説明

調湿建材およびその製造方法

【課題】接着層の水分通過をより確実にさせて調湿性能が阻害されないようにした新規な調湿建材を提供する。
【解決手段】調湿性を有する基材11の上面に透湿性を有する表層材12を設け、それら間に接着層13を形成した調湿建材10であって、接着層13は、硬化したエマルジョン系接着剤1Aに点在させた、乾燥した高分子調湿剤2の周囲に形成されている空隙3が、基材11と表層材12との間で連通する透湿孔4を形成する構造にしている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調湿性を有する基材と透湿性を有する表層材とをエマルジョン系接着剤で接着させた調湿建材およびその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、調湿性を有する基材に、透湿性を有する突き板やシートなどの表層材を接着剤で接着して調湿建材を製した場合、その接着層が水分移動の妨げとなり、吸湿性能および放湿性能が損なわれることの要因となっていた。
【0003】
このような問題を解決するために当然に、透湿性を有するデンプン糊などの水性の接着剤を使用することが想定できる。特許文献1には、透湿性を有する接着剤を使用して基板に吸放湿性シートを積層する内容が記載されている。
【特許文献1】特開2000−351102号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、接着剤として、水性のものや、シリカゲルなどを混入させたものなどの透湿性の接着剤を使用しても、硬化した接着層によって基材と表層材との間を遮断する構成であるため、調湿基材への、あるいは調湿基材からの水分移動を確実にさせるものとはならず、そのため、水分が確実に接着層を通過できる調湿建材が求められていた。
【0005】
本発明は、このような事情を考慮して提案されたもので、その目的は、接着層の水分通過をより確実にさせて調湿性能が阻害されないようにした新規な調湿建材およびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の調湿建材は、調湿性を有する基材の上面に透湿性を有する表層材を設け、それらの間に接着層を形成した調湿建材であって、接着層は、硬化したエマルジョン系接着剤に点在させた、乾燥した高分子調湿剤の周囲に形成されている空隙が、基材と表層材との間で連通する透湿孔を形成する構造にしている。
【0007】
請求項2に記載の調湿建材は、エマルジョン系接着剤が水性であることを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の調湿建材は、エマルジョン系接着剤が熱、UVあるいは圧力硬化性であることを特徴とする。
【0009】
請求項4に記載の調湿建材の製造方法は、調湿性を有する基材と透湿性を有する表層材とをエマルジョン系接着剤で接着させた調湿建材の製造方法であって、エマルジョン系接着剤には、高分子調湿剤が添加、混合されており、基材と表層材とを貼り合わせ、エマルジョン系接着剤を硬化させた後に、高分子調湿剤を乾燥させ、高分子調湿剤の乾燥、収縮によって高分子調湿剤の周囲に空隙を形成して、これらの空隙によって、基材と表層材との間で連通する透湿孔を形成するようにしたことを特徴とする。
【0010】
請求項5に記載の調湿建材の製造方法は、エマルジョン系接着剤が水性であることを特徴とする。
【0011】
請求項6に記載の調湿建材の製造方法は、エマルジョン系接着剤が熱、UVあるいは圧力硬化性であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の調湿建材によれば、調湿性を有した基材と透湿性を有した表層材との間の接着層に、乾燥した高分子調湿剤の周囲に形成されている空隙により構成された連通透湿孔を有しているため、その連通透湿孔により接着層の水分通過を確実にさせることができ、それによって基材の調湿機能を維持させることができる。
【0013】
また本発明の調湿建材の製造方法によれば、エマルジョン系接着剤に高分子調湿剤を添加、混合しておき、そのような接着剤を用いてプレス、ホットプレスなどの方法によって連通透湿孔を形成する構成であるため、製造が簡易に行え、従来のプレス、ホットプレスなどの方法をそのまま利用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下に、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。
【0015】
図1は、本発明の第1の実施形態である調湿建材の製造方法の一例を時系列に示すものであり、(a)〜(c)は模式縦断面図である。
【0016】
図1中、11は調湿性を有する基材(以下、調湿基材という。)、12は表層材、13は接着層であり、10は同製造方法によって製造された調湿建材である。
【0017】
調湿基材11としては、自立的に水蒸気を吸収、放出して周囲の湿度を調節する機能を有する種々のものが使用できる。調湿基材11としてたとえば、活性炭、珪藻土、シリカゲル、ゼオライト、アロフェン、活性白土、セピオライトなどの調湿剤を配合して調湿性を持たせた石膏ボード、セメント板、珪酸カルシウム板、ロックウール繊維板などの無機材料や、木質繊維板、合板、パーティクルボードなどの木質材料を使用することができる。これらの調湿剤原料には細孔(不図示)が多く存在し、これらが調湿作用を発揮する。
【0018】
表層材12は、調湿基材11の表面に積層されて、製造後の調湿建材10の表面に表れるもので、透湿性を有している。表層材12としてたとえば、天然木を薄くスライスした突き板、塩化ビニル樹脂シート、印刷紙、不織布、クロスシートなどが挙げられる。
【0019】
接着層13を形成する接着剤13aとしては、水性エマルジョン系の接着剤1Aを主材料として使用できる。水性エマルジョン系接着剤1Aとしてはたとえば、デンプン系接着剤の他、酢酸ビニル系や塩化ビニル系、エチレン−酢酸ビニル共重合体、シリコーンなどの樹脂に、水などの溶剤と乳化剤を加えて乳化あるいは乳化重合させて生成したものが使用できる。ようするに、本実施形態で使用される水性エマルジョン系の接着剤1Aには、溶剤が気化して溶質が硬化することで接着する接着剤が使用される。
【0020】
この水性エマルジョン系接着剤1Aは、高分子調湿剤(有機系ポリマー吸放湿剤)2が添加され、それらが分散して点在するように混合されている。その粒子は、接着剤13aの中にあっては水分を含んで膨らんだ状態となっている。
【0021】
この有機系ポリマー吸放湿剤2は、水酸基やカルボキシル基等の親水性の官能基を多く含む比較的疎な構造の有機物であって、自身の体積を超える多量の水分を内部に吸収貯蔵可能な物質が使用できる。具体的には公知の一般的な高吸水性ポリマー等が用いられ、たとえば、デンプン−アクリル酸グラフト重合体、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体、セルロース−アクリロニトリルグラフト重合体、ポリビニルアルコール架橋重合体、ポリアクリル酸ナトリウム架橋体、アクリル酸メチル−酢酸ビニル共重合体ケン化物等が用いられる。また、馬鈴薯デンプンやデキストリン類等の天然物を用いることも可能である。これらの有機系水分吸放湿剤はそれぞれ単独、もしくは2種以上混合して使用することも可能である。
【0022】
また、好適な有機系ポリマー吸放湿剤2としては、吸湿率が45〜55%、吸放湿による体積変化が直径の約1割、粒径が0.9〜4μmのものを使用できる。もちろん、これらの範囲のものには限られず、接着剤1A内に混合して、接着剤1Aの硬化後に収縮して、透湿孔として機能する程度の空隙が形成されるものなら、上記以外のものでもよい。
【0023】
なお、有機系ポリマー吸放湿剤2は、接着剤1Aの接着性能、後述する収縮後にできる空隙量などを考慮して、添加量を調整する。また、有機系ポリマー吸放湿剤2は、水性エマルジョン系接着剤1Aよりも乾燥、硬化の進行が遅いものを使用することが望ましいことはいうまでもない。
【0024】
ついで、図1を参照しながら本発明の調湿建材の製造方法について説明する。
【0025】
まず、調湿基材11の表面に、有機系ポリマー吸放湿剤2を含んだ接着剤13aをロールコーター、ノズルスプレーなどで塗布し、その上に表層材12を貼り合わせ、プレスにより一体成形する(図1(a)参照)。
【0026】
次に、プレスによって薄く延びた接着剤13a中の水性エマルジョン系接着剤1Aを乾燥、硬化させ、それによって表層材12が調湿基材11に接着される。水性エマルジョン系接着剤1Aが硬化した時には、接着剤13a中に点在している有機系ポリマー吸放湿剤2は、乾燥、硬化の進行が遅いため膨らんだ状態にある(図1(b)参照)。
【0027】
その後、時間の経過にともなって有機系ポリマー吸放湿剤2の乾燥が進むと、有機系ポリマー吸放湿剤2はしだいに水分が蒸発して収縮してゆき、それぞれの粒子が小さくなって硬化する。すなわち、有機系ポリマー吸放湿剤2の乾燥、硬化の段階では水性エマルジョン系接着剤1Aはすでに硬化しているから、収縮した有機系ポリマー吸放湿剤2の周囲には、硬化した水性エマルジョン系接着剤1Aによって囲まれるように空隙3が形成される(図1(c)参照)。
【0028】
硬化した接着層13中には、多数の有機系ポリマー吸放湿剤2が点在しているため、それぞれの周囲にできた空隙3が連なって、調湿基材11側と表層材12側とに連通する微細な連通透湿孔4が形成される。なお、有機系ポリマー吸放湿剤2の1粒子の空隙3によって、連通透湿孔4が形成されるものでもよい。
【0029】
こうして、接着層13には多数の微細な連通透湿孔4が形成され、図1(c)の矢印で示すように、接着層13の双方向の水分通過を確実にさせることができ、それによって調湿基材11の調湿機能を維持させることができる。
【0030】
なお、接着剤1Aに添加される有機系ポリマー吸放湿剤2の粒径が0.9〜4μm程度のものであるから、生成されるこれらの連通透湿孔4は、間隙寸法が0.数μm以下のきわめて微細な空洞として形成されるが、水分子を透過させるには十分であり、所望の透湿性は有している。
【0031】
次に、本発明の第2の実施形態である調湿建材の製造方法について説明する。
【0032】
本実施形態では、第1の実施形態で使用した水性エマルジョン系接着剤1Aに代えて、熱硬化性エマルジョン系接着剤1Bを使用する。なお、調湿基材11および表層材12については、第1の実施形態と同様であるため、同一の符号を付して説明を省略する。
【0033】
接着層13を形成する接着剤13aとしては、熱硬化性エマルジョン系の接着剤1Bを主材料として使用できる。熱硬化性エマルジョン系接着剤1としてはたとえば、フェノール樹脂、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、不飽和ポリエステル樹脂などの熱硬化性樹脂を主成分とし、水性エマルジョン系接着剤1Aと同様、水あるいは有機溶剤などの溶剤が気化して溶質が硬化することで接着する接着剤が使用される。
【0034】
この熱硬化性エマルジョン系接着剤1Bは、高分子調湿剤(有機系ポリマー吸放湿剤)2が添加され、分散して点在するように混合されている。この有機系ポリマー吸放湿剤2は、第1の実施形態と同様のものが使用できる。
【0035】
また、有機系ポリマー吸放湿剤2は、熱硬化性エマルジョン系接着剤1Bよりも硬化の進行が遅いものを使用することが望ましい。
【0036】
ついで、図2を参照しながら製造方法について説明する。
【0037】
まず、調湿基材11の表面に、有機系ポリマー吸放湿剤2を含んだ接着剤13aをロールコーター、ノズルスプレーなどで塗布し、その上に表層材12を貼り合わせ、ホットプレスにより一体成形する(図2(a)参照)。
【0038】
次に、ホットプレスによって薄く延びた接着剤13a中の熱硬化性エマルジョン系接着剤1Bを硬化させ、それによって表層材12が調湿基材11に接着される。熱硬化性エマルジョン系接着剤1Bが硬化した時には、接着剤13a中に点在している有機系ポリマー吸放湿剤2は、乾燥、硬化の進行が遅いため膨らんだ状態にある(図2(b)参照)。
【0039】
その後、時間の経過にともなって有機系ポリマー吸放湿剤2の乾燥が進むと、有機系ポリマー吸放湿剤2はしだいに水分が蒸発して収縮してゆき、それぞれの粒子が小さくなって硬化する。すなわち、有機系ポリマー吸放湿剤2の乾燥、硬化の段階では熱硬化性エマルジョン系接着剤1Bはすでに硬化しているから、収縮した有機系ポリマー吸放湿剤2の周囲には、硬化した熱硬化性エマルジョン系接着剤1Bによって囲まれるように空隙3が形成される(図2(c)参照)。
【0040】
固化した接着層13中には、多数の有機系ポリマー吸放湿剤2が点在しているため、それぞれの周囲にできた空隙3によって、調湿基材11側と表層材12側とに連通する微細な連通透湿孔4が形成される。
【0041】
以上の2つの実施形態には、接着剤として水性(乾燥硬化)のものと熱硬化性のものとを示したが、UV(紫外線)硬化性、圧力硬化性の樹脂を主成分としたものを使用してもよい。
【0042】
また、本発明の調湿建材は、上記のような製造方法のみによらず、他の方法によるものでもよく、すくなくとも乾燥した高分子調湿剤の周囲に空隙が形成され、その空隙の連成などによって、調湿基材11と表層材12との間で連通する透湿孔4が形成されるものであればよい。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【図1】(a)〜(c)は、本発明の第1の実施形態である調湿建材の製造方法の一例を調湿建材とともに示す模式縦断面図である。
【図2】(a)〜(c)は、本発明の第2の実施形態である調湿建材の製造方法の一例を調湿建材とともに示す模式縦断面図である。
【符号の説明】
【0044】
10 調湿建材
1A 水性エマルジョン系接着剤
1B 熱硬化性エマルジョン系接着剤
2 高分子調湿剤
3 空隙
4 透湿孔
11 基材
12 表層材
13 接着層
13a 接着剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調湿性を有する基材の上面に透湿性を有する表層材を設け、それらの間に接着層を形成した調湿建材であって、
上記接着層は、硬化したエマルジョン系接着剤に点在させた、乾燥した高分子調湿剤の周囲に形成されている空隙が、上記基材と上記表層材との間で連通する透湿孔を形成する構造にしていることを特徴とする調湿建材。
【請求項2】
請求項1において、
上記エマルジョン系接着剤は水性である、調湿建材。
【請求項3】
請求項1において、
上記エマルジョン系接着剤は熱、UVあるいは圧力硬化性である、調湿建材。
【請求項4】
調湿性を有する基材と透湿性を有する表層材とをエマルジョン系接着剤で接着させた調湿建材の製造方法であって、
上記エマルジョン系接着剤には、高分子調湿剤が添加、混合されており、
上記基材と上記表層材とを貼り合わせ、上記エマルジョン系接着剤を硬化させた後に、上記高分子調湿剤を乾燥させ、該高分子調湿剤の乾燥、収縮によって上記高分子調湿剤の周囲に空隙を形成して、これらの空隙によって、上記基材と上記表層材との間で連通する透湿孔を形成するようにしたことを特徴とする調湿建材の製造方法。
【請求項5】
請求項4において、
上記エマルジョン系接着剤は水性である、調湿建材の製造方法。
【請求項6】
請求項4において、
上記エマルジョン系接着剤は熱、UVあるいは圧力硬化性である、調湿建材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−228339(P2009−228339A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−76253(P2008−76253)
【出願日】平成20年3月24日(2008.3.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】