説明

調湿建材

【課題】建材の剥離が防止でき、より強化構造の品質のものとすると共に、建材自体の軽量化を図ることで施工しやすい調湿建材を提供する。
【解決手段】周囲の湿度に応じて自立的に水蒸気を吸収又は放出して湿度を調整する調湿材料を建築内装に用いる不燃性に優れた調湿建材において、建設泥土に含まれるシルト・粘土分と、ケナフと、耐火液と、を混入して構成材料とし、前記構成材料を加温しながら圧縮成型することを特徴とする。この構成により、圧縮成型後に調湿性を有する無機質セラミック化合物を生成することで、シルト・粘土分の剥離が防止でき、内装材としての品質あるいは施工の向上を図ることができる。また、調湿材料の構成比率を変えることで、調湿性能、比重、強度を所望のものに設計することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、周囲の湿度に応じて自立的に水蒸気を吸収又は放出して湿度を調整する調湿材料を建築内装に用いる不燃性に優れた調湿建材に関する。
【背景技術】
【0002】
建築物の高気密・高断熱化に伴う環境湿度の影響を避けるため、最近は、調湿建材を使用した建築物が増えてきている。ここでいう調湿建材とは、周囲の湿度に応じて自立的に水蒸気を吸収、放出して周囲の湿度を調節する機能を持った建材であり、この調湿建材を内装材として建築物を施工することにより、居住者の生活に適した湿度環境を作ることができる。
【0003】
調湿建材の吸放湿挙動は細孔径によって決まり、これが大きいと高湿度領域で、小さいと低湿度領域で調湿するので、快適な湿度環境を作り出すためには、建材に適当な大きさの細孔径を持たせることが重要である。 そこで、従来の調湿建材は、鹿沼土、珪藻土、天然ゼオライト、火山灰土、天然活性白土、天然鉱物、バーミキュライト、ALC粉末等を主構成材料とした多孔質原料を使用することにより、調湿機能を持たせるのが一般的であった。
【0004】
ところで、本願出願人は、調湿建材に鹿沼土や珪藻土等の専用の多孔質原料を用いるのではなく、「産業廃棄物の建設泥土を用いた調湿材料」(特許文献1参照)に関する技術を提案している。この特許文献1の発明は、建設泥土を主成分とするモルタルと、多孔質の天然繊維と、で調湿建材を構成している。
【特許文献1】特開2002−193650号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、特許文献1に記載の発明を更に改良して、建材の剥離が防止でき、より強化構造の品質のものとすると共に、建材自体の軽量化を図ることで施工しやすい調湿建材を提供することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は調湿建材であり、前述の技術的課題を解決するために以下のように構成されている。
すなわち、本発明は、周囲の湿度に応じて自立的に水蒸気を吸収又は放出して湿度を調整する調湿材料を建築内装に用いる不燃性に優れた調湿建材において、
建設泥土に含まれるシルト(粒径1/16〜1/256mm)・粘土分と、ケナフと、耐火液と、を混入して構成材料とし、
前記構成材料を加温しながら圧縮成型することを特徴とする。
【0007】
この構成により、圧縮成型後に調湿性を有する無機質セラミック化合物を生成することで、シルト・粘土分の剥離が防止でき、内装材としての品質あるいは施工の向上を図ることができる。また、調湿材料の構成比率を変えることで、調湿性能、比重、強度を所望のものに設計することができる。なお、前記建設泥土は、シルト・粘土を含有する土でもよいが、ここでは特に建設時に発生する土を利用する。また、前記耐火液は、水酸化カリウムと、炭酸ナトリウムと、メタルシリコンと、に水を加えた水溶性耐火液である。更に、前記加温は、150〜300℃の範囲であることが好ましい。
【0008】
また、本発明において、前記圧縮成型の際、前記耐火液を脱水処理することで、効率よく加温することができ、脱水処理した耐火液を回収することで、コスト低減を図ることができる。
【0009】
更に、本発明において、前記ケナフは、繊維状のケナフと、粉末状のケナフの2種類のうちの何れか、または両方を使用する。繊維状のケナフは、吸放湿性に優れているだけでなく、建材の曲げ強度の高強度化にも寄与する。また、粉末状のケナフは吸放湿性に優れているだけでなく、建材の比重の軽量化に寄与する。更に、建材の軽量化は、施工性の向上等に寄与する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の調湿建材によれば、建物の高気密・高断熱化による結露の発生、およびそれに伴うカビ・ダニ等の発生を極力防止でき、建設副産物である建設泥土の有効利用ができる。また、本発明の調湿建材は、加温・圧縮成型した後に、耐火液由来による調整性無機質セラミック化合物が生成し、調湿建材の曲げ強度等が向上して、調湿建材から建設汚泥(シルト・粘土分)が剥離することを防止でき、内装材としての品質あるいは施工性の向上を図ることができる。更に、調湿材料の構成比率を変えることで、調湿性能、比重、強度を所望のものに設計することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明に係る調湿建材の実施の形態について、詳細に説明する。
本発明の調湿建材は、周囲の湿度に応じて自立的に水蒸気を吸収又は放出して湿度を調整する調湿材料を建築内装に用いる不燃性に優れた調湿建材である。そして、調湿建材の構成材料は、建設泥土に含まれるシルト・粘土分と、ケナフ(Kenaf)と、耐火液と、を混入したものである。また、これら混入した構成材料を加温しながら圧縮成型して調湿建材としたものである。
【0012】
建設泥土は、通常の建設現場から発生するものであり、その場所の地質によって様々な成分が含まれるが、そのうち特にシルト(粒径1/16〜1/256mm)が吸放湿性を有するといわれている。このシルトは、量の違いはあっても殆どの建設泥土に含まれているので、建設泥土を使用することによって、調湿建材を製造することが可能になる。
【0013】
ケナフは、植物の一種であり、その多孔質性により調湿建材の調湿機能を向上させることができる。また、ケナフは、水分の吸方湿性によって生じる材料の膨張・収縮を抑制させる効果もある。更に、ケナフは、繊維状のケナフと、粉末状のケナフの2種類のうちの何れか、または両方を使用する。繊維状のケナフは、吸放湿性に優れているだけでなく、建材の曲げ強度の高強度化にも寄与する。また、粉末状のケナフは吸放湿性に優れているだけでなく、建材の比重の軽量化に寄与する。かかる建材の軽量化は、施工性の向上等に寄与する。
【0014】
耐火液は、水酸化カリウムと、炭酸ナトリウムと、メタルシリコンと、に水を加えた水溶性耐火液である。
【0015】
構成材料の混合は、一般的な混練装置を使用する。
【0016】
そして、この実施の形態の調湿建材は、前記構成材料を加温しながら圧縮成型する。この加温は、150〜300℃の範囲であることが好ましい。また、圧縮成型の際、前記耐火液を脱水処理することで、効率よく加温することができ、脱水処理した耐火液を回収することで、コスト低減を図ることができる。
【0017】
そして、この実施の形態の調湿建材は、加温・圧縮成型により調湿性を有する無機質セラミック化合物が生成される。この無機質セラミック化合物の生成により、シルト・粘土分の剥離が防止でき、建材の高強度化、耐火性能の向上が図れ、内装材としての品質あるいは施工の向上が図れる。
【0018】
また、この実施の形態の調湿建材は、建築物の内装仕上げ材や、壁面の塗布材などに使用することによって、高気密・高断熱化による結露の発生を防止して、カビ・ダニ等の発生を防止でき、快適な居住空間を提供することができる。
【0019】
また、建設現場から排出される建設泥土を調湿材料の主成分として有効に利用できるので、従来のように建設泥土を廃棄するために改良を加えるという無駄な作業をする必要がなく、しかも、産業廃棄物を低減できるので、環境保護の面からも有利となる。
【0020】
[本発明の調湿建材の吸放湿性試験]
次に、本発明の調湿建材の吸放湿性を確認するため、各成分が異なる3種類の内装ボードの試験体(100mm×100mm)を作成し、測定を行った。
【0021】
3種類の内装ボードの試験体は、図1に示すように、「ケース番号1」(建設汚泥量100%;比重1.34t/m3:ケナフを含まない試験体)、「ケース番号2」(建設汚泥量93%;比重1.24t/m3:ケナフ繊維を多く含む試験体)、「ケース番号3」(建設汚泥量70.2%;比重1.13t/m3:ケナフ粉末を多く含む試験体)である。
【0022】
なお、吸放湿性の試験は、JIS A 1470−1に準じて実施した。また、湿度条件は、中湿域(吸湿過程75%,放湿過程53%)について試験した。更に、測定サイクルは2サイクルのみとした。
【0023】
24時間における吸放湿性の試験の結果は、図2に示す通りである。なお、図2のグラフにおいて、縦軸は吸放湿量(g/m2)を示し、横軸は測定時間を示す。また、図2(a)は、「ケース番号1」の吸放湿性の試験の結果を示し、図2(b)は、「ケース番号2」の吸放湿性の試験の結果を示し、図2(c)は、「ケース番号3」の吸放湿性の試験の結果を示す。
【0024】
すなわち、「ケース番号1」(ケナフを含まない試験体)の吸湿量(調湿性)は、60g/m2、「ケース番号2」(ケナフ繊維を多く含む試験体)の吸湿量(調湿性)は、80g/m2、は、「ケース番号3」(ケナフ粉末を多く含む試験体)の吸湿量(調湿性)は、95g/m2であった。なお、従来の珪藻土仕上げ石膏ボードの調湿建材の場合、同じ条件の下、試験を実施した結果、24時間における吸湿量は約10g/m2、放湿量は20g/m2であった。
【0025】
このことから、本発明による調湿建材の吸放湿性(調湿性)は従来の物に比して優れていることがわかる。
【0026】
また、「ケース番号2」(建設汚泥量93%;ケナフ繊維量2.3%;ケナフ粉末量4.7%)と、「ケース番号3」(建設汚泥量70.2%;ケナフ繊維量1.8%;ケナフ粉末量28.1%)との試験の結果から、ケナフの添加量を制御することで、吸湿量を調整することができることもわかる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の調湿建材の吸放湿性を確認するための試験において、試験体の成分を示す図である。
【図2】24時間における吸放湿性の試験の結果を示すグラフ図である。図2(a)は、「ケース番号1」の吸放湿性の試験の結果を示し、図2(b)は、「ケース番号2」の吸放湿性の試験の結果を示し、図2(c)は、「ケース番号3」の吸放湿性の試験の結果を示す本発明の調湿建材の成分を示す図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周囲の湿度に応じて自立的に水蒸気を吸収又は放出して湿度を調整する調湿材料を建築内装に用いる不燃性に優れた調湿建材において、
建設泥土に含まれるシルト・粘土分と、ケナフと、耐火液と、を混入して構成材料とし、
前記構成材料を加温しながら圧縮成型する
ことを特徴とする調湿建材。
【請求項2】
前記加温は、150〜300℃の範囲である請求項1に記載の調湿建材。
【請求項3】
前記圧縮成型の際、前記耐火液を脱水処理する請求項1または2に記載の調湿建材。
【請求項4】
前記建設泥土は、建設時に発生する土を利用する請求項1〜3の何れかに記載の調湿建材。
【請求項5】
前記ケナフは、繊維状のケナフと、粉末状のケナフの2種類のうちの何れか、または両方を使用する請求項1〜4の何れかに記載の調湿建材。
【請求項6】
前記耐火液は、水酸化カリウムと、炭酸ナトリウムと、メタルシリコンと、に水を加えた水溶性耐火液である請求項1〜5の何れかに記載の調湿建材。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−249750(P2006−249750A)
【公開日】平成18年9月21日(2006.9.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−66626(P2005−66626)
【出願日】平成17年3月10日(2005.3.10)
【出願人】(000201478)前田建設工業株式会社 (358)
【出願人】(503454849)株式会社ネイチャートラスト (3)
【出願人】(300011944)マサミ化学株式会社 (1)
【Fターム(参考)】