説明

調理済み澱粉製品およびその調製方法

本発明は調理済み澱粉食品の調製方法を提供し、本方法は:a)澱粉生地体を小麦粉と水と任意の1種以上の他の製パン原料とを混合することによって調製する工程と;b)生地を1つ以上の生地部分に分ける工程と;c)1つ以上の生地部分を1つ以上の付形生地片に付形する工程と;d)生地片を醗酵させる工程と;f)1つ以上の付形生地片を熱い油に少なくとも10秒に亘り接触させ揚げた表面とノンフライ表面とを含む部分的に揚げた生地片を作る工程と;g)前記1つ以上の部分的に揚げた生地片を焼き1つ以上の焼いた生地片を作る工程とを含み、可食材料層を付形生地片、部分的に揚げた生地片または焼いた生地片の表面の40-70%に適用し、最終的な調理済み製品の可食材料層で被覆していない表面は揚げた表面である。本方法は調理済み澱粉製品調製中の脂肪吸収の著しい低減を製品品質に対する知覚できる悪影響を導入せずに達成する。本発明の他の側面は焼いた澱粉生地体を含む調理済み食品に関し、前記焼いた生地体の表面の40-70%は可食材料層で被覆しており、焼いた生地体の可食材料層で被覆してない表面は揚げた表面であり、焼いた生地体の可食材料層で被覆した表面の少なくとも70重量%はノンフライである。

【発明の詳細な説明】
【発明の概要】
【0001】
発明の技術的背景
本発明は調理済み澱粉製品およびこの調理済み澱粉製品の調製方法に関する。
【0002】
本発明の調理済み食品は、焼いた澱粉生地体を含み、前記焼いた生地体の表面の40〜70%は可食材料の層でコーティングされており、焼いた生地体の可食材料の層でコーティングされていない表面は揚げられており、焼いた生地体の可食材料の層で被覆された表面の少なくとも70重量%は揚げられていない。本発明にしたがう調理済み澱粉製品の一例は低脂肪グレーズドドーナツである。
【0003】
さらに、本発明は調理済み澱粉食品の調製方法であって、以下の連続工程:
・澱粉生地を調製する工程と;
・この生地を1つ以上の部分に分ける工程と;
・この1つ以上の生地部分を付形する工程と;
・この1つ以上の付形した生地片の全表面の30〜70%を熱い油に接触させて、揚げた表面と揚げていない表面とを含む1つ以上の部分的に揚げた生地片を作る工程と;
・前記1つ以上の部分的に揚げた生地片を焼いて1つ以上の焼いた生地片を作る工程と
を含み、可食材料の層を付形した生地片、部分的に揚げた生地片または焼いた生地片の表面の40〜70%に適用し、最終的な調理済み製品の可食材料の層で被覆されていない表面は揚げた表面である方法を提供する。
【0004】
発明の背景
調理済み澱粉製品は、種々の熱処理方法、たとえばオーブンベーキング、フライ、赤外線照射、温風衝突、過熱蒸気などを使用して調製できる。これらの加熱技術の各々はその利点およびその欠点を有する。
【0005】
完全調理した澱粉製品のフライによる製造は、焼き色が付き、かりかりに堅くなった表面を有するフライ製品をもたらす。さらに、フライ製品は、他の加熱技術によって調製した調理済み澱粉製品では感じられない非常に独特な良い味を有する。ドーナツはフライ澱粉製品の1つの典型例である。
【0006】
フライ澱粉製品の重要な欠点は、これらの製品の高い脂肪含量とこれらの脂肪が通常高いレベルの飽和脂肪酸を含有している事実とにある。したがって、栄養学的な見方から、これらのフライ澱粉製品中の脂肪レベルを減らすことが非常に望ましい。この問題は従来技術において十分に認識されている。それゆえ、著しく少ない量の脂肪を含有するという事実がなければ、従来技術がフライ製品と区別できない調理済み澱粉製品を得ることを目的とした調製方法を提供することは驚くべきことではない。
【0007】
たとえば、US 5,910,264は、下ごしらえをした、冷凍貯蔵したまたは生の食料を調理するための、油浴も予熱もないフライヤータイプの家庭用電気調理器具であって、赤外線によって加熱される取り外し可能な回転バスケットを具備した器具を記載している。このUS特許では、この器具が赤外線で加熱されるという事実が、油浴を用いずに、商業的に下ごしらえした冷凍貯蔵食品、たとえばチップス、ドーナツ、ポムドーフィネなど、または生もしくは未調理の食品、たとえばチップス、クリの実、春巻などを、何ら欠点もリスクもなしに、衛生的および栄養学的な方法で調理することを可能にすることが認められる。
【0008】
US 5,910,264に記載された器具の欠点は、この器具で調製された調理品の堅い外皮の知覚特性が最適なものに及ばないことにある。より詳細には、これらの調理品の堅い外皮の外観および味の両方はそれらのフライ対照物のそれよりも劣る傾向がある。
【0009】
それゆえに、フライ製品のそれに匹敵する知覚特性を有するが、それらのフライ対照物よりも少ない脂肪を含有する調理済み澱粉製品を調製するのに好適に使用できる方法についてのニーズが残っている。
【0010】
発明の概要
本発明者らは、上述のニーズを満たす方法を設計した。本発明は調理済み澱粉食品を調製する方法であって、以下の連続工程:
a)澱粉生地を、小麦粉、水および任意の1種以上の他の製パン原料を混合することによって調製する工程と;
b)この生地を1つ以上の生地部分に分ける工程と;
c)この1つ以上の生地部分を付形して1つ以上の付形した生地片にする工程と;
d)この生地片を醗酵させる工程と;
e)1つ以上の付形した生地片の全表面の30〜60%を熱い油に少なくとも10秒間の期間にわたって接触させて、揚げた表面と揚げていない表面とを含む1つ以上の部分的に揚げた生地片を作る工程と;
f)前記1つ以上の部分的に揚げた生地片を焼いて1つ以上の焼いた生地片を作る工程と
を含み、可食材料の層を、付形した生地片、部分的に揚げた生地片または焼いた生地片の表面の40〜70%に適用し、最終的な調理済み製品の可食材料で被覆されていない表面は揚げた表面である方法を提供する。
【0011】
本方法は、調理済み製品の表面の可食材料の層によって被覆されていない(被覆されない)部分を選択的に揚げるのに熱い油を使用する。表面の可食材料の層によって被覆されている部分を揚げないことによって、揚げた結果としての脂肪吸収を最小にすることができる。揚げた表面を可食材料の層で被覆した場合には揚げた表面の特徴たとえばカリカリ感および焼き色は消費者によってほとんど知覚されないので、本方法は、調理済み澱粉製品の調製中の脂肪吸収の著しい低減を製品品質への知覚可能な悪影響を導入することなしに達成することができるという利点がある。本方法では、完全調理された調理済み製品を得るために、部分的に揚げた製品にベーキング処理を施す。また、ベーキング中に、生地の未調理部分が完全に調理される。したがって、本方法は、たとえば、脂肪含量がかなり低減された調理済みグレーズドドーナツの調製を可能にする。
【0012】
本発明のもう1つの態様は、焼いた澱粉生地体を含む調理済み食品に関し、前記焼いた生地体の表面の40〜70%が可食材料の層でコーティングされており、焼いた生地体の可食材料の層でコーティングされていない表面は揚げた表面であり、焼いた生地体の可食材料の層で被覆された表面の少なくとも70重量%は揚げられていない。
【0013】
発明の詳細な説明
したがって、本発明は調理済み澱粉食品を調製する方法に関し、前記方法は以下の連続工程:
a)澱粉生地を、小麦粉、水および任意の1種以上の他の製パン原料を混合することによって調製する工程と;
b)この生地を1つ以上の生地部分に分ける工程と;
c)この1つ以上の生地部分を付形して1つ以上の付形した生地片にする工程と;
d)この生地片を醗酵させる工程と;
e)1つ以上の付形した生地片の全表面の30〜70%を熱い油に少なくとも10秒間の期間にわたって接触させて、揚げた表面と揚げていない表面とを含む1つ以上の部分的に揚げた生地片を作る工程と;
f)前記1つ以上の部分的に揚げた生地片を焼いて、1つ以上の焼いた生地片を作る工程と
を含み、可食材料の層を付形した生地片、部分的に揚げた生地片または焼いた生地片の表面の40〜70%に適用し、最終的な調理済み製品の可食材料の層で被覆されていない表面は揚げた表面である。
【0014】
この書類を通して、用語「油」および「脂肪」は交互に用いられ、トリグリセリド、ジグリセリド、モノグリセリド、リン脂質およびこれらの組み合わせを包含する。
【0015】
用語「焼くこと」は、ここで使用される限りにおいて、たとえばボイルまたはフライとは対照的に、部分的に揚げた生地片の乾式加熱による長時間調理を指す。用語「焼くこと」が、部分的に揚げた生地片を過熱蒸気に接触させることと、さらには前記生地片を熱風衝突または赤外線にさらすこととを包含することを理解されたい
専門用語「揚げた表面」は、ここで使用される限りにおいて、付形した生地片のうち、少なくとも10秒間の期間にわたって熱い油に接触していた表面を指す。熱い油との接触は、多くの様々な方法、たとえば付形した生地片の一部を熱い油に浸すことによって、付形した生地片に熱い油をスプレーすることによって、または付形した生地片を油の高温層に置くこと(油で炒めること)によって達成できる。
【0016】
本方法では、1つ以上の付形した生地片の全表面の30〜70%を少なくとも10秒間の期間にわたって熱い油に接触させ、それにより、全表面の30〜70%に相当する揚げた表面と揚げていない表面である全表面のうちの残りとを含む、1つ以上の部分的に揚げた生地片を作る。
【0017】
付形した生地片を部分的に揚げるのに本方法で用いられる熱い油は典型的に少なくとも160℃の温度を有する。好ましくは、熱い油は170〜350℃、最も好ましくは180〜300℃の温度を有する。付形した生地片と熱い油との間の接触時間は有利には10〜180秒の範囲内、最も好ましくは10〜60秒の範囲内にある。
【0018】
本方法は、付形した生地片を様々な方法、たとえばこの付形した生地片を熱い油に浸すもしくは部分的に浸漬させることによって;またはこの付形した生地片に熱い油をスプレーすることによって、熱い油に接触させることができる。
【0019】
本発明の脂肪低減に関する利点は、付形した生地片の全表面の限られた部分のみを熱い油に接触させる場合に最も顕著である。好ましくは、熱い油との接触中に、1つ以上の付形した生地片の全表面の60%以下、より好ましくは55%以下を熱い油に接触させる。典型的に、1つ以上の付形した生地片の全表面の少なくとも35%、最も好ましくは少なくとも40%を熱い油に接触させる。
【0020】
同様に、揚げた表面の小部分のみを可食材料の層で被覆することが好ましい。より詳細には、可食材料の層で被覆された揚げた表面は全表面の30%未満、最も好ましくは20%未満に相当する。別の表現では、可食材料の層で被覆された揚げた表面は、好ましくは揚げた全表面全の40%未満、より好ましくは30%未満に相当する。
【0021】
本発明者らは、醗酵プロセスの少なくとも70%、最も好ましくは90%中に、醗酵させた生地片の上面、すなわち生地片の底面の反対側にある上面に相当する面をさらに揚げることによっても、調理済み製品の脂肪含量を低減できることを発見した。発明者らは理論によって縛られることを望まないが、醗酵中、生地片の上面に位置した外層に生じる気泡が底面にある同様の層よりも少ないおよび/または小さいことが考えられる。おそらく、醗酵中に生じる二酸化炭素が、たとえば移動ベルトに接触している底面よりも、上面では容易に生地片の外に拡散できるからである。醗酵させた生地の上面が底面よりも少ない(または小さい)気泡を含有する事実のおかげで、上面を通しての油の吸収は底部を通してのそれよりもかなり低い傾向がある。
【0022】
したがって、本発明の特に好ましい実施形態では、醗酵させた生地片の上面の少なくとも60%および底面の30%未満を熱い油に接触させる。
【0023】
本方法において層として適用される可食材料は好適には固体塊、粉末、液体またはペーストでありうる。可食材料が固体塊(たとえばチョコレート)である場合、この固体塊を液化させた状態(たとえば溶融状態)で塗布することが好ましい。特に好ましい実施形態によると、可食材料の層を粉末、液体またはペーストの状態で適用する。最も好ましくは、可食材料の層を液体またはペーストの状態で塗布する。可食材料を液体として塗布する場合、液体が澱粉製品から流れ出るのを避けるために、粘稠液体、ゲル形成液体または溶融液体を用いることが有利である。本発明は、可食材料の第1の層を液体またはペーストとして塗布し、続いて、固体可色材料を、たとえば可食粉末を前記第1の層上に振りかけることによって第1の層上に堆積させる方法を包含することを理解されたい。
【0024】
可食材料の層は、付形した生地片、部分的に揚げた生地片または焼いた生地片に適用されうる。好ましくは、可食材料の層を、付形した生地片を部分的に揚げた後に、すなわち部分的に揚げた生地片または焼いた生地片に適用する。最も好ましくは、可食材料の層を焼いた生地片に適用する。
【0025】
可食材料の層は、多種多様な食品を含むことができる。有利には、可食材料の層は、チョコレート、果実調理食材、カスタード、グレーズ、砂糖、脂肪、ココア、乳タンパク質、卵黄、卵白およびこれらの組み合わせから選択される少なくとも50重量%の可食材料を含有する。本方法によって好適に調製できる調理済み澱粉製品の例としてはドーナツ、ラード菓子、シュプリッツクーヘン、クラップフェン、チューロ、ブニュエロおよびクスコスが挙げられる。最も好ましくは、調理済み製品はドーナツである。
【0026】
本方法では、付形した生地片を部分的に揚げることによって、熱い油に接触していた表面をたとえば澱粉のゲル化の結果としてより堅くさせる。したがって、熱い油との接触は、付形した生地片の形状を焼く前に固定するのに有利に使用することができ、それにより焼いている間の形崩れを避けることができる。本方法の特に有利な実施形態によると、(i)1つ以上の生地部分を付形して丸みを帯びた底部を有する付形した生地片にし;(ii)揚げた表面がこの丸みを帯びた底部の表面を含み;および(iii)焼いている間に1つ以上の部分的に揚げた生地片がこの丸みを帯びた底部に載っている。発明のこの特定の実施形態は、生地片の丸みを帯びた形状はたるみの結果として崩れないという利点がある。
【0027】
ここで説明するように、本方法は種々のベーキング技術を用いることができる。本発明の好ましい実施形態によると、部分的に揚げた生地片を、この生地片に以下の熱処理のうちの1つ以上を施すことによって焼く:
・前記生地片を、少なくとも150℃のオーブン温度を有するオーブン内に2分間入れておくこと;
・前記生地片を過熱蒸気に接触させること;
・前記生地片を熱風衝突に曝すこと;
・前記生地片を0.7〜10μmの範囲にある波長を有する赤外線に曝すこと。
【0028】
用語「過熱蒸気」は、ここで使用される限りにおいて、前記蒸気の飽和蒸気圧未満である(静)圧力を有する蒸気を指す。蒸気の飽和蒸気圧は温度によって変化する。温度が高いほど、飽和蒸気圧は高い。本方法で用いる過熱蒸気の圧力は飽和蒸気圧未満であるため、この蒸気はこの過熱蒸気流に接触する部分的に揚げた生地片を乾燥させる、すなわちこれから水を蒸発させることができる。
【0029】
用語「赤外線」は、ここで使用される限りにおいて、0.7μmないし1mmの波長を有する電磁線を指す。ここで所定の範囲内の波長を有する赤外線を言及する際には、エネルギー含量の50%を超える、好ましくは80%を超える赤外線が前記範囲内の波長を有する赤外線に由来するということである。
【0030】
用語「空気」は、熱風との衝突に関連して使用される限りにおいて、空気以外のガスまたはガス混合物との衝突が類似した結果をもたらすことがあるので、狭く解釈されるべきでない。好ましくは、本方法で用いられる熱風は少なくとも50重量%の空気を含有する。最も好ましくは、用いられる熱風は空気からなる。
【0031】
部分的に揚げた生地片をオーブンで焼く場合、有利には150〜350℃の範囲内、最も好ましくは180〜320℃の範囲内のオーブン温度を使用する。典型的に、部分的に揚げた生地片を示したオーブン温度のオーブン内に1〜15分、最も好ましくは3〜8分間の期間にわたって入れておくであろう。
【0032】
本方法で用いられる過熱蒸気の温度は広い範囲内で多様でありうる。わずかに焼き色のついた表皮と完全に調理された内側とを有する調理済み食材を得るために、蒸気温度と接触時間との適切な組み合わせを選択すべきである。一般的に述べると、蒸気温度が高ければ、接触時間は短い。好ましくは、本方法で用いられる過熱蒸気は130〜280℃、最も好ましくは150〜250℃の範囲内の温度を有する。部分的に揚げた生地片を好適には少なくとも30秒間、より好ましくは75〜150秒間にわたって過熱蒸気に接触させる。
【0033】
部分的に揚げた生地片は有利にはその飽和蒸気圧よりもかなり低い圧力を有する過熱蒸気に接触させる。特に好ましい実施形態によると、過熱蒸気は、過熱蒸気の水蒸気圧の0.15〜0.95倍、好ましくは0.3〜0.8倍の圧力を有する。
【0034】
部分的に揚げた生地片と過熱蒸気との接触は、過熱蒸気の定常流を部分的に揚げた生地片上に通すことによって好適に達成される。この調理プロセスが適切な速度で進行することを確実にするために、過熱蒸気を生地片上に少なくとも1m/秒、好ましくは少なくとも3m/秒の流量で通すことが好ましい。通常、流量は50m/秒を超えず、好ましくは30m/秒を超えない。
【0035】
過熱蒸気と部分的に揚げた生地片との直接接触が所望の製品特徴を達成するのに必要とされる。直接接触は適切な表面の焼き入れと水分減少とを達成するのに特に適切である。したがって、生地片をトレー上に置いた状態またはバスケット内に入れた状態で過熱蒸気に接触させる場合、過熱蒸気がこのトレーまたはバスケットを通り抜けて生地片の表面に達することが重要である。典型的に、本方法では、部分的に揚げた生地片の表面の少なくとも80%、好ましくは少なくとも90%が過熱蒸気に直接曝される。
【0036】
本方法において、赤外線は、正しい波長を有する赤外線を生じさせることができる任意のタイプの赤外線ヒーターによって好適に提供されうる。後者の波長は放射物体の温度に依存する。ほとんどの市販の赤外線ヒーターは炎または電熱フィラメントを放射物体として用いる。本方法は有利には電熱フィラメントを放射物体として含む赤外線ヒーターを用いる。このフィラメントは耐熱石英ガラス管によって保護されている場合がある。さらに、前記石英管に不活性ガスを充填してフィラメントの崩壊を防ぐことができる。本方法では、赤外線は赤外線チューブヒーターによって有利に提供される。
【0037】
本方法は好ましくは非常に高いエネルギー含量を有する赤外線を用いる。結果として、特に好ましい実施形態では、用いられる赤外線は0.7〜5.0μmの波長を有する。
【0038】
好ましくは、本方法では、部分的に揚げた生地片が曝される赤外線は高いパワー密度を有する。有利には、部分的に揚げた生地片を、少なくとも2kW/cm2、より好ましくは少なくとも5kW/cm2および最も好ましくは8〜80kW/cm2の熱流に少なくとも20秒間曝す。有利には、部分的に揚げた生地片が上述の熱流に曝される合計期間は少なくとも40秒、より好ましくは少なくとも60秒および最も好ましくは少なくとも90秒である。典型的に、前記部分が先に述べた熱流に曝される期間は700秒を超えない。好ましくは、前記期間は500秒を超えない。
【0039】
また、本方法で用いられる熱風衝突は、部分的に揚げた生地片への非常に強い熱伝達を達成するのに有利に使用される。したがって、この部分を好ましくは180〜340℃、より好ましくは200〜320℃の温度を有する熱風との衝突に曝す。
【0040】
熱風との衝突の有効性は熱風の温度に依存するが、前記熱風の流量にも依存する。有利には、熱風との衝突は、前記部分を少なくとも1m/秒、好ましくは5〜20m/秒の速度を有する熱風に衝突させることを含む。
【0041】
焼いた直後の本方法で得られた焼いた生地片は典型的に少なくとも85℃、より好ましくは少なくとも90℃および最も好ましくは少なくとも95℃の芯温度を有する。
【0042】
本方法は、熱い油との接触の前に酵母および/または化学膨張剤の助けにより膨らませていた調理済み製品を調製するのに特に好適である。有利には、膨らませて付形した生地片は、熱い油に接触する前は、少なくとも1.2ml/g、より好ましくは少なくとも2.0ml/gの比体積を有する。
【0043】
ここで先に説明したように、本方法は低減した脂肪含量を有する調理済み澱粉製品の調製を可能にするという利点がある。したがって、比較的低い脂肪含量を有する生地を用いることが好ましい。好ましくは、用いられる生地は脂肪が10重量%未満である小麦粉を含有する。さらにより好ましくは、生地は脂肪が0〜7重量%である小麦粉を含有する。
【0044】
典型的に、本方法で用いられる生地は小麦粉の重量の40〜60重量%の水と小麦粉の重量の0〜50重量%の他の製パン原料とを含有する。
【0045】
本発明のもう1つの態様は焼いた澱粉生地体を含む調理済み食品に関し、前記焼いた生地体の表面の40〜70%は可食材料の層でコーティングされており、焼いた生地体の可食材料の層でコーティングされていない表面は揚げた表面であって、焼いた生地体の可食材料の層で被覆された表面の少なくとも70重量%は揚げられていない。このような調理済み食品はここで先に規定した方法によって好適に調製されうる。
【0046】
特に好ましい実施形態によると、焼いた生地体は1〜15重量%、より好ましくは2〜10重量%の脂肪含量を有する。
【0047】
典型的に、焼いた生地体は重量が10〜200gであり、可食材料の層は重量が2〜40gである。より好ましくは、焼いた生地体は重量が20〜100gであり、可食材料の層は重量が4〜20gである。
【0048】
可食材料の層は、好ましくは、チョコレート、果実調理食材、カスタード、グレーズ、砂糖、脂肪、ココア、乳タンパク質、卵白、卵黄およびこれらの組み合わせから選択される少なくとも50重量%の可食材料を含有する。可食材料の層は好ましくは連続層、すなわちその下にある焼いた(揚げていない)生地体を見せる穴を含んでいない層である。
【0049】
調理済み澱粉製品は好ましくはドーナツ、フライド・ヌードル、ラード菓子、シュプリッツクーヘン、クラップフェン、チューロ、ブニュエロおよびクスコスからなる群より選択される。最も好ましくは、調理済み製品はドーナツである。
【0050】
本発明を以下の非限定的な例によってさらに説明する。
【0051】

例1
リングドーナツ(41グラム)を以下のレシピを使用して調製した。
【表1】

【0052】
生地を、リボンブレンダーにおいてこれらの成分を低速で2分間および高速で6分間混合して作った。10分間室温に置いたあと、生地を薄片にし、リングを切り出した。これらのリングはさらなる使用まで5℃に置いておいた/5℃で保存した。
【0053】
ドーナツリングを醗酵キャビネットに入れ、38℃、60%RHで54分間にわたって醗酵させた。醗酵させた製品の1つの面を20秒間にわたって190℃の温度の油で揚げた。次に製品を小さな過熱蒸気ユニットに移し、ここでそれらを芯の温度が96℃になるまで200℃で75秒間にわたって過熱蒸気中で55〜70W/m2.℃の伝熱係数で焼いた。1時間に亘る室温での冷却後、製品の揚げていない表面を以下の組成物のデコレーションでデコレーションした:
【表2】

【0054】
外観および食感品質の点で、このようにして得られた完全に調理したドーナツは通常の完全に揚げたドーナツとほとんど区別できなかった。完全に調理したドーナツ(デコレーションは除く)の脂肪含量は約7重量%であった。
【0055】
比較例A
醗酵させたリングドーナツ(41グラム)を例1で説明したレシピおよび手順を使用して調製した。醗酵させた製品の両面を75秒間にわたって180℃の温度の油で揚げた。
【0056】
1時間に亘る室温での冷却後、製品を例1で説明したのと同じ方法でデコレーションした。
【0057】
このようにして得られたドーナツの外観および食感品質は通常の完全に揚げたドーナツに典型的なものであった。この調理済み食品は脂肪含量(デコレーションは除く)が約23重量%であった。
【0058】
比較例B
醗酵させたリングドーナツ(41グラム)を例1で説明したレシピおよび手順を使用して調製した。
【0059】
次に、醗酵させた製品を小さな過熱蒸気ユニットに移し、ここでそれらを芯の温度が96℃になるまで200℃で115秒間にわたって過熱蒸気中および55〜70W/m2.℃の伝熱係数で焼いた。1時間に亘る室温での冷却後、製品を例1で説明したのと同じ方法でデコレーションした。
【0060】
このようにして得られた完全に調理したドーナツの外観および食感品質は例2および1で説明した完全に調理したドーナツのそれよりも劣っていた。これらのドーナツ(デコレーションは除く)の脂肪含量は約5重量%であった。
【0061】
例2
醗酵させたリングドーナツ(41グラム)を例1で説明したレシピおよび手順を使用して調製した。
【0062】
醗酵させた製品の1つの面を20秒間にわたって190℃の温度の油で揚げ、続けて、熱風衝突ノズルをさらに備えた走行式赤外線オーブンに移した。このオーブンは速度を制御することができる移動金網ベルトから構成されていた。赤外線加熱ランプおよび熱風衝突ノズルはこの移動ベルトの上方に設置されていた。このベルトの中間に、ドーナツを効率的に裏返すスイッチバックがあった。加熱要素は、調節可能な角度で設置された6セットの2つのランプから構成されており、この各セットは強度を調節することが可能であった。これらのランプのセットは移動ベルトの長さのいたるところに均一に分散していた。加えて、2つの熱風衝突ノズルは、ドーナツの片面が熱風に直接曝されるように、1つはベルトの中心付近におよび1つは端部付近に設置されていていた。熱風の温度は調節可能であった。
【0063】
表I(領域1はベルトが通過するオーブンの最初の領域を表しており、領域8は最後の領域を表している)に示したランプの強度および衝突温度を適用した。オーブン内での滞留時間は3分であった。
【表3】

【0064】
1時間に亘る室温での冷却後、製品の揚げていない表面を例1で説明したのと同じようにデコレーションした。
【0065】
外観および食感品質の点で、このようにして得られた完全に調理したドーナツは、通常の完全に揚げたドーナツとほとんど区別できなかった。完全に調理したドーナツ(デコレーションは除く)の脂肪含量は約7重量%であった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
調理済み澱粉食品を調製する方法であって、前記方法は以下の連続工程:
a)澱粉生地を、小麦粉、水および任意の1種以上の他の製パン原料を混合することによって調製する工程と;
b)前記生地を1つ以上の生地部分に分ける工程と;
c)前記1つ以上の生地部分を付形して1つ以上の付形した生地片にする工程と;
d)前記1つ以上の付形した生地片の全表面の30〜70%を熱い油に少なくとも10秒間の期間にわたって接触させて、揚げた表面と揚げていない表面とを含む1つ以上の部分的に揚げた生地片を作る工程と;
e)前記1つ以上の部分的に揚げた生地片を焼いて1つ以上の焼いた生地片を作る工程と
を含み、可食材料の層を前記付形した生地片、前記部分的に揚げた生地片または前記焼いた生地片の表面の40〜70%に適用し、最終的な調理済み製品の前記可食材料の層で被覆されていない表面は揚げた表面である方法。
【請求項2】
前記部分的に揚げた生地片を、この生地片に以下の熱処理のうちの1つ以上を施すことによって焼く請求項1に記載の方法:
・前記生地片を、少なくとも150℃のオーブン温度を有するオーブン内に2分間入れておくこと;
・前記生地片を過熱蒸気に接触させること;
・前記生地片を熱風衝突に曝すこと;
・前記生地片を0.7〜10μmの範囲にある波長を有する赤外線に曝すこと。
【請求項3】
前記熱い油は少なくとも160℃、好ましくは170〜350℃の温度を有する請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つ以上の付形した生地片の全表面の60%以下を前記熱い油に少なくとも10秒間の期間にわたって接触させる請求項1〜3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記可食材料の層を粉末、液体またはペーストの状態で適用する請求項1〜4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記可食材料の層はチョコレート、果実調理食材、カスタード、グレーズ、砂糖、脂肪、ココア、乳タンパク質、卵白、卵黄およびこれらの組み合わせから選択される少なくとも50重量%の可食材料を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
前記調理済み澱粉製品はドーナツである請求項1〜6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記可食材料の層で被覆された前記揚げた表面は全表面の30%未満、好ましくは20%未満に相当する請求項1〜7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
(i)前記1つ以上の生地部分を付形して丸みを帯びた底部を有する付形した生地片にし;(ii)前記揚げた表面がこの丸みを帯びた底部の表面を含み;および(iii)焼いている間に前記1つ以上の部分的に揚げた生地片がこの丸みを帯びた底部に載っている、請求項1ないし8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
焼いた澱粉生地体を含む調理済み食品であって、前記焼いた生地体の表面の40〜70%は可食材料の層でコーティングされており、前記焼いた生地体の前記可食材料の層でコーティングされていない表面は揚げた表面であり、前記焼いた生地体の前記可食材料の層で被覆された表面の少なくとも70重量%は揚げていない調理済み食品。
【請求項11】
前記焼いた生地体は脂肪含量が2〜15重量%である請求項10に記載の調理済み食品。
【請求項12】
前記焼いた生地体は重量が10〜200gであり、前記可食材料の層は重量が2〜40gである請求項10または11に記載の調理済み食品。
【請求項13】
前記食品はドーナツである請求項10〜12のいずれか1項に記載の調理済み食品。
【請求項14】
前記可食材料の層は連続層である請求項10〜13のいずれか1項に記載の調理済み食品。
【請求項15】
前記可食材料の層はチョコレート、果実調理食材、カスタード、グレーズ、砂糖、脂肪、ココア、乳タンパク質、卵白、卵黄およびこれらの組み合わせから選択される少なくとも50重量%の可食材料を含有する請求項10〜14のいずれか1項に記載の調理済み食品。

【公表番号】特表2013−502923(P2013−502923A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526678(P2012−526678)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【国際出願番号】PCT/NL2010/050528
【国際公開番号】WO2011/025370
【国際公開日】平成23年3月3日(2011.3.3)
【出願人】(505152480)シーエスエム・ネーデルランド・ビー.ブイ. (9)
【Fターム(参考)】