説明

調湿及びガス吸着材料及びその製造方法

【課題】高い調湿能や、塩基性ガスに対する高い吸着能を有する珪質頁岩に対して異なるガスに対する高いガス吸着機能を付加し、多様な目的に使用できる機能性材料の提供。
【解決手段】水分吸収能力と、該水分を自立的に放湿できる吸放湿特性を持つ天然の珪質頁岩にアルカリ性化合物による処理を施した珪質頁岩を主成分として含み、天然の珪質頁岩に由来する調湿機能及びアンモニアに対するガス吸着能に加え、トルエン、メチルメルカプタン及び硫化水素から選ばれるガスに対するガス吸着性能を併せ持つ材料であって、アルカリ性化合物による処理を施した珪質頁岩が、細孔直径が8.5〜10nmの範囲にピークを有し、かつ、平均細孔直径が8.5〜9.5nmの範囲にあり、さらに、その細孔内の少なくとも一部に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の、水酸化物、炭酸塩及び珪酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が担持されている調湿及びガス吸着材料。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自立的な調湿性に優れる天然材料である珪質頁岩を使いこなすための技術に関し、さらに詳しくは、アルカリ性化合物を用いて珪質頁岩にさらなる機能を付与し、珪質頁岩をより有用な調湿及びガス吸着に優れる機能性材料へと改良する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エアコンの普及などに伴って建物の高気密化、高断熱化の進行は目覚ましく、従来の住宅などに比べて、居住空間内の自然換気量は激減している。このような室内外の換気不良は、室内に水蒸気がこもって壁や窓などに結露を生じさせる原因となったり、カビやダニを発生する原因となっている。また、室内外の換気不良は、日常生活において発生するアンモニア、硫化水素又はメルカプタンなどの悪臭ガスが室内空間に滞留する原因にもなっている。さらに、各種の建材や家具材料から発生するアルデヒドやトルエンなどの揮発性有機化合物(VOC)が室内空間に長く滞留する原因にもなっている。上記に挙げたカビやダニやVOCガスは、近年増大しているアレルギー症状や化学物質過敏症を発症する原因物質であると言われている。上記のような現状を打壊するために、吸放湿機能により結露を防止できる調湿性能と、VOCや悪臭ガスを消臭できるガス吸着性能とを併せ持つ、調湿性及びガス吸着性に優れる機能性材料の開発が待望されている。このようなニーズに対応すべく、天然の無機材料である、活性炭やシリカゲル、ゼオライト、珪藻土といった種々の吸着材料による調湿やガス吸着除去の研究開発が進められている。その一つとして珪質頁岩がある。
【0003】
珪質頁岩は、珪藻質泥を根源とした堆積物であるが、結晶化による硬質化が進んだ固く割れ易い頁岩であり、特有の性状を示し、一般に珪藻土と呼ばれている珪藻泥岩とは明確に区別されるものである。中でも、北海道天北地方から産出される稚内層珪質頁岩は、細孔直径70〜120Å(7〜12nm)にシャープな細孔径分布を持ち、細孔容積が0.1〜0.4ml/g、比表面積が80〜150m2/gであり、平均細孔直径が90Å(9nm)程度という極めて微細な細孔を多数持つという、特有の性質を有している。例えば、上記の比表面積の値は、一般的な珪藻土の3〜4倍の大きさにあたる。上記のような特性を有する珪質頁岩は、近年、極めて高い吸放湿特性を示し、しかも800℃程度の温度で焼成してもその吸放湿性が損なわれることがないことが明らかとなり、珪質頁岩を調湿機能性材料として利用することが提案されている(特許文献1参照)。珪質頁岩の有する吸放湿特性は、25%という高い水分吸収力に加えて、相対湿度を50〜60%に自立的に制御できるという極めて優れたものである。また、珪質頁岩は、優れたガス吸着材料である活性炭に比べて安価であり、しかも白色ないしはクリーム色を呈するものであり、色調の点からも、例えば、建材用などの場合に特に有用である。
【0004】
さらに、珪質頁岩の持つアンモニアなどの塩基性ガスに対する吸着能力も明らかになり、調湿機能と消臭機能とを有する調湿消臭材料についての提案もある(特許文献2参照)。また、珪質頁岩は、アセトアルデヒドに対する吸着効果を有していることも分かっている(非特許文献1参照)。その一方で、珪質頁岩は、アンモニアなどに比べてトルエンなどに対する吸着量は極めて低いことが報告されている(非特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平4−354514号公報
【特許文献2】特開2001−219095公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】T.Kanno,et al.,J.Ceramic Soc.Jap.111,6,396−400,2003
【非特許文献2】野村隆文等、北海道立工業試験場報告、303,81−89,2004
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記したように、珪質頁岩は、優れた吸放湿機能を有するものであるが、ガス吸着性能についてはガスの種類によっては十分ではなく、吸放湿機能と、VOCや悪臭ガスに対するガス吸着性能とが共に優れる機能性材料として利用するには、改善すべき余地がある。本発明者らの検討によれば、珪質頁岩のガス吸着能は、ガスの種類によって著しく異なり、例えば、アンモニアやアセトアルデヒドに対する吸着能力には優れるものの、トルエンのような揮発性有機化合物(VOC)に対する吸着能が低いことはもとより、悪臭物質である硫化水素やメルカプタンのような硫黄系の酸性ガスに対する吸着能も十分ではない。このことは、珪質頁岩を用いた材料は、VOCに対しては勿論、日常生活において発生する悪臭ガス全般に対しても十分なものとは言えないことを意味している。また、人の臭覚は、一部の悪臭などが存在しても感じてしまうため、その意味でも、生活臭、介護臭、VOCなどの多様なガス成分に対する吸着能を確保することは、極めて重要である。
【0008】
したがって、本発明の目的は、高い調湿能や、塩基性ガスに対する高い吸着能を有することが知られている珪質頁岩に対し、さらに異なるガスに対しても高いガス吸着機能を付加することで、珪質頁岩を利用した調湿及びガス吸着が共に優れる、多様な目的に使用できる機能性材料を提供することにある。より具体的には、珪質頁岩の持つ優れた調湿能力や塩基性ガスに対するガス吸着能力を損なうことなく、硫化水素やメルカプタンのような硫黄系の酸性ガスに対するガス吸着能力に優れる珪質頁岩を用いた機能性材料を提供することにある。また、トルエンのような揮発性有機化合物(VOC)に対して優れた吸着能を示す珪質頁岩を用いてなる機能性材料を提供することにある。さらには、珪質頁岩を、用途に応じて所望の性能を容易にかつ自在に付与させることができ、これによって上記したような多様な特性を有する機能性材料を自在に設計することができる技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は以下の本発明によって達成される。すなわち、本発明の第1の形態は、窒素吸着法で測定した細孔径分布において、細孔直径が10〜13nmの範囲と3.0nm以下の2つの領域にピークを有し、かつ、平均細孔直径が11〜14nmの範囲にある珪質頁岩を含んでなることを特徴とする調湿及びガス吸着材料である。
【0010】
本発明の第2の形態は、窒素吸着法で測定した細孔径分布において、細孔直径が4.5〜6nmの範囲と3.0nm以下の2つの領域にピークを有し、かつ、平均細孔直径が4.5〜5.5nmの範囲にある珪質頁岩を含んでなることを特徴とする調湿及びガス吸着材料である。
【0011】
本発明の第3の形態は、窒素吸着法で測定した細孔径分布において細孔直径70〜120Å(7〜12nm)に1つのピークを有するシャープな細孔径分布を持ち、その細孔容積が0.1〜0.4ml/gの範囲にあり、平均細孔直径が90Å(9nm)程度の微細な孔を多数有する、相対湿度90%で、1gあたり25%以上の水分吸収能力と、該水分を自立的に放湿できる吸放湿特性を持つ天然の珪質頁岩にアルカリ性化合物による処理を施した珪質頁岩を主成分として含み、天然の珪質頁岩に由来する調湿機能及びアンモニアやアセトアルデヒドに対するガス吸着能に加え、トルエン、メチルメルカプタン及び硫化水素から選ばれるいずれかのガスに対するガス吸着性能を併せ持つ調湿及びガス吸着材料であって、上記アルカリ性化合物による処理を施した珪質頁岩が、窒素吸着法で測定した細孔径分布において、細孔直径が8.5〜10nmの範囲にピークを有し、かつ、平均細孔直径が8.5〜9.5nmの範囲にあり、さらに、その細孔内の少なくとも一部に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の、水酸化物、炭酸塩及び珪酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ性化合物が担持されている珪質頁岩であることを特徴とする調湿及びガス吸着材料である。
【0012】
本発明の別の実施形態は、上記本発明の第1の形態の調湿及びガス吸着材料の製造方法であって、珪質頁岩の粉末を強アルカリ性化合物の1.3〜1.8モル/リットル濃度の水溶液で1時間以上煮沸する工程を有することを特徴とする調湿及びガス吸着材料の製造方法である。
【0013】
本発明の別の実施形態は、上記本発明の第2の形態の調湿及びガス吸着材料の製造方法であって、珪質頁岩の粉末を強アルカリ性化合物の1.8を超えて2.5モル/リットル濃度の水溶液で30分間以上煮沸する工程を有することを特徴とする調湿及びガス吸着材料の製造方法である。
【0014】
本発明の別の実施形態は、上記本発明の第3の形態の調湿及びガス吸着材料の製造方法であって、珪質頁岩を、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の、水酸化物、炭酸塩及び珪酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ性化合物の溶液中に常温で浸漬する工程を有することを特徴とする調湿及びガス吸着材料の製造方法である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、特に、高い調湿能や塩基性ガスに対する高い吸着能を有する珪質頁岩に、トルエンのような揮発性有機化合物(VOC)に対する高いガス吸着能を付与することで、より多様な目的に使用できる調湿及びガス吸着材料が提供される。また、本発明によれば、珪質頁岩の持つ優れた調湿能力や、アンモニアなどの塩基性ガスに対する吸着能力を維持した状態で、硫化水素やメルカプタンのような硫黄系の酸性ガスに対する吸着能や、トルエンなどに対する吸着能が向上した、日常生活において発生するガス全般に対して有効な調湿及びガス吸着材料が提供される。さらに、本発明によれば、用途に応じた所望の性能に優れる珪質頁岩を容易にかつ自在に得ることができ、機能性材料としての珪質頁岩の利用の途を拡大することができる技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の調湿及びガス吸着材料を構成するアルカリ処理した珪質頁岩の細孔径分布ヒストグラムである。
【図2】本発明の第1の調湿及びガス吸着材料を構成するアルカリ処理した珪質頁岩の性状と処理時間の関係グラフである。
【図3】本発明の第1の調湿及びガス吸着材料を構成するアルカリ処理した珪質頁岩の細孔を説明するための模式図である。
【図4】本発明の第2の調湿及びガス吸着材料を構成するアルカリ処理した珪質頁岩の細孔径分布ヒストグラムである。
【図5】本発明の第2の調湿及びガス吸着材料を構成するアルカリ処理した珪質頁岩の性状と処理時間の関係グラフである。
【図6】本発明の第3の調湿及びガス吸着材料を構成するアルカリ処理した珪質頁岩の性状と処理時間の関係グラフである。
【図7】本発明の調湿及びガス吸着材料を構成するアルカリ処理した比較例の珪質頁岩の細孔径分布ヒストグラムである。
【図8】本発明の調湿及びガス吸着材料を構成するアルカリ処理した比較例の珪質頁岩の性状と処理時間の関係グラフである。
【図9】珪質頁岩の原石と、本発明の各調湿及びガス吸着材料を構成するアルカリ処理した珪質頁岩の水分放湿機能を示すグラフである。
【図10】珪質頁岩の原石にトルエンを吸着させた場合の、相対湿度とトルエン吸着量の関係と、該珪質頁岩の原石の水分吸着量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下に、好ましい実施の形態を挙げて、本発明をさらに詳細に説明する。前記したように、天然の珪質頁岩は、相対湿度を自律的に制御する優れた調湿機能と同時に、アンモニアなどの塩基性ガスに対する吸着機能や、アセトアルデヒドに対する吸着効果を有していることが分かっている。本発明者らは、先ず、これらのガス物質に対する吸着のメカニズムについての検討を行った。その結果、これらのガスは水溶性ガスであり、高湿度条件ほど、吸着量が増大する傾向があることを確認した。前記したように、珪質頁岩は、細孔直径70〜120Å(7〜12nm)にシャープな細孔径分布を持ち、その細孔容積が0.1〜0.4ml/gの範囲にあり、平均細孔直径が90Å(9nm)程度の極めて微細な孔を多数有するものである。そして、例えば、稚内層珪質頁岩では、相対湿度90%で、1gあたり25%以上という極めて高い水分吸収能力を示す。このような従来の天然無機材料にはない高い水分吸収能力を示す理由としては、珪質頁岩内に取り込まれたガス状の水が、上記した微細孔内で凝縮するためと考えられている。
【0018】
上記のことから、本発明者らは、珪質頁岩の持つアンモニアやアセトアルデヒドに対する高いガス吸着効果は、珪質頁岩に特有の微細孔内に存在する凝縮水へのガス溶解によって引き起こされたものであると推測している。このことは、前記した珪質頁岩は、アンモニアなどに比べて極めて吸着量が低いと報告されているトルエンが疎水性ガスであることとも矛盾しない。すなわち、珪質頁岩の持つアンモニアなどの水溶性物質に対する高いガス吸着効果は、その高い水分吸収能力により初めてもたらされており、この高い水分吸収能力は、前記した珪質頁岩が有する極めて微細な細孔の存在によって初めて達成されている。
【0019】
上記の知見から、本発明者らは、珪質頁岩の持つガス吸着能を制御するためには、珪質頁岩に特有の微細孔の性状を制御することが極めて重要であると考え、この点に関し、さらなる検討を行った。ここで、従来より行われている吸着剤の吸着効果を高める手法としては、一般的に、細孔構造の改質処理が行われている。例えば、珪藻土などの非晶質シリカに関して、アルカリ処理を行い、空隙構造を変化させ、比表面積を増大させ、吸湿、吸着性能を向上させる研究は多数なされている。例えば、特開平8−175814号公報では、食用油の劣化成分の吸着除去性能の向上のために、シリカを主成分とした天然鉱物をアルカリ溶液へ浸漬させることで、平均細孔直径、比表面積及び細孔容量を高める方法を提案している。しかし、珪質頁岩のような結晶質シリカ鉱物は、特開平11−347341号公報に記載されているように、高温にしなければアルカリ金属と反応しないとされている。
【0020】
本発明者らの検討によれば、珪質頁岩におけるアンモニアガス、アセトアルデヒドの吸着効果は、高湿度条件下ほどガス吸着性能は大きくなる。前記したように、これらの水溶性ガスの高いガス吸着能は、珪質頁岩の細孔内の凝縮水へのガス溶解によって引き起こされていると考えられるため、細孔内に多量に水が存在する高湿度条件下ほどガス吸着性能が大きくなったものと考えられる。これに対し、トルエンなどは疎水性ガスであるので、その吸着は、珪質頁岩の細孔表面への単層吸着のみによって起こると考えられる。事実、トルエンなどの疎水性ガスの場合は、上記したアンモニアのような水溶性ガスの吸着量よりも圧倒的に低い。本発明者らは、この点についての確認実験の中で、図10に示したように、高湿度条件下ほど、トルエンの吸着効果は低下することを見出した。本発明者らは、この理由を、珪質頁岩の細孔表面への水蒸気とトルエンの吸着が競争的であり、さらに親水性の珪質頁岩表面では、水蒸気の吸着がトルエンよりも優先的に起こりやすいためであると考えている。この場合には、高湿度な条件であるほど、細孔表面は吸着水に覆われるため、トルエンの吸着量が低下することとなる。
【0021】
以上のことから、珪質頁岩の優れた調湿機能に加えて、トルエンなどの疎水性ガスに対する吸着機能を同時に発現させるためには、細孔表面を疎水性へ改質する、または水蒸気とトルエンの吸着がそれぞれ単独で進行するような細孔表面を設計することが重要であるとの結論に至った。本発明者らは、珪質頁岩の微細孔の構造を変化させることで、水分吸着と競合しないトルエンなどの疎水性ガスに対する吸着機能を有する状態に制御できるのではないかと考え、さらなる検討を行った結果、本発明に至ったものである。本発明では、珪質頁岩の微細孔の細孔径分布を変化させる手法としてアルカリによる処理を行い、VOCガスのモデルガスとしてトルエンを用いて検討を行った。なお、従来より行われている非晶質シリカのアルカリ処理は、平均細孔直径、比表面積、細孔容量の拡大によってガス吸着性能の向上を目的としたものである。これに対し、本発明におけるアルカリ処理は、珪質頁岩の優れた調湿機能が得られる細孔径分布を維持したまま、トルエンなどのガス吸着に効果的であり、かつ、そのガス吸着に対して競争的に起こる水分吸着に影響されない細孔径分布を新たに生じさせることを目的としており、従来より行われているアルカリ処理の目的とは大きく異なっている。
【0022】
また、本発明者らは、珪質頁岩の微細孔の構造を何ら変化させなくても、アルカリ処理によって、酸性ガスに対するガス吸着性能を向上させることができる表面特性を得ることができるのではないかと考え、この点についての検討も同時に行った。本発明におけるアルカリ処理の目的は、この場合も従来より行われているアルカリ処理の目的とは全く異なる。
【0023】
先ず、珪質頁岩をアルカリで処理した場合における細孔構造の変化の状況を調べるために、下記の実験を行った。実験には、珪質頁岩を粉砕して分級した1〜2mmの粒径の粒子を用いた。そして、それぞれ1モル/リットル(4%)の水酸化ナトリウム水溶液を用い、常温(25℃)下と、100℃(煮沸)下で浸漬実験を行った。その結果、図6に示したように、常温(25℃)での浸漬処理によっては、細孔径分布及び比表面積は、ほとんど変化しないことが確認された。なお、50%の水酸化ナトリウム水溶液を用い、30℃で5時間浸漬した場合も、細孔径が若干大きくなる傾向があることが認められたものの、細孔径分布及び比表面積は、ほとんど変化しなかった。そこで、細孔径構造が変化していない状態でアルカリ処理された場合に、珪質頁岩のもつガス吸着特性への影響について詳細な検討を行った。
【0024】
一方、水酸化ナトリウム水溶液を用いて珪質頁岩の粉砕物を100℃近傍の温度で加熱処理した場合には、珪質頁岩の持つ細孔径分布が変化することがわかった。また、さらなる検討の結果、アルカリ処理の条件によって、珪質頁岩の持つ細孔構造が種々に変化し、異なる細孔径分布を有するものとなることを見出した。そこで、細孔径分布の違いによってガス吸着特性が変化するか否かについて詳細な検討を行った。上記の検討の結果、得られたのが、各形態の珪質頁岩を含んでなる調湿及びガス吸着に優れる3種類の調湿及びガス吸着材料である。以下、これらについて説明する。
【0025】
(第1の調湿及びガス吸着材料)
本発明の第1の調湿及びガス吸着材料は、窒素吸着法で測定した細孔径分布において、細孔直径が10〜13nmの範囲と3.0nm以下に2つのピークを有し、かつ、平均細孔直径が11〜14nmの範囲にある珪質頁岩を含んでなることを特徴とする。上記構成を有する本発明の第1の調湿及びガス吸着材料は、珪質頁岩が本来有する調湿機能を維持した状態で、トルエンに代表される疎水性ガスであるVOCガス吸着性能が向上しており、しかも、その吸着性能は、該ガス吸着性能と競争的に起こる水分吸着の影響を受けにくい、という効果が得られる細孔構造を有するものとなる。すなわち、本発明の第1の調湿及びガス吸着材料を構成する珪質頁岩では、図1及び2に示したように、細孔直径が10〜13nmの範囲にピークを形成する細孔径分布を有するため、珪質頁岩が本来有する高い吸放湿が維持されたものと考えられる。その一方で、本発明の第1の調湿及びガス吸着材料を構成する珪質頁岩は、本来の珪質頁岩では現れることのなかったピークが細孔直径3.0nm以下の範囲にある細孔径分布を持つ。そして、上記のような極めて微細な孔が新たに形成された細孔径分布を有する珪質頁岩を用いてトルエンの吸着試験を行うと、トルエンの吸着量が明らかに増大することを確認した。さらに、吸着したトルエンの脱離試験を行ったところ、アルカリ処理をしない原石の珪質頁岩に比較してトルエンの吸着量が多い一方、脱離するトルエン量は少ないことがわかった。本発明者らは、上記のことから、本発明の第1の調湿及びガス吸着材料を構成する珪質頁岩の表面は、図3に模式的に示したように、珪質頁岩が本来有する細孔の径を維持した状態で、さらに極微細な孔が形成された状態となっているものと推測している。そして、珪質頁岩に新たに形成された、この極微細な孔によって、珪質頁岩が本来有している細孔の場合のように水分吸着の影響を受けることなく、トルエンのような疎水性ガスを安定的に吸着できたものと考えている。
【0026】
上記した第1の調湿及びガス吸着材料を構成する珪質頁岩は、珪質頁岩の粉末を強アルカリ性化合物の1.3〜1.8モル/リットル濃度の水溶液で1時間以上煮沸することで容易に得られる。この場合に使用する強アルカリ性化合物としては、アルカリ金属の水酸化物が挙げられ、より具体的には、水酸化ナトリウムや水酸化カリウムなどが挙げられる。処理する珪質頁岩としては、例えば、数ミリ、具体的には、1〜5mm程度に粉砕した珪質頁岩を使用することが好ましい。煮沸処理は、静置して行っても、攪拌しながら行ってもよい。詳細については、実施例を挙げて後述する。
【0027】
(第2の調湿及びガス吸着材料)
本発明の第2の調湿及びガス吸着材料は、窒素吸着法で測定した細孔径分布において、細孔直径が4.5〜6nmの範囲と3.0nm以下に2つのピークを有し、かつ、平均細孔直径が4.5〜5.5nmの範囲にある珪質頁岩を含んでなることを特徴とする(図4参照)。本発明の第2の調湿及びガス吸着材料は、珪質頁岩が本来有する極めて優れた調湿機能は低減するものの、一般的な珪藻土程度の調湿機能を十分に示し、トルエンのような疎水性ガスに対するガス吸着性能が格段に向上した細孔構造を有するものとなる。
【0028】
上記した第2の調湿及びガス吸着材料を構成する珪質頁岩は、珪質頁岩の粉末を強アルカリ性化合物の1.8を超えて2.5モル/リットル濃度の水溶液で30分間以上煮沸することで容易に得られる。この場合に使用する強アルカリ性化合物や処理する珪質頁岩としては、先に述べたものと同様である。詳細については、実施例を挙げて後述する。
【0029】
(第3の調湿及びガス吸着材料)
本発明の第3の調湿及びガス吸着材料は、窒素吸着法で測定した細孔径分布において、細孔直径が8.5〜10nmの範囲にピークを有し、かつ、平均細孔直径が8.5〜9.5nmの範囲にあり、かつ、その細孔内の少なくとも一部に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の、水酸化物、炭酸塩及び珪酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ性化合物が担持されている珪質頁岩を含んでなることを特徴とする。本発明の第3の調湿及びガス吸着材料は、珪質頁岩が本来有する極めて優れた調湿機能と、塩基性ガスに対する吸着力を有し、さらに、硫化水素やメルカプタンのような硫黄系の酸性ガスに対する吸着能力が向上したものとなる。本発明の第3の調湿及びガス吸着材料は、珪質頁岩が本来有する細孔構造が全く損なわれていないので、硫化水素やメルカプタンのような硫黄系の酸性ガスに対する吸着能力と同時に、従来と同様に、アンモニアガスのような水溶性のガスに対して高い吸着性能を示す。
【0030】
上記した第3の調湿及びガス吸着材料を構成する珪質頁岩は、珪質頁岩を、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の、水酸化物、炭酸塩及び珪酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ性化合物の溶液中に常温で浸漬し、その後に乾燥させることで容易に得られる。このようにすれば、珪質頁岩に、アルカリ性化合物を均一に担持させることができる。
【0031】
本発明の第3の調湿及びガス吸着材料を構成する珪質頁岩は、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の、水酸化物、炭酸塩及び珪酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種が担持されてなるが、これらの中でも、アルカリ金属を含んだアルカリ性化合物を珪質頁岩に担持させたものを使用することが好ましい。これらの化合物を担持させた珪質頁岩を使用することで、より酸性ガス吸着性に優れた調湿及びガス吸着材料を得ることができる。さらに、アルカリ金属を含んだアルカリ性化合物の中でも、珪質頁岩との反応性が特に低いアルカリ金属の珪酸塩を担持させた構成とすることが好ましい。しかし、珪質頁岩との反応性の高いアルカリ性化合物であっても担持させる方法を工夫することで利用することは可能であり、何ら限定されるものではない。本発明の第3の調湿及びガス吸着材料を構成する珪質頁岩を得る際に使用する最も好ましいアルカリ性化合物は、他の珪酸アルカリに比べて低粘度で浸透性に優れ、珪質頁岩との反応性も低く、耐水性を有した調湿及びガス吸着性材料が得られる珪酸リチウムである。
【0032】
前記した方法で本発明の第3の調湿及びガス吸着材料を構成する珪質頁岩を製造する際に、珪質頁岩を浸漬させるアルカリ性化合物の溶液の濃度は、用いるアルカリ性化合物の種類にもよるが、2〜50質量%の範囲とすることが好ましい。特に、5〜50質量%の範囲で珪質頁岩を処理し、該珪質頁岩を使用した場合に、より酸性ガス吸着性が優れた調湿及びガス吸着材料を得ることができるため好ましい。一方、珪質頁岩を処理するアルカリ性化合物の溶液の濃度が2質量%未満である場合は、これを用いてなる調湿及びガス吸着性材料の酸性ガス吸着性が上記範囲と比べて劣る場合がある。珪質頁岩を処理するアルカリ性化合物の溶液の濃度が50質量%を超える場合は、粘度が高くなるなど、該溶液の取扱が不便となる。
【0033】
また、上記溶液中に珪質頁岩を浸漬させる時間は、使用するアルカリ性化合物水溶液の濃度にもよるが、例えば、30℃の液温下において10分間〜24時間の範囲内とすることが好ましい。濃度にもよるが、浸漬時間が、10分間未満の場合は、珪質頁岩の細孔内にアルカリ性化合物を十分に担持させることができない場合があり、24時間を超える場合は、溶液の種類や濃度によっては珪質頁岩が有する細孔構造が影響を受け、高い調湿機能が損なわれることが懸念される。また、浸漬後に行う乾燥処理は、従来公知のいずれの方法で行ってもよい。例えば、浸漬処理した珪質頁岩を、常温において1〜10日間放置することで行うことができる。
【0034】
上記したように、異なる機能を示す珪質頁岩は、全て、珪質頁岩をアルカリによって処理するという簡単な方法によって得ることができ、処理条件を異ならせることで、珪質頁岩の機能を自在に制御することが可能となる。そして、これらの珪質頁岩を用いることで、ガス吸着性がそれぞれに異なる、本発明の第1〜3の調湿及びガス吸着材料を容易に得ることができる。
【0035】
(機能性材料を構成する珪質頁岩)
本発明で使用する珪質頁岩は、結晶化による硬質化が進んだシリカ系の天然無機材料であり、各地で産出されるが、本発明で規定する細孔径分布を実現でき、細孔構造を損なうことなくアルカリ性化合物を担持できるものであれば、いずれのものも使用できる。珪質頁岩の中でも、稚内層珪質頁岩は、特に高い調湿機能と塩基性ガスに対する吸着機能を有するため、本発明に好適である。稚内層珪質頁岩は、同じ層でも圧力のかかり方などの影響があり、採取場所によっても、また、産地によっても異なるが、比表面積が80m2/g以上、具体的には例えば、120m2/g程度であり、細孔容積が0.3cm3/g程度、平均細孔直径が90Å(9nm)程度の、ナノ単位の極めて微細な孔を多数有するものであり、最大吸湿率が15質量%以上、より優れたものでは、25質量%程度の極めて高い水分吸収能力と、該水分を自立的に放湿する能力を示すものである。
【0036】
本発明においては、アルカリ処理を施す珪質頁岩としては、原石のまま用いてもよいが、珪質頁岩を焼成したものを用いることもできる。その際の焼成温度としては、700〜1,000の範囲、より好ましくは700〜900℃の範囲、さらには、700〜850℃の範囲であることが好ましい。一方、上記珪質頁岩が、1,000℃を超える温度で焼成されたものである場合は、焼成により細孔の構造変化が起きるおそれがあるため好ましくない。一方、珪質頁岩の強度を向上させる必要がある場合には、少なくとも700℃以上で焼成することが必要となる。なお、本発明者らが測定した結果では、900℃で焼成した場合における焼成物の比表面積は144m2/gであったのに対し、1,000℃で焼成した場合における焼成物の比表面積は104m2/gであり、比表面積の低下が認められた。したがって、焼成温度の上限は900℃とし、吸放湿性や塩基性ガス吸着性に優れる原石の細孔構造をそのまま残し、強度を確保する目的からは、850℃以下の温度で焼成するとよい。
【0037】
上記したように、焼成物とした形態とすることもできるため、本発明の調湿及びガス吸着材料は、各種の建材やガス吸着材など、多様な形態で、多様な用途での利用が可能である。本発明の第3の調湿及びガス吸着材料を構成する珪質頁岩に焼成したものを用いる場合は、焼成した後に、アルカリ性化合物の溶液中に常温で浸漬するアルカリ処理を行うことが好ましい。本発明の第1及び第2の調湿及びガス吸着材料を構成する珪質頁岩に焼成したものを用いる場合は、焼成する前の珪質頁岩を強アルカリ性化合物の水溶液で煮沸処理することで細孔径分布を変化させ、その後に焼成することが好ましい。焼成後にアルカリ処理を行うことも可能であるが、珪質頁岩の焼結によって強度が多少増すため、処理時間を適宜設定する必要はあるものの、同様の結果は得られる。したがって、アルカリ処理を施す時期は、焼成前後に特に限定されるものではない。
【0038】
(調湿及びガス吸着材料の使用形態)
本発明の調湿及びガス吸着材料は、その用途によっても異なるが、前述したようにしてアルカリ処理した珪質頁岩を粒状物のまま、または、該珪質頁岩を単独で造粒した造粒物として、各種の建材として、或いは、ガス吸着装置など充填するガス吸着剤として使用することができる。これに限らず、アルカリ処理した珪質頁岩にバインダーを加えて0.1〜30mm程度の造粒物としたり、珪質頁岩にバインダーを加えて成形後に焼成して焼成物として用いることもできる。
【0039】
また、造粒物や焼成物とする場合に、アルカリ処理した珪質頁岩に、さらに他の機能性成分を付加させた複数成分を用いて、本発明の調湿及びガス吸着材料を調製してもよい。例えば、珪質頁岩以外の無機調湿材料を、アルカリ処理した珪質頁岩とバインダーとともに用いることができる。アルカリ処理した珪質頁岩以外の無機調湿材料としては、例えば、珪質頁岩の原石、大谷石、シリカゲル、珪藻泥岩、活性白土、アロフェン又はイモゴライトなどを挙げることができる。ただし、これらの無機調湿材料のうちシリカゲル以外のものは、珪質頁岩と比べて調湿機能が劣るので、この場合の無機調湿材料の配合量は、珪質頁岩100質量部に対して、50質量部以下であることが好ましい。シリカゲルの場合は、調湿機能が高く、調湿性を優先する場合は、珪質頁岩よりもシリカゲルを多く配合することも可能である。調湿とガス吸着とのバランスを考慮し、上記した材料の配合量は、用途に応じて適宜設計すればよい。
【0040】
また、バインダーとしては、粘土などの無機バインダー又はアクリル樹脂などの有機バインダーを用いることができるが、珪質頁岩や、上記に挙げたような珪質頁岩以外の無機調湿材料が有する調湿機能やガス吸着機能を阻害しにくい無機バインダーを用いることが好ましい。また、バインダーの配合量は、珪質頁岩と、珪質頁岩以外の無機調湿材料との合計量100質量部に対して、30質量部以下であることが好ましい。このようにすれば、バインダーを用いた場合に上記材料が有する調湿機能やガス吸着機能を阻害することがない。しかし、特に限定するものではなく、使用するバインダーの透湿性、調湿性、ガス吸着性などを考慮し、強度や用途など製品が要求する性能に応じて適宜に配合すればよい。さらに、上記バインダーと共に、本発明の効果を阻害しない範囲内で他の添加剤、例えば、増量剤、抗菌剤、吸水剤又は抗菌剤などを配合してもよい。造粒物を製造する場合には、スプレー造粒法、パン型造粒法、回転造粒法などの従来公知の方法で、常法に従い作製することができる。焼成物を製造する場合は、前記したように、焼成温度に注意を要する。
【0041】
(細孔径分布の測定方法)
本発明で規定する珪質頁岩の窒素吸着法で測定した細孔径分布について説明する。本発明では、珪質頁岩の細孔径分布及び比表面積は、液体窒素温度(77K)下において、窒素ガスを吸着させるBET法(気相吸着法)により測定した。具体的には、高速・比表面積・細孔分布測定装置(商品名 NOVA2200e、ユアサアイオニクス製)を用いて測定した。窒素吸着法を適用した当該装置で直接測定されるのは、細孔に吸着される窒素ガスの容量であるが、細孔構造について種々の仮定を設けた上で、この測定値を用いて解析することで細孔径分布を求めている。例えば、本発明では、細孔は全て円筒形であると仮定している。また、細孔径分布を表現する方法は種々のものがあるが、本発明では、細孔径分布をヒストグラムで表している。具体的には、横軸上に、細孔直径を20Å(2nm)毎に区分し、その区間内における総細孔容量(ml/g)を算出し、これを縦軸にプロットして細孔径分布を表している。したがって、細孔径分布ヒストグラムに現れたピークは、その細孔直径領域に、同様の孔径を有する孔が多数存在していることを意味するものであり、細孔径分布ヒストグラムによれば、対象物の細孔構造が明確に表現される。本発明を説明するために用いた細孔径分布は、全て細孔径分布ヒストグラムで示したものである。なお、横軸は対数目盛りで細孔直径(Å)を示しており、縦軸は、20Å(2nm)毎の区分内における細孔容積(cm3/g)を棒グラフで示している。
【0042】
(珪質頁岩に対する水蒸気吸着試験方法)
本発明では、珪質頁岩の水蒸気吸脱着特性は、全自動水蒸気吸着量測定装置(Hydrosorb1000、ユアサアイオニクス製)を用いて測定した。具体的には、真空下、150℃にて絶乾した一定量の測定試料を導入し、測定系内の温度を25℃に保持し、水蒸気圧を変化させて平衡状態に達したときの導入水蒸気の体積変化から測定試料の吸着水量を求める方法(定容法)によって測定した。本発明で使用した水蒸気吸着量は、絶乾状態の試料の重量(mg)に対する吸着水量(g)の割合を示す。なお、本発明で言う「最大吸湿率」は、測定対象物を150℃のオーブンに入れ72時間保持した後に測定する対象物の絶乾質量と、その後、25℃、相対湿度95%の恒温恒湿槽に入れ48時間保持した後に再度測定する対象物の質量との質量増加率により得られる値を示す。
【0043】
(珪質頁岩に対するガス吸着試験方法)
<トルエン>
トルエンの吸着量の測定は、従来より行われている吸着破過試験によって行った。具体的には、測定対象の粉砕した珪質頁岩をガラス管内に充填し、この吸着材充填層に、一定温度、一定湿度、一定濃度、一定流量のトルエン含有の汚染ガスを含む流体を流し、トルエンの吸着量を求めた。この際、前記した通り、珪質頁岩に対するトルエンの吸着は、珪質頁岩が持つ細孔径分布によっては相対湿度に影響を受けることが明らかとなったので、通常の吸着破過試験装置に改良を加えて、一定の湿度下におけるトルエンの吸着量が測定できるようにした。
【0044】
<メチルメルカプタン>
容積が1,000mlのテドラーバック中に測定対象の珪質頁岩を特定量入れ、テドラーバック内のメチルメルカプタンのガス濃度がほぼ特定の濃度となるように調整した。吸着率を算出するために、この状態でメチルメルカプタンのガス濃度を測定した。この状態で一定時間保持した後、メチルメルカプタンのガス濃度を測定して、ガス吸着率を求めた。メチルメルカプタンのガス濃度の測定は、該当する濃度のガス検知管(光明理化学工業(株)製)を用いて測定した。具体的には、濃度に適した検知管を手動ポンプにセットし、検知管内にテドラーバック内から採取したガスサンプルを吸引導入し、検知管内の薬剤が色変化した目盛を読み取ることで濃度を測定した。
【0045】
<硫化水素ガス>
容積が1,000mlのテドラーバック中に測定対象の珪質頁岩を特定量入れ、テドラーバック内の硫化水素のガス濃度がほぼ特定の濃度となるように調整した。吸着率を算出するために、この状態で硫化水素のガス濃度を測定した。この状態で一定時間保持した後、硫化水素のガス濃度を測定して、ガス吸着率を求めた。硫化水素のガス濃度の測定は、該当する濃度のガス検知管(光明理化学工業(株)製)を用いて測定した。具体的には、濃度に適した検知管を手動ポンプにセットし、該検知管内にテドラーバック内から採取したガスサンプルを吸引導入し、検知管内の薬剤が色変化した目盛を読み取ることで濃度を測定した。
【実施例】
【0046】
次に、好ましい実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明する。なお、以下の記載で%とあるものは、特に断りのない限り質量基準である。
<第1及び第2の調湿及びガス吸着材料>
先ず、アルカリ処理によって細孔径分布を変化させた珪質頁岩を主成分とする本発明の第1及び第2の調湿及びガス吸着材料について説明する。
【0047】
(1)4%(1モル/リットル)水酸化ナトリウム処理した珪質頁岩(比較例)
ハンマークラッシャーにて粉砕した粒径1〜2mmの稚内層珪質頁岩を、100℃加熱条件下、4%の水酸化ナトリウム水溶液100ml中にて、静置または攪拌の状態で浸積させ、その浸積時間を30分から4時間と変化させたときの、珪質頁岩の細孔構造を検討した。図7に4%の水酸化ナトリウム水溶液中で4時間、100℃、静置で浸積したときの細孔径分布ヒストグラムを示す。細孔径分布ヒストグラムは、前記した方法で測定し、得られたものである。上記のアルカリ改質処理により、珪質頁岩のシリカ成分が溶出することで細孔が拡大し、平均細孔直径は100Åほど大きくなった。また、図8に、4%の水酸化ナトリウム水溶液の浸積時間(静置条件下)に対する珪質頁岩の比表面積と平均細孔直径の変化を示す。図中に、処理時間0として示した未処理の珪質頁岩の場合と比較すると、4%水酸化ナトリウム水溶液で改質処理を行ったときの珪質頁岩の比表面積は、処理時間の増加とともに減少し、平均細孔直径は増加した。
【0048】
次に、上記したアルカリ処理した稚内層珪質頁岩と、その原石について、湿度併存下におけるトルエン吸脱着特性を把握するため、粒径1〜2mmの稚内層珪質頁岩粒(150℃乾燥)5gを充填したガラス管を用いて破過試験を行った。より具体的には、標準ガス発生装置で調整したトルエンガスと、バブリング装置で加湿した空気を混合して得たトルエン濃度60ppm、相対湿度50%の混合ガスを、上記したガラス管に流通させ、試料通過後の濃度変化を分析した。また試料へのトルエン吸着が飽和に達した後、加湿空気のみを流通させ、脱着特性を確認した。
【0049】
表1に、珪質頁岩原石、4%水酸化ナトリウム処理を静置状態で行って得た珪質頁岩、及び、4%水酸化ナトリウム処理を撹拌状態で行って得た珪質頁岩、のそれぞれについての比表面積、平均細孔直径を示した。また、これら3種の珪質頁岩について、前記した破過試験でトルエンの吸脱着を調べ、その結果得られたトルエンの吸着量と脱離量とを、表1にあわせて示した。この結果、表1に示したように、4%水酸化ナトリウム処理をした珪質頁岩では、すべて原石よりも細孔が拡大し、比表面積が減少していた。また、このときのトルエン吸着量は、原石から2〜10%程度低下した。このことは、4%水酸化ナトリウムを用いた100℃における珪質頁岩の浸積処理の場合には、その細孔径分布を径の大きい方へと大きく拡大させ、比表面積を低下させるため、トルエン吸着性能を得ることが期待できないことを示している。
【0050】

【0051】
(2)8%(2モル/リットル)水酸化ナトリウム処理した珪質頁岩(実施例)
ハンマークラッシャーにて粉砕した粒径1〜2mmの稚内層珪質頁岩を、100℃加熱条件下、8%の水酸化ナトリウム水溶液100ml中にて、静置または攪拌の状態で2時間浸積させ、珪質頁岩の細孔構造を検討した。このときの細孔径分布ヒストグラムを図4に示した。細孔径分布は100Å(10nm)付近の細孔が消失し、50Å(5nm)以下の細孔の割合が増加した。特に、25Å(2.5nm)以下に、珪質頁岩原石の細孔径分布ヒストグラムでは見られなかった微細孔が出現して、30Å(3.0nm)以下の範囲にピークが現れた。図5に、上記した100℃加熱下における8%の水酸化ナトリウム水溶液の浸積時間(静置条件)に対する珪質頁岩の比表面積と平均細孔直径の変化を示した。珪質頁岩原石と比較すると、8%改質処理を行ったときの珪質頁岩の比表面積は、処理時間の増加とともに減少し、平均細孔直径は増加した。この珪質頁岩は、本発明の第2の調湿及びガス吸着材料を構成する珪質頁岩に該当するものである。
【0052】
表2に、珪質頁岩原石、8%水酸化ナトリウム処理を静置状態で行って得た珪質頁岩、及び、8%水酸化ナトリウム処理を撹拌状態で行って得た珪質頁岩、のそれぞれについての比表面積、平均細孔直径を示した。また、これら3種の珪質頁岩について、前記した破過試験でトルエンの吸脱着を調べ、その結果得られたトルエンの吸着量と脱離量を表2中にあわせて示した。この結果、表2に示したように、8%水酸化ナトリウム処理では、平均細孔直径が半減し、比表面積も35〜50%程度減少している。しかし、トルエン吸着量は、表1に示した4%水酸化ナトリウム処理の場合とは異なり、最大で1.6倍向上することが確認できた。また、トルエンの吸着量と脱離量を比較すると、脱離が起こりにくくなっていることもわかる。この結果から、図4の細孔径分布ヒストグラムで示すように、トルエン吸着には、8%水酸化ナトリウム処理によって新たに形成された25Å(2.5nm)以下の細孔が寄与しているものと推測される。
【0053】

【0054】
(3)6%(1.5モル/リットル)水酸化ナトリウム処理した珪質頁岩(実施例)
ハンマークラッシャーにて粉砕した粒径1〜2mmの稚内層珪質頁岩を、100℃加熱条件下、6%の水酸化ナトリウム水溶液100ml中にて、静置した状態で1時間浸積させ、珪質頁岩の細孔構造を検討した。このときの細孔径分布ヒストグラムを図1に示した。図1に示したように、上記の処理をした珪質頁岩の細孔径分布では、珪質頁岩のもつ100Å(10nm)付近の細孔が少し減少し、さらに、先に述べた8%水酸化ナトリウム処理の場合と同様に、50Å(5nm)以下の細孔の割合が増加した。図2に、6%の水酸化ナトリウム水溶液の浸積時間(静置条件下)に対する珪質頁岩の比表面積と平均細孔直径の変化を示した。珪質頁岩原石と比較すると、比表面積は処理時間に対してほとんど変化しなかったが、平均細孔直径は2時間で140Åまで拡大し、その後一定となった。この珪質頁岩は、本発明の第1の調湿及びガス吸着材料を構成する珪質頁岩に該当するものである。
【0055】
表3に、珪質頁岩原石、6%水酸化ナトリウム処理を行った珪質頁岩について、それぞれ比表面積、平均細孔直径を示した。また、これらの珪質頁岩について、前記した破過試験でトルエンの吸脱着を調べ、その結果得られたトルエンの吸着量と脱離量とを、表3にあわせて示した。表3に示したように、トルエン吸着量は0.382であり、珪質頁岩原石に比べて1.2倍程度向上した。この結果から、トルエン吸着には、水酸化ナトリウム処理によって新たに形成された30Å(3nm)以下の細孔が寄与しているものと推測される。また、この結果は、前記した8%水酸化ナトリウム処理した珪質頁岩の場合に確認されたトルエン吸着量の増加と一致しており、このことからも、30Å(30nm)以下の直径を有する微細孔が、トルエン吸着性能の向上に寄与していると考えるのが妥当である。
【0056】

【0057】
(4)各濃度の水酸化ナトリウムで処理した珪質頁岩の水分吸着特性
図9に、4%、6%及び8%のそれぞれの濃度の水酸化ナトリウム水溶液で処理した珪質頁岩の水蒸気吸着等温線を、珪質頁岩原石の場合と比較して示した。水蒸気吸着等温線は、前記した珪質頁岩の水蒸気吸脱着特性を測定する方法によって得られた値を用いて描いた。この結果、図9に示されているように、水分の吸放湿に適した100Å(10nm)付近の細孔が著しく減少した、本発明の第2の調湿及びガス吸着材料を構成する珪質頁岩に該当する8%水酸化ナトリウム処理をした珪質頁岩の水分吸着性能は低い値を示した。したがって、本発明の第2の調湿及びガス吸着材料は、吸放湿機能の点では、他のものと比べて十分なものではなかった。しかし、本発明の第2の調湿及びガス吸着材料は、前記したように、トルエンの吸脱着機能の点では、原石に比べて格段に向上していることが確認された。したがって、例えば、トルエンのような疎水性ガスに対する吸着材などとして特に有用である。
【0058】
一方、100Å(10nm)付近の領域の細孔が保持されている、本発明の第1の調湿及びガス吸着材料を構成する珪質頁岩に該当する6%水酸化ナトリウム処理をした珪質頁岩は、水分吸着性能は若干劣るものの、珪質頁岩原石における水分吸着能力に対して84%の水分吸着能力を維持していた。また、前記したように、トルエンの吸脱着機能の点でも、上記した本発明の第2の調湿及びガス吸着材料を構成する珪質頁岩より劣るものの、原石に比べて向上効果がみられた。したがって、調湿機能と、トルエンのような疎水性ガスに対する吸着機能とを有する機能性材料として有用であることが確認された。このため、例えば、建材などの用途に有用である。なお、図2に示したように上記の結果は、比表面積が殆ど変化しない状態で得られている。このことは、本発明が、非結質シリカをアルカリ処理することで比表面積を増大させ、これによってガス吸着性能を向上させるという従来の概念とは全く異なるものであることを示している。
【0059】
なお、細孔直径の分布が200Å(20nm)まで拡大した、4%水酸化ナトリウム処理をした珪質頁岩は、珪質頁岩原石における水分吸着能力に対して78%程度の水分吸着能力が維持されていたが、前記したように、トルエンの吸着機能を向上させる効果は認められなかった。これらのことから、アルカリ処理の条件をコントロールすることで、細孔径分布が異なる珪質頁岩を自在に得ることが可能であり、希望する機能を有する調湿及びガス吸着材料が得られることが確認された。なお、上記のことによっても、本発明が、非結質シリカをアルカリ処理することで比表面積を増大させ、これによってガス吸着性能を向上させるという従来の概念とは全く異なるものであることがわかる。
【0060】
<第3の調湿及びガス吸着材料>
[珪質頁岩のアルカリ性化合物による処理]
ハンマークラッシャーで粉砕した粒径が0.5〜1.5mmの稚内層珪質頁岩を100gの、液温が30℃(常温)の、2%珪酸ナトリウム(ソーダ水ガラス)水溶液500g中に、5時間浸漬させた。その後、30℃の条件下(常温)で7日間乾燥させて、珪質頁岩原石に珪酸ナトリウムを担持させた。上記で使用した珪質頁岩原石は、比表面積が149.0m2/g、平均細孔直径が94Å(9.4nm)、最大吸湿率は20%であった。珪酸ナトリウム水溶液中に浸漬する時間を変え、その後、それぞれ乾燥して得られた珪質頁岩について、比表面積、平均細孔直径及び最大吸湿率を測定したところ、図6に示したように殆ど変化しないことを確認した。また、細孔径分布も殆ど変化しないことを確認した(不図示)。
【0061】
上記で行った2%珪酸ナトリウム水溶液を、表4又は表5に示した各種類及び濃度のアルカリ性化合物に変える以外は同様にして、本発明の第3の調湿及びガス吸着材料の実施例及び比較例に使用する珪質頁岩を作製した。なお、アルカリ性化合物の2%の水溶液の場合は、アルカリ性化合物の種類によっては、溶液の粘度の違いからか、珪質頁岩が、本発明で規定する「アルカリ性化合物が担持されている」状態になっていなかった。なお、本発明で規定する「アルカリ性化合物が担持されている状態である」か否かは、例えば、酸・塩基溶媒を用いた電位差滴定によってpHをモニターすることで、表面の酸・塩基特性を確認することで確認可能である。
【0062】
上記で得られた各アルカリ性化合物が担持されてなる珪質頁岩を用いて、下記に述べるような方法で、メチルメルカプタンガスと硫化水素ガスの酸性ガス吸着試験を行い、それぞれを評価した。そして、アルカリ処理に用いたアルカリ性化合物の種類及び水溶液の濃度と、メチルメルカプタンガスと硫化水素ガスのガス吸着量、吸着率及びその評価結果を表4及び5に示した。その結果、前記したように、本実施例で使用したアルカリ処理した珪質頁岩は、比表面積、平均細孔直径などの特性を変化させることなく、メチルメルカプタンガスと硫化水素ガスの吸着量が大幅に増大することがわかった。このような結果は、前記したように、本発明が、非結質シリカをアルカリ処理することで比表面積を増大させ、これによってガス吸着性能を向上させるという従来の概念とは全く異なるものであることを示している。
【0063】
[酸性ガス吸着試験]
(メチルメルカプタンガスの吸着試験)
容積が1,000mlのテドラーバック中に測定対象の珪質頁岩をそれぞれ10g入れ、テドラーバック内のメチルメルカプタンのガス濃度を3.5ppm程度となるようにした。この状態で、初期におけるテドラーバック中のメチルメルカプタンのガス濃度を測定した。その後、この状態で4時間保持して吸着試験を行った。試験開始から1時間経過時と、4時間経過時に、メチルメルカプタンのガス濃度を測定した。メチルメルカプタンのガス濃度の測定は、前記したようにしてガス検知管を用いて測定した。得られた測定結果を表4に示した。また、初期(3.5ppm)と4時間経過時のメチルメルカプタンガスの濃度の差から、上記で処理した珪質頁岩におけるメチルメルカプタンガスの吸着率を算出し、これを以下の基準で評価した。測定値及び評価結果を表4に示した。
・評価基準
○:メチルメルカプタンガスの吸着率が、90%以上である。
△:メチルメルカプタンガスの吸着率が、45%以上90%未満である。
×:メチルメルカプタンガスの吸着率が、45%未満で原石と変わらない。
【0064】
(硫化水素ガスの吸着試験)
容積が1,000mlのテドラーバック中に測定対象の珪質頁岩を10g入れ、テドラーバック内の硫化水素のガス濃度を20ppm程度となるようにした。この状態で、初期におけるテドラーバック中の硫化水素のガス濃度を測定した。その後、この状態で1時間保持して吸着試験を行った。試験開始から30分経過時と、1時間経過時に、硫化水素のガス濃度をそれぞれ測定した。硫化水素のガス濃度の測定は、前記したようにしてガス検知管を用いて測定した。測定手段は、検知管を手動ポンプにセットし、検知管内に50mlのテドラーバッグ内試料ガスをポンプで検知管内へ吸引導入することで、検知管内の薬剤と該ガスが反応し、薬剤の色が変化する。濃度はその検知管表面に記されている目盛りより、簡単に見積もられる。また、初期(20ppm)と1時間経過時の硫化水素ガスの濃度の差から、上記で処理した珪質頁岩における硫化水素ガスの吸着率を算出し、これを以下の基準で評価した。測定値及び評価結果を表5に示した。
・評価基準
○:硫化水素ガスの吸着率が、90%以上である。
△:硫化水素ガスの吸着率が、40%を超えて90%未満である。
×:硫化水素ガスの吸着率が、40%以下である。
【0065】

【0066】

【0067】
以上の表4及び5に示した試験結果により、本発明の第3の調湿及びガス吸着材料を構成する珪質頁岩は、優れた酸性ガス吸着性を有することが確認された。また、表4及び5に示されているように、アルカリ性化合物がアルカリ金属由来のものである場合、アルカリ土類金属由来のものと比べて、より酸性ガス吸着性が優れていることがわかった。特に、濃度が5%以上のアルカリ性化合物の水溶液で処理して得られた珪質頁岩は、特に、酸性ガス吸着性が優れていることが確認された。
【0068】
[珪質頁岩の調湿性試験]
第3の調湿及びガス吸着材料を構成するアルカリ性化合物が担持されてなる珪質頁岩について調湿性試験を行った。前記で得た2%の水酸化ナトリウム水溶液で浸漬処理した珪質頁岩について、浸漬時間による細孔構造の違いについて確認する試験を行った。その結果を表6に示した。その結果、表6に示したように、珪質頁岩を水酸化ナトリウム水溶液で一定時間処理したとしても、比表面積、平均細孔直径及び細孔容量の変化は抑えられていることが確認された。このことは、珪質頁岩自体が有する調湿性及び塩基性ガス吸着性については何ら損なわれないことを意味している。したがって、本発明の調湿及びガス吸着性材料は、珪質頁岩自体が有する調湿性及び塩基性ガス吸着性に加えて、硫化水素やメチルメルカプタンなどの酸性ガスに対する吸着機能が付与されたものとなる。
【0069】

【0070】
[焼成された珪質頁岩の利用]
5%珪酸ナトリウムで浸漬処理する以外は前記したと同様にして珪質頁岩の原石をアルカリ処理した。その後、850℃の温度で1時間焼成して焼成物を得た。そして、得られた焼成物を用いて前記したと同様にメチルメルカプタンガスと硫化水素ガスのガス吸着試験を同様の方法で行った。この結果、いずれも、吸着率が90%以上であった。また、その最大吸湿量は、浸漬前の珪質頁岩の原石と同様に20%であり、高い吸湿性を維持していた。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明の活用例としては、壁材や床下の敷石などの各種建材、室内に設置するガス浄化装置に用いるガス吸着材、寝具などの生活用品用の形成材料などが挙げられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窒素吸着法で測定した細孔径分布において細孔直径70〜120Å(7〜12nm)に1つのピークを有するシャープな細孔径分布を持ち、その細孔容積が0.1〜0.4ml/gの範囲にあり、平均細孔直径が90Å(9nm)程度の微細な孔を多数有する、相対湿度90%で、1gあたり25%以上の水分吸収能力と、該水分を自立的に放湿できる吸放湿特性を持つ天然の珪質頁岩にアルカリ性化合物による処理を施した珪質頁岩を主成分として含み、天然の珪質頁岩に由来する調湿機能及びアンモニアやアセトアルデヒドに対するガス吸着能に加え、トルエン、メチルメルカプタン及び硫化水素から選ばれるいずれかのガスに対するガス吸着性能を併せ持つ調湿及びガス吸着材料であって、上記アルカリ性化合物による処理を施した珪質頁岩が、窒素吸着法で測定した細孔径分布において、細孔直径が8.5〜10nmの範囲にピークを有し、かつ、平均細孔直径が8.5〜9.5nmの範囲にあり、さらに、その細孔内の少なくとも一部に、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の、水酸化物、炭酸塩及び珪酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ性化合物が担持されている珪質頁岩であることを特徴とする調湿及びガス吸着材料。
【請求項2】
前記アルカリ性化合物が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の珪酸塩である請求項1に記載の調湿及びガス吸着材料。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の調湿及びガス吸着材料を製造する製造方法であって、窒素吸着法で測定した細孔径分布において細孔直径70〜120Å(7〜12nm)に1つのピークを有するシャープな細孔径分布を持ち、その細孔容積が0.1〜0.4ml/gの範囲にあり、平均細孔直径が90Å(9nm)程度の微細な孔を多数有する、相対湿度90%で、1gあたり25%以上の水分吸収能力と、該水分を自立的に放湿できる吸放湿特性を持つ天然の珪質頁岩を、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の、水酸化物、炭酸塩及び珪酸塩からなる群より選ばれる少なくとも1種のアルカリ性化合物の溶液中に常温で浸漬する工程を有することを特徴とする調湿及びガス吸着材料の製造方法。
【請求項4】
アルカリ性化合物が、アルカリ金属又はアルカリ土類金属の珪酸塩である請求項3に記載の調湿及びガス吸着材料の製造方法。
【請求項5】
さらに、アルカリ性化合物による処理を施した珪質頁岩を、700〜1,000℃の範囲の焼成温度で焼成する請求項3又は4に記載の調湿及びガス吸着材料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2011−167688(P2011−167688A)
【公開日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−70519(P2011−70519)
【出願日】平成23年3月28日(2011.3.28)
【分割の表示】特願2007−62849(P2007−62849)の分割
【原出願日】平成19年3月13日(2007.3.13)
【出願人】(504173471)国立大学法人北海道大学 (971)
【出願人】(506106866)株式会社自然素材研究所 (21)
【出願人】(507081430)有限会社稚内グリーンファクトリー (7)
【出願人】(596158422)三岐通運株式会社 (3)
【Fターム(参考)】