説明

調湿性成形物およびその製造方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、例えば、天井材や内外装材、床材などの建築用資材や、家具用資材として用いることができる調湿性成形物およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】従来の調湿性成形物としては、例えば、特開昭54−160428号公報に示すものがある。すなわち、ケイ酸カルシウム水和物を主成分とするケイカル板であって、ケイ酸カルシウム水和物が非常に微細な結晶から成り、多孔質のため、ケイ酸カルシウム水和物の大きな比表面積を利用して調湿を行うものである。
【0003】また、他の従来の調湿性成形物としては、例えば、特開昭62−246848号公報に示すものがある。すなわち、ゼオライトをセメント等のバインダーで成形したゼオライトパネルや人造木材であって、ゼオライトの分子構造内に数十〜数ナノメートルの超微細な空隙が散在し、ゼオライトの大きな比表面積を利用して調湿を行うものである。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】図12を参照して、調湿性を必要とする一般的状況を考察する。図12に示すように、空間1の湿度を雰囲気2に影響されることなく一定に保つため、調湿性を有する壁3を設けている。この場合、壁3は、空間1に接する3a面側にのみ調湿機能を持てばよく、雰囲気2に接する3b面側に調湿機能を持つ必要はない。むしろ、3b面側に調湿機能を有する場合、3b面側の調湿機能が3a面側の調湿機能に影響を及ぼして、空間1の保湿に悪影響を及ぼすこととなる。
【0005】従来の調湿性成形物は、いずれも均一な材料から成っており、使用の際、保湿を必要とする空間側だけでなく、その雰囲気側にも調湿性を有していた。従って、雰囲気側の調湿機能が保湿を必要とする空間の保湿に悪影響を及ぼすのを防ぐには、雰囲気側の面を防湿性の材料で覆う必要があった。その場合、従来の調湿性成形物では、防湿性の材料で覆う分、施工が複雑になり、コスト高となるうえ、防湿性の材料が時間の経過とともに次第に調湿性成形物から剥離し、耐久性に欠けるという問題点があった。
【0006】本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、保湿を必要とする空間の調湿を雰囲気の影響を受けずに行うことができ、施工が簡単でコストが安く、耐久性が高い調湿性成形物およびその製造方法を提供することを目的としている。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するために、本発明に係る調湿性成形物は、水硬性物質と調湿性物質とから成り、この水硬性物質による防湿面を有し、この防湿面からその反対面にかけて前記水硬性物質に対する前記調湿性物質の混合割合が連続的または段階的に増加した混合物から成ることを特徴とする。
【0008】本発明に係る調湿性成形物の製造方法は、ケイ酸質原料と石灰質原料とを混合して成る水硬性物質と、ケイ酸質原料と石灰質原料と調湿性物質とを混合して成り、この調湿性物質の混合割合がそれぞれ異なる複数種の混合物とをそれぞれ製造する製造過程と、前記製造過程で得た水硬性物質と前記複数の混合物とを、前記調湿性物質の混合割合が増加または減少する順に積層する積層過程と、前記積層過程による積層体を硬化させる硬化過程とを、有することを特徴とする。
【0009】例えば、本発明に係る調湿性成形物の製造方法では、前記水硬性物質および前記複数の混合物は水を混合して成る泥しょう体であり、前記積層過程と前記硬化過程との間に、前記積層体を圧縮成形する成形過程を有し、前記硬化過程は前記積層体を養生により硬化させる。
【0010】また、例えば、本発明に係る調湿性成形物の製造方法では、前記水硬性物質および前記複数の混合物は粉粒体であり、前記積層過程と前記硬化過程との間に、前記積層体に水を加えて圧縮成形する成形過程を有し、前記硬化過程は前記積層体を養生により硬化させる。
【0011】養生は、気中養生であっても、水熱養生であっても、それらの組み合わせであってもよい。水熱養生は、例えば、オートクレーブで行うことができる。
【0012】本発明に係る調湿性成形物およびその製造方法では、例えば、前記水硬性物質はケイ酸カルシウム水和物を主成分とし、前記調湿性物質は多孔性粉粒体または木屑から成る。
【0013】調湿性物質とは、温度の上昇に伴い放湿を行い、温度の降下に伴い吸水・吸着作用を行う物質である。調湿性物質は、吸水・吸着作用に伴って吸臭作用をも併せ持つ。
【0014】多孔性粉粒体とは、例えば、ゼオライト、セピオライト、クリストバライト、パーライト、アタパルジャイト、珪酸カルシウム、ケイソウ土、カオリン、モンモリロナイト、バーミキュライト、活性アルミナ、シリカゲル、活性炭、多孔性架橋有機高分子化合物や、これらの2種以上の混合物など、吸水・吸着作用を有する粉粒体である。多孔性粉粒体としては、特に、ゼオライトが好ましい。
【0015】木屑には、例えば、木材のオガ屑や、破砕片を用いることができる。調湿性成形物の材料には、金属製ワイヤー等の補強材や、アクリルポリマー、ビニロン繊維等の補強材や着色剤を加えてもよい。調湿性成形物の表面には、例えば木材のオガ屑や破砕片が成形物から剥離するのを完全に防止するために、吸湿性のコーティング剤を塗布してもよい。
【0016】水硬性物質は、例えば、ケイ酸カルシウム水和物、セメント、炭酸カルシウム、石灰、ALCやこれらの2種以上の混合物などである。水硬性物質としては、特に、SiO2 とCaOとの3対1の割合の混合物(以下、「調質原料」という。」と、セメントと、石膏との混合物が好ましい。また、水硬性物質は、発泡化により軽量化を図ったALCが好ましい。
【0017】調湿性成形物は、水硬性物質に対する調湿性物質の混合割合が段階的に増加するものの場合、防湿面を形成する水硬性物質の層と、水硬性物質に対する調湿性物質の混合割合がそれぞれ異なる少なくとも2つの層とにより、少なくとも3層で構成されるが、3層以上であれば何層であってもよい。
【0018】調湿性成形物は、例えば、調湿性物質にゼオライトを用いて5層で構成して、第1層を調質原料70〜80重量部、セメント15〜20重量部、石膏3〜5重量部から構成し、第2層を調質原料55〜60重量部、セメント15〜20重量部、ゼオライト15〜20重量部、石膏3〜5重量部から、第3層を調質原料35〜40重量部、ゼオライト35〜40重量部、セメント15〜20重量部、石膏3〜5重量部から、第4層をゼオライト60〜70重量部、調質原料20〜30重量部、セメント10〜15重量部、石膏3〜5重量部から、第5層をゼオライト85〜95重量部、セメント5〜10重量部、石膏3〜5重量部から構成したものが好ましい。
【0019】また、調湿性成形物は、例えば、調湿性物質にオガ屑を用いて5層で構成して、第1層を調質原料70〜80重量部、セメント15〜20重量部、石膏3〜5重量部から構成し、第2層を調質原料60〜70重量部、セメント15〜25重量部、石膏4〜8重量部、オガ屑3〜5重量部から、第3層を調質原料50〜60重量部、セメント20〜30重量部、オガ屑5〜10重量部、石膏3〜5重量部から、第4層を調質原料45〜55重量部、セメント25〜35重量部、オガ屑10〜20重量部、石膏3〜5重量部から、第5層をセメント70〜80重量部、オガ屑20〜25重量部、石膏3〜5重量部から構成したものが好ましい。
【0020】本発明に係る調湿性成形物の製造方法で、積層体を圧縮成形する場合、板状、ブロック状、半円板状などいかなる形状に成形を行ってもよい。
【0021】
【作用】本発明に係る調湿性成形物では、保湿を必要とする空間と雰囲気との間の壁を形成するとき、雰囲気側に防湿面を向け、保湿を必要とする空間側にその反対面を向けて配置される。調湿性成形物は、防湿面により雰囲気の湿分を遮断する。その反対面は、調湿性物質により保湿を必要とする空間の調湿を行う。すなわち、調湿性成形物は、温度の上昇に伴い放湿を行い、温度の降下に伴い吸水・吸着を行う。雰囲気の湿分を遮断することによって、雰囲気の湿度が保湿を必要とする空間の保湿に影響を及ぼすのを防ぐことができる。
【0022】調湿性成形物は、防湿面からその反対面にかけて調湿性物質の混合割合が連続的または段階的に増加した傾斜化構造を有しており、強度が大きく、耐久性が高い。
【0023】本発明に係る調湿性成形物の製造方法では、水硬性物質および複数の混合物を積層し、硬化させることにより、容易に調湿性成形物を製造することができる。
【0024】
【実施例】以下、図面に基づき本発明の第1および第2実施例を説明する。まず、本発明の第1実施例について説明する。調湿性成形物10は、以下のようにして製造した。まず、第1層を構成する水硬性物質と、第2層〜第5層を構成する4つの混合物とを製造する。第1層〜第5層の混合物の原料および分量を表1に示す。
【0025】
【表1】


【0026】表1からわかるように、第1層はゼオライトを含んでおらず、第2層から第5層へとゼオライトの混合割合が増加している。使用したセメントは、市販のポルトランドセメント(商品名「白色ポルトランドセメント」小野田セメント株式会社製)および早強セメント(商品名「小野田早強ポルトランドセメント」小野田セメント株式会社製)であり、第5層には前者の、そして第1層から第4層にかけては後者のセメントを他の調合原料と混合して使用した。
【0027】使用したゼオライトは、天然ゼオライトの粉粒体を500〜600℃で30〜40分、加熱処理し、活性化したものである。ゼオライトは、活性化により調湿作用を有して、温度の上昇に伴い放湿を行い、温度の降下に伴い吸水・吸着作用を行うようになる。
【0028】各層ごとに、表1に示す原料のうちセメントと水とを除く原料を充分に攪拌し、攪拌後、この混合物がスラリー状態とならない程度に水を添加する。各層で水和反応による発熱が完全に終了したことを確認した後、この混合物に表1に示す分量のセメントを添加し、充分に攪拌する。セメントを発熱終了後に添加するのは、製造された調湿性成形物に反りや欠けができるのを防ぐためである。
【0029】図1(A)〜(C)に示すように、こうして準備した第1層11、第2層12、第3層13、第4層14、第5層15の各混合物は、泥しょう体である。これらを金型に入れる。金型21は、型サイズが83mm×153mmの両押金型である。金型21は、両方のプレス・ダイ22を吸水シートで覆った後、この吸水シートがプレス・ダイと密着するように水をかけて準備される。
【0030】混合物は、図1(A),(B)に示すように、第1層11から順にそれぞれ平坦になるよう金型内に積層する。各層を積層する順は、ゼオライトの混合割合が増加する順となる。積層終了後、図1(C)に示すように、積層体を金型から取り出し、油圧プレス装置23により100〜250kgf/cm2 の圧力で1〜30秒間、両押プレスをかけ、圧縮成形する。
【0031】図1(D)に示すように、この成形体を内部の水分が外部に放出しないよう、ビニール袋24で密閉する。第5層15を下側にして恒温槽25の中に置き、70〜90℃の温度で1〜5時間程度、前養生する。前養生後、図1(E)に示すように、前養生体に対してオートクレーブ26により180℃の温度で4時間、本養生を行い、前養生体を充分に硬化させる。こうして、図1(F)に示すように、83mm×153mm×12mmの大きさの調湿性成形物10が製造された。
【0032】次に、本発明の第2実施例を説明する。調湿性成形物は、以下のようにして製造された。まず、第1層を構成する水硬性物質と、第2層〜第5層を構成する4つの混合物とを製造する。第1層〜第5層の原料および分量を表2に示す。
【0033】
【表2】


【0034】表2からわかるように、第1層はオガ屑を含んでおらず、第2層から第5層へとオガ屑の混合割合が増加している。使用したセメント、石膏は、第1実施例のものと同一のものである。使用したオガ屑は、ブナのオガ屑である。
【0035】原料および分量以外は、第1実施例と同様の方法により行った。こうして、83mm×153mm×12mmの大きさの調湿性成形物が製造された。
【0036】図1に示すように第1実施例および第2実施例により製造された調湿性成形物10は、第1層11による防湿面10aを有し、防湿面10aからその反対面10bにかけて第2層12から第5層15へとゼオライト又はオガ屑の混合割合が段階的に増加している。
【0037】次に、第1実施例および第2実施例により製造された調湿性成形物10の作用および効果について説明する。第1実施例の調湿性成形物を、それぞれ粒径の異なるゼオライトを使用して3種類、製造した。それらは、ゼオライトの平均粒径が0.35mm未満のもの(以下、「FZ/A」という。)、0.35〜0.7mmのもの(以下、「MZ/A」という。)、0.7〜1.2mmのもの(以下、「CZ/A」という。)である。
【0038】第2実施例の調湿性成形物は、それぞれサイズの異なる木片を使用して2種類、製造した。それらは、オガ屑および破砕片のサイズが2.5mm未満のもの(以下、「FW/A」という。)、2.5mmより大きいもの(以下、「MW/A」という。)である。
【0039】また、比較のため、ゼオライトを加えない第1実施例の第1層の原料のみから成るケイ酸カルシウム系コンクリート成形体(以下、「ALC」という。)と、平均粒径0.35〜0.7mmのゼオライト2重量部とセメント1重量部とから成る成形体(以下、「Zeo」という。)と、アメリカ産のツガの木塊(以下、「Wood」という。)とを準備した。
【0040】これらの試料FZ/A、MZ/A、CZ/A、FW/A、MW/A、ALC、ZeoおよびWoodに対し、吸放湿試験と、最大吸水量試験および最大放水量試験と、寸法安定性試験と、3点曲げ試験と、寒冷暴露試験とを行った。
【0041】吸放湿試験は、試料に対し、気温20℃、RH60%の条件と、気温20℃、RH15%の条件とを96時間サイクルで繰り返して行った。この吸放湿試験の結果を図2〜図4に示す。
【0042】図3および図4から、調湿性成形物FZ/A、MZ/A、CZ/A、FW/A、MW/Aは、WoodやALCに比べて顕著な吸放湿特性を示すことがわかる。これらの調湿性成形物の性能は、Zeoとほぼ同等であり、特に、初期応答性が良好であることがわかる。
【0043】最大吸水量試験および最大放水量試験は、試料を20℃の水に96時間含浸後、最大吸水量(吸湿率)を測定し、さらにこの試料を85℃で96時間強制的に加熱乾燥後、最大放水量(放湿量)を測定して行った。この最大吸水量試験および最大放水量試験の結果を図5および図6に示す。
【0044】図5および図6から、調湿性成形物FZ/A、MZ/A、CZ/A、FW/A、MW/Aは、ALCに比べて1.5倍程度の最大吸水量および最大放水量を有し、Zeoとほぼ同等の性能を有していることがわかる。
【0045】寸法安定性試験は、各試料について、20℃の気乾状態と、20℃の気乾状態から20℃の水に96時間含浸後の状態と、さらに85℃で96時間強制的に加熱乾燥後の状態とで、図7(A)および図7(B)に示す9つの寸法を測定した。この寸法安定性試験の結果を図8および図9に示す。
【0046】図8および図9から、調湿性成形物FZ/A、MZ/A、CZ/A、FW/A、MW/Aは、Woodに比べて、膨張率が平面方向で最大1/25倍、厚さ方向で最大1/12倍で、収縮率が平面方向で最大1/53倍、厚さ方向で最大1/7倍であって、寸法安定性が優れており、特に、平面方向の寸法安定性が極めて優れていることがわかる。
【0047】3点曲げ試験は、各試料を60℃、RH10%で48時間保った後、「建築用ボード類の曲げ試験方法(JIS A1408)」に準拠して行った。この試験は、図10に示すように、各試料を30.00mm(2L)の幅で支持し、その中央に0.1mm/分のクロスヘッド速度で破壊荷重Wを加えて行った。破壊応力σf は、試料の板厚を2h、板幅をbとするとき、σf =3WL/4bh2 の算出式で求めた。この3点曲げ試験の結果を図11に示す。
【0048】図11から、ゼオライト系の調湿性成形物FZ/A、MZ/A、CZ/Aは、Woodに比べて強度が上回っていることがわかる。また、これらの試料は、ワイブル分布の形状パラメータmも高い値を示すことから、材料の均一性も高いと考えられる。特に、ゼオライト系の調湿性成形物FZ/A、MZ/A、CZ/Aは、建築・家具用材料として使用するのに充分な強度および再現性を有していると判断できる。この強度および再現性は、主として、ゼオライトとケイ酸カルシウム系コンクリートとに傾斜化構造を付与したことにより、クラックの偏向や粒子分散強化などを生じ、最終破壊を引き起こすまでのクラック伝播抵抗が増加したことに起因すると推察される。
【0049】また、木質系の調湿性成形物FW/A、MW/Aも、比較的、均一性が良好であることがわかる。木質系の調湿性成形物FW/A、MW/Aは、混合物の組成成分を変えたり、プレス圧力を変えたりすることにより、さらに強度特性を向上させることができると考えられる。
【0050】寒冷暴露試験は、各試料を1992年12月から1993年3月の冬季間、札幌市内の風雪に曝される場所で、直射日光が当たるところと日陰のところとに置いて行った。
【0051】この結果、調湿性成形物FZ/A、MZ/A、CZ/A、FW/A、MW/Aは、いずれも亀裂、層間剥離などの欠陥や、それに伴う欠損が発生しなかった。このことから、調湿性成形物は、いずれも北海道のような寒冷地でも充分、使用できると判断できる。
【0052】このような調湿性成形物10を建物の壁材として使用し、保湿を必要とする室内と屋外との間の壁を形成するとき、屋外側に防湿面10aを向け、室内側にその反対面10bを向けて配置する。調湿性成形物10は、防湿面10aにより屋外の湿分を遮断する。その反対面10bは、含まれるゼオライトまたはオガ屑により室内の調湿を行う。すなわち、ゼオライトまたはオガ屑は、温度の上昇に伴い放湿を行い、温度の降下に伴い吸水・吸着を行う。屋外の湿分を遮断することによって、屋外の湿度が室内の保湿に影響を及ぼすのを防ぐことができる。
【0053】調湿性成形物10は、防湿面10aからその反対面10bにかけてゼオライトまたはオガ屑の混合割合が段階的に増加した傾斜化構造を有しており、防湿面10aとその反対面10bとの間に成分の急激な差異を有しない。一般に物体は成分の急激な差異のある部分から割れるものであるが、調湿性成形物10はそのような差異を有しないため、強度が大きく、耐久性が高い。
【0054】一般のコンクリート壁材では結露や凍害を生じる欠点があり、木材の板壁では燃えやすい欠点があったが、調湿性成形物10の資材は結露や凍害を生じないうえに、耐火性を有している。
【0055】調湿性成形物10の資材は、屋外の湿分の遮断と、室内の調湿とを内外壁一体型の単体で行うことができるので、施工が簡単でコストが安い。調湿性成形物10は、コンクリートに比べて軽量なゼオライトまたはオガ屑を含むため、一般のコンクリート壁材に比べて軽量である。
【0056】調湿性成形物10は、第1層を構成する水硬性物質と、第2層〜第5層を構成する4つの混合物とを順に積層し、養生により硬化させることによって、容易に製造することができる。調湿性成形物10は、有機系接着剤や樹脂などを全く使用せずに再現性良く製造することができる。
【0057】調湿性成形物10は、壁材などの建築用資材や家具用資材として適しており、これらに用いることによって、より快適な生活空間、環境および理想的な貯蔵空間を容易に提供することができるものである。
【0058】
【発明の効果】本発明に係る調湿性成形物によれば、保湿を必要とする空間の調湿を雰囲気の影響を受けずに行うことができ、雰囲気の湿分の遮断と、保湿を必要とする空間の調湿とを単体で行うことができるので、施工が簡単でコストが安く、また、防湿面からその反対面にかけて水硬性物質に対する調湿性物質の混合割合が連続的または段階的に増加しているので、耐久性が高い。
【0059】本発明に係る調湿性成形物の製造方法によれば、本発明に係る調湿性成形物を容易に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1実施例の調湿性成形物の製造方法を示す概略工程図である。
【図2】本発明の第1実施例および第2実施例の調湿性成形物の吸放湿試験条件を示すグラフである。
【図3】本発明の第1実施例の調湿性成形物の吸放湿試験結果を示すグラフである。
【図4】本発明の第2実施例の調湿性成形物の吸放湿試験結果を示すグラフである。
【図5】本発明の第1実施例および第2実施例の調湿性成形物の最大吸水量試験結果を示すグラフである。
【図6】本発明の第1実施例および第2実施例の調湿性成形物の最大放水量試験結果を示すグラフである。
【図7】本発明の第1実施例および第2実施例の調湿性成形物の寸法安定性試験の際に、調湿性成形物の(A)平面、(B)中央断面の寸法測定を行った箇所を示す説明図である。
【図8】本発明の第1実施例および第2実施例の調湿性成形物の膨張率を示す寸法安定性試験結果を示すグラフである。
【図9】本発明の第1実施例および第2実施例の調湿性成形物の収縮率を示す寸法安定性試験結果を示すグラフである。
【図10】本発明の第1実施例および第2実施例の調湿性成形物の(A)正面、(B)側面により3点曲げ試験の試験方法を示す説明図である。
【図11】本発明の第1実施例および第2実施例の調湿性成形物の3点曲げ試験結果を示すグラフである。
【図12】従来技術の説明のため、調湿性を必要とする一般的状況を示す概略図である。
【符号の説明】
10 調湿性成形物
11 第1層
12 第2層
13 第3層
14 第4層
15 第5層
21 金型
23 油圧プレス装置
25 恒温槽
26 オートクレーブ

【特許請求の範囲】
【請求項1】水硬性物質と調湿性物質とから成り、この水硬性物質による防湿面を有し、この防湿面からその反対面にかけて前記水硬性物質に対する前記調湿性物質の混合割合が連続的または段階的に増加した混合物から成ることを特徴とする調湿性成形物。
【請求項2】前記水硬性物質はケイ酸カルシウム水和物を主成分とし、前記調湿性物質は多孔性粉粒体または木屑から成ることを特徴とする請求項1記載の調湿性成形物。
【請求項3】前記多孔性粉粒体はゼオライトから成ることを特徴とする請求項2記載の調湿性成形物。
【請求項4】ケイ酸質原料と石灰質原料とを混合して成る水硬性物質と、ケイ酸質原料と石灰質原料と調湿性物質とを混合して成り、この調湿性物質の混合割合がそれぞれ異なる複数種の混合物とをそれぞれ製造する製造過程と、前記製造過程で得た水硬性物質と前記複数の混合物とを、前記調湿性物質の混合割合が増加または減少する順に積層する積層過程と、前記積層過程による積層体を硬化させる硬化過程とを、有することを特徴とする調湿性成形物の製造方法。
【請求項5】前記水硬性物質および前記複数の混合物は水を混合して成る泥しょう体であり、前記積層過程と前記硬化過程との間に、前記積層体を圧縮成形する成形過程を有し、前記硬化過程は前記積層体を養生により硬化させることを特徴とする請求項4記載の調湿性成形物の製造方法。
【請求項6】前記水硬性物質および前記複数の混合物は粉粒体であり、前記積層過程と前記硬化過程との間に、前記積層体に水を加えて圧縮成形する成形過程を有し、前記硬化過程は前記積層体を養生により硬化させることを特徴とする請求項4記載の調湿性成形物の製造方法。
【請求項7】前記調湿性物質は、多孔性粉粒体または木屑から成ることを特徴とする請求項4,5または6記載の調湿性成形物の製造方法。
【請求項8】前記多孔性粉粒体はゼオライトから成ることを特徴とする請求項7記載の調湿性成形物。

【図1】
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【図6】
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【図7】
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【図10】
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【図2】
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【図3】
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【図8】
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【図12】
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【図4】
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【図5】
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【図9】
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【図11】
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【特許番号】特許第3365655号(P3365655)
【登録日】平成14年11月1日(2002.11.1)
【発行日】平成15年1月14日(2003.1.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平5−200963
【出願日】平成5年7月21日(1993.7.21)
【公開番号】特開平7−31876
【公開日】平成7年2月3日(1995.2.3)
【審査請求日】平成12年7月21日(2000.7.21)
【出願人】(591074736)宮城県 (60)
【参考文献】
【文献】特開 平3−125739(JP,A)
【文献】特開 平1−308622(JP,A)
【文献】特開 昭63−134032(JP,A)