説明

調湿用ホース

【課題】空気の調湿を無風状態で実施できる調湿用ホースを提供する。
【解決手段】調湿用ホースのホース本体12は、形状保持用の管体16と、選択透過膜18と、内側保護層20と、外側保護層22とを備えている。管体16は、断面が円筒状を呈し、内周面と外周面とにわたって水蒸気を含む空気が流通可能に形成されている。選択透過膜18は、管体16の外周面を覆うように形成され水蒸気を除いた空気の透過係数を水蒸気の透過係数よりも小さくしたものである。内側保護層20は、選択透過膜18の内周面を覆うように形成され、外側保護層22は、選択透過膜18の外周面を覆うように形成されている。各保護層20、22は、水蒸気を含む空気が各保護層20、22の厚さ方向と、厚さ方向と交差する方向の双方に水蒸気を含む空気が流通可能に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調湿用ホースに関する。
【背景技術】
【0002】
空気中の水分を除去するエアドライヤが提供されている(特許文献1参照)。
このエアドライヤでは、水分透過性を有する中空糸膜からなる中空糸膜モジュールをチューブに組み込み、中空糸膜モジュールの気体通路に水分を含む空気を流すと共に、中空糸膜モジュール外部とチューブとの間に形成されるドライヤ室に乾燥空気を流通させることで、気体通路に流れる空気から水分を除去し、乾燥した空気を得るようにしている。
このようなエアドライヤは、圧縮空気を空気圧シリンダなどの空気圧作動機器に供給する空気回路に設けられるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−29794号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記エアドライヤを室内用の空調装置に適用して室内の空気の除湿を行うことが考えられる。
この場合、室内の空気をエアドライヤの中空糸膜モジュールの気体通路に導入すると共に、気体通路から排出される除湿された空気を室内に戻すため、室内とエアドライヤとの間で室内の空気を強制的に循環させる必要がある。
したがって、室内において局部的な空気の流れが発生することになり、室内に居るユーザーにとって不快感を与えることが懸念される。
また、美術館などにおいて展示ケース(展示室)内に書画、絵画などのような局部的な風を受けると劣化してしまうような展示物がある場合には局部的な風の発生を抑制しつつ除湿を行うことが好ましい。
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、空気の調湿を無風状態で実施することができる調湿用ホースを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の調湿用ホースは、断面が筒状を呈し内周面と外周面とにわたって水蒸気を含む空気が流通可能に形成された形状保持用の管体と、前記管体の内周面あるいは外周面を覆うように形成され水蒸気を除いた空気の透過係数を水蒸気の透過係数よりも小さくした選択透過膜とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、調湿用ホースに湿潤空気あるいは乾燥空気を流通させることにより、水蒸気が選択透過膜を透過して調湿用ホースの周囲の空気の加湿あるいは除湿を行うので、空気の調湿を無風状態で行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】実施の形態に係る調湿用ホース10の正面図である。
【図2】図1のAA線断面図である。
【図3】調湿用ホース10を用いて住居の部屋30の空気の調湿を行う場合の構成例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に本発明の実施の形態について図面を参照して説明する。
図1に示すように、本実施の形態に係る調湿用ホース10は、ホース本体12と、ホース本体12の両端に設けられた継手14とを含んで構成されている。
図2に示すように、ホース本体12は、形状保持用の管体16と、選択透過膜18と、内側保護層20と、外側保護層22とを備えている。
【0009】
管体16は、図2に示すように、本実施の形態では、断面が円筒状を呈し、内周面と外周面とにわたって水蒸気を含む空気が流通可能に形成されている。
管体16は、円筒状の形態を保持するに足る剛性を有しており、本実施の形態では、可撓性を有している。
このような管体16を構成する材料として、ナイロン、PET(ポリエチレンテレフタレート)など従来公知の様々な合成樹脂材料が使用可能である。
なお、管体16は、可撓性を有さないものであっても良く、この場合は、管体16として銅やアルミニウムなど従来公知の金属材料を用いても良い。
本実施の形態では、管体16の内周面と外周面とにわたって貫通する多数の貫通孔24が互いに間隔をおいて形成されており、これら多数の貫通孔24を介して内周面と外周面とにわたって水蒸気を含む空気が流通できるよう構成されている。
なお、管体16は、その内周面と外周面とにわたって水蒸気を含む空気が流通できるものであればよいのであり、実施の形態のように貫通孔24が形成される形態に限定されるものではなく、例えば合成樹脂製の繊維が網目状に構成されたものであってもよい。
また、管体16の内径、外径、厚さは特に限定されるものではなく、空気の流通が円滑に行われるに足る寸法であればよい。本実施の形態では、管体16の内径は8mm、外径は12mm、厚さは2mmである。
また、管体16の断面形状は筒状であればよく、円筒状に限定されるものではなく、楕円形の筒状、三角形の筒状、四角形の筒状、多角形の筒状など任意である。
【0010】
選択透過膜18は、図2に示すように、管体16の外周面を覆うように形成され水蒸気を除いた空気の透過係数を水蒸気の透過係数よりも小さくしたものである。
このような選択透過膜18を構成する材料として、シリコーンゴムやポリイミドなど従来公知の様々な高分子材料からなる多孔質膜など従来公知のさまざまな材料が使用可能である。
選択透過膜18は、水蒸気を除いた空気の透過係数をK1とし、水蒸気の透過係数をK2とした場合、K2/K1>100を満たすことが、選択透過膜18による室内の空気の加湿、除湿の性能を十分に確保する上で好ましい。
なお、透過係数kは以下の式(1)によって定義される。
Q=k(S・ΔP)/δ (1)
ただし、
Q:水蒸気透過流量または水蒸気を除いた空気の透過流量
k:透過係数
S:膜面積
ΔP:水蒸気分圧差または水蒸気を除いた空気の分圧差
δ:膜厚
選択透過膜18の厚さは、例えば、10μm〜50μm程度である。
選択透過膜18は、可撓性を有している。
【0011】
内側保護層20は、図2に示すように、選択透過膜18の内周面を覆うように形成されている。
外側保護層22は、図2に示すように、選択透過膜18の外周面を覆うように形成されている。
内側保護層20および外側保護層22は、水蒸気を含む空気が内側保護層20および外側保護層22の厚さ方向と、厚さ方向と交差する方向の双方に水蒸気を含む空気が流通可能に形成されている。
なお、内側保護層20および外側保護層22は、水蒸気を含む空気が内側保護層20および外側保護層22の厚さ方向のみ水蒸気を含む空気が流通可能に形成されてもよい。
しかしながら、本実施の形態のようにすると、内側保護層20および外側保護層22のうち、管体16の貫通孔24に対応する箇所を水蒸気を含む空気が流通することは無論のこと、内側保護層20および外側保護層22のうち、貫通孔24に対応する箇所を除く箇所においても水蒸気を含む空気が流通するので、単位時間当たりに選択透過膜18を透過する水蒸気の量を確保する上でより有利となる。
内側保護層20および外側保護層22としてナイロンあるいはPETなど従来公知の様々な高分子材料からなるメンブレンフィルターを用いることができる。
内側保護層20および外側保護層22の厚さは、例えば、100μm〜500μm程度である。
内側保護層20および外側保護層22は可撓性を有している。
内側保護層20および外側保護層22は、選択透過膜18の厚さ方向の両面を覆うことにより、調湿用ホースの製作時あるいは設置時において選択透過膜18が物に接触したとしても損傷を受けにくくし、また、塵埃などが選択透過膜18に直接付着して選択透過膜18の機能が低下することを防止している。これにより、調湿用ホースの製造作業時の作業性の向上、設置作業時の取り扱いの容易化、設置後の耐久性の向上が図られている。
なお、本実施の形態では、内側保護層20および外側保護層22の双方が設けられている場合について説明するが、内側保護層20および外側保護層22の何れか一方のみが設けられていてもかまわない。
しかしながら、本実施の形態のように内側保護層20および外側保護層22の双方が設けられていると、選択透過膜18を損傷や塵埃の付着から保護する上でより有利となる。
【0012】
上述したように、管体16、選択透過膜18、内側保護層20、外側保護層22は可撓性を有しており、したがって、調湿用ホース10は延在方向と交差する方向に屈曲可能に構成されている。
【0013】
また、図1に示すように、継手14は、ホース本体12の両端に結合されており、ホース本体12は継手14を介して後述する空調装置34(図3)の配管に接続される。
図1に示すように、継手14は、ホース本体12の両端の内周面に挿入され締め付け具26によりホース本体12の外周から締め付けられることでホース本体12の両端に結合されている。
このような継手14として従来公知の様々なものが使用可能である。
【0014】
次に、調湿用ホース10の作用効果について説明する。
図3は調湿用ホース10を用いて住居の部屋30の空気の調湿を行う場合の構成例を示す説明図であり、部屋30を正面から見た状態を示している。
部屋30の天井に沿って調湿用ホース10が設置されている。
部屋30には、室内の空気の湿度を検出する湿度センサ32が設けられている。
部屋30の外部には、空調装置34が設置されている。
空調装置34は、第1の配管36を介して調湿用ホース10の一端に連通され、第2の配管38を介して調湿用ホース10の他端に連通されている。
空調装置34は、加湿した湿潤空気あるいは除湿した乾燥空気を第1、第2の配管36、38を介して調湿用ホース10との間で流通(循環)させるものである。
すなわち、空調装置34は、湿潤空気あるいは乾燥空気を第1の配管36を介して調湿用ホース10に供給すると共に、調湿用ホース10を流通した空気を第2の配管38を介して回収し、回収した空気を加湿あるいは除湿して再び第1の配管36に供給する。
空調装置34は、予め設定された基準湿度H0と、湿度センサ32で検出された室内湿度Hsとの差分がゼロとなるように、調湿用ホース10に供給する空気を調湿するものである。
【0015】
まず、湿度センサ32の検出結果が室内湿度Hs<基準湿度H0であり、したがって、空調装置34による室内の空気の加湿がなされる場合について説明する。
この場合、空調装置34は、調湿用ホース10に湿潤空気を供給する。
湿潤空気は、調湿用ホース10の管体16の内側を通る。
このとき、管体16の内側の空気(選択透過膜18の内側の空気)と、外側保護層22の外側の空気(選択透過膜18の外側の空気)との間において、湿度の違いに応じた水蒸気分圧の差が発生することから、湿潤空気の水蒸気は選択透過膜18の内側から選択透過膜18の外側に向かって透過する。
この結果、選択透過膜18の外側の空気に水蒸気が与えられることによって室内の空気の加湿がなされる。
また、水蒸気が選択透過膜18を透過する際に空気の流れは発生せず、無風状態で室内の空気の加湿がなされる。
このような動作が、室内湿度Hsが基準湿度H0に到達するまでなされる。
【0016】
次に、湿度センサ32の検出結果が室内湿度Hs>基準湿度H0であり、したがって、空調装置34による室内の空気の除湿がなされる場合について説明する。
この場合、空調装置34は、調湿用ホース10に乾燥空気を供給する。
乾燥空気は、調湿用ホース10の管体16の内側を通る。
このとき、管体16の内側の空気(選択透過膜18の内側の空気)と、外側保護層22の外側の空気(選択透過膜18の外側の空気)との間において、湿度の違いに応じた水蒸気分圧の差が発生することから、室内の空気の水蒸気は選択透過膜18の外側から選択透過膜18の内側に向かって透過する。
この結果、選択透過膜18の外側の空気から水蒸気が奪われることによって室内の空気の除湿がなされる。
また、水蒸気が選択透過膜18を透過する際に空気の流れは発生せず、無風状態で室内の空気の除湿がなされる。
このような動作が、室内湿度Hsが基準湿度H0に到達するまでなされる。
【0017】
なお、選択透過膜18の内側の空気圧をPin、外側保護層22の外側の空気圧をPoutとした場合、以下に例示するように、空調装置34により空気圧Pinを空気圧Poutよりも大きくあるいは小さく調整することにより加湿あるいは除湿の能力を向上させることができる。
1)室内の空気を加湿する場合は、空気圧Pin>空気圧Poutとすれば、選択透過膜18の内側の水蒸気分圧が選択透過膜18の外側の水蒸気分圧に対してより大きくなるため、単位時間当たりに水蒸気が選択透過膜18の内側から外側に透過する量を多くすることができ、加湿の能力を向上させることができる。
2)室内の空気を除湿するときは、空気圧Pin<空気圧Poutとすれば、選択透過膜18の内側の水蒸気分圧が選択透過膜18の外側の水蒸気分圧に対してより小さくなるため、単位時間当たりに水蒸気が選択透過膜18の外側から内側に透過する量を多くすることができ、除湿の能力を向上させることができる。
【0018】
以上説明したように、本実施の形態によれば、室内に設置した調湿用ホース10に湿潤空気あるいは乾燥空気を流通させることにより、水蒸気が選択透過膜18を透過して室内の空気の加湿あるいは除湿を行うので、調湿用ホース10の周囲の空気である室内の空気の調湿を無風状態で行うことができる。
したがって、室内において局部的な空気の流れを抑制できるため、室内に居るユーザーにとって不快感を与えることなく室内の空気の加湿あるいは除湿を行うことができる。
【0019】
また、本実施の形態によれば、内側保護層20および外側保護層22は、水蒸気を含む空気が内側保護層20および外側保護層22の厚さ方向と、厚さ方向と交差する方向の双方に水蒸気を含む空気が流通可能に形成されている。
したがって、管体16の構造に拘わらず、内側保護層20および外側保護層22の全域に水蒸気を含む空気が流通するので、単位時間当たりに選択透過膜18を透過する水蒸気の量を確保する上で有利となる。
【0020】
また、本実施の形態によれば、管体16、選択透過膜18、内側保護層20、外側保護層22は可撓性を有し、調湿用ホース10は延在方向と交差する方向に屈曲可能に構成されているため、調湿用ホース10の設置場所の形状や面積に応じて調湿用ホース10の形状を自由に変えることでき設置の自由度を確保する上で有利となる。
【0021】
なお、本実施の形態では、調湿用ホース10を住居の部屋の天井に設置した場合について説明したが、調湿用ホース10の設置場所は、空気の調湿を行う場所であればよく、限定されるものではない。
例えば、調湿用ホース10を住居の押入れなどの収納スペースの任意箇所に設置してもよい。
この場合は、収納スペースに収納された物品が局部的な風により劣化することを抑制しつつ収納スペース内の空気の加湿あるいは除湿を行うことができる。
また、調湿用ホース10を美術館などにおける絵画や書画などの展示品が収容されている展示ケース(展示室)の任意箇所に設置してもよい。
この場合は、展示ケース(展示室)内に収納された展示物が局部的な風により劣化することを抑制しつつ展示ケース(展示室)内の空気の加湿あるいは除湿を行うことができる。また、局部的な風が抑制されるため、広いスペースをむら無く調湿することも期待できる。
また、調湿用ホース10は、筒状であり細長形状であることから、室内や展示ケースの天井面、床面、壁面あるいはそれらが交差する隅部など何れの箇所にも設置することができ、また、設置スペースも少なくて済むため、設置場所の制約が少なく設置作業の容易化を図る上で有利となる。
【符号の説明】
【0022】
10……調湿用ホース、12……ホース本体、14……継手、16……管体、18……選択透過膜、20……内側保護層、22……外側保護層、24……貫通孔、26……締め付け具。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面が筒状を呈し内周面と外周面とにわたって水蒸気を含む空気が流通可能に形成された形状保持用の管体と、
前記管体の内周面あるいは外周面を覆うように形成され水蒸気を除いた空気の透過係数を水蒸気の透過係数よりも小さくした選択透過膜と、
を備えることを特徴とする調湿用ホース。
【請求項2】
前記選択透過膜は、水蒸気を除いた空気の透過係数をK1とし、水蒸気の透過係数をK2とした場合、K2/K1>100を満たす、
ことを特徴とする請求項1記載の調湿用ホース。
【請求項3】
前記選択透過膜は前記管体の外周面に設けられ、
前記選択透過膜の内周面を覆うように形成された内側保護層と、前記選択透過膜の外周面を覆うように形成された外側保護層との一方または双方をさらに備え、
前記内側保護層および前記外側保護層は、水蒸気を含む空気が前記前記内側保護層および前記外側保護層の厚さ方向において流通可能に形成されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の調湿用ホース。
【請求項4】
前記内側保護層および前記外側保護層は、それらの厚さ方向に加えて厚さ方向と交差する方向にも、水蒸気を含む空気が流通可能に形成されている、
ことを特徴とする請求項3記載の調湿用ホース。
【請求項5】
前記管体および前記選択透過膜は可撓性を有し、
前記調湿用ホースは延在方向と交差する方向に屈曲可能に構成されている、
ことを特徴とする請求項1または2記載の調湿用ホース。
【請求項6】
前記管体、前記選択透過膜、前記内側保護層、前記外側保護層は可撓性を有し、
前記調湿用ホースは延在方向と交差する方向に屈曲可能に構成されている、
ことを特徴とする請求項3または4記載の調湿用ホース。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−92231(P2013−92231A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235792(P2011−235792)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】