説明

調湿建材及びその製造方法

【課題】調湿性能や強度を改善することができ、製造も容易な調湿建材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】水酸化アルミニウムとタルクとを含む原料を成形し、700〜1100℃で焼成してなる調湿建材。該原料は、水酸化アルミニウムを20〜95重量%、タルクを5〜80重量%含む。原料はさらにベントナイト及び/又はモンモリロナイトと粘土との少なくとも一方を含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は水酸化アルミニウムを原料とした調湿建材及びその製造方法に係り、特に水酸化アルミニウムの焼成物の調湿性を維持しつつ加工性を賦与するようにした調湿建材とその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
水酸化アルミニウム粉末を加熱処理して製造した水酸化アルミニウム脱水物が吸放湿特性を有するところから、水酸化アルミニウムに添加物を添加し、混合及び成形して焼成した調湿建材が提案されている。
【0003】
特許文献1(特開2001−122657)には、水酸化アルミニウムと粘土とを化学組成がAl33〜76重量%、SiO15〜57重量%、NaO,KO,LiO,B,Pの合計5重量%以下、CaO,BaO及びMgOの合計9重量%以下となるように配合し、混合及び成形し、次いでX線回折チャートにおいてk−Alのメインピークが検出され、このk−Alのメインピークの高さがα−Alのメインピークよりも高いものとなるように焼成して調湿建材を製造することが記載されている。
【0004】
この特許文献1は、水酸化アルミニウムの脱水によって生じるアルミナ(酸化アルミニウム)の吸放湿特性を利用すると共に、原料水酸化アルミニウムに併用された粘土の焼結促進作用によって焼成物(焼結体)に高い強度を具有させるようにしたものである。
【0005】
特開2002−249372には、水酸化アルミニウム、カオリン質粉体及び水ガラスを含む原料を混合及び成形し、焼成して調湿建材を製造することが記載されている。
【0006】
この特許文献2は、原料に水ガラスを配合することにより、調湿建材の強度を高めるようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−122657
【特許文献2】特開2002−249372
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
水酸化アルミニウムは、焼成により脱水し、多数の孔を有した多孔状態となる。この孔が優れた調湿性能を発現する。この水酸化アルミニウム系調湿建材は、多孔質のため脆く、例えば、壁面に施工した場合に、躯体の微細なひび割れや動きでクラックが生じるところから、調湿性能をあまり落とさず、強度を高くすることが必要である。
【0009】
特許文献1では、原料に粘土を配合することにより、水酸化アルミニウムの脱水物の微細な孔が焼結により潰れるのを抑制しつつ、水酸化アルミニウム脱水物同士を硬く結びつけることにより強度を高める。特許文献2では、水ガラスが低温で熔融し、水酸化アルミニウム脱水物を固めることにより、強度を高める。
【0010】
しかしながら、原料中の粘土や水ガラスの割合を多くすると、相対的に原料中の水酸化アルミニウム量が減少し、調湿性能が低下する。また、単に粘土や水ガラスの配合量を多くして強度を高くした場合、調湿建材の加工性、特に切断加工性が低下する。
【0011】
なお、水ガラスを配合した場合には、水ガラスが焼成時に熔融して調湿する孔を塞ぎ、調湿性能を低下させる。また、水ガラスを使うと、成形する粉がベタつき、成形時に型に付着し、生産性を低下させる。
【0012】
本発明は、上記特許文献1、2の調湿建材よりも加工性に優れ、製造も容易な調湿建材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
請求項1の調湿建材は、水酸化アルミニウムと、タルク様原料と、粘土と、ベントナイト及び/又はモンモリロナイトとを含む原料を成形し、焼成してなるものである。
【0014】
請求項2の調湿建材は、請求項1において、該原料は、水酸化アルミニウムを20〜80重量%、タルク様原料を5〜70重量%、粘土を5〜74重量%、ベントナイト及び/又はモンモリロナイトを1〜30重量%含むことを特徴とするものである。
【0015】
請求項3の調湿建材は、水酸化アルミニウムと、タルク様原料とを含む原料を成形し、焼成してなるものである。
【0016】
請求項4の調湿建材は、請求項3において、該原料は水酸化アルミニウムを20〜95重量%、タルク様原料を5〜80重量%含むことを特徴とするものである。
【0017】
請求項5の調湿建材は、請求項3において、該原料は水酸化アルミニウムを20〜90重量%、タルク様原料を5〜70重量%、粘土を5〜75重量%含むことを特徴とするものである。
【0018】
請求項6の調湿建材は、請求項3において、該原料は、水酸化アルミニウムを20〜90重量%、タルク様原料を5〜70重量%、ベントナイト及び/又はモンモリロナイトを3〜30重量%含むことを特徴とするものである。
【0019】
請求項7の調湿建材は、請求項1ないし6のいずれか1項において、タルク様原料はタルク、蛇紋岩亜族及び緑泥石族の少なくとも1種であることを特徴とするものである。
【0020】
請求項8の調湿建材の製造方法は、水酸化アルミニウムと、タルク様原料と、粘土と、ベントナイト及び/又はモンモリロナイトとを含む原料を成形し、700〜1100℃で焼成するものである。
【0021】
請求項9の調湿建材の製造方法は、請求項8において、該原料は、水酸化アルミニウムを20〜80重量%、タルク様原料を5〜70重量%、粘土を5〜74重量%、ベントナイト及び/又はモンモリロナイトを1〜30重量%含むことを特徴とするものである。
【0022】
請求項10の調湿建材の製造方法は、水酸化アルミニウムと、タルク様原料とを含む原料を成形し、700〜1100℃で焼成するものである。
【0023】
請求項11の調湿建材の製造方法は、請求項10において、該原料は水酸化アルミニウムを20〜95重量%、タルク様原料を5〜80重量%含むことを特徴とするものである。
【0024】
請求項12の調湿建材の製造方法は、請求項10において、該原料は水酸化アルミニウムを20〜90重量%、タルク様原料を5〜70重量%、粘土を5〜75重量%含むことを特徴とするものである。
【0025】
請求項13の調湿建材の製造方法は、請求項10において、該原料は、水酸化アルミニウムを20〜90重量%、タルク様原料5〜70重量%、ベントナイト及び/又はモンモリロナイトを3〜30重量%含むことを特徴とするものである。
【0026】
請求項14の調湿建材の製造方法は、請求項10ないし13のいずれか1項において、タルク様原料はタルク、蛇紋岩亜族及び緑泥石族の少なくとも1種であることを特徴とするものである。
【0027】
請求項15の調湿建材の製造方法は、請求項10ないし14のいずれか1項において、前記原料の少なくとも一部が仮焼されていることを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0028】
水酸化アルミニウムは、300〜500℃程度の焼成により脱水して多孔質となり、調湿性が発現するが、建材としての強度はない。強度を上げるため高温度で焼結させると調湿性が消失する。本発明では、水酸化アルミニウムにタルク様原料を配合する。タルク様原料は板状又は葉片状粒子よりなるため、300〜500℃という比較的低温の焼成で生成する水酸化アルミニウム脱水物同士の固着を防止し、水酸化アルミニウム脱水物の調湿性の消失を防止する。また、タルク様原料の粒子が水酸化アルミニウム脱水物と絡まり、建材としての強度を付与する。このタルク様原料は、融点が高いので、水酸化アルミニウム脱水物同士を融着させることがないと共に、粒子が柔らかいので、調湿建材の加工性が向上する。
【0029】
なお、水酸化アルミニウム及びタルクを含む原料を700〜1100℃で焼成すると、タルクは700℃付近よりSiOを放出し始める。放出されたSiOが水酸化アルミニウム脱水物の多孔質相に作用することにより、水酸化アルミニウム脱水物の多孔質状態がさらに維持されやすくなる。これにより、調湿性が向上すると共に、多孔質状水酸化アルミニウム脱水物の柔らかさとタルクの柔らかさとが重畳することにより調湿建材の加工性も向上する。但し、焼成温度が1100℃よりも高くなると、水酸化アルミニウム脱水物の多孔質の維持が難しくなる。
【0030】
水酸化アルミニウム及びタルクに対しさらに粘土を配合した場合、水酸化アルミニウム脱水物の調湿性を確保しつつ、粘土の固着作用により強度が向上する。
【0031】
本発明において、原料にさらに粘土を配合した場合、タルクの700℃付近からのSiO放出による効果に加え、この粘土が800℃付近よりSiOを放出し始めるため、より幅広い温度範囲で水酸化アルミニウム脱水物の多孔質状態が維持されるようになり調湿性能が向上する。また、粘土の固着作用が作用することにより、調湿建材の強度が向上する。また、粘土は耐火度が高いので、800℃又はそれ以上の高い温度で調湿建材を焼成しても調湿性能を保つことができる。これにより、様々な顔料や釉薬が使えることになり、調湿建材の装飾性も向上する。
【0032】
原料にベントナイト及び/又はモンモリロナイトを配合した場合、ベントナイト及び/又はモンモリロナイトが粘土よりも強い固着力を持つため、水酸化アルミニウムの脱水物を強く固めるようになり、調湿建材の高強度化が可能になる。
【0033】
また、ベントナイト及び/又はモンモリロナイトは、層間にHOが介在した層状鉱物であり、焼成すると600℃付近で多量の層間水を放出し、崩れた構造となる。この構造のベントナイト及び/又はモンモリロナイト脱水物と水酸化アルミニウムの脱水物とが絡み合うことにより、水酸化アルミニウム脱水物の多孔質状態が維持されやすくなる。また、ベントナイト及び/又はモンモリロナイトは700〜1100℃程度の焼成では熔融せず、水酸化アルミニウム脱水物の微細孔を閉塞することがなく、調湿建材の調湿性能が高いものとなる。
【0034】
本発明では、上記のようにタルク様原料や、粘土、ベントナイト及び/又はモンモリロナイトの存在により水酸化アルミニウム脱水物のα−アルミナ結晶化反応が抑制され、該脱水物(酸化アルミニウム)の多くは多孔状のまま残存し、また、NaO,KO,LiO,B,P,BaOなどのガラス生成成分の含有量が少ないので、ガラス融液生成による気孔閉塞が抑制される。
【0035】
また、原料にタルク様原料や、粘土、ベントナイト及び/又はモンモリロナイトを配合することにより、成形時の成形性、賦形性が向上する。
【発明を実施するための形態】
【0036】
本発明の調湿建材を製造するには、水酸化アルミニウムと、タルク様原料、必要に応じさらに粘土やベントナイト及び/又はモンモリロナイトを混合し、成形し、焼成する。
【0037】
水酸化アルミニウムとしては、粉末状のものが好適である。水酸化アルミニウムは、ギブサイト、バイヤライト、ベーマイト、ダイアスポア、アルミナゾル、アルミナゲルなどのいずれの形態のものであってもよい。なお、焼成により多孔質になる塩化アルミニウム、アルミニウムナイトライドなどの各種アルミニウム化合物も用いることができるが、水酸化物が最も好ましい。
【0038】
タルク様原料としては、タルクのほか蛇紋岩亜族(温石綿、板温石、リザーダイト)、緑泥石族(クリノクロア、シャモサイト、スドーアイト、クッケアイト)も用いることができるが、タルクが好適である。
【0039】
ベントナイトは、モンモリロナイトを主成分とし、さらに、石英、クリストバライト、長石類、炭酸塩鉱物などを付随することが多い鉱物である。Naモンモリロナイト、Caモンモリロナイトを含むNaベントナイト、Caベントナイトなどや、ベントナイトが風化した酸性白土、それを処理した活性白土などが代表例である。
【0040】
粘土としては、木節粘土、蛙目粘土、耐火粘土、炉器粘土、カオリンなど、カオリン鉱物を含む各種のものを用いることができる。
【0041】
この原料の配合割合は、次の通りであることが好ましい。
【0042】
水酸化アルミニウム−タルク様原料2成分系の場合
水酸化アルミニウム20〜95重量%特に25〜60重量%
タルク様原料5〜80重量%特に10〜55重量%
【0043】
水酸化アルミニウム−タルク様原料−粘土3成分系の場合
水酸化アルミニウム20〜90重量%特に25〜60重量%
タルク様原料5〜70重量%特に10〜55重量%
粘土5〜75重量%特に5〜60重量%
【0044】
水酸化アルミニウム−タルク様原料−ベントナイト及び/又はモンモリロナイト3成分(又は4成分)系の場合
水酸化アルミニウム20〜90重量%特に25〜60重量%
タルク様原料5〜70重量%特に10〜55重量%
ベントナイト及び/又はモンモリロナイト3〜30重量%特に5〜20重量%
【0045】
水酸化アルミニウム−タルク様原料−粘土−ベントナイト及び/又はモンモリロナイト4成分(又は5成分)系の場合
水酸化アルミニウム20〜80重量%特に25〜60重量%
タルク様原料5〜70重量%特に10〜55重量%
粘土5〜74重量%特に10〜55重量%
ベントナイト及び/又はモンモリロナイト1〜30重量%特に5〜20重量%
【0046】
本発明では、原料が水酸化アルミニウム、タルク様原料、粘土、ベントナイト及び/又はモンモリロナイトを含むことが最も好ましく、この場合、焼成後の調湿建材の組成が次の範囲となるようにするのが好ましい。
【0047】
Al:10〜95重量%特に20〜60重量%
SiO:3〜65重量%特に15〜55重量%
CaO及びMgOの合計:2〜35重量%以下特に5〜30重量%以下
フラックス(NaO,KO,LiO,B,P,BaOの合計):5重量%以下特に3重量%以下
【0048】
なお、SiOが65重量%よりも多いと原料の焼結性が悪化すると共に、Alが過少となり調湿性が悪化する。SiOが3重量%よりも少ないと焼結体の強度が低下すると共に、タルク様原料、ベントナイト及び/又はモンモリロナイトもしくは粘土量が過少であり、成形性が悪くなる。
【0049】
CaO及びMgOの合計が35重量%よりも多いと、調湿建材の微細孔が閉塞され調湿特性が低下するようになる。フラックスが5重量%よりも多いと調湿建材の微細孔が閉塞され調湿特性が低下する。
【0050】
なお、本発明では、調湿建材の調湿特性及び強度に悪影響を与えない範囲で焼結助剤成分、例えば、各種ガラス粉やフリット、建物用又は自動車用の板ガラスや都市ゴミ溶融スラグや製鋼スラグなどの各種スラグを配合してもよい。この焼結助剤成分の配合量は、水酸化アルミニウム、タルク様原料、ベントナイト及び/又はモンモリロナイト並びに粘土の合量100重量部に対し50重量部以下特に30重量部以下であることが望ましい。
【0051】
上記の各原料のうちの少なくとも一部、例えば水酸化アルミニウム、タルク様原料、ベントナイト及び/又はモンモリロナイト、並びに粘土の少なくとも1種を700〜1100℃の焼成温度よりも低い温度(例えば500〜800℃程度)で仮焼しておいてもよい。原料を仮焼することにより、原料の活性が増大し、焼成性が向上する。また、水酸化アルミニウムや粘土のように焼成時に脱水する原料や、焼成時に脱炭酸する原料を仮焼しておくと、焼成時の急激な脱水や脱炭酸が防止され、焼成物の割れ等を防止することができる。
【0052】
上記の原料は、必要により粉砕した後、混合し、成形される。粉砕方法、混合方法、成形方法は特に限定されるものではない。例えば、成形方法としては、プレス成形、押出成形等を採用できる。この成形のためにメチルセルロース等の成形助剤を添加してもよい。調湿建材は板状、ブロック状、筒状など適宜の形状としうる。
【0053】
成形体は、必要に応じ乾燥した後、好ましくは700〜1100℃特に750〜1100℃にて0.2〜100Hr好ましくは0.3〜72Hr焼成する。
【0054】
これにより、曲げ強度が2.5MPa以上であり、25℃で相対湿度50%の雰囲気中で恒量となっているものを25℃で相対湿度90%の空気と24hr接触させたときの吸湿量が150g/m以上である調湿建材が得られる。
【0055】
なお、本発明において曲げ強度等、吸湿量は次の方法により求めた値とする。
【0056】
曲げ強度:三点曲げ法で求める。
調湿性能:裏面及び端面をアルミテープでシールした調湿建材を25℃で相対湿度50%の恒温恒湿槽中で重量を恒量化(変動0.1%以下になるまで)させた後、25℃で相対湿度90%に保持した恒温恒湿槽中に入れ、24Hr後の重量増を試験体の寸法を測定し、単位面積(1m)あたりに換算した吸湿量を指標とする。
【0057】
本発明では、調湿建材の表面に薄く施釉を施し、調湿建材の意匠性や耐汚れ性を高めるようにしてもよい。この場合、調湿性を損なわないようにするために釉薬によって生成するガラス層が調湿建材本体の表面の90%以下の面積領域に形成されるように、或いは、このガラス層の最大厚みが300μm以下となるように行うのが好ましい。
【実施例】
【0058】
実施例1
工業用水酸化アルミニウム(Al(OH)純度99.6%グレード)55重量部と、タルク(中国遼寧省産)45重量部とをボールミルで粉砕、混合した後、プレス成形し、110×110×5.5mmの成形体とし、これを800℃で1.0Hr焼成し、調湿建材を製造した。
【0059】
この調湿建材の吸湿量、曲げ強度及び加工性を測定した結果を表1に示す。
【0060】
なお、加工性は木工用の鋸で人が通常の作業速度で切断したときの30秒当りの切断進行量である。
【0061】
実施例2〜14、比較例1〜3
原料の配合割合及び焼成温度を表1の通りとし、また実施例14では水酸化アルミニウム、タルク、粘土を500℃で仮焼してから他の原料と粉砕・混合したこと以外は実施例1と同様にして調湿建材を製造し、同様の測定を行った。結果を表1に示す。なお、比較例1,2では、焼成物をハンドリングできないため、吸湿量及び曲げ強度は測定不能であった。粘土としては愛知県瀬戸産のものを用い、ベントナイトとしては群馬県安中産のものを用いた。なお、実施例1,2では成形用バインダとしてポリビニルアルコールを7.5重量部ずつ配合した。なお、実施例14における水酸化アルミニウム50+4は、水酸化アルミニウム50重量部と500℃仮焼水酸化アルミニウム4重量部とを表わす。タルクの15+6は、タルク15重量部と500℃仮焼タルク6重量部を表わす。粘土の7.5+5は、粘土7.5重量部と500℃仮焼粘土5重量部とを表わす。
【0062】
【表1】

【0063】
比較例1,2の通り、水酸化アルミニウム単体では、建材は得られない。比較例3(特許文献1)では、粘土の固着を利用することで、調湿性能が657g/mで2.3MPa程度の調湿建材が得られるが、加工性は100mm/30秒と低い。
【0064】
実施例1〜11は、いずれも比較例1に比べて加工性に優れる。タルクを多く配合した実施例1,2は加工性が極めて高い。タルクと粘土とを併用し、かつタルクを粘土よりも多く配合した実施例3も調湿性及び加工性に優れる。
【0065】
実施例3と比べ、実施例4は、水酸化アルミニウムを減らしてタルクを増やした配合である。実施例4も調湿性、加工性に優れるが、水酸化アルミニウムが減ると加工性が低下しており、タルクと水酸化アルミニウムのからみ合いで加工性が向上することが分かる。
【0066】
実施例1,2は、同一配合である。焼成温度を850℃と実施例1よりも+50℃高くした実施例2の場合、実施例1よりも強度は高くなるが、調湿性が低下する。これは、原料が水酸化アルミニウムとタルクの2成分系であり、+50℃分だけ焼結が進行したためであると考えられる。
【0067】
原料を水酸化アルミニウム、タルク及び粘土の3成分系で同一配合とした実施例5,6においては、焼成温度を850℃とした実施例6においても、実施例1よりも高い調湿性能を有している。また、実施例6は、曲げ強度も実施例1,2に比べても高い。
【0068】
水酸化アルミニウム、タルク及びベントナイトの3成分を配合した実施例7と、水酸化アルミニウム、タルク、粘土及びベントナイトの4成分を配合した実施例8,9は、調湿性及び曲げ強度が高い。加工性は実施例1〜3に比べて低いが、比較例3に比べて十分に高い。
【0069】
実施例10,11は、水酸化アルミニウム、タルク、粘土及びベントナイトの4成分を配合しているが、水酸化アルミニウムの割合を少なくしている。この実施例10,11の場合、調湿性は水酸化アルミニウムが少ないことに対応して低くなっている。ただし、曲げ強度は高い。このことから、高調湿性とするためには、水酸化アルミニウムの配合量を25重量%以上程度に多くするのが好ましいことが認められた。
【0070】
以上の実施例及び比較例からも明らかな通り、本発明によると、調湿特性、強度及び加工性に優れた調湿建材が提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水酸化アルミニウムと、タルク様原料と、粘土と、ベントナイト及び/又はモンモリロナイトとを含む原料を成形し、焼成してなる調湿建材。
【請求項2】
請求項1において、該原料は、水酸化アルミニウムを20〜80重量%、タルク様原料を5〜70重量%、粘土を5〜74重量%、ベントナイト及び/又はモンモリロナイトを1〜30重量%含むことを特徴とする調湿建材。
【請求項3】
水酸化アルミニウムと、タルク様原料とを含む原料を成形し、焼成してなる調湿建材。
【請求項4】
請求項3において、該原料は水酸化アルミニウムを20〜95重量%、タルク様原料を5〜80重量%含むことを特徴とする調湿建材。
【請求項5】
請求項3において、該原料は水酸化アルミニウムを20〜90重量%、タルク様原料を5〜70重量%、粘土を5〜75重量%含むことを特徴とする調湿建材。
【請求項6】
請求項3において、該原料は、水酸化アルミニウムを20〜90重量%、タルク様原料を5〜70重量%、ベントナイト及び/又はモンモリロナイトを3〜30重量%含むことを特徴とする調湿建材。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか1項において、タルク様原料はタルク、蛇紋岩亜族及び緑泥石族の少なくとも1種であることを特徴とする調湿建材。
【請求項8】
水酸化アルミニウムと、タルク様原料と、粘土と、ベントナイト及び/又はモンモリロナイトとを含む原料を成形し、700〜1100℃で焼成する調湿建材の製造方法。
【請求項9】
請求項8において、該原料は、水酸化アルミニウムを20〜80重量%、タルク様原料を5〜70重量%、粘土を5〜74重量%、ベントナイト及び/又はモンモリロナイトを1〜30重量%含むことを特徴とする調湿建材の製造方法。
【請求項10】
水酸化アルミニウムと、タルク様原料とを含む原料を成形し、700〜1100℃で焼成する調湿建材の製造方法。
【請求項11】
請求項10において、該原料は水酸化アルミニウムを20〜95重量%、タルク様原料を5〜80重量%含むことを特徴とする調湿建材の製造方法。
【請求項12】
請求項10において、該原料は水酸化アルミニウムを20〜90重量%、タルク様原料を5〜70重量%、粘土を5〜75重量%含むことを特徴とする調湿建材の製造方法。
【請求項13】
請求項10において、該原料は、水酸化アルミニウムを20〜90重量%、タルク様原料5〜70重量%、ベントナイト及び/又はモンモリロナイトを3〜30重量%含むことを特徴とする調湿建材の製造方法。
【請求項14】
請求項10ないし13のいずれか1項において、タルク様原料はタルク、蛇紋岩亜族及び緑泥石族の少なくとも1種であることを特徴とする調湿建材の製造方法。
【請求項15】
請求項10ないし14のいずれか1項において、前記原料の少なくとも一部が仮焼されていることを特徴とする調湿建材の製造方法。

【公開番号】特開2012−188822(P2012−188822A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51521(P2011−51521)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】