説明

調理用の成型炭、その製造方法および同成型炭を用いた調理方法

【課題】燃焼時に植物の香り成分を放つ調理用の成型炭、その製造方法および同成型炭を用いた調理方法を提供する。
【解決手段】本成型炭1は木炭の粉粒状物2を主成分とし、植物の香り成分を含有する塩化ナトリウムの粉状物および/または粒状物3が分散されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調理用の成型炭、その製造方法および同成型炭を用いた調理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
食品に香りを付けることは、食欲をそそり、一般的になされている。(特許文献1)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】JP2002−27230A(要約)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、調理用の炭に香りを付ける(添加する)ことはなされていない。調理用の炭、たとえば焼肉などのバーベキュー用の炭に香りを付けると、肉や魚を焼く際に、食品に香りが付いて食欲が増進されるだけでなく、雰囲気にも良い香りがするので、食欲の更なる増進を図り得る。
【0005】
したがって、本発明の目的は燃焼時に植物の香り成分を放つ調理用の成型炭、その製造方法および同成型炭を用いた調理方法を提供する。
【0006】
本発明者はまず、香り成分を有する炭を燃焼させると、当該燃焼時に香り成分を放つのを発見し、更に、鋭意研究を重ねた結果、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明の調理用の成型炭は、木炭の粉粒状物を主成分とし、植物の香り成分を含有する塩化ナトリウムの粉状物および/または粒状物が前記木炭の粉粒状物に分散された状態で所定形状に成型されたものである。
【発明の効果】
【0008】
植物の香り成分は塩化ナトリウムを用いることにより、浸透圧で容易に抽出することができるので、この発明によれば香り成分のボリュームを増すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1Aは成型炭の一例を示す概念図、図1Bは試験例を示す図表である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明の好的な実施例では、塩化ナトリウムの結晶質の粒状物に前記植物の香り成分が含有されている。
【0011】
非晶質の塩化ナトリウム(NaCl)の粉末に香り成分が含有されている場合、前記香り成分は常温においても雰囲気に放たれる。したがって、経時的に香りが弱くなる。
これに対し、NaClの結晶は水分を結晶中に保持しており、当該水分は結晶の格子に坦持されるため、常温において雰囲気に放たれ難い。したがって、経時的に香りが弱くなるのを防止し得る。
一方、成型炭が着火しある程度以上の温度になると、結晶中の水分が蒸発し、この際、香り成分が煙や炎と共に上方の肉などの食品に付着する。
【0012】
本発明の更に好的な実施例においては、前記植物の香り成分が植物の花または葉のうちの少なくともいずれか1以上から抽出されたものであり、前記香り成分が抽出された植物と、前記木炭を形成する植物とが同じ植物である。
【0013】
桜やオリーブの木から得た木炭自体にも香り成分が含まれており、花や葉と協働して、香り付けに寄与する。また、この場合、1本の木の全ての部位を有効に利用し得る。
【0014】
本発明の好ましい実施例においては、前記木炭の粉粒状物100重量部に対し、前記塩化ナトリウムの粒状物が0.1〜20重量部含まれており、更に好ましい実施例においては、前記木炭の粉粒状物100重量部に対し、前記塩化ナトリウムの粒状物が0.5〜10重量部含まれており、最も好ましい実施例においては、前記木炭の粉粒状物100重量部に対し、前記塩化ナトリウムの粒状物が1.0〜5.0重量部含まれている。
【0015】
NaClの結晶質の前記粒状物が少ないと、前記香りにより効果が不十分となり、一方、NaClの結晶質の前記粒状物が多すぎると、火力が弱くなり易い。
【0016】
以上の観点から、同成型炭を用いた好ましい調理方法としては、前記香り成分を有していない木炭に着火して当該木炭が赤くおこった後に、当該木炭および前記成型炭を七輪内に投入して前記七輪の上方の食品を焼く。
【0017】
成型炭が赤くおこった状態では、香り成分が飛んでおり、したがって、食品に香りが殆ど付着しない。これに対し、火力を得るために通常の炭を着火させた後に、本成型炭を置くと、同成型炭がおこる際に多量の香り成分が立ち上がり、食品に香りが付着する。
【0018】
前記非晶質のNaClの粉粒状物が分散された成型炭を製造する方法は、容器内において植物の葉および/または花と塩化ナトリウムの粉末を交互に積み重ねる工程と、前記積み重ねた状態の植物の上に荷重を負荷し続ける工程と、浸透圧により前記植物から細胞液を引き出す工程と、前記細胞液中に溶けた塩化ナトリウム入りの液体を取り出す工程と、前記木炭の粉粒状物に前記液体および粘結剤を添加して混練する工程と、前記混練した混合物を所定形状に成型して前記成型炭を得る工程とを備える。
【0019】
この場合、香り成分を含んだNaCl溶液を多量に用いて成型炭を生成するのが容易である。
【0020】
一方、結晶質のNaClの粒状物が分散された成型炭を製造する方法は、容器内において植物の葉および/または花と塩化ナトリウムの粉末を交互に積み重ねる工程と、前記積み重ねた状態の植物の上に荷重を負荷し続ける工程と、浸透圧により前記植物から細胞液を引き出す工程と、前記細胞液中に溶けた塩化ナトリウム入りの液体を取り出す工程と、前記液体から水分を蒸発させて結晶質の前記塩化ナトリウムの粒状物を得る工程と、前記塩化ナトリウムの粒状物と木炭の粉粒状物を混合する工程と、前記混合した混合物を所定形状に成型して前記成型炭を得る工程とを備える。
【実施例】
【0021】
以下、本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
図1Aは本実施例の成型炭を示す。
【0022】
図1Aにおいて、成型炭1は木炭の粉粒状物2を主成分とし植物の香り成分を含有するNaClの粒状物3が前記粉粒状物2に分散されている。
【0023】
つぎに、前記成型炭1の製造方法について説明する。
容器内において植物(桜)の葉および花と塩化ナトリウムの粉末を交互に積み重ねる。この際、予め葉および花をミキサーで粉砕しておいてもよい。つぎに、前記積み重ねた状態の植物の上に荷重を負荷し続けることで浸透圧により前記植物から細胞液を引き出し、前記細胞液中に溶けた塩化ナトリウム入りの液体を取り出す。前記NaClの液体のうちの一部を用い、当該一部の液体から水分を乾燥室内で、かつ、静かに蒸発させて結晶質の前記塩化ナトリウムの粒状物を得る。
【0024】
一方、桜の生木を粉砕した後に炭化させ、桜の木の炭化物、つまり、木炭を得る。
前記木炭の粉粒状物に前記液体の他の一部および粘結剤を添加して更に、前記NaClの粒状物3を投入して混練する。前記混練した混合物を所定形状に成型して前記成型炭を得る。
【0025】
つぎに、本発明の効果を明瞭にするために、図1Bの表1に示す試験例1〜10についての試験結果を示す。
【0026】
まず、表1に示す数値を持つ本成型炭を前述の製造方法に近似した方法で生成した。なお、表中の数値の単位は重量部である。
生成後、各成型炭を晴天時に約10日間天日に晒した。
【0027】
つぎに、前記香り成分を有していない備長炭に着火して当該備長炭が赤くおこった後に、当該備長炭および前記成型炭1を七輪内に投入して前記七輪の上方で牛肉のロースを焼いて食べた。
【0028】
一方、比較例として、各試験例の成型炭のみに着火して、着火性を調べると共に、各試験例の成型炭が赤くおこった後に、牛肉を焼いて食べた。
【0029】
図1Bの表1において、前記結晶質のNaClの割合が木炭100重量部に対し8.0重量部以上になると着火性および燃焼性が低下し、本成型炭単体では着火しにくいなどの問題が生じる。
【0030】
また、試験例5と試験例10との比較から結晶質のNaClの方が燃焼性能が低下しにくいことが分かる。前記非晶質のNaClは木炭の微細な孔に入り込み、着火や燃焼を妨げるためであろう。
【0031】
一方、前記NaClの結晶の割合が木炭100重量部に対し0.2〜0.5重量部であると香りが肉につくものの、燃焼時に香りが不十分となる。
【0032】
また、NaClの割合が同じでも、結晶質の場合には非晶質に比べ香りが高かった。結晶が香りを閉じ込めるからであろうと推測される。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明は、食品を調理する炭に利用できる。
【符号の説明】
【0034】
1:成型炭
2:粉粒状物
3:粒状物



【特許請求の範囲】
【請求項1】
木炭の粉粒状物を主成分とし、植物の香り成分を含有する塩化ナトリウムの粉状物および/または粒状物が前記木炭の粉粒状物に分散された状態で所定形状に成型された調理用の成型炭。
【請求項2】
請求項1において、塩化ナトリウムの結晶質の粒状物に前記植物の香り成分が含有されている。
【請求項3】
請求項2において、前記植物の香り成分が植物の花または葉のうちの少なくともいずれか1以上から抽出されたものであり、
前記香り成分が抽出された植物と、前記木炭を形成する植物とが同じ植物である。
【請求項4】
請求項3において、植物の種(たね)から得た粉粒状の炭が前記木炭に分散され、
前記種および木炭を形成する植物が同じ植物である。
【請求項5】
請求項4において、前記結晶質の粒状物が半透明である。
【請求項6】
請求項5において、前記木炭の粉粒状物100重量部に対し、前記塩化ナトリウムの粒状物が0.1〜20重量部含まれている。
【請求項7】
請求項6において、前記木炭の粉粒状物100重量部に対し、前記塩化ナトリウムの粒状物が0.5〜10重量部含まれている。
【請求項8】
請求項7において、前記木炭の粉粒状物100重量部に対し、前記塩化ナトリウムの粒状物が1.0〜5.0重量部含まれている。
【請求項9】
請求項8において、前記植物の香り成分が植物の花および葉から抽出されたものである。
【請求項10】
請求項8において、前記植物の香り成分が植物の花から抽出されたものである。
【請求項11】
請求項8において、前記植物の香り成分が植物の葉から抽出されたものである。
【請求項12】
請求項9〜11のいずれか1項において、前記植物が桜である。
【請求項13】
請求項9〜11のいずれか1項において、前記植物がオリーブである。
【請求項14】
請求項1〜13の成型炭を用いた調理方法であって、
前記香り成分を有していない木炭に着火して当該木炭が赤くおこった後に、当該木炭および前記成型炭を七輪内に投入して前記七輪の上方の食品を焼く食品の調理方法。
【請求項15】
請求項1の成型炭を製造する方法であって、
容器内において植物の葉および/または花と塩化ナトリウムの粉末を交互に積み重ねる工程と、
前記積み重ねた状態の植物の上に荷重を負荷し続ける工程と、
浸透圧により前記植物から細胞液を引き出す工程と、
前記引き出された細胞液中に溶けた塩化ナトリウム入りの液体を取り出す工程と、
木炭の粉粒状物に前記液体および粘結剤を添加して混練する工程と、
前記混練した混合物を所定形状に成型して前記成型炭を得る工程とを備える。
【請求項16】
請求項2の成型炭を製造する方法であって、
容器内において植物の葉および/または花と塩化ナトリウムの粉末を交互に積み重ねる工程と、
前記積み重ねた状態の植物の上に荷重を負荷し続ける工程と、
浸透圧により前記植物から細胞液を引き出す工程と、
前記引き出された細胞液中に溶けた塩化ナトリウム入りの液体を取り出す工程と、
前記液体から水分を蒸発させて結晶質の前記塩化ナトリウムの粒状物を得る工程と、
前記塩化ナトリウムの粒状物と木炭の粉粒状物を混合する工程と、
前記混合した混合物を所定形状に成型して前記成型炭を得る工程とを備える。


【図1】
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【公開番号】特開2012−251081(P2012−251081A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125172(P2011−125172)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(300046452)
【Fターム(参考)】