説明

調理器

【課題】調理器本体内の雰囲気温度を正確に測定することで、熟練を要さずとも良好な被調理物の調理が可能な調理器を提供することを目的としている。
【解決手段】上面を開放した有底の調理器本体1と、該調理器本体1の上面を密閉する蓋体2と、温度表示部30に感温部32aを有する管体32が設けられてなる温度計3とを有する調理器であって、前記蓋体2には、上下方向に貫通した貫通孔25が設けられ、その貫通孔25を介して前記管体32が前記調理器本体1内に貫入されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被調理物を蒸したり、加熱したり、煮たりする際に用いられるフライパンや鍋等の調理器に関する。より好ましくは、調理器本体内を密閉した状態で、調理器本体内の雰囲気温度又は被調理物の中心温度、あるいは液体の温度を測定する温度計を備えた調理器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のフライパンや鍋等の調理器として、例えば特許文献1のような調理器が知られている。そして一方で、このような調理器を用いて被調理物を蒸したり煮たりする際、被調理物の蒸し具合や煮具合を調べるために、調理器本体を密閉している蓋体を取り外し、放射温度計を用いて上記調理器本体内の雰囲気温度を調べたり、被調理物表面を手で触って感触を調べたり、あるいは竹串を刺したりする調理方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実用新案登録第3123716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の調理器を用いた調理方法には次のような問題があった。すなわち、第1に、被調理物の蒸し具合や煮具合を調べるにあたって、上記蓋体を上記調理器本体から必ず取り外さなければならないため、その取外しの際調理器本体内の雰囲気温度が著しく低下してしまい、例え放射温度計を用いたとしても、調理器本体内の雰囲気温度を正確に測定することができず、良好な被調理物の蒸し具合や煮具合を調べることができないという問題があった。そして、第2に、被調理物表面を手で触って感触を調べたり、また、竹串を刺したりして被調理物の蒸し具合や煮具合を調べるには、長年の経験と勘が必要であり、その調理手法を習熟するには、多大な時間と労力を要するという問題があった。また、第3に、例え多大な時間と労力を費やしてその調理方法を習熟したとしても、上記蓋体を必ず取り外さなければならないため、それに伴う被調理物の味の劣化は避けられず、それゆえ良好な調理を施した被調理物を提供することができないという問題もあった。
【0005】
そこで本発明は、上記事情に鑑み、密閉状態の調理器本体内の雰囲気温度や当該調理器本体内に載置される被調理物の中心温度を正確に測定することで、熟練を要さずとも良好な被調理物の調理が可能な調理器を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、後述する一実施形態の参照符号を付して説明すると、本発明の請求項1に係る調理器は、上面を開放した有底の調理器本体1と、該調理器本体1の上面を密閉する蓋体2と、温度表示部30に感温部32aを有する管体32が設けられてなる温度計3とを有する調理器であって、前記蓋体2には、上下方向に貫通した貫通孔25が設けられ、その貫通孔25を介して前記管体32が前記調理器本体1内に貫入されてなることを特徴としている。
【0007】
また、請求項2の発明は、上記請求項1に記載の調理器において、前記管体32は、前記貫通孔25に上下方向に移動可能に貫入されてなることを特徴としている。
【0008】
さらに、請求項3の発明は、上記請求項2に記載の調理器において、前記管体32の先端部32bは、先鋭状に形成されてなることを特徴としている。
【0009】
そして、請求項4の発明は、上記請求項3に記載の調理器において、前記管体32の外周面には、目盛り32cが設けられてなることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
次に、本発明の効果について、図面の参照符号を付して説明する。まず、請求項1の発明にかかる調理器では、温度計3を有し、その温度計3は、温度表示部30に感温部32aを有する管体32が設けられている。一方、当該調理器の調理器本体1の上面は蓋体2によって密閉され、その蓋体2には上下方向に貫通した貫通孔25が設けられている。そして、その貫通孔25を介して、上記管体32が上記調理器本体1内に貫入されている。
【0011】
しかして、本発明によれば、調理器本体1内を密閉させた状態で、その調理器本体1内に貫通孔25を介して感温部32aを有する管体32を貫入させることができるから、密閉状態の調理器本体1内の雰囲気温度を測定することができる。それゆえ、調理器本体1内の雰囲気温度を正確に測定することができる。また、構造が非常に簡便であるため、熟練を要さずとも簡単容易に調理器本体1内の雰囲気温度を測定することができる。そのため本発明によれば、熟練を要さずとも良好な被調理物の調理が可能となる。
【0012】
また請求項2の発明によれば、上記管体32は、上記貫通孔25に上下方向に移動可能に貫入されてなるから、被調理物の大きさに合わせて管体32を移動させることができる。そのため、調理器本体1の上面を蓋体2によって密閉することができなくなるような事態を低減することができる。
【0013】
一方請求項3の発明によれば、上記管体32の先端部32bは先鋭状に形成されているから、当該先端部32bを被調理物の中心位置まで埋没させることができる。そのため、被調理物の中心温度を測定することで、当該被調理物に内在されている人体に悪影響を及ぼす菌が死滅したか否かを判別することができる。それゆえ、より良好な被調理物の調理が可能となる。
【0014】
さらに請求項4の発明によれば、上記管体32の外周面には、目盛り32cが設けられているから、正確に上記管体32の先端部32bを被調理物の中心位置まで埋没させることができる。それゆえ、被調理物の中心温度をより正確に測定することができる。そのため、さらに良好な被調理物の調理が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る調理器の斜視図である。
【図2】同実施形態に係る調理器の平面図である。
【図3】図2のA−A線断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係る調理器の使用方法を示し、(a)は温度計の先端部を調理本体の底面部に当接させた状態、(b)は被調理物を調理器本体内に載置した状態、のそれぞれ縦断面図である。
【図5】本発明の一実施形態に係る調理器の使用方法を示し、(a)は図4(b)に示す矢印方向に蓋体及び温度計を移動させた状態、(b)は被調理物の中心位置まで温度計を移動させた状態、のそれぞれ縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る調理器の一実施形態について、図1〜図3を参照して具体的に説明する。
【0017】
本実施形態に係る調理器は、図1及び図3に示すように、上面を開放した有底の調理器本体1と、その調理器本体1の上面を密閉する蓋体2と、その蓋体2上面中央部に設けられている温度計3とで構成されている。
【0018】
調理器本体1は、ステンレス鋼等の金属あるいは陶器で形成されており、図3に示すように、上方に向かって末広がり状に形成されている。そして、このように形成される調理器本体1の外周上端周縁部には、図1〜図3に示すように、左右方向線対称となる位置に、ステンレス等の金属で形成さる平面円弧状の把持部10が溶接等によって固着されている。
【0019】
一方、蓋体2は、ステンレス鋼等の金属あるいは陶器で形成され、図3に示すように、両側縁側が略断面L字状のL字枠20で形成されると共に、そのL字枠20の底面20aは、上記調理器本体1の上端面に当接され、背面20bの略中央部には水平方向に延設される水平枠21が一体形成されている。そしてさらに、その水平枠21は、当該蓋体2の中心部に隆起する略断面コ字状のコ字枠22の端面とも一体形成されている。また、そのコ字枠22の頭頂面22aにはビス孔22bが穿設され、そのビス孔22bを覆うように掴持部23が当接されている。
【0020】
一方、上記掴持部23は、図3に示すように、略T字状に形成されており、先端部には雌ねじ部23aが刻設されている。そしてこの雌ねじ部23aには、ビス24がビス孔22bを介して螺合されている。これにより、上記コ字枠22と掴持部23が連結される。そして、このように連結された掴持部23及びビス24の軸心方向(蓋体2の上下方向)に貫通孔25が穿設されている。
【0021】
他方、温度計3は、図1及び図3に示すように、半円球状の温度表示部30と、その温度表示部30の下部に溶接ナット31を介して垂設されている管体32とで構成されている。この温度表示部30は、図2に示すように、内周縁側に円形状の−10℃〜100℃の目盛り30aが設けられ、中心部に指針30bが設けられている。一方、管体32は、金属等で形成され、その管体32の内部先端側には、バイメタル等で形成されている感温部32aが埋設されている。また管体32の先端部32bは、先鋭状に形成され、管体32の外周面軸方向には、0cm〜10cmの目盛り32cが設けられている。そして、このように形成される管体32は、図3に示すように、上記貫通孔25に上下方向に移動可能なように貫入されている。なお、本実施形態において、温度表示部30の目盛り30aとして、−10℃〜100℃の例を示したが、この範囲に限定されるものではなく、例えば、−10℃〜200℃等どのような範囲に設定しても良い。また、温度計3としてアナログの温度計を例示したが、デジタルの温度計でも良い。さらに、管体32の外周面軸方向に設けられている目盛り32cとして、0cm〜10cmの例を示したが、この範囲に限定されるものではなく、例えば、0cm〜15cm等どのような範囲に設定しても良い。
【0022】
このように構成される調理器内、すなわち、蓋体2により密閉された調理器本体1内には、図3に示すように、調理器本体1内の底面部1aに被調理物(図示では、肉塊)Mが載置され、調理器本体1の外周底面部1bがガスコンロ等によって加熱される。一方、後述するようにガスコンロ等による加熱後、温度計3に係る管体32の先端部32bが上記被調理物Mの中心位置まで埋没される。これにより、管体32の先端側に埋設されている感温部32aが被調理物Mの中心温度を検知し、その検知した温度が図2に示すように、温度表示部30に表示(図示では、80℃)される。なお、本実施形態においては、上記管体32を上記貫通孔25に上下方向に移動可能なように貫入させたが、固定させても良い。しかしながら、上記管体32を上記貫通孔25に上下方向に移動可能なように貫入させた方が好ましい。被調理物Mの大きさに合わせて管体32を移動させることで、調理器本体1の上面を蓋体2によって密閉することができなくなるような事態を低減することができるためである。
【0023】
次に、上記のように構成される調理器の使用例を、図4及び図5を用いて説明する。まず、管体32の外周面に設けられている目盛り32cの基準位置を設定する。すなわち、図4(a)に示すように、調理器本体1内を蓋体2によって密閉し、その状態で、管体32の先端部32bを調理器本体1内の底面部1aに当接させる。これにより、掴持部23の上面部に位置する目盛り32cの値(図示では、0cm)が基準位置として設定されることとなる。なお、本実施形態においては、基準位置を0cmに設定したが、調理器本体1内の底面部1aに管体32の先端部32bが当接された際の目盛り32cの値が1cmであれば、それが基準位置として設定されることとなる。それゆえ、基準位置が必ず0cmとして設定されるわけではない。
【0024】
次に上記のように目盛り32cの基準位置を設定した後、図4(b)に示すように、蓋体2を取外し調理器本体1内の密閉状態を開放する。そして、調理器本体1内の底面部1aに被調理物Mを載置する。その載置後、蓋体2をP1方向に移動させると共に、温度計3、すなわち、管体32をP2方向に移動させ、図5(a)に示す状態とする。これにより、被調理物Mの表面近傍まで温度計3(すなわち、管体32)を移動させた際の掴持部23の上面部に位置する目盛り32cの値(図示では、4cm)を確認することで、被調理物Mの高さを測定することができる。すなわち、被調理物Mの高さは、被調理物Mの表面近傍まで温度計3(すなわち、管体32)を移動させた際の目盛り32cの値から上記設定した基準位置の目盛り32cの値を減算した値がその高さとなる。これにより、被調理物Mの中心位置(被調理物Mの高さの半分、すなわち、本実施形態では2cm)を測定することが可能となる。
【0025】
この状態で、調理器本体1の外周底面部1bをガスコンロ等によって加熱し、その加熱した際の調理器本体1内の雰囲気温度を温度計3によって測定する。すなわち、温度計3に係る管体32の先端側に埋設されている感温部32aによって上記調理器本体1内の雰囲気温度が検知され、その検知された温度が温度表示部30に表示される。これにより、蓋体2によって密閉されている調理器本体1内の雰囲気温度を測定しながら、被調理物Mの調理を行うことができる。
【0026】
そして上記調理器本体1内の雰囲気温度が所望温度(例えば、75℃)に達したらガスコンロ等の加熱を停止し、温度計3(すなわち、管体32)を矢印P3方向に移動させ図5(b)の状態とする。すなわち、管体32の先端部32bを被調理物Mの中心位置まで埋没させる。より具体的には、この被調理物Mの中心位置は、図5(a)によって測定した被調理物Mの高さの半分の位置(本実施形態では、目盛り32cの値が2cmの位置)であるから、掴持部23の上面部に位置する目盛り32cの値が上記高さの半分の位置になるところまで、管体32を下方向に移動させる。これにより、管体32の先端部32bが被調理物Mの中心位置まで埋没されることとなる。そして、管体32の先端部32bが被調理物Mの中心位置まで埋没されれば、管体32の先端側に埋設されている感温部32aによって上記被調理物Mの中心温度が検知され、その検知された温度が温度表示部30に表示される。なお、このように被調理物Mの中心温度を測定するのは、被調理物Mに内在されている人体に悪影響を及ぼす菌が死滅したか否かを判別するためである。そのため、人体に悪影響を及ぼす菌が内在されていない被調理物Mに対しては、当該被調理物Mの中心温度を測定しなくとも良い。その際は、密閉された調理器本体1内の雰囲気温度のみ測定することとなる。
【0027】
そして、このように感温部32aによって検知された被調理物Mの中心温度が所望温度(例えば、67℃)に達したら、被調理物Mに内在されている菌が死滅したことが分かるため、その時点で、本実施形態に係る調理器を用いた被調理物Mの調理は終了となる。
【0028】
しかして、以上説明した本実施形態に係る調理器によれば、温度計3を有し、その温度計3は、温度表示部30に感温部32aを有する管体32が設けられている。一方、当該調理器の調理器本体1の上面は蓋体2によって密閉され、その蓋体2には上下方向に貫通した貫通孔25が設けられている。そして、その貫通孔25を介して、上記管体32が上記調理器本体1内に貫入されている。
【0029】
しかして、本実施形態によれば、調理器本体1内を密閉させた状態で、その調理器本体1内に貫通孔25を介して感温部32aを有する管体32を貫入させることができるから、密閉状態の調理器本体1内の雰囲気温度を測定することができる。それゆえ、調理器本体1内の雰囲気温度を正確に測定することができる。また、構造が非常に簡便であるため、熟練を要さずとも簡単容易に調理器本体1内の雰囲気温度を測定することができる。そのため本実施形態によれば、熟練を要さずとも良好な被調理物の調理が可能となる。
【0030】
また本実施形態によれば、上記管体32の先端部32bは先鋭状に形成されているから、当該先端部32bを被調理物Mの中心位置まで埋没させることができる。そのため、被調理物Mの中心温度を測定することで、当該被調理物Mに内在されている人体に悪影響を及ぼす菌が死滅したか否かを判別することができる。それゆえ、より良好な被調理物Mの調理が可能となる。
【0031】
さらに本実施形態によれば、上記管体32の外周面には、目盛り32cが設けられているから、正確に上記管体32の先端部32bを被調理物Mの中心位置まで埋没させることができる。それゆえ、被調理物の中心温度をより正確に測定することができる。そのため、さらに良好な被調理物Mの調理が可能となる。
【0032】
ところで、本実施形態において、調理器として鍋を例示したが、鍋の形状は本実施形態に示した形状に限定されるものではなくどのような形状であってもよい。また、調理器として鍋に限定されるものでもなく、例えばフライパン等、様々な調理機器を採用することが可能である。
【0033】
さらに、被調理物としては肉塊を例示したが、肉塊に限定されず、魚や野菜等の食材を用いてもよく、煮物であっても良い。なお煮物の場合は、液中に温度計3を入れることによって、調理に最適な液体の温度を測定することができる。
【符号の説明】
【0034】
1 調理器本体
2 蓋体
3 温度計
25 貫通孔
30 温度表示部
32 管体
32a 感温部
32b 先端部
32c 目盛り
M 被調理物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面を開放した有底の調理器本体と、該調理器本体の上面を密閉する蓋体と、温度表示部に感温部を有する管体が設けられてなる温度計とを有する調理器であって、
前記蓋体には、上下方向に貫通した貫通孔が設けられ、その貫通孔を介して前記管体が前記調理器本体内に貫入されてなることを特徴とする調理器。
【請求項2】
前記管体は、前記貫通孔に上下方向に移動可能に貫入されてなることを特徴とする請求項1に記載の調理器。
【請求項3】
前記管体の先端部は、先鋭状に形成されてなることを特徴とする請求項2に記載の調理器。
【請求項4】
前記管体の外周面には、目盛りが設けられてなることを特徴とする請求項3に記載の調理器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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