説明

調理用補助具

【課題】片手しか使えない人にとっても、食材を確実かつ安定して保持し、手を添えなくても、片手に持った包丁で食材の切断や皮剥きができる、安全で簡便な調理用の補助具を提供する。
【解決手段】扁平な六面体からなる補助具本体の一辺に沿った中央部分に、この補助具本体の高さのおよそ半分の深さの第一凹溝と第二凹溝をそれぞれが直角に交差するように凹設し、一方の第二凹溝の上縁角部は、長さ方向両側に、上方に向かって広がるように切欠して円筒体保持部を形成し、上記第一凹溝と第二凹溝が交差する中心の四つの上縁角部は、上方に向かって広がる曲面状に切欠して第一曲面体保持部を形成して調理用補助具を構成した。さらに、上記第一凹溝と第二凹溝が交差する中心の平面部分には、上記曲面より小さい曲面状に切欠して第二曲面体保持部を形成した。そして、上記補助具本体の平面視が正方形となるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、片麻痺などの障害や、事故・病気などにより片腕を切断したり、高齢などの理由によって非力となるなど、片手しか使えなくなった人たちが、調理をする際に、安全で簡便に食材を切断したり、皮を剥いたりすることができるようにした調理用の補助具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
調理をする場合において、まな板の上に置いた食材を包丁で切ろうとする場合、健常者であれば利き手に包丁を持ち、他方の手で食材を押さえて切断する。また、食材の皮を剥く場合も同様に、利き手で包丁やピーラーを持つとともに、他方の手で食材を回し持ちながら皮を剥く作業を行っている。しかしながら、上述した片手しか使えない人たちは、他方の手で食材を押さえたり持ったりすることができず、非常に不便である。特に野菜や果物で丸いものや円柱形状のものは転がりやすく、そのまま切断することが難しい。
【0003】
しかし、これらの片手しか使えない人たちも、自立の精神が強く、一人で調理できるようになることを強く希望している。そのため、一部の人は、木製のまな板に3本程度の釘を突出させた、いわゆる釘付まな板を自作し、この釘に食材を突き刺して固定し、正常な手で包丁を持ち、食材を切断したり皮を剥いたりしていた。
【0004】
この釘付まな板は、表面に鋭利な釘が突出しているので、使用中は勿論、準備や後片付けの際にも手指を傷つけないようにしなければならず、その取扱いに十分な注意が必要であった
【0005】
このため、例えば特許文献1に開示されているように、複数の釘を植設した基板を別途に設け、この基板をまな板に設けた収納穴に正逆自在に嵌合するようにして、安全性を高めようとする試みがなされている。
【0006】
また、これより以前にも、特許文献2から特許文献4に開示されているように、片手しか使えないような人たちのための調理自助具やまな板が色々と提案されている。
【0007】
例えば、特許文献2に開示された調理自助具は、包丁をクランク棒に支承すると共に、まな板には多数の針を列設し、食材をこの針に刺して固定させて切断するようにしたものである。
【0008】
また、特許文献3に開示された調理用まな板は、基本構成としては、まな板本体上に、押さえアーム用の支柱を取り付け、一端部に前記支柱に嵌合する取り付け孔を設け、他端部には食材、調理用器具または食器類の押さえ部材を設けた押さえアームを、前記支柱に前記取り付け孔を介して着脱自在にかつ支柱に沿う上下方向の選択した一に固定可能に取り付けて構成したものである。さらに、回転駆動装置を介して回転自在に連結する各種のアタッチメントを有するものである。そして、これによって、片手だけで、食材を洗い、皮を剥き,切断し、更には食器を洗うなど、調理に必要な仕事を容易にかつ能率よく行い得るようにしている。
【0009】
また、特許文献4に開示された調理用まな板は、まな板上に、フレーム支持用の支柱を突設し、前記支柱に、少なくともガイドバーと支持部材とを有するフレームを、前記支持部材を介して固定し、前記フレームにホルダを固定し、一端部にナットを設けたアームを前記ガイドバーに着脱自在に、かつ同ガイドバーに沿ってスライド可能に、しかも同ガイドバーの長さ方向の選択した位置に固定可能に取り付け、前記ナットに、一端部にハンドルを有するスクリューロッドを螺合し、前記スクリューロッドの他端部にホルダを連結して構成したものである。そして、ホルダ間に食材を直接又は押さえユニットや保持器具を介して挟持固定し、片手で洗ったり,切断したり、皮を剥いたり出来るようにしたものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2010−63870号公報
【特許文献2】特開2002−291626号公報
【特許文献3】特開2005−21201号公報
【特許文献4】特開2006−43317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、特許文献1に開示されたまな板は、釘の部分を収納できるようにしたものではあるが、使用時には、結局、釘に食材を突き刺して固定するものであるから、なお、釘によって手指を傷つけるおそれが残るものであった。また、特許文献2に記載の調理自助具も、同様に、針を列設させて食材を固定するものであるから、手指を傷つけるおそれがあり、さらに、保管に場所をとるという問題もあった。
【0012】
また、特許文献3、4に開示されたものは、食材を切断等する以外にも様々な使用方法があり、多機能であるが、その分、構造が複雑であるので製造コストがかかり、さらに、大型で広い保管スペースを必要とし、健常者にとっては却って利用し難いものであった。また、食材を固定するという機能についてみると、クシやピンに食材を刺して保持するものであったので、上述したものと同様に、手指を傷つけるおそれがあるものであった。
【0013】
本願発明は、このような従来の機器が有する課題に鑑みてなされたものであり、特に食材を保持するという機能に着目して、より安全でかつ簡便に調理の補助をするための器具を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記課題を解決するため、本発明は、調理用補助具として、扁平な六面体からなる補助具本体の一辺に沿った中央部分に、この補助具本体の高さのおよそ半分の深さの第一凹溝と第二凹溝をそれぞれが直角に交差するように凹設し、一方の第二凹溝の上縁角部は、長さ方向両側に、上方に向かって広がるように切欠して円筒体保持部を形成し、上記第一凹溝と第二凹溝が交差する中心の四つの上縁角部は、上方に向かって広がる曲面状に切欠して第一曲面体保持部を形成するという手段を採用した。
【0015】
さらに、上記第一凹溝と第二凹溝が交差する中心の平面部分には、上記曲面より小さい曲面状に切欠して第二曲面体保持部を形成するという手段を採用した。
【0016】
そして、上記補助具本体の平面視が正方形となるようにするという手段を採用した。
【0017】
さらに、上記補助具本体の四隅を隅切りして平面視を八角形となるようにするという手段を採用した。
【0018】
また、上記補助具本体の底面に、滑り止め部材を設けるという手段を採用した。
【0019】
そして、上記調理用補助具は、全体を抗菌ポリエチレンで形成するという手段を採用した。
【発明の効果】
【0020】
上記構成に係る本発明の調理用補助具は、交差する凹溝上に野菜等の形状に見合う円筒体保持部や曲面体保持部を設けているので、そこに野菜等を保持させるだけで安定して動くことがなく、野菜に手を添えなくても片手だけで野菜を切断することができるという優れた効果が期待できるものである。特に、従来のように、針や釘に食材を突き刺して固定するものではないから、極めて安全であり、かつ、簡便である。
【0021】
即ち、円筒体保持部が長さ方向両側にわたって上方に向かって広がるようにしているので、その形状に沿って載置すれば、該部に大根や人参などの円筒状の野菜を安定して保持させることができる。そのため、直交する第一凹溝に包丁の刃が嵌入するように野菜を切断することで、野菜に手を添えなくても、片手に持った包丁のみで野菜を簡単に切断することが可能となる。
【0022】
また、第一曲面体保持部は曲面状に上方に向かって広がっているので、その形状に沿って、リンゴなどの球状の野菜や果物を安定して保持させることができる。そのため、上記と同様に、片手のみを使用して包丁で簡単に切断することができる。また、皮むき作業も容易かつ安全に行うことができる。
【0023】
小さい第二曲面体保持部は、大きさの小さいプチトマトやキウイなどの野菜を安定して保持することができ、容易に切断できる。
【0024】
そして、六面体の平面視を正方形又は八角形にすることにより、切断時にも安定する。
【0025】
また、底面に滑り止め部材を設けているので、安定した設置ができ、切断時に不用意に移動することがない。
【0026】
そして、抗菌ポリエチレンで形成することにより、食品衛生上も安心して使用することができる。
【0027】
また、全体構造があまり複雑でなく、大きな凹溝を有するのみであるので、洗浄しやすく、常時、清潔な状態を保持できるものである。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る調理用補助具の実施形態を一部切欠して示す斜視図である。
【図2】(A)は調理用補助具の平面図、(B)は正面図である。
【図3】(A)は調理用補助具の右側面図、(B)は底面図である。
【図4】(A)は図1のA−A線断面図、(B)はB−B線断面図である。
【図5】他の実施形態の平面図である。
【図6】円筒状の食材を切断する場合の使用例を示す説明図である。
【図7】球状の食材を切断したり皮を剥いたりする使用例を示す説明図である。
【図8】まな板と併用する使用例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係る調理用補助具の好ましい実施形態を、添付した図面に従って詳細に説明する。図1に示す調理用補助具は、野菜や果物などを保持し、片手でも安全かつ簡便に切断や皮剥きをできるようにするものである。
【0030】
図1〜図4において、1は、平面視が一辺約12cm程度の略正方形で、高さが約4cm程度の扁平な六面体からなる補助具本体、2は、この補助具本体1の一辺に沿った中央部分上面の全長に渡り、補助具本体1の高さのおよそ半分の深さに凹設した第一凹溝である。また、3は、この第一凹溝2と直角に交差して同じ深さで設けた第二凹溝である。この第二凹溝3の上縁角部は、長さ方向両側に、側面視でV字状に切欠して、上方に向かって広がる円筒体保持部4を形成している。
【0031】
また、上記第一凹溝2と第二凹溝3が交差する中心の四つの上縁角部は、上方に向かって広がる曲面状に切欠して第一曲面体保持部5を形成している。さらに、上記第一凹溝2と第二凹溝3の各底面が交差する平面部分は、同様に、上記曲面より径の小さい曲面状に切欠して第二曲面体保持部6を形成している。そして、この第二曲面体保持部6の底部には底面まで貫通する透孔7を貫設している。
【0032】
また、この補助具本体1の底面の四隅には、滑り止め部材8を配設している。
【0033】
上記構成において、第一凹溝2及び第二凹溝3のそれぞれの溝幅は、下述するように、包丁が嵌入した場合に十分な余裕を有する幅とする。また、円筒体保持部4を形成する第二凹溝3のV字状切欠の開口角度は特に限定するものではないが、例えば大根などの円筒状の野菜の形状に沿って、これらを安定的に保持できる大きさとする。さらに、中心に設ける第一曲面体保持部5は、例えばリンゴやジャガイモなどの球状の曲面を有する野菜や果物の形状に沿って、これらを安定して保持できる大きさとする。また、径の小さい第二曲面体保持部6は、プチトマトやキウイなど、より小さな野菜や果実を保持できる大きさとする。このように、野菜や果物の形状に見合った形状の保持部4、5を形成するので、従来の釘などに突き刺して固定する手段と異なり、極めて安全かつ簡便である。
【0034】
また、この調理用補助具全体は、包丁の刃が当たっても刃こぼれしない程度の硬さの素材で形成することが好ましく、衛生面も考慮して、本実施形態では抗菌ポリエチレンを使用している。ただし、これに限定するものではなく、必要に応じて好適な素材を自由に選定できる。なお、安定した設置のためには、ある程度の重量が必要である。
【0035】
続いて、本発明の調理用補助具の使用方法について説明する。まず、この補助具を調理台やまな板の上に設置する。このとき、底面に滑り止め部材8を配設しているので、切断作業時に不用意に移動することはない。そして、例えば大根や人参のように円筒状の野菜(V)を切断する場合、図6(A)に示すように、円筒体保持部4を形成した第二凹溝3に沿って野菜(V)を保持させ、第一凹溝2に包丁(N)の刃が嵌入するように真っ直ぐに包丁(N)を押下する。これにより、片手でも簡単に野菜(V)を輪切りにすることが出来る。また、円筒状に切った野菜(V)を縦方向に切断する場合は、同図(B)に示すように、円筒体保持部4に野菜(V)を保持し、その第二凹溝3に包丁(N)の刃が嵌入するように押下して切断する。これにより野菜を半割り状にすることも出来る。半割り状にした野菜は、平面部分を底にして載置すれば、通常のまな板を使用しても、片手で切断が可能である。
【0036】
また、リンゴのような曲面を有する野菜や果物(F)を切断する場合は、図7(A)に示すように、中心に設けた第一曲面体保持部5に果物(F)を保持させ、上記と同様に、第一凹溝2に包丁(N)の刃が嵌入するように真っ直ぐに包丁を押下する。これにより、片手でリンゴ等の果物(F)を半割りにすることが出来る。さらに、リンゴ等の果物(F)の皮を剥く場合は、同様に第一曲面体保持部5にリンゴ等(F)を保持させれば、リンゴ等(F)は安定して動くことがないので、同図(B)に示すように、包丁(N)やピーラーを表面に当てて回転させるようにすれば、丸く皮を剥くことが可能である。なお、大きさの小さい野菜等については、より径の小さい第二曲面体保持部6に保持させることにより、切断が可能となる。
【0037】
さらに、この調理用補助具は、図8に示すように、通常のまな板と併用することも可能である。即ち、大根などの長尺な円筒状の野菜(V)の場合、その一端はこの調理用補助具の円筒体保持部4に保持させ、他端は通常のまな板(P)上に載置する。そして、まな板(P)上の野菜(V)を包丁(N)で切断する。このとき、野菜(V)は円筒体保持部4で保持され、動くことがないので、まな板(P)上でも輪切りにすることが容易に可能である。
【0038】
以上要するに、本発明に係る調理用補助具によれば、食材が円筒状であっても球状の曲面を有するものであっても、また、大きさが多少異なっても、円筒体保持部4や曲面体保持部5、6を適宜選択し、これに保持させることによって、食材を安定して固定できるから、片手で包丁を操作して、切断や皮剥きが簡単に出来るものである。
【0039】
なお、上述した実施形態では、平面視が略正方形の形状のものについて説明したが、同一の作用を奏する範囲でその形状を変更することが可能である。即ち、例えば図5に示すように、正方形の四隅をさらに切欠して平面視を略八角形状とすることもある。これらの形状は、切断時に安定して載置するためのものである。また、図示しないが、平面視を円形としても、直交する二つの凹溝や曲面状切欠を設けることで同等の作用効果を得ることができる。さらに、円筒体保持部4を形成する第二凹溝3の長さをより長くして、平面視が長方形状や楕円形状のものとすることも可能であり、その形状は任意に選択できるものである。
【符号の説明】
【0040】
1 補助具本体
2 第一凹溝
3 第二凹溝
4 円筒体保持部
5 第一曲面体保持部
6 第二曲面体保持部
7 透孔
8 滑り止め部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
扁平な六面体からなる補助具本体の一辺に沿った中央部分に、この補助具本体の高さのおよそ半分の深さの第一凹溝と第二凹溝をそれぞれが直角に交差するように凹設し、
一方の第二凹溝の上縁角部は、長さ方向両側に、上方に向かって広がるように切欠して円筒体保持部を形成し、
上記第一凹溝と第二凹溝が交差する中心の四つの上縁角部は、上方に向かって広がる曲面状に切欠して第一曲面体保持部を形成したことを特徴とする調理用補助具。
【請求項2】
さらに、上記第一凹溝と第二凹溝が交差する中心の平面部分には、上記曲面より小さい曲面状に切欠して第二曲面体保持部を形成した請求項1記載の調理用補助具。
【請求項3】
上記補助具本体の平面視が正方形である請求項1又は請求項2記載の調理用補助具。
【請求項4】
さらに、上記補助具本体の四隅を隅切りして平面視を八角形とした請求項3記載の調理用補助具。
【請求項5】
上記補助具本体の底面に、滑り止め部材を設けた請求項1から請求項4のいずれか1項記載の調理用補助具。
【請求項6】
上記調理用補助具は、全体を抗菌ポリエチレンで形成する請求項1から請求項5のいずれか1項記載の調理用補助具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−110421(P2012−110421A)
【公開日】平成24年6月14日(2012.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−260037(P2010−260037)
【出願日】平成22年11月22日(2010.11.22)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り シルバー産業新聞(平成22年9月10日付け)第23面
【出願人】(397067956)株式会社アルファ (1)
【Fターム(参考)】