説明

調湿パネル

【課題】一般住宅の壁面、天井材等の内装用建材や、収納用の建具材等に用いられ、調湿性、通気性に優れた調湿パネルを提供する。
【解決手段】繊維の集合体である繊維マトリクスの内部に調湿材1を保持してなる繊維密度の高い調湿繊維マット21の側端と、通気性を有し繊維密度の低い通気繊維マット22の側端とが連接、配置して構成されるボード層2と、該ボード層2の表面に配設される通気性表面材31、32とからなる調湿パネル。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は調湿パネルに関し、さらに詳しくは、調湿性と通気性とを有し、一般住宅の壁面、天井材等の内装用建材や、収納用の建具材等に用いられる調湿パネルに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、住宅の高断熱化、高気密化が進むにつれて部屋の中の空気が過湿気味となりがちで、冬季における結露現象あるいは、高湿度下で繁殖するカビ、ダニ等に起因するアレルギー患者の増加等の現象が顕在化して種々の問題を引き起こしている。そこで、ゼオライト、珪藻土等の室内環境を一定の湿度範囲内に調整する機能を有する調湿材を含んだ内装用の建材が提案されている。
【0003】
例えば、特開2006−307623号公報には石膏ボード、ケイカル板等の内装用建材と、前記内装用建材に積層された編み目構造、織布構造または不織布構造等の通気性を有する基材と、前記基材の表面に直接製膜された二酸化チタン薄膜とを備え、前記二酸化チタン薄膜の膜厚が10nm以上100nm未満である環境機能建材が開示されている。
【0004】
そして、上記基材が通気性であるため、調湿機能を有し、かつ、二酸化チタン薄膜が光触媒として機能するため、防臭、防汚、耐シックハウス症を有する環境機能建材を得ることができるとその効果が記載されている。
【特許文献1】特開2006−307623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載の技術においては、編み目構造または、不織布構造または、不織布構造等の通気性を有する基材の表面に二酸化チタン薄膜を超薄膜である10nm〜100nmの膜厚で製膜しなければならず、製造コストが高くなるという問題がある。さらに、調湿機能は専ら通気性を有する基材に依っているため、調湿の効率が劣るという問題もある。即ち、繊維密度が高くなれば強度が大となりパネルとして望ましいが通気性が低下し調湿の効率が悪くなる問題が生じる。
【0006】
本願発明は上記背景技術に鑑みてなしたものであり、その目的は、一般家庭の居住空間、とくに高断熱化、高気密化された部屋の内装に用いられ、室内環境の湿度が高くなると湿気を吸収して湿度を下げ、室内環境が乾燥してくると、吸湿した水分を環境中に放出して湿度を上げる調湿機能の効率に優れるとともに、通気性にも優れた調湿パネルを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本願請求項1に記載の発明に係る調湿パネルは、繊維の集合体である繊維マトリクスの内部に調湿材を保持せしめて調湿繊維マットを構成し該調湿繊維マットの側端と、通気性を有する通気繊維マットの側端とが連接、配置して構成されるボード層と、該ボード層の表面に配設される通気性表面材とからなることを特徴とする。
【0008】
上記調湿材としては、木炭、竹炭、活性炭等の炭類、タルク、ゼオライト、珪藻土、シリカゲル、モンモリロナイト、セピオライト、ゾノトライト、ベントナイト等の粘土鉱物、アルミナ、シリカ等の無機物をあげることができる。繊維マトリクスは繊維を重積し板状に形成されたもので通気性を有することが望ましい。調湿繊維マットはこれらの調湿材から選択されたものを繊維マトリクス内部に保持させたものである。調湿繊維マットの側端と、通気性を有する通気繊維マットの側端とが連接、配置して構成されるボード層は調湿繊維マットと通気繊維マットを各々製造し、連接、配置してボード層を形成しても良いことは当然であるが、繊維の集合体である繊維マトリクスに調湿繊維マット予定部分と通気繊維マット予定部分を形成し、全体を加熱、加圧することにより、ボード層を形成すると共にボード層に調湿繊維マット、通気繊維マットを一体的に形成しても良いものである。
このボード層に調湿繊維マット、通気繊維マットを一体的に形成する場合、繊維の散布量により通気性を付与でき、製造が容易である利点を有する。なお、通気性表面材は、ボード層の片側の表面のみ、あるいは、両方の表面(表裏両面)に配設されてもよい。
【0009】
本願請求項2に記載の発明は、上記請求項1に記載の調湿パネルにおいて、上記調湿繊維マットが天然繊維とバインダーとしての合成繊維とからなり、上記通気繊維マットが天然繊維からなることを特徴している。
【0010】
上記天然繊維としては、例えば、木質繊維、竹繊維、椰子繊維、サトウキビ繊維、パイナップル繊維、バナナ繊維等の植物繊維をあげることができる。また、合成繊維としては、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、アラミド繊維、アクリル繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ビニリデン繊維、ビニロン、レーヨン、アセテート等が例示される。上記天然繊維、合成繊維に加え、必要に応じてガラス繊維、炭素繊維、石綿繊維等の無機繊維等も使用可能である。
【0011】
上記した天然繊維と合成繊維とからなる繊維集合体は、調湿材が添加された後に加熱され、合成繊維は溶融してバインダーとして機能し、繊維マトリクスを形成する。このようにして、繊維マトリクスの内部には調湿材が保持された調湿繊維マットが形成される。
【0012】
一方、通気繊維マットは合成繊維を除く天然繊維から形成される。ここで、該通気繊維マットの繊維密度の疎密の調整は例えば、天然繊維の解繊度を変えることにより行うことができる。すなわち、天然繊維の解繊度を大きくして細かい繊維を密に充填するか、解繊度が小さい繊維束を充填して繊維密度を疎とするか等により低繊維密度の調整を行う。
【0013】
あるいは天然繊維の繊維目付けを変えることにより行う。例えば、木材を高温・高圧状態で分解して得られる木材の繊維(ウッドファイバー)のうち、中密度のものの充填量を変えることにより、繊維密度の低い通気繊維マットの疎密をさらに微妙に調整することができる。
【0014】
本願請求項3に記載の発明は、上記請求項1に記載の調湿パネルにおいて、上記調湿材が繊維の集合体である繊維マトリクスの繊維と繊維の間に介在することを特徴とする。
【0015】
本願請求項4に記載の発明に係る調湿パネルは、繊維の集合体である繊維マトリクスの内部に調湿材を保持してなる繊維密度の高い調湿繊維マット間に通気性を有し繊維密度の低い通気繊維マットを介在させ側端で交互に側端で連接、配置して構成される少なくとも1層のボード層と、該ボード層の表裏に通気性表面材が配設されてなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
本願請求項1記載の発明に係る調湿パネルにおいては、内部に調湿材を保持してなる調湿繊維マットの側端と、通気繊維マットの側端とが連接、配置して構成されるボード層と、該ボード層の表面に配設される通気性表面材とからなり、上記ボード層の調湿繊維マットに含まれる調湿材が室内環境の過剰な湿気を吸収して湿度を下げ、室内環境が乾燥してくると、吸湿した水分を環境中に放出して湿度を上げ、これらの作用が調湿繊維マットにより行われ、調湿繊維マットの側端と通気繊維マットの側端とが連接、配置して構成されるため通気繊維マットの通気性によりボード層全体として効率の良い調湿機能を発揮して室内環境を良好に保つことができる。また、湿気を含む空気が上記通気性表面材を介してボード層に接触し、あるいは湿気を含む空気が上記ボード層の片側表面に直接接触しその調湿効果を増大させると共に、該通気性表面材が調湿パネルの表面を保護する。
【0017】
本願請求項2記載の発明に係る調湿パネルにおいては、上記調湿繊維マットを天然繊維とバインダーとしての合成繊維とで構成しているから、天然繊維と合成繊維とからなる繊維集合体は、調湿材が添加された後に加熱することにより、合成繊維が溶融してバインダーとして機能し、調湿材を保持した繊維マトリクスを容易に形成することができる。
【0018】
また、上記通気繊維マットが天然繊維からなるため、ウッドファイバー等の天然繊維の束を疎に充填することにより、通気性を良好に保つことが可能となり、換気性も向上し、室内環境を良好に保つことができる。
【0019】
本願請求項3記載の発明に係る調湿パネルにおいては、上記調湿材が繊維の集合体である繊維マトリクスの繊維と繊維の間に介在しているため、調湿材を繊維間に略均一に分散して配設することが可能となり、調湿材の有効接触面積が増大して調湿効率が向上し、室内環境を良好に保つことができる。また、表面に配設される通気性表面材が通気繊維マットから形成されているため、更に換気性も向上させることができる。
【0020】
本願請求項4記載の発明に係る調湿パネルにおいては、内部に調湿材を保持してなる繊維密度の高い調湿繊維マット間に通気性を有し繊維密度の低い通気繊維マットを介在させ交互に側端で連接、配置される少なくとも1層のボード層から形成されるため、例えば、強度が要求される内装用の建材に用いられる場合、ボード層を2層、または3層と複数枚を積層することにより、調湿機能を発現できるとともに、十分な強度をも保持できる。また、上記ボード層の表裏に通気性表面材として通気繊維マットが配設されているため、上記ボード層の表裏両面を保護するとともに、通気性を妨げることなく、上記調湿繊維マットの機能を発揮させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本願発明に係る調湿パネルの実施形態について図面を参照して詳細に説明する。図1は本願発明に係る調湿パネルAの構成を模式的に示す分解説明図である。図1に示すように、上記調湿パネルAは、ボード層2と、このボード層2の表裏面に配設される通気性表面材31および通気性表面材32とから構成される。
【0022】
上記ボード層2は、繊維集合体であり、かつ、繊維密度の高い調湿繊維マット21と、繊維密度の低い通気繊維マット22とからなり、上記調湿繊維マット21の繊維マトリクスの内部には調湿材1が保持されるとともに、調湿繊維マット21の側端と、通気繊維マット22の側端とは連接して配置されている。この場合、調湿繊維マット21に上下に連通して通気繊維マット22が部分的に連接して配置されている状態も含んで意味するものである。
【0023】
上記調湿繊維マット21は、例えば前記ウッドファイバー等の天然繊維と、バインダーとしての合成繊維、例えばポリエステル繊維とが混合された集合体からなるとともに、加熱によって合成繊維は部分的に溶融して天然繊維を溶着し、繊維マトリックスが形成される。このとき、例えば、木炭、竹炭、活性炭等を粉砕して得られた調湿材1は上記繊維マトリックスに保持され、調湿機能を発揮する。
【0024】
上記ボード層2の表裏面には通気性表面材31、32が配設されるとともに、湿気を含んだ空気は、図1に白抜き矢印で示すように上記通気性表面材31、32を経由して調湿繊維マット21の表裏面211に接触し、室内の湿気が過剰であるときは上記調湿材1が吸湿する。また、室内が乾燥してくると、吸収した水分は通気性表面材31、32を経て室内環境中に放出されて湿度を上げ、このようにして室内環境の調湿作用が行われる。
【0025】
一方、矢印で示すように、縦方向には繊維密度の低い通気繊維マット22を通じて空気が流通し、調湿繊維マット21の側端面212に接触して空気中の過剰の湿気が吸収される。また、室内が乾燥してくると、吸収された水分は上記した側面212から通気繊維マット22を通じて室内環境中に放出されて湿度を上げ、このようにして室内の調湿作用がより効率的に行われる。
【0026】
図2(イ)はボード層2を芯層とし、その表裏面に通気性表面材31、32を配設するとともに、加熱下に白抜き矢印で示すようにプレスして調湿パネルAを一体化する工程を示す概略説明図である。図2(イ)においては、上記通気性表面材31、32としては、ボード層2を構成する通気繊維マット22と同じくウッドファイバー等の天然繊維が使用されている。
【0027】
ここで、ボード層2とその表裏面に配設される通気性表面材31、32との接触面は両者共、外見上は網目構造とされているため、この網目構造の露出面に一般的に用いられる接着剤を塗布し、あるいはホットメルト型接着剤を介装してヒートプレスしてもよい。このようにすることにより、繊維間の空隙が保持されるとともに、空気の流通を妨げることなく、また、調湿機能を損なうことなくボード層2と通気性表面材31、32とを接着することができる。
【0028】
上記調湿材1は、図2(イ)に示されるように、繊維の集合体である繊維マトリクスの繊維と繊維の間に介在して保持されている。このように、調湿材1を繊維間に略均一に分散して保持することにより、調湿材1の有効接触面積が大となって調湿効率が向上し、良好な室内環境を保つことができる。
【0029】
図2(ロ)は、上記のようにして一体化された製品調湿パネルPを示す断面図である。図2(ロ)においては、ボード層2が1層である場合を示しているが、2層以上の複数層を積層してその最外側の表裏面に通気性表面材31、32を配設してもよい。
【0030】
上記のようにして得られた製品調湿パネルPの最外側には、例えば、内装用の化粧シートが貼着される。しかし、印刷加工の容易さ等の点から、従来、好んで使用されてきた、例えば、塩化ビニルクロスからなる化粧シートは殆ど通気性がないため、製品調湿パネルPの有する調湿特性を十分に発現させることができない。そこで、本願発明に係る調湿パネルにおいては、化粧シートとしては、織布、不織布等の網目を有するシートを素材とする通気性化粧シートを用いることが好ましい。
【0031】
上記網目を有するシートとしては、通気性があれば特に限定されることなく用いられ、例えば、レーヨン、ポリエステル、ポリプロピレン等からなるシートをあげることができる。これらの網目を有するシートの表面を化粧して図示しない通気性化粧シートを形成し、上記製品調湿パネルPに貼着する。
【0032】
ここで、貼着する際に使用する接着剤についても十分な検討が必要であり、上記製品調湿パネルPの網目構造の露出面と通気性化粧シートとを、例えば、ホットメルト型接着剤によりホットプレスして貼着する。このとき、ホットプレスの加熱温度、加熱時間等をホットメルト型接着剤が完全に融解するとともに、通気性のある空隙をなくさないように設定することが必要であり、このようにすることによって、製品調湿パネルPの調湿機能を維持しつつ表面化粧をすることができる。
【0033】
上記のようにして化粧された製品調湿パネルPは、屋内居住空間における壁材や天井材として使用可能であり、また、収納用の建具材等に有利に使用できる。このとき、用途に応じて上記したボード層2の繊維密度の高い調湿繊維マット21と、繊維密度の低い通気繊維マット22との比率を変えることが可能であり、また、ボード層2の厚さ、積層枚数等を変えることもできる。
【0034】
以上述べたように、本願発明に係る調湿パネルは所望の用途に応じて種々設計変更自在であり、特許請求の範囲を逸脱しない限り、いずれの場合も本願発明の技術的範囲に属する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本願発明の調湿パネルの構成を模式的に示す分解説明図。
【図2】(イ)はボード層を芯層として通気性表面材を一体化する工程を示す概略説明図、(ロ)は一体化された製品である調湿パネルを示す断面図。
【符号の説明】
【0036】
A 本願発明に係る調湿パネル
P 製品調湿パネル
1 調湿材
2 ボード層
21 調湿繊維マット
211 表裏面
212 側端面
22 通気繊維マット
31 通気性表面材
32 通気性表面材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
繊維の集合体である繊維マトリクスの内部に調湿材を保持せしめて調湿繊維マットを構成し、該調湿繊維マットの側端と、通気性を有する通気繊維マットの側端とが連接、配置して構成されるボード層と、該ボード層の表面に配設される通気性表面材とからなる調湿パネル。
【請求項2】
上記調湿繊維マットが天然繊維とバインダーとしての合成繊維とからなり、上記通気繊維マットが天然繊維からなる請求項1に記載の調湿パネル。
【請求項3】
上記調湿材が繊維の集合体である繊維マトリクスの繊維と繊維の間に介在する請求項1に記載の調湿パネル。
【請求項4】
繊維の集合体である繊維マトリクスの内部に調湿材を保持してなる繊維密度の高い調湿繊維マット間に通気性を有し繊維密度の低い通気繊維マットを介在させ交互に側端で連接、配置して構成される少なくとも1層のボード層と、該ボード層の表裏に通気性表面材が配設されてなる請求項1に記載の調湿パネル。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−121314(P2010−121314A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−294328(P2008−294328)
【出願日】平成20年11月18日(2008.11.18)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】