説明

調湿シート

【課題】本発明の課題は、居住空間、建材等から発生する悪臭ガスを除去し、吸放湿性を短時間で効率よく行うことができ、優れた吸放湿を持つ通気性を有する調湿シートを提供することである。
【解決手段】少なくともポリエステル系繊維からなる通気度が1000cc/cm・sec以上かつシートの嵩密度が0.100g/cm以下、好ましくは0.050g/cm以下の不織布を基材とし、平均粒子径が1〜100μmの珪藻土類が担持されていることを特徴とする調湿シートを提供することである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調湿シートに関するものである。
【背景技術】
【0002】
壁紙としての消臭性能、調湿性能を改善する試みとして、珪藻土や珪藻土頁岩を使用する方法が開示されている。例えば、吸湿剤として炭素粉や珪藻土を含有する建物内装用シートが開示されていて、抄紙の際に炭素粉や珪藻土を漉き込んだ紙、2枚の紙の間に炭素粉や珪藻土を挟み、適宜箇所で接着したもの、不織布、織布に糊、接着剤等で炭素粉や珪藻土を担持させたもの等が開示されている(例えば、特許文献1参照)。また、珪藻土頁岩、アロフェン、シリカゲル、ゼオライト等の無機多孔質材料と、樹脂エマルジョンと、水ガラス、水溶性樹脂、水溶性糊剤からなる群より選ばれる少なくとも1種である透湿性付与剤とが配合されてなるコーティング剤と、このコーティング剤を、無機多孔質材料を配合した石膏ボード、珪酸カルシウムボード、パーティクルボード、インシュレーション、紙等に塗布して使用する例、このコーティング剤を接着剤として使用する例等が開示されている(例えば、特許文献2参照)。そして、有機バインダー、セラミック等と珪藻土頁岩を混合し、成形した後に焼成して、調湿材料とする例も開示されている(例えば、特許文献3又は4参照)。
【0003】
近年、住宅等の建築物の高気密化は、壁、窓、畳又は収納等に結露を生じさせ、この結露がアレルギー疾患を引き起こすカビ、ダニ等のアレルゲンの発生源となっているため問題となっている。また、建築物の高気密化は、内装材又は家具等に使用されている化学物質から発生する揮発性有機化合物を室内に滞留させるため、いわゆる化学物質過敏症の一因ともなっている。しかしながら、特許文献3及び4に記載されている珪藻土頁岩を焼成して得られる調湿材料では、焼成工程が必要なので、製造に手間がかかり、汎用性に乏しいという問題もある。また、特許文献1及び2に記載されている紙や不織布に珪藻土頁岩を担持させた壁紙等は、特許文献3及び4の調湿材料との比較では、容易に製造ができるという利点があるが、悪臭ガスの除去という点において、性能が不十分であり、大きな課題となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−212694号公報
【特許文献2】特開2008−138167号公報
【特許文献3】特許第2652593号公報
【特許文献4】特許第2964393号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、吸放湿性を短時間で効率よく行うことができ、優れた吸放湿を持つ通気性を有し、さらに、居住空間、建材等から発生する悪臭ガスを効率的に除去することができる調湿シートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記のような問題点を解消するためになされたもので、少なくともポリエステル系繊維を含有してなる通気度が1000cc/cm・sec以上かつ嵩密度が0.100g/cm以下の不織布に平均粒子径が1〜100μmの珪藻土が担持されてなることを特徴とする調湿シートである。不織布の嵩密度は、0.050g/cm以下であることが好ましい。
【発明の効果】
【0007】
本発明の調湿シートは、少なくともポリエステル系繊維を含有してなる通気度が1000cc/cm・sec以上かつシートの嵩密度が0.100g/cm以下の不織布に平均粒子径が1〜100μmの珪藻土が少なくとも担持されている。不織布がポリエステル系繊維を含有していることで、不織布本体は吸湿性が少ないため、強度が強く、変形しにくいという効果が得られる。また、ポリエステル系繊維を含有していない不織布と比較して、吸放湿性に優れ、悪臭ガスを効率的に除去することもできる。また、不織布の通気度が1000cc/cm・sec以上かつシートの嵩密度が0.100g/cm以下であることによっても、高吸湿量及び悪臭ガスの除去率が高いという効果が得られる。さらに、平均粒子径が1〜100μmの珪藻土が担持されていることによって、吸湿材のシートからの脱落が少なく、均一なシートが作られるため、優れた吸放湿性と悪臭ガスの除去能力とが得られる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の調湿シートは、珪藻土、珪藻土頁岩等の珪藻土類が担持されている。また、活性炭、添着活性炭、活性白土、天然及び合成ゼオライト、セピオライト、酸化鉄等の鉄系化合物、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、シリカ、シリカ−酸化亜鉛複合物、シリカ−アルミナ−酸化亜鉛複合物、二酸化マンガン、複合フィロケイ酸塩、シクロデキストリン、アスコルビン酸と二価鉄塩の混合物、ビタミンB群とリン酸塩の混合物等を併用することもできる。珪藻土類は、吸湿性に加え、脱臭性にも優れている。珪藻土類の形状は特に限定されるものではないが、粒子状のものが好ましく、比表面積が50〜2000m/gのものを適宜選択して用いることが好ましい。
【0009】
珪藻土頁岩としては、平均細孔直径が3〜12nm、比表面積が80m/g以上である微細な細孔を多数有する珪藻土頁岩原石を用いることができる。また、珪藻土頁岩原石を改質させて細孔を拡大させたもの(平均細孔直径18nm以下)を用いることもできる。すなわち、本発明に用いる珪藻土頁岩は、平均細孔直径が3〜18nm、比表面積が80m/g以上の細孔を多数有するものであることが好ましい。上記した特性の珪藻土頁岩原石は、優れた吸放湿性能を有しており、このような特性を有する珪藻土頁岩原石としては、例えば、北海道天北地方で産出される、いわゆる、稚内層珪藻土頁岩と呼ばれるものが挙げられる。稚内層珪藻土頁岩は、上記した特性を有する他、細孔容量が0.1〜0.4ml/gの範囲内にあり、最大吸湿率が15質量%以上の、シャープな細孔径分布を有する天然の多孔質体である。本発明においては、比表面積が100m/g以上の珪藻土頁岩を用いることが特に好ましい。
【0010】
なお、本発明において、細孔容量は、BJH(Barrett Joyner Halenda)法で測定した。また、比表面積は、BET(Brunauer Emmett Teller)法で測定した。また、平均細孔直径は、前記の方法で測定した、細孔容量と比表面積とから、細孔が円柱体と仮定して、下記の(式1)から計算により求めた。なお、最大吸湿率は、測定対象物を150℃のオーブンに入れ72時間保持した後に測定した対象物の絶乾質量と、その後、25℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽に入れて48時間保持した後に再度測定する対象物の質量との質量増加率により得られる。相対湿度に応じての水分吸着量及び水分放湿量の変化は、水蒸気吸着量測定装置で連続して測定することができる。
【0011】
(式1)平均細孔直径=4×細孔容量(ml/g)÷比表面積(m/g)
【0012】
本発明で用いられる珪藻土類は、その平均粒子径が1〜100μmであり、より好ましくは20〜90μmであり、さらに好ましくは20〜50μmである。珪藻土の平均粒子径が1μm未満の場合、珪藻土を水溶液にする際に粒子の表面積が増し、分散しにくくなるという問題が発生し、100μm超の場合、担持しにくく、不織布から落ちやすいという問題が発生する。本発明において、平均粒子径は、レーザー回折・散乱法によって求めた粒度分布における積算値50%での粒子径により求めた値である。
【0013】
また、本発明において、珪藻土頁岩としては、上述したように、珪藻土頁岩原石をそのまま用いてもよいし、細孔の状態を改質させたものを用いてもよい。珪藻土頁岩の細孔の状態を改質する方法としては、例えば、アルカリエッチング処理が挙げられる。エッチング処理した場合、珪藻土頁岩原石よりも、比表面積はやや低下する傾向にあるが、細孔容量を増大させることができ、吸放湿性能も向上させることが可能となる。すなわち、調湿シートの吸放湿性や悪臭ガスの除去能力を向上させることができる。
【0014】
本発明において、潮解性物質等の機能性物質を珪藻土類の表面及び細孔内に付着させてもよい。方法は、特に制限はないが、例えば、珪藻土類を潮解性物質の水溶液に浸漬させた後、乾燥処理する方法、珪藻土類の塗工液中に潮解性物質を分散する方法等が挙げられる。潮解性物質の水溶液には、バインダー成分を配合させてもよい。
【0015】
本発明において、より高い吸放湿性や悪臭ガスの除去能力を有する調湿シートとするためには、珪藻土類の担持量は、30〜150g/mであることが好ましく、50〜100g/mであることがより好ましく、60〜80g/mであることがさらに好ましい。珪藻土の担持量が30g/m未満の場合、期待した吸湿効果が得られないという問題が発生する場合がる。逆に、担持量が150g/mを超えた場合、生産工程において乾燥しにくいという問題が発生する場合がある。
【0016】
本発明において、不織布は、少なくともポリエステル系繊維を含有してなり、通気度が1000cc/cm・sec以上かつ嵩密度が0.100g/cm以下である。ポリエステル系繊維を含有させることによって、不織布本体は吸湿性が少ないため、強度が強く、変形しにくいという効果が得られる。また、ポリエステル系繊維を含有していない不織布と比較して、吸放湿性に優れ、悪臭ガスを効率的に除去することもできる。ポリエステル系繊維以外に、ポリアミド系繊維、ポリアルキレンパラオキシベンゾエート系繊維、ポリウレタン系繊維、ポリビニルアルコール系繊維、ポリ塩化ビニリデン系繊維、ポリ塩化ビニル系繊維、ポリアクリロニトリル系繊維、ポリオレフィン系繊維、フェノール系繊維等の合成繊維、ガラス繊維、金属繊維、アルミナ繊維、活性炭素繊維等の無機繊維、木材パルプ、麻パルプ、コットンリンターパルプ等の天然繊維、再生繊維、あるいはこれらの繊維に親水性や難燃性等の機能を付与した繊維等を併用することができる。
【0017】
ポリエステル系繊維としては、ポリエチレンテレフタレート(PET)繊維、ポリブチレンテレフタレート(PBT)繊維、ポリトリメチレンテレフタレート(PTT)繊維等が挙げられる。不織布におけるポリエステル系繊維の含有量は、10〜100質量%が好ましく、10〜80質量%がより好ましく、10〜50質量%がさらに好ましい。10質量%未満の場合、寸法安定性が悪くなるという問題が発生する場合がある。
【0018】
不織布の製造方法については、特に制限はなく、目的・用途に応じて、乾式法、湿式抄造法、メルトブローン法、スパンボンド法等で得られたウェブを水流交絡法、ニードルパンチ法、ステッチボンド法等の物理的方法、サーマルボンド法等の熱による接着方法、レジンボンド等の接着剤による接着方法で強度を発現させる方法を適宜組み合わせて製造することができる。
【0019】
不織布の嵩密度は、0.100g/cm以下であり、0.090g/cm以下であることがより好ましく、0.050g/cm以下であることがさらに好ましく、0.045g/cm以下であることが特に好ましい。嵩密度の下限値としては、珪藻土類を適性量担持するという理由から、0.020g/cmであることが好ましい。嵩密度が0.100g/cmを超えた場合、珪藻土類の脱落という問題が発生する。また、吸放湿性や悪臭ガスの除去能も低下する。なお、嵩密度は下記の(式2)により求められる。
【0020】
(式2)嵩密度(g/cm)=質量(g)÷体積(cm
【0021】
不織布の通気度は、1000cc/cm・sec以上である。通気度が1000cc/cm・sec未満の場合、不織布の繊維同士が密になり過ぎているために、珪藻土類の担持量を増すことが難しいという問題が発生する。また、悪臭ガスの除去能が低下する。通気度の上限値としては、珪藻土類を不織布の繊維に強固に担持するという理由から、2000cc/cm・secであることが好ましい。なお、本発明の通気度は、JIS L−1906の8.27.1のA法(フラジール形法)により測定された値である。
含浸した時の塗工液の吸い上げ性が極めて多くなるという効果が得られる。
【0022】
不織布に珪藻土類を担持させる方法としては、各種ブレードコーター、ロールコーター、エアナイフコーター、バーコーター、ロッドブレードコーター、ショートドウェルコーター、ダイコーター、コンマコーター、リバースロールコーター、キスコーター、ディップコーター、カーテンコーター、エクストルージョンコーター、マイクログラビアコーター、サイズプレス等の各種塗工装置を用いて、不織布に塗工する方法を挙げることができる。担持させる場合には、珪藻土類を不織布に固定するためのバインダーとして、熱可塑性樹脂の水性エマルジョン、皮膜形成性無機物、金属酸化物複合熱可塑性高分子エマルジョン等を、各々単独で又は必要に応じて複数組み合わせて使用することができる。
【0023】
熱可塑性樹脂の水性エマルジョンとは、水中で分散された熱可塑性高分子のことであって、高分子成分としては、アクリル樹脂、スチレン−アクリル共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、エチレン−酢酸ビニル−塩化ビニル共重合体、ポリプロピレン、ポリエステル、フェノキシ樹脂、フェノール樹脂、ブチラール樹脂等が挙げられる。
【0024】
皮膜形成性無機物としては、サポナイト、ヘクトライト、モンモリロナイト等のスメクタイト群、バーミキュライト群、カオリナイト、ハロイサイト等のカオリナイト−蛇紋石群、セピオライト等の天然粘土鉱物の他、コロイダルシリカ、コロイダルアルミナ及びこれらの変性物、合成無機高分子化合物等が例示され、該皮膜形成性無機物を各々単独で使用しても構わないし、複数組み合わせて使用しても構わない。
【0025】
上記変性物における変性とは、天然鉱物中より不純物や特定の原子団を除去したり、天然鉱物構成元素中の特定の元素を適当な方法で処理して他の元素と交換したり、別の化合物(特に有機化合物)と共に化学処理して特に鉱物表面の物性を改変することにより、元来の天然鉱物固有の特性を伸長したり、あるいは新たな特性を付与することであり、変性物の具体例としては、Ca−モンモリロナイトを水の存在下で炭酸ナトリウム等と処理してイオン交換を行ったNa−モンモリロナイトや、カチオン界面活性剤及び/又はノニオン界面活性剤と処理したもの等が挙げられる。
【0026】
合成無機高分子化合物とは、天然鉱物と同等の組成を得るべく、あるいは新たな特性を付与するべく同等組成の特定の元素を他の元素で置換したもので、2種類以上の化合物を反応させて得られるものであって、天然雲母族の構造中の水酸基をフッ素で置換したフッ素雲母や、合成スメクタイト等が挙げられる。フッ素雲母の代表例としては、フッ素金雲母、フッ素四ケイ素雲母、テニオライト等が挙げられる。
【0027】
金属酸化物複合熱可塑性高分子エマルジョンは、熱可塑性高分子エマルジョン表面を金属酸化物が被覆している形状を有し、皮膜を形成した後も高分子成分と金属酸化物成分が分離して海島構造を保つ特性を有するものである。熱可塑性高分子エマルジョンは、前述した熱可塑性樹脂の水性エマルジョンの中から適宜選択できる。
【0028】
金属酸化物としては、コロイダルシリカやコロイダルアルミナ等が挙げられる。金属酸化物複合熱可塑性高分子エマルジョン、例えばコロイダルシリカ複合熱可塑性高分子エマルジョンは、特開昭59−71316号公報、特開昭60−127371号公報等に開示されているように、共重合性単量体、分子内に重合性不飽和二重結合及びアルコキシシラン基を有する単量体やビニルシラン、コロイダルシリカを混合し、高分子成分を乳化重合して製造する過程において、シリカ成分をエマルジョン表面に固定する方法によって得られる。その方法としては、例えばオルソケイ酸エチル等の水に相溶しない加水分解性のアルコキシシランを用いて、あらかじめ形成されているエマルジョンの表面にシリカ成分を析出、固定させる方法が挙げられる。
【0029】
本発明においては、塗工液に保水性を持たせることによって、基材への担持を効率的に行うことができ、保水性を持たせる方法として、例えば、ベントナイトを保水剤として適量添加する方法が有効である。保水剤は不織布への担持を効率的に行う他、塗工液の塗工液粘度を上昇させ、塗工液の担持量を増やすことに有効である。
【0030】
珪藻土類の担持方法としては、上記の不織布への塗工による担持方法の他に、本発明の調湿シートに要求される特性を阻害しない範囲内において、不織布に、メッキ法やゾルゲル法等の湿式法、抵抗加熱式真空蒸着法、電子ビーム加熱式真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタ法等の真空成膜法、陽極酸化法等の従来公知の方法を用いて不織布を担持しても構わない。
【0031】
本発明の調湿シートには必要に応じて、撥水剤や難燃剤、抗菌剤、防黴剤を加えてもよい。また、大気中の塵埃等の浮遊粒子を捕捉する除塵性能を持つ帯電シートを使用することにより、これらの捕集能を持たせることもできる。さらに、プリーツ加工、コルゲート加工、ハニカム加工を施すこともできる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記実施例により限定されるものではない。
【0033】
実施例1
<珪藻土(稚内層珪藻土頁岩)の粉砕>
北海道天北地方から産出した稚内層珪藻土頁岩を、ハンマークラッシャーにて粉砕し、さらにボールミルにて粉砕時間を調整して、湿式粉砕し、平均粒子径が20μmとなるように調製した。
【0034】
<不織布1の作製>
ポリエステル系繊維(繊度3デシテックス、繊維長38mm)/ポリエステル系繊維(繊度6デシテックス、繊維長51mm)/レーヨン繊維(繊度3デシテックス、繊維長51mm)=50/30/20の質量比で解繊混合し、30g/mのウェブを作製し、該ウェブにアクリルエマルジョン樹脂を有効成分換算で15g/m含浸、乾燥させて強度を付与して、目付:45g/m、通気度:1000cc/cm・sec、嵩密度:0.045g/cmの不織布1を作製した。
【0035】
<調湿シート用塗工液の作製>
稚内層珪藻土頁岩(平均粒子径20μm):65質量部、塩化マグネシウム25質量%水溶液:10質量部、スチレン−アクリル共重合体(ヘンケルジャパン社製、ヨドゾール(登録商標)AD81B):12質量部、エチレン−酢酸ビニル共重合体(ヘンケルジャパン社製、125−2828):6質量部、ベントナイト(クニミネ工業社製、クニピア(登録商標)−F):2質量部を投入し、固形分濃度:30質量%、粘度:2500mPa・sの調湿シート作製用塗工液を作製した。
【0036】
<調湿シートの作製>
作製した前記調湿シート用塗工液を、作製した前記不織布1にサイズプレス法により含浸加工(固形分50g/m)を施して乾燥し、調湿シートを作製した。
【0037】
実施例2
<不織布2の作製>
ポリエステル系繊維(繊度3デシテックス、繊維長38mm)/ポリエステル系繊維(繊度6デシテックス、繊維長51mm)/ポリエステル系繊維(繊度11デシテックス、繊維長51mm)=30/40/30の質量比で解繊混合し、95g/mのウェブを作製し、該ウェブにアクリルエマルジョン樹脂を有効成分換算で35g/m含浸、乾燥させて強度を付与して、目付:130g/m、通気度:1500cc/cm・sec、嵩密度:0.090g/cmの不織布2を作製した。
【0038】
<調湿シートの作製>
実施例1で作製した調湿シート用塗工液を、前記乾式不織布2にサイズプレス法により含浸加工(固形分50g/m)を施して乾燥し、調湿シートを作製した。
【0039】
実施例3
稚内層珪藻土頁岩の平均粒子径を1μmに変更した以外は実施例1同様の方法にて調湿シート用塗工液を作製し、前記不織布1にサイズプレス法により含浸加工(固形分50g/m)を施して乾燥し、調湿シートを作製した。
【0040】
実施例4
稚内層珪藻土頁岩の平均粒子径を50μmに変更した以外は実施例1同様の方法にて調湿シート用塗工液を作製し、前記不織布1にサイズプレス法により含浸加工(固形分50g/m)を施して乾燥し、調湿シートを作製した。
【0041】
実施例5
稚内層珪藻土頁岩の平均粒子径を70μmに変更した以外は実施例1同様の方法にて調湿シート用塗工液を作製し、前記不織布1にサイズプレス法により含浸加工(固形分50g/m)を施して乾燥し、調湿シートを作製した。
【0042】
実施例6
稚内層珪藻土頁岩の平均粒子径を90μmに変更した以外は実施例1同様の方法にて調湿シート用塗工液を作製し、前記不織布1にサイズプレス法により含浸加工(固形分50g/m)を施して乾燥し、調湿シートを作製した。
【0043】
実施例7
稚内層珪藻土頁岩の平均粒子径を100μmに変更した以外は実施例1同様の方法にて調湿シート用塗工液を作製し、前記不織布1にサイズプレス法により含浸加工(固形分50g/m)を施して乾燥し、調湿シートを作製した。
【0044】
比較例1
吸湿剤を担持していない前記不織布1を調湿シートとした。
【0045】
比較例2
<不織布3の作製>
ポリエステル系繊維(繊度3デシテックス、繊維長38mm)/ポリエステル系繊維(繊度6デシテックス、繊維長51mm)/レーヨン繊維(繊度3デシテックス、繊維長51mm)=50/30/20の質量比で解繊混合し30g/mのウェブを作製し、該ウェブにアクリルエマルジョン樹脂を有効成分換算で18g/m含浸、乾燥させて強度を付与して48g/m、通気度:800cc/cm・sec、嵩密度:0.100g/cmの不織布3を作製した。
【0046】
<調湿シートの作製>
実施例1と同様の方法にて調湿シート用塗工液を作製し、前記不織布3にサイズプレス法により含浸加工(固形分50g/m)を施して乾燥し、調湿シートを作製した。
【0047】
比較例3
<湿式不織布1の作製>
芯鞘型熱融着性ポリエステル系繊維(ユニチカ製、メルティ(登録商標)4080、繊度2.2デシテックス、繊維長5mm)40質量%、ポリエステル系繊維(帝人社製、テピルス(登録商標)、繊度0.6デシテックス、繊維長5mm)40質量%を水中に添加し、水性スラリーを作製した。該水性スラリーから円網抄紙機を用いて坪量50g/mのウェブを抄造し、プレス、乾燥して、通気度:50cc/cm・sec、嵩密度:0.170g/cmの湿式不織布1を作製した。
【0048】
実施例1と同様の方法にて調湿シート用塗工液を作製し、前記湿式不織布1にバーコーター法により、片面(固形分25g/m)の塗工、乾燥を両面に施し、塗工量として固形分50g/mの調湿シートを作製した。
【0049】
比較例4
実施例1で作製した調湿シートの片面に、ポリエチレンにより、厚み0.05mmのラミネート加工を施し、調湿シートを作製した。この調湿シートの通気度は、20cc/cm・secであった。
【0050】
比較例5
稚内層珪藻土頁岩の平均粒子径を120μmに変更した以外は実施例1と同様の方法にて調湿シート用塗工液を作製し、前記不織布1にサイズプレス法により含浸加工(固形分50g/m)を施して乾燥したが、稚内層珪藻土頁岩が大きいため、不織布にうまく担持できず、シートからの脱落が多く、調湿シートを作製することができなかった。
【0051】
比較例6
メルトフローレートが50のポリプロピレン重合体(ホモポリマーである)とプロピレンにエチレンが5重量%共重合されたメルトフローレートが70のポリプロピレン共重合体に、各々酸化チタンを0.5重量%及び炭酸カルシウムを1.0重量%の添加率で各々添加した後、各重合体を溶融し、各溶融重合体を三角断面の貼り合わせ型複合紡糸孔が配設された紡糸口金から紡糸温度205℃、各重合体の単孔吐出量0.5g/分(複合比は1:1)で紡出し、紡出されたフィラメント群を環状型の冷却風吹き付け装置を用い冷却風を吹き付けて冷却した後、エアーサッカを用いて引き取り速度3900m/分で吸引・引き取り、コロナ放電により開繊した後、コンベヤーネットベルト上に捕集・堆積させてウェブとした。次いで、前記得られたウェブに、温度が120℃で圧接面積率が10.5%のエンボスローラを用いて熱圧着処理を施し、坪量50g/mの貼り合わせ型複合フィラメントからなる通気度:1000cc/cm・sec、嵩密度:0.045g/cmの不織布を作製した。実施例1と同様の方法にて調湿シート用塗工液を作製し、この不織布にサイズプレス法により含浸加工(固形分50g/m)を施して乾燥し、調湿シートを作製した。
【0052】
比較例7
多孔の平均細孔半径が3.8nm、最高吸湿率が22%、比表面積が121m/g、平均粒子径が10μmの稚内層珪藻土頁岩を20質量%含有してなる坪量が200g/mのパルプ紙を調湿シートとした。この調湿シートは、通気度:12cc/cm・sec、嵩密度:0.200g/cmであった。
【0053】
比較例8
稚内層珪藻土頁岩の代わりに、活性炭(クラレケミカル社製、クラレコール(登録商標)PW、100メッシュ以下)を使用した以外は実施例1同様の方法にて調湿シート用塗工液を作製し、前記不織布1にサイズプレス法により含浸加工(固形分50g/m)を施して乾燥し、調湿シートを作製した。
【0054】
比較例9
稚内層珪藻土頁岩の代わりに、ゼオライト(水澤化学工業社製、ミズカソープ(登録商標)C−1、比表面積400m/g、平均粒子径10μm)を使用した以外は実施例1同様の方法にて調湿シート用塗工液を作製し、前記不織布1にサイズプレス法により含浸加工(固形分50g/m)を施して乾燥し、調湿シートを作製した。
【0055】
比較例10
稚内層珪藻土頁岩の代わりに、吸湿剤としてシリカ(エボニック デグサ社製、Sipernat(登録商標)310、比表面積750m/g、平均粒子径5.5μm)を使用した以外は実施例1同様の方法にて調湿シート用塗工液を作製し、前記不織布1にサイズプレス法により含浸加工(固形分50g/m)を施して乾燥し、調湿シートを作製した。
【0056】
[調湿性能の試験]
実施例及び比較例の調湿シートを200mm×250mmにカットし、温度30℃、相対湿度50%の環境下で24時間静置した後、質量を測定し、それぞれの基準値とした。次に、これらを温度30℃、相対湿度75%の環境下に静置し、1時間後、3時間後、24時間後の質量を天秤にて測定し、表1に示した。また、温度30℃、相対湿度75%の環境下に24時間静置した後、温度30℃、相対湿度50%の環境下に静置し、1時間後、3時間後の質量を天秤にて測定し、表1に示した。温度30℃、相対湿度75%に24時間静置した後の質量から温度30℃、相対湿度50%に3時間静置した後の質量を引いた値を「スイング吸湿量」とし、表1に示した。
【0057】
[アンモニア除去試験器]
撹拌用ファン、ガス吸入及び検知管測定用の穴(φ6mm)を開けた蓋を設置した5.6Lのプラスチック密閉容器を測定用容器とした。容器内には1cm×12cmの帯状にカットした0.5mm厚のアルミ短冊を輪っか状に丸めたものを作製し、測定をする際の試料台とした。
【0058】
[アンモニア濃度の測定]
アンモニアの濃度測定はガステック社製ガス検知管3Lを使用した。
【0059】
<アンモニア除去率の試験>
実施例及び比較例の調湿シートを200mm×250mmにカットし、前記アンモニア除去試験器の試料台の上に1試料毎に乗せ、JEMA 1467に準じてアンモニアガスを100ppmとなるように注入し、直後及び30分後のアンモニア濃度を前記ガス検知管にて測定した。この時の条件は室温(温度24℃、相対湿度47%)であった。得られた値から、下記(式3)によりアンモニア除去率(%)を求め、表1に示した。
【0060】
(式3)アンモニア除去率(%)={1−(30分後のアンモニア濃度値(ppm)/アンモニア注入直後のアンモニア濃度値(ppm))}×100
【0061】
【表1】

【0062】
実施例1〜7の調湿シートは、スイング吸湿量及びアンモニア除去率が高く、優れた吸放湿性と悪臭ガスの除去能を示した。比較例1の吸湿材を担持してないシートは、スイング吸湿量、アンモニア除去率共に劣っていた。不織布の通気度が1000cc/cm・sec未満である比較例2の調湿シートは、アンモニア除去率が劣っていた。不織布の嵩密度が0.100g/cm超で、かつ、不織布の通気度が1000cc/cm・sec未満である比較例3の調湿シートは、スイング吸湿量、アンモニア除去率共に劣っていた。不織布にポリエチレンのラミネート加工を施してなる比較例4の調湿シートも、スイング吸湿量、アンモニア除去率共に劣っていた。
【0063】
ポリエステル繊維を含有していない不織布又はパルプ紙を使用した比較例6及び7の調湿シートは、スイング吸湿量、アンモニア除去率共に劣っていた。珪藻土類の代わりに、活性炭を担持した比較例8の調湿シート及びゼオライトを担持した比較例9の調湿シートは、スイング吸湿量が劣っており、また、シリカを担持した比較例10の調湿シートは、スイング吸湿量、アンモニア除去率共に劣っていた。
【産業上の利用可能性】
【0064】
本発明は、壁紙等の建物内装用シートとして利用できる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともポリエステル系繊維を含有してなる通気度が1000cc/cm・sec以上かつ嵩密度が0.100g/cm以下の不織布に平均粒子径が1〜100μmの珪藻土類が担持されてなることを特徴とする調湿シート。
【請求項2】
不織布の嵩密度が0.050g/cm以下である請求項1記載の調湿シート。

【公開番号】特開2013−17942(P2013−17942A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−152470(P2011−152470)
【出願日】平成23年7月11日(2011.7.11)
【出願人】(000005980)三菱製紙株式会社 (1,550)
【Fターム(参考)】