調理器具用脱臭装置
【課題】スペースや使用環境に制約があっても装着することが可能で、充分な面積の光触媒層を確保すると共に、光触媒層に充分な光を照射して、充分な脱臭機能を発揮することが可能な、コンパクトサイズの調理器具用脱臭装置を提供する。
【解決手段】箱状の脱臭装置本体と、その内部に設置された多孔質板11,12と導光板20と光源31、33を有し、脱臭装置本体の側面には、脱臭されるガスの導入口および排出口が形成されており、多孔質板は、連通孔を含め、表面に光触媒層が付着形成されており、さらに脱臭されるガスが導入口から導入された後に排出口から排出されるまでに、多孔質板の連通孔を通過する様に設置されており、導光板は、その光照射面が多孔質板に対向して設置されており、光源は、導光板の光導入側端面に直接または光導入側端面に対向する脱臭装置本体の側面に取付けられている調理器具用脱臭装置。
【解決手段】箱状の脱臭装置本体と、その内部に設置された多孔質板11,12と導光板20と光源31、33を有し、脱臭装置本体の側面には、脱臭されるガスの導入口および排出口が形成されており、多孔質板は、連通孔を含め、表面に光触媒層が付着形成されており、さらに脱臭されるガスが導入口から導入された後に排出口から排出されるまでに、多孔質板の連通孔を通過する様に設置されており、導光板は、その光照射面が多孔質板に対向して設置されており、光源は、導光板の光導入側端面に直接または光導入側端面に対向する脱臭装置本体の側面に取付けられている調理器具用脱臭装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器具用脱臭装置に関し、特に光触媒を用いた調理器具用脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炊き上げた御飯を炊飯器内で加温した状態で数時間保存しておくと、特有の臭気が生じることがある。特に、長時間保存した場合には臭気が強くなり、人によっては不快感が生じたり、食欲が損なわれたりする。
【0003】
このため、従来より、臭気成分を吸着する脱臭剤を装着したり、電気や熱で作動する臭気分解用触媒を装着したりして、これらの臭気を取り除くことが提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、これらは、香ばしさや甘みを感じる好ましい臭気まで取り除く恐れがある。
【0005】
そして、脱臭剤による吸着には限界があり、一定量の臭気成分を吸着した後は急激に脱臭機能が低下する。
【0006】
また、電気や熱で作動する臭気分解用触媒の場合には、触媒機能を発揮させるための機構が複雑化すると共に、加熱が食品のうま味に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0007】
このため、近年は、紫外線作動系の光触媒を装着して、好ましい臭気は残したまま、不快感を与える臭気のみを除去することが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−100069号公報
【特許文献2】特開2001−54466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
光触媒は、特定の波長の紫外光や可視光を受けると、その表面で電子を放出し正孔を生じる特徴を有しており、放出された電子が、空気中の酸素と反応して、O2−(スーパーオキサイドイオン)を発生させる一方で、生じた正孔が、空気中のH2O(水)と反応して、・OH(ヒドロキシラジカル)を発生させる。
【0010】
このO2−および・OHは、強力な酸化力を有しているため、アセトアルデヒドなどを含んだ悪臭ガス(以下、単に「ガス」とも言う)を分解して、脱臭機能を発揮することができる。
【0011】
このように、光触媒を用いた脱臭装置は、電気や熱でなく、光の照射により作動するため、複雑な機構を必要とせず、長期間の使用に際しても触媒性能が低下することがない。また、食品のうま味に悪影響を及ぼすことなく、不快感を与える臭気のみを除去することができるため、おいしさを損なうことがない。
【0012】
しかし、スペースや使用環境に多くの制約がある調理器具内で、充分な面積の光触媒層を確保しつつその表面に均一に光が照射される様にして、脱臭機能が充分に発揮される様にすることは困難であり、光触媒の脱臭機能が充分に発揮されているとは言い難い。
【0013】
そこで、本発明は、スペースや使用環境に制約があっても装着することが可能で、充分な面積の光触媒層を確保すると共に、光触媒層に充分な光を照射して、充分な脱臭機能を発揮することが可能な、コンパクトサイズの調理器具用脱臭装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、以下の各請求項に示す発明により、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。以下、各請求項の発明を説明する。
【0015】
請求項1に記載の発明は、
箱状の脱臭装置本体と、その内部に設置された多孔質板と導光板と光源を有し、
前記脱臭装置本体の側面には、脱臭されるガスの導入口および排出口が形成されており、
前記多孔質板は、連通孔を含め、表面に光触媒層が付着形成されており、さらに前記脱臭されるガスが前記導入口から導入された後に前記排出口から排出されるまでに、前記多孔質板の連通孔を通過する様に設置されており、
前記導光板は、その光照射面が前記多孔質板に対向して設置されており、
前記光源は、前記導光板の光導入側端面に直接または前記光導入側端面に対向する前記脱臭装置本体の側面に取付けられている
ことを特徴とする調理器具用脱臭装置である。
【0016】
本請求項の発明においては、連通孔を含む多孔質板の表面に光触媒層が形成されているため、単位体積当たりで大きな表面積の光触媒層を確保することができる。また、対向して設置された導光板から充分に光が照射されるため、触媒効果を充分に発揮させることができる。この結果、サイズの小さな多孔質板であっても、脱臭されるガスは光触媒層と充分に接触することができ、充分な脱臭機能を発揮することができる。
【0017】
さらに、本請求項の発明においては、光触媒層が活性化されるに際して、導光板を介して光源の光が照射されているため、多くの光源を準備する必要がなく、サイズの小さな光源であっても広い面積に光を充分に照射することができる。
【0018】
なお、「多孔質板」としては、単位体積当たりで大きな表面積を確保すると共に、ガスの通過性を充分に確保するために、平均孔径10〜1000μmの連通孔を有していることが好ましく、このような連通孔を90〜98%有する、即ち気孔率90〜98%の金属多孔質体が好ましい。また、調理器具に装着して使用される面から、無毒で耐食性を有する材料で構成されていることが好ましい。
【0019】
また、「多孔質板」は、必ずしも平板状でなく、円筒状であっても良い。この場合には、導光板も円筒状や柱状となり、ガスは円筒状の多孔質板の外部から内部へ、あるいはその逆に透過することとなる。
【0020】
また、「光触媒層が付着形成され」とは、光触媒層が付着している場合の他に、原料物質を付着させた後に酸化等で光触媒層が生成されるような場合も含む。
【0021】
導光板は、多孔質板と平行に配置されることとなるが、両者の間にガスが流れる隙間が形成されていても良いし、隙間無く配置されていても良い。
【0022】
さらに、多孔質板、導光板、光源は複数設置されていても良く、また、これらが箱体の上面、底面あるいは側面を形成するように適宜設置されていても良い。
【0023】
光源は、ガスの導入口と排出口が形成されている側面と同じ側面に設置されていても良いし、対向する側面に設置されていても良い。なお、「光源」とは、光触媒を活性化させる波長の光を発する物を指し、光には紫外線も含まれる。
【0024】
請求項2に記載の発明は、
箱状の脱臭装置本体と、その内部に設置された上下2個の多孔質板と、前記上下の多孔質板間に配置された導光板と光源を有し、
前記脱臭装置本体の1側面には、脱臭されるガスの導入口が上部多孔質板の上方に形成されると共に、脱臭されるガスの排出口が下部多孔質板の下方に形成されており、
前記上下2個の多孔質板は、連通孔を含め、表面に光触媒層が付着形成されており、さらに前記脱臭されるガスが前記導入口から導入された後に前記排出口から排出されるまでに、前記上下2個の多孔質板のそれぞれの連通孔を通過する様に設置されており、
前記導光板は、その上下の光照射面が前記多孔質板に対向して設置されており、
前記光源は、前記導光板の光導入側端面に直接または前記光導入側端面に対向する前記脱臭装置本体の側面に取付けられている
ことを特徴とする調理器具用脱臭装置である。
【0025】
本請求項の発明においては、ガス導入口とガス排出口とが同じ側面に形成され、上下2個の多孔質板間に導光板が配置されているため、ガス導入口に導入されたガスは、上部多孔質板の連通孔を通過した後、導光板に沿って移動する。移動したガスは、ガス導入口と対向する面で移動方向を反転し、その後下部多孔質板の連通孔を通過してガス排出口から排出される。
【0026】
このため、充分な長さのガス流路を確保することができる。そして、ガスは光触媒層を2度通過することになるため、光触媒層と充分に接触することができ、より確実に脱臭機能を発揮させることができる。
【0027】
また、上下2個の多孔質板間に導光板が配置されるため、装置全体をより小型化させることができる。
【0028】
なお、「上下」とは、2個の多孔質、導光板、導入口、排出口の位置関係を示すため便宜的に記述したものであり、実際の取付け、製造に際しては左右等となったり、排出口が上側になり導入口が下側になったりしても良い。
【0029】
請求項3に記載の発明は、
前記多孔質体が、導電性の多孔質体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の調理器具用脱臭装置である。
【0030】
導電性の多孔質体であると、連通孔の表面に形成された光触媒層との間で電子移動が生じやすく、光触媒が容易に電子を放出して正孔が生じるため好ましい。
【0031】
また、導電性の多孔質体であると、光触媒層の形成方法として、多孔質体内部にまで光触媒層を設けることが可能な溶融塩めっき法を採用することができるため好ましい。
【0032】
このような導電性の多孔質体としては、連通孔の表面が導電性を有するものであれば良く、例えば、金属粉末や金属繊維を焼結した多孔質体や、樹脂発泡体に金属めっきを施した多孔質体、さらにその後熱処理して得られる多孔質体などを挙げることができ、材質としては、例えば、ニッケル、ステンレス、鉄、アルミニウムなどを挙げることができる。
【0033】
請求項4に記載の発明は、
前記光触媒層が、酸化チタンまたは酸化タングステンのいずれかの層であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の調理器具用脱臭装置である。
【0034】
酸化チタンは、高活性であり化学的な安定性に優れ、光触媒としての活性は半永久的に持続する。また、人体に無害であって、資源として豊富、安価という特長を有する。
【0035】
酸化タングステンは、酸化チタンが紫外光でのみ活性を示すのに対し、可視光を用いても触媒活性が得られる。
【0036】
請求項5に記載の発明は、
前記光触媒層の厚さが、0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の調理器具用脱臭装置である。
【0037】
前記したように、導電性の多孔質体に光触媒層を形成した場合、多孔質体と光触媒層との間で電子移動が生じる。しかし、光触媒層の厚さが厚すぎた場合には、光触媒層の下層では電子移動ができなくなり、局所的にしか触媒による酸化還元反応が起こらなくなる。また、多孔質体の連通孔がつぶれて、連通孔内部に光が入りにくくなったり、ガスの流路を塞いだりする恐れがある。
【0038】
一方、光触媒層の厚さが薄すぎた場合には、均一な触媒層の形成が困難となり、薄膜が形成されていない箇所が発生して成膜面積が小さくなる。
【0039】
光触媒層の厚さが0.1〜10μmであれば、上記のような問題が発生することがない。なお、0.1〜10μmの厚さの内から、光の波長とも合う厚さを採用した場合には、光触媒が充分に活性化され、より効率的な分解処理が可能となる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、スペースや使用環境に制約があっても装着することが可能で、充分な面積の光触媒層を確保すると共に、光触媒層に充分な光を照射して、充分な脱臭機能を発揮することが可能な、コンパクトサイズの調理器具用脱臭装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施の形態の脱臭装置の要部の断面を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態の脱臭装置の要部の断面を示す図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態の脱臭装置の要部の断面を示す図である。
【図4】試験時の脱臭装置の炊飯器への取付けの様子を示す図である。
【図5】御飯を保存中の炊飯器内部のガス濃度を、測定した結果を示す図である。
【図6】御飯を保存中の炊飯器内部のガス中のH2Sの濃度を、測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0043】
[1]実施の形態
1.第1の実施の形態
本実施の形態の脱臭装置は、TiO2(酸化チタン)の微粉末からなる光触媒層を表面に形成させた2枚の多孔質板間に導光板が設置されており、光源として紫外線LEDが設けられている。なお、この脱臭装置は調理器具の例えば蓋に装着されている。
【0044】
(1)脱臭装置の構成
図1に、第1の実施の形態の脱臭装置の要部の断面を示す。図1において、11および12は、光触媒層が形成された上部多孔質板および下部多孔質板であり、20は紫外線用アクリル板を主材料とする導光板であり、31は左側の紫外線LEDであり、33は右側の紫外線LEDであり、39は左右の紫外線LED31、32の電源接続用の端子であり、41は右側のケース端面であり、42はケース側壁面であり、48、49は調理器具内のガスを導入、排出するための導入口および排出口であり、50は左側のケース端面を兼ねた石英ガラスである。また、矢印はガスの流れを示す。以上の他、ファン、パッキン、内部配線、調理器具に固定するための治具等(図示せず)を有する。
【0045】
(2)脱臭装置の動作
図1に示す様に、この脱臭装置には、図上左右両側の端面部に紫外線LED31、33が取付けられており、ケース端面を兼ねた石英ガラス50を介してこれらに対向する位置に導光板20が取付けられている。そして、導光板20の上下には、上部多孔質板11と下部多孔質板12が取付けられている。左右の紫外線LED31、33を点灯することにより、導光板20を介して上部多孔質板11、下部多孔質板12の表面に満遍なく充分な紫外線が照射される。
【0046】
そして、図示しないファンの駆動の下で調理器具内のガスが導入口48から脱臭装置内に送り込まれる。脱臭装置内に送り込まれたガスは、まず上部多孔質板11の上面に入り、上部多孔質板11内の連通孔を通過して下部多孔質板12の上面に達し、その後さらに下部多孔質板12内の連通孔を通過して下部多孔質板12の下面に達し、排出口49から排出される。この間ガスは、上部多孔質板11と下部多孔質板12の光触媒層(図示せず)に充分に接触する。この際、紫外線が照射されている光触媒層の正孔がガス中の水分に作用してOHラジカルが生成する。そして、生成したOHラジカルの作用により、悪臭の元となるH2S等の物質が分解される。なお、調理器具内のガスは、その性質上多くの水分を含んでいるためOHラジカルを充分に生成させることができる。さらに炊飯器等の場合には温度が室温に比べて高いため、悪臭の元となる物質の分解が促進される。このように、調理器具の使用中は脱臭装置が連続して作動し、調理器具内のガスは無臭の状態に保たれる。
【0047】
2.第2の実施の形態
本実施の形態の脱臭装置は、第1の実施の形態におけるケースの内面に紫外線の反射率が高いアルミめっきを施した脱臭装置である。以下、第1の実施の形態と相違する箇所のみ説明する。
【0048】
図2に、本実施の形態の脱臭装置の要部の断面を示す。図2において、43はアルミめっきの反射層である。このように、第1の実施の形態に比べて、ケースの内面に反射層43を設けているため、上部多孔質板11と下部多孔質板12への紫外線の照射は一層良好となり、脱臭機能を低下させることなく脱臭装置をより小型化することが可能となる。
【0049】
3.第3の実施の形態
本実施の形態の脱臭装置は、脱臭装置の上側内面と下側内面に導光板を取付け、多孔質板を脱臭装置の中央部と、内壁面に設置し、さらに導光板の左側端面に光源を設置した脱臭装置である。以下、本第3の実施の形態の特徴箇所のみ説明する。
【0050】
図3に、第3の実施の形態の脱臭装置の要部の断面を示す。図3において、15は中間部に取付けられた多孔質板であり、16は脱臭装置内壁面に貼付けられた多孔質板であり、22は導光板であり、23はその背面の反射層(アルミめっき層)であり、34は光源であり、36は電源接続用の端子である。
【0051】
第3の実施の形態においては、光触媒層としては機能発揮に必要な波長が短い380nmのTiO2に比べて長い480nmのWO3を使用し、これに合わせて光源34として冷陰極管(CCFL)を用い、さらに導光板の本体22に紫外線透過性と耐紫外線に優れた高価な材質のものではなく、通常の材料(アクリル板)を用いている。
【0052】
第3の実施の形態においては、導入口48を通って脱臭装置内の中間部に取付けられた多孔質板15の上面に送られてきた調理器具内のガスは、多孔質板15の連通孔を通過してその下面に達し、排出口49を経て脱臭装置外へ排出される。脱臭装置の内壁面には、導光板22が設けられた上側内面と下側内面を除き多孔質板16が貼付けられているため、脱臭装置内に送りこまれたガスは、光触媒層(図示せず)に充分に接触し、悪臭の元となる物質が充分に分解される。また、脱臭装置の上側内面と下側内面に導光板22が設けられて光触媒層に充分に光が照射されるため、良好な脱臭効果が得られる。
【0053】
4.その他の実施の形態
前記の3つの実施の形態では、多孔質板と導光板は何れも平板状であったが、例えば多孔質板は円筒状であり、その外周面側に円筒状の導光板が、内周面側に円筒状の導光板が配置される様な構造であっても良い。
【0054】
[2]性能試験
1.外気を導入した場合
本発明の脱臭装置の性能試験について説明する。
図4に、試験時の脱臭装置の炊飯器への取付けの様子を示す。図4において、70は脱臭装置であり、80は炊飯器であり、81はその蒸気逃し用孔部であり、82は蓋であり、85は米(含む、水)であり、92は外気導入用細管である。なお脱臭装置70は、前記した第1の実施の形態に基づき作製されている。
【0055】
図4に示す様に、脱臭装置70を炊飯器80の蓋82に装着し、炊飯器80の蒸気逃し用孔部81から内部に外気導入用細管92を差込み、炊飯後に加温した状態で保存中の炊飯器内に脱臭装置70を通して外気を導入し、炊飯終了後の保存時の炊飯器80の上部空間のガスの濃度を測定し脱臭効果を調べた。
【0056】
(1)試験方法
光触媒素子に光を照射した場合と照射しない場合について、保温開始から所定時間経過(0、12、24時間)後のご飯100gをバイアル管に採取し、室温にて5分間静置後、ガスクロマトグラフ質量分析法にて、アセトアルデヒド濃度およびペンタナール濃度を測定した。なお、TiO2を用いた光触媒素子は大きさが1.5cm×4cmであり、光源は140mW、390nmのLEDである。また、米は「無洗米あきたこまち」(商品名)であり、水は「六甲のおいしい水」(商品名)であり、10合炊きとし、外気の導入は0.5l/minとした。
【0057】
(2)試験結果
測定結果を、図5に示す。図5において、(a)はアセトアルデヒド濃度の測定結果であり、(b)はペンタナール濃度の測定結果であり、◆を結ぶ線は光照射無し、即ち脱臭機能が発揮されていない場合の測定結果を示し、■を結ぶ線は光照射有り、即ち脱臭機能を発揮中の場合の測定結果を示している。そして、横軸は保温時間であり、縦軸は成分濃度/嗅覚閾値である。なお、嗅覚閾値とは人間の鼻で臭う限界の濃度であり、成分濃度/嗅覚閾値が1以下であればにおいを感じない。
【0058】
図5(a)、(b)より、外気導入により、保温時に悪臭の原因となるアセトアルデヒド等のガスを分解できることが分かる。
【0059】
しかし、保存中に外気を導入すると保存されている米が乾燥し、うま味等が低下する恐れがある。また、外気導入では、悪臭成分が光触媒表面に接触しないため脱臭効果が低く、悪臭成分が多い炊飯時の脱臭に好ましい方法とはいえない。
【0060】
外気導入法には上記のような問題があるため、炊飯器内のガスを循環させる方法を用いてもよい。このような方法において本発明が大きな効果を有することを以下に示す。
【0061】
2.炊飯器内のガスを循環させた場合
(1)試験方法
炊飯時および炊飯後に加温した状態で保存中の炊飯器内のガスを循環させ、ガス中のH2S濃度の時間的変化を以下の4つのケースについて測定した。
ケース1:光触媒素子が6cm角で光源には27Wのブラックライト使用
ケース2:光触媒素子が3cm角で光源には27Wのブラックライト使用
ケース3:光触媒素子が3cm角で光源は140mW、390nmのLED(注、ブラックライトと異なり、波長はシャープである)2個使用
ケース4:光照射無し
なお、米は「無洗米あきたこまち」であり、水は「六甲のおいしい水」であり、3合炊きとした。
【0062】
(2)試験結果
測定結果を、図6に示す。図6において、横軸は時間であり、縦軸はH2S濃度(ppm)であり、■を結ぶ線、△を結ぶ線、×を結ぶ線、◆を結ぶ線は、それぞれケース1、ケース2、ケース3、ケース4における炊飯時および炊飯後の保存中のH2S濃度の時間的変化を示す。
【0063】
図6から、光照射したケース1〜3のH2Sの濃度は、光照射しなかったケース4に比べて低いことが分かる。これにより、脱臭装置を設け、光触媒素子に光を照射することにより、加温保存中における炊飯器内のH2Sの濃度を低減できることが確認された。また、光触媒素子が3cm角と同じサイズであるケース2とケース3を比較するとケース2の方がH2Sの濃度が低く、本実施の形態のように光触媒としてTiO2を用いる場合、光源としては出力の小さいLEDよりも出力の大きいブラックライトを用いる方が好ましいことが確認できた。また、どちらもブラックライトを光源に用いたケース1とケース2を比較するとケース1の方がH2Sの濃度が低く、光触媒素子のサイズが3cm角よりも6cm角と大きくした方が有利であることが確認された。
【0064】
3.まとめ
以上より、コンパクトでありながら広い面積の光触媒層を確保し、さらに充分な光を照射できる本発明の脱臭装置が、炊飯器内のガスを循環させる方法において炊飯器の保温時等に大きな効果を発揮できることが分かる。
【符号の説明】
【0065】
11 上部多孔質板
12 下部多孔質板
15、16 多孔質板
20、22 導光板
23、43 反射層
31、33 紫外線LED
34 光源
36、39 端子
41 右側のケース端面
42 ケース側壁面
48 導入口
49 排出口
50 石英ガラス
70 脱臭装置
80 炊飯器
81 蒸気逃し用孔部
82 蓋
85 米
92 外気導入用細管
【技術分野】
【0001】
本発明は、調理器具用脱臭装置に関し、特に光触媒を用いた調理器具用脱臭装置に関する。
【背景技術】
【0002】
炊き上げた御飯を炊飯器内で加温した状態で数時間保存しておくと、特有の臭気が生じることがある。特に、長時間保存した場合には臭気が強くなり、人によっては不快感が生じたり、食欲が損なわれたりする。
【0003】
このため、従来より、臭気成分を吸着する脱臭剤を装着したり、電気や熱で作動する臭気分解用触媒を装着したりして、これらの臭気を取り除くことが提案されている(特許文献1)。
【0004】
しかし、これらは、香ばしさや甘みを感じる好ましい臭気まで取り除く恐れがある。
【0005】
そして、脱臭剤による吸着には限界があり、一定量の臭気成分を吸着した後は急激に脱臭機能が低下する。
【0006】
また、電気や熱で作動する臭気分解用触媒の場合には、触媒機能を発揮させるための機構が複雑化すると共に、加熱が食品のうま味に悪影響を及ぼす恐れがある。
【0007】
このため、近年は、紫外線作動系の光触媒を装着して、好ましい臭気は残したまま、不快感を与える臭気のみを除去することが提案されている(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平7−100069号公報
【特許文献2】特開2001−54466号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
光触媒は、特定の波長の紫外光や可視光を受けると、その表面で電子を放出し正孔を生じる特徴を有しており、放出された電子が、空気中の酸素と反応して、O2−(スーパーオキサイドイオン)を発生させる一方で、生じた正孔が、空気中のH2O(水)と反応して、・OH(ヒドロキシラジカル)を発生させる。
【0010】
このO2−および・OHは、強力な酸化力を有しているため、アセトアルデヒドなどを含んだ悪臭ガス(以下、単に「ガス」とも言う)を分解して、脱臭機能を発揮することができる。
【0011】
このように、光触媒を用いた脱臭装置は、電気や熱でなく、光の照射により作動するため、複雑な機構を必要とせず、長期間の使用に際しても触媒性能が低下することがない。また、食品のうま味に悪影響を及ぼすことなく、不快感を与える臭気のみを除去することができるため、おいしさを損なうことがない。
【0012】
しかし、スペースや使用環境に多くの制約がある調理器具内で、充分な面積の光触媒層を確保しつつその表面に均一に光が照射される様にして、脱臭機能が充分に発揮される様にすることは困難であり、光触媒の脱臭機能が充分に発揮されているとは言い難い。
【0013】
そこで、本発明は、スペースや使用環境に制約があっても装着することが可能で、充分な面積の光触媒層を確保すると共に、光触媒層に充分な光を照射して、充分な脱臭機能を発揮することが可能な、コンパクトサイズの調理器具用脱臭装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者は、以下の各請求項に示す発明により、上記の課題が解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。以下、各請求項の発明を説明する。
【0015】
請求項1に記載の発明は、
箱状の脱臭装置本体と、その内部に設置された多孔質板と導光板と光源を有し、
前記脱臭装置本体の側面には、脱臭されるガスの導入口および排出口が形成されており、
前記多孔質板は、連通孔を含め、表面に光触媒層が付着形成されており、さらに前記脱臭されるガスが前記導入口から導入された後に前記排出口から排出されるまでに、前記多孔質板の連通孔を通過する様に設置されており、
前記導光板は、その光照射面が前記多孔質板に対向して設置されており、
前記光源は、前記導光板の光導入側端面に直接または前記光導入側端面に対向する前記脱臭装置本体の側面に取付けられている
ことを特徴とする調理器具用脱臭装置である。
【0016】
本請求項の発明においては、連通孔を含む多孔質板の表面に光触媒層が形成されているため、単位体積当たりで大きな表面積の光触媒層を確保することができる。また、対向して設置された導光板から充分に光が照射されるため、触媒効果を充分に発揮させることができる。この結果、サイズの小さな多孔質板であっても、脱臭されるガスは光触媒層と充分に接触することができ、充分な脱臭機能を発揮することができる。
【0017】
さらに、本請求項の発明においては、光触媒層が活性化されるに際して、導光板を介して光源の光が照射されているため、多くの光源を準備する必要がなく、サイズの小さな光源であっても広い面積に光を充分に照射することができる。
【0018】
なお、「多孔質板」としては、単位体積当たりで大きな表面積を確保すると共に、ガスの通過性を充分に確保するために、平均孔径10〜1000μmの連通孔を有していることが好ましく、このような連通孔を90〜98%有する、即ち気孔率90〜98%の金属多孔質体が好ましい。また、調理器具に装着して使用される面から、無毒で耐食性を有する材料で構成されていることが好ましい。
【0019】
また、「多孔質板」は、必ずしも平板状でなく、円筒状であっても良い。この場合には、導光板も円筒状や柱状となり、ガスは円筒状の多孔質板の外部から内部へ、あるいはその逆に透過することとなる。
【0020】
また、「光触媒層が付着形成され」とは、光触媒層が付着している場合の他に、原料物質を付着させた後に酸化等で光触媒層が生成されるような場合も含む。
【0021】
導光板は、多孔質板と平行に配置されることとなるが、両者の間にガスが流れる隙間が形成されていても良いし、隙間無く配置されていても良い。
【0022】
さらに、多孔質板、導光板、光源は複数設置されていても良く、また、これらが箱体の上面、底面あるいは側面を形成するように適宜設置されていても良い。
【0023】
光源は、ガスの導入口と排出口が形成されている側面と同じ側面に設置されていても良いし、対向する側面に設置されていても良い。なお、「光源」とは、光触媒を活性化させる波長の光を発する物を指し、光には紫外線も含まれる。
【0024】
請求項2に記載の発明は、
箱状の脱臭装置本体と、その内部に設置された上下2個の多孔質板と、前記上下の多孔質板間に配置された導光板と光源を有し、
前記脱臭装置本体の1側面には、脱臭されるガスの導入口が上部多孔質板の上方に形成されると共に、脱臭されるガスの排出口が下部多孔質板の下方に形成されており、
前記上下2個の多孔質板は、連通孔を含め、表面に光触媒層が付着形成されており、さらに前記脱臭されるガスが前記導入口から導入された後に前記排出口から排出されるまでに、前記上下2個の多孔質板のそれぞれの連通孔を通過する様に設置されており、
前記導光板は、その上下の光照射面が前記多孔質板に対向して設置されており、
前記光源は、前記導光板の光導入側端面に直接または前記光導入側端面に対向する前記脱臭装置本体の側面に取付けられている
ことを特徴とする調理器具用脱臭装置である。
【0025】
本請求項の発明においては、ガス導入口とガス排出口とが同じ側面に形成され、上下2個の多孔質板間に導光板が配置されているため、ガス導入口に導入されたガスは、上部多孔質板の連通孔を通過した後、導光板に沿って移動する。移動したガスは、ガス導入口と対向する面で移動方向を反転し、その後下部多孔質板の連通孔を通過してガス排出口から排出される。
【0026】
このため、充分な長さのガス流路を確保することができる。そして、ガスは光触媒層を2度通過することになるため、光触媒層と充分に接触することができ、より確実に脱臭機能を発揮させることができる。
【0027】
また、上下2個の多孔質板間に導光板が配置されるため、装置全体をより小型化させることができる。
【0028】
なお、「上下」とは、2個の多孔質、導光板、導入口、排出口の位置関係を示すため便宜的に記述したものであり、実際の取付け、製造に際しては左右等となったり、排出口が上側になり導入口が下側になったりしても良い。
【0029】
請求項3に記載の発明は、
前記多孔質体が、導電性の多孔質体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の調理器具用脱臭装置である。
【0030】
導電性の多孔質体であると、連通孔の表面に形成された光触媒層との間で電子移動が生じやすく、光触媒が容易に電子を放出して正孔が生じるため好ましい。
【0031】
また、導電性の多孔質体であると、光触媒層の形成方法として、多孔質体内部にまで光触媒層を設けることが可能な溶融塩めっき法を採用することができるため好ましい。
【0032】
このような導電性の多孔質体としては、連通孔の表面が導電性を有するものであれば良く、例えば、金属粉末や金属繊維を焼結した多孔質体や、樹脂発泡体に金属めっきを施した多孔質体、さらにその後熱処理して得られる多孔質体などを挙げることができ、材質としては、例えば、ニッケル、ステンレス、鉄、アルミニウムなどを挙げることができる。
【0033】
請求項4に記載の発明は、
前記光触媒層が、酸化チタンまたは酸化タングステンのいずれかの層であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の調理器具用脱臭装置である。
【0034】
酸化チタンは、高活性であり化学的な安定性に優れ、光触媒としての活性は半永久的に持続する。また、人体に無害であって、資源として豊富、安価という特長を有する。
【0035】
酸化タングステンは、酸化チタンが紫外光でのみ活性を示すのに対し、可視光を用いても触媒活性が得られる。
【0036】
請求項5に記載の発明は、
前記光触媒層の厚さが、0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の調理器具用脱臭装置である。
【0037】
前記したように、導電性の多孔質体に光触媒層を形成した場合、多孔質体と光触媒層との間で電子移動が生じる。しかし、光触媒層の厚さが厚すぎた場合には、光触媒層の下層では電子移動ができなくなり、局所的にしか触媒による酸化還元反応が起こらなくなる。また、多孔質体の連通孔がつぶれて、連通孔内部に光が入りにくくなったり、ガスの流路を塞いだりする恐れがある。
【0038】
一方、光触媒層の厚さが薄すぎた場合には、均一な触媒層の形成が困難となり、薄膜が形成されていない箇所が発生して成膜面積が小さくなる。
【0039】
光触媒層の厚さが0.1〜10μmであれば、上記のような問題が発生することがない。なお、0.1〜10μmの厚さの内から、光の波長とも合う厚さを採用した場合には、光触媒が充分に活性化され、より効率的な分解処理が可能となる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、スペースや使用環境に制約があっても装着することが可能で、充分な面積の光触媒層を確保すると共に、光触媒層に充分な光を照射して、充分な脱臭機能を発揮することが可能な、コンパクトサイズの調理器具用脱臭装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明の第1の実施の形態の脱臭装置の要部の断面を示す図である。
【図2】本発明の第2の実施の形態の脱臭装置の要部の断面を示す図である。
【図3】本発明の第3の実施の形態の脱臭装置の要部の断面を示す図である。
【図4】試験時の脱臭装置の炊飯器への取付けの様子を示す図である。
【図5】御飯を保存中の炊飯器内部のガス濃度を、測定した結果を示す図である。
【図6】御飯を保存中の炊飯器内部のガス中のH2Sの濃度を、測定した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下、本発明を実施の形態に基づいて説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。本発明と同一および均等の範囲内において、以下の実施の形態に対して種々の変更を加えることが可能である。
【0043】
[1]実施の形態
1.第1の実施の形態
本実施の形態の脱臭装置は、TiO2(酸化チタン)の微粉末からなる光触媒層を表面に形成させた2枚の多孔質板間に導光板が設置されており、光源として紫外線LEDが設けられている。なお、この脱臭装置は調理器具の例えば蓋に装着されている。
【0044】
(1)脱臭装置の構成
図1に、第1の実施の形態の脱臭装置の要部の断面を示す。図1において、11および12は、光触媒層が形成された上部多孔質板および下部多孔質板であり、20は紫外線用アクリル板を主材料とする導光板であり、31は左側の紫外線LEDであり、33は右側の紫外線LEDであり、39は左右の紫外線LED31、32の電源接続用の端子であり、41は右側のケース端面であり、42はケース側壁面であり、48、49は調理器具内のガスを導入、排出するための導入口および排出口であり、50は左側のケース端面を兼ねた石英ガラスである。また、矢印はガスの流れを示す。以上の他、ファン、パッキン、内部配線、調理器具に固定するための治具等(図示せず)を有する。
【0045】
(2)脱臭装置の動作
図1に示す様に、この脱臭装置には、図上左右両側の端面部に紫外線LED31、33が取付けられており、ケース端面を兼ねた石英ガラス50を介してこれらに対向する位置に導光板20が取付けられている。そして、導光板20の上下には、上部多孔質板11と下部多孔質板12が取付けられている。左右の紫外線LED31、33を点灯することにより、導光板20を介して上部多孔質板11、下部多孔質板12の表面に満遍なく充分な紫外線が照射される。
【0046】
そして、図示しないファンの駆動の下で調理器具内のガスが導入口48から脱臭装置内に送り込まれる。脱臭装置内に送り込まれたガスは、まず上部多孔質板11の上面に入り、上部多孔質板11内の連通孔を通過して下部多孔質板12の上面に達し、その後さらに下部多孔質板12内の連通孔を通過して下部多孔質板12の下面に達し、排出口49から排出される。この間ガスは、上部多孔質板11と下部多孔質板12の光触媒層(図示せず)に充分に接触する。この際、紫外線が照射されている光触媒層の正孔がガス中の水分に作用してOHラジカルが生成する。そして、生成したOHラジカルの作用により、悪臭の元となるH2S等の物質が分解される。なお、調理器具内のガスは、その性質上多くの水分を含んでいるためOHラジカルを充分に生成させることができる。さらに炊飯器等の場合には温度が室温に比べて高いため、悪臭の元となる物質の分解が促進される。このように、調理器具の使用中は脱臭装置が連続して作動し、調理器具内のガスは無臭の状態に保たれる。
【0047】
2.第2の実施の形態
本実施の形態の脱臭装置は、第1の実施の形態におけるケースの内面に紫外線の反射率が高いアルミめっきを施した脱臭装置である。以下、第1の実施の形態と相違する箇所のみ説明する。
【0048】
図2に、本実施の形態の脱臭装置の要部の断面を示す。図2において、43はアルミめっきの反射層である。このように、第1の実施の形態に比べて、ケースの内面に反射層43を設けているため、上部多孔質板11と下部多孔質板12への紫外線の照射は一層良好となり、脱臭機能を低下させることなく脱臭装置をより小型化することが可能となる。
【0049】
3.第3の実施の形態
本実施の形態の脱臭装置は、脱臭装置の上側内面と下側内面に導光板を取付け、多孔質板を脱臭装置の中央部と、内壁面に設置し、さらに導光板の左側端面に光源を設置した脱臭装置である。以下、本第3の実施の形態の特徴箇所のみ説明する。
【0050】
図3に、第3の実施の形態の脱臭装置の要部の断面を示す。図3において、15は中間部に取付けられた多孔質板であり、16は脱臭装置内壁面に貼付けられた多孔質板であり、22は導光板であり、23はその背面の反射層(アルミめっき層)であり、34は光源であり、36は電源接続用の端子である。
【0051】
第3の実施の形態においては、光触媒層としては機能発揮に必要な波長が短い380nmのTiO2に比べて長い480nmのWO3を使用し、これに合わせて光源34として冷陰極管(CCFL)を用い、さらに導光板の本体22に紫外線透過性と耐紫外線に優れた高価な材質のものではなく、通常の材料(アクリル板)を用いている。
【0052】
第3の実施の形態においては、導入口48を通って脱臭装置内の中間部に取付けられた多孔質板15の上面に送られてきた調理器具内のガスは、多孔質板15の連通孔を通過してその下面に達し、排出口49を経て脱臭装置外へ排出される。脱臭装置の内壁面には、導光板22が設けられた上側内面と下側内面を除き多孔質板16が貼付けられているため、脱臭装置内に送りこまれたガスは、光触媒層(図示せず)に充分に接触し、悪臭の元となる物質が充分に分解される。また、脱臭装置の上側内面と下側内面に導光板22が設けられて光触媒層に充分に光が照射されるため、良好な脱臭効果が得られる。
【0053】
4.その他の実施の形態
前記の3つの実施の形態では、多孔質板と導光板は何れも平板状であったが、例えば多孔質板は円筒状であり、その外周面側に円筒状の導光板が、内周面側に円筒状の導光板が配置される様な構造であっても良い。
【0054】
[2]性能試験
1.外気を導入した場合
本発明の脱臭装置の性能試験について説明する。
図4に、試験時の脱臭装置の炊飯器への取付けの様子を示す。図4において、70は脱臭装置であり、80は炊飯器であり、81はその蒸気逃し用孔部であり、82は蓋であり、85は米(含む、水)であり、92は外気導入用細管である。なお脱臭装置70は、前記した第1の実施の形態に基づき作製されている。
【0055】
図4に示す様に、脱臭装置70を炊飯器80の蓋82に装着し、炊飯器80の蒸気逃し用孔部81から内部に外気導入用細管92を差込み、炊飯後に加温した状態で保存中の炊飯器内に脱臭装置70を通して外気を導入し、炊飯終了後の保存時の炊飯器80の上部空間のガスの濃度を測定し脱臭効果を調べた。
【0056】
(1)試験方法
光触媒素子に光を照射した場合と照射しない場合について、保温開始から所定時間経過(0、12、24時間)後のご飯100gをバイアル管に採取し、室温にて5分間静置後、ガスクロマトグラフ質量分析法にて、アセトアルデヒド濃度およびペンタナール濃度を測定した。なお、TiO2を用いた光触媒素子は大きさが1.5cm×4cmであり、光源は140mW、390nmのLEDである。また、米は「無洗米あきたこまち」(商品名)であり、水は「六甲のおいしい水」(商品名)であり、10合炊きとし、外気の導入は0.5l/minとした。
【0057】
(2)試験結果
測定結果を、図5に示す。図5において、(a)はアセトアルデヒド濃度の測定結果であり、(b)はペンタナール濃度の測定結果であり、◆を結ぶ線は光照射無し、即ち脱臭機能が発揮されていない場合の測定結果を示し、■を結ぶ線は光照射有り、即ち脱臭機能を発揮中の場合の測定結果を示している。そして、横軸は保温時間であり、縦軸は成分濃度/嗅覚閾値である。なお、嗅覚閾値とは人間の鼻で臭う限界の濃度であり、成分濃度/嗅覚閾値が1以下であればにおいを感じない。
【0058】
図5(a)、(b)より、外気導入により、保温時に悪臭の原因となるアセトアルデヒド等のガスを分解できることが分かる。
【0059】
しかし、保存中に外気を導入すると保存されている米が乾燥し、うま味等が低下する恐れがある。また、外気導入では、悪臭成分が光触媒表面に接触しないため脱臭効果が低く、悪臭成分が多い炊飯時の脱臭に好ましい方法とはいえない。
【0060】
外気導入法には上記のような問題があるため、炊飯器内のガスを循環させる方法を用いてもよい。このような方法において本発明が大きな効果を有することを以下に示す。
【0061】
2.炊飯器内のガスを循環させた場合
(1)試験方法
炊飯時および炊飯後に加温した状態で保存中の炊飯器内のガスを循環させ、ガス中のH2S濃度の時間的変化を以下の4つのケースについて測定した。
ケース1:光触媒素子が6cm角で光源には27Wのブラックライト使用
ケース2:光触媒素子が3cm角で光源には27Wのブラックライト使用
ケース3:光触媒素子が3cm角で光源は140mW、390nmのLED(注、ブラックライトと異なり、波長はシャープである)2個使用
ケース4:光照射無し
なお、米は「無洗米あきたこまち」であり、水は「六甲のおいしい水」であり、3合炊きとした。
【0062】
(2)試験結果
測定結果を、図6に示す。図6において、横軸は時間であり、縦軸はH2S濃度(ppm)であり、■を結ぶ線、△を結ぶ線、×を結ぶ線、◆を結ぶ線は、それぞれケース1、ケース2、ケース3、ケース4における炊飯時および炊飯後の保存中のH2S濃度の時間的変化を示す。
【0063】
図6から、光照射したケース1〜3のH2Sの濃度は、光照射しなかったケース4に比べて低いことが分かる。これにより、脱臭装置を設け、光触媒素子に光を照射することにより、加温保存中における炊飯器内のH2Sの濃度を低減できることが確認された。また、光触媒素子が3cm角と同じサイズであるケース2とケース3を比較するとケース2の方がH2Sの濃度が低く、本実施の形態のように光触媒としてTiO2を用いる場合、光源としては出力の小さいLEDよりも出力の大きいブラックライトを用いる方が好ましいことが確認できた。また、どちらもブラックライトを光源に用いたケース1とケース2を比較するとケース1の方がH2Sの濃度が低く、光触媒素子のサイズが3cm角よりも6cm角と大きくした方が有利であることが確認された。
【0064】
3.まとめ
以上より、コンパクトでありながら広い面積の光触媒層を確保し、さらに充分な光を照射できる本発明の脱臭装置が、炊飯器内のガスを循環させる方法において炊飯器の保温時等に大きな効果を発揮できることが分かる。
【符号の説明】
【0065】
11 上部多孔質板
12 下部多孔質板
15、16 多孔質板
20、22 導光板
23、43 反射層
31、33 紫外線LED
34 光源
36、39 端子
41 右側のケース端面
42 ケース側壁面
48 導入口
49 排出口
50 石英ガラス
70 脱臭装置
80 炊飯器
81 蒸気逃し用孔部
82 蓋
85 米
92 外気導入用細管
【特許請求の範囲】
【請求項1】
箱状の脱臭装置本体と、その内部に設置された多孔質板と導光板と光源を有し、
前記脱臭装置本体の側面には、脱臭されるガスの導入口および排出口が形成されており、
前記多孔質板は、連通孔を含め、表面に光触媒層が付着形成されており、さらに前記脱臭されるガスが前記導入口から導入された後に前記排出口から排出されるまでに、前記多孔質板の連通孔を通過する様に設置されており、
前記導光板は、その光照射面が前記多孔質板に対向して設置されており、
前記光源は、前記導光板の光導入側端面に直接または前記光導入側端面に対向する前記脱臭装置本体の側面に取付けられている
ことを特徴とする調理器具用脱臭装置。
【請求項2】
箱状の脱臭装置本体と、その内部に設置された上下2個の多孔質板と、前記上下の多孔質板間に配置された導光板と光源を有し、
前記脱臭装置本体の1側面には、脱臭されるガスの導入口が上部多孔質板の上方に形成されると共に、脱臭されるガスの排出口が下部多孔質板の下方に形成されており、
前記上下2個の多孔質板は、連通孔を含め、表面に光触媒層が付着形成されており、さらに前記脱臭されるガスが前記導入口から導入された後に前記排出口から排出されるまでに、前記上下2個の多孔質板のそれぞれの連通孔を通過する様に設置されており、
前記導光板は、その上下の光照射面が前記多孔質板に対向して設置されており、
前記光源は、前記導光板の光導入側端面に直接または前記光導入側端面に対向する前記脱臭装置本体の側面に取付けられている
ことを特徴とする調理器具用脱臭装置。
【請求項3】
前記多孔質体が、導電性の多孔質体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の調理器具用脱臭装置。
【請求項4】
前記光触媒層が、酸化チタンまたは酸化タングステンのいずれかの層であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の調理器具用脱臭装置。
【請求項5】
前記光触媒層の厚さが、0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の調理器具用脱臭装置。
【請求項1】
箱状の脱臭装置本体と、その内部に設置された多孔質板と導光板と光源を有し、
前記脱臭装置本体の側面には、脱臭されるガスの導入口および排出口が形成されており、
前記多孔質板は、連通孔を含め、表面に光触媒層が付着形成されており、さらに前記脱臭されるガスが前記導入口から導入された後に前記排出口から排出されるまでに、前記多孔質板の連通孔を通過する様に設置されており、
前記導光板は、その光照射面が前記多孔質板に対向して設置されており、
前記光源は、前記導光板の光導入側端面に直接または前記光導入側端面に対向する前記脱臭装置本体の側面に取付けられている
ことを特徴とする調理器具用脱臭装置。
【請求項2】
箱状の脱臭装置本体と、その内部に設置された上下2個の多孔質板と、前記上下の多孔質板間に配置された導光板と光源を有し、
前記脱臭装置本体の1側面には、脱臭されるガスの導入口が上部多孔質板の上方に形成されると共に、脱臭されるガスの排出口が下部多孔質板の下方に形成されており、
前記上下2個の多孔質板は、連通孔を含め、表面に光触媒層が付着形成されており、さらに前記脱臭されるガスが前記導入口から導入された後に前記排出口から排出されるまでに、前記上下2個の多孔質板のそれぞれの連通孔を通過する様に設置されており、
前記導光板は、その上下の光照射面が前記多孔質板に対向して設置されており、
前記光源は、前記導光板の光導入側端面に直接または前記光導入側端面に対向する前記脱臭装置本体の側面に取付けられている
ことを特徴とする調理器具用脱臭装置。
【請求項3】
前記多孔質体が、導電性の多孔質体であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の調理器具用脱臭装置。
【請求項4】
前記光触媒層が、酸化チタンまたは酸化タングステンのいずれかの層であることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の調理器具用脱臭装置。
【請求項5】
前記光触媒層の厚さが、0.1〜10μmであることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の調理器具用脱臭装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【公開番号】特開2011−110077(P2011−110077A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266011(P2009−266011)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000002130)住友電気工業株式会社 (12,747)
【出願人】(599109906)住友電工ファインポリマー株式会社 (203)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]