説明

調湿建材

【課題】 本発明は、建造物の壁材等に貼設されるもので、粉末状の珪藻土及び木粉からなり、準不燃性を有する調湿建材を提供する。
【解決手段】 粉末状の珪藻土、木粉及びホウ砂からなる混合粉に水又は温水を加えて混練形成し、圧縮成形したことを特徴とする調湿建材若しくは、混合粉を、木粉の粒径を7mm未満とし、粉末状の珪藻土を30〜65重量%、木粉を10〜30重量%及びホウ砂を20〜60重量%としたことを特徴とする調湿建材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建造物の壁材等に貼設されるもので、粉末状の珪藻土及び木粉からなり、準不燃性を有する調湿建材に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、調湿材として珪藻土を使用した調湿建材が公知である。一例として、稚内層珪藻土の粉砕物を単独で使用するか、あるいはこれとその他のセラミックス原料と配合して任意の形状に成形し、焼成するように構成した稚内層珪藻土を利用した調湿機能材料の製造法、更に、稚内層珪藻土の粉砕物を単独で使用するか、あるいはこれをフィラーとしてその他の材料と複合し、不焼成とすることを特徴とする稚内層珪藻土を利用した調湿機能材料の製造法が公知である(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許2652593号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1の発明では、一般的な珪藻土と異なる多孔質構造を有する稚内層珪藻土を、調湿機能を有さない石膏、セメント等の不焼成材料に添加することで調湿機能材料を製造しているが、当該石膏、セメント等の不焼成材料によって、稚内層珪藻土における細孔が閉塞され、調湿機能を喪失する虞がある。また、石膏等の添加により、釘、ネジ等の加工上においても貫通させることができない等といった困難性を有する虞もある。
【0004】
そこで、本発明はこのような問題点を解決するものであって、建造物の壁材等に貼設されるもので、粉末状の珪藻土及び木粉からなり、準不燃性を有する調湿建材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記問題点を解決するために、本願発明の請求項1に記載の調湿建材は、粉末状の珪藻土、木粉及びホウ砂からなる混合粉に水又は温水を加えて混練形成し、圧縮成形したことを特徴とするものである。
【0006】
本願発明の請求項2に記載の調湿建材は、請求項1に記載の調湿建材において、混合粉は、木粉の粒径を7mm未満とし、粉末状の珪藻土を30〜65重量%、木粉を10〜30重量%及びホウ砂を20〜60重量%としたことを特徴とするものである。
【0007】
本願発明の請求項3に記載の調湿建材は、請求項1に記載の調湿建材において、着色材を添加し着色したことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0008】
請求項1及び請求項2に記載の調湿建材によれば、十分に水分が含浸された木粉、ホウ砂、及び粉末状の珪藻土の所定の分量を、混合、混練させた後、加熱、加圧させるだけで形成することができるので、工業品の添加を要さず材料コストを低減することができ、不燃材含浸時における煩雑な作業工程も要することなく、安価な準不燃性を有する調湿建材を形成することができる。
また、当該珪藻土は、圧縮によって加圧されることにより、堆積岩に見られるいわゆる物理的続成作用の圧密作用と同等の作用を奏することができる。これによって、混合粉内における無数の当該珪藻土の粒子間の隙間が詰まり、当該珪藻土の密度が増加するので、調湿建材の強度を向上させることができる。更に、調湿建材の形状を保持し、表面を平滑にして寸法安定化を図ることができる。
更に、混合粉内におけるホウ砂は、加熱され溶解し、水と反応することでねばねばしたあめ状となり、木粉及び珪藻土で形成される調湿建材の内部に浸透していき、調湿建材における水分が蒸発し、プレス後の温度の低下によって、ホウ砂は再結晶し固化するので、混合物内における木粉及び珪藻土を強固に結合する接着剤の効果を奏することができる。
【0009】
請求項3に記載の調湿建材によれば、着色材を添加し着色するので、調湿建材にカラーバリエーションをもたせることができ、意匠性を向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本願発明の準不燃性を有する調湿建材は、粉末状の珪藻土、木粉及びホウ砂からなる混合粉に水を加えて混練形成し、圧縮成形することにより形成される。以下、本発明の実施の形態における調湿建材を図面に基づいて説明する。
【0011】
図1は、本発明の実施例における調湿建材の製造工程の簡略図である。図2は、本発明の実施例における調湿建材の吸放湿量を示すグラフである。図3は、本発明の実施例における調湿建材の平衡含水率を示すグラフである。図4は、本発明の実施例における調湿建材の発熱性試験結果のグラフである。
【0012】
ここで、不燃材料とは、建築材料試験法の性能試験(建築基準法施行令第2条第9号(不燃材料))の該当する発熱性試験で不燃材料としての規格を満たすものをいう。また、一般に、建築基準規格の1つとして、総発熱量が8MJ/m以下が、20分継続すれば不燃、10分継続すれば準不燃、5分継続すれば難燃と判定される。
【実施例】
【0013】
木片には、主に間伐材が使用され、スギ、ヒノキ等が使用される。図1に示すように、木片は、事前に水分含有率35%以上になるように水を調節して含浸させ、1次破砕された形でコンテナ1に入って入荷された後、二次破砕機2によって破砕される。その後、送風機3によって空気輸送され、サイクロン4で分離されて圧搾破砕型粉砕機5に導かれる。ここで、当該木片は更に破砕され、アスペクト比2〜5、太さ3mm、長さ10mm未満、より好ましくは長さ7mm未満に粉砕され、木粉となる。
粉砕された木粉は、送風機6によってサイクロン7を経て、金属粉除去装置8へと輸送され、当該木粉中に混入の虞のある金属粉を除去した後、振動篩9等によって分離されて、木粉ホッパー10に貯留される。一方、アスペクト比2〜5、太さ3mm、長さ10mm未満の木粉以外とされる粗粒は、振動篩9等によって分離されて圧搾破砕型粉砕機5へ再度輸送される。粉砕された木粉は木質繊維の破断が少なく、繊維質が残留しており、後述するホウ砂及び珪藻土が絡みやすくなるので、調湿建材の強度を向上させる効果がある。
【0014】
木粉ホッパー10から木粉が混練機13に投入され、水または温水が注入され、十分に混合攪拌される。その後、ホウ砂ホッパー11に貯留されるホウ砂及び珪藻土ホッパー12に貯留される粒子径がシルト(粒径0.005〜0.075mm)より小さい粘土と同程度に粉砕された粉末状の珪藻土が混練機13に投入されて十分に混合、混練される。これによって木粉の表面には、ホウ砂および珪藻土が付着し、ホウ砂の一部は導管より木粉内に含浸され、十分混練された混合粉となる。当該混合粉は乾燥機14に導かれ、所定の水分含有量になるまで乾燥された後、混合粉ホッパー15に導かれ貯留される。
【0015】
このとき、当該混合粉の配合は、珪藻土が30〜65重量%、木粉が10〜30重量%、ホウ砂が20〜60%、水または温水は混合粉100重量%に対して、10〜30重量%にて配合される。
【0016】
当該混合粉の配合において、珪藻土を30重量%以下にして配合すると、珪藻土の作用及び効果である調湿効果、消臭効果が低減される為、好ましくない。一方、珪藻土を65重量%以上にして配合すると、調湿建材の強度が低下し、加工が困難になる他、釘、ネジ等の加工上においても貫通させることができない等といった困難性を有する為、好ましくない。
【0017】
また、当該混合粉の配合において、木粉を10重量%以下にして配合すると、珪藻土及びホウ砂の配合が増加し、調湿建材の強度が低下するとともに、釘、ネジ等の加工上においても貫通させることができない等といった困難性を有し、更に調湿建材の比重が大きくなる為、好ましくない。一方、木粉を30重量%以上にして配合すると、準不燃性を保持することができなくなる為、好ましくない。
【0018】
また、当該混合粉の配合において、ホウ砂を20重量%以下にして配合すると、難燃性を保持することは可能であるが、準不燃性を保持することができなくなる為、好ましくない。一方、ホウ砂を60重量%以上にして配合すると、珪藻土の配合が少なくなるので、珪藻土の作用及び効果である調湿効果、消臭効果が低減されるとともに、木粉の配合が少なくなるので、調湿建材の強度が低下する為、好ましくない。
【0019】
更に、当該混合粉の配合において、より望ましくは、珪藻土が30重量%、木粉が28重量%、ホウ砂が42重量%、水または温水は混合粉100重量%に対して、10〜30重量%にて配合する、若しくは、珪藻土が65重量%、木粉が14重量%、ホウ砂が21重量%、水または温水は混合粉100重量%に対して、10〜30重量%にて配合する。
【0020】
また、木粉、ホウ砂、及び粉末状の珪藻土の混合粉に、着色材として一般に使用されている顔料、色材等を添加することもできる。当該着色材は、各成分の配合に影響を及ぼさない程度で微量に添加される。これにより、調湿建材にカラーバリエーションをもたせることができ、意匠性を向上させることができる。
【0021】
混合粉ホッパー15から払い出された混合粉は、フォーミング装置16上のフォーミング金型(図示しない)上に均一な厚さに敷き広げられた後、多段式熱盤プレス機17に導かれ、加熱、加圧成形されて、調湿建材が形成される。
このとき、多段式熱盤プレス機17における熱盤は60〜200℃、より望ましくは120℃に加熱されているので、混合粉内に含まれる水分の温度は上昇し、蒸発して調湿建材の外部へと放散される。
【0022】
また、多段式熱盤プレス機17に設置され混合粉を成形する金型には微細な孔又はスリットが設けられており、更に、多段式熱盤プレス機17の熱盤には蒸気抜きの溝が設けられている。これにより、蒸気は当該孔又はスリット、溝を通って、容易に多段式熱盤プレス機17の外側へ放散される。
【0023】
一方、混合粉内におけるホウ砂は、加熱され溶解し、水と反応することでねばねばしたあめ状となり、木粉及び珪藻土で形成される調湿建材の内部に浸透していく。このとき、調湿建材における水分が蒸発し、プレス後の温度の低下によって、ホウ砂は再結晶し固化するので、混合物内における木粉及び珪藻土を強固に結合する。
【0024】
混合粉中の水分量が所定量10〜20%まで減少したところで、混合粉は成型され、圧力を解放されて、プレスより払い出される。払い出された調湿建材は、養生室18内の台盤上で数日間、硬化をうながすために養生される。数日間養生された調湿建材は、端部を切断等の加工19がされ、表面仕上げされて、梱包、出荷20される。
【0025】
一般に、調湿性の要件としては、調湿建材判定基準において、吸放湿量及び平衡含水率が一定の規定に適合しなければならないとされている。ここで、実施例における調湿建材を試験体Aとして、JIS A 1470−1に基づいて吸放湿量を測定した試験結果を表1に示す。ここで、試験体Aは、珪藻土が49.75重量%、木粉が21.21重量%、ホウ砂が29.02重量%、着色材としての顔料が0.02重量%にて配合されたものである。
【0026】
【表1】

【0027】
表1及び図2に示すように、吸湿量(g/m)が3時間後において15以上、6時間後において20以上、12時間後において29以上であるので、規定の数値を満たす。また、放湿過程12時間後の放湿量(g/m)が吸湿過程12時間後の吸湿量(g/m)の70%以上であるので、規定の数値を満たす。従って、上記試験の吸放湿量を満たす。
【0028】
次に、実施例における調湿建材を試験体Aとして、JIS A 1475に基づいて平衡含水率を測定した試験結果を表2に示す。
【0029】
【表2】

【0030】
表2及び図3に示すように、含水率勾配(kg/m/%)が0.12以上、平均平衡含水率(kg/m)が5以上であるので、規定の数値を満たす。従って、上記試験の平衡含水率を満たす。
【0031】
これにより、本願発明における調湿建材は、調湿建材判定基準における吸放湿量及び平衡含水率の規定に適合するので、調湿建材としての調湿性を有すると評価することができる。
【0032】
また、実施例における調湿建材を試験体Aとして、ISO5660に基づく発熱性試験を行った際の試験結果を表3に示す。
【0033】
【表3】

【0034】
表3及び図4に示すように、試験開始後10分時に総発熱量が8MJ/m以下であるので、発熱性試験における準不燃と評価することができる。
【0035】
以上、説明した本発明の実施例に係る調湿建材によれば、十分に水分が含浸された木粉、ホウ砂、及び粉末状の珪藻土の所定の分量を、混合、混練させた後、加熱、加圧させるだけで形成することができるので、工業品の添加を要さず材料コストを低減することができ、不燃材含浸時における煩雑な作業工程も要することなく、安価な調湿建材を形成することができる。
また、珪藻土は、多段式熱盤プレス機17によって加圧されることにより、堆積岩に見られるいわゆる物理的続成作用の圧密作用と同等の作用を奏することができる。これによって、混合粉内における無数の当該珪藻土の粒子間の隙間が詰まり、当該珪藻土の密度が増加するので、調湿建材の強度を向上させることができる。更に、調湿建材の形状を保持し、表面を平滑にして寸法安定化を図ることができる。
更に、混合粉内におけるホウ砂は、加熱され溶解し、水と反応することでねばねばしたあめ状となり、木粉及び珪藻土で形成される調湿建材の内部に浸透していき、調湿建材における水分が蒸発し、プレス後の温度の低下によって、ホウ砂は再結晶し固化するので、混合物内における木粉及び珪藻土を強固に結合する接着剤の効果を奏することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の実施例における調湿建材の製造工程の簡略図である。
【図2】本発明の実施例における調湿建材の吸放湿量を示すグラフである。
【図3】本発明の実施例における調湿建材の平衡含水率を示すグラフである。
【図4】本発明の実施例における調湿建材の発熱性試験結果のグラフである。
【符号の説明】
【0037】
1 コンテナ
2 二次破砕機
3、6 送風機
4、7 サイクロン
5 圧搾破砕型粉砕機
8 金属粉除去装置
9 振動篩
10 木粉ホッパー
11 ホウ砂ホッパー
12 珪藻土ホッパー
13、13a、13b 混練機
14、14a、14b 乾燥機
15 混合粉ホッパー
16 フォーミング装置
17 多段式熱盤プレス機
18 養生室
19 加工
20 梱包・出荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉末状の珪藻土、木粉及びホウ砂からなる混合粉に水又は温水を加えて混練形成し、圧縮成形したことを特徴とする調湿建材。
【請求項2】
混合粉は、木粉の粒径を7mm未満とし、粉末状の珪藻土を30〜65重量%、木粉を10〜30重量%及びホウ砂を20〜60重量%としたことを特徴とする請求項1に記載の調湿建材。
【請求項3】
着色材を添加し着色したことを特徴とする請求項1及び請求項2に記載の調湿建材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−243095(P2009−243095A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−89379(P2008−89379)
【出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000114606)モリト株式会社 (198)
【Fターム(参考)】