説明

調理器

【課題】 調理盤交換式の調理器であって、その調理盤を交換する際の安全性と迅速性を兼ね備えた調理器を提供することを目的とする。
【解決手段】 調理盤3が交換可能であり、調理盤3と保持部6との間に調理盤3を保持するための係合手段が介在し、調理盤3は保持部6で構成される平面に対して垂直方向に平行移動可能であり、保持部6に保持されている調理盤3の裏面の2つの場所を異なる手の指で同時に表面側に押すことが可能であり、その2つの場所を異なる手の指で同時に押すことにより、調理盤3をその表面側の方向に平行移動させて前記係合手段を解除し調理盤3を取り外すことができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、野菜やチーズなどの食料品を種々の形に調理する調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
食料品を種々の形に調理する柄付きの調理器としては、例えばおろし器やスライサーや千切り器などが存在する。そして、1つの調理器で種々の調理を行うことができるように、調理刃を有する刃板を交換可能に取り付けることができるものも数多く存在する。このような替刃式の調理器の一つは、特許文献1に記載されているように調理刃が直接形成されている刃板自体を調理盤として交換可能にした構成である。刃板が金属板であるときはその金属板に調理刃が形成され、刃板がプラスチック製であるときはそのプラスチック板に調理刃が一体に形成され、その刃板である調理盤を交換可能とするものである。また、替刃式の調理器の他の一つは、特許文献2に記載されているように、調理刃を有する刃板をプラスチック等の枠部材に固定した調理盤として組み立て、その調理盤を調理器に着脱可能に取り付けることにより、刃板を交換する構成である。
【0003】
替刃式の調理器で調理盤を交換するときは、まず、装着されている調理盤を調理器本体から手で外し、次に別の調理盤を手に持って調理器本体に取り付ける。このとき、調理盤の調理刃は露出しているので、作業が雑であったり、手が濡れていたりする場合などに調理刃で怪我をする虞がある。
【0004】
特に、従来からおろし器はおろし作業の効率を上げるために、食料品を宛がいながら移動させる調理面のほぼ全面に調理刃が設けられている。したがって、このようなおろし器を替刃式とすれば、調理盤が調理器における柄以外の大部分を占め、調理盤の表面のほぼ全面に多数の調理刃が配設されるので調理刃の露出する面積が広く、調理盤を交換する際に指などが調理刃に触れやすく危険性が高い。
【0005】
特許文献3に記載された調理器は、調理器本体に設けられたガイド溝内に調理盤を係合させ、調理器本体を水平に横切る方向に調理盤をスライドさせることにより、調理盤を着脱自在に交換できる構成である。このようなスライド式の調理器は比較的安全に調理盤を交換できるが、調理盤が比較的小さいものに限られる。太い大根などをおろすためのおろし器の調理盤は、少なくとも長さが10cmで幅が5cm程度は必要である。このような大きなサイズの調理盤を有する調理器で調理盤の着脱をスライド式にすると、調理盤を調理器本体に迅速に装着することができないのである。すなわち、調理盤を調理器本体に装着するときに、調理器本体の調理盤挿入口に調理盤をそのスライド方向と一致させるように宛がい、その一致した状態を維持させながら調理盤を挿入口に挿し込むのであるが、調理盤が大きいために作業が困難であり、調理盤の装着を迅速に行うことができない。挿し込み時に、手に持っている調理盤がぶれるので、最初に調理盤を調理盤挿入口に挿し込む作業に時間がかかるのである。さらに、調理盤が大きいとスライドすべき長さが長いために調理盤を円滑に平行移動させることが困難であり、調理盤を円滑にスライドさせることができず、調理盤の装着を迅速に行うことができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】実公昭35−28924号公報
【特許文献2】実公昭58−17570号公報
【特許文献3】実公昭60−29971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、調理盤交換式の調理器であって、その調理盤を交換する際の安全性と迅速性を兼ね備えた調理器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の請求項1は、調理器本体と調理盤とから成り、調理器本体は、柄と、調理盤の保持装置とを含み、保持装置は前記柄に取り付けられており且つ調理盤を着脱可能に保持する保持部を有し、調理盤はその表面に調理刃を有し、調理盤と保持部との間に調理盤を保持するための係合手段が介在し、調理盤は保持部で構成される平面に対して垂直方向に平行移動可能であり、保持部に保持されている調理盤の裏面の2つの場所を異なる手の指で同時に表面側に押すことが可能であり、その2つの場所を異なる手の指で同時に押すことにより、調理盤をその表面側の方向に平行移動させて前記係合手段を解除し調理盤を取り外すことができる構成である。
【0009】
請求項2は、調理器本体と調理盤とから成り、調理器本体は、柄と、調理盤の保持装置とを含み、保持装置は前記柄に取り付けられており且つ調理盤を着脱可能に保持する保持部を有し、調理盤はその表面に調理刃を有し、調理盤と保持部との間に調理盤を保持するための係合手段が介在し、調理盤は保持部で構成される平面に対して垂直方向に平行移動可能であり、調理盤を保持部に取り付けるときに、調理盤の裏面と保持部を対向させた状態で、調理盤の表面の2つの場所を異なる手の指で同時に裏面側に押すことが可能であり、その2つの場所を異なる手の指で同時に押すことにより、調理盤をその裏面側の方向に平行移動させて調理盤を保持部に押し込むことによって自動的に係合手段が調理盤を保持する構成である。
【0010】
請求項3は、調理器本体と調理盤とから成り、調理器本体は、柄と、調理盤の保持装置とを含み、保持装置は前記柄に取り付けられており且つ調理盤を着脱可能に保持する保持部を有し、調理盤はその表面に調理刃を有し、調理盤と保持部との間に調理盤を保持するための係合手段が介在し、調理盤は保持部で構成される平面に対して垂直方向に平行移動可能であり、調理盤を保持部に取り付けるときに、調理盤の裏面と保持部を対向させた状態で、調理盤をその裏面側の方向に平行移動させて調理盤を保持部に押し込むことによって自動的に係合手段が調理盤を保持し、調理器を側面から見たときの調理盤の上縁を柄方向に延ばした延長線が柄よりも高い位置にある構成である。
【0011】
請求項4は、調理器本体と調理盤とから成り、調理器本体は、柄と、調理盤の保持装置とを含み、保持装置は前記柄に取り付けられており且つ調理盤を着脱可能に保持する保持部を有し、調理盤はその表面に調理刃を有し、調理盤と保持部との間に調理盤を保持するための係合手段が介在し、調理盤は保持部で構成される平面に対して垂直方向に平行移動可能であり、調理盤を保持部に取り付けるときに、調理盤の裏面と保持部を対向させた状態で、調理盤をその裏面側の方向に平行移動させて調理盤を保持部に押し込むことによって自動的に係合手段が調理盤を保持し、調理盤には刃板の表面をほぼ全面的に覆うカバーが着脱可能に取り付けられている構成である。
【発明の効果】
【0012】
請求項1は、調理盤は保持部で構成される平面に対して垂直方向に平行移動可能であり、保持部に保持されている調理盤の裏面の2つの場所を異なる手の指で同時に表面側に押すことが可能であり、その2つの場所を異なる手の指で同時に押すことにより、調理盤をその表面側の方向に平行移動させて前記係合手段を解除し調理盤を取り外すことができる。調理盤は保持部で構成される平面に対して垂直方向に平行移動可能であるから、調理盤を保持部から取り外すときに、調理盤をその表面側に平行移動させることによって係合手段を解除して取り外すことが可能である。したがって、従来の、調理器本体を水平に横切る方向に調理盤をスライドさせて調理盤を取り外すスライド式調理器に比べ、本発明は調理盤をその表面側に平行移動させて一気に調理盤を取り外すことができるので、きわめて迅速に調理盤を取り外すことができる。また、調理盤を指で押すための場所があるので、調理盤を取り外すときに指が調理刃に触れる虞がなく安全に取り外すことができる。
【0013】
請求項2は、調理盤は保持部で構成される平面に対して垂直方向に平行移動可能であり、調理盤を保持部に取り付けるときに、調理盤の裏面と保持部を対向させた状態で、調理盤の表面の2つの場所を異なる手の指で同時に裏面側に押すことが可能であり、その2つの場所を異なる手の指で同時に押すことにより、調理盤をその裏面側の方向に平行移動させて調理盤を保持部に押し込むことによって自動的に係合手段が調理盤を保持する。したがって、従来の、調理器本体を水平に横切る方向に調理盤をスライドさせて調理盤を取付けるスライド式調理器に比べ、本発明は調理盤をその裏面側に平行移動させて一気に調理盤を取付けることができるので、きわめて迅速に調理盤を取り付けることができる。また、調理盤を指で押すための場所があるので、調理盤を取り付けるときに指が調理刃に触れる虞がなく安全に取り付けることができる。
【0014】
請求項3は、調理盤は保持部で構成される平面に対して垂直方向に平行移動可能であり、調理盤を保持部に取り付けるときに、調理盤の裏面と保持部を対向させた状態で、調理盤をその裏面側の方向に平行移動させて調理盤を保持部に押し込むことによって自動的に係合手段が調理盤を保持し、調理器を側面から見たときの調理盤の上縁を柄方向に延ばした延長線が柄よりも高い位置にある。請求項3は、調理盤を保持部に取り付けるときに、調理盤に手を触れずに保持部を持つだけで調理盤を保持部に取り付けることを可能とする構成である。すなわち、調理器を側面から見たときの調理盤の上縁を柄方向に延ばした延長線が柄よりも高い位置にあるので、調理盤を取付けた調理器を裏返しにして調理台の表面に調理盤を押し付けたときに、調理台の表面と柄との間には隙間が生じている。そして、調理盤を保持部に取り付けるときに、まず調理盤を裏返しにして調理台などの表面に置く。次に、例えば右利きの作業者であれば、右手で柄を持って、その手の人差し指と親指を保持部に宛がう。次に、左手の人差し指と親指を保持部に宛がう。次に、裏返しに置かれている調理盤の上に保持部を対向させる。次いで、保持部に力を加えて下方に押すと、柄が調理台に当たることなく保持部が下方に平行移動し、調理盤が保持部に押し込まれて自動的に係合手段が調理盤を保持する。この作業で調理盤の取付け作業は完了する。したがって、調理盤を保持部に取り付けるときに調理盤は作業台などの上に置いておくだけで手に持つ必要がないので、安全且つ迅速に調理盤を保持部に取り付けることができる。
【0015】
請求項4は、調理盤は保持部で構成される平面に対して垂直方向に平行移動可能であり、調理盤を保持部に取り付けるときに、調理盤の裏面と保持部を対向させた状態で、調理盤をその裏面側の方向に平行移動させて調理盤を保持部に押し込むことによって自動的に係合手段が調理盤を保持し、調理盤には刃板の表面をほぼ全面的に覆うカバーが着脱可能に取り付けられている。したがって、調理盤は、カバーが調理刃を覆った状態でそのまま保持部に着脱することができる。また、カバーの表面が手の平に当たるようにして調理盤を手の平に載せても安全であり、調理盤を保持部に取り付けるときに、そのようにして手の平に載せた調理盤の裏面と保持部を対向させた状態で、他方の手に持った調理器本体の保持部を調理盤の方向に平行移動させて調理盤を保持部に押し込むことによって自動的に係合手段が調理盤を保持する。したがって、平行移動によって迅速に調理盤を保持部に取り付けることができる。また、カバーを取付けることによって安全に調理盤を保持部に取り付けることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の表面図である。
【図2】本発明の側面図である。
【図3】本発明の一部裏面図である。
【図4】本発明の保持部の斜視図である。
【図5】カバーを取付けた調理盤の斜視図である。
【図6】カバーを取付けた調理盤の側面図である。
【図7】カバーを取付けた調理盤の前面図である。
【図8】カバーを取付けた調理盤の横断面図である。
【図9】カバーの裏面図である。
【図10】カバーの中央縦断面図である。
【図11】カバーの前面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の実施形態を図面に従って説明する。本実施形態に示す調理器1は、主にチーズなどの食料品をおろすことに適したものである。調理器1は、調理器本体2と調理盤3とから成る。調理盤3は交換可能であって、例えば、チーズを異なった粗さにおろそうとするときに調理盤3を交換することができる。調理器本体2は、柄4と調理盤3の保持装置5とから成る。柄4は、包丁の柄のように細長く形成されている。柄4の長さは約112mmであるが、この数値に限定されるものではない。柄の横断面の形状は上下非対称なので(図示せず。)、調理盤3を確認しなくても柄4を握っただけで調理器1の上下を確認することができる。但し、柄4の横断面の形状が上下対称であっても差し支えない。
【0018】
保持装置5は、ほぼ矩形の枠状に形成された保持部6と、その保持部6の柄4寄り端部である後端部34に設けられた差込突部7とから成る。保持部6と差込突部7は金属で一体に形成されている。差込突部7を柄4の前端から挿入して、保持装置5と柄4を結合している。保持部6の両側部8,8は共に直線状に形成され、保持部6の前後両端部24,34は外側に凸の弧状をなしている。保持部6は、厚みすなわち横幅が上下幅よりも小さい板状金属で構成されている。保持部6は、このような板状金属に限定されるものでなく、例えば断面がほぼ正方形や円形の金属であってもよく、横幅が上下幅よりも大きい金属であってもよい。材料は金属に限定されるものではなく、プラスチック等であってもよい。保持部6の上下幅は約10mmであり、厚みすなわち横幅は約2mmである。保持部6の内面の長さ方向の長さは約181mmであり、横方向の長さは約60mmである。サイズがこれらの数値に限定されるものではないことは勿論である。さらに、図4に示すように、保持部6には、その両側部8,8の前部と後部の内面で、その内面の上下幅の中央の位置に断面円形の合計4つの係合突起91,92が設けられている。係合突起91,92が設けられている位置を数値で示すと、保持部6の前端部24の中央内面と、前寄りの2つの係合突起91,91の中心線との間の距離は共に約30mmである。保持部6の後端部34の中央内面と、後ろ寄りの2つの係合突起92,92の中心線との間の距離も共に約30mmである。すなわち、係合突起91,92は保持部6の長さ方向及び横方向に延びる中心線に関しそれぞれ線対称となるように配設されている。このように、本発明では偶数の係合突起を、保持部6の長さ方向及び横方向に延びる中心線のいずれに関しても線対称となるように配設することが好ましい。
【0019】
調理盤3は、刃板10と枠部材11とから成る。刃板10は枠部材11に恒久的に結合されている。枠部材11はプラスチックで一体に形成されている。枠部材11はプラスチック以外の材料であってもよく、例えばアルミニウムなどの金属であってもよい。調理盤3が保持部6に取り付けられたときに、枠部材11の外周面13と保持部6の内周面14がわずかな隙間を置いて対向するように、枠部材11の外周面13で構成される矩形と保持部6の内周面14で構成される矩形とは相似形である。したがって、保持部6と同様に枠部材11の両側部15,15は直線状に形成され、前後両端部201,202は外側に凸の弧状をなすように形成されている。また、調理盤3の外形は前後左右対称であり、調理盤3の前後を逆にしても保持部6に取り付けることができる。ただし、調理盤3の外形がこのようなものに限定されないことは勿論である。
【0020】
枠部材11を構成する両側部15,15及び前後両端部201,202は厚みすなわち横幅が上下幅よりも小さい。枠部材11の横幅は保持部6のように薄いものでなく所定の長さの横幅を有していることが好ましい。実施形態の枠部材11の両側部15,15及び前後両端部201,202の横幅は約5.3mmであり、保持部6の横幅2mmよりも大きい。また、枠部材11の両側部15,15及び前後両端部201,202の上下幅は約10mmであり、保持部6の上下幅とほぼ等しい。
【0021】
図5に示すように、枠部材11の前後両端部201,202の表面中央にはそれぞれ凹面部211,212が設けられている。また、図5又は図8に示すように前後両端部201,202の裏面中央にもそれぞれ凹面部221,222が設けられている。これらの凹面部211,212,221,222は指で調理盤3を押すときに最も好ましい場所を明示するために設けたものである。したがって、指で押す場所は凹面部に限定されるものでなく、指で押す場所として凹面部211,212,221,222以外の何の加工も加えていない枠部材11の他の表面又は裏面の場所を押してもよい。また、初めから凹面部を設けなくても、異なる手の指で同時に押すことが可能な2つの場所であって、その場所を押すことによって、調理盤3を保持部6で構成される平面に対して垂直方向に平行移動させることを可能とさせる場所が確保されていればよい。異なる手の指で同時に押すことが可能な2つの場所とは、押すことについて不都合が生じない場所であって、例えば調理刃が調理盤の周囲付近まで形成され、調理盤の周囲に指を当てて押すときに必然的に調理刃を押してしまうような場所は含まない。2つの場所としては、調理盤3の中心に関し点対称をなす場所が好ましい。例えば、実施態様のように調理盤3の前後の端部の中央の場所や、あるいは調理盤3の両側部の中央の場所が好ましい。後者の場所は、調理盤3が横長であったり正方形であったりしたときに好ましい。また、調理盤3の対角線上にある2つの場所でもよく、それ以外の2つの場所でもよい。それらの場所が調理盤3の形状や作業者の手のくせに応じるなどして、作業者が自由に選択できる構成であってもよい。なお、前述したように、枠部材11の横幅は保持部6のように薄いものでなく所定の長さの横幅を有していることが好ましいとしたのは、枠部材11の表面又は裏面に指先を宛がったときに痛みを感じさせないからである。しかし、枠部材11の横幅を薄く形成してもよいことは勿論で、その場合は凹面部を設けてその横幅のみを広くすることが好ましい。
【0022】
図5又は図6に示すように、枠部材11の両側部15,15の前部と後部の裏面には溝状に形成された4つの係合凹部17が設けられている。この位置は、前述した保持部6に設けられた係合突起91,92の位置と整合している。これらの係合凹部17の底部18は円弧状をなしている。これは、係合突起91,92を係合凹部17の底部18に安定した状態で係合させるためである。また、係合凹部17の隣に切込19,19を設けることにより、係合突起91,92の太さよりも狭く形成されている係合凹部17の幅を弾性的に広げることができるので、係合突起91,92を係合凹部17の底部18に円滑に係合させることができる。また、係合凹部17の底部18は、枠部材11の上下幅の中央の位置に形成されている。そして、前述したように、保持部6には、その両側部8,8の前部と後部の内面で、その内面の上下幅の中央の位置に合計4つの係合突起91,92が設けられている。さらに、保持部6の上下幅と枠部材11の上下幅はほぼ等しい。したがって、係合凹部17の底部18に保持部6の係合突起91,92が係合して調理盤3が保持部6に取り付けられたときに、保持部6の上下幅の中央と枠部材11の上下幅の中央が一致するので、枠部材11は保持部6に対し表面側にも裏面側にも突出せず、枠部材11の外周面13と保持部6の内周面14はわずかな隙間を置いて全面的に対向する。さらに、保持部6の上下幅の中央と枠部材11の上下幅の中央が一致することから、調理盤3を保持部6の表裏いずれの側からも同じように取り付けることができる。
【0023】
刃板10はステンレス製の金属板で形成され、多数の調理刃12が形成されている。金属はステンレス以外の金属であっても差し支えない。刃板10の食料品が当たる側の面を表面として、刃板10はその横断面が表面側に凸の弧状をなすように反っている。刃板10の板厚は0.1mm〜1mmが好ましい。刃板10は金属板に限定されず、例えばプラスチックで形成されてもよい。
【0024】
図8に示すように、刃板10は両側面部16,16が形成されるように断面がコ字形に曲げられており、その両側面部16,16を枠部材11の両側部15,15の中に埋設させて、刃板10を枠部材11に取り付ける。刃板10を枠部材11に取り付ける方法は、刃板10の両側面部16,16を枠部材11の成形用金型の中に固定し、その金型の中にプラスチックを射出することにより枠部材11が成形されると共に両側面部16,16が枠部材11の両側部15,15の中に埋設され、刃板10を取付けた枠部材11が成形される。取り付けられた刃板10の長さは枠部材11の長さよりも短く形成されており、刃板10の前後両端縁23,23は枠部材11の前後両端部201,202まで届いていない。したがって、刃板10の端縁23と枠部材11との間には、枠部材11で囲まれている空間の一部が覗いている。刃板10の全長は約154mmであり、横方向の長さは約54mmであり、側面部16の上下方向の長さは約7.9mmである。また、刃板10の横断面は弧状に反っているが、この弧状は円弧であって、刃板10の裏面のなす円弧の半径は約75mmである。円弧であるから、保持部6で構成される平面に対して刃板10はその中央部が最も高い位置にある。また、図2に示すように、刃板10の長さ方向の中心線の延長線35は、柄4の上面よりも上側に延びている。すなわち、保持された調理盤3の表面の最も高い位置が含まれる水平面は、柄4の最も高い位置が含まれる水平面よりも高い位置にあることを示している。
【0025】
調理盤3には刃板10の表面をほぼ全面的に覆うカバー25を着脱可能に取り付けることができる。カバー25は、その大部分を弧状面部26が占めている。弧状面部26は、その横断面が表面側に凸の弧状をなすように反っている。そして、その弧状は円弧であってその円弧の半径は刃板10の円弧の半径よりもやや大きい。この弧状面部26が、刃板10を全面的に覆うのである。弧状面部26の前後の両端部27,27の中央には、それぞれ係止片28が一体に形成されている。係止片28の内面には係止突起29が一体に形成されている。また、弧状面部26の前後の両端部27,27には、さらに係止片28の両側にそれぞれストッパー片30、30が形成されている。係止片28の厚みはストッパー片30の厚みより薄く形成されている。そして、弧状面部26の両側に裏面側に立ち上がる側壁31,31が形成されている。
【0026】
カバー25を刃板10に取り付けるときは、例えば、カバー25を刃板10の上に載せ、一方の係止片28の係止突起29を刃板10の端縁23の裏面に係止させ、他方の係止片28を上から押すことにより係止片28が撓んで、他方の係止突起29が刃板10の他方の端縁23を乗り越えて端縁23の裏面に係止する。他の取付け方法としては、カバー25を刃板10の上に載せ、一方の係止片28の係止突起29を刃板10の端縁23の裏面に係止させ、他方の係止片28を指で外側に撓ませて裏面側に移動させることにより他方の係止突起29が端縁23の裏面に係止する。図8に示すように、刃板10に取り付けられたカバー25の両側壁31,31は調理盤3の枠部材11の両側部15,15の表面に当たるので、カバー25の弧状面部26と刃板10との間に所定の距離が保たれ、カバー25が刃板10の表面に触れることがない。また、ストッパー片30,30の外縁が枠部材11の両側部15,15の内面に当たるのでカバー25が左右に移動することを阻止することができる。カバー25は前後左右対称に形成されているので、カバー25の前後を逆にしても調理盤3に取り付けることができる。また、カバー25は透明な材料で形成されているので、カバー25を取り外さなくても調理刃12の種類を見分けることができる。ただし、カバー25がこのような構成に限定されるものでないことは勿論である。
【0027】
次に、カバー25を取り付けていない調理盤3を保持部6に保持させる方法例について説明する。一つの方法は、まず、手で柄4を握って調理器本体2を手に持つ。次に、調理盤3の裏面を保持部6と対向させ、保持部6の4つの係合突起91,92の上に枠部材11の4つの係合凹部17を載せる。そのとき、係合凹部17は弾性的に開いていないので、係合突起91,92と係合凹部17が係合することなく係合凹部17を載せることができる。これにより、枠部材11の中央水平線から下半分の部分は保持部6の内側に納まり、枠部材11の外周面13の下半部と保持部6の内周面14の上半部がわずかな隙間を置いて対向するので、調理盤3の位置決めが完了し、調理盤3を押す方向が確定される。次に、柄4を握った手の親指を枠部材11の後側の端部202の表面の凹面部212に宛がい、他方の手の人差し指を保持部6の前端部24の裏面に宛がいながらその手の親指を枠部材11の前側の端部201の表面の凹面部211に宛がって、前後の凹面部211,212を両方の親指で同時に裏面側に押す。それにより、係合凹部17は弾性的に開いて調理盤3を保持部6内で裏面側に平行移動させることが可能で、係合突起91,92が係合凹部17の底部18に係合して調理盤3は保持部6に保持される。調理盤3を係合凹部17の深さだけ平行移動させることで保持部6に取り付けることができるから、調理盤3の取付けを迅速に行うことができる。また、前述したように、刃板10の長さは枠部材11の長さよりも短く形成されており、刃板10の前後両端縁23,23は枠部材11の前後両端部201,202まで届いておらず、刃板10の端縁23と枠部材11との間には、枠部材11で囲まれている空間の一部が覗いている。したがって、調理刃12の端縁23から距離をおいた場所を押すだけで取付けができるから、指が調理刃12に触れる虞がなく安全に取付けを行うことができる。なお、調理盤3の凹面部211,212を押せば自動的に必ず平行移動できるものでないことは勿論であり、同時に押さなかったり、2つの押す力の強さが著しく異なったりなどするときは平行移動できない。しかし、そのような取り扱いを修正することによって本発明の効果を発揮することができる。
【0028】
次に、カバー25を取り付けていない調理盤3を保持部6に保持させる他の方法について説明する。まず、調理盤3をその表面が下側を向くようにして調理台に置く。次いで、調理盤3の保持部6の両側部8,8の前端部32,32付近を一方の手の人差し指と親指で挟み持ち、両側部8,8の後端部33,33付近を他方の手の人差し指と親指で挟み持つ。次に、調理盤3の上を向いている裏面と保持部6とを対向させ、枠部材11の4つの係合凹部17の上に保持部6の4つの係合突起91,92を宛がう。次いで、その状態のまま両方の手で保持部6を同時に下方に押す。それにより、係合凹部17は弾性的に開いて調理盤3を保持部6内で保持部6に対して裏面側に平行移動させることが可能で、係合突起91,92が係合凹部17の底部18に係合して調理盤3は保持部6に保持される。このとき、前述した如く、図2に示すように、刃板10の長さ方向の中心線の延長線35は、柄4の上面よりも上側に延びている。したがって、調理盤3が保持部6に完全に保持されるまで調理台と柄4との間に隙間が確保されるので、保持部6を同時に下方に押している途中で柄4が調理台の表面に当たることがなく、調理盤3の保持部6に対する平行移動を完全に行うことができる。そして、調理盤3を保持部6に対して係合凹部17の深さだけ平行移動させることで取り付けることができるから、調理盤3の取付けを迅速に行うことができる。また、係合突起91,92を係合凹部17に係合させるときに、調理盤3は調理台の上に置いたままで手に触れることがないから、取付け作業をきわめて安全に行うことができる。
【0029】
次に、保持部6に保持されている調理盤3を取り外す方法の一例について説明する。まず、手で柄4を握り、調理盤3の裏面が手前又は上を向くように調理器本体1を持つ。次いで、柄4を握った手の親指を枠部材11の後側裏面の凹面部222に宛がい、他方の人差し指を保持部6の前側の端部24に宛がいながらその親指を前側裏面の凹面部221に宛がって、前後の凹面部221,222を両方の親指で同時に表面側に押す。それにより、係合凹部17は弾性的に開いて調理盤3を保持部6内で表面側に平行移動させることが可能で、係合突起91,92が係合凹部17から抜け出して調理盤3を保持部6から取り外すことができる。調理盤3を係合凹部17の深さだけ平行移動させることで取り外すことができるから、調理盤3の取り外しを迅速に行うことができる。また、調理刃12から距離をおいた場所を押すだけで取り外しができるから、指が調理刃12に触れる虞がなく安全に取り外しを行うことができる。
【0030】
以上述べた調理盤3の取付け及び取り外しは、調理盤3にカバー25を取り付けた状態で行うこともできる。この場合、調理刃12がカバー25に覆われて露出しないので、指などを怪我する虞がなくきわめて安全に作業をすることができる。また、調理盤3をその表面が下側を向くようにして調理台に置いて調理盤3を保持部6に取り付けるときに、調理刃12が調理台に当たらないので調理刃12の損傷を防止できる。
【0031】
なお、本発明は前述した構成に基づいて種々の態様をとることが可能である。例えば、調理器1は食料品をおろすためのものでなくスライサーなどであってもよい。調理盤はプラスチックの一体成形であってもよい。その場合、調理刃も一体成形にしてもよく、調理刃のみを金属などで別体としてもよい。調理盤3及び保持部6の形状は前後に細長い矩形に限定されることはなく、横方向に細長い矩形でもよく、矩形以外の形状であってもよい。刃板10は、その横断面が表面側に凸の弧状でなくてもよく、例えば水平面であっても凹の弧状であってもよい。刃板10を弧状面とせず水平面とした場合に、保持部6に保持された調理盤3の表面の最も高い位置が含まれる水平面が、柄4の最も高い位置が含まれる水平面よりも高い位置とするためには、枠部材11の上下幅を大きくして、刃板10をさらに浮かす構造などにすればよい。
【産業上の利用可能性】
【0032】
替刃式の調理器を本発明の構成とすることで、調理盤の取付け及び取り外しに際し安全性と迅速性を兼ね備えた調理器を提供することができる。
【符号の説明】
【0033】
1 調理器, 2 調理器本体, 3 調理盤, 4 柄, 5 保持装置, 6 保持部, 7 差込突部, 8 保持部の側部, 91 係合突起, 92 係合突起, 10 刃板, 11 枠部材, 12 調理刃, 13 枠部材の外周, 14 保持部の内周面, 15 枠部材の側部, 16 刃板の側面部, 17 係合凹部, 18 係合凹部の底部, 19 切込, 201 枠部材の前側の端部, 202 枠部材の後側の端部, 211 凹面部, 212 凹面部, 221 凹面部, 222 凹面部, 23 刃板の端縁,24 保持部の前端部, 25 カバー, 26 弧状面部, 27 弧状面部の端部, 28 係止片, 29 係止突起, 30 ストッパー片, 31 側壁, 32 保持部の側部の前端部, 33 保持部の側部の後端部, 34 保持部の後端部, 35 延長線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理器本体と調理盤とから成り、調理器本体は、柄と、調理盤の保持装置とを含み、保持装置は前記柄に取り付けられており且つ調理盤を着脱可能に保持する保持部を有し、調理盤はその表面に調理刃を有し、調理盤と保持部との間に調理盤を保持するための係合手段が介在し、調理盤は保持部で構成される平面に対して垂直方向に平行移動可能であり、保持部に保持されている調理盤の裏面の2つの場所を異なる手の指で同時に表面側に押すことが可能であり、その2つの場所を異なる手の指で同時に押すことにより、調理盤をその表面側の方向に平行移動させて前記係合手段を解除し調理盤を取り外すことができることを特徴とする調理器。
【請求項2】
調理器本体と調理盤とから成り、調理器本体は、柄と、調理盤の保持装置とを含み、保持装置は前記柄に取り付けられており且つ調理盤を着脱可能に保持する保持部を有し、調理盤はその表面に調理刃を有し、調理盤と保持部との間に調理盤を保持するための係合手段が介在し、調理盤は保持部で構成される平面に対して垂直方向に平行移動可能であり、調理盤を保持部に取り付けるときに、調理盤の裏面と保持部を対向させた状態で、調理盤の表面の2つの場所を異なる手の指で裏面側に同時に押すことが可能であり、その2つの場所を異なる手の指で同時に押すことにより、調理盤をその裏面側の方向に平行移動させて調理盤を保持部に押し込むことによって自動的に係合手段が調理盤を保持することを特徴とする調理器。
【請求項3】
調理器本体と調理盤とから成り、調理器本体は、柄と、調理盤の保持装置とを含み、保持装置は前記柄に取り付けられており且つ調理盤を着脱可能に保持する保持部を有し、調理盤はその表面に調理刃を有し、調理盤と保持部との間に調理盤を保持するための係合手段が介在し、調理盤は保持部で構成される平面に対して垂直方向に平行移動可能であり、調理盤を保持部に取り付けるときに、調理盤の裏面と保持部を対向させた状態で、調理盤をその裏面側の方向に平行移動させて調理盤を保持部に押し込むことによって自動的に係合手段が調理盤を保持し、調理器を側面から見たときの調理盤の上縁を柄方向に延ばした延長線が柄よりも高い位置にあることを特徴とする調理器。
【請求項4】
調理器本体と調理盤とから成り、調理器本体は、柄と、調理盤の保持装置とを含み、保持装置は前記柄に取り付けられており且つ調理盤を着脱可能に保持する保持部を有し、調理盤はその表面に調理刃を有し、調理盤と保持部との間に調理盤を保持するための係合手段が介在し、調理盤は保持部で構成される平面に対して垂直方向に平行移動可能であり、調理盤を保持部に取り付けるときに、調理盤の裏面と保持部を対向させた状態で、調理盤をその裏面側の方向に平行移動させて調理盤を保持部に押し込むことによって自動的に係合手段が調理盤を保持し、調理盤には刃板の表面をほぼ全面的に覆うカバーが着脱可能に取り付けられていることを特徴とする調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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