき、ひいては各調湿ユニット(10)における除湿能力や加湿能力も個別に調整できる。
【0027】
第8の発明は、第6又は第7の発明において、前記各調湿ユニット(10)の2つの調湿部(40,150)は、室内へ供給される空気が流れる給気側モジュール(40a)と、室外へ排出される空気が流れる排気側モジュール(40b)とで構成され、前記吸収剤回路(120)には、前記加熱流路(121)で加熱された液体吸収剤が給気側モジュール(40a)へ供給されると同時に前記冷却流路(122)で冷却された液体吸収剤が排気側モジュール(40b)を流れる流路と、前記加熱流路(121)で加熱された液体吸収剤が排気側モジュール(40b)を流れると同時に前記冷却流路(122)冷却された液体吸収剤が給気側モジュール(40a)を流れる流路とを、複数の調湿ユニット(10)毎に切り換える吸収剤流路切換機構(143,144)が設けられていることを特徴とする。
【0028】
第8の発明では、吸収剤流路切換機構(143,144)が切り換わることで、複数の調湿ユニット(10)毎に液体吸収剤の流路が切り換えられる。具体的に、調湿ユニット(10)において、加熱流路(121)で加熱された液体吸収剤が給気側モジュール(40a)を流れると、液体吸収剤中の水分が給気側の空気中へ放出される。その結果、室内が加湿される。その後、冷却流路(122)で冷却された液体吸収剤が排気側モジュール(40b)を流れると、排気側の空気中の水分が液体吸収剤へ吸収される。
【0029】
また、調湿ユニット(10)において、加熱流路(121)で加熱された液体吸収剤が排気側モジュール(40b)を流れると、液体吸収剤中の水分が排気側の空気中へ放出される。その後、冷却流路(122)で冷却された液体吸収剤が給気側モジュール(40a)を流れると、給気側の空気中の水分が液体吸収剤中へ吸収される。その結果、室内が除湿される。
【発明の効果】
【0030】
本発明によれば、1つの冷媒回路(80,101)の圧縮機(84,102)と、放熱部(46a,46b,103)と、蒸発部(46b,46a,105)とを複数の調湿ユニット(10)で共用しているため、調湿システムの簡素化、低コスト化を図ることができる。
【0031】
第2の発明によれば、各調湿ユニット(10)毎に吸収剤循環回路(30)をそれぞれ設けているため、液体吸収剤が流れる流路の長さを比較的短くでき、この流路の取り回しも簡便となる。
【0032】
第3の発明によれば、冷媒流量調整部(88)によって各利用回路(90)へ供給される冷媒の流量を調整することで、各調湿ユニット(10)の調湿能力も個別に調整できる。従って、各室内空間の要求に応じた運転を個別に行うことができる。
【0033】
第4の発明によれば、各利用回路(90)の流路切換機構(91)を切り換えることで、各調湿ユニット(10)毎に除湿運転と加湿運転とを個別に切り換えることができる。このため、例えばある室内空間の除湿を行うと同時にある室内空間の加湿を行うことができる。
【0034】
第5の発明によれば、吸収剤循環回路(30)の液体吸収剤の循環量を調整することで、各調湿ユニット(10)の調湿能力も個別に調整できる。従って、各室内空間の要求に応じた運転を個別に行うことができる。
【0035】
第6の発明によれば、1つの冷媒回路(101)と1つの吸収剤回路(120)とを用いて調湿システムを構成しているため、この調湿システムの簡素化、低コスト化を図ることができる。また、吸収剤回路(120)で液体吸収剤を搬送するための機構(例えばポンプ)の数量も削減できる。また、第7の発明では、流量調整部(141,142)によって各調湿用モジュール(150)毎の放湿量や吸湿量を調整でき、各調湿ユニット(10)の調湿能力も個別に調整できる。従って、各室内空間の要求に応じた運転を個別に行うことができる。
【0036】
第8の発明によれば、吸収剤回路(120)の吸収剤流路切換機構(143,144)を切り換えることで、各調湿ユニット(10)毎に除湿運転と加湿運転とを個別に切り換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】実施形態1の調湿ユニットの概略構造を示す平面図である。
【図2】実施形態1に係る調湿システムの概略の配管系統図である。
【図3】実施形態1の調湿用モジュールをその一部を省略して図示した概略斜視図である。
【図4】実施形態1の調湿用モジュールの水平断面を示す概略断面図である。
【図5】実施形態1の調湿用モジュールをその一部を省略して図示した概略斜視図である。
【図6】実施形態1の調湿用モジュールをその一部を省略して図示した概略の分解斜視図である。
【図7】実施形態1の調湿用モジュールに設けられた内側部材を示す図であって、(A)は概略斜視図であり、(B)はその水平断面を示す概略断面図である。
【図8】実施形態1に係る調湿システムの概略の配管系統図であり、第1の運転例を説明するためのものである。
【図9】実施形態1に係る調湿システムの概略の配管系統図であり、第2の運転例を説明するためのものである。
【図10】実施形態1に係る調湿システムの概略の配管系統図であり、第3の運転例を説明するためのものである。
【図11】実施形態1に係る調湿システムの概略の配管系統図であり、第4の運転例を説明するためのものである。
【図12】実施形態2に係る調湿システムの概略の配管系統図である。
【図13】実施形態2の調湿モジュールの概略斜視図ある。
【図14】実施形態2の調湿システムの概略の配管系統図であり、第1の運転例を説明するためのものである。
【図15】実施形態2の調湿システムの概略の配管系統図であり、第2の運転例を説明するためのものである。
【図16】実施形態2の調湿システムの概略の配管系統図であり、第3の運転例を説明するためのものである。
【図17】実施形態2の調湿システムの概略の配管系統図であり、第4の運転例を説明するためのものである。
【図18】実施形態2の調湿システムの概略の配管系統図であり、第5の運転例を説明するためのものである。
【図19】実施形態2の調湿システムの概略の配管系統図であり、第6の運転例を説明するためのものである。
【発明を実施するための形態】
【0038】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0039】
《発明の実施形態1》
本発明の実施形態1について説明する。本実施形態は、複数の室内空間をそれぞれ個別に調湿する調湿システム(S)である。実施形態1の調湿システム(S)は、各室内に対応する複数の調湿ユニット(10)と、各調湿ユニット(10)に接続する冷媒回路(80)とを備えている。
【0040】
−調湿ユニットの構成−
本実施形態の調湿ユニット(10)について、図1を参照しながら説明する。
【0041】
本実施形態の調湿ユニット(10)は、ケーシング(20)を備えている。このケーシング(20)には、給気ファン(27)と排気ファン(28)と吸収剤循環回路(30)とが収容されている。
【0042】
同図に示すように、ケーシング(20)は、直方体の箱状に形成されている。ケーシング(20)では、その一方の端面に外気吸込口(21)と排気口(24)とが形成され、その他方の端面に内気吸込口(23)と給気口(22)とが形成されている。ケーシング(20)の内部空間は、給気通路(25)と排気通路(26)に仕切られている。給気通路(25)は、外気吸込口(21)及び給気口(22)に連通している。給気通路(25)には、給気ファン(27)と、第1の調湿用モジュールである給気側モジュール(40a)とが配置されている。一方、排気通路(26)は、内気吸込口(23)及び排気口(24)に連通している。排気通路(26)には、排気ファン(28)と、第2の調湿用モジュールである排気側モジュール(40b)とが配置されている。
【0043】
図2に示すように、吸収剤循環回路(30)は、給気側モジュール(40a)と、排気側モジュール(40b)と、ポンプ(31)とが接続された閉回路である。この吸収剤循環回路(30)では、ポンプ(31)の吐出側が排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)の入口に、排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)の出口が給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)の入口に、給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)の出口がポンプ(31)の吸入側に、それぞれ接続されている。また、各吸収剤循環回路(30)には、液体吸収剤として塩化リチウム水溶液が充填されている。
【0044】
−調湿用モジュールの構成−
給気側モジュール(40a)と排気側モジュール(40b)は、何れも調湿用モジュール(40)によって構成されている。ここでは、調湿用モジュール(40)について、図3〜図7を適宜参照しながら説明する。
【0045】
調湿用モジュール(40)は、液体吸収剤によって空気の湿度を調整する調湿部を構成している。この調湿用モジュール(40)は、一つの外側ケース(50)と、複数の内側部材(60)と、二つの伝熱部(46)とを備えている。内側部材(60)及び伝熱部(46)は、外側ケース(50)に収容されている。また、外側ケース(50)及び内側部材(60)は、空気が流れる空気通路(42)と液体吸収剤が流れる吸収剤通路(41)を仕切る仕切り部材(45)を構成している。
【0046】
図3に示すように、外側ケース(50)は、中空の直方体状に形成されており、底板(51)と、天板(52)と、一対の側板(53,54)と、一対の端板(55)とを備えている。なお、図3は、天板(52)と手前側の端板(55)とを省略した状態を示している。各側板(53,54)には、側板(53,54)を厚さ方向に貫通する通風孔(56)が複数形成されている。各通風孔(56)は、縦長の長方形状となっている。図4にも示すように、複数の通風孔(56)は、側板(53,54)の長手方向に一定の間隔で一列に配置されている。
【0047】
図5及び図7にも示すように、内側部材(60)は、両端が開口した中空の直方体状に形成されている。この内側部材(60)は、支持枠(61)と、透湿膜(62)とを備えている。支持枠(61)は、その下面と上面が板状に形成されている。つまり、支持枠(61)は、その下面と上面が閉塞されている。透湿膜(62)は、支持枠(61)の側面を覆うように設けられている。従って、内側部材(60)に設けられた透湿膜(62)は、平面状となっている。透湿膜(62)は、液体吸収剤を透過させずに水蒸気を透過させる膜である。この透湿膜(62)としては、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン、四ふっ化エチレン樹脂)等のふっ素樹脂から成る疎水性多孔膜を用いることができる。
【0048】
外側ケース(50)には、各側板(53,54)に形成された通風孔(56)と同数の内側部材(60)が収容されている。外側ケース(50)の内部において、内側部材(60)は、それぞれの側面を覆う透湿膜(62)が互いに向かい合う姿勢で、外側ケース(50)の長手方向に一列に配列されている。
【0049】
図4に示すように、内側部材(60)の端面の開口部(63)と、外側ケース(50)の側板(53,54)の通風孔(56)とは、形状と大きさが一致している。内側部材(60)は、開口部(63)が側板(53,54)の通風孔(56)と重なるように、外側ケース(50)に固定される。つまり、図4において、内側部材(60)の支持枠(61)の左端面は、左側に配置された側板(53)の内側面における通風孔(56)の周縁部に接合される。また、同図において、内側部材(60)の支持枠(61)の右端面は、右側に配置された側板(54)の内側面における通風孔(56)の周縁部に接合される。
【0050】
図4に示すように、内側部材(60)の内側の空間は、外側ケース(50)の通風孔(56)を介して外部と連通しており、空気が流れる空気通路(42)となっている。空気通路(42)では、調湿ユニット(10)の給気通路(25)又は排気通路(26)を流れる空気が流通する。また、内側部材(60)の外側で且つ外側ケース(50)の内側の空間は、液体吸収剤が流れる吸収剤通路(41)となっている。吸収剤通路(41)では、吸収剤循環回路(30)を循環する液体吸収剤が流通する。従って、透湿膜(62)は、その表面が空気通路(42)を流れる空気と接触し、その裏面が吸収剤循環回路(30)を流れる液体吸収剤と接触する。
【0051】
上述したように、外側ケース(50)に収容された複数の内側部材(60)は、それぞれの側面を覆う透湿膜(62)が互いに向かい合う姿勢で一列に並んでいる。このため、外側ケース(50)と内側部材(60)によって構成された本実施形態の仕切り部材(45)では、平面状の透湿膜(62)が互いに向かい合う姿勢で一定の間隔をおいて配置されており、透湿膜(62)の配列方向(本実施形態では外側ケース(50)の長手方向)に空気通路(42)と吸収剤通路(41)とが交互に形成されている。なお、吸収剤通路(41)において、両側を透湿膜(62)に挟まれた部分は、内側部材(60)の上側と下側の部分を介して互いに連通している。
【0052】
図6に示すように、伝熱部(46)は、複数本の伝熱管(70)と、一つの第1ヘッダ(71)と、一つの第2ヘッダ(72)とを備えている。
【0053】
各伝熱管(70)は、アルミニウム製の多穴扁平管である(図4を参照)。即ち、伝熱管(70)は、断面が扁平な長円状に形成され、その内部空間が複数の流路に仕切られている。各伝熱管(70)に形成された流路は、冷媒回路(80)の冷媒が流れる熱媒体通路(43)となっている。伝熱部(46)において、複数の伝熱管(70)は、それぞれの平坦面が互いに向かい合う姿勢で、互いに一定の間隔をおいて一列に配置されている。また、各伝熱管(70)は、それぞれの軸方向が上下方向となっている。
【0054】
第1ヘッダ(71)及び第2ヘッダ(72)のそれぞれは、両端が閉塞された円管状に形成されている。第1ヘッダ(71)は、一列に配置された各伝熱管(70)の上端に接合されている。第2ヘッダ(72)は、一列に配置された各伝熱管(70)の下端に接合されている。第1ヘッダ(71)及び第2ヘッダ(72)の内部空間は、伝熱管(70)内に形成された流路と連通しており、この伝熱管(70)内の流路と共に熱媒体通路(43)を構成している。
【0055】
外側ケース(50)内において、二つの伝熱部(46)は、その一方が第1の側板(53)寄りに配置され、他方が第2の側板(54)寄りに配置されている。また、各伝熱部(46)の伝熱管(70)は、隣り合う内側部材(60)の間に一本ずつ配置されている。従って、本実施形態の調湿用モジュール(40)では、隣り合う内側部材(60)の間に、一方の伝熱部(46)の伝熱管(70)と、他方の伝熱部(46)の伝熱管(70)とが配置されている。上述したように、隣り合う内側部材(60)の間の空間は、吸収剤通路(41)となっている。従って、伝熱部(46)の伝熱管(70)は、吸収剤通路(41)に配置され、その表面が吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤と接触する。つまり、伝熱部(46)の伝熱管(70)は、吸収剤通路(41)を流れる液体吸収剤に囲まれている。
【0056】
調湿用モジュール(40)の各伝熱部(46)は、冷媒回路(80)に接続される。調湿用モジュール(40)によって構成された給気側モジュール(40a)では、各伝熱部(46)の第1ヘッダ(71)が四方切換弁(91)の第4のポートに接続され、各伝熱部(46)の第2ヘッダ(72)が膨張弁(92)に接続される。一方、調湿用モジュール(40)によって構成された排気側モジュール(40b)では、各伝熱部(46)の第1ヘッダ(71)が四方切換弁(91)の第3のポートに接続され、各伝熱部(46)の第2ヘッダ(72)が膨張弁(92)に接続される。
【0057】
〈冷媒回路の構成〉
図2に示すように、調湿システム(S)は、複数の調湿ユニット(10)に共用される1つの冷媒回路(80)を備えている。なお、図2では、3台の調湿ユニット(10)(第1調湿ユニット(10a)、第2調湿ユニット(10b)、及び第3調湿ユニット(10c))が示されているが、これは単なる例示である。
【0058】
冷媒回路(80)は、冷媒が循環して冷凍サイクルを行う閉回路である。冷媒回路(80)は、1つの圧縮部回路(81)と、3台の調湿ユニット(10)に対応する3つの利用回路(90)(第1利用回路(90a)、第2利用回路(90b)、第3利用回路(90c))とを有している。圧縮部回路(81)と複数の利用回路(90)とは、高圧ガス管(82)及び低圧ガス管(83)を介して互いに接続されている。
【0059】
圧縮部回路(81)には、1台の圧縮機(84)が設けられている。圧縮機(84)は、圧縮ユニット(85)のケース内に収容されている。高圧ガス管(82)は、圧縮機(84)の吐出側に接続し、低圧ガス管(83)は、圧縮機(84)の吸入側に接続している。
【0060】
各利用回路(90)には、流出管(86)と流入管(87)とが設けられる。各流出管(86)は、高圧ガス管(82)に並列に接続し、各流入管(87)は、低圧ガス管(83)に並列に接続している。各流出管(86)には、流量調整弁(88)が設けられる。流量調整弁(88)は、各利用回路(90)の伝熱管(70)を流れる冷媒の流量を調整する冷媒流量調整部を構成する。
【0061】
各利用回路(90)には、四方切換弁(91)と第1伝熱部(46a)と第2伝熱部(46b)と膨張弁(92)とが設けられる。第1伝熱部(46a)は、給気側モジュール(40a)に対応する伝熱部(46)を構成し、第2伝熱部(46b)は、排気側モジュール(40b)に対応する伝熱部(46)を構成している。膨張弁(92)は、第1伝熱部(46a)と第2伝熱部(46b)との間に設けられる。膨張弁(92)は、例えば電子膨張弁で構成される。各伝熱部(46a,46b)は、冷媒の流路の切換に伴い、液体吸収剤を冷媒によって加熱する放熱部、又は液体吸収剤を冷媒によって冷却する蒸発部として機能する。
【0062】
四方切換弁(91)は、第1ポートが流出管(86)と接続し第2ポートが流入管(87)と接続し、第3ポートが第2伝熱部(46b)と接続し、第4ポートが第1伝熱部(46a)と接続している。四方切換弁(91)は、第1状態(図2に実線で示す状態)と、第2状態(同図に破線で示す状態)とに切り換わる。第1状態の四方切換弁(91)では、第1のポートが第3のポートに連通し、第2のポートが第4のポートに連通する。一方、第2状態の四方切換弁(91)では、第1のポートが第4のポートに連通し、第2のポートが第3のポートに連通する。四方切換弁(91)は、各利用回路(90)での冷媒の流路を変更する流路切換機構を構成する。具体的に、四方切換弁(91)が第1状態になると、第1伝熱部(46a)が蒸発部となり、第2伝熱部(46b)が放熱部となる。また、四方切換弁(91)が第2状態になると、第1伝熱部(46a)が放熱部となり、第2伝熱部(46b)が蒸発部となる。
【0063】
−調湿システムの運転動作−
調湿システム(S)の運転動作について説明する。調湿システム(S)では、各調湿ユニット(10)において、除湿運転、加湿運転、及び換気運転のいずれかの運転が個別に行われる。また、除湿運転や加湿運転では、各調湿ユニット(10)の調湿用モジュール(40)において、吸湿動作と放湿動作とが選択的に行われる。
【0064】
〈調湿用モジュールの動作〉
まず、各調湿用モジュール(40)で行われる吸湿動作及び放湿動作について図4を参照しながら説明する。
【0065】
吸湿動作中において、調湿用モジュール(40)の吸収剤通路(41)には、比較的高濃度の液体吸収剤が供給される。そして、空気通路(42)の空気に含まれる水蒸気の一部が、透湿膜(62)を透過して液体吸収剤に吸収される。
【0066】
液体吸収剤が水蒸気を吸収する過程では、吸収熱が生じる。このため、何の対策も講じなければ、生じた吸収熱によって液体吸収剤の温度が次第に上昇し、液体吸収剤に吸収される水蒸気の量が減少してゆく。また、空気の温度が液体吸収剤の温度よりも高い場合には、空気との熱交換により液体吸収剤の温度が上昇する。一方、吸湿動作中の調湿用モジュール(40)では、伝熱部(46)が蒸発器として機能し、熱媒体通路(43)の冷媒によって吸収剤通路(41)の液体吸収剤が冷却される。このため、吸収熱や空気との熱交換が生じても、液体吸収剤の温度上昇が抑えられる。
【0067】
特に、本実施形態の調湿用モジュール(40)では、伝熱部(46)の伝熱管(70)が液体吸収剤に囲まれている。このため、伝熱管(70)を流れる冷媒は、実質的に液体吸収剤だけから吸熱する。従って、本実施形態の調湿用モジュール(40)では、伝熱管(70)を流れる冷媒によって液体吸収剤が効率よく冷却される。
【0068】
放湿動作中において、調湿用モジュール(40)の吸収剤通路(41)には、比較的低濃度の液体吸収剤が供給される。そして、液体吸収剤に含まれる水の一部が、水蒸気となって透湿膜(62)を透過し、空気通路(42)の空気に付与される。
【0069】
液体吸収剤から水が放出される過程では、液体である水が気化する際に周囲から熱を奪う。このため、何の対策も講じなければ、液体吸収剤の温度が次第に低下し、液体吸収剤から放出される水蒸気の量が減少してゆく。また、空気の温度が液体吸収剤の温度よりも低い場合には、空気との熱交換により液体吸収剤の温度が低下する。一方、放湿動作中の調湿用モジュール(40)では、伝熱部(46)が凝縮器として機能し、熱媒体通路(43)の冷媒によって吸収剤通路(41)の液体吸収剤が加熱される。このため、液体吸収剤から水蒸気が放出される過程において、液体吸収剤の温度低下が抑えられる。
【0070】
特に、本実施形態の調湿用モジュール(40)では、伝熱部(46)の伝熱管(70)が液体吸収剤に囲まれている。このため、伝熱管(70)を流れる冷媒から放出された熱は、実質的に液体吸収剤だけに付与される。従って、本実施形態の調湿用モジュール(40)では、伝熱管(70)を流れる冷媒によって液体吸収剤が効率よく加熱される。
【0071】
−調湿システムの運転動作例−
次いで、調湿システム(S)の運転動作を説明する。調湿システム(S)では、各調湿ユニット(10)が、除湿運転、加湿運転、及び換気運転のいずれかの運転を個別に行うことができる。以下には、これらの運転の組み合わせの一例を説明する。
【0072】
〔第1の運転例〕
図8に示す第1運転例では、第1調湿ユニット(10a)、第2調湿ユニット(10b)、及び第3調湿ユニット(10c)のいずれもが除湿運転を行っている。除湿運転中の調湿ユニット(10)では、四方切換弁(91)が第1状態に設定され、流量調整弁(88)及び膨張弁(92)が開状態となり、これらの開度が適宜調整される。除湿運転中の調湿ユニット(10)では、第2伝熱部(46b)が凝縮器となり、第1伝熱部(46a)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。
【0073】
冷媒回路(80)における冷媒の流れを詳細に説明する。圧縮機(84)から吐出された高温高圧のガス冷媒は、高圧ガス管(82)を流れて、各流出管(86)に分流する。分流したガス冷媒は、四方切換弁(91)を通過し、加熱用の熱媒体として排気側モジュール(40b)へ供給される。排気側モジュール(40b)の第2伝熱部(46b)へ流入した冷媒は、吸収剤通路(41b)を流れる液体吸収剤へ放熱して凝縮し、その後に排気側モジュール(40b)から流出する。排気側モジュール(40b)から流出した冷媒は、膨張弁(92)を通過する際に減圧されて気液二相状態の低圧冷媒となり、冷却用の熱媒体として給気側モジュール(40a)へ供給される。給気側モジュール(40a)の第1伝熱部(46a)へ流入した冷媒は、吸収剤通路(41a)を流れる液体吸収剤から吸熱して蒸発し、その後に給気側モジュール(40a)から流出する。給気側モジュール(40a)から流出した冷媒は、四方切換弁(91)を通過し、流入管(87)を流れる。各流入管(87)から流出して低圧ガス管(83)で合流した冷媒は、圧縮機(84)に吸入されて圧縮される。
【0074】
また、除湿運転時の各調湿ユニット(10)では、対応する吸収剤循環回路(30)のポンプ(31)がそれぞれ運転され、吸収剤循環回路(30)内を液体吸収剤が循環する。
【0075】
ポンプ(31)から吐出された液体吸収剤は、排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)へ流入する。この吸収剤通路(41b)へ流入した液体吸収剤は、伝熱部(46b)を流れる冷媒によって加熱される。一方、排気側モジュール(40b)の空気通路(42)では、排気(即ち、室外へ排出される室内空気)が流れている。排気側モジュール(40b)では、液体吸収剤に含まれる水の一部が水蒸気となって透湿膜(62)を透過し、空気通路(42)を流れる排気に付与される。排気に付与された水蒸気は、排気と共に室外へ排出される。このように、排気側モジュール(40b)では、吸収剤通路(41b)の液体吸収剤に含まれる水の一部が、透湿膜(62)を透過して排気に付与される。従って、排気側モジュール(40b)では、吸収剤通路(41b)を通過する間に液体吸収剤の濃度が次第に上昇してゆく。
【0076】
排気側モジュール(40b)から流出した高濃度の液体吸収剤は、給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)へ流入する。この吸収剤通路(41a)へ流入した液体吸収剤は、第2伝熱部(46b)を流れる冷媒によって冷却される。一方、給気側モジュール(40a)の空気通路(42)では、給気(即ち、室内へ供給される室外空気)が流れている。給気側モジュール(40a)では、給気に含まれる水蒸気が透湿膜(62)を透過し、吸収剤通路(41a)を流れる液体吸収剤に吸収される。給気側モジュール(40a)の空気通路(42)を通過する間に除湿された給気は、その後に室内へ供給される。このように、給気側モジュール(40a)では、空気通路(42)の給気に含まれる水蒸気の一部が、透湿膜(62)を透過して液体吸収剤に吸収される。従って、給気側モジュール(40a)では、吸収剤通路(41a)を通過する間に液体吸収剤の濃度が次第に低下してゆく。給気側モジュール(40a)から流出した低濃度の液体吸収剤は、ポンプ(31)へ吸い込まれ、排気側モジュール(40b)へ向けて送り出される。
【0077】
以上のようにして、図8に示す例では、3つの調湿ユニット(10)でそれぞれ除湿された空気が、対応する室内空間へ個別に供給される。
【0078】
〔第2の運転例〕
図9に示す第2運転例では、第1調湿ユニット(10a)、第2調湿ユニット(10b)、及び第3調湿ユニット(10c)のいずれもが加湿運転を行っている。加湿運転中の調湿ユニット(10)では、四方切換弁(91)が第2状態に設定され、流量調整弁(88)及び膨張弁(92)が開状態となり、これらの開度が適宜調整される。加湿運転中の調湿ユニット(10)では、第1伝熱部(46a)が凝縮器となり、第2伝熱部(46b)が蒸発器となる冷凍サイクルが行われる。
【0079】
冷媒回路(80)における冷媒の流れを詳細に説明する。圧縮機(84)から吐出された高温高圧のガス冷媒は、高圧ガス管(82)を流れて、各流出管(86)に分流する。分流したガス冷媒は、四方切換弁(91)を通過し、加熱用の熱媒体として給気側モジュール(40a)へ供給される。給気側モジュール(40a)の第1伝熱部(46a)へ流入した冷媒は、吸収剤通路(41a)を流れる液体吸収剤へ放熱して凝縮し、その後に給気側モジュール(40a)から流出する。給気側モジュール(40a)から流出した冷媒は、膨張弁(92)を通過する際に減圧されて気液二相状態の低圧冷媒となり、冷却用の熱媒体として排気側モジュール(40b)へ供給される。排気側モジュール(40b)の第2伝熱部(46b)へ流入した冷媒は、吸収剤通路(41b)を流れる液体吸収剤から吸熱して蒸発し、その後に排気側モジュール(40b)から流出する。排気側モジュール(40b)から流出した冷媒は、四方切換弁(91)を通過し、流入管(87)を流れる。各流入管(87)から流出して低圧ガス管(83)で合流した冷媒は、圧縮機(84)に吸入されて圧縮される。
【0080】
また、加湿運転時の各調湿ユニット(10)では、吸収剤循環回路(30)のポンプ(31)が運転され、吸収剤循環回路(30)内を液体吸収剤が循環する。
【0081】
ポンプ(31)から吐出された液体吸収剤は、排気側モジュール(40b)の吸収剤通路(41b)へ流入する。この吸収剤通路(41b)へ流入した液体吸収剤は、第2伝熱部(46b)を流れる冷媒によって冷却される。一方、排気側モジュール(40b)の空気通路(42)では、排気(即ち、室外へ排出される室内空気)が流れている。排気側モジュール(40b)では、排気に含まれる水蒸気が透湿膜(62)を透過し、吸収剤通路(41b)を流れる液体吸収剤に吸収される。水蒸気を奪われた排気は、その後に室外へ排出される。このように、排気側モジュール(40b)では、空気通路(42)の排気に含まれる水蒸気の一部が、透湿膜(62)を透過して液体吸収剤に吸収される。従って、排気側モジュール(40b)では、吸収剤通路(41b)を通過する間に液体吸収剤の濃度が次第に低下してゆく。
【0082】
排気側モジュール(40b)から流出した低濃度の液体吸収剤は、給気側モジュール(40a)の吸収剤通路(41a)へ流入する。この吸収剤通路(41a)へ流入した液体吸収剤は、第1伝熱部(46a)を流れる冷媒によって加熱される。一方、給気側モジュール(40a)の空気通路(42)では、給気(即ち、室内へ供給される室外空気)が流れている。給気側モジュール(40a)では、液体吸収剤に含まれる水の一部が水蒸気となって透湿膜(62)を透過し、空気通路(42)を流れる給気に付与される。給気側モジュール(40a)の空気通路(42)を通過する間に加湿された給気は、その後に室内へ供給される。このように、給気側モジュール(40a)では、吸収剤通路(41a)の液体吸収剤に含まれる水の一部が、透湿膜(62)を透過して給気に付与される。従って、給気側モジュール(40a)では、吸収剤通路(41a)を通過する間に液体吸収剤の濃度が次第に上昇してゆく。給気側モジュール(40a)から流出した高濃度の液体吸収剤は、ポンプ(31)へ吸い込まれ、排気側モジュール(40b)へ向けて送り出される。
【0083】
以上のようにして、図9に示す例では、3つの調湿ユニット(10)でそれぞれ加湿された空気が、対応する室内空間へ個別に供給される。
【0084】
〔第3の運転例〕
図10に示す第3運転例では、第1調湿ユニット(10a)が除湿運転を行い、第2調湿ユニット(10b)及び第3調湿ユニット(10c)が加湿運転を行っている。つまり、この例では、第1利用回路(90a)の四方切換弁(91)が第1状態に設定され、第2利用回路(90b)及び第3利用回路(90c)の四方切換弁(91)が第2状態に設定される。各調湿ユニット(10)で行われる除湿運転及び加湿運転の詳細は、上述した通りである。
【0085】
〔第4の運転例〕
図11に示す第4運転例では、第1調湿ユニット(10a)が加湿運転を行い、第2調湿ユニット(10b)が除湿運転を行い、第3調湿ユニット(10c)が換気運転を行っている。つまり、この例では、第1利用回路(90a)の四方切換弁(91)が第2状態に設定され、第2利用回路(90b)の四方切換弁(91)が第1状態に設定される。第1調湿ユニット(10a)の加湿運転、及び第2調湿ユニット(10b)の除湿運転の詳細は、上述した通りである。
【0086】
一方、換気運転中の第3調湿ユニット(10c)では、対応する第3利用回路(90c)の流量調整弁(88)が全閉状態となる。これにより、第3利用回路(90c)には、冷媒が供給されないことになる。また、第3調湿ユニット(10c)の吸収剤循環回路(30)では、ポンプ(31)が停止状態となる。これにより、吸収剤循環回路(30)では、液体吸収剤も循環しない。即ち、換気運転時の第3調湿ユニット(10c)では、給気ファン(27)と排気ファン(28)とが運転されることで、単に室内の給排気が行われる。
【0087】
−実施形態1の効果−
上記実施形態1では、複数の調湿ユニット(10a,10b,10c)に対して、1つの冷媒回路(80)が共用されている。このため、各調湿ユニット(10a,10b,10c)毎に冷媒回路を個別に設ける構成と比較して、調湿システム(S)の簡素化、低コスト化を図ることができる。
【0088】
また、上記実施形態1では、各調湿ユニット(10)毎にそれぞれ吸収剤循環回路(30)を設けている。これらの吸収剤循環回路(30)は、対応する調湿ユニット(10)内に収容されるため、各吸収剤循環回路(30)の配管長さも短くなり、配管の取り回しも容易となる。
【0089】
また、上記実施形態1では、流量調整弁(88)の開度を適宜調整することで、各調湿用モジュール(40)を流れる液体吸収剤の流量も個別に調整できる。その結果、各調湿ユニット(10)毎の除湿能力や加湿能力を個別に調整できる。
【0090】
また、上記実施形態1では、各利用回路(90)の四方切換弁(91)の設定を個別に切り換えることで、各調湿ユニット(10)毎に除湿運転や加湿運転を行うことができる。これにより、ある室内の除湿を行うと同時に他の室内の加湿を行う運転も可能となる(図10に示す第3の運転例)。更に、流量調整弁(88)を閉鎖状態とすることで、対応する調湿ユニット(10)で換気運転を行うことも可能となる(図11に示す第4の運転例)。
【0091】
〈実施形態1の変形例〉
上記実施形態1では、流量調整弁(88)の開度を調整することで、各調湿ユニット(10)の除湿能力や加湿能力を個別に調整できるようにしている。しかしながら、例えば吸収剤循環回路(30)での液体吸収剤の循環量を調整する循環量調整機構を設けることで、各調湿ユニット(10)の除湿能力や加湿能力を調整するようにしてもよい。具体的に、循環量調整機構としては、吸収剤循環回路(30)に設けられる可変容量式のポンプ(31)や、該吸収剤循環回路(30)に設けられる流量調整弁等が挙げられる。
【0092】
《発明の実施形態2》
本発明の実施形態2について説明する。図12に示すように、実施形態2に係る調湿システム(S)は、1つの熱源ユニット(100)と複数の調湿ユニット(10)とを有している。図12では、3台の調湿ユニット(10)を例示している。熱源ユニット(100)には、冷媒回路(101)が設けられている。各調湿ユニット(10)(第1調湿ユニット(10a)、第2調湿ユニット(10b)、及び第3調湿ユニット(10c))には、それぞれ利用回路(140)(第1利用回路(140a)、第2利用回路(140b)、及び第3利用回路(140c))が設けられている。
【0093】
冷媒回路(101)には、圧縮機(102)、凝縮器(103)、膨張弁(104)、及び蒸発器(105)が順に直列に接続されている。冷媒回路(101)では、蒸気圧縮式の冷凍サイクルが行われる。凝縮器(103)は、冷媒によって液体吸収剤を加熱する放熱部を構成し、蒸発器(105)は、冷媒によって液体吸収剤を冷却する蒸発部を構成する。
【0094】
実施形態2の調湿システム(S)には、閉回路となる1つの吸収剤回路(120)が設けられている。吸収剤回路(120)には、液体吸収剤として塩化リチウム水溶液が充填されている。吸収剤回路(120)は、凝縮器(103)と接触して加熱流路を構成する加熱管(121)と、蒸発器(105)と接触して冷却流路を構成する冷却管(122)とを有している。加熱管(121)内の液体吸収剤は、凝縮器(103)を流れる冷媒によって加熱される。冷却管(122)内の液体吸収剤は、蒸発器(105)を流れる冷媒によって冷却される。
【0095】
吸収剤回路(120)には、第1から第4までの吸収液ライン(123,124,125,126)が設けられる。第1吸収液ライン(123)は、加熱管(121)の上流側に接続している。第1吸収液ライン(123)には、1台のポンプ(31)が設けられている。第1吸収液ライン(123)は、複数の加熱側流入管(127)を介して各利用回路(140)と接続している。第2吸収液ライン(124)は、加熱管(121)の下流側に接続している。第2吸収液ライン(124)は、複数の加熱側流出管(128)を介して各利用回路(140)と接続している。第3吸収液ライン(125)は、冷却管(122)の上流側に接続している。第3吸収液ライン(125)は、複数の冷却側流入管(129)を介して各利用回路(140)と接続している。第4吸収液ライン(126)は、冷却管(122)の下流側に接続している。第4液吸収ライン(126)は、複数の冷却側流出管(130)を介して各利用回路(140)と接続している。
【0096】
各利用回路(140)には、2つの調湿用モジュール(150)が接続される。2つの調湿用モジュール(150)は、給気通路(25)に配置される給気側モジュール(150a)と、排気通路(26)に配置される排気側モジュール(150b)とで構成される。
【0097】
実施形態2の調湿用モジュール(150)では、実施形態1のように伝熱部(46)が一体化されておらず、液体吸収剤の流路のみが形成されている。具体的に、例えば図13に示すように、実施形態2の調湿用モジュール(150)は、一対の箱形ヘッダ(151,151)と、一対の箱形ヘッダ(151,151)の間に接続される複数の調湿チューブ(152)とを備えている。各箱形ヘッダ(151)は、図示を省略した配管を介して吸収剤回路(120)に接続している。
【0098】
調湿チューブ(152)の周壁部は、透湿膜(62)によって構成される。つまり、調湿チューブ(152)では、透湿膜(62)の内側の液体吸収剤と該透湿膜(62)の外側の空気との間で水分の授受が行われる。
【0099】
図12に示すように、各利用回路(140)には、第1流量調整弁(141)、第2流量調整弁(142)、第1四方切換弁(143)、及び第2四方切換弁(144)が設けられている。
【0100】
第1流量調整弁(141)は、加熱側流出管(128)に接続し、第2流量調整弁(142)は、冷却側流出管(130)に接続している。各流量調整弁(141,142)は、各調湿ユニット(10)の調湿用モジュール(40)へ供給される液体吸収剤の流量をそれぞれ調整する流量調整部を構成している。
【0101】
第1四方切換弁(143)は、第1ポートが冷却側流出管(130)と接続し、第2ポートが加熱側流入管(128)と接続し、第3ポートが排気側モジュール(150b)と接続し、第4ポートが給気側モジュール(150a)と接続している。第2四方切換弁(144)は、第1ポートが加熱側流入管(127)と接続し、第2ポートが冷却側流入管(129)と接続し、第3ポートが排気側モジュール(150b)と接続し、第4ポートが給気側モジュール(150a)と接続している。各四方切換弁(143,144)は、第1状態(図12に実線で示す状態)と、第2状態(同図に破線で示す状態)とに切り換わる。第1状態の各四方切換弁(143,144)では、第1のポートが第4のポートに連通し、第2のポートが第3のポートに連通する。一方、第2状態の各四方切換弁(143,144)では、第1のポートが第3のポートに連通し、第2のポートが第4のポートに連通する。各四方切換弁(143,144)は、各利用回路(90)での液体吸収剤の流路を切り換える吸収剤流路切換機構を構成する。
【0102】
−調湿システムの運転動作例−
次いで、調湿システム(S)の運転動作を説明する。調湿システム(S)では、各調湿ユニット(10)が、除湿運転、加湿運転、及び換気運転のいずれかの運転を個別に行うことができる。以下には、これらの運転の組み合わせの一例を説明する。
【0103】
〔第1の運転例〕
図14に示す第1運転例では、第1調湿ユニット(10a)、第2調湿ユニット(10b)、及び第3調湿ユニット(10c)のいずれもが除湿運転を行っている。除湿運転中の調湿ユニット(10)では、対応する利用回路(140)の第1四方切換弁(143)及び第2四方切換弁(144)がいずれも第1状態に設定される。また、利用回路(140)では、各流量調整弁(141,142)が開状態となり、これらの開度が適宜調整される。
【0104】
冷媒回路(101)では、圧縮機(102)が運転されて冷媒が圧縮される。圧縮された冷媒は、凝縮器(103)で加熱管(121)側に放熱した後、膨張弁(104)を通過する際に減圧される。減圧された冷媒は、蒸発器(105)で冷却管(122)側から吸熱した後、圧縮機(102)に吸入されて圧縮される。
【0105】
一方、吸収剤回路(120)では、ポンプ(131)が運転されることで、液体吸収剤が循環する。ポンプ(131)から吐出された液体吸収剤は、加熱管(121)を流れる際に、冷媒によって加熱される。
【0106】
加熱された液体吸収剤は、各加熱側流出管(128)に分流して各利用回路(140)に送られる。利用回路(140)に送られた冷媒は、第1四方切換弁(143)を通過して、排気側モジュール(150b)の調湿チューブ(152)内を流れる。調湿チューブ(152)を流れる液体吸収剤は、冷媒によって予め加熱されているため、液体吸収剤中から排気への放湿が促される。
【0107】
排気側モジュール(150b)を通過して濃度が上昇した液体吸収剤は、第2四方切換弁(144)を通過して冷却側流入管(129)へ流出し、冷却管(122)を流れる際に、冷媒によって冷却される。
【0108】
冷却された液体吸収剤は、各冷却側流出管(130)に分流して各利用回路(140)に再び送られる。利用回路(140)に送られた冷媒は、第1四方切換弁(143)を通過して、給気側モジュール(150a)の調湿チューブ(152)内を流れる。調湿チューブ(152)を流れる液体吸収剤は、冷媒によって予め冷却されているため、空気中から液体吸収剤への吸湿が促される。以上のようにして除湿された給気は、室内空間へ供給される。
【0109】
給気側モジュール(150a)を通過して濃度が低くなった液体吸収剤は、第2四方切換弁(144)を通過して加熱側流入管(127)へ流出し、ポンプ(131)に吸い込まれて再び圧送される。
【0110】
〔第2の運転例〕
図15に示す第2運転例では、第1調湿ユニット(10a)、第2調湿ユニット(10b)、及び第3調湿ユニット(10c)のいずれもが加湿運転を行っている。加湿運転中の調湿ユニット(10)では、対応する利用回路(140)の第1四方切換弁(143)及び第2四方切換弁(144)がいずれも第2状態に設定される。また、利用回路(140)では、各流量調整弁(141,142)が開状態となり、これらの開度が適宜調整される。冷媒回路(101)では、上述した第1の運転例と同様にして冷凍サイクルが行われる。
【0111】
一方、吸収剤回路(120)では、ポンプ(131)が運転されることで、液体吸収剤が循環する。ポンプ(131)から吐出された液体吸収剤は、加熱管(121)を流れる際に、冷媒によって加熱される。
【0112】
加熱された液体吸収剤は、各加熱側流出管(128)に分流して各利用回路(140)に送られる。利用回路(140)に送られた冷媒は、第1四方切換弁(143)を通過して、給気側モジュール(150a)の調湿チューブ(152)内を流れる。調湿チューブ(152)を流れる液体吸収剤は、冷媒によって予め加熱されているため、液体吸収剤中から給気への放湿が促される。以上のようにして加湿された給気は、室内空間へ供給される。
【0113】
給気側モジュール(150a)を通過して濃度が上昇した液体吸収剤は、第2四方切換弁(144)を通過して冷却側流入管(129)を流出し、冷却管(122)を流れる際に、冷媒によって冷却される。
【0114】
冷却された液体吸収剤は、各冷却側流出管(130)に分流して各利用回路(140)に再び送られる。利用回路(140)に送られた冷媒は、第1四方切換弁(143)を通過して、排気側モジュール(150b)の調湿チューブ(152)内を流れる。調湿チューブ(152)を流れる液体吸収剤は、冷媒によって予め冷却されているため、空気中から液体吸収剤への吸湿が促される。
【0115】
排気側モジュール(150b)を通過して濃度が低くなった液体吸収剤は、第2四方切換弁(144)を通過して加熱側流入管(127)へ流出し、ポンプ(131)に吸い込まれて再び圧送される。
【0116】
[第3の運転例]
図16に示す第3運転例では、第1調湿ユニット(10a)及び第2調湿ユニット(10b)が除湿運転を行い、第3調湿ユニット(1c)が加湿運転を行っている。
【0117】
除湿運転中の第1及び第2調湿ユニット(10a,10b)では、対応する第1及び第2利用回路(140a,140b)の第1四方切換弁(143)と第2四方切換弁(144)とがいずれも第1状態に設定される。また、第1及び第2利用回路(140a,140b)では、各流量調整弁(141,142)が開状態となり、これらの開度が適宜調整される。その結果、第1及び第2調湿ユニット(10a,10b)では、上記と同様にして除湿運転が行われる。
【0118】
加湿運転中の第3調湿ユニット(10c)では、対応する第3利用回路(140c)の第1四方切換弁(143)と第2四方切換弁(144)とがいずれも第2状態に設定される。また、第3利用回路(140c)では、各流量調整弁(141,142)が開状態となり、これらの開度が適宜調整される。その結果、第3調湿ユニット(10c)では、上記と同様にして加湿運転が行われる。
【0119】
[第4の運転例]
図17に示す第4運転例では、第1調湿ユニット(10a)が除湿運転を行い、第2調湿ユニット(10b)が加湿運転を行い、第3調湿ユニット(10c)が換気運転を行っている。
【0120】
除湿運転中の第1調湿ユニット(10a)では、対応する第1利用回路(140a)の第1四方切換弁(143)と第2四方切換弁(144)とがいずれも第1状態に設定される。また、第1利用回路(140a)では、各流量調整弁(141,142)が開状態となり、これらの開度が適宜調整される。その結果、第1調湿ユニット(10a)では、上記と同様にして除湿運転が行われる。
【0121】
加湿運転中の第2調湿ユニット(10b)では、対応する第2利用回路(140b)の第1四方切換弁(143)と第2四方切換弁(144)とがいずれも第2状態に設定される。また、第2利用回路(140b)では、各流量調整弁(141,142)が開状態となり、これらの開度が適宜調整される。その結果、第2調湿ユニット(10b)では、上記と同様にして加湿運転が行われる。
【0122】
換気運転中の第3調湿ユニット(10c)では、対応する第3利用回路(140c)の各流量調整弁(141,142)が全閉状態となる。これにより、第3調湿ユニット(10c)では、各調湿用モジュール(150)に液体吸収剤が供給されない。従って、第3調湿ユニット(10c)では、単に室内の給排気が行われる。
【0123】
〔第5の運転例〕
図18に示す第5運転例では、第1調湿ユニット(10a)と第2調湿ユニット(10b)とで、上述と同様の除湿運転が行われ、第3調湿ユニット(10c)で換気運転(再生換気運転)が行われる。
【0124】
この運転の第3利用回路(140c)では、第1流量調整弁(141)が開放状態となり、第2流量調整弁(142)が閉鎖状態となる。また、第3利用回路(140c)では、第1四方切換弁(143)と第2四方切換弁(144)とがいずれも第1状態に設定される。
【0125】
この運転では、加熱管(121)で加熱された液体吸収剤が第3利用回路(140c)に送られる。第3利用回路(140c)に送られた冷媒は、第1四方切換弁(143)を通過して、排気側モジュール(150b)の調湿チューブ(152)内を流れる。その結果、排気側モジュール(150b)では、液体吸収剤から排気へ水分が放出される。排気側モジュール(150b)を通過して濃度が高くなった液体吸収剤は、冷却側流入管(129)へ流出し、第1調湿ユニット(10a)や第2調湿ユニット(10b)の給気側モジュール(150a)へ送られる。
【0126】
以上のように、この運転では、換気運転中の排気側モジュール(150b)において、液体吸収剤から排気へ水分が放出される。そして、このようにして濃度が高くなった液体吸収剤を除湿運転中の給気側モジュール(150a)へ送るようにしている。その結果、除湿運転中の調湿ユニット(10a,10b)の除湿能力を向上できる。
【0127】
[第6の運転例]
図19に示す第6運転例では、第1調湿ユニット(10a)で除湿運転(単独吸湿運転)を行い、第2調湿ユニット(10b)で加湿運転(単独放湿運転)を行い、第3調湿ユニット(10c)で換気運転を行っている。
【0128】
この運転の第1利用回路(140a)では、第1流量調整弁(141)が閉鎖状態となり、第2流量調整弁(142)が開放状態となる。また、第1利用回路(140a)では、第1四方切換弁(143)と第2四方切換弁(144)とがいずれも第1状態に設定される。第2利用回路(140b)では、第1流量調整弁(141)が開放状態となり、第2流量調整弁(142)が閉鎖状態となる。また、第2利用回路(140b)では、第1四方切換弁(143)と第2四方切換弁(144)とがいずれも第2状態に設定される。
【0129】
この運転では、加熱管(121)で加熱された液体吸収剤が第2利用回路(140b)に送られる。第2利用回路(140b)に送られた冷媒は、給気側モジュール(150a)の調湿チューブ(152)内を流れる。その結果、液体吸収剤から給気へ放湿が行われ、室内空間が加湿される。
【0130】
第2利用回路(140b)で濃度が高くなった液体吸収剤は、冷却管(122)で冷却された後、第1利用回路(140a)へ送られる。第1利用回路(140a)に送られた冷媒は、給気側モジュール(150a)の調湿チューブ(152)内を流れる。その結果、給気から液体吸収剤へ吸湿が行われ、室内空間が除湿される。
【0131】
以上のように、第6の運転例では、加湿運転中の第2調湿ユニット(10b)の給気側モジュール(150a)で液体吸収剤の濃度を高める一方、高濃度とした液体吸収剤を除湿運転中の第1調湿ユニット(10a)の給気側モジュール(150a)に供給している。これにより、排気側モジュール(150b)側で放湿動作や吸湿動作を行う必要なく、全体として液体吸収剤の循環量を少なくして除湿運転と加湿運転とを同時に行うことができる。
【0132】
−実施形態2の効果−
上記実施形態2によれば、1つの冷媒回路(101)と1つの吸収剤回路(120)とを用いて調湿システム(S)を構成しているため、この調湿システム(S)の簡素化、低コスト化を図ることができる。特に、吸収剤回路(120)では、1つのポンプ(131)だけで、各利用回路(140)へ液体吸収剤を搬送することができる。また、各利用回路(140)毎に各流量調整弁(141,142)の開度や各四方切換弁(143,144)の設定を切り換えることで、各調湿ユニット(10)の能力や運転モードを個別に変更することができる。
【0133】
〈その他の実施形態〉
上記の調湿ユニット(10)は、空気と液体吸収剤との間で透湿膜(62)を介して水分を授受する膜式の調湿ユニットであるが、例えば散布した液体吸収剤と空気との間で水分を授受する吸収式の調湿ユニットに本発明を適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0134】
以上説明したように、本発明は、液体吸収剤を用いて空気を調湿する調湿システムについて有用である。
【符号の説明】
【0135】
S 調湿システム
10 調湿ユニット
30 吸収剤循環回路
31 ポンプ(循環量調整機構)
40 調湿用モジュール(調湿部)
40a 給気側モジュール
40b 排気側モジュール
46a 第1伝熱部(伝熱部、放熱部、蒸発部)
46b 第2伝熱部(伝熱部、蒸発部、放熱部)
62 透湿膜
80 冷媒回路
84 圧縮機
88 流量調整弁(冷媒流量調整部)
90 利用回路
91 四方切換弁(流路切換機構)
101 冷媒回路
102 圧縮機
103 凝縮器(放熱部)
105 蒸発器(蒸発部)
120 吸収剤回路
121 加熱流路(加熱管)
122 冷却流路(冷却管)
141 第1流量調整弁(流量調整部)
142 第2流量調整弁(流量調整部)
143 第1四方切換弁(吸収剤流路切換機構)
144 第2四方切換弁(吸収剤流路切換機構)
150 調湿用モジュール(調湿部)
151 給気側モジュール
152 排気側モジュール

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体吸収剤と空気との間で水分を授受する2つの調湿部(40,150)を有し、一方の調湿部(40,150)の液体吸収剤中の水分を空気中へ放出するとともに、空気中の水分を他方の調湿部(40,150)の液体吸収剤に吸収して空気を除湿又は加湿する複数の調湿ユニット(10)と、
冷媒を圧縮する圧縮機(84,102)と、前記複数の調湿ユニット(10)の各放湿側の調湿部(40,150)の液体吸収剤を冷媒によって加熱するための放熱部(46a,46b,103)と、前記複数の調湿ユニット(10)の各吸湿側の調湿部(40,150)を冷媒によって冷却するための蒸発部(46b,46a,105)とを有して蒸気圧縮式の冷凍サイクルを行う1つの冷媒回路(80,101)と
を備えていることを特徴とする調湿システム。
【請求項2】
請求項1において、
前記複数の調湿ユニット(10)の各調湿部(40,150)が直列に接続されて前記液体吸収剤が循環する複数の吸収剤循環回路(30)を備え、
前記冷媒回路(80)は、各吸収剤循環回路(30)に対応する前記放熱部(46a,46b)及び蒸発部(46b,46a)を有して互いに並列に設けられる複数の利用回路(90)を備えていることを特徴とする調湿システム。
【請求項3】
請求項2において、
前記冷媒回路(80)には、各利用回路(90)へ供給される冷媒の流量をそれぞれ調整する複数の冷媒流量調整部(88)が設けられていることを特徴とする調湿システム。
【請求項4】
請求項2又は3において、
前記各調湿ユニット(10)の2つの調湿部(40,150)は、室内へ供給される空気が流れる給気側モジュール(40a)と、室外へ排出される空気が流れる排気側モジュール(40b)とで構成され、
前記複数の利用回路(90)は、
前記給気側モジュール(40a)へ送られる液体吸収剤と前記冷媒回路(80)の冷媒とを熱交換させる第1伝熱部(46a)と、
第2の前記調湿部(40,150)へ送られる液体吸収剤と前記冷媒回路(80)の冷媒とを熱交換させる第2伝熱部(46b)と、
前記1の伝熱部(46a)が前記放熱部となり前記第2の伝熱部(46b)が前記蒸発部となる冷媒流路と、前記第2の伝熱部(46b)が前記放熱部となり前記第1の伝熱部(46a)が前記蒸発部となる冷媒流路とを切り換える流路切換機構(91)と
をそれぞれ備えていることを特徴とする調湿システム。
【請求項5】
請求項2乃至4のいずれか1つにおいて、
前記複数の吸収剤循環回路(30)には、液体吸収剤の循環量を調整する循環量調整機構(31)がそれぞれ設けられていることを特徴とする調湿システム。
【請求項6】
請求項1において、
前記放熱部(103)の冷媒と熱交換する液体吸収剤が流れる加熱流路(121)と、前記蒸発部(105)の冷媒と熱交換する液体吸収剤が流れる冷却流路(122)とを有し、前記加熱流路(121)の流出端と前記冷却流路(122)の流入端との間に前記複数の放湿側の調湿用モジュール(150)を並列に接続し、且つ前記冷却流路(122)の流出端と前記加熱流路(121)の流入端との間に前記複数の吸湿側の調湿用モジュール(150)を並列に接続する1つの吸収剤回路(120)を備えていることを特徴とする調湿システム。
【請求項7】
請求項6において、
前記吸収剤回路(120)には、各調湿ユニット(10)の調湿用モジュール(150)へ供給される液体吸収剤の流量をそれぞれ調整する複数の流量調整部(141,142)が設けられていることを特徴とする調湿システム。
【請求項8】
請求項6又は7において、
前記各調湿ユニット(10)の2つの調湿部(40,150)は、室内へ供給される空気が流れる給気側モジュール(40a)と、室外へ排出される空気が流れる排気側モジュール(40b)とで構成され、
前記吸収剤回路(120)には、前記加熱流路(121)で加熱された液体吸収剤が給気側モジュール(40a)へ供給されると同時に前記冷却流路(122)で冷却された液体吸収剤が排気側モジュール(40b)を流れる流路と、前記加熱流路(121)で加熱された液体吸収剤が排気側モジュール(40b)を流れると同時に前記冷却流路(122)冷却された液体吸収剤が給気側モジュール(40a)を流れる流路とを、複数の調湿ユニット(10)毎に切り換える吸収剤流路切換機構(143,144)が設けられていることを特徴とする調湿システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【公開番号】特開2013−64551(P2013−64551A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203692(P2011−203692)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】